説明

絹ペプチドを有効成分とするNF−κB活性阻害剤及び経口組成物

【課題】食品素材として利用することができる安全性の高い物質であって、NF-κB活性阻害作用を有する物質の提供。
【解決手段】本発明は、絹ペプチド、特にリポソーム化された絹ペプチド、を有効成分とするNF-κB活性阻害剤、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血糖、耐糖能異常、高脂血症、高中性脂肪血症、高コレステロール血症、高血圧、肥満又は動脈硬化に起因する血管障害の予防又は改善作用を有する有用な経口組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絹ペプチドを含有するNF-κB活性阻害剤、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血糖、耐糖能異常、高脂血症、高中性脂肪血症、高コレステロール血症、高血圧、肥満又は動脈硬化に起因する血管障害の予防又は改善作用を有する有用な経口組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
絹はフィブロイン及びセリシンを主成分とするタンパク質で構成され、その分解物である絹ペプチドは可食性であることが知られている(例えば特許文献1、2参照)。
【0003】
糖尿病はきわめて特徴的な血管細胞の変化をきたし、内皮細胞が増え(angiogenesis)、周皮細胞が減る(pericyte loss)。これは、網膜、神経、腎、心臓、歯周などの微小血管、細小血管などで起こることが知られている。糖化タンパク質(AGE)はタンパク質が非酵素的に糖化・修飾されることによって生ずる分子の総称で、ヒト血管内で加齢に伴ってAGEが生成・蓄積されることが知られている。最近、AGEが内皮細胞の増殖を促進させ、周皮細胞の増殖を遅延させることから、糖尿病血管症の憎悪因子として大きな働きをしていることが解明された。現在、AGEが血管細胞に障害を引き起こす作用機序については、二つのメカニズムが知られている。一つは、細胞外マトリックスタンパク質、膜タンパク質、あるいは細胞内タンパク質が糖化修飾される結果、これらのタンパク質の機能とそれに依存する細胞機能が破綻することである。もう一つは、AGEをリガンドとするレセプターが引き起こす細胞応答であり、これまでRAGE(Receptor for AGE)、MSR-A、LOX-1などいくつかのAGEレセプターが報告されている。中でもAGE-RAGE系は、RAGEノックアウトマウスを使った研究などから糖尿病血管症の憎悪に深く関わっていることが証明されている。
【0004】
一方、AGEが示す血管障害にはNF-κBが深く関与していることが報告されている。AGEがRAGEを介して細胞内酸化ストレスを増強し、酸化ストレス依存的にRas/MAPキナーゼ経路を介して転写因子NF-κB(Nuclear Factor-κB)が活性化されると考えられている。NF-κBは免疫グロブリンκのL鎖遺伝子が成熟B細胞特異的に発現するために必要なエンハンサー領域のB断片に結合する転写因子として1986年に初めて同定された。その後、不活性型NF-κBが、I-κBと称されるタンパク質と複合体を形成して細胞質に局在していること、そして、細胞外からの活性化刺激によりI-κBの解離が起こり、NF-κBが核へ移行して遺伝子発現を誘導することが明らかとなった。したがって、NF-κBは転写因子であると同時に細胞質と核とを結ぶシグナル伝達因子でもある。NF-κBの活性化は、炎症性サイトカインであるIL-1、TNF-α産生などを引き起こし、さらに、血管内皮、血管平滑筋が活性化、血管内皮と血管平滑筋の増殖、炎症反応の亢進が認められ、また、血管内皮細胞上のVCAM-1、ICAM-1などの接着分子の発現やIL-8、MCP-1などの走化性因子の産生によって、白血球(単球や好中球)の誘導、白血球の血管内皮細胞への接着、そして血管内皮細胞間の遊出、炎症巣への浸潤が起こり、血管硬化性の病変が形成される。したがって、血管内皮細胞においてNF-κBの活性化を抑制する物質は、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血糖、耐糖能異常、高脂血症、高中性脂肪血症、高コレステロール血症、高血圧、肥満又は動脈硬化に起因する血管障害の予防、治療、進行遅延のためのキー物質となる。
【0005】
NF-κBの活性を阻害する物質としては抗血栓剤のシロスタゾールが知られているが、溶血剤との併用による副作用として、出血性有害事象がしられており、特に糖尿病や耐糖能異常などの患者には利用されがたい。
【特許文献1】特開平02−177864号公報
【特許文献2】特開平11−139986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血糖、耐糖能異常、高脂血症、高中性脂肪血症、高コレステロール血症、高血圧、肥満、動脈硬化等に起因する血管障害の予防又は改善を目的とした、NF-κBの活性を阻害し、副作用のおそれの少ない物質の開発が期待されていた。したがって、本発明は食品素材として利用することができる安全性の高い物質であって、NF-κB活性阻害作用を有する物質の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、NF-κBの活性化を阻害する物質のスクリーニングを行い、絹ペプチド及びそのリポソーム化物がNF-κB活性を強く阻害することを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、下記のNF-κB活性阻害剤及び経口組成物に関するものである。
項1.絹ペプチドを含有するNF-κB活性阻害剤。
項2.さらにリン脂質を含有する項1に記載のNF-κB活性阻害剤。
項3.絹ペプチドがリポソーム化されたものである項2に記載のNF-κB活性阻害剤。
項4.項1〜3のいずれかのNF-κB活性阻害剤を含有する経口組成物。
項5.絹ペプチドを有効成分として含有するメタボリックシンドローム、糖尿病、高血糖、耐糖能異常、高脂血症、高中性脂肪血症、高コレステロール血症、高血圧、肥満又は動脈硬化に起因する血管障害の予防又は改善用経口組成物。
項6.さらにリン脂質を含有する項5に記載の経口組成物。
項7.絹ペプチドがリポソーム化されたものである項6に記載の経口組成物。
項8.さらにレスベラトロール類、コラーゲン、コラーゲン誘導体及びn-3系不飽和脂肪酸からなる群から選択される少なくとも1種を含有する項4〜7のいずれかに記載の経口組成物。
項9.食品である項4〜8のいずれかに記載の経口組成物。
項10.医薬である項4〜8のいずれかに記載の経口組成物。
項11.絹ペプチドが50mg〜1500mg/日の量にて摂取されることを特徴とする項4〜10のいずれかに記載の経口組成物。
項12.項9の食品経口組成物を製造するための絹ペプチドの使用。
【0009】
本発明においては絹ペプチドが血管内皮細胞におけるNF-κBの活性化を抑制する。NF-κBの活性化を抑制することにより、RAGEを介したAGEの細胞内酸化ストレスの増強が引き起こす血管障害を抑制できる。このため、本発明は、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血糖、耐糖能異常、高脂血症、高中性脂肪血症、高コレステロール血症、高血圧、肥満、動脈硬化等に起因する血管障害の予防又は改善に有用である。
【0010】
本発明のNF-κB活性阻害剤及び経口組成物は絹ペプチドを有効成分とする。絹ペプチドとしては可食性のものであれば特に制限なく使用できる。絹ペプチドは市販のものも使用できる。また例えば、特開平11−139986号に記載の方法により製造したものも用いることができる。すなわち、原料として絹から調製した絹フィブロイン蛋白質又は絹セリシン蛋白質を用い、この原料に酸、アルカリ及び酵素による分解によって製造できるものである。好ましくは加熱溶解させた絹を蛋白分解酵素により分解し、ペプチド化することにより得られるものを用いることができる。
【0011】
好ましい絹ペプチドの分子量は300〜15,000であり、より好ましくは300〜5,000である。また、絹ペプチドは、そのアミノ酸組成において、グリシン及びアラニンの含有率が高いものが好ましい。例えば、グリシン及びアラニンの含有率が各々10〜80%が好ましく、20〜70%がより好ましい。
【0012】
本発明のNF-κB活性阻害剤及び経口組成物は、必須である絹ペプチドに加えてさらにリン脂質を含有することが好ましい。リン脂質を配合することによって、体内への吸収が促進される効果が期待できる。NF-κB活性阻害剤におけるリン脂質の配合量は通常1〜80重量%程度、好ましくは3〜65重量%程度、より好ましくは5〜50重量%程度である。また、経口組成物におけるリン脂質の配合量は通常1〜75重量%程度、好ましくは3〜60重量%程度、より好ましくは5〜45重量%程度である。
【0013】
リン脂質としては、例えばホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、スフィンゴミエリン、大豆レシチン、ひまわりレシチン、コーンレシチン、綿実油レシチン、卵黄レシチン、卵白レシチン、ナタネレシチン、ピーナッツレシチンなどの天然レシチンおよび、水素添加レシチン、これらのリン脂質にポリエチレングリコールや、アミノグリカン類を導入したリン脂質誘導体などが挙げられる。これらリン脂質は1種または2種以上を組み合わせて使用でき、これらのうち、大豆レシチン、卵黄レシチン、ひまわりレシチン、部分的に水素添加した大豆レシチン、部分的に水素添加した卵黄レシチン、部分的に水素添加したひまわりレシチンが好ましい。
【0014】
本発明において、リン脂質は、リポソームの形態で配合されることが好ましい。例えば、リポソーム化された絹ペプチドが好ましい。リポソーム化された絹ペプチドとしては、絹ペプチドがリポソーム膜に囲まれる空間に封入されていることが好ましいが、絹ペプチドがリポソーム膜構成成分として含まれていても良いし、多重膜リポソームを構成する多重膜の間に含まれていても良いし、リポソーム膜のうちの最も外側の膜に絹ペプチドが付着又は結合する形態で含まれていても良い。
【0015】
リポソームはリン脂質を主体とした脂質を十分量の水で水和することにより形成される二分子膜を有する脂質小胞体である。リポソームは水溶性薬物をその内水層に、脂溶性薬物を脂質二重層へ取り込むことができ、薬物のターゲティング、徐放化、副作用の軽減などを目的にDDS製剤の薬物運搬体としてその応用が試みられている。また、リポソームは生体膜の成分から構成されているため安全性が高いことも知られている。
【0016】
一般的に、リポソームは脂質二重層の数に基づいて分類され、多重膜リポソーム(MLV)と一枚膜リポソームに分類される。一枚膜リポソームは、そのサイズに応じて、更にSUV(small unilamella vesicle)、LUV(large unilamella vesicle)、GUV(giant unilamella vesicle)などに分類される。本発明ではこれらのいずれも使用できる。好ましいのはMLVである。本発明では、リポソームの大きさは、通常30〜1000nm、好ましくは30〜600nm、より好ましくは50〜400nmである。
【0017】
リポソーム化された絹ペプチドは、従来の方法により製造することができる。例えば、所望量のレシチン及び必要に応じて所望量のステロールを、例えばエタノールなどの適当な有機溶媒で可溶化し、減圧下に溶媒を除去し、膜脂質を作成後、これに絹ペプチドや任意の生理活性物質を含む水溶液を添加して、例えば、1000〜3000rpm程度で2〜5分間程度撹拌して、リポソーム懸濁液を調製することにより、絹ペプチドを封入したリポソームを得ることができる。
【0018】
また、この方法とは別に、所望量のレシチン及び必要に応じて所望量ステロールを少量のエタノールに溶解後、水溶液又は緩衝液に分散して予備乳化を行った後、高圧で分散させて脂質二重層を形成させてリポソーム懸濁液を調製することによっても絹ペプチドを封入したリポソームを得ることができる。
【0019】
得られた懸濁液に対しては、必要に応じて、リポソーム外液中の絹ペプチドを除去する操作、例えば懸濁液を濾過後、得られた濾液を透析する操作を行ってもよい。
【0020】
リポソームの懸濁液は、液状のままでも使用できるが、凍結乾燥した乾燥物として使用することもできる。リポソームは、その乾燥物を錠剤やカプセル化したものをはじめ、様々な経口摂取に適した形態とすることが可能である。
【0021】
リポソーム化された絹ペプチドにおける絹ペプチドの含有量は通常、10〜99重量%程度、好ましくは20〜95重量%程度、より好ましくは30〜90重量%程度である。
【0022】
リポソームに使用するレシチンとしては前記例示のリン脂質を使用することができる。レシチンはホスファチジルコリン又は1,2−ジアシルグリセロール 3−ホスホコリンとも称され、一般的に、グリセロールの1位及び2位に脂肪酸が結合している。本発明では、上記例示のレシチンに加えて、1位及び2位の両方又は片方に炭素数12〜24の不飽和脂肪酸が結合しているレシチンを使用することが好ましく、1位に炭素数12〜24の飽和脂肪酸、2位に炭素数12〜24の不飽和脂肪酸が結合しているレシチンを使用することが特に好ましい。ここで、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸は直鎖状及び分枝状のいずれでもよい。好ましい不飽和脂肪酸としては、炭素数16〜18の不飽和脂肪酸を使用できる。特に2位にオレイン酸、リノール酸が多く結合したレシチンが好ましい。具体的には、卵黄レシチン、大豆レシチン、ひまわりレシチンが好ましい。
【0023】
本発明のリポソームは、レシチンに加えステロールを含有することが好ましい。ステロールとしては、コレステロール、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、デスモステロール、ジヒドロコレステロールなどの動物由来のステロール;β−シトステロール、カンペステロール、スティグマステロール、ブラシカステロール、エルゴステロール、エルゴスタディエノール、シトステロール、ブラシカステロールなどの植物由来のステロール(フィトステロール);チモステロール、エルゴステロールなどの微生物由来のステロール等が挙げられ、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。これらの中でも、コレステロール又はフィトステロールが好ましく用いられる。
【0024】
リポソームにおけるレシチンとステロールのモル比は、55:45〜95:5程度が好ましく、60:40〜90:10程度がより好ましく、75:25〜85:15程度が最も好ましい。モル比がこれらの範囲にあるとリポソーム膜の安定性が向上する。
【0025】
リポソーム化された絹ペプチドにおけるレシチンの含有量は、通常1〜80重量%程度、好ましくは3〜65重量%程度、より好ましくは5〜50重量%程度である。
【0026】
リポソーム化された絹ペプチドにおけるステロールの含有量は、通常0〜40重量%程度、好ましくは0.1〜30重量%程度、より好ましくは1〜20重量%程度である。
【0027】
レシチン又はステロールの含有量は既知の方法で測定できる。例えば、レシチンの含有量はFiske-Subbarow法など、ステロールの含有量はHPLC、比色法などによって定量できる。
【0028】
さらに、リポソーム化された絹ペプチドの表面をコーティングすることができ、このコーティング物も有効成分として利用できる。好ましいコーティングとしては、硫酸基を含有する多糖類によるコーティングがあげられる。硫酸基含有多糖類としては、フコイダン、カラギーナン、寒天、ヘパリンなどが挙げられる。また、該硫酸基含有多糖類としては、硫酸基を含まない多糖を硫酸化したものも包含され、例えば、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸などであってもよい。
【0029】
硫酸基含有多糖類としては、分子量が5000〜300000程度のものが好ましく用いられる。これらの硫酸基含有多糖類の中でもフコイダン及びカラギーナンを好ましく用いることができ、特にフコイダンが好ましい。
【0030】
硫酸基含有多糖類の使用量は、例えば、リポソームに含有されるレシチン100重量部に対して、10〜500重量部程度が好ましく、20〜200重量部程度がより好ましい。
【0031】
コーティングは、例えば、リポソーム化された絹ペプチドを含む懸濁液に、硫酸基含有多糖類を加え、1000〜3000rpm程度で2〜5分間程度撹拌することにより行うことができる。なお、1つのコーティング膜の中に複数のリポソームが含まれていてもよい。
【0032】
リポソームが硫酸基含有多糖類でコーティングされていることは、例えば、リポソーム溶液のゼータ電位が、硫酸基含有多糖類を添加して撹拌することにより変化することにより確認できる。
【0033】
リポソーム化された絹ペプチドにはレシチン、ステロール以外にも必要に応じて、トコフェロール、アスコルビン酸などの抗酸化剤、乳酸、クエン酸などの有機酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミンなどの脂質、キトサン、フコイダン、ヒアルロン酸などの天然高分子、ポリエチレングリコール、カルボキシビニルポリマーなどの合成高分子、トレハロース、ラクチュロース、マルチトールなどの糖質、グリセリンなどのポリオール等を加えることができる。
【0034】
また、リポソーム化された絹ペプチドには、必要に応じて、絹ペプチドに加えて、様々な物質を内容物として封入することができる。例えば、トルブタミド、アセトヘキサミド、トラザミド、グリクロピラミド、グリブゾール、グリベンクラミド、グリクラジド、グリメピリドなどのスルホニル尿素薬;塩酸メトホルミン、塩酸ブホルミンなどのビグアナイド薬;アカルボース、ボグリボースなどのα−グルコシダーゼ阻害剤;ピオグリタゾンなどのチアゾリジン誘導体;ナテグリニドなどのフェニールアラニン誘導体;インスリン及びインスリン誘導体(ノボリンR、ヒューマリンR、モノタード等);プラバスタチンナトリウム、シンバスタチンなどのスタチン系薬剤(HMG-CoA還元酵素阻害薬);クロフィブラート、ベザフィブラート、クロフィブラートアルミニウム、シンシブラート、クリノフィブラートなどのフィブラート、ロサルタン、カンデサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、オルメサルタンなどのアンジオテンシンII受容体拮抗薬(AT1 receptor blocker:ARB);マレイン酸エナラプリル、セタプリル、カプトリル、塩酸イミダプリル、シラザプリル、塩酸デラプリル、リシノプリル、塩酸キナプリルなどのアンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACE阻害薬)などである。
【0035】
本発明のNF-κB活性阻害剤における絹ペプチドの含有量は、通常10〜99重量%程度、好ましくは20〜95重量%程度、より好ましくは30〜90重量%程度である。なお、リポソーム化された絹ペプチドを使用する場合は、リポソームに含まれる絹ペプチドの量が上記の範囲となるようにすればよい。
【0036】
また、本発明の経口組成物における絹ペプチドの含有量は、組成物の形態等に応じて適宜設定されるが、通常0.5〜95重量%程度、好ましくは0.8〜80重量%程度、より好ましくは1〜80重量%程度である。
【0037】
本発明の経口組成物には、絹ペプチドに加え、レスベラトロール類、コラーゲン、コラーゲン誘導体及びn-3系不飽和脂肪酸からなる群から選択される少なくとも1種を配合することが好ましい。経口組成物におけるこれらの好ましい配合量は0.8〜80重量%、より好ましい配合量は1〜80重量%である。これらを配合することによって、炎症抑制効果、血管障害抑制効果等が期待できる。
【0038】
レスベラトロール類の例は、レスベラトロール、ラポンチシン、ポリダティン、3,4',5-スチルベントリオール-4'-グルコシド、2,3,5,4'-スチルベンテトラオール-2-グルコシド、スチルバミジン、4-メトキシスチルベン、ε-ビニフェリン、α-ビニフェリンなどであり、好ましくはレスベラトロール、ポリダティン、ε-ビニフェリン、α-ビニフェリンなどである。これらのレスベラトロール類は、タデ科植物、ブドウ科植物、バイケイソウ、桑、落花生などの抽出物に含まれており、本発明の組成物にレスベラトロール類を配合する場合には、このような抽出物を配合することもできる。
【0039】
コラーゲンは下等生物からヒトに至るまで非常に多くの生物に存在しており、本発明で使用されるコラーゲンはその起源生物には限定されない。例えば、ウシ,ブタ,ヒツジ,ヤギなどの哺乳類、ニワトリ,シチメンチョウなどの鳥類、マグロ,カツオ,フナ,コイ,ウナギ,サメ,エイなどの魚類、イカ,タコなどの軟骨動物類、節足動物類などの組織から得られるコラーゲンを用いることができる。また、遺伝子組換動物を用いて生産させたコラーゲンも使用する事ができる。
【0040】
コラーゲンの種類としては、いずれの種類であってもよいが、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲンが好ましい。
【0041】
コラーゲン誘導体としては、これらコラーゲンを変性、加水分解、修飾などの処理により得られる物質が挙げられる。中でもコラーゲンの加水分解物が好ましく、その平均分子量が500〜10,000程度、1,000〜5,000程度、さらには1,300〜4,000程度であることが望ましく、1,500〜4,000程度であることが最も好ましい。
【0042】
n-3系不飽和脂肪酸としては、α−リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、オクタデカテトラエン酸、エイコサテトラエン酸、ドコサペンタエン酸などが挙げられ、好ましくはα−リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などである。n-3系不飽和脂肪酸は、シソ油、アマニ油、魚油などに含まれたものを使用でき、本発明の組成物にn-3系不飽和脂肪酸を配合する場合には、これら油を配合することもできる。
【0043】
本発明の経口組成物は、好ましくは医薬用又は食品用である。
【0044】
本発明の食品経口組成物には、絹ペプチドに、必要に応じてその食品の形態に応じた可食性担体、食品素材、食品添加物などと組み合わせて、通常の方法により調製することができる。食品の形態としては、飲料などの液状の食品、錠剤、顆粒、チュアブルタブレットなどの固形の食品等として利用することができる。また、ヨーグルトなどの半固形の食品としても利用することができる。具体的な食品の形態としては、ジュース、清涼飲料水、ティー等の液体飲料;粉末ジュース、粉末スープ等の粉末飲料;チョコレート、キャンディー、チューインガム、アイスクリーム、ゼリー、クッキー、ビスケット、コーンフレーク、チュアブルタブレット、フィルムシート、ウエハース、グミ、煎餅、饅頭等の菓子類;ドレッシング、ソース等の調味料;パン類、麺類、こんにゃく、練り製品(かまぼこ等)、ふりかけ、口腔用スプレー、トローチ等が挙げられる。
【0045】
食品経口組成物の担体として例えば、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール等の糖アルコール類、結晶セルロース、乳糖、白糖、ブドウ糖、デンプン、炭酸塩類、リン酸塩類等の賦形剤、ゼラチン、アルギン酸、キサンタンガム、セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カラギーナン、プルラン、ペクチン等の粘結剤、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、酵素処理レシチン、酵素分解レシチン、サポニン等の乳化剤、アスコルビン酸、トコフェロール等の抗酸化剤、乳酸、クエン酸、グルコン酸、グルタミン酸等の酸味料、ビタミン類、アミノ酸類、乳酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩などの強化剤、二酸化ケイ素等の流動化剤、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸塩類等の滑沢剤、ラクチュロース、ラフィノース、フルクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖等のオリゴ糖、難消化性デキストリン、サイリウム、ビートファイバー等の食物繊維、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、グリシルリチン等の甘味料、ハッカ油、ユーカリ油、ケイヒ油、ウイキョウ油、チョウジ油、オレンジ油、レモン油、ローズ油、フルーツフレーバー、ミントフレーバー、ペパーミントパウダー、dl−メントール、l−メントール等の香料を使用することができる。また、添加物として、乳酸菌などの生菌又は死菌、その他のプロバイオティクス素材、プレバイオティクス素材、ビタミン、生薬、ハーブ等の植物そのものまたは抽出物を配合しても良い。
【0046】
本発明の食品経口組成物はメタボリックシンドローム、糖尿病、高血糖、耐糖能異常、高脂血症、高中性脂肪血症、高コレステロール血症、高血圧、肥満、動脈硬化等に起因する血管障害の予防又は改善のための健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養機能食品、病者用食品等の用途に用いることができる。また、本発明の食品組成物は、絹ペプチドを有効成分とし、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血糖、耐糖能異常、高脂血症、高中性脂肪血症、高コレステロール血症、高血圧、肥満又は動脈硬化に起因する血管障害の予防又は改善のために用いられる旨の表示、或いは、血糖値が高めの者、コレステロールが高めの者、中性脂肪が高めの者、血圧が高めの者、肥満の者、ウエストが太めの者、又は糖尿病の合併症が気になる者に用いられる旨の表示を付した食品とすることができる。
【0047】
また、本発明の経口組成物は、絹ペプチド及び必要に応じて薬学的に許容される担体を含有し、液剤、錠剤、顆粒剤、細粒剤、粉剤などの固形剤或いは当該液剤又は固形剤を封入したカプセル剤等の経口投与可能な医薬組成物として使用できる。薬学的に許容される担体としては、賦形剤、希釈剤等が挙げられる。また、経口医薬組成物は香料等の各種添加剤を含むこともできる。このような経口医薬組成物はメタボリックシンドローム、糖尿病、高血糖、耐糖能異常、高脂血症、高中性脂肪血症、高コレステロール血症、高血圧、肥満又は動脈硬化に起因する血管障害の予防又は改善剤として用いることができる。
【0048】
担体として例えばマルチトール、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸、メチルセルロース、グリセリン、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、タルク、リン酸一水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、硫酸カルシウム、乳酸カルシウム、カカオ脂等の賦形剤、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、クロスポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、結晶セルロース、粉末セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、エチルセルロース、リン酸カリウム、アラビアゴム末、プルラン、デキストリン、トウモロコシデンプン、アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、ゼラチン、キサンタンガム、トラガント、トラガント末、マクロゴール等の結合剤、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖等の崩壊剤、白糖、ステアリン酸、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤、第4級アンモニウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤、グリセリン、デンプン等の保湿剤、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール等の滑沢剤等を使用できる。更に錠剤は必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フイルムコーティング錠、二重錠、多層錠等とすることができる。カプセル剤は有効成分を上記で例示した各種の担体と混合し、硬質ゼラチンカプセル、軟質カプセル等に充填して調製される。
【0049】
液体製剤は水性又は油性の懸濁液、溶液、シロップ、エリキシル剤であってもよく、通常の添加剤を用いて常法に従い、調製される。
【0050】
着香剤または香料としては、例えば、ハッカ油、ユーカリ油、ケイヒ油、ウイキョウ油、チョウジ油、オレンジ油、レモン油、ローズ油、フルーツフレーバー、ミントフレーバー、ペパーミントパウダー、dl−メントール、l−メントール等が挙げられる。
【0051】
本発明のNF-κB活性阻害剤及び経口組成物の摂取量は、成人一人1日あたり、絹ペプチドの摂取量が、通常50〜1500mg程度、好ましくは100〜1000mg程度となる量である。また、本発明のNF-κB活性阻害剤及び経口組成物の好ましい投与対象は耐糖能異常(IGT)にある者、耐糖能異常により誘発される病状をもつ者などである。このような投与対象は、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血糖、耐糖能異常、高脂血症、高中性脂肪血症、高コレステロール血症、高血圧、肥満、動脈硬化等に起因する血管障害を有しているか、又は将来有する可能性が高い。なお、耐糖能異常とは、WHOの糖尿病診断基準に取り入れられた分類で、空腹時血糖値が126mg/dl未満、75g糖負荷試験(OGTT)2時間値が140-199mg/dlの群を指し、糖尿病型にも正常型にも属さない症状をいう。
【0052】
本発明のNF-κB活性阻害剤及び経口組成物は有効成分である絹ペプチドのNF-κB活性阻害作用を利用する分野において利用でき、例えば、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血糖、耐糖能異常、高脂血症、高中性脂肪血症、高コレステロール血症、高血圧、肥満、動脈硬化等に起因する血管障害の予防又は改善に有用である。血管障害は、動脈硬化や血管の構造異常、奇形などによって、全身の血管で生じる。本発明は予防又は改善の対象としてこれらの血管障害を包含し、血管障害の中でも特に脳、冠動脈、下肢動脈などの動脈硬化、神経組織、網膜、腎組織、歯周組織などにおける細小血管障害に有効である。糖尿病に起因する血管障害は、糖尿病合併症、例えば網膜症、腎症、神経症、白内障、冠動脈疾患、脳梗塞、心筋梗塞、狭心症、足壊疽、歯肉炎、歯周病などを包含する。
【0053】
なお、メタボリックシンドロームとは肥満、高血圧、循環器病などの生活習慣病の発症に密接に関係しており、高カロリー高脂肪の食事と運動不足が原因で、肥満、高血糖、高中性脂肪血症、高コレステロール血症、高血圧などの危険因子が重複した状態であり、これらの危険因子が複合することで、糖尿病、心筋梗塞、脳卒中などの発症リスクが高まるとされている。2005年4月には、メタボリックシンドロームの診断基準が公表されている。本診断基準によれば必須項目となる内臓脂肪蓄積(内臓脂肪面積100平方cm以上)のマーカーとして、ウエスト周囲径が男性で85cm以上、女性で90cm以上を「要注意」とし、その中で次の(1)〜(3)の3項目のうち2項目以上に該当する場合をメタボリックシンドロームと診断する。(1)血清脂質異常(トリグリセリド値150mg/dl以上又はHDLコレステロール値40mg/dl未満)、(2)血圧高値(最高血圧130mmHg以上又は最低血圧85mmHg以上)、(3)高血糖(空腹時血糖値110mg/dl以上)。
【発明の効果】
【0054】
本発明のNF-κB活性阻害剤及び経口組成物はNF-κBの活性を阻害する作用を有し、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血糖、耐糖能異常、高脂血症、高中性脂肪血症、高コレステロール血症、高血圧、肥満、動脈硬化等に起因する血管障害の予防又は改善に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
以下に実施例及び試験例を示して、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0056】
製造例1:リポソームの調製
絹ペプチド封入リポソームの調製
薄膜水和法により、絹ペプチドを封入したリポソーム製剤を調製した。卵黄レシチンとフィトステロールを、モル比が7:3となるように量りとり(卵黄レシチン63.0mg、フィトステロール14.55mg)、これにエタノール6mlを加えて溶解した。この溶液からロータリーエバポレーターにて溶媒留去し、薄膜を形成させた。この薄膜に絹ペプチド180mgを溶解させた6mlのクエン酸緩衝液(pH6.69)を加え、ボルテックスミキサーにより2000rpmにて3分間程度撹拌を行い、リポソーム懸濁液を得た。この懸濁液を0.2μmの孔径のポリカーボネート膜を用いて濾過し、絹ペプチド封入リポソームを得た。このリポソームを1%リンタングステン酸処理によりネガティブ染色し、乾燥後、電子顕微鏡で観察すると、多重膜リポソームが形成されていることが確認された。
【0057】
実施例1:血管内皮細胞におけるNF-κB活性阻害作用
絹ペプチド(エディブルシルク、一丸ファルコス株式会社製、分子量約1000)及びシロスタゾール(ポジティブコントロール)が血管内皮細胞のNF-κB活性に与える作用について試験した。なお、TNF-αはNF-κB誘導因子であり、これを細胞に投与すると細胞がNF-κBを活性化するようになる。
下記のFGF(fibroblast growth factor)含有MCDB131培地で継代数3-5に継代した正常ヒトさい帯静脈血管内皮細胞(HUVECs)を60mmコラーゲンコートディッシュに2×105細胞/ディッシュの濃度で細胞懸濁液6mLを植込み、37℃、5%COの条件下で2日間培養した(前培養)。
【0058】
培地を除去し、下記の被検物質を20μg/mL濃度で含むFGF不含MCDB131培地を6mL添加した。ただし、コントロールは培地のみとし、シロスタゾールは30mg/mlの濃度でDMSOに溶解し、4μlを培地6mlに添加することで、シロスタゾールを20μg/ml濃度で含む培地を調製した。
【0059】
2時間培養後に、TNF-α投与群と非投与群とに分けるため、投与群には、培地に10μg/mLのTNF-αを3μL投与し、TNF-α濃度5ng/mLとなるようした。さらに2時間培養後、培地を除去し、冷PBS(-)5mLを添加し、セルスクレーバーにてスピッツ管に細胞を回収した。このスピッツ管を遠心(1500rpm、10分、4℃)後、上清を除去し、下記の細胞溶解液80μL(TNF-α非投与群)又は240μL(TNF-α投与群)を添加、懸濁後、1.5mLエッペンチューブに移し、氷上で10分間放置した。その後、遠心(12000rpm、20分、4℃)し、上清を新しい1.5mL エッペンチューブに移し、NF-κB活性の測定まで−80℃保存した。NF-κB活性は、DNA‐Binding assay法であるTrans-AM NF-κBキット(NF-κB p50, Active Motif社)を用い測定した。測定結果を図1に示した。
【0060】
<培地>
FGF含有MCDB131培地
MCDB131培地(GIBCO社製)にFGF、FBS、グルタミン及び抗生物質を濃度が各々2ng/mL、10%、10mM及び1%となるように加えた培地。
FGF不含MCDB131培地
FGFを含まないことを以外はFGF含有MCDB131培地と同じ組成の培地。
<被検物質>
なし(コントロール)
絹ペプチド
シロスタゾール
<細胞溶解液>
細胞溶解液はTrans-AM NF-κBキット中の次の試薬を混合して調製した。
Lysis Buffer[20mM Hepes(pH7.5),350mM NaCl,20% glycerol,1% lgepal-CA630,1mM MgCl2,0.5mM EDTA,0.1mM EGTA];2955μL
DTT(1M Dithiothreitol);15μL
Protease inhibitor cocktail(Proprietary mix);30μL
【0061】
陽性対照であるシロスタゾール(p=0.002)及び絹ペプチド(p=0.0008)において、TNF-α刺激によるHUVECsのNF-κB活性を抑制した。NF-κB活性はコントロールを100%とした時、シロスタゾールで87%(阻害率13%)、絹ペプチドで68%(阻害率32%)であった。
【0062】
実施例2
被検物質及びコントロール溶液として下記のものを用い、被験物質濃度が20μg/ml濃度となるように調整した培地(4μl→6ml)を添加したことを除き、実施例1と同様の方法により細胞の培養、回収及びNF-κB活性の測定を行った。測定結果を図2に示した。
<被検物質及びコントロール溶液>
クエン酸緩衝液(pH 6.7)
絹ペプチド含有クエン酸緩衝液(pH 6.7、絹ペプチド30mg/ml含有)
絹ペプチド封入リポソーム含有クエン酸緩衝液(pH 6.7、絹ペプチド30mg/ml含有)
DMSO
シロスタゾールDMSO溶液(30mg/ml)
【0063】
陽性対照であるシロスタゾール(p=0.1)、絹ペプチド(p=0.008)、絹ペプチド封入リポソーム(p=0.002)において、TNF-α刺激によるHUVECsのNF-κB活性を抑制した。NF-κB活性はコントロール(DMSO又は緩衝液)を100%とした時、シロスタゾールで94%(阻害率6%)、絹ペプチドで95%(阻害率5%)、絹ペプチド封入リポソームで60%(阻害率40%)であった。
【0064】
製造例2:錠剤
下記処方に基づき常法により錠剤を製造した。
卵黄レシチン 5.0重量%
植物性ステロール 0.8重量%
絹ペプチド 15.0重量%
結晶セルロース 76.0重量%
ショ糖脂肪酸エステル 3.2重量%
合計 100重量%
【0065】
製造例3:錠剤
下記処方に基づき常法により錠剤を製造した。
絹ペプチド 30.0重量%
キシリトール 22.0重量%
マルチトール 36.0重量%
フルクトオリゴ糖 10.0重量%
ステアリン酸マグネシウム 1.0重量%
香料 1.0重量%
合計 100重量%
【0066】
製造例4:顆粒剤
下記処方に基づき常法により顆粒剤を製造した。
大豆レシチン 4.0重量%
植物性ステロール 1.0重量%
絹ペプチド 20.0重量%
乳糖 30.0重量%
デンプン 43.0重量%
キサンタンガム 1.0重量%
アスコルビン酸 0.3重量%
香料 0.7重量%
合計 100重量%
【0067】
製造例5:飲料
下記処方に基づき常法により飲料を製造した。
絹ペプチド 1.0重量%
クエン酸 0.5重量%
クエン酸ナトリウム 0.05重量%
果糖・ブドウ糖液糖 10.0重量%
ビタミンC 0.5重量%
香料 0.5重量%
精製水 残部
合計 100重量%
【0068】
製造例6:カプセル剤
下記処方に基づき常法によりカプセル剤を製造した。
ひまわりレシチン 4.0重量%
コレステロール 0.8重量%
絹ペプチド 17.0重量%
DHA(ドコサヘキサエン酸) 1.0重量%
微結晶セルロース 49.0重量%
ショ糖脂肪酸エステル 3.2重量%
ハードカプセル 25.0重量%
合計 100重量%
【0069】
製造例7:飲料
下記処方に基づき常法により飲料を製造した。
ひまわりレシチン 0.2重量%
絹ペプチド 1.0重量%
ブドウ葉エキス 0.5重量%
(レスベラトロール類含有)
リンゴ透明濃縮果汁 10.0重量%
果糖・ブドウ糖液糖 5.0重量%
クエン酸結晶 0.2重量%
香料 0.2重量%
L−アスコルビン酸 0.1重量%
精製水 残部
合計 100重量%
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のNF-κB活性阻害剤及び経口組成物は有効成分である絹ペプチドのNF-κB活性阻害作用を利用する分野において利用でき、例えば、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血糖、耐糖能異常、高脂血症、高中性脂肪血症、高コレステロール血症、高血圧、肥満又は動脈硬化に起因する血管障害の予防又は改善に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】実施例1で測定された各種被検物質のNF-κB活性を示すグラフである。縦軸はNF-κB(p50)活性を示し、横軸は被検物質名を示し、(−)はTNF-α非投与群を示し、(+)TNF-α投与群を示す。
【図2】実施例2で測定された各種被検物質のNF-κB活性を示すグラフである。縦軸はNF-κB(p50)活性を示し、横軸は被検物質名を示し、(−)はTNF-α非投与群を示し、(+)TNF-α投与群を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絹ペプチドを含有するNF-κB活性阻害剤。
【請求項2】
さらにリン脂質を含有する請求項1に記載のNF-κB活性阻害剤。
【請求項3】
絹ペプチドがリポソーム化されたものである請求項2に記載のNF-κB活性阻害剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかのNF-κB活性阻害剤を含有する経口組成物。
【請求項5】
絹ペプチドを有効成分として含有するメタボリックシンドローム、糖尿病、高血糖、耐糖能異常、高脂血症、高中性脂肪血症、高コレステロール血症、高血圧、肥満又は動脈硬化に起因する血管障害の予防又は改善用経口組成物。
【請求項6】
さらにリン脂質を含有する請求項5に記載の経口組成物。
【請求項7】
絹ペプチドがリポソーム化されたものである請求項6に記載の経口組成物。
【請求項8】
さらにレスベラトロール類、コラーゲン、コラーゲン誘導体及びn-3系不飽和脂肪酸からなる群から選択される少なくとも1種を含有する請求項4〜7のいずれかに記載の経口組成物。
【請求項9】
食品である請求項4〜8のいずれかに記載の経口組成物。
【請求項10】
医薬である請求項4〜8のいずれかに記載の経口組成物。
【請求項11】
絹ペプチドが50mg〜1500mg/日の量にて摂取されることを特徴とする請求項4〜10のいずれかに記載の経口組成物。
【請求項12】
請求項9の食品経口組成物を製造するための絹ペプチドの使用。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−204368(P2007−204368A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−21365(P2006−21365)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000106324)サンスター株式会社 (200)
【Fターム(参考)】