説明

網目状金属微粒子積層基板及び透明導電性基板の製造方法

【課題】透明性および耐モアレ性に優れ、連続塗工するプロセスにより、生産性よく製造することができる網目状金属微粒子積層基板の製造方法および網目状金属微粒子積層基板、ならびに、それを用いた透明導電性基板を提供する。
【解決手段】網目状金属微粒子積層基板の製造方法は、基板の少なくとも片面に金属微粒子溶液を塗布することによって、基板上に金属微粒子層を網目状に積層する網目状金属微粒子積層基板の製造方法であって、塗布後、基板面と平行な方向を0度として±45度以内の方向の気流下に基板を置き、かつ、気流の風速を1.0m/秒以上10m/秒以下にし、網目状金属微粒子層を形成する、全光線透過率50%以上の網目状金属微粒子積層基板の製造方法である。また、網目状金属微粒子積層基板は、かかる製造方法によって製造されたものであり、また、透明導電性基板は、かかる網目状金属微粒子積層基板を用いたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性および耐モアレ性に優れ網目状金属微粒子積層基板の製造方法および網目状金属微粒子積層基板、ならびに、それを用いた透明導電性基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
透明導電性基板は回路材料として様々な機器に用いられており、電磁波シールド基板や太陽電池用途として用いられている。
【0003】
電磁波シールド基板は家電用品、携帯電話、パソコン、テレビをはじめとした電子機器から放射された多種多様な電磁波を抑制する目的に用いられている。特に伸長著しいデジタル家電の中で、プラズマディスプレイパネルや液晶テレビなどのフラットパネルディスプレイからも、強力な電磁波が放出されており、人体への影響も懸念されている。これらディスプレイは、比較的近い距離で、かつ場合によっては長時間にわたり画像を観察するため、これら電磁波を抑制する電磁波シールド基板が必要とされ、鋭意検討されている。
【0004】
一般に、ディスプレイパネルに用いられる電磁波シールド基板には、透明な導電性基板が用いられており、現行用いられている電磁波シールド基板用の導電性基板の製造方法には、各種の方法が採用されている。例えば、銅箔をポリエステルフィルムに貼り合わせ、フォトリソグラフィーで規則正しいメッシュ形状をパターン化し、該銅箔をメッシュ状にエッチングすることで、導電性部分が銅であるメッシュ状導電性フィルムを作成している(特許文献1参照)。
【0005】
しかし、前述した従来の技術には次のような問題点がある。
【0006】
特許文献1に記載の銅箔をエッチングする方法は、非常に精度の高いメッシュ形状を得るには優れた方法であるが、銅箔を貼り合わせる工程、フォトリソグラフィー工程、エッチング工程などにおいては、一般的に収率が悪く、各工程の製品ロスが発生しやすいという問題があった。特に、エッチング工程では有害な廃液が発生するなど環境面での課題も多い。更に、素材として銅箔を用い、かつその後、銅箔をエッチングして透過性を上げようとすると、エッチングによって該銅箔の多くの部分を溶かし出して廃液にする必要があり、素材リサイクルの面でも課題が多いものであった。
【0007】
また、この基板の格子状の銅箔層は規則的な構造を有しているため、モアレ現象が発生するという問題を有しているものでもあった。
【0008】
ここで、モアレ現象とは、「点または線が幾何学的に規則正しく分布したものを重ね合せた時に生ずる縞状の斑紋」であり、また広辞苑によれば、「点または線が幾何学的に規制正しく分布したものを重ね合わせた時に生ずる縞模様の斑紋。網版印刷物を原稿として網版を複製する時などに起こりやすい」との記載があり、プラズマディスプレイで言えば、画面上に縞模様状の模様が発生する。これは、ディスプレイの前面に設けられる電磁波シールド基板に格子状などの規則的なパターンが設けられている場合、ディスプレイ背面版の、RGB各色の画素を仕切る規則正しい格子状の隔壁などとの相互作用により、該モアレ現象が生じるものである。また、電磁波シールド基板に格子状などの規則的なパターンが設けられている場合、この格子の線幅が太いほど、このモアレ現象が発生しやすいという問題があったものである。
【0009】
そこで、かかる従来技術の背景に鑑み、金属微粒子溶液、例えば、Cima NanoTech社製CE103−7を用いて、網目状金属微粒子積層基板を作成したところ、透明性および耐モアレ性に優れた網目状金属微粒子積層基板を生産性よく製造することができる網目状金属微粒子積層基板の製造方法および網目状金属微粒子積層基板が得られた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−210988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、前記した該金属微粒子溶液を用いた場合、該網目状金属微粒子層を形成するまでに、長時間要するため、連続で塗工するプロセスに適用することが困難である。また、もし連続で塗工するプロセスに適用できたとしても、該網目状金属微粒子層を形成するまでに、長時間要するため、コストアップにもなってしまい生産性の点でも問題が起こる可能性がある。
【0012】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、透明性および耐モアレ性に優れた網目状金属微粒子積層基板を生産性よく製造し、連続で塗工するプロセスに適用することができる網目状金属微粒子積層基板の製造方法および網目状金属微粒子積層基板、ならびに、それを用いた透明導電性基板を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。
1) 基板の少なくとも片面に金属微粒子溶液を塗布することによって、基板上に金属微粒子層を網目状に積層する網目状金属微粒子積層基板の製造方法であって、
塗布後、基板面と平行な方向を0度として±45度以内の方向の気流下に基板を置き、さらに、該気流の風速を1.0m/秒以上10m/秒以下にすることを特徴とする、全光線透過率50%以上の網目状金属微粒子積層基板の製造方法。
2) 金属微粒子溶液の塗布から気流下に基板を置いている間の温度が、10℃以上50℃以下であることを特徴とする前記1)に記載の網目状金属微粒子積層基板の製造方法。
3) 基板面と平行な方向を0度として±45度以内の方向の気流下に基板を置く時間を、30秒以下とすることを特徴とする、前記1)又は2)に記載の網目状金属微粒子積層基板の製造方法。
4) 基板の幅方向における気流の風速のバラツキが、風速の最大値と最小値の差で2m/秒以内であることを特徴とする前記1)〜3)のいずれかに記載の網目状金属微粒子積層基板の製造方法。
5) 前記1)〜4)のいずれかに記載の方法により製造される網目状金属微粒子積層基板の金属微粒子層を、熱処理後、有機溶媒で処理し、酸で処理することを特徴とする、透明導電性基板の製造方法。
6) 前記5)に記載の製造方法により得られうる透明導電性基板。
7) 表面比抵抗が30Ω/□以下であることを特徴とする、前記6)に記載の透明導電性基板。
8) 前記6)又は7)に記載の透明導電性基板を、電磁波シールド基板としてパネル表面に設けたことを特徴とする、プラズマディスプレイパネル。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、該金属微粒子溶液を塗布後、基板面と平行な方向を0度として±45度以内の方向の気流下に基板を置き、さらに、気流の風速を1.0m/秒以上10m/秒以下にし、網目状金属微粒子層を形成することで、透明性および耐モアレ性のいずれにも優れ、生産性に優れた網目状金属微粒子積層基板を連続で塗工するプロセスに適用することができる。また、本発明のより好ましい態様の製造方法によれば、さらに金属微粒子層の膜厚等のムラを抑制する効果をえることができる。本発明の網目状金属微粒子積層基板を用いた透明導電性基板は、透明性と高いレベルの導電性を有し、耐モアレ性にも優れるので、例えば、プラズマディスプレイパネルや液晶テレビなどのフラットパネルディスプレイに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の網目状金属微粒子積層基板における網目状の構造の一例を示す平面図である。
【図2】基板上の気流方向を測定する方法を説明する模式的に示す概略図である。
【図3】基板上の気流の風速を測定する方法を説明する模式的に示す概略図である。
【図4】風速測定方法において、図3をA方向から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、前記課題、つまり透明性および耐モアレ性のいずれにも優れ、網目状金属微粒子積層基板を連続で塗工するプロセスで、生産性よく製造することができる網目状金属微粒子積層基板の製造方法について、鋭意検討し、基板の少なくとも片面に金属微粒子溶液を塗布して積層基板を製造する際に、基板に該金属微粒子溶液を塗布後、特定な条件を満たす形成方法を用いて、短時間で積層してみたところ、前記課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0017】
本発明では、短時間で該網目状金属微粒子層を形成させる方法として、ある特定な条件を満たす形成方法で、形成させることによって、初めて、透明性に優れた基板を短時間で製造することができたものである。
【0018】
本発明においては、金属微粒子溶液を塗布後、基板面と平行な方向を0度として±45度以内の方向の気流下に基板を置くことが特徴であるが、本発明において、気流角度は、以下のようにして測定した。すなわち、基板上に金属微粒子層を積層する製造工程において、図2のように、積層する基板上2cmの場所で先端に2cmの糸を付けた棒を基板と平行に置き測定した。
【0019】
棒の先端に付けた糸が、基板面と平行になびいていれば気流角度0度、上方垂直になびいていれば気流角度90度、下方垂直になびいていれば気流角度は−90度とした。気流角度は、0度以上±45度以内であることが重要であり、より好ましくは、0度以上±30度以内であり、さらに好ましくは0度以上±15度以内であり、特に好ましくは±5度以内である。該気流角度が±45度から外れると、気流の風速を大きくしたときに、網目状につながった構造がはなれてしまい、そのために、網目状金属微粒子積層基板を用いて透明導電性基板とした際の導電性の点で問題が生じる場合がある。気流角度を0度以上±45度以内とし、さらに気流の風速を後述のように制御することにより、30秒以下という非常に短時間で、基板上に網目状の金属微粒子層を形成することが可能である。また、基板上に網目状の金属微粒子層を形成する時間が30秒を超えると、連続で塗工するプロセスに適用できない可能性があり、生産性およびコストの点で問題が生じる可能性がある。30秒以下という非常に短時間で、基板上に網目状の金属微粒子層を形成することで、連続で塗工するプロセスに適用することができ、生産性を向上させることが可能となる。
【0020】
また、網目状金属微粒子積層基板を連続で塗工するプロセスに適用した場合、気流の方向は、基板の長手方向と平行であることが好ましい。長手方向と平行であれば、基板の流れ方向と同じ方向の気流であっても、もしくは、基板の流れ方向と逆方向の気流であっても特に問題はない。基板の幅方向からの気流の場合は、網目状金属微粒子積層基板としたときに、塗膜にムラが発生する問題が生じる場合がある。
【0021】
なお本発明において、基板面と平行な方向を0度として±45度以内の方向の気流下に基板を置くとは、基板を気流下に置いている時間は常に±45度以内の方向の気流下に基板を置くことを意味する。基板を気流下に置いている間に、基板面と平行な方向を0度として±45度以内の範囲から外れる気流となる場合が少しでもあると、塗膜(網目状金属微粒子層)にムラが生じることとなる。よって気流が乱流の場合には、気流下に基板を置いている間に、基板面と平行な方向を0度として±45度以内の気流となる場合とそこから外れる気流となる場合とが頻繁に入れ替わることとなり、塗膜(網目状金属微粒子層)にムラが生じることとなる。より好ましくは、気流の角度は、常に、一定の角度を保つ場合である。
【0022】
本発明においては、金属微粒子溶液を塗布後、基板面と平行な方向を0度として±45度以内の方向の気流下に基板を置く事になるが、この際の気流の風速を1.0m/秒以上10m/秒以下にすることが特徴である。そして本発明において、気流の風速の測定は、風速計を用いて以下のようにして測定する。すなわち、基板上に網目状金属微粒子層を積層する製造工程において、風速計を用い、基板の金属微粒子溶液を塗布する面の1cm上で、上記で説明した気流角度の測定法で測定した角度の気流のみの風速を測定する。基板のある一点でプローブの測定面を上記で測定した角度で、気流の風速を受けるように置いたときの風速を静止状態で30秒間測定する(図3、図4参照)。30秒間測定した測定値の最大値を気流の風速とする。
【0023】
気流の風速は、1.0m/秒以上10m/秒以下であることが重要であり、好ましくは2.0m/秒以上8.0m/秒以下であり、さらに好ましくは4.0m/秒以上8.0m/秒以下であり、特に好ましくは6.0m/秒以上7.5m/秒以下である。該気流の風速が10m/秒より大きいと、気流角度に関係なく、網目状につながった構造がはなれてしまい、そのために、網目状金属微粒子積層基板を用いて透明導電性基板とした際の導電性の点で問題が生じる場合がある。また、1.0m/秒より小さいと網目状金属微粒子基板を得ることは可能であるが、連続プロセスに適用することを考えたときに、形成に長時間要するため、コストアップなど、生産性に問題が起きてしまう可能性がある。気流角度を0度以上±45度以内とし、さらに気流の風速を1.0m/秒以上10m/秒以下に制御することにより、30秒以下という非常に短時間で、基板上に網目状の金属微粒子層を形成することが可能である。
【0024】
かかる気流の風速は、基板の幅方向でバラツキのないことが特性の安定した網目状金属微粒子積層基板を得るために重要であり、基板の幅方向における気流の風速のバラツキは、幅方向における風速の最大値と最小値の差が2m/秒以内であることが好ましく、より好ましくは、1.5m/秒以内であり、さらに好ましくは、1.0m/秒以内である。基板の幅方向における気流の風速のバラツキが、風速の最大値と最小値の差で2m/秒以内であれば、透明性のバラツキを抑えることができ、該風速の最大値と最小値の差が2m/秒より大きければ、網目状金属微粒子積層基板にするための時間に基板の幅方向でバラツキが生じ、網目状金属微粒子積層基板にしたときに、基板の幅方向に全光線透過率のバラツキが生じてしまい、塗膜のムラが発生する可能性がある。そのため、該網目状金属微粒子積層基板を用いて透明導電性基板とした際、透明性の点で問題が生じる可能性がある。
【0025】
かかる気流の温度は、特に限定されないが、好ましくは10℃以上50℃以下であり、より好ましくは15℃以上40℃以下であり、より好ましくは15℃以上30℃以下である。すなわち、気流の該温度が10℃未満もしくは、50℃より大きいと、全光線透過率が落ち、網目状金属微粒子積層基板の透明性の点で問題が生じる場合がある。また、網目状につながった構造がはなれてしまい、そのために、網目状金属微粒子積層基板を用いて透明導電性基板とした際の導電性の点で問題が生じる場合がある。後述するように、基板上の温度が10℃以上50℃以下の条件を満たすことが大切であり、これを満たすように気流自体の温度を調整することが好ましい。
【0026】
本発明において、基板の少なくとも片面に金属微粒子溶液を塗布する際の、少なくとも金属微粒子溶液の塗布開始から塗布完了までの間の温度、さらに塗布後基板面と平行から±45度以内の方向の気流下に基板を置いている間の温度は(つまり、金属微粒子溶液の塗布から気流下に基板を置いている間の温度は)、特に限定されず、金属微粒子溶液中の溶媒によって適宜選択すればよいが、基板上の温度が10℃以上50℃以下の条件を満たすように制御されていることが好ましい。かかる基板上の温度は、より好ましくは15℃以上40℃以下であり、さらに好ましくは15℃以上30℃以下である。すなわち、塗布された金属微粒子溶液の溶媒を熱によって除去することとなるような高い温度、例えば50℃よりも高い温度の場合、急激に溶媒が除去されるために金属微粒子層を網目状に積層する工程に不具合が生じ、全光線透過率が低下し、網目状金属微粒子積層基板の透明性の点で問題が生じる場合がある。さらに気流の温度が50℃を超える場合、急激に溶媒が除去されることで網目状につながった構造がはなれてしまい、そのために、網目状金属微粒子積層基板を用いて透明導電性基板とした際の導電性の点で問題が生じる場合がある。また、基板上の温度が10℃未満である場合、溶媒の除去速度が遅れ、網目状金属微粒子層を形成するまでに、長時間要し、連続で塗工するプロセスに適用できない可能性があり、生産性およびコストの点で問題が生じる可能性がある。そのため、金属微粒子溶液の塗布から気流下に基板を置いている間の温度は、基板上の温度で10℃以上50℃以下であることが好ましく、このような条件となるように気流の温度を調整することが好ましい。
【0027】
かかる基板上の温度の測定は、温度計を用いて以下のようにして測定する。すなわち、基板上に網目状金属微粒子層を積層する製造工程において、温度計を用い、基板の金属微粒子溶液を塗布する面の中心から1cm上の温度を測定したものである。
【0028】
また、かかる気流自体の湿度は、特に限定されないが、好ましくは10〜70%RHであり、より好ましくは20〜60%RHであり、特に好ましくは30〜50%RHである。すなわち、気流の湿度が1%未満では、全光線透過率が落ち、網目状金属微粒子積層基板の透明性の点で問題が生じる場合がある。また、基板上の湿度が85%RHより大きいと、網目状につながった構造がはなれてしまい、そのために、網目状金属微粒子積層基板を用いて透明導電性基板とした際の導電性の点で問題が生じる場合がある。後述するように、基板上の湿度が1〜85%RHの条件を満たすことが大切であり、これを満たすように気流自体の湿度を調整することが好ましい。
【0029】
本発明の網目状金属微粒子積層基板の製造方法において、基板の少なくとも片面に金属微粒子溶液を塗布する際の、少なくとも金属微粒子溶液の塗布開始から塗布完了までの間、さらに塗布後基板面と平行な方向を0度として±45度以内の方向の気流下に基板を置く間は、基板上の湿度を1〜85%RHの条件を満たす雰囲気に制御することが好ましい。かかる基板上の湿度は、好ましくは、10〜70%RHであり、より好ましくは20〜60%RHであり、特に好ましくは30〜50%RHである。すなわち、基板上の湿度が1%未満では、全光線透過率が落ち、網目状金属微粒子積層基板の透明性の点で問題が生じる場合がある。また、基板上の湿度が85%RHより大きいと、網目状につながった構造がはなれてしまい、そのために、網目状金属微粒子積層基板を用いて透明導電性基板とした際の導電性の点で問題が生じる場合がある。
【0030】
かかる基板上の湿度の測定は、湿度計を用いて以下のようにして測定する。すなわち、基板上に網目状金属微粒子層を積層する製造工程において、湿度計を用い、基板の金属微粒子溶液を塗布する面の中心から1cm上の湿度を測定したものである。
【0031】
本発明において、金属微粒子溶液として網目形状に自己組織化する金属微粒子溶液を用いる場合、さらに、少なくとも金属微粒子溶液の塗布開始から金属微粒子溶液が網目形状になるまでの間において、上述したように基板上の湿度を特定な条件に維持することが好ましい。
【0032】
かかる気流の発生方法は、基板上の空気を排気もしくは、基板上に空気を給気することによって、気流の流れを発生することができる。
【0033】
排気もしくは給気する方法については、特に限定はないが、該方法により、基板面と平行な方向を0度として±45度以内の方向の気流を作ることが重要である。
【0034】
例えば、排気する方法は、排気ファンや、ドラフトなどを使用して、排気することができる。また、給気する方法は、クーラーや、ドライヤーなのを使用することで、給気することができる。
【0035】
基板に該金属微粒子溶液を塗布後、基板面と平行な方向を0度として±45度以内の方向の気流下に基板を置く時間は、30秒以下であることが好ましく、より好ましくは25秒以下であり、さらに好ましくは20秒以下である。形成時間が30秒より長くなると、連続で塗工するプロセスへの適用を考えたとき、生産設備がない、コストアップになるなど生産性的に困難である。また、基板に該金属微粒子溶液を塗布後、基板面と平行な方向を0度として±45度以内の方向の気流下に該基板を置く時間は、短い程好ましいものの、塗布した塗膜が網目状になる時間があるため、現実的には5秒未満とすることは困難であり、また5秒程度であれば実用的にも十分である。
【0036】
基板に該金属微粒子溶液を塗布後、気流下に基板を置く時間を30秒以下として、好適に金属微粒子層を網目状に積層するためには、前述の基板に金属微粒子溶液を塗布後、基板面と平行な方向を0度として±45度以内の方向の気流下に基板を置き、さらに、該気流の風速を1.0m/秒以上10m/秒以下にすることにより達成可能である。
【0037】
本発明では、網目状金属微粒子積層基板の製造方法において、かかる基板の該金属微粒子溶液が塗布される面の表面ぬれ張力を、45mN/m以上73mN/m以下にすることが好ましく、より好ましくは50〜73mN/mであり、さらに好ましくは55〜73mN/mである。表面ぬれ張力は、73mN/mが測定限界値であり、45mN/m未満であると、基板の該面に該金属微粒子溶液を塗布したときに、金属微粒子溶液が網目状にならず、全体に均一な塗膜ができてしまい、金属微粒子積層基板の透明性が劣る問題が生じる場合がある。
【0038】
基板の該金属微粒子溶液が塗布される面の表面ぬれ張力を45mN/m以上73mN/m以下とするためには、コロナ放電処理、プラズマ処理などの公知の方法が使用できる。
【0039】
なお本発明では、基板の表面をアンカーコート剤やプライマーなどのコーティングにより親水性処理を行うなどして、少なくとも片面に親水性処理層を有する基板とすることで、金属微粒子溶液が塗布される側の面の表面ぬれ張力を、45mN/m以上73mN/m以下とすることも、好ましい実施態様である。
【0040】
かかる網目状金属微粒子積層基板の全光線透過率は好ましくは50%以上であり、より好ましくは65%以上であり、さらに好ましくは75%以上である。全光線透過率が50%より小さいと、網目状金属微粒子積層基板の透明性の点で問題が生じる場合がある。網目状金属微粒子積層基板の全光線透過率は、高いほうが好ましいものの、導電性との兼ね合いなどにより、90%程度が上限と考えられる。
【0041】
かかる全光線透過率は、下記測定方法により測定されたものである。すなわち、常態(23℃、相対湿度65%)において、網目状金属微粒子積層基板を2時間放置した後、スガ試験機(株)製全自動直読ヘイズコンピューター「HGM−2DP」を用いて測定した。3回測定した平均値を該網目状金属微粒子積層基板の全光線透過率とした。全光線透過率が50%以上であれば透明性は良好である。なお、基板の片面のみに金属微粒子層を積層している網目状金属微粒子積層基板の場合、金属微粒子層を積層した面側より光が入るように基板を設置して測定したものである。
【0042】
本発明において、金属微粒子溶液を用いて網目状の構造を形成させる場合、例えば、金属微粒子と分散剤などの有機成分とからなる粒子を含む固形分の溶液(金属コロイド溶液)を用いて、塗布を行う方法を好適に用いることができる。かかる金属コロイド溶液の溶媒としては、水、各種の有機溶媒を用いることができる。
【0043】
かかる金属微粒子の調整法としては、例えば、液層中で金属イオンを還元して金属原子とし、原子クラスターを経てナノ粒子へ成長させる化学的方法や、バルク金属を不活性ガス中で蒸発させて微粒子となった金属をコールドトラップで捕捉する手法や、ポリマー薄膜上に真空蒸着させて得られた金属薄膜を加熱して金属薄膜を壊し、固相状態でポリマー中に金属ナノ粒子を分散させる物理的手法などを用いることができる。
【0044】
本発明においては、金属微粒子溶液として自己組織化する金属微粒子溶液を好ましく用いることができる。ここで、「自己組織化する金属微粒子溶液」とは、基板上に一面に塗布して放置しておくと、自然に基板上に網目状の構造を形成する溶液を意味するものである。このような金属微粒子溶液としては、例えばCima NanoTech社製CE103−7を用いることができる。
【0045】
本発明の網目状金属微粒子積層基板における網目状の構造は、不規則であることが好ましい。すなわち、本発明の網目状金属微粒子積層基板をプラズマディスプレイに貼り合わせて使用した場合、網目状の構造を不規則な構造にすることでモアレ現象が発生しないものを得ることができるからである。
【0046】
かかる不規則な網目状の構造は、微分干渉顕微鏡の観察像で特定し、該網目状の構造が、その形状において、空隙部分の形状や大きさが不揃いである状態、すなわち不規則な状態として観察されるものであり、従って、網目を構成する部分、すなわち線状の部分の形状も直線ではなく線太さが不揃いである状態、すなわち不規則な状態として観察されるものである。不規則な網目状の構造の一例を図1に示すが、これに限定されるものではない。
【0047】
本発明の網目状金属微粒子積層基板の製造方法においては、基板の少なくとも片面に金属微粒子溶液を塗布する際に、基板に接触しない非接触式塗布方法によって金属微粒子溶液を積層するという特定の条件を満たすことが重要である。該非接触式塗布方法は基板に接触しなければ限定はなく、公知の塗布方法、例えば、ダイコート法、アプリケーター法、コンマコート法、スプレー法、ディッピング法などを用いることができる。該金属微粒子溶液を塗布する際に、基板と接触する接触式の塗布方法を用いた場合、基板と接触した部分がキズになったり、金属微粒子溶液を塗布した際に、基板と接触した部分にスジが発生するなどの問題が生じる場合があり好ましくない。
【0048】
また、基板の該表面ぬれ張力が45mN/m以上の表面をさらに親水化処理を行った基板上に基板と接触する接触式の塗布方法を用いた場合、基板と接触した部分の親水性処理層が削り取られ、網目状にならない場合があり好ましくない。例えば、金属微粒子溶液の塗布を基板と接触する接触式であるワイヤーバーを用いて積層した網目状金属微粒子積層基板は、ワイヤーバーのワイヤーピッチに沿って、ワイヤバーと接触した部分と接触しない部分で網目状の構造の空隙部分の大きさが異なり、接触した部分は空隙が大きくなり、接触しない部分は空隙が小さくなる。その異なる大小空隙がスジ状に交互に配列され、規則的なパターンになってしまい、モアレ現象が生じてしまうことがある。また、金属微粒子溶液の塗布を基板と接触する接触式であるグラビアコーターを用いて積層した網目状金属微粒子積層基板は、グラビアが基板と接触したことにより、金属微粒子溶液がグラビアの版目状に塗布されてしまい、グラビア版目が生じてしまうことがある。そのため、金属微粒子溶液の塗布は、基板と接触しない非接触式塗布方法で行う必要がある。
【0049】
本発明における金属微粒子に用いられる金属としては、特に限定されず、白金、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、ビスマス、コバルト、鉄、アルミニウム、亜鉛、錫などが挙げられる。金属は1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
本発明における金属微粒子層とは、上記のような金属微粒子によって構成された層であり、金属微粒子以外に、他の各種添加剤、例えば、分散剤、界面活性剤、保護樹脂、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤などの無機成分、有機成分を含有することができる。
【0051】
本発明においては、積層した金属微粒子層を熱処理など金属微粒子層の導電性を高めるための公知の方法を用いて、金属微粒子層の導電性を高めることにより、網目状金属微粒子積層基板から好適に透明導電性基板を得ることができる。
【0052】
そして、上述した基板の少なくとも片面に金属微粒子溶液を塗布後、基板面と平行な方向を0度としてから±45度以内の方向の気流下に基板を置き、さらに、該気流の風速を1.0m/秒以上10m/秒以下にすることを特徴とする製造方法により得られた網目状金属微粒子積層基板は、さらに該網目状金属微粒子積層基板の金属微粒子層を、熱処理後、有機溶媒で処理し、酸で処理することにより、導電性に優れた透明導電性基板を製造することができる。
【0053】
本発明において、透明導電性基板を得るための網目状金属微粒子積層基板の金属微粒子層の熱処理の温度は、好ましくは、100℃以上200℃未満、より好ましくは、130℃以上180℃以下、さらに好ましくは140℃以上160℃以下である。すなわち、200℃以上の高温で長時間行うと、基板の変形などの問題が生じる場合があり好ましくない。また、熱処理温度が100℃未満であると、網目状金属微粒子積層基板を用いて透明導電性基板とした際の導電性の点で問題が生じる場合がある。
【0054】
かかる熱処理の時間は、好ましくは、30秒以上3分以下であり、より好ましくは、1分以上3分以下、さらに好ましくは、2分以上3分以下である。すなわち、30秒より短時間の熱処理では、網目状金属微粒子積層基板を用いて、透明導電性基板とした際の導電性の点で問題が生じる場合がある。また、3分より長く熱処理を行うと、連続プロセスに適用することを考えたときに、熱処理工程を、長時間必要とし、コストアップなど、生産性に問題が起きてしまう可能性がある。
【0055】
また、上述のように網目状金属微粒子積層基板の金属微粒子層を熱処理後、続いて網目状金属微粒子積層基板の金属微粒子層を酸で処理する方法により、導電性を高めることで透明導電性基板を得ることが好ましい。かかる酸で処理する方法は、穏和な処理条件で金属微粒子の導電性を高めることができるため、かかる緩和な処理条件を選択すれば、熱可塑性樹脂など、耐熱性や耐光性に劣る材料を基板として用いた場合でも、好適に酸処理することができる。また、複雑な装置や工程を必要としない方法のため、生産性の点でも好ましい。
【0056】
かかる酸とは、特に限定されず、種々の有機酸、無機酸から選択することができる。有機酸としては、酢酸、シュウ酸、プロピオン酸、乳酸、ベンゼンスルホン酸などが挙げられる。無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。これらは、強酸であっても、弱酸であってもよい。好ましくは酢酸、塩酸、硫酸、およびその水溶液であり、より好ましくは塩酸、硫酸、およびその水溶液を用いることができる。
【0057】
かかる酸で処理する具体的な方法としては、特に限定されず、例えば、酸や、酸の溶液の中に金属微粒子層を積層した基板を浸したり、酸や、酸の溶液を金属微粒子層の上に塗布したり、酸や、酸の溶液の蒸気を銀微粒子層にあてたりする方法が用いられる。
【0058】
また、上述のように網目状金属微粒子積層基板の金属微粒子層の熱処理後であり、さらに網目状金属微粒子積層基板の金属微粒子層を酸で処理する前に、金属微粒子層を有機溶媒で処理することで、導電性を高めて透明導電性基板を得る方法が好ましい。このように網目状金属微粒子積層基板の金属微粒子層の熱処理後であり、網目状金属微粒子積層基板の金属微粒子層を酸で処理する前に、有機溶媒で処理を行うと、より優れた導電性を有する透明導電性基板が得られやすくなる。
【0059】
かかる金属微粒子層を有機溶媒で処理する段階としては、基板上に金属微粒子を網目状に積層して網目状金属微粒子積層基板としておいてから有機溶媒で処理する方法が、導電性を高める効果に優れ、生産性の点で効率がよいため好適に用いられる。 また、かかる有機溶媒で処理する前や後に、金属微粒子層を積層した基板に別の層を印刷したり、塗布したりして積層してもよい。また、かかる有機溶媒で処理する前や後に、金属微粒子層を積層した基板を乾燥したり、熱処理したり、紫外線照射処理などをしてもよい。
【0060】
かかる金属微粒子層を有機溶媒で処理する際に該有機溶媒の処理温度は、常温で十分である。高温で処理を行うと、基板として熱可塑性樹脂フィルムを用いた場合には、基板を白化させ、透明性を損ねる場合があるため、好ましくない。かかる処理温度は、好ましくは40℃以下であり、より好ましくは30℃以下であり、特に好ましくは25℃以下である。
【0061】
かかる金属微粒子層を有機溶媒で処理する方法は特に限定されず、例えば、有機溶媒の溶液の中に金属微粒子層を積層した基板を浸したり、有機溶媒を金属微粒子層上に塗布したり、有機溶媒の蒸気を金属微粒子層にあてたりする方法が用いられる。これらの中でも、有機溶媒の中に金属微粒子層を積層した基板を浸したり、有機溶媒を金属微粒子層上に塗布したりする方法が、導電性向上効果に優れるため好ましい。
【0062】
かかる有機溶媒の一例を挙げると、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、1,3ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサンなどのアルカン類、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキシドなどの双極性非プロトン溶媒、トルエン、キシレン、アニリン、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコール、エチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、クロロホルム等、およびこれらの混合溶媒を使用することができる。これらの中でも、ケトン類、エステル類、トルエンが含まれていると、導電性向上効果に優れるため好ましく、特に好ましくはケトン類である。
【0063】
本発明における透明導電性基板の導電性に関しては、表面比抵抗が30Ω/□以下であることが好ましい。かかる表面比抵抗は、より好ましくは20Ω/□以下であり、さらに好ましくは10Ω/□以下であり、特に好ましくは4Ω/□以下である。かかる表面比抵抗が30Ω/□以下であると、導電性基板として通電して用いる際に、抵抗による負荷が小さくなるため、発熱が抑えられることや、低電圧で用いることができるので好ましい。また、例えば、プラズマディスプレイパネルや液晶テレビなど、フラットパネルディスプレイの電磁波シールド基板用の透明導電性基板として用いた場合には、電磁波シールド性が良好となるため、好ましい。透明導電性基板の表面比抵抗は、低い方が好ましいものの、現実的に達成可能な下限は、1Ω/□程度と考えられ、そのため1Ω/□程度が下限と考えられる。
【0064】
かかる表面比抵抗の測定は、例えば、網目状金属微粒子積層基板を150℃で2分間、熱処理を行い、1Nの塩酸に入れ、1分間放置する。その後、網目状金属微粒子積層基板を取り出して、水洗し、乾燥を行い、常態(23℃、相対湿度65%)において24時間放置後、その雰囲気下で、JIS−K−7194(1994)に準拠し、ロレスタ−EP(三菱化学株式会社製、型番:MCP−T360)を用いて測定することができる。かくして得られた表面比抵抗が30Ω/□以下であれば導電性は良好である。
【0065】
本発明における基板とは、特に限定されず、ガラスや樹脂など種々の基板を用いることができる。また、ガラスや樹脂などの基板を2種以上貼り合わせるなどして組み合わせたものも用いることができる。
【0066】
本発明において、基板の表面に親水性処理層が積層されている場合には、金属微粒子が網目状に積層されやすくなるため好ましい。かかる親水性処理層としては、特に限定されるものではないが、ポリエステル、アクリル変性ポリエステル、ポリウレタン、アクリル系樹脂、メタクリレート系樹脂、ポリアミド、ポリビニルアルコール類、澱粉類、セルロース誘導体、ゼラチン等の天然樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリアクリルアミド、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリアニリン、各種シリコーン樹脂や変性シリコーン樹脂などからなる層を用いることができる。
【0067】
本発明において、基板が熱可塑性樹脂フィルムである場合、透明性、柔軟性、加工性に優れるなどの点で好ましい。本発明でいう熱可塑性樹脂フィルムとは、熱によって溶融もしくは軟化するフィルムの総称であって、特に限定されるものではないが、代表的なものとして、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルムやポリエチレンフィルムなどのポリオレフィンフィルム、ポリ乳酸フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルムやポリスチレンフィルムなどのアクリル系フィルム、ナイロンなどのポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリウレタンフィルム、フッ素系フィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルムなどを用いることができる。
【0068】
これら熱可塑性樹脂フィルムとしては、ホモポリマーでも共重合ポリマーで構成されたものあってもよいが、これらのうち、機械的特性、寸法安定性、透明性などの点で、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアミドフィルムなどが好ましく、更に、機械的強度、汎用性などの点で、ポリエステルフィルムが特に好ましい。
【0069】
かかるポリエステルフィルムにおいて、ポリエステルとは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称であって、エチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート、ブチレンテレフタレート、プロピレン−2,6−ナフタレート、エチレン−α,β−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどから選ばれた少なくとも1種の構成成分を主要構成成分とするものを好ましく用いることができる。これら構成成分は、1種のみ用いても、2種以上併用してもよいが、中でも品質、経済性などを総合的に判断すると、エチレンテレフタレートを主要構成成分とするポリエステル、すなわち、ポリエチレンテレフタレートを用いることが特に好ましい。また、基板に熱や収縮応力などが作用する場合には、耐熱性や剛性に優れたポリエチレン−2,6−ナフタレートが更に好ましい。これらポリエステルには、更に他のジカルボン酸成分やジオール成分が一部、好ましくは20モル%以下共重合されていてもよい。
【0070】
かかるポリエステルの極限粘度(25℃のo−クロロフェノール中で測定)は、0.4〜1.2dl/gが好ましく、より好ましくは0.5〜0.8dl/gの範囲にあるものが本発明を実施する上で好適である。
【0071】
また、かかる熱可塑性樹脂、たとえばポリエステル中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などがその特性を悪化させない程度に添加されていてもよい。
【0072】
かかる熱可塑性樹脂フィルム、たとえばポリエステルフィルムは、二軸配向されたものであるのが好ましい。かかる二軸配向ポリエステルフィルムとは、一般に、未延伸状態のポリエステルシートまたはフィルムを長手方向および幅方向に各々2.5〜5倍程度延伸し、その後、熱処理を施し、結晶配向を完了したものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。
【0073】
かかる熱可塑性樹脂フィルム、たとえばポリエステルフィルムの厚みは、特に限定されるものではなく、用途や種類に応じて適宜選択されるが、機械的強度、ハンドリング性などの点から、好ましくは10〜500μm、より好ましくは38〜250μm、最も好ましくは75〜150μmである。また、たとえば基板としてポリエステルフィルムを用いる場合は、共押出による複合フィルムであってもよい。一方、得られたフィルムを各種の方法で貼り合わせたものも用いることができる。
【0074】
本発明の網目状金属微粒子積層基板には、基板、金属微粒子層の他に各種の層が積層されていてもよい。例えば、特に限定されるものではないが、基板と金属微粒子層の間に密着性改善のための下塗り層などが設けられていてもよく、金属微粒子層の上に保護層が設けられていてもよく、基板の片面、または両面に粘着層や、離型層や、保護層や、接着性付与層や、耐候性層などが設けられていてもよい。なお、各種層を金属微粒子層を有さない側の基板面に形成する場合は、特に限定されずに各種層を形成することができるが、基板と金属微粒子層の間に各種層を設ける場合は以下の点に注意が必要である。つまりこのような各種層を、基板と金属微粒子層の間に設ける場合、金属微粒子溶液を塗布する基板上の各種層の表面ぬれ張力が、45mN/m以上73mN/m以下であることが重要であり、これら層が上述の表面ぬれ張力を有する限りは本発明において基板上に各種層を設けることができる。
【0075】
以下、本発明の網目状金属微粒子積層基板の製造方法をより具体的に例示して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、表面ぬれ張力が47mN/mである二軸延伸ポリエステルフィルムに親水性処理層を積層し、銀微粒子溶液を基板と接触しないダイコート法で塗布し、銀微粒子層を網目状に積層する。本発明の網目状金属微粒子積層基板の製造方法を用いれば、透明性と耐モアレ性に優れ、塗膜にキズやスジをなくした網目状金属微粒子積層基板を、生産性に優れた方法で得ることができる。なお、ここで説明した二軸延伸ポリエステルフィルムは表面ぬれ張力が47mN/mであるので、親水性処理層を設けなくても、比較的優れた網目状金属微粒子積層基板を得ることができる。
【0076】
また、このようにして得た網目状金属微粒子積層基板から、透明導電性基板を得るためには、例えば、網目状金属微粒子積層基板を150℃で2分間、熱処理を行い、アセトンで30秒処理し、1Nの塩酸に入れ、1分間放置する。その後、網目状金属微粒子積層基板を取り出して、水洗し、乾燥することで好適に得られる。
【0077】
本発明の網目状金属微粒子積層基板を用いた透明導電性基板は、透明性と高いレベルの導電性を有しているため、プラズマディスプレイパネルや液晶テレビなどのフラットパネルディスプレイに用いられる電磁波シールドフィルムとして用いることが可能である他、回路材料用途や、太陽電池用途など、各種の導電性基板用途にも好適に用いることができる。
[特性の測定方法および効果の評価方法]
各実施例・比較例で作成した導電性基板の特性の測定方法および効果の評価方法は次のとおりである。
(1)金属微粒子層積層時の気流角度
気流角度は、基板上に金属微粒子層を積層する製造工程において、図2のように、積層する基板上2cmの場所で先端に2cmの糸を付けた棒を基板と平行に置き測定した。ここで、測定には、ポリエステル系繊維のマルチフィラメントで、太さが140dtexの糸を使用した。なおこの測定の際は、マルチフィラメントであれば、これに限定する必要はなく、ポリエステル系繊維の他に、ポリアミド系繊維、ポリウレタン系繊維などを用いてもよい。また、糸の太さは、70dtex以上500dtex以下が好ましく、すなわち、70dtexより細い場合、気流角度が確認しづらく、500dtexより太い場合、気流が発生しても糸がなびかない可能性がある。
【0078】
また、棒の先端に付けた糸が、基板面と平行になびいていれば気流角度0度、上方垂直になびいていれば気流角度90度、下方垂直になびいていれば気流角度は−90度とした。測定した気流角度が基板面と平行から±45度以内の方向であれば良好とした。
(2)金属微粒子層積層時の気流の風速
気流の風速の測定は、基板上に網目状金属微粒子層を積層する製造工程において、風速計CLIMOMASTER(MODEL 6531 日本カノマックス(株)製)を用い、基板の金属微粒子溶液を塗布する面の1cm上で、上記で説明した気流角度の測定法で測定した角度の気流のみの風速を測定した。基板のある一点でプローブの測定面を上記で測定した角度で、気流の風速を受けるように置いたときの風速を静止状態で30秒間測定した(図3、図4参照)。30秒間測定した測定値の最大値を気流の風速とした。
(3)金属微粒子層積層時の基板の幅方向における気流の風速のバラツキ
基板の幅方向における気流の風速のバラツキ測定は、基板上に網目状金属微粒子層を積層する製造工程において、風速計CLIMOMASTER(MODEL 6531 日本カノマックス(株)製)を用い、基板の金属微粒子溶液を塗布する面の1cm上で、基板の幅方向を5cm間隔で、上記(2)で説明した気流の風速の測定法を用いて測定した。得られた気流の風速の最大値と最小値の差の範囲が2m/秒以内であれば、ムラに影響することがなく、良好とした。
(4)表面ぬれ張力
基板の表面ぬれ張力の測定は、各実施例・比較例で用いた基板を常態(23℃、相対湿度50%)において、6時間放置後、その雰囲気下で、JIS−K−6768(1999)に準拠した形で行った。
【0079】
まず、基板の測定したい面を上にしてハンドコーターの基盤の上に置き、表面ぬれ張力試験用混合液を数滴滴下して、直ちにWET厚み12μmが塗布できるワイヤーバーを引いて広げる。
【0080】
表面ぬれ張力の判断は、試験用混合液の液膜を明るいところで観察し、2秒後の液膜の状態で行う。液膜が破れを生じないで、2秒以上、塗布されたときの状態を保っていればぬれていることになる。ぬれが2秒以上保つ場合は、さらに、表面ぬれ張力の高い混合液に進み、また逆に、2秒未満で液膜が破れる場合は、表面ぬれ張力の低い混合液に進む。この操作を繰り返し、基板の表面を正確に2秒以上ぬらすことができる混合液を選び、その基板の表面ぬれ張力とする。この測定法による表面ぬれ張力の最大は、73mN/mである。
【0081】
表面ぬれ張力の単位は、mN/mである。
【0082】
(5)表面観察(形状観察)
網目状金属微粒子積層基板の表面を微分干渉顕微鏡(LEICA DMLM ライカマイクロシステムズ(株)製)にて倍率100倍で観察し、網目の形状を観察した。
【0083】
(6)表面比抵抗
表面比抵抗の測定は、各実施例・比較例で得られた金属微粒子積層基板を、150℃で2分間の熱処理を行い、1Nの塩酸に入れ1分間放置する。その後、金属微粒子積層基板を取り出して、水洗し、乾燥を行い、常態(23℃、相対湿度65%)において24時間放置後、その雰囲気下で、JIS−K−7194(1994)に準拠した形で、ロレスタ−EP(三菱化学株式会社製、型番:MCP−T360)を用いて実施した。単位は、Ω/□である。
【0084】
なお、本測定器は1×10Ω/□以下が測定可能である。表面比抵抗が30Ω/□以下であれば導電性は良好である。
【0085】
(7)全光線透過率
全光線透過率は、常態(23℃、相対湿度65%)において、網目状金属微粒子積層基板を2時間放置した後、スガ試験機(株)製全自動直読ヘイズコンピューター「HGM−2DP」を用いて測定した。3回測定した平均値を該網目状金属微粒子積層基板の全光線透過率とした。
【0086】
全光線透過率が50%以上であれば透明性は良好である。なお、基板の片面のみに金属微粒子層を積層している積層基板の場合、金属微粒子層を積層した面側より光が入るように基板を設置した。
【0087】
(8)金属微粒子層形成時の基板上の湿度
湿度は、基板上に網目状金属微粒子層を積層する製造工程において、積層する基板の1cm上をCLIMOMASTER(MODEL 6531 日本カノマックス(株)製)にて測定した。湿度は、該基板の金属微粒子溶液を塗布する面の中心から1cm上で15秒以上測定し、安定したときの値とした。
【0088】
(9)金属微粒子層形成時の基板上の温度
温度は、基板上に網目状金属微粒子層を積層する製造工程において、積層する基板の1cm上をCLIMOMASTER(MODEL 6531 日本カノマックス(株)製)にて測定した。温度は、該基板の金属微粒子溶液を塗布する面の中心から1cm上で30秒以上測定し、安定したときの値とした。
【0089】
(10)塗膜のムラ
網目状金属微粒子積層基板の全光線透過率を上記(7)の全光線透過率の測定方法を用いて、幅方向5cm間隔で測定した。測定した全光線透過率の最大値と最小値が3%以内であれば、目視で塗膜のムラが見えない。
上記測定方法により、測定した全光線透過率の最大値と最小値が3%以内を「○」、3%を超えるものを「×」とし、「○」であれば塗膜のムラは良好とした。
(11)耐モアレ性
耐モアレ現象は、画像が映し出されているプラズマディスプレイとして、松下電器産業株式会社製VIERA TH−42PX50を用いて、画面の前で、画面と網目状金属微粒子積層基板が概ね平行になるようにして基板を持ち、画面と基板面が概ね平行の状態を保ちながら基板を360°回転させ、回転中にモアレ現象が発現するか否かを目視で観察することで評価した。
【0090】
モアレが観察されないものを「○」、モアレが観察されるものを「×」とした。部分的にモアレが観察されるものを「△」とした。目視観察が「○」であればモアレ現象は良好とした。
【0091】
なお、基板の片面のみに金属微粒子層を積層している場合、金属微粒子層を積層していない面側がディスプレイ画面に対向するように網目状金属微粒子積層板を持った。
【0092】
(12)網目状金属微粒子層を形成する時間
金属微粒子溶液を基板上の一面に塗布すると、塗布直後の基板は、透明ではなく、時間の経過とともに透明となる。ここで「網目状金属微粒子層を形成する時間」とは、金属微粒子溶液を塗布してから、透明な基板が形成されるまでの時間として評価した。そして、この時間が30秒以下の場合を生産性○、30秒を超える場合を生産性×として評価した。
【実施例】
【0093】
次に、実施例に基づいて本発明を説明する。
【0094】
(金属微粒子溶液1)
金属微粒子溶液1として、銀微粒子溶液であるCima NanoTech社製CE103−7を用いた。
(実施例1)
二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製 ルミラー(登録商標)U46、表面ぬれ張力47mN/m)の片面にプライマーを塗布し、親水性処理を行った。親水性処理を行った基板の表面ぬれ張力は、73mN/mであった。続いて、ドラフト内を排気し、基板上を湿度30%RH、温度25℃とし、さらに、前記気流が基板面と平行から0度の方向となるように基板を気流下に置き、さらに、その気流の風速を4m/秒(幅方向における最大値が4.0m/秒、最小値が3.5m/秒)に調整した。このドラフト内で、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの親水性処理層上に金属微粒子溶液1をWET厚み30μmになるように基板に接触しないアプリケーター法を用いて塗布した。
【0095】
塗布した金属微粒子層は、塗布後、22秒で銀微粒子層を積層した積層基板(網目状金属微粒子積層基板)を形成した。この積層基板は、網目状であり、全光線透過率は80%で、塗膜のムラが良好で「○」であり、さらに、耐モアレ性も良好であり「○」であった。
【0096】
次に、この積層基板を150℃の熱風オーブン(タバイエスペック(株)製 PHH−200)で2分間、熱処理を行った。続いて、この積層基板ごと25℃のアセトン(佐々木化学薬品(株)製)に30秒間浸け(アセトン処理)、積層基板を取り出し、25℃で3分間乾燥させた。次に、この積層基板の銀粒子層を酸処理するために、1Nの塩酸(ナカライテスク(株)製 1N−塩酸)に1分間浸けた。その後、積層基板を取り出し、水洗した後、水分を飛ばすために積層基板を150℃の熱風オーブン(タバイエスペック(株)製 PHH−200)で2分間乾燥を行った。
【0097】
この積層基板(透明導電性基板)の表面比抵抗は4Ω/□であった。
(実施例2)
基板上の気流を基板面と平行から30度の気流下に置いた以外は、実施例1と同様に金属微粒子溶液1を塗布した。
【0098】
塗布した金属微粒子層は、塗布後、22秒で銀微粒子層を積層した積層基板(網目状金属微粒子積層基板)を形成した。この積層基板は、網目状であり、全光線透過率は80%で、塗膜のムラが良好で「○」であり、さらに、耐モアレ性も良好であり「○」であった。
【0099】
次に、実施例1と同様に、得られた積層基板を熱処理、アセトン処理、酸処理、水洗、乾燥の順に行った。
【0100】
この積層基板(透明導電性基板)の表面比抵抗は4Ω/□であった。
(実施例3)
基板上の気流を基板面と平行から45度の気流下に置いた以外は、実施例1と同様に金属微粒子溶液1を塗布した。
【0101】
塗布した金属微粒子層は、塗布後、22秒で銀微粒子層を積層した積層基板(網目状金属微粒子積層基板)を形成した。この積層基板は、網目状であり、全光線透過率は80%で、塗膜のムラが良好で「○」であり、さらに、耐モアレ性も良好であり「○」であった。
【0102】
次に、実施例1と同様に、得られた積層基板を熱処理、アセトン処理、酸処理、水洗、乾燥の順に行った。
【0103】
この積層基板(透明導電性基板)の表面比抵抗は4Ω/□であった。
(実施例4)
基板上の気流の風速を8m/秒(幅方向における最大値が8.0m/秒、最小値が7.0m/秒)にした以外は、実施例1と同様に金属微粒子溶液1を塗布した。
【0104】
塗布した金属微粒子層は、塗布後、10秒で銀微粒子層を積層した積層基板(網目状金属微粒子積層基板)を形成した。この積層基板は、網目状であり、全光線透過率は78%で、塗膜のムラが良好で「○」であり、さらに、耐モアレ性も良好であり「○」であった。
【0105】
次に、実施例1と同様に、得られた積層基板を熱処理、アセトン処理、酸処理、水洗、乾燥の順に行った。
【0106】
この積層基板(透明導電性基板)の表面比抵抗は4Ω/□であった。
(実施例5)
基板上の気流の風速を1m/秒(幅方向における最大値が1.0m/秒、最小値が0.9m/秒)にした以外は、実施例1と同様に金属微粒子溶液1を塗布した。
【0107】
塗布した金属微粒子層は、塗布後、30秒で銀微粒子層を積層した積層基板(網目状金属微粒子積層基板)を形成した。この積層基板は、網目状であり、全光線透過率は80%で、塗膜のムラが良好で「○」であり、さらに、耐モアレ性も良好であり「○」であった。
【0108】
次に、実施例1と同様に、得られた積層基板を熱処理、アセトン処理、酸処理、水洗、乾燥の順に行った。
【0109】
この積層基板(透明導電性基板)の表面比抵抗は4Ω/□であった。
(実施例6)
二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製 ルミラー(登録商標)U46、表面ぬれ張力47mN/m)の片面にプライマーを塗布し、親水性処理を行った。親水性処理を行ったフィルムの表面ぬれ張力は、73mN/mであった。続いて、基板上の気流を排気ファンを用いて、排気することで、基板面と平行から0度の方向の気流下に置いた(この時の基板上の温度は25℃であり、湿度は40%であった)。さらに、その気流の風速を基板の幅方向で測定したところ風速の最大値が7m/秒、最小値が6m/秒であった。
【0110】
この気流下で、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの親水性処理層上に金属微粒子分散液1をWET厚み30μmになるように基板にダイコート法を用いて塗布した。
【0111】
塗布した金属微粒子層は、塗布後、15秒で銀微粒子層を積層した積層基板(網目状金属微粒子積層基板)を形成した。得られた積層フィルムを、連続して150℃のオーブンで1分間熱処理することで網目状金属微粒子積層フィルムを得た。
【0112】
この積層基板は、網目状であり、全光線透過率は81%であり、幅方向の塗膜のムラが良好で「○」であり、さらに、耐モアレ性も良好であり「○」であった。
【0113】
次に、実施例1と同様に、得られた積層基板をアセトン処理、酸処理、水洗、乾燥の順に行った。
【0114】
この積層基板(透明導電性基板)の表面比抵抗は4Ω/□であった。
(実施例7)
基板の幅方向での気流の風速の最大値が7m/秒、最小値が5m/秒であった以外は実施例6と同様に金属微粒子溶液1を塗布した。
【0115】
塗布した金属微粒子層は、塗布後、15秒で銀微粒子層を積層した積層基板(網目状金属微粒子積層基板)を形成した。得られた積層フィルムを、連続して150℃のオーブンで1分間熱処理することで網目状金属微粒子積層フィルムを得た。
【0116】
この積層基板は、網目状であり、全光線透過率は79%であり、幅方向の塗膜のムラが良好で「○」であり、さらに、耐モアレ性も良好であり「○」であった。
【0117】
次に、実施例1と同様に、得られた積層基板をアセトン処理、酸処理、水洗、乾燥の順に行った。
【0118】
この積層基板(透明導電性基板)の表面比抵抗は4Ω/□であった。
(実施例8)
基板の幅方向での気流の風速の最大値が5.5m/秒、最小値が4m/秒であった以外は実施例6と同様に金属微粒子溶液1を塗布した。
【0119】
塗布した金属微粒子層は、塗布後、20秒で銀微粒子層を積層した積層基板(網目状金属微粒子積層基板)を形成した。得られた積層フィルムを、連続して150℃のオーブンで1分間熱処理することで網目状金属微粒子積層フィルムを得た。
【0120】
この積層基板は、網目状であり、全光線透過率は79%であり、幅方向の塗膜のムラが良好で「○」であり、さらに、耐モアレ性も良好であり「○」であった。
【0121】
次に、実施例6と同様に、得られた積層基板をアセトン処理、酸処理、水洗、乾燥の順に行った。
【0122】
この積層基板(透明導電性基板)の表面比抵抗は4Ω/□であった。
(比較例1)
基板上の気流を基板面と平行から60度の気流化にし、気流の風速を8m/秒(幅方向における最大値が8.0m/秒、最小値が7.0m/秒)にした以外は、実施例1と同様に金属微粒子溶液1を塗布した。
【0123】
塗布した金属微粒子層は、塗布後、10秒で銀微粒子層を積層した積層基板を形成した。この積層基板の全光線透過率は79%であり、耐モアレ性も良好であり「○」であったが、網目状につながった構造がはなれてしまい、次に、得られた積層基板を熱処理、酸処理、水洗、乾燥の順に行ったが、表面比抵抗は1×10Ω/□よりも大きかった。
(比較例2)
基板上の気流の風速を0.1m/秒(幅方向における最大値が0.1m/秒、最小値が0.08m/秒)にした以外は、実施例1と同様に金属微粒子溶液1を塗布した。
【0124】
塗布した金属微粒子層は、塗布後、90秒で銀微粒子層を積層した積層基板(網目状金属微粒子積層基板)を形成した。この積層基板は、網目状であり、全光線透過率は79%で、塗膜のムラが良好で「○」でありく、さらに、耐モアレ性も良好であり「○」であった。
【0125】
次に、実施例1と同様に、得られた積層基板を熱処理、アセトン処理、酸処理、水洗、乾燥の順に行った。
【0126】
この積層基板(透明導電性基板)の表面比抵抗は4Ω/□であった。
【0127】
しかし、網目状金属微粒子層を形成するのに、90秒と長時間要するため、連続プロセスへの適用不可、コストアップなど生産性の点で問題が発生してしまう。
(比較例3)
基板上の気流の風速を12.0m/秒(幅方向における最大値が12.0m/秒、最小値が11.5m/秒)にした以外は、実施例1と同様に金属微粒子溶液1を塗布した。
【0128】
塗布した金属微粒子層は、塗布後、5秒で銀微粒子層を積層した積層基板を形成した。この積層基板の全光線透過率は80%であり、耐モアレ性も良好であり「○」であったが、網目状につながった構造がはなれてしまい、次に、得られた積層基板を熱処理、酸処理、水洗、乾燥の順に行ったが、表面比抵抗は1×10Ω/□よりも大きかった。
(比較例4)
二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製 ルミラー(登録商標)U46、表面ぬれ張力47mN/m)の片面にプライマーを塗布し、親水性処理を行った。親水性処理を行ったフィルムの表面ぬれ張力は、73mN/mであった。続いて、熱風オーブン(タバイエスペック(株)製 PHH−200)内を25℃、50%RH、さらに風速目盛りを調節し、基板上の風速を5.0m/秒(幅方向における最大値が5.0m/秒、最小値が1.0m/秒)の気流下においた。この時、基板上の気流角度は、一定でなく、あらゆる方向に変化する乱流の気流であり、気流角度が0度以上±45度以内から外れる場合があった。このオーブン内で、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの親水性処理層上に金属微粒子溶液1をWET厚み30μmになるように基板に接触しないアプリケーター法を用いて塗布した。
塗布した金属微粒子層は、塗布後、20秒で銀微粒子層を積層した積層基板(網目状金属微粒子積層基板)を形成した。得られた積層フィルムを、連続して150℃のオーブンで1分間熱処理することで網目状金属微粒子積層フィルムを得た。
【0129】
この積層基板は、網目状であり、全光線透過率は77%で、耐モアレ性も良好であり「○」であったが、塗膜のムラがあり「×」であった。
【0130】
次に、実施例6と同様に、得られた積層基板をアセトン処理、酸処理、水洗、乾燥の順に行った。
【0131】
この積層基板(透明導電性基板)の表面比抵抗は4Ω/□であった。
【0132】
実施例1、2、3、4、5、6、7、8、比較例1、2、3、4の評価を表1に示す。
【0133】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明の網目状金属微粒子積層基板の製造方法によれば、透明性および耐モアレ性のいずれにも優れ、生産性に優れた網目状金属微粒子積層基板を連続で塗工するプロセスに適用することができる。
【0135】
本発明の網目状金属微粒子積層基板を用いてなる透明導電性基板は、透明性と高いレベルの導電性を有し、耐モアレ性にも優れるので、例えば、プラズマディスプレイパネルや液晶テレビなどのフラットパネルディスプレイに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0136】
1 積層基板
2 気流角度
3 糸
4 棒
5 プローブ
6 測定孔
7 気流の風速

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の少なくとも片面に金属微粒子溶液を塗布することによって、基板上に金属微粒子層を網目状に積層する網目状金属微粒子積層基板の製造方法であって、
塗布後、基板面と平行な方向を0度として±45度以内の方向の気流下に基板を置き、さらに、該気流の風速を1.0m/秒以上10m/秒以下にすることを特徴とする、全光線透過率50%以上の網目状金属微粒子積層基板の製造方法。
【請求項2】
金属微粒子溶液の塗布から気流下に基板を置いている間の温度が、10℃以上50℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の網目状金属微粒子積層基板の製造方法。
【請求項3】
基板面と平行な方向を0度として±45度以内の方向の気流下に基板を置く時間を、30秒以下とすることを特徴とする、請求項1又は2に記載の網目状金属微粒子積層基板の製造方法。
【請求項4】
基板の幅方向における気流の風速のバラツキが、風速の最大値と最小値の差で2m/秒以内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の網目状金属微粒子積層基板の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の方法により製造される網目状金属微粒子積層基板の金属微粒子層を、熱処理後、有機溶媒で処理し、酸で処理することを特徴とする、透明導電性基板の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の製造方法により得られうる透明導電性基板。
【請求項7】
表面比抵抗が30Ω/□以下であることを特徴とする、請求項6に記載の透明導電性基板。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の透明導電性基板を、電磁波シールド基板としてパネル表面に設けたことを特徴とする、プラズマディスプレイパネル。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−93239(P2010−93239A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206823(P2009−206823)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】