説明

継目に対する互い違いの不連続な摩耗防御

本発明は、無端ループを形成するように布を継ぎ合わせる手段と、継目の成分に対する摩耗を防止する、当該布に形成された継目に近接した当該布上に形成された不連続な複数の摩耗ビーズ(20)とを有する工業用布に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙関連工程に使用される工業用布の継目部分の摩耗を防止する手段に関する。
【背景技術】
【0002】
紙の製造は、木材の処理から始まる。木材は、次の2つの物質から主としてなる;即ち、いずれも有機物、つまり炭素原子の鎖又は環の周囲にそれらの分子が構築されたものである。植物細胞の細胞壁に見出されるセルロースは、紙の製造に使用される繊維状の材料である。リグニンは、大型で複雑な分子である;これは、共にセルロース繊維を保持し細胞壁を強化する一種の接着剤として機能し、木材に機械的強度を付与する。木材を、紙の製造に適したパルプに変換するため、セルロース繊維は、リグニンから遊離される必要がある。機械的なパルプ化において、砕木パルプを物理的に生成するため、木材の繊維から分離することにより、なされ、大部分のリグニンがパルプ中に残存することとなる。砕木パルプの高含量のリグニンは、経時的に、紙製品を脆弱にし、劣化させる傾向にある(例えば、黄色化)。機械的なパルプは、新聞印刷用紙や種々の雑誌の製造に主として使用される。
【0003】
多くのパルプ製造において、リグニンは、繊維から化学的に分離される。例えば、クラフト法において、木材チップは、水酸化ナトリウム及び硫化ナトリウムの溶液中で加熱(調理)される。リグニンは、より小型のセグメントに分解され、上記の溶液に溶解する。次のステップ、つまり、「ブラウンストック洗浄(brownstock washing)」において、分解産物及び化学品は、パルプから洗浄され、回収用ボイラーに送られる。クラフト用の無漂白のパルプは、暗色化された残存するリグニンのため、独特の暗褐色を有するが、格別に強固で、梱包、組織化及びタオル地化に適する。
【0004】
より明るく、より耐久性を有する製品のため、パルプは、漂白される必要がある。この漂白工程において、残存するリグニンの色彩は、中性化される(発色団を破壊することにより)か、リグニンで除去される。この工程は、クラフトパルプについて、塩素漂白を行い、その後、通常、洗浄し化学品を抽出し、製品を分解することにより、伝統的に行われてきた。この工程は、布の洗浄とほとんど異なるものではなく、布繊維に包埋された染色物は、漂白により中性化されるか、分解されるか、洗浄される。
【0005】
現在のパルプ製造工程において、リグニン溶液は、2つ以上の異なる洗浄作業を典型的に受ける。例えば、砕木パルプ又は木材チップは、最初に、一定の圧力及び温度下で化学品で処理され、これは、通常、クラフト工程によるか、又は亜硫酸塩工程(sulfite acid process)による。いずれかの工程において、分解により、リグニンは溶解し、これにより、繊維が遊離し、リグニンが溶液に分配される。いずれの工程においても、得られる溶液は、暗色であり、木材から排出しない残存する溶液、及び残存する汚染物は、パルプから洗浄される必要がある。さらに、次なる化学品の回収のコストを最小限とするのに実用的な高濃度で、使用済みの液体を回収することが望ましい。
【0006】
このように洗浄された茶色のパルプは、はっきりとした茶色を保持し、残存するパルプは、通常、白色の紙を製造するには、かなりの着色状態にある。また、種々のリグニンが存在する場合、斯かるパルプから製造される紙は、高い程度の耐久性を有し得ない可能性があり、経時的に黄色化する。従って、白色度を向上させるだけでなく、白色化の耐久性を向上させるため、パルプには、漂白工程を適用することが一般的であり、常套的である。
【0007】
漂白は、単一のステージで達成されなくてもよく、2つ以上のステージで、それぞれのステージの後に洗浄を行って、達成されてもよい。漂白処理の後、パルプには、使用済みの漂白剤及び溶解したリグニンを含有する水を除去するように、洗浄行為が施される。
【0008】
斯かる適用例に使用される工業用布の1つの特定の種類としては、例えば、Black Clawson Chemi Washerで使用されるパルプ洗浄用布がある。
【0009】
特許文献1は、脱水ステージ(又は「形成領域」)及び多重逆流洗浄ステージ(又は集合的に「移動領域」)を有する現在のベルト型のパルプ洗浄機の例を示す。この機械は、無端の移動する小孔ベルトを使用し、このベルトは、駆動端を規定するブレストロール(breast roll)と、非駆動端を規定するカウチロール(couch roll)との周囲に延在し、ベルトの略垂直方向の上部路(upper run)は、各ロール間に延在する。ベルトの下部に配置された一連の吸引ボックスは、形成領域におけるパルプの初期脱水性を提供し、且つ移動領域におけるパルプの洗浄及び脱水を提供する一連のシャワーと組み合わされる。
【0010】
この機械のヘッドボックス及び形成領域からの下流は、一連の洗浄領域又はステージに分割されており、この一連の洗浄領域又はステージには、パルプマットを介して排出されるように上部から洗浄用液体が適用される。最も新鮮で清浄な洗浄用液体は、ワイヤーの非駆動端の最も近傍の領域に適用され、その領域においてマットを介して排出される液体は、吸引ボックスから収集され、直前の洗浄領域に送達される。これらの工程は、最も清浄なパルプが最も清浄な水で処置され且つ最も汚染の程度の高いパルプが最も汚染の程度が高い水で処理されるように、各領域間で繰り返される。
【0011】
最も多くのパルプ洗浄適用例において、簡単に導入されるようにピン継目を設けた張力をかけた布を使用することが、望ましい。この種の製品においてピン継目を使用することにより、機械の製造者が、コストのかからない非片持ち洗浄システムを製造することを可能にする。ピン継目を有する製品に関する問題は、無端に織成され、又は無端に継ぎ合わされた代替物に相対した強度の問題を中心に展開する。特に、布の継目領域は、布の本体に比べて強度が低い。布の設計に依存して、継目の強度は、布本体の引っ張り強度の50%程度であり得る。従って、望ましい特性である継目は、布の最も弱い部分である。最も多くのパルプ洗浄システム(真空すり割り付きデッキ(vacuum slotted decks))が布の摩耗側の高い摩耗性の可能性を提供するので、布の本体よりもキャリパー(caliper)の厚みが典型的により厚い継目又は継目成分は、継目の強度の減弱及び前段階の欠失(継目破壊)をもたらすより高い摩耗率を優先的に受ける可能性がある。
【0012】
この摩耗を基礎とした欠失を緩和するため、継目の寿命を延長するために防御バリアとしてある種の犠牲的な摩耗表面を提供することが、標準的な実用例となっている。特許文献2は、継ぎ合わせ工程に由来する末端が継目領域を覆うように意図的に非切断状態とされている実用例を開示する。いくらか効果的ではあるが、この実用例は、導入の分野では、難しい試みとなり得る。
【0013】
導入領域に逆行的な影響を及ぼさない代替的な実用例としては、継目のいずれかの面上に、ポリマー材料のCD摩耗ビーズ又はストリップを使用することがある。図1は、ループ12と少なくとも1つのピントル14とからなる継目16を含む布10を示す。布10は、また、摩耗ビーズ/ストリップ18を含む。摩耗ビーズ18は、布10の一方の面上に、10cm以内に典型的に配置され、継目16のキャリパーよりも厚い。
【0014】
摩耗ビーズ18を使用することにより、理論的には、継目16は、摩耗ビーズ/ストリップが継目のキャリパーに摩耗され継目の摩耗が開始するまでの間、摩耗から本質的に開放され得る。しかしながら、これらのCDの摩耗ビーズ/ストリップ18の連続的な特性のため、共通の平面(plane)に沿った集中的な応力、又は剥離のいずれかの結果として、摩耗ビーズ/ストリップが壊滅的に欠失する可能性が高い。摩耗ビーズ/ストリップ18を取り除くせん断力は、典型的に、その横切る方向における剥離強度の20倍のオーダーである。従って、摩耗ビーズ/ストリップの堆積に不完全な部分があると、又はパルプ処理工程中に局所的に損傷を受けた摩耗ビーズ/ストリップの部分があると、剥離強度に対して摩耗ビーズ/ストリップ18の強度が減弱されることとなる。斯かる不完全な部分は、製造工程中に発生する可能性があり、或いは、布の幅を横切る方向に堆積されたビーズ材料の長さに沿った任意の箇所の層間剥離の障害により発生する可能性がある。これらの不完全な部分は、布の駆動を早期に損なう効果の少ない摩耗防御性を究極的にもたらす。
【0015】
従って、本発明は、先行技術における布のこれらの欠点を克服することに関する。
【特許文献1】米国特許第5,275,024号明細書
【特許文献2】米国特許第5,791,383号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明は、工業用布の継目部分の摩耗防御を可能とする内蔵型の機構を有する工業用布を提供することを主目的とする。
【0017】
本発明の他の目的は、摩耗防御機構の部分の壊滅的な欠損が布の全ての摩耗防御機構の欠損をもたらさない布を提供することである。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、機械上での継ぎ合わせ技術に逆行的な影響を及ぼさない摩耗防御機構を有する布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、無端ループを形成するように布を継ぎ合わせる手段を有する平坦な織成布と、この布に形成された継目に近接して布の上に形成された不連続な複数の摩耗ビーズとからなる工業用布に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、これらの、及びその他の目的及び利点を提供する。
【0021】
従って、本発明の目的及び利点は、図面と組み合わせた以下の記載により認識される。
【0022】
製紙関連工程に使用される織成されたフィラメント及び布に関連して、本発明の好適実施例について説明する。しかしながら、本発明は、継目の摩耗の阻止が重要である他の工業用設定に使用される布にも適用可能であることに留意すべきである。
【0023】
布の構成は、通常、織成されたヤーンのシステムである。これらのヤーンは、モノフィラメント、諸よりモノフィラメント(plied monofilament)、マルチフィラメント、又は諸よりマルチフィラメントであってもよく、布は、単一層織成、又は多層織成で織成されてもよく;或いは、布は、2つ以上の基礎布の積層構造であってもよい。ヤーンは、工業用布技術において当業者がこの目的で使用する、ポリアミドやポリエステル樹脂などの種々の合成ポリマー樹脂から典型的に成形される。
【0024】
本発明は、継目を有する布に特に関し、図2に示すように、平坦に形成され、継目16を用いて無端とされる。特に、本発明は、ループ12及びピントル14を用いて形成された継目16に関連し、ループ12は、平坦な織成布10の両端部において、機械方向(MD)のヤーンで形成される。機械に布を導入した後、これらのループ12は、継ぎ合わせ工程において互いに噛み合わされ、無端の布を形成するように、このループに1つ以上のピントル14が挿入される。しかしながら、本発明は、ピントル/ループ技術を用いることに限定されず、布の端部においてコイルなどで固定され、これを通過するピントルと共に互いに噛み合わされる他の公知の継ぎ合わせ技術を用いてもよい。本発明に適用可能なその他の適用可能な継ぎ合わせ技術は、当業者に明らかである。
【0025】
図2に示すように、布の導入中に継目結合の効率に影響を及ぼさない耐久性を有する継目防御を提供するため、摩耗ビーズ20を互い違いに、不連続なパターンで形成される。摩耗ビーズ20は、例えば、継目16のいずれかの側面の約10cm以内に配置されてもよい。図2に示すパターンは、例示であり、本発明は、このように限定されるものではない。摩耗ビーズ20の機械を横切る方向におけるその他の非直線の配列及び形状を使用してもよい。
【0026】
本発明の1つの有利な実施例において、摩耗ビーズ/ストリップ20は、熱可塑性プラスティック、又は室温、UV、及び熱活性化型の架橋可能な熱硬化性プラスティックを含むポリマー材料から製造される。この摩耗ビーズの接着方法は、布の本体を形成するヤーンのカプセル化が起こる一方で、図3に示す継目の厚みで定義される摩耗側上に、ビーズ自体が布の平面の上方に延在するように、十分なビーズ材料を堆積することである。言い換えれば、ビーズは、継目よりも高くなる必要がある。
【0027】
本発明の利点の一つとしては、パルプ洗浄機として使用する間に局所的に障害となる、摩耗ビーズ/ストリップの堆積、又は摩耗ビーズ/ストリップの種々の部分における種々の不完全性が、局所のビーズの欠損のみをもたらすことである。本質的に、全体としての摩耗防御ビーズの摩耗は、ビーズの剪断強度の機能となり、布に結合されるビーズの剥離強度は減弱されない。
【0028】
摩耗成分に配列された機械を横切る方向(CD)の結果であるせん断力は、摩耗ビーズを適用した領域のCD長成分に沿って減少する接触領域の結果として、一般的に減弱される。つまり、減少したCDの特性は、摩耗ビーズ20が接触する種々の物体に示されるので、摩耗ビーズ20にかかる剪断応力は、この応力が上記の物体に障害を与える領域の寸法、布の速度及び付着された摩耗ビーズ20を考慮する複合的な応力(composite force)であるので、減弱される。摩耗ビーズに角度をつける(angling)ことにより、摩耗ビーズの有効な表面積は、CD方向からの角度に比例して、減弱される。
【0029】
さらに、図2に示すようにCD方向から摩耗ビーズ20に角度を付けることにより、物体に対する摩耗ビーズの衝撃は、MD及びCDの両方向において摩耗ビーズによって支えられる。つまり、摩耗ビーズ20に対して剪断を発生するMD方向の応力は、衝撃に続いてMD及びCDの両方向の応力のベクトルに分断され、従って、布表面の摩耗を回避するように摩耗ビーズ20によって吸収されるべき剪断応力が減弱する。
【0030】
このように、本発明によってその目的及び利点が理解され、好適実施例を開示し詳細に述べてきたが、本発明の範囲及び目的は、これらによって限定されるものではなく、むしろ、本発明の範囲は、添付した特許請求の範囲によって決定されるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】公知の継目摩耗防御装置を有する工業用布の上面図である。
【図2】本発明による継目摩耗防御装置を有する工業用布の上面図である。
【図3】本発明による防御装置を有する布の側断面図である。
【符号の説明】
【0032】
10 布
12 ループ
14 ピントル
16 継目
18 摩耗ビーズ
20 摩耗ビーズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
継目を有する布と;
無端ループを形成するように前記布を継ぎ合わせる手段と;
前記布に形成された前記継目の近傍の前記布上に形成された複数の不連続な摩耗ビーズと;
を有することを特徴とする工業用布。
【請求項2】
前記の不連続な摩耗ビーズは、当該布の機械を横切る方向に対して一定の角度で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の工業用布。
【請求項3】
前記の不連続な摩耗ビーズは、機械を横切る方向において非直線であることを特徴とする請求項1に記載の工業用布。
【請求項4】
前記の不連続な摩耗ビーズは、熱可塑性プラスティック、並びに室温、UV及び熱活性化型の架橋可能な熱硬化性プラスティックからなる群から選択される材料からなることを特徴とする請求項1に記載の工業用布。
【請求項5】
前記摩耗ビーズは、前記継目から約10cmに配置されていることを特徴とする請求項1に記載の工業用布。
【請求項6】
前記摩耗ビーズは、前記継目の両側面上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の工業用布。
【請求項7】
前記摩耗ビーズは、当該布のヤーンのカプセル化により、当該布に接着されていることを特徴とする請求項1に記載の工業用布。
【請求項8】
前記摩耗ビーズを有する布の領域は、前記摩耗ビーズを有さない領域よりもより厚いキャリパーを有し、
この厚いキャリパーは、継目の摩耗を阻止することを特徴とする請求項1に記載の工業用布。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−519909(P2008−519909A)
【公表日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540202(P2007−540202)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/040693
【国際公開番号】WO2006/053105
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(591097414)アルバニー インターナショナル コーポレイション (110)
【氏名又は名称原語表記】ALBANY INTERNATIONAL CORPORATION
【Fターム(参考)】