継手
【課題】ボディとノーズとの間の所要のシール性を確保することができる継手を得る。
【解決手段】ビール継手10は、一方側の流路端に接続されるノーズ14と、他方側の流路端に接続される樹脂製のボディ12とを備える。ボディ12は、他方側の流路端に螺合により接続されるナット部12Bと、他方側の流路端と一方側の流路端とが連通されるようにノーズ14が結合されるノーズ結合部12Aと、ナット部12Bとノーズ結合部12Aとの間に設けられノーズ14の外周面との間にOリング22を挟み込むシール部12Cとを有し、かつ射出成形の際のゲート跡Gmがナット部12Bに形成されている。
【解決手段】ビール継手10は、一方側の流路端に接続されるノーズ14と、他方側の流路端に接続される樹脂製のボディ12とを備える。ボディ12は、他方側の流路端に螺合により接続されるナット部12Bと、他方側の流路端と一方側の流路端とが連通されるようにノーズ14が結合されるノーズ結合部12Aと、ナット部12Bとノーズ結合部12Aとの間に設けられノーズ14の外周面との間にOリング22を挟み込むシール部12Cとを有し、かつ射出成形の際のゲート跡Gmがナット部12Bに形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路部が形成された雄型のノーズと雌型のボディとを備えた継手に関する。
【背景技術】
【0002】
ビールなどの液体を移送するホース間の継手として、流路部が形成された雄型のノーズと雌型のボディとを備えた継手が知られている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−14165号公報
【特許文献1】特開2009−14166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ボディを樹脂の射出成形によって形成する場合、金型内への樹脂注入口であるゲートをノーズとのシール部に設定すると、シール面にシール不良の原因となるフローマークが生じる等の不具合の発生が懸念される。
【0005】
本発明は、ボディとノーズとの間の所要のシール性を確保することができる継手を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明に係る継手は、一方側の流路端に接続されるノーズと、他方側の流路端に螺合により接続されるナット部と、前記他方側の流路端と前記一方側の流路端とが連通されるように前記ノーズが結合されるノーズ結合部と、前記ナット部とノーズ結合部との間に設けられ前記ノーズの外周面との間にシール部材を挟み込むシール部とを有し、かつ射出成形の際のゲート跡が前記ナット部に形成されている樹脂製のボディと、を備えている。
【0007】
請求項1記載の継手は、ノーズがボディのノーズ結合部に結合された状態で、一方側の流路端と他方側の流路端とを連通する。この状態では、ノーズの外周面とボディのシール部との間にシール部材が挟み込まれることで、該ノーズとボディとの間がシールされている。
【0008】
ここで、本継手では、ボディを射出成形した際のゲート跡がナット部に形成されているため、該ナットのシール部に、ゲートからの樹脂注入に伴ってフローマークが生じることが防止又は効果的に抑制される。一方、流路端に螺合(締め付け)により接続されるナット部は、仮にフローマークが生じてもシール性に影響はない。
【0009】
このように、請求項1記載の継手では、ボディとノーズとの間の所要のシール性を確保することができる。
【0010】
請求項2記載の発明に係る継手は、請求項1に記載の継手において、前記ナット部は、軸方向視で正多角形状を成しており、前記ゲート跡は、前記ナット部の軸方向視における頂部に形成されている。
【0011】
請求項2記載の継手では、軸方向視で正多角形状を成すナット部の頂部(角部)にゲート跡が形成されているので、射出成形後のゲートカットが容易である。
【0012】
請求項3記載の発明に係る継手は、請求項1又は請求項2に記載の継手において、前記ナット部は、前記ノーズ結合部及び前記シール部に対し厚肉に形成されている。
【0013】
請求項3記載の継手では、ボディにおける厚肉部から樹脂が注入されるので、成形時に気泡などが発生し難い。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、ボディとノーズとの間の所要のシール性を確保することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るビール継手を構成するノーズとボディとの分離状態を示す半断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るビール継手を構成するノーズとボディとの結合状態を示す半断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るビール継手の流体流通状態を示す半断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るビール継手を構成するボディのナット部を拡大して示す正面図である。
【図5】図4の5−5線に沿った断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るビール継手を構成するボディの各部の肉厚を拡大して示す断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係るビール継手の背面図である。
【図8】本発明の実施形態に係るビール継手の節度機構を示す図であって、(A)はカバーがロック位置にあるときの節度突起の付近を示す拡大断面図、(B)はカバーをロック解除位置の方向に少し回動させたとき節度突起付近を示す拡大断面図である。
【図9】本発明の実施形態に係るビール継手において、ノーズをボディに挿入する過程の初期を示す半断面図である。
【図10】本発明の実施形態に係るビール継手において、ノーズをボディに挿入する過程の中期を示す半断面図である。
【図11】本発明の実施形態に係るビール継手において、ノーズをボディに挿入する過程の終期を示す半断面図である。
【図12】本発明の実施形態に係るビール継手において、継手のカバーをロック解除位置に回動した状態を示す半断面図である。
【図13】本発明の実施形態に係るビール継手において、ノーズをボディに引き抜く過程を示す半断面図である。
【図14】本発明の実施形態との比較例に係るボディのシール面に発生したフローマークを示す半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る継手としてのビール継手10について、図1〜図13に基づいて説明する。
【0017】
図1には、ビール継手10の分離状態が半断面図にて示されている。また、図2には、ビール継手10の結合状態が半断面図にて示されており、図3には、ビール継手10の使用状態(液体の流通状態)が半断面図にて示されている。これらの図に示される如く、ビール継手10は、雌型部材であるボディ12と、雄型部材であるノーズ14と、これらボディ12とノーズ14との結合状態を保持するためのロック機構16とを主要部として構成されている。この実施形態に係るビール継手10は、液体としての飲料であるビールを所定の圧力(例えば、約0.20〜0.35MPa)で流す用途で使用されている。
【0018】
ボディ12は、例えばポリアセタール(POM)等の樹脂材より成り、全体として軸線(流れ方向)が一直線状を成す筒状に形成されている。このボディ12は、一端側(ビール流れ方向の下流側)に形成されノーズ14が挿入されるノーズ結合部12Aと、他端側(以下、「矢印A側」という)に形成され流路端としてのアダプター(を介して配管)が接続されるナット部12Bと、これらノーズ結合部12Aとナット部12Bとの間に設けられたシール部12Cとを有する。
【0019】
この実施形態では、シール部12Cは、その筒壁が他の部分に対し内外径共に縮径された括れ部とされている。また、この実施形態では、ナット部12Bは、外周が軸方向視で正多角形である正十二角形を成すと共に、内周にめねじ15が形成されている。したがって、ナット部12Bは、上記したアダプタのおねじに螺合されると共に締め付けられることで、該アダプタに接続される構成である。ナット部12Bの外周の形状を工具受け形状とされている。
【0020】
ノーズ14は、例えばポリアセタール(POM)等の樹脂材より成り、側面視で略「L」字状の管状(中空)部材とされている。ノーズ14における矢印A側には、ノーズ結合部12Aに挿入されると共にロック機構16によってロックされる装着部14Aが形成されている。装着部14Aには、ビール流れ(軸線)方向との直行面に沿って外周面に形成され、ロック機構16によってロックされる環状の係合溝18が形成されている。換言すれば、環状の係合溝18がロック機構16の一部を構成しているものと捉えることも可能である。
【0021】
また、ノーズ14は、装着部14Aから矢印A側に突出され、図2及び図3に示す結合状態でシール部12C内に至るシール部14Bを有する。シール部14Bにおいて係合溝18と略平行に形成されたシール溝20には、シール部材であるOリング22が装着されている。Oリング22は、シール部12Cの内周面であるシール面12Dに圧着されてボディ12とノーズ14との間をシールするようになっている。装着部14A(係合溝18)とシール部14Bとの間には、シール部14B側に向けて縮径されたテーパ部14Cが形成されている。一方、ノーズ14における装着部14A、シール部14Bの内部(流路)と連通された他端部は、流路端としてのホース(図示省略)が接続されるホース接続部14Dとされている。
【0022】
ロック機構16は、ボディ12のノーズ結合部12A内に抜け止め状態で保持された保持部材24と、保持部材24の内側でボディ12(保持部材24)に対し軸線方向に相対変位可能に支持されたロック部材としてのコレット26とを主要部品として構成されている。保持部材24は、短円筒状を成しており、外周面から周方向に連続的又は断続的に突出された係合突起24Aを、ノーズ結合部12Aの内周面に形成された係合溝12Eに入り込ませることで、想定される使用状態ではボディ12に対し相対変位しないよう保持されている。
【0023】
この保持部材24と、ボディ12におけるノーズ結合部12Aとシール部12Cとの間の段部12Fとの間の空間は、コレット逃がし溝28とされている。また、保持部材24におけるノーズ14の挿入端側には、係合段部24Bが形成されている。コレット26は、後述するように段部12Fと係合段部24Bとの間で、ボディ12に対し軸線方向に相対変位可能とされている。
【0024】
コレット26は、全体として略円筒状に形成されており、その矢印A側の一部(略半分)には軸線方向に沿って複数のスリット(図示省略)が形成されることで、複数の板ばね状の脚部26Aが形成されている。脚部26Aは、厚み(径)方向に弾性変形可能とされており、該変形によって、その軸線中間部に形成された係合突起30をノーズ14の係合溝18に対し進退させ得る構成とされている。
【0025】
また、各脚部26Aの自由端部26Bには、自由端側及び径方向内側を向くように傾斜されたテーパ面26Cが形成されている。コレット26は、テーパ面26Cを段部12Fから突設されたカム突起12Gに係合させつつ矢印A側に移動されることで、各脚部26Aが径方向の外向きに弾性変形するようになっている。この弾性変形に伴ってコレット26は、その自由端部26Bがコレット逃がし溝28に入り込む構成とされている。ロック機構16では、この自由端部26Bが進退するコレット逃がし溝28によって、ノーズ結合部12A内に位置する係合突起30が環状の係合溝18に対し進退するストロークが確保される構成とされている。
【0026】
なお、ビール継手10では、図9に示される如く自由端部26Bが段部12Fに係合する位置が、コレット26の矢印A側への移動限とされている。一方、各脚部26Aの径方向外側には、係合段部24Bに係合可能な抜け止め段部26Dが形成されており、図3に示される如く抜け止め段部26Dが係合段部24Bに係合する位置が、コレット26が反矢印A側への移動限とされている。
【0027】
以上説明したロック機構16によるロック動作については、本実施形態の作用と共に後述する。
【0028】
また、図1〜図3に示される如く、コレット26は、係合段部24Bと段部12Fと移動規制された範囲の任意の位置から少なくとも矢印A側への移動限に至るまでのストローク分だけ、ノーズ結合部12A(保持部材24)の開口端からノーズ14側に張り出されるロック解除操作部26Eを有する。そして、ビール継手10は、ロック機構16によるボディ12に対するノーズ14のロック状態を解除するためのロック解除部材としてのカバー32を備えている。
【0029】
カバー32は、ボディ12をノーズ結合部12A柄から覆うキャップ状(有底円筒状)に形成されており、その底板部32Aにはノーズ14を貫通させる貫通孔32Bが形成されている。さらに、カバー32の円筒部32Cにおける開口端側には、ノーズ結合部12Aの外周から突出された解除規制突起34を入り込ませる切欠部36が形成されている。切欠部36は、円筒部32Cの周方向に周方向に長手とされ、解除規制突起34が長手方向の両端36A、36Bに係合する範囲(この実施形態では、略1/4周)内で、カバー32のボディ12に対する相対変位を許容するようになっている。この実施形態では、解除規制突起34、切欠部36が180°離間して各2つ設けられている。
【0030】
ビール継手10では、カバー32における切欠部36の一方の端部36Aに係合する位置がロック位置(図2参照)とされ、カバー32における切欠部36の他方の端部36Bに係合する位置がロック解除位置(図1参照、端部36Bについては図7参照)とされている。具体的には、切欠部36における端部36B側には、他の部分よりも深く形成された突起逃がし部36Cが形成されており、切欠部36は、突起逃がし部36C内に解除規制突起34を入り込ませることで、底板部32Aをノーズ結合部12Aの開口端に近接させる方向(軸線方向)の相対変位が許容されるようになっている。
【0031】
この変位によってカバー32は、その底板部32Aにおいてロック解除操作部26Eを段部12F側に押し込むようになっている。これにより、ロック機構16(コレット26)によるボディ12に対するノーズ14のロック状態が解除される構成とされている。なお、カバー32は、その内周側に形成された抜け止め突起32Dがノーズ結合部12Aの外周に形成された係合突起12Hに係合する(図2参照)ことで、ボディ12に対する脱落が防止される構成とされている。また、カバー32によるロック解除動作については、本実施形態の作用と共に後述する。
【0032】
また、この実施形態では、図8(A)及び図8(B)に示される如く、ノーズ結合部12Aにおける解除規制突起34の近傍、カバー32における切欠部36の端部36Aの近傍からは、節度突起38、40がそれぞれ突出されている。節度突起38、40は、カバー32がロック位置からロック解除位置側に回転操作される際に、互いに乗り越えあうことでロック解除に伴う節度感を付与する構成とされている。なお、この実施形態では、節度突起38、40は、ロック解除の際に乗り越える斜面がロックの際に乗り越える斜面よりも急勾配とされており、ロック解除の際には大きな抵抗(節度感)を感得させるように構成されている。
【0033】
以上説明したビール継手10を構成するボディ12は、上記したPOM等の樹脂の射出成形によって上記の形状に形成されている。このため、ボディ12には、図1に示される如く、射出成形の際の金型内への樹脂注入口であるゲートの跡(痕跡)、すなわちゲート跡Gmが形成されている。そして、ビール継手10では、図4及び図5に示される如く、ゲート跡Gmは、軸方向視で正十二角形状を成すナット部12Bの頂部(頂角部)Tに形成されている。
【0034】
図6に示される如く、ボディ12におけるゲート跡Gmが形成されたナット部12B(の筒壁)は、ノーズ結合部12A、シール部12C(の各筒壁)よりも厚肉の厚肉部とされている。すなわち、ナット部12Bの肉厚をtb、ノーズ結合部12A、シール部12Cの肉厚をta、tcとすると、tb≧ta、tcとされている。
【0035】
また、ビール継手10では、ボディ12のナット部12Bをアダプタに接続する際の締め付けトルクが比較的低い設定(例えば、最大で9.8Nm)されている。なお、ボディ12は、ナット部12Bが人手によってアダプタに締め付けられることで、ビールがビール継手10を流れる際の所定の圧力(例えば、約0.20〜0.35MPa)に耐え得るようになっており、上記した最大の締め付けトルクは、人手による締め付けトルクに所要の安全率を乗じた値に相当する。
【0036】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0037】
上記構成のビール継手10では、ノーズ14とボディ12を結合する際には、ボディ12のノーズ結合部12Aにノーズ14の装着部14Aを挿し込む(挿入する)。すると、図9に示される如く、ノーズ14のテーパ部14Cがコレット26から突出された係合突起30を押し、コレット26が矢印A側に移動される。この移動に伴って、コレット26を構成する各脚部26Aの自由端部26Bがカム突起12Gに係合しつつ径方向外側に変位される。
【0038】
これにより、ノーズ14のテーパ部14Cが係合突起30を通過してノーズ結合部12A内に深く挿入され、図10に示される如くノーズ14に形成された係合溝18が係合突起30の位置に至ると、各脚部26Aの復原によって各係合突起30が係合溝18に入り込む。この際ノーズ14は、係合溝18において係合突起30を係合させたコレット26と共に、反矢印A側に若干移動し、図11に示される如くコレット26のロック解除操作部26Eがノーズ結合部12Aの開口端から突出される。これにより、ノーズ14をボディ12からの引き抜く方向に引張っても、係合溝18と係合突起30との係合、及び係合段部24Bと抜け止め段部26Dとの係合によって該引き抜きが禁止されるロック状態となる。
【0039】
さらに、カバー32をロック解除位置からロック位置に回動させることで、図2に示される如く、カバー32によってコレット26をロック解除側に押し込むことが該カバー32と解除規制突起34との干渉によって禁止されるロック解除禁止状態に保持される。すなわち、ノーズ14がボディ12に対し適正に装着される。なお、ビール継手10では、カバー32がロック位置に位置する状態から、該カバー32のロック操作を除く上記と同じ手順でボディ12にノーズ14を装着することができる。そして、ビール継手10内をビールが流れると、図3に示される如くビール内圧によるノーズ14引き抜き方向の力が、保持部材24の係合段部24Bとコレット26抜け止め段部26Dとの係合によって支持される。
【0040】
一方、洗浄等のためにボディ12とノーズ14とを分離する際には、図12に示される如くカバー32をロック解除位置まで回動させ、さらに矢印A方向に押し込む。すると、コレット26が矢印A側に変位され、この変位に伴って自由端部26Bのテーパ面26Cがカム突起12Gに案内されて各脚部26Aが径方向外側に変位(変形される)。これにより、脚部26Aに設けられた係合突起30がノーズ14の係合溝18から抜け出し(図10参照)、図13に示される如くノーズ14をボディ12から引き抜くことができる。
【0041】
ここで、ビール継手10では、ボディ12のゲート跡Gmがナット部12Bに形成されているため、該ボディ12とノーズ14との間の所要のシール性能が確保される。例えば図14に示される比較例に係るボディ100では、シール部12Cの外表面に図示しないゲート跡が形成されている。このため、ボディ100では、Oリング22が接触するシール面102にフローマークFmが発生しやすい。フローマークFmが発生すると、成形条件によってはシール面102の面粗度を許容範囲内に抑えることができない場合があり、ボディ100とノーズ14との間のシール不良の原因となる。また、ナット部12Bに対し相対的に薄肉のシール部12Cから樹脂を注入すると、薄肉部から厚肉部に樹脂が流れることに伴い樹脂(製品)中に気泡やヒケが発生しやすい。
【0042】
これらに対してビール継手10では、ボディ12のゲート跡Gmがナット部12Bに形成されているため、シール面12DにフローマークFmが形成されることがない。一方、ナット部12Bの内面(めねじ15)には、仮にフローマークFmが形成されてもボディ12とノーズ14との間のシール性能に影響を与えることがない。このため、ビール継手10では、Oリング22が接触するシール面12Dの面粗度が確保されて、ボディ12とノーズ14との間の所要のシール性能を確保することができる。
【0043】
また、ビール継手10では、ボディ12における厚肉部であるナット部12Bにゲート跡Gmが形成されているので、射出成形時に樹脂中に気泡やヒケが生じることが抑制される。特に、ビール継手10では、ナット部12Bの外周が正十二角形とされる(円に近い多角形とされる)ことで該ナット部12Bの周方向の各部の肉厚が略均等化されているので、これによっても気泡の発生が抑制される。
【0044】
さらに、ビール継手10では、正十二角形の頂部Tにゲート跡Gmが形成されているので、平坦面にゲート跡を形成する構成と比較して、成形後のゲートカットが容易(仕上げが不要又は簡略可能)であり、製造コストの低減に寄与する。また、これにより金型構造の簡素化にも寄与する。しかも、上記したシール面12DへのフローマークFm発生防止、気泡発生抑制の各効果を合わせ、製品の歩留まりが向上するので、この観点からもボディ12の製造コストの低減が図られる。
【0045】
またさらに、アダプタへの締め付けトルクが作用するナット部12B(特に、軸方向視で正六角形、正八角形、正十二角形、正十六角形等の6つ以上の頂部Tを有する構成)は、ゲート跡Gmを形成することででは強度上不利になる場合があるが、本実施形態に係るビール継手10では、上記した通り低締め付けトルクの用途に適用されるので、ナット部12Bの強度が問題になることはない。
【0046】
なお、上記した実施形態では、ビール継手10がビールを流す流路系に適用された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、炭酸飲料等の飲料、その他の流体について本発明に係る継手を適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 ビール継手(継手)
12 ボディ
12C シール部
12D シール面
12B ナット部
12A ノーズ結合部
14 ノーズ
22 Oリング
Gm ゲート跡
T 頂部
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路部が形成された雄型のノーズと雌型のボディとを備えた継手に関する。
【背景技術】
【0002】
ビールなどの液体を移送するホース間の継手として、流路部が形成された雄型のノーズと雌型のボディとを備えた継手が知られている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−14165号公報
【特許文献1】特開2009−14166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ボディを樹脂の射出成形によって形成する場合、金型内への樹脂注入口であるゲートをノーズとのシール部に設定すると、シール面にシール不良の原因となるフローマークが生じる等の不具合の発生が懸念される。
【0005】
本発明は、ボディとノーズとの間の所要のシール性を確保することができる継手を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明に係る継手は、一方側の流路端に接続されるノーズと、他方側の流路端に螺合により接続されるナット部と、前記他方側の流路端と前記一方側の流路端とが連通されるように前記ノーズが結合されるノーズ結合部と、前記ナット部とノーズ結合部との間に設けられ前記ノーズの外周面との間にシール部材を挟み込むシール部とを有し、かつ射出成形の際のゲート跡が前記ナット部に形成されている樹脂製のボディと、を備えている。
【0007】
請求項1記載の継手は、ノーズがボディのノーズ結合部に結合された状態で、一方側の流路端と他方側の流路端とを連通する。この状態では、ノーズの外周面とボディのシール部との間にシール部材が挟み込まれることで、該ノーズとボディとの間がシールされている。
【0008】
ここで、本継手では、ボディを射出成形した際のゲート跡がナット部に形成されているため、該ナットのシール部に、ゲートからの樹脂注入に伴ってフローマークが生じることが防止又は効果的に抑制される。一方、流路端に螺合(締め付け)により接続されるナット部は、仮にフローマークが生じてもシール性に影響はない。
【0009】
このように、請求項1記載の継手では、ボディとノーズとの間の所要のシール性を確保することができる。
【0010】
請求項2記載の発明に係る継手は、請求項1に記載の継手において、前記ナット部は、軸方向視で正多角形状を成しており、前記ゲート跡は、前記ナット部の軸方向視における頂部に形成されている。
【0011】
請求項2記載の継手では、軸方向視で正多角形状を成すナット部の頂部(角部)にゲート跡が形成されているので、射出成形後のゲートカットが容易である。
【0012】
請求項3記載の発明に係る継手は、請求項1又は請求項2に記載の継手において、前記ナット部は、前記ノーズ結合部及び前記シール部に対し厚肉に形成されている。
【0013】
請求項3記載の継手では、ボディにおける厚肉部から樹脂が注入されるので、成形時に気泡などが発生し難い。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、ボディとノーズとの間の所要のシール性を確保することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るビール継手を構成するノーズとボディとの分離状態を示す半断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るビール継手を構成するノーズとボディとの結合状態を示す半断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るビール継手の流体流通状態を示す半断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るビール継手を構成するボディのナット部を拡大して示す正面図である。
【図5】図4の5−5線に沿った断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るビール継手を構成するボディの各部の肉厚を拡大して示す断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係るビール継手の背面図である。
【図8】本発明の実施形態に係るビール継手の節度機構を示す図であって、(A)はカバーがロック位置にあるときの節度突起の付近を示す拡大断面図、(B)はカバーをロック解除位置の方向に少し回動させたとき節度突起付近を示す拡大断面図である。
【図9】本発明の実施形態に係るビール継手において、ノーズをボディに挿入する過程の初期を示す半断面図である。
【図10】本発明の実施形態に係るビール継手において、ノーズをボディに挿入する過程の中期を示す半断面図である。
【図11】本発明の実施形態に係るビール継手において、ノーズをボディに挿入する過程の終期を示す半断面図である。
【図12】本発明の実施形態に係るビール継手において、継手のカバーをロック解除位置に回動した状態を示す半断面図である。
【図13】本発明の実施形態に係るビール継手において、ノーズをボディに引き抜く過程を示す半断面図である。
【図14】本発明の実施形態との比較例に係るボディのシール面に発生したフローマークを示す半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る継手としてのビール継手10について、図1〜図13に基づいて説明する。
【0017】
図1には、ビール継手10の分離状態が半断面図にて示されている。また、図2には、ビール継手10の結合状態が半断面図にて示されており、図3には、ビール継手10の使用状態(液体の流通状態)が半断面図にて示されている。これらの図に示される如く、ビール継手10は、雌型部材であるボディ12と、雄型部材であるノーズ14と、これらボディ12とノーズ14との結合状態を保持するためのロック機構16とを主要部として構成されている。この実施形態に係るビール継手10は、液体としての飲料であるビールを所定の圧力(例えば、約0.20〜0.35MPa)で流す用途で使用されている。
【0018】
ボディ12は、例えばポリアセタール(POM)等の樹脂材より成り、全体として軸線(流れ方向)が一直線状を成す筒状に形成されている。このボディ12は、一端側(ビール流れ方向の下流側)に形成されノーズ14が挿入されるノーズ結合部12Aと、他端側(以下、「矢印A側」という)に形成され流路端としてのアダプター(を介して配管)が接続されるナット部12Bと、これらノーズ結合部12Aとナット部12Bとの間に設けられたシール部12Cとを有する。
【0019】
この実施形態では、シール部12Cは、その筒壁が他の部分に対し内外径共に縮径された括れ部とされている。また、この実施形態では、ナット部12Bは、外周が軸方向視で正多角形である正十二角形を成すと共に、内周にめねじ15が形成されている。したがって、ナット部12Bは、上記したアダプタのおねじに螺合されると共に締め付けられることで、該アダプタに接続される構成である。ナット部12Bの外周の形状を工具受け形状とされている。
【0020】
ノーズ14は、例えばポリアセタール(POM)等の樹脂材より成り、側面視で略「L」字状の管状(中空)部材とされている。ノーズ14における矢印A側には、ノーズ結合部12Aに挿入されると共にロック機構16によってロックされる装着部14Aが形成されている。装着部14Aには、ビール流れ(軸線)方向との直行面に沿って外周面に形成され、ロック機構16によってロックされる環状の係合溝18が形成されている。換言すれば、環状の係合溝18がロック機構16の一部を構成しているものと捉えることも可能である。
【0021】
また、ノーズ14は、装着部14Aから矢印A側に突出され、図2及び図3に示す結合状態でシール部12C内に至るシール部14Bを有する。シール部14Bにおいて係合溝18と略平行に形成されたシール溝20には、シール部材であるOリング22が装着されている。Oリング22は、シール部12Cの内周面であるシール面12Dに圧着されてボディ12とノーズ14との間をシールするようになっている。装着部14A(係合溝18)とシール部14Bとの間には、シール部14B側に向けて縮径されたテーパ部14Cが形成されている。一方、ノーズ14における装着部14A、シール部14Bの内部(流路)と連通された他端部は、流路端としてのホース(図示省略)が接続されるホース接続部14Dとされている。
【0022】
ロック機構16は、ボディ12のノーズ結合部12A内に抜け止め状態で保持された保持部材24と、保持部材24の内側でボディ12(保持部材24)に対し軸線方向に相対変位可能に支持されたロック部材としてのコレット26とを主要部品として構成されている。保持部材24は、短円筒状を成しており、外周面から周方向に連続的又は断続的に突出された係合突起24Aを、ノーズ結合部12Aの内周面に形成された係合溝12Eに入り込ませることで、想定される使用状態ではボディ12に対し相対変位しないよう保持されている。
【0023】
この保持部材24と、ボディ12におけるノーズ結合部12Aとシール部12Cとの間の段部12Fとの間の空間は、コレット逃がし溝28とされている。また、保持部材24におけるノーズ14の挿入端側には、係合段部24Bが形成されている。コレット26は、後述するように段部12Fと係合段部24Bとの間で、ボディ12に対し軸線方向に相対変位可能とされている。
【0024】
コレット26は、全体として略円筒状に形成されており、その矢印A側の一部(略半分)には軸線方向に沿って複数のスリット(図示省略)が形成されることで、複数の板ばね状の脚部26Aが形成されている。脚部26Aは、厚み(径)方向に弾性変形可能とされており、該変形によって、その軸線中間部に形成された係合突起30をノーズ14の係合溝18に対し進退させ得る構成とされている。
【0025】
また、各脚部26Aの自由端部26Bには、自由端側及び径方向内側を向くように傾斜されたテーパ面26Cが形成されている。コレット26は、テーパ面26Cを段部12Fから突設されたカム突起12Gに係合させつつ矢印A側に移動されることで、各脚部26Aが径方向の外向きに弾性変形するようになっている。この弾性変形に伴ってコレット26は、その自由端部26Bがコレット逃がし溝28に入り込む構成とされている。ロック機構16では、この自由端部26Bが進退するコレット逃がし溝28によって、ノーズ結合部12A内に位置する係合突起30が環状の係合溝18に対し進退するストロークが確保される構成とされている。
【0026】
なお、ビール継手10では、図9に示される如く自由端部26Bが段部12Fに係合する位置が、コレット26の矢印A側への移動限とされている。一方、各脚部26Aの径方向外側には、係合段部24Bに係合可能な抜け止め段部26Dが形成されており、図3に示される如く抜け止め段部26Dが係合段部24Bに係合する位置が、コレット26が反矢印A側への移動限とされている。
【0027】
以上説明したロック機構16によるロック動作については、本実施形態の作用と共に後述する。
【0028】
また、図1〜図3に示される如く、コレット26は、係合段部24Bと段部12Fと移動規制された範囲の任意の位置から少なくとも矢印A側への移動限に至るまでのストローク分だけ、ノーズ結合部12A(保持部材24)の開口端からノーズ14側に張り出されるロック解除操作部26Eを有する。そして、ビール継手10は、ロック機構16によるボディ12に対するノーズ14のロック状態を解除するためのロック解除部材としてのカバー32を備えている。
【0029】
カバー32は、ボディ12をノーズ結合部12A柄から覆うキャップ状(有底円筒状)に形成されており、その底板部32Aにはノーズ14を貫通させる貫通孔32Bが形成されている。さらに、カバー32の円筒部32Cにおける開口端側には、ノーズ結合部12Aの外周から突出された解除規制突起34を入り込ませる切欠部36が形成されている。切欠部36は、円筒部32Cの周方向に周方向に長手とされ、解除規制突起34が長手方向の両端36A、36Bに係合する範囲(この実施形態では、略1/4周)内で、カバー32のボディ12に対する相対変位を許容するようになっている。この実施形態では、解除規制突起34、切欠部36が180°離間して各2つ設けられている。
【0030】
ビール継手10では、カバー32における切欠部36の一方の端部36Aに係合する位置がロック位置(図2参照)とされ、カバー32における切欠部36の他方の端部36Bに係合する位置がロック解除位置(図1参照、端部36Bについては図7参照)とされている。具体的には、切欠部36における端部36B側には、他の部分よりも深く形成された突起逃がし部36Cが形成されており、切欠部36は、突起逃がし部36C内に解除規制突起34を入り込ませることで、底板部32Aをノーズ結合部12Aの開口端に近接させる方向(軸線方向)の相対変位が許容されるようになっている。
【0031】
この変位によってカバー32は、その底板部32Aにおいてロック解除操作部26Eを段部12F側に押し込むようになっている。これにより、ロック機構16(コレット26)によるボディ12に対するノーズ14のロック状態が解除される構成とされている。なお、カバー32は、その内周側に形成された抜け止め突起32Dがノーズ結合部12Aの外周に形成された係合突起12Hに係合する(図2参照)ことで、ボディ12に対する脱落が防止される構成とされている。また、カバー32によるロック解除動作については、本実施形態の作用と共に後述する。
【0032】
また、この実施形態では、図8(A)及び図8(B)に示される如く、ノーズ結合部12Aにおける解除規制突起34の近傍、カバー32における切欠部36の端部36Aの近傍からは、節度突起38、40がそれぞれ突出されている。節度突起38、40は、カバー32がロック位置からロック解除位置側に回転操作される際に、互いに乗り越えあうことでロック解除に伴う節度感を付与する構成とされている。なお、この実施形態では、節度突起38、40は、ロック解除の際に乗り越える斜面がロックの際に乗り越える斜面よりも急勾配とされており、ロック解除の際には大きな抵抗(節度感)を感得させるように構成されている。
【0033】
以上説明したビール継手10を構成するボディ12は、上記したPOM等の樹脂の射出成形によって上記の形状に形成されている。このため、ボディ12には、図1に示される如く、射出成形の際の金型内への樹脂注入口であるゲートの跡(痕跡)、すなわちゲート跡Gmが形成されている。そして、ビール継手10では、図4及び図5に示される如く、ゲート跡Gmは、軸方向視で正十二角形状を成すナット部12Bの頂部(頂角部)Tに形成されている。
【0034】
図6に示される如く、ボディ12におけるゲート跡Gmが形成されたナット部12B(の筒壁)は、ノーズ結合部12A、シール部12C(の各筒壁)よりも厚肉の厚肉部とされている。すなわち、ナット部12Bの肉厚をtb、ノーズ結合部12A、シール部12Cの肉厚をta、tcとすると、tb≧ta、tcとされている。
【0035】
また、ビール継手10では、ボディ12のナット部12Bをアダプタに接続する際の締め付けトルクが比較的低い設定(例えば、最大で9.8Nm)されている。なお、ボディ12は、ナット部12Bが人手によってアダプタに締め付けられることで、ビールがビール継手10を流れる際の所定の圧力(例えば、約0.20〜0.35MPa)に耐え得るようになっており、上記した最大の締め付けトルクは、人手による締め付けトルクに所要の安全率を乗じた値に相当する。
【0036】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0037】
上記構成のビール継手10では、ノーズ14とボディ12を結合する際には、ボディ12のノーズ結合部12Aにノーズ14の装着部14Aを挿し込む(挿入する)。すると、図9に示される如く、ノーズ14のテーパ部14Cがコレット26から突出された係合突起30を押し、コレット26が矢印A側に移動される。この移動に伴って、コレット26を構成する各脚部26Aの自由端部26Bがカム突起12Gに係合しつつ径方向外側に変位される。
【0038】
これにより、ノーズ14のテーパ部14Cが係合突起30を通過してノーズ結合部12A内に深く挿入され、図10に示される如くノーズ14に形成された係合溝18が係合突起30の位置に至ると、各脚部26Aの復原によって各係合突起30が係合溝18に入り込む。この際ノーズ14は、係合溝18において係合突起30を係合させたコレット26と共に、反矢印A側に若干移動し、図11に示される如くコレット26のロック解除操作部26Eがノーズ結合部12Aの開口端から突出される。これにより、ノーズ14をボディ12からの引き抜く方向に引張っても、係合溝18と係合突起30との係合、及び係合段部24Bと抜け止め段部26Dとの係合によって該引き抜きが禁止されるロック状態となる。
【0039】
さらに、カバー32をロック解除位置からロック位置に回動させることで、図2に示される如く、カバー32によってコレット26をロック解除側に押し込むことが該カバー32と解除規制突起34との干渉によって禁止されるロック解除禁止状態に保持される。すなわち、ノーズ14がボディ12に対し適正に装着される。なお、ビール継手10では、カバー32がロック位置に位置する状態から、該カバー32のロック操作を除く上記と同じ手順でボディ12にノーズ14を装着することができる。そして、ビール継手10内をビールが流れると、図3に示される如くビール内圧によるノーズ14引き抜き方向の力が、保持部材24の係合段部24Bとコレット26抜け止め段部26Dとの係合によって支持される。
【0040】
一方、洗浄等のためにボディ12とノーズ14とを分離する際には、図12に示される如くカバー32をロック解除位置まで回動させ、さらに矢印A方向に押し込む。すると、コレット26が矢印A側に変位され、この変位に伴って自由端部26Bのテーパ面26Cがカム突起12Gに案内されて各脚部26Aが径方向外側に変位(変形される)。これにより、脚部26Aに設けられた係合突起30がノーズ14の係合溝18から抜け出し(図10参照)、図13に示される如くノーズ14をボディ12から引き抜くことができる。
【0041】
ここで、ビール継手10では、ボディ12のゲート跡Gmがナット部12Bに形成されているため、該ボディ12とノーズ14との間の所要のシール性能が確保される。例えば図14に示される比較例に係るボディ100では、シール部12Cの外表面に図示しないゲート跡が形成されている。このため、ボディ100では、Oリング22が接触するシール面102にフローマークFmが発生しやすい。フローマークFmが発生すると、成形条件によってはシール面102の面粗度を許容範囲内に抑えることができない場合があり、ボディ100とノーズ14との間のシール不良の原因となる。また、ナット部12Bに対し相対的に薄肉のシール部12Cから樹脂を注入すると、薄肉部から厚肉部に樹脂が流れることに伴い樹脂(製品)中に気泡やヒケが発生しやすい。
【0042】
これらに対してビール継手10では、ボディ12のゲート跡Gmがナット部12Bに形成されているため、シール面12DにフローマークFmが形成されることがない。一方、ナット部12Bの内面(めねじ15)には、仮にフローマークFmが形成されてもボディ12とノーズ14との間のシール性能に影響を与えることがない。このため、ビール継手10では、Oリング22が接触するシール面12Dの面粗度が確保されて、ボディ12とノーズ14との間の所要のシール性能を確保することができる。
【0043】
また、ビール継手10では、ボディ12における厚肉部であるナット部12Bにゲート跡Gmが形成されているので、射出成形時に樹脂中に気泡やヒケが生じることが抑制される。特に、ビール継手10では、ナット部12Bの外周が正十二角形とされる(円に近い多角形とされる)ことで該ナット部12Bの周方向の各部の肉厚が略均等化されているので、これによっても気泡の発生が抑制される。
【0044】
さらに、ビール継手10では、正十二角形の頂部Tにゲート跡Gmが形成されているので、平坦面にゲート跡を形成する構成と比較して、成形後のゲートカットが容易(仕上げが不要又は簡略可能)であり、製造コストの低減に寄与する。また、これにより金型構造の簡素化にも寄与する。しかも、上記したシール面12DへのフローマークFm発生防止、気泡発生抑制の各効果を合わせ、製品の歩留まりが向上するので、この観点からもボディ12の製造コストの低減が図られる。
【0045】
またさらに、アダプタへの締め付けトルクが作用するナット部12B(特に、軸方向視で正六角形、正八角形、正十二角形、正十六角形等の6つ以上の頂部Tを有する構成)は、ゲート跡Gmを形成することででは強度上不利になる場合があるが、本実施形態に係るビール継手10では、上記した通り低締め付けトルクの用途に適用されるので、ナット部12Bの強度が問題になることはない。
【0046】
なお、上記した実施形態では、ビール継手10がビールを流す流路系に適用された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、炭酸飲料等の飲料、その他の流体について本発明に係る継手を適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 ビール継手(継手)
12 ボディ
12C シール部
12D シール面
12B ナット部
12A ノーズ結合部
14 ノーズ
22 Oリング
Gm ゲート跡
T 頂部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方側の流路端に接続されるノーズと、
他方側の流路端に螺合により接続されるナット部と、前記他方側の流路端と前記一方側の流路端とが連通されるように前記ノーズが結合されるノーズ結合部と、前記ナット部とノーズ結合部との間に設けられ前記ノーズの外周面との間にシール部材を挟み込むシール部とを有し、かつ射出成形の際のゲート跡が前記ナット部に形成されている樹脂製のボディと、
を備えた継手。
【請求項2】
前記ナット部は、軸方向視で正多角形状を成しており、
前記ゲート跡は、前記ナット部の軸方向視における頂部に形成されている請求項1記載の継手。
【請求項3】
前記ナット部は、前記ノーズ結合部及び前記シール部に対し厚肉に形成されている請求項1又は請求項2記載の継手。
【請求項1】
一方側の流路端に接続されるノーズと、
他方側の流路端に螺合により接続されるナット部と、前記他方側の流路端と前記一方側の流路端とが連通されるように前記ノーズが結合されるノーズ結合部と、前記ナット部とノーズ結合部との間に設けられ前記ノーズの外周面との間にシール部材を挟み込むシール部とを有し、かつ射出成形の際のゲート跡が前記ナット部に形成されている樹脂製のボディと、
を備えた継手。
【請求項2】
前記ナット部は、軸方向視で正多角形状を成しており、
前記ゲート跡は、前記ナット部の軸方向視における頂部に形成されている請求項1記載の継手。
【請求項3】
前記ナット部は、前記ノーズ結合部及び前記シール部に対し厚肉に形成されている請求項1又は請求項2記載の継手。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−242851(P2010−242851A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91773(P2009−91773)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
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