説明

緊急停止装置

【課題】主要な緊急停止制御部に故障が生じてもエンジンの回転を緊急停止できる緊急停止装置を得る。
【解決手段】主要緊急停止制御部であるCPU1より得られるパルス信号P1に基づき、WD3はCPU1の動作異常を検出して、動作異常検出時にON状態のリセット信号RTを出力する。補助緊急停止制御部であるSW長押し監視部4はリセット信号RTを受け、ON状態のリセット信号RTの入力時に動作状態となり、緊急停止要求信号EQ1及びEQ2のうち少なくとも一つに応答して、緊急停止を指示する(OFF状態の)長押し強制オフ信号SFを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車の回転中のエンジン緊急停止させる緊急停止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転中の自動車用エンジンを緊急停止させる緊急停止装置として例えば特許文献1に開示された自動車用エンジン緊急停止装置がある。
【0003】
この装置は押しボタンスイッチを押すことによって、点火コイルと燃料ポンプへの電流を遮断する緊急停止制御部を備えることにより、エンジンの回転駆動を停止させ、エンジンの緊急停止を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭64−13268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の緊急停止装置では、緊急停止制御部自体が故障したときの対策が何ら講じられていないという問題点があった。
【0006】
この発明は上記問題点を解決するためになされたもので、主要な緊急停止制御部に故障が生じてもエンジンの回転を緊急停止できる緊急停止装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る請求項1記載の緊急停止装置は、自動車用エンジンを緊急停止させる緊急停止装置であって、回転中のエンジンの緊急停止を要求する緊急停止要求信号を出力する緊急停止要求部と、前記緊急停止要求信号に応答して、緊急停止を指示する第1及び第2の緊急停止制御信号を出力する主要緊急停止制御部と、前記第2の緊急停止信号をラッチしてラッチ緊急停止制御信号を出力するラッチ部と、前記第1の緊急停止制御信号及び前記ラッチ緊急停止制御信号が共に緊急停止を指示するとき、エンジンの回転駆動を停止させるエンジン回転停止部と、前記主要緊急停止制御部の動作異常を検出し、動作異常検出時に活性状態のリセット信号を出力する異常検出部と、前記活性状態のリセット信号の入力時に動作状態となり、前記緊急停止要求信号に応答して緊急停止を指示する補助緊急停止制御信号を出力する補助緊急停止制御部とを備え、前記エンジン回転停止部は、前記補助緊急停止制御信号が緊急停止を指示するとき、エンジンの回転駆動を停止させる。
【0008】
請求項2記載の緊急停止装置は、請求項1記載の緊急停止装置であって、前記異常検出部は、前記主要緊急停止制御部から出力される制御部検出用信号をモニタすることにより前記主要緊急停止制御部の動作異常を検出するウォッチドッグを含む。
【0009】
請求項3記載の緊急停止装置は、請求項1記載の緊急停止装置であって、前記異常検出部は、前記第1の緊急停止制御信号と前記エンジン回転停止部の動作内容を指示する停止部モニタ信号との比較結果に基づき、前記主要緊急停止制御部の動作異常を検出する論理回路を含む。
【0010】
請求項4記載の緊急停止装置は、請求項1ないし請求項3のうち、いずれか1項に記載の緊急停止装置であって、前記補助緊急停止制御部はマイクロコンピュータを含む。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の本願発明において、エンジン回転停止部は、第1の緊急停止制御信号及びラッチ緊急停止制御信号が共に緊急停止を指示するとき、エンジンの回転駆動を停止させている。
【0012】
したがって、エンジンの回転中に主要緊急停止制御部に動作異常が生じ、第1の緊急停止制御信号の指示内容が誤内容となっても、ラッチ緊急停止制御信号の指示内容が正常であれば、エンジン回転停止部によって誤ってエンジンの回転駆動が停止されてしまうことはない。
【0013】
さらに、主要緊急停止制御回路に動作異常が生じたときは、活性状態のリセット信号が異常検出部から出力され、補助緊急停止制御回路が動作状態となり、緊急停止要求信号に応答して緊急停止を指示する補助緊急停止制御信号を出力することができる。
【0014】
したがって、エンジンの回転中に主要緊急停止制御部に動作異常が生じ、第1の緊急停止制御信号の指示内容が誤内容となっても、緊急停止を指示する補助緊急停止制御信号に基づきエンジン回転停止部によってエンジンの緊急停止を行うことができる。
【0015】
上記のように、請求項1記載の本願発明である緊急停止装置は、エンジンの回転中に主要緊急停止制御部に動作異常が生じても、回転中のエンジンを異常停止させることなく、必要時に的確に緊急停止させることができる効果を奏する。
【0016】
請求項2記載の本願発明は、ウォッチドッグによって主要緊急停止制御部の動作異常の検出を正確に行うことができる。
【0017】
請求項3記載の本願発明は、論理回路によって主要緊急停止制御部の動作異常を検出することにより、回路構成の簡略化を図ることができる。
【0018】
請求項4記載の本願発明は、補助緊急停止制御部はマイクロコンピュータによって精度良く補助緊急停止制御信号を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施の形態1である緊急停止装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1の緊急停止装置の動作を示すタイミング図である。
【図3】この発明の実施の形態2である緊急停止装置の構成を示すブロック図である。
【図4】実施の形態2の緊急停止装置の動作を示すタイミング図である。
【図5】緊急停止装置の一般的な構成(前提技術1)を示すブロック図である。
【図6】図5示した緊急停止装置を改良した構成(前提技術2)を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<前提技術>
(前提技術1)
図5は特許文献1等で開示された緊急停止装置から想定される前提技術1の構成を示すブロック図である。同図に示すように、前提技術1の緊急停止装置はエンジンSW21、車載用ECU31及びIGリレー25から構成される。
【0021】
エンジンSW21はスイッチSW1の3秒程度の長押し時に緊急停止要求信号EQ1を出力する。なお、エンジンSW21は運転者が運転中に操作可能な車内の所定位置に配置される。
【0022】
車載用ECU31はCPU41及びリレーラッチ部42から構成される。主要緊急停止制御部であるCPU41は緊急停止要求信号EQ1に応答して、緊急停止を指示する(OFF状態の)CPUオン・オフ出力信号SC及び緊急停止を指示する(OFF状態の)ラッチ用出力信号L1を出力する。
【0023】
リレーラッチ部42はラッチ用出力信号L1をラッチして、リレーラッチ出力信号SLを出力する。
【0024】
IGリレー25はCPUオン・オフ出力信号SC及びリレーラッチ出力信号SLを受け、これらの信号が共にON状態の時、エンジンを回転駆動させ、双方がOFF状態の時エンジンの回転駆動を停止させる駆動制御を図示しないエンジンに対して行う。
【0025】
したがって、運転者は、スイッチSW1を長押しして緊急停止要求信号EQ1をエンジンSW21から出力されることにより、自動車のエンジンを緊急停止させることができる。
【0026】
しかしながら、前提技術1の場合、エンジンSW21内のスイッチSW1が故障した場合、エンジンの回転を緊急停止できない問題点があった。
【0027】
(前提技術2)
図6は図5で示した緊急停止装置を改良した前提技術2の構成を示すブロック図である。同図に示すように、前提技術2はでは、前提技術1のエンジンSW21を改良して、並列に配置されたスイッチSW1及びスイッチSW2からなるエンジンSW22に置き換えている。
【0028】
エンジンSW22はスイッチSW1の3秒程度の長押し時に緊急停止要求信号EQ1を出力し、スイッチSW2の3秒程度の長押し時に緊急停止要求信号EQ2を出力する。なお、エンジンSW22は運転者が運転中に操作可能な車内の所定位置に配置される。
【0029】
CPU41は緊急停止要求信号EQ1及びEQ2のうち少なくとも一つに応答して、OFF状態のCPUオン・オフ出力信号SC及びOFF状態のラッチ用出力信号L1を出力する。
【0030】
したがって、エンジンSW22のスイッチSW1及びスイッチSW2のうち一方が故障しても他方を使用することにより、CPU41からOFF状態のCPUオン・オフ出力信号SC及びOFF状態のラッチ用出力信号L1を出力させ、エンジンの緊急停止を行うことができる点において、前提技術2は前提技術1より優れている。
【0031】
しかしながら、CPU41自体が故障した場合、前提技術2においても、回転中のエンジンを緊急停止できないという問題点が残る。
【0032】
このような前提技術1及び前提技術2の問題点を解消し、主要緊急停止制御部であるCPU41が故障した場合においても、回転中のエンジンの緊急停止が行えるようにしたのが本願発明の緊急停止装置である。
【0033】
<実施の形態1>
図1はこの発明の実施の形態1である自動車用エンジンの緊急停止装置の構成を示すブロック図である。同図に示すように、実施の形態1の緊急停止装置はエンジンSW22、車載用ECU11及びIGリレー15から構成される。
【0034】
エンジンSW22は互いに並列に設けられたスイッチSW1及びSW2より構成され、スイッチSW1の3秒程度の長押し時に緊急停止要求信号EQ1を出力し、スイッチSW2の3秒程度の長押し時に緊急停止要求信号EQ2を出力する。なお、エンジンSW22は運転者が運転中に操作可能な車内の所定位置に配置される。
【0035】
主要緊急停止制御部であるCPU1は緊急停止要求信号EQ1及びEQ2の少なくとも一つに応答して、緊急停止を指示する(OFF状態の)CPUオン・オフ出力信号SC(第1の緊急停止制御信号)及び緊急停止を指示する(OFF状態の)ラッチ用出力信号L1(第2の緊急停止制御信号)を出力する。また、CPU1は緊急停止要求信号EQ1及びEQ2のいずれも入力されていない場合、CPUオン・オフ出力信号SC及びラッチ用出力信号L1の現状の信号値を維持する。
【0036】
リレーラッチ部2はラッチ用出力信号L1をラッチして、リレーラッチ出力信号SL(ラッチ緊急停止制御信号)を出力する。
【0037】
異常検出部であるWD(ウォッチドッグ)3はCPU1よりパルス信号P1(制御部検出信号)を常時モニタし、このパルス信号P1によるパルスが所定期間途切れる等の状態を認識することにより、CPU1の動作異常を検出して、動作異常検出時にON状態(活性状態)のリセット信号RTを出力する。なお、WD3は動作異常検出時以外においてOFF状態のリセット信号RTを出力する。
【0038】
CPU1はON状態のリセット信号RTを受けるとリセットされ、CPUオン・オフ出力信号SCは初期状態のOFF状態に設定される。ただし、CPU1がリセットされてもラッチ用出力信号L1の内容は変化しない。
【0039】
補助緊急停止制御部であるSW長押し監視部4はリセット信号RTを受け、ON状態(活性状態)のリセット信号RTの入力時に動作状態となり、OFF状態のリセット信号RTの入力時には非動作状態となる。
【0040】
SW長押し監視部4は動作状態時に、緊急停止要求信号EQ1及び緊急停止要求信号EQ2のうち少なくとも一つに応答して、緊急停止を指示する(OFF状態の)長押し強制オフ信号SFを出力する。
【0041】
エンジン回転停止部であるIGリレー15はCPUオン・オフ出力信号SC及びリレーラッチ出力信号SLを受け、これらの信号のうち双方がON状態の時、(停止状態の)エンジンを回転駆動させ、双方がOFF状態の時、(回転状態の)エンジンの回転駆動を停止させるエンジン駆動制御をエンジン(図示せず)に対して行う。
【0042】
さらに、IGリレー15は長押し強制オフ信号SFがOFF状態の時は、CPUオン・オフ出力信号SC及びリレーラッチ出力信号SLの信号値に関わらず、エンジンの回転駆動を停止させるエンジン駆動制御をエンジンに対して行う。
【0043】
また、IGリレー15は現在のエンジン駆動状態を指示するモニタ信号であるIGリレーモニタ信号S15をCPU1に出力する。したがって、CPU1はIGリレーモニタ信号S15によってIGリレー15の制御内容を常時モニタすることができる。
【0044】
図2は実施の形態1の緊急停止装置の動作を示すタイミング図である。同図において、(イグニッション)電源ポジションとして、5つのポジション(IGOFF(イグニッションOFF)、ACC(アクセサリ)、IGON(イグニッションON エンジン停止)、IGON(イグニッションON エンジン回転)、START)が示されている。
【0045】
以下、同図を参照して、実施の形態1の緊急停止装置の動作を説明する。CPU1が正常動作を行っている期間は、リセット信号RTはOFF状態(非活性状態)であるため、SW長押し監視部4は動作しない。
【0046】
したがって、スイッチSW1あるいはスイッチSW2のON状態の長押し(3秒以上)が確認されると、緊急停止要求信号EQ1及びEQ2の一方が出力されるため、CPU1はOFF状態のCPUオン・オフ出力信号SC及びラッチ用出力信号L1を出力することにより、IGリレー15の駆動制御によってエンジンを緊急停止させることができる。
【0047】
そして、電源ポジションは、IGON(イグニッションON エンジン回転)からACCに移動される。
【0048】
一方、CPU1の異常動作がWD3によって検出された場合、リセット信号RTはON状態(活性状態)となるため、SW長押し監視部4は動作状態となる。この場合、CPU1によるエンジンの緊急停止制御は不可能となるが、代わりにSW長押し監視部4によるエンジンの緊急停止制御が可能となる。
【0049】
したがって、スイッチSW1あるいはスイッチSW2のON状態の長押し(3秒以上)が確認されると、緊急停止要求信号EQ1及びEQ2の一方が出力されるため、SW長押し監視部4はOFF状態の長押し強制オフ信号SFを出力することにより、CPU1の異常動作時においても、IGリレー15の駆動制御によってエンジンを緊急停止させることができる。
【0050】
そして、電源ポジションは、IGON(イグニッションON エンジン回転)からACCに移動される。
【0051】
なお、SW長押し監視部4が異常の場合でも、CPU1が正常動作を行っておれば、SW長押し監視部4は動作しないため、前述したように、CPU1の制御下でエンジンの緊急停止を行うことができる。
【0052】
実施の形態1の緊急停止装置において、エンジン回転停止部であるIGリレー15は、CPUオン・オフ出力信号SC及びリレーラッチ出力信号SLが共に緊急停止を指示するOFF状態とき、エンジンの回転を停止させる。
【0053】
したがって、エンジンの回転中にCPU1に動作異常が生じ、CPUオン・オフ出力信号SCの指示内容が誤内容(ON状態であるべきときにOFF状態)となっても、リレーラッチ出力信号SLの指示内容が正常(ON状態)であれば、IGリレー15によって誤ってエンジンを停止させる駆動制御が行われることはない。
【0054】
さらに、CPU1に動作異常が生じたときは、ON状態(活性状態)のリセット信号RTがWD3から出力され、補助緊急停止制御回路であるSW長押し監視部4が動作状態となり、緊急停止要求信号EQ1及びEQ2のいずれかに応答して緊急停止を指示するOFF状態の長押し強制オフ信号SF(補助緊急停止制御信号)を出力することができる。
【0055】
したがって、エンジンの回転中にCPU1に動作異常が生じ、CPUオン・オフ出力信号SCの指示内容が誤内容となっても、OFF状態の長押し強制オフ信号SFに基づきIGリレー15によってエンジンの緊急停止を行うことができる。
【0056】
このように、実施の形態1の自動車用エンジンにおける緊急停止装置は、エンジンの回転中にCPU1に動作異常が生じても、回転中のエンジンを異常停止させることなく、SW長押し監視部4によって必要時に的確に緊急停止させることができる効果を奏する。
【0057】
さらに、実施の形態1の緊急停止装置は、WD3によってCPU1の動作異常の検出を正確に行うことができる。
【0058】
<実施の形態2>
図3はこの発明の実施の形態2である緊急停止装置の構成を示すブロック図である。同図に示すように、実施の形態2の緊急停止装置はエンジンSW22、車載用ECU12、排他的論理和ゲート5及びIGリレー15から構成される。なお、エンジンSW22及び車載用ECU12は図1で示した実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
【0059】
車載用ECU12内において、CPU1、リレーラッチ部2の動作は、実施の形態1の車載用ECU11内のCPU1及びリレーラッチ部2と同様であるため説明を省略する。
【0060】
車載用ECU12とIGリレー15との間に設けられた排他的論理和ゲート5は、一方入力及び他方入力をCPUオン・オフ出力信号SC及びIGリレーモニタ信号S15とし、これらの比較結果に基づき異常検出信号S5を出力する。IGリレーモニタ信号S15はエンジンを回転駆動しているときON状態、エンジンの回転駆動を停止させている場合はOFF状態を指示している。
【0061】
排他的論理和ゲート5はCPUオン・オフ出力信号SCとIGリレーモニタ信号S15との内容が一致(共にON状態(エンジン回転駆動を指示)かOFF状態(エンジンの回転駆動の停止を指示))しているとき、OFF状態(非活性状態)の異常検出信号S5を出力し、一致していないときON状態の異常検出信号S5を出力する。
【0062】
CPUオン・オフ出力信号SCとIGリレーモニタ信号S15の内容が不一致の場合、実際のIGリレー15の駆動内容と、CPUオン・オフ出力信号SCの指示内容とが一致していないことから、CPU1に動作異常が生じていると判断することができる。
【0063】
したがって、異常検出信号S5のOFF状態/ON状態によりCPU1の正常/異常を認識することができるため、排他的論理和ゲート5の出力信号である異常検出信号S5を、実施の形態1のWD3のリセット信号RTの代わりに用いて、SW長押し監視部4に付与している。
【0064】
SW長押し監視部4は異常検出信号S5を受け、ON状態(活性状態)の異常検出信号S5の入力時に動作状態となり、OFF状態の異常検出信号S5の入力時には非動作状態となる。
【0065】
SW長押し監視部4は動作状態時に、急停止要求信号EQ1あるいは緊急停止要求信号EQ2に応答して、緊急停止を指示する(OFF状態の)長押し強制オフ信号SFを出力する。
【0066】
また、IGリレー15は現在のエンジン駆動状態を指示するモニタ信号であるIGリレーモニタ信号S15をCPU1に出力する。
【0067】
図4は実施の形態2の緊急停止装置の動作を示すタイミング図である。以下、同図を参照して、実施の形態2の緊急停止装置の動作を説明する。
【0068】
CPU1が正常動作を行っている期間は、CPUオン・オフ出力信号SCとIGリレーモニタ信号S15とが常に一致し、異常検出信号S5はOFF状態(非活性状態)であるため、SW長押し監視部4は動作しない。
【0069】
したがって、スイッチSW1あるいはスイッチSW2のON状態の長押し(3秒以上)が確認されると、緊急停止要求信号EQ1及びEQ2の一方が出力されるため、CPU1はOFF状態のCPUオン・オフ出力信号SC及びラッチ用出力信号L1を出力することにより、IGリレー15の駆動制御によってエンジンを緊急停止させることができる。
【0070】
そして、電源ポジションは、IGON(イグニッションON エンジン回転)からACCに移動される。
【0071】
一方、CPU1の異常動作となると、CPUオン・オフ出力信号SCとIGリレーモニタ信号S15とが不一致となり、排他的論理和ゲート5から出力される異常検出信号S5はON状態(活性状態)となるため、SW長押し監視部4は動作状態となる。この場合、CPU1によるエンジンの緊急停止制御は不可能となるが、代わりにSW長押し監視部4によるエンジンの緊急停止制御が可能となる。
【0072】
したがって、スイッチSW1あるいはスイッチSW2のON状態の長押し(3秒以上)が確認されると、緊急停止要求信号EQ1及びEQ2の一方が出力されるため、SW長押し監視部4はOFF状態の長押し強制オフ信号SFを出力することにより、CPU1の異常動作時においても、IGリレー15の駆動制御によってエンジンを緊急停止させることができる。
【0073】
そして、電源ポジションは、IGON(イグニッションON エンジン回転)からACCに移動される。
【0074】
なお、SW長押し監視部4が異常の場合でも、CPU1が正常動作を行っておれば、異常検出信号S5はOFF状態となり、SW長押し監視部4は動作しないため、前述したように、CPU1の制御下でエンジンの緊急停止を行うことができる。
【0075】
実施の形態2の緊急停止装置においても、実施の形態1と同様、エンジンの回転中にCPU1に動作異常が生じても、回転中のエンジンを異常停止させることなく、SW長押し監視部4によって必要時に的確に緊急停止させることができる効果を奏する。
【0076】
さらに、実施の形態2の緊急停止装置は、排他的論理和ゲート5の異常検出信号S5によってCPU1の動作異常の検出を行うことにより、装置構成の簡略化を図ることができる。
【0077】
なお、図3で示した構成では、排他的論理和ゲート5を車載用ECU12の外部に設けたが、車載用ECU12内に設けても良い。
【0078】
<その他>
補助緊急停止制御部であるSW長押し監視部4をマイクロコンピュータによって実現することにより、緊急停止要求信号EQ1及びEQ2に応じて精度良く長押し強制オフ信号SFを出力することができる。
【0079】
また、実施の形態1の緊急停止装置において、リレーラッチ部2をマイクロコンピュータで構成し、リレーラッチ部2にWD3の機能を併せ持たせることにより、WD3を省略する構成も実現可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 CPU
2 リレーラッチ部
3 WD
4 SW長押し監視部
5 排他的論理和ゲート
11,12 車載用ECU
15 IGリレー
22 エンジンSW

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用エンジンを緊急停止させる緊急停止装置であって、
回転中のエンジンの緊急停止を要求する緊急停止要求信号を出力する緊急停止要求部と、
前記緊急停止要求信号に応答して、緊急停止を指示する第1及び第2の緊急停止制御信号を出力する主要緊急停止制御部と、
前記第2の緊急停止信号をラッチしてラッチ緊急停止制御信号を出力するラッチ部と、
前記第1の緊急停止制御信号及び前記ラッチ緊急停止制御信号が共に緊急停止を指示するとき、エンジンの回転駆動を停止させるエンジン回転停止部と、
前記主要緊急停止制御部の動作異常を検出し、動作異常検出時に活性状態のリセット信号を出力する異常検出部と、
前記活性状態のリセット信号の入力時に動作状態となり、前記緊急停止要求信号に応答して緊急停止を指示する補助緊急停止制御信号を出力する補助緊急停止制御部とを備え、
前記エンジン回転停止部は、前記補助緊急停止制御信号が緊急停止を指示するとき、エンジンの回転駆動を停止させる、
緊急停止装置。
【請求項2】
請求項1記載の緊急停止装置であって、
前記異常検出部は、前記主要緊急停止制御部から出力される制御部検出用信号をモニタすることにより前記主要緊急停止制御部の動作異常を検出するウォッチドッグを含む、
緊急停止装置。
【請求項3】
請求項1記載の緊急停止装置であって、
前記異常検出部は、前記第1の緊急停止制御信号と前記エンジン回転停止部の動作内容を指示する停止部モニタ信号との比較結果に基づき、前記主要緊急停止制御部の動作異常を検出する論理回路を含む、
緊急停止装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうち、いずれか1項に記載の緊急停止装置であって、
前記補助緊急停止制御部はマイクロコンピュータを含む、
緊急停止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−7569(P2012−7569A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145753(P2010−145753)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】