説明

継手および挿入ガイド

【課題】継手から脱落しにくく、かつ、組み付け性や挿入性が失われない挿入ガイドを備える継手を提供する
【解決手段】挿入ガイド50は円環状をなし、前記挿入ガイド50の後端部に設けられた係止爪58は継手内周面のいずれかの位置に係止可能に形成され、同挿入ガイド50の外径部61は肉薄とすることで容易に変形可能なため、挿入ガイド50の組み付け性や樹脂製配管の挿入性の低下を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば給水系や給湯系の配管システムで使用される差し込み式継手において、管の挿入接続を補助するための挿入ガイドが内部に組み込まれた継手およびその挿入ガイドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の継手として、内外二重筒体を有し、その内外二重筒体によって管の差込間隙が形成され、前記差込間隙内には、管の挿入接続を補助するための挿入ガイドが組み込まれた構成のものが使用されていた。
【0003】
しかしながら、このような継手では、管の差込間隙内に配設された挿入ガイドは、管の差込間隙内から継手外へ脱落することがあった。
そこで従来、挿入ガイドの脱落防止を目的とした継手として、例えば特許文献1に記載の継手が知られている。特許文献1に記載の継手では、管の差込間隙内に配設された挿入ガイドの外周に弾性係止爪が設けられ、該弾性係止爪が継手に備えられたコレットに係合することで差込間隙からの脱落が防止されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−81587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の継手において、前記弾性係止爪は、挿入ガイドから切り起こされる形で形成されているため、厚みを持たせると切り起こしにくく、薄くする必要があった。加えて、弾性係止爪の付け根には切り起こし時の応力が残留している。そのため弾性係止爪は、冬季等の気温が低い場合には材料の脆化により破損し易く、破損した弾性係止爪が継手内のシール部材に付着し、シール不良を招いて漏水の原因となることがあった。
【0006】
さらに、上記の問題を解決するために、挿入ガイドの外径を、形状を変更せずに単に大きく設定したり、係止爪を挿入ガイドの成形時等に一体的に設けたりする場合には、挿入ガイドの最外径が管の挿入間隙より大きくなって、挿入ガイドの組み付け性や管の挿入性が大きく損なわれたり、成形型の形状が複雑になったりする。
【0007】
そこで本発明の目的とするところは、挿入ガイドの外径部に設けられた係止構造が、外力を受けても破損・変形しにくく、かつ、挿入ガイドの組み付け性や管の挿入性が犠牲とならないようにした挿入ガイドを備える継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、継手に係る発明は、継手本体に、管の端部が挿入される差込み間隙を設けるとともに、その差込み間隙の内面には管との間をシールするためのシール部材を設け、前記差込み間隙内に、管の先端部に押圧されて管挿入を案内する挿入ガイドを備えた継手であって、円環状をなす前記挿入ガイドの最外径は継手の内周面に係止可能な外径に形成され、同挿入ガイドには環状の溝が形成され、その溝の外径側の外径部は肉薄に構成され、溝の内径側の内径部は肉厚に構成されていることを用紙とする。
【0009】
前記挿入ガイドの外周面には、係止爪が一体形成されていることが好ましい。
前記挿入ガイドは、樹脂製であることが好ましい。
挿入ガイドに係る発明においては、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の構成を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
この発明では、外径部を肉薄とし容易に変形するように構成されている。そのため、挿入ガイドの最外径が、継手の内周面への係止を目的として管の挿入間隙よりも大きく設定された場合であっても、容易に変形するために組み付け性や管の挿入性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態における継手を示す半断面図。
【図2】(a)は挿入ガイドを示す正面図、(b)は挿入ガイドを示す側断面図。
【図3】別例として、(a)は係止爪の形状を三角形状から半円形状に変更した挿入ガイドを表す正面図、(b)はその側面断面図。
【図4】別例として、(a)は係止爪の形状を台形に変更した挿入ガイドを表す正面図、(b)は係止爪の形状を四角形に変更した挿入ガイドを表す正面図、(c)は係止爪を幅のあるものに変更した挿入ガイドの正面図。
【図5】別例として、(a)は係止爪の数を8個から6個に変更した挿入ガイドを表す正面図、(b)は円周上に隙間なく係止爪を並べた挿入ガイドを表す正面図。
【図6】別例として、本実施形態の挿入ガイドにおいて、係止爪と係止爪の間の外径部が、内径方向に切れ込みが入った形状に形成されている例を表す正面図。
【図7】別例として、(a)は係止爪を設けず、外径部を、径方向外側を頂点とする二等辺三角形状に形成した挿入ガイドの正面図、(b)はその挿入ガイドの側面断面図。
【図8】別例として、(a)は係止爪が、挿入ガイド先端から後端にかけてリブ状に設けられている挿入ガイドを表す正面図、(b)はその挿入ガイドを表す側面断面図。
【図9】別例として、(a)は係止爪と挿入ガイド先端部の間に、別の係止爪が設けられた挿入ガイドを表す正面図、(b)はその挿入ガイドの側面断面図、(c)はその一部拡大断面図。
【図10】別例として、(a)は係止爪と挿入ガイド先端部の間に、凸部が設けられた挿入ガイドを表す正面図、(b)はその挿入ガイドの側面断面図。
【図11】別例として、係止爪と挿入ガイド先端部の間に、別の係止爪が設けられた挿入ガイドであって、(a)は係止爪と別の係止爪は正面から見て重ならない位置に設けられている挿入ガイドを表す正面図、(b)はその挿入ガイドの側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図1および図2に基づいて詳細に説明する。
この第1実施形態においては、管の内周において止水を行うタイプの継手についての例である。
【0013】
図1の継手10は、受け側をソケット継手、差込み側をプラグ継手とする1組で使用される継手の内、プラグ継手のみを示したものである。
プラグ継手10は樹脂製配管11を差し込むだけで接続できるワンプッシュ式の継手である。継手10の継手本体18はエンジニアリングプラスチックにより形成され、外周部に位置する真鍮、青銅(砲金)等の金属製の接続部材19をインサートとするインサート成形法により形成されている。継手10のプラグ部の外周面には一対の円環状をなす環状溝23が凹設され、各環状溝23にはそれぞれゴム製のシールリング24が嵌着されている。これらのシールリング24により、継手本体18の外周面とソケット継手の内周面との間が止水されるように構成されている。
【0014】
継手本体18には継手10の管接続側へ内筒部26が延在されると共に、該内筒部26の内周には流体が流通する流通孔33が設けられている。該内筒部26と、接続部材19に螺合固定された外筒体30との間には、差込間隙27が形成されている。前記内筒部26の外周面,すなわち差込間隙27の内面には、一対の凹溝31が所定間隔をおいて設けられ、両凹溝31にはそれぞれ樹脂製配管11と接触して止水するためのシール部材としてのゴム製の弾性シールリング32が嵌着され、この弾性シールリング32にはグリスが塗布されている。これら2つの弾性シールリング32により、内筒部26の外周面と樹脂製配管11の内周面との間の止水性が高められる。
【0015】
また、前記外筒体30の管接続部には、キャップ38が螺合されている。キャップ38の管接続部内周には、樹脂製配管11が差込間隙27へ差し込まれるための開口40が設けられている。また、外筒体30は透明樹脂で形成されることで、差込間隙27内が可視化されている。
【0016】
外筒体30とキャップ38との間には、ステンレス鋼等の金属で形成され、複数の歯を有する抜け止めリング41が介装されている。この抜け止めリング41とキャップ38の内周の傾斜面43との間には、別の抜け止めリング44が介在されている。これら抜け止めリング41、44によって樹脂製配管11の抜け止めがなされる。
【0017】
次に、挿入ガイドについて説明する。
前記抜け止めリング41と抜け止めリング44の間には、樹脂製配管11の先端面に押圧されて樹脂製配管11の差し込みを案内する挿入ガイド50が配置されている。図2(a)、(b)に示すように前記挿入ガイド50は円環状をなし、環状部の側面断面が図面において横V字状となるように樹脂製配管11との当接面に溝59が形成されている。挿入ガイド50はゲート62を介して材料を流し込む射出成形によって形成されている。溝59より内径側の内径部60は肉厚にすることで変形しにくく、溝59より外径側の外径部61は肉薄にすることで変形しやすくなるように構成されている。さらに、外周面には先端側ほど縮径されたテーパ面56が形成され、テーパ面56の後端部(図2(b)の右側))には、係止爪58が抜け止めリング44の爪44aに係止可能に径方向の外側に一体的に延設されている。該係止爪58は、充実形成されるとともに、剛性を有するほぼ二等辺三角形状の凸部であって、挿入ガイド50の外径円周上に等間隔で計8個設けられている。また、図2(b)に示すように、挿入ガイド50の内周面は、弾性シールリング32の外径よりも大きな径で形成され、前端側のストレート面54と、ストレート面54から凸部51にかけての円弧形状部55によって構成される第1内径部52と、凸部51で構成される第2内径部53からなる。前記凸部51は内径が樹脂製配管11の内径とほぼ同径となるように形成され、弾性シールリング32に係止可能に構成されている。
【0018】
前記挿入ガイド50は、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の剛性を有する合成樹脂(エンジニアリングプラスチック)によって形成されている。
【0019】
以上の第1実施形態によって発揮される効果について、以下にまとめて説明する。
(1)挿入ガイド50の外周に係止爪58が設けられることで、抜け止めリング44の内周面に係止させることが可能となり、挿入ガイド50が差込間隙27内から脱落しにくく、挿入ガイド50は差込間隙27内の位置を保持する。
【0020】
(2)挿入ガイド50の外周に設けられる係止爪58をほぼ二等辺三角形状とすることで、継手内周面に挿入ガイド50の係止爪58が接したときの接し方を点当たりとすることができて、継手内周面と挿入ガイド50との接触面積を低減できる。そのため、樹脂製配管11の挿入のための力の増加を抑えることができ、樹脂製配管11の挿入を容易に行うことができる。
【0021】
(3)挿入ガイド50の外径部61を肉薄とすることによって、継手10の内周面への係止を目的として、挿入ガイド50の最外径を差込間隙27より大きく形成した場合であっても、外径部61が容易に変形するため、挿入ガイド50を差込間隙27内へ簡単に組み込むことができる。加えて、係止爪58が継手の内周面に接した場合でも外径部61が容易に変形するために、樹脂製配管11の挿入のために要する力が増加せず、樹脂製配管11の挿入を容易に行うことができる。
【0022】
また、挿入ガイド50の内径部60を肉厚とすることで、挿入ガイド50が弾性シールリング32を乗り越える際に挿入ガイド50が変形せず、円滑に押し込みができる。
(4)挿入ガイド50の外径部61を肉薄として容易に変形するように構成されていても、係止爪58は容易に変形しないため、挿入ガイド50の外周面が、継手10の内周面に接して変形した場合でも、係止爪58は変形せず、点当たりの状態を維持することができる。
【0023】
(5)係止爪58は挿入ガイド50に一体に形成されていることで、外力を受けても破損しにくい。さらに、係止爪58の形状は略三角錐状となっているため、万が一係止爪58が破損したとしても、樹脂製配管11の内周面と、弾性シールリング32の間に挟まれにくい。従って、シール不良による漏水を回避することが可能になる。
(変更例)
なお、前記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0024】
・前記実施形態では、係止爪58は三角形状の凸部としたが、本発明の実施形態はこれに限られない。例えば図3(a)、(b)に示すように、半月状であってもよい。
また、図4(a)に示すように台形としてもよいし、図4(b)に示すように四角形状としてもよい。また、図4(c)に示すように、係止爪58は挿入ガイド50の外径の円周上にある程度の広幅を持って設けられるものであってもよい。なお、図4(a)〜(c)の断面側面図は前記実施形態と同様とする。
【0025】
・前記実施形態では、係止爪58は8個としたが、本発明の実施形態はこれに限られない。例えば、図5(a)に示すように、6個であってもよいし、図5(b)に示すように、挿入ガイド50の外径円周上に多数個が隙間なく設けられてもよい。
【0026】
・前記実施形態では、挿入ガイド50の外径部は円形状としたが、図6に示すように、挿入ガイド50の係止爪58の間に切欠部63を設けてもよい。
・前記実施形態では、円環状をなす挿入ガイド50の外径円周状に係止爪58を設けたが、図7(a)(b)に示すように、外径部61を、径方向外側を頂点とする二等辺三角形状が連続した形状に形成してもよい。このように構成することで、係止爪58を設けなくとも継手10の内周面に係止可能でありながらも、挿入ガイド50の外径部61にも弾性を付与することができる。
【0027】
・前記実施形態は、係止爪58である三角形状の凸部が、挿入ガイド50の後縁部に延設されるものとしたが、図8(a)及び(b)に示すように、係止爪58を挿入ガイド50の厚さ方向に延びるリブ状としてもよい。このように構成することで、挿入ガイド50が継手10の軸線に垂直な面に対して傾いた場合でも、継手10の差込間隙27より脱落しにくくなる。
【0028】
・図9(a)、(b)、(c)に示すように、前記実施形態の挿入ガイド50に対して、係止爪58と挿入ガイド50の先端部との間に別の係止爪64を設けてもよい。このように構成することで、係止爪58をリブ状にしたものと同様な効果が得られる上に、材料消費量を削減できる。なお、図10(a)、(b)に示すように、係止爪64を断面四角形の凸部65としても前記と同様な効果が得られる。
【0029】
・図9及び図10で示した実施形態では、係止爪64や凸部65は係止爪58と挿入ガイド50の先端部との間に設けられるものとしたが、図11(a)、(b)に示すように、係止爪64や凸部65が係止爪58から挿入ガイド50の円周方向に離れた位置に設けられるものであってもよい。
【0030】
・前記実施形態及び変更例において、挿入ガイド50の溝59を省略して、その溝59の部分を充実に形成してもよい。
(別の技術的思想)
前記実施形態及び変更例から把握されるが、請求項に記載されない技術的思想は以下の通りである。
【0031】
(A) 継手本体に、管の端部が挿入される差込み間隙を設けるとともに、その差込み間隙の内面には管との間をシールするためのシール部材を設け、前記差込み間隙内に、管の先端部に押圧されて管挿入を案内する挿入ガイドを備えた継手であって、外周面に複数の係止爪を間隔をおいて形成したことを特徴とすることを特徴とする継手。このように構成した継手は、前記実施形態の継手とほぼ同様な効果を得ることができる。
【0032】
(B) 前記技術的思想(A)項に記載の挿入ガイド。
【符号の説明】
【0033】
10…プラグ継手、11…樹脂製配管、18…継手本体、27…差込み間隙、30…外筒体、31…凹溝、32…弾性シールリング、38…キャップ、40…開口、41…抜け止めリング、43…斜面、44…抜け止めリング、50…挿入ガイド、51…凸部、52…第1内径部、53…第2内径部、54…ストレート面、55…円弧形状部、57…当接面、58…係止爪、59…溝、60…内径部、61…外径部、64…係止爪。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
継手本体に、管の端部が挿入される差込み間隙を設けるとともに、その差込み間隙の内面には管との間をシールするためのシール部材を設け、前記差込み間隙内に、管の先端部に押圧されて管挿入を案内する挿入ガイドを備えた継手であって、円環状をなす前記挿入ガイドの最外径は継手の内周面に係止可能な外径に形成され、同挿入ガイドには環状の溝が形成され、その溝の外径側の外径部は肉薄に構成され、溝の内径側の内径部は肉厚に構成されていることを特徴とする継手。
【請求項2】
前記挿入ガイドの外周面には、係止爪が一体形成されていることを特徴とする請求項1に記載の継手。
【請求項3】
前記挿入ガイドは、樹脂製であることを特徴とする請求項1又は2に記載の継手。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の挿入ガイド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−13183(P2012−13183A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151884(P2010−151884)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000128968)株式会社オンダ製作所 (31)
【Fターム(参考)】