説明

絶縁電線の接続方法およびワイヤーハーネスの製造方法

【課題】複数の導体の溶接による接続を確実に行うことができる絶縁電線の接続方法およびワイヤーハーネスの製造方法を提供すること。
【解決手段】各絶縁電線11の絶縁被覆14の皮剥ぎによって導体12を所定長さ露出させる工程と、露出された複数の導体12を一体的に撚り合わせて撚り部16を形成する工程と、撚り部16の途中部位であって素線13が全て配設されている部位を切断する工程と、撚り部16の切断部位において導体12どうしを溶接により接続する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁電線の接続方法およびワイヤーハーネスの製造方法に関し、さらに詳しくは、自動車などの車両への配線に好適に用いられる絶縁電線の接続方法およびワイヤーハーネスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両においては、複数本の絶縁電線が配線されている。複数本の絶縁電線は、通常、束ねられてワイヤーハーネスを形成している。このようなワイヤーハーネスのうちいくつかの絶縁電線どうしを接続(スプライス接続)する場合には、絶縁電線の絶縁被覆を皮剥ぎしてその内部の導体を露出させ、導体どうしを接触させた状態で、溶接や圧着などによって接続することが行われている。
【0003】
このような複数本の絶縁電線の導体どうしを接続する方法としては、抵抗溶接や超音波溶接の他に、TIG(タングステン・イナート・ガス)溶接などのアーク溶接が用いられる場合がある。
【0004】
図7(a)は、アーク溶接が施されてワイヤーハーネスを構成する前の状態の複数本の絶縁電線と、アーク溶接に用いられる溶接トーチを示している。
【0005】
図示されるように絶縁電線11は、複数本の素線13からなる導体12と、この導体12の外周を覆う絶縁被覆14とを備えている。この場合、各絶縁電線11の絶縁被覆14が皮剥ぎされ、絶縁被覆14の内部にある導体12が所定長さ露出されている。
【0006】
各絶縁電線11の導体12は、それぞれの先端が揃うように平行に並べられている(平行に重ねられている)。これら複数の導体12の先端近傍には、TIG溶接に用いられる溶接トーチが配置されている。
【0007】
溶接トーチは、先細の棒形状に形成されたタングステン電極31を備えており、このタングステン電極31と、各導体12の先端との間に発生するアークによって、各導体12の先端が溶融するようになっている。そして、図7(b)に示されるように、各導体12の先端は溶融して液状になることにより、その表面張力の作用で略球形状に一体になった溶接部18が形成される。これにより各絶縁電線11の導体12どうしは電気的に接続(スプライス)されることになる。尚、本発明に関連する先行技術文献として下記特許文献が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−322544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図7(a)に示されるように、アーク溶接前において、複数本の絶縁電線11の露出された導体12を単に平行に並べた(平行に重ねた)だけでは、導体12を構成する素線13の一部がばらけてしまう(はみ出してしまう)状態になることがある。このような一部の素線13がばらけた(はみ出した)状態で、アーク溶接を行うと、図8に示されるように、はみ出した素線13が溶接部18において他の素線13(導体12)と接続されないという溶接不良(接続不良)が発生する。
【0010】
そこで、このような素線13のはみ出しによる溶接不良(接続不良)を防止するために、アーク溶接を行う前において、図9(a)に示されるように、複数本の絶縁電線11の露出された導体12を平行に並べ(平行に重ね)、図9(b)に示されるように各導体12を撚り合わせて撚り部16を形成し、その後、図10(a)に示されるように、この撚り部16の先端近傍に、溶接トーチを配置してアーク溶接を行うようにしていた。
【0011】
しかしながら、図9(b)および図10(a)に示されるように、各導体12を構成する全ての素線13の先端が、撚り部16の先端に配置されていない状態、つまり一部の素線13の先端が撚り部16の先端(他の素線13の先端)と一致しない状態になる場合がある。この状態の撚り部16の先端に対してアーク溶接を施すと、図10(b)に示されるように、撚り部16の先端に位置しない素線13が溶接部18において他の素線13(導体12)と接続されないという溶接不良(接続不良)が発生してしまっていた。
【0012】
そこで、本発明が解決する課題は、複数の導体の溶接による接続を確実に行うことができる絶縁電線の接続方法およびワイヤーハーネスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため本発明に係る絶縁電線の接続方法は、複数本の素線からなる導体と該導体の外周を覆う絶縁被覆とを有した絶縁電線を複数本用意する工程と、前記各絶縁電線の絶縁被覆の皮剥ぎによって前記導体を所定長さ露出させる工程と、露出された前記複数の導体を一体的に撚り合わせて撚り部を形成する工程と、前記撚り部の途中部位であって前記素線が全て配設されている部位を切断する工程と、前記撚り部の切断部位において前記導体どうしを溶接により接続する工程とを備えることを要旨とするものである。
【0014】
この場合、前記溶接が、アーク溶接である構成にするのが好ましい。
【0015】
また、上記課題を解決するため本発明は、複数本の素線からなる導体と該導体の外周を覆う絶縁被覆とを有した絶縁電線を複数本備えると共に、前記各絶縁電線から露出された前記導体どうしが接続されたワイヤーハーネスの製造方法において、前記各絶縁電線の絶縁被覆の皮剥ぎによって前記導体を所定長さ露出させる工程と、露出された前記複数の導体を一体的に撚り合わせて撚り部を形成する工程と、前記撚り部の途中部位であって前記素線が全て配設されている部位を切断する工程と、前記撚り部の切断部位において前記導体どうしを溶接により接続する工程とを備えることを要旨とするものである。
【0016】
この場合、前記溶接が、アーク溶接である構成にするのが好ましい。
【0017】
また、前記溶接の後の溶接部および前記各絶縁被覆の端部を、絶縁性のチューブで覆う工程と、覆った前記チューブを径方向に圧縮する工程を備える構成にするのが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る絶縁電線の接続方法およびワイヤーハーネスの製造方法によれば、各絶縁電線の絶縁被覆の皮剥ぎによって導体を所定長さ露出させる工程と、露出された複数の導体を一体的に撚り合わせて撚り部を形成する工程と、撚り部の途中部位であって素線が全て配設されている部位を切断する工程を備えているので、撚り部の切断部位(先端)には全ての素線の先端が配置されていることになっている。
【0019】
したがって、溶接前において、各導体を構成する全ての素線の先端が、撚り部の先端に配置されていない状態、つまり一部の素線の先端が撚り部の先端に一致しない状態が回避されている。これにより、撚り部の先端に配置されていない素線が溶接部において他の素線(導体)と接続されないという溶接不良の発生が防止され、各導体を構成する素線どうしを確実に溶接により接続することが可能である。このような溶接としては、抵抗溶接、超音波溶接の他に、特にアーク溶接が好適である。
【0020】
また、本発明に係るワイヤーハーネスの製造方法において、溶接の後の溶接部および各絶縁被覆の端部を、絶縁性のチューブで覆う工程と、覆ったチューブを径方向に圧縮する工程を備えていれば、複数本の絶縁電線が異なる方向に引っ張られても、その際の引っ張り荷重がチューブによって溶接部に加わらないようにすることが可能であると共に、溶接部をチューブによって保護することができる。これにより、溶接部の接続信頼性の低下を抑制することができる。このような絶縁性のチューブとしては、熱収縮性を有するチューブや樹脂性チューブなどが適用される。更に、これらのチューブの内側に例えば熱可塑性の接着層が形成されたチューブなども適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る複数本の絶縁電線の端末から導体が露出された状態を示した外観斜視図である。
【図2】(a)は図1の複数の導体が一体的に撚り合わせられた撚り部を示した外観斜視図、(b)は(a)の撚り部の途中部位を切断した状態を示した外観斜視図である。
【図3】(a)は図2(b)の撚り部の切断部位(先端)にアーク溶接を施す状態を示した外観斜視図、(b)は(a)の撚り部の先端に溶接部が形成された状態(すなわち、本発明の実施形態に係るワイヤーハーネス)を示した外観斜視図である。
【図4】図3(b)の溶接部に熱収縮チューブを被せてその熱収縮チューブを収縮させた状態(すなわち、本発明の実施形態に係るワイヤーハーネス)を示した断面図である。
【図5】(a)は図3(b)の溶接部に樹脂性チューブを被せた状態を示した断面図、(b)は(a)の樹脂性チューブを径方向に加圧装置によって圧縮した状態(すなわち、本発明の実施形態に係るワイヤーハーネス)を示した断面図である。
【図6】(a)は図3(b)の溶接部に樹脂性チューブを被せた状態を示した断面図、(b)は(a)の樹脂性チューブを径方向に加圧装置によって圧縮した状態(すなわち、本発明の実施形態に係るワイヤーハーネス)を示した断面図である。
【図7】(a)は従来技術に係る複数本の絶縁電線の導体の先端にアーク溶接を施す状態を示した外観斜視図、(b)は(a)の導体の先端に溶接部が形成された状態を示した外観斜視図である。
【図8】図7(b)の溶接部に一部の素線が接続されていない状態を示した外観斜視図である。
【図9】(a)は複数の導体が撚り合わせられる前の状態を示した外観斜視図、(b)は(a)の複数の導体が一体的に撚り合わせられた撚り部を示した外観斜視図である。
【図10】(a)は図9(b)の撚り部の先端にアーク溶接を施す状態を示した外観斜視図、(b)は(a)の撚り部の先端に溶接部が形成された状態を示した外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。尚、以下の説明においては、絶縁電線の導体が露出された側を前側(先端側)、その反対側を後側(後端側)として説明する。図1〜図3においては、図中左下が前側(先端側)および図中右上が後側(後端側)となり、図4〜図6においては図中左が前側(先端側)および図中右が後側(後端側)となる。
【0023】
図1に示されるように、絶縁電線11は、導体12と、この導体12の外周を覆う絶縁被覆14とを有する。導体12は、電気導体となる素線13を一本または2本以上含んでいる。素線13を形成する金属としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金などの導電性に優れる金属が好ましい。導体12は、素線13のみで構成されていても良いし、導体12(絶縁電線11)の曲げなどに対する機械的強度を高めるために、ステンレスからなる補強線を含んでいても良い。
【0024】
この場合、図示されるように複数本(この実施形態では3本)の絶縁電線11が用意されており、各絶縁電線11の絶縁被覆14が皮剥ぎされ、絶縁被覆14の内部にある導体12が所定長さ露出されている。
【0025】
図1に示されるように、各絶縁電線11の導体12は、それぞれの先端が揃うように平行に並べられて(平行に重ねられて)、その後、図2(a)に示されるように、複数の導体12を撚り合わせて撚り部16が形成されている。
【0026】
このとき、図2(a)に示されるように、各導体12を構成する全ての素線13の先端が、撚り部16の先端に配置されていない状態、つまり一部の素線13の先端が撚り部16の先端に一致しない状態になっている。この状態で、アーク溶接を行うと、従来技術で説明した図10(b)に示されるように、撚り部16の先端に位置しない素線13が他の素線13(導体12)と接続されないという溶接不良(接続不良)が発生してしまう。
【0027】
そこで、図2(a)に示されるようなカッター21,22を用いて、撚り部16の途中部位であって素線13が全て配設されている部位を切断する。カッター21,22は、上下に対向するV字状の刃部21a,22aを備えている。各刃部21a,22aはカッター21,22の表面に沿った平面部21b,22bと傾斜状の斜面部21c,22cとから構成されており、撚り部16の切断時には互いの平面部21b,22bが摺動自在となっている。
【0028】
この場合、図示されるように、先端が撚り部16の先端に一致していない素線13が存在する領域Aを避けるようにし、先端が撚り部16の先端に一致していない素線13が存在しない領域Bにおいて撚り部16をカッター21,22によって切断するようにする。図2(b)は、切断後の撚り部16を示している。図示されるように、切断後の撚り部16の切断部位(先端)16aには、全ての素線13の先端が集まっている。
【0029】
その後、図3(a)に示されるように、切断後の撚り部16の切断部位(先端)16aの近傍に、溶接トーチを配置してアーク溶接を行う。
【0030】
溶接トーチは、先細の棒形状に形成されたタングステン電極31を備えている。このタングステン電極31は、図示しない電源ケーブルを介して溶接電源に電気的に接続されている。また、溶接電源は、図示しない接地ケーブルを介して導体12(撚り部16)に電気的に接続されている。タングステン電極31の周囲には、タングステン電極31の先端側で開口した略筒形状のガスノズル32が設けられている。ガスノズル32の基端側は、不活性ガスが充填されたガスボンベ等に接続されており、不活性ガスをその先端から噴射できるようになっている。
【0031】
そして、ガスノズル32から不活性ガスを噴射させつつ溶接電源をONにすると、タングステン電極31と、撚り部16の先端との間にアークが発生する。このアーク発生によって、撚り部16の先端が溶融する。
【0032】
図3(b)に示されるように、撚り部16の先端は溶融して液状になることにより、その表面張力の作用で略球形状に一体になった溶接部18が形成される。これにより各絶縁電線11の導体12どうしは電気的に接続(スプライス)され、ワイヤーハーネス10が得られる。
【0033】
このような溶接部18には、この溶接部18の保護等のための絶縁性のチューブとして、図4に示されるような熱収縮性を有する熱収縮チューブ30が被せられている。図4は、図示しないドライヤー等の加熱手段によって加熱されて収縮した状態の熱収縮チューブ30を示している。この場合、熱収縮チューブ30は、溶接部18の前方から絶縁被覆14の端部までを覆う長さを有している。
【0034】
このように、溶接部18および絶縁被覆14の端部を熱収縮チューブ30で覆うことにより、ワイヤーハーネス10を構成する複数本の絶縁電線11が異なる方向に引っ張られても、その際の引っ張り荷重が熱収縮チューブ30によって溶接部18に加わらないようにすることが可能になっている。これにより、溶接部18の接続信頼性の低下を抑制することができる。尚、熱収縮チューブ30の内側に、熱可塑性の接着層を設けることで、溶接部18や絶縁被覆14の端部への密着性を高めることが可能である。
【0035】
このような溶接部18の保護等のための絶縁性のチューブとしては、図5(a)に示されるような樹脂性チューブ40も適用可能である。この樹脂性チューブ40は、溶接部18の前方から絶縁被覆14の端部までを覆う長さを有している。この場合、樹脂性チューブ40は、図示されるような加圧装置50によって径方向に圧縮されるようになっている。
【0036】
加圧装置50は、上型51と下型52を備えている。上型51と下型52は上下に対向するように配置されている。上型51の下面には、対向する溶接部18を避けるように略中央部が上方に凹んだ凹部51aと、その凹部51aの前後において下方に突出した凸部51b,51cが形成されている。また、下型52の上面には、対向する溶接部18を避けるように略中央部が下方に凹んだ凹部52aと、その凹部52aの前後において上方に突出した凸部52b,52cが形成されている。これら上型51および下型52は、図示しない加圧手段によって昇降自在になっている。
【0037】
そして、図5(b)に示されるように、加圧装置50の上型51および下型52の加圧によって、樹脂性チューブ40を径方向に圧縮する。
【0038】
このとき、樹脂性チューブ40の溶接部18の前後に配置された部分は、この部分に対向する凸部51b,51cおよび凸部52b,52cによって圧縮されるが、樹脂性チューブ40の溶接部18に配置された部分は、この部分に対向する凹部51aおよび凹部52aがあるため樹脂性チューブ40の前部および後部ほどは圧縮されない。これにより、加圧する際の樹脂性チューブ40の溶接部18に配置された部分の破れや裂けが防止されている。
【0039】
このように、溶接部18および絶縁被覆14の端部を樹脂性チューブ40で覆うことにより、ワイヤーハーネス10を構成する複数本の絶縁電線11が異なる方向に引っ張られても、その際の引っ張り荷重が樹脂性チューブ40によって溶接部18に加わらないようにすることが可能になっている。これにより、溶接部18の接続信頼性の低下を抑制することができる。
【0040】
尚、上型51の内部にその上型51を加熱する図示しない加熱手段を設けると共に、下型52の内部にもその下型52を加熱する図示しない加熱手段を設ける構成にしても良い。このような構成にすれば、樹脂性チューブ40に熱を加えながら径方向に圧縮することができるので、溶接部18や絶縁被覆14の端部への密着性を高めることが可能である。この場合、樹脂性チューブ40の内側に、熱可塑性の接着層を設けることで、溶接部18や絶縁被覆14の端部への密着性をより高めることができる。
【0041】
図6(a)は、上述した加圧装置50とは異なる構成の加圧装置60を示している。この加圧装置60は、ゴム等などの軟質素材からなる上型61と、同じくゴム等などの軟質素材からなる下型62を備えている。この場合、上型61の下面61aは平坦状に形成されている。また、下型62の上面62aも平坦状に形成されている。これら上型61および下型62は、図示しない加圧手段によって昇降自在になっている。
【0042】
そして、図6(b)に示されるように、加圧装置60の上型61および下型62の加圧によって、樹脂性チューブ40を径方向に圧縮する。
【0043】
このとき、樹脂性チューブ40の溶接部18の前後に配置された部分は、この部分に対向する上面61aの前方部61bと後方部61cおよび下面62aの前方部62bと後方部62cがやや歪みながら(凹みながら)、それら前方部61bと後方部61cおよび前方部62bと後方部62cによって圧縮される。
【0044】
また、樹脂性チューブ40の溶接部18に配置された部分は、この部分に対向する上面61aの中央部61dおよび下面62aの中央部62dが、上面61aの前方部61bと後方部61cおよび下面62aの前方部62bと後方部62cよりも歪みながら(凹みながら)、それら中央部61dおよび中央部62dによって圧縮されるようになっている。これにより、加圧する際の樹脂性チューブ40の溶接部18に配置された部分の破れや裂けが防止されている。
【0045】
上述した本発明に係る絶縁電線の接続方法およびワイヤーハーネスの製造方法によれば、各絶縁電線11の絶縁被覆14の皮剥ぎによって導体12を所定長さ露出させる工程と、露出された複数の導体12を一体的に撚り合わせて撚り部16を形成する工程と、撚り部16の途中部位であって素線13が全て配設されている部位を切断する工程を備えているので、撚り部の切断部位(先端)16aには全ての素線13の先端が配置されていることになっている。
【0046】
したがって、溶接前において、各導体12を構成する全ての素線13の先端が、撚り部16の先端に配置されていない状態、つまり一部の素線13の先端が撚り部16の先端に一致しない状態が回避されている。これにより、撚り部16の先端に配置されていない素線13が溶接部18において他の素線13(導体12)と接続されないという溶接不良の発生が防止され、各導体12を構成する素線13どうしを確実に溶接により接続することが可能である。
【0047】
また、本発明に係るワイヤーハーネスの製造方法において、溶接の後の溶接部18および各絶縁被覆14の端部を、絶縁性のチューブ30(40)で覆う工程と、覆ったチューブ30(40)を径方向に圧縮する工程を備えていれば、複数本の絶縁電線11が異なる方向に引っ張られても、その際の引っ張り荷重がチューブ30(40)によって溶接部18に加わらないようにすることが可能であると共に、溶接部18をチューブ30(40)によって保護することができる。これにより、溶接部18の接続信頼性の低下を抑制することができる。
【0048】
以上、本発明に係る絶縁電線の接続方法およびワイヤーハーネスの製造方法の実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々なる改変が可能である。例えば、上述した実施形態では、絶縁電線11を3本用いた構成について説明したが、4本以上であっても本発明を適用でき、絶縁電線11の本数は上述した実施の形態には限定されない。
【符号の説明】
【0049】
10 ワイヤーハーネス
11 絶縁電線
12 導体
13 素線
14 絶縁被覆
16 撚り部
16a 切断部位(切断面)
18 溶接部
21,22 カッター
30 熱収縮チューブ
40 樹脂性チューブ
50 加圧装置
51 上型
51a 凹部
51b,51c 凸部
52 下型
52a 凹部
52b,52c 凸部
60 加圧装置
61 上型
61a 下面
61b 前方部
61c 後方部
61d 中央部
62 下型
62a 下面
62b 前方部
62c 後方部
62d 中央部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の素線からなる導体と該導体の外周を覆う絶縁被覆とを有した絶縁電線を複数本用意する工程と、前記各絶縁電線の絶縁被覆の皮剥ぎによって前記導体を所定長さ露出させる工程と、露出された前記複数の導体を一体的に撚り合わせて撚り部を形成する工程と、前記撚り部の途中部位であって前記素線が全て配設されている部位を切断する工程と、前記撚り部の切断部位において前記導体どうしを溶接により接続する工程とを備えることを特徴とする絶縁電線の接続方法。
【請求項2】
前記溶接が、アーク溶接であることを特徴とする請求項1に記載の絶縁電線の接続方法。
【請求項3】
複数本の素線からなる導体と該導体の外周を覆う絶縁被覆とを有した絶縁電線を複数本備えると共に、前記各絶縁電線から露出された前記導体どうしが接続されたワイヤーハーネスの製造方法において、前記各絶縁電線の絶縁被覆の皮剥ぎによって前記導体を所定長さ露出させる工程と、露出された前記複数の導体を一体的に撚り合わせて撚り部を形成する工程と、前記撚り部の途中部位であって前記素線が全て配設されている部位を切断する工程と、前記撚り部の切断部位において前記導体どうしを溶接により接続する工程とを備えることを特徴とするワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項4】
前記溶接が、アーク溶接であることを特徴とする請求項3に記載のワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項5】
前記溶接の後の溶接部および前記各絶縁被覆の端部を、絶縁性のチューブで覆う工程と、覆った前記チューブを径方向に圧縮する工程を備えることを特徴とする請求項3または4に記載のワイヤーハーネスの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−134103(P2012−134103A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287378(P2010−287378)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】