説明

緑化コンクリート体の成形方法

【課題】石積のような要望の多い形状や色調を確保できるとともに、簡単かつ安定した状態で植生材を設置して緑化が可能な緑化コンクリート体が得られる緑化コンクリート体の成形方法を提供する。
【解決手段】型枠1内に、含水率40%以上で、かつ水には溶けにくい性質を有する土14に、植物繊維を加え、保水材を混合し、さらに水溶性接着材を添加した緑化基盤10を配設し、型枠1内にコンクリート11打設後、脱型時に前記緑化基盤10を成形コンクリート面に残置させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その表面に、藻類、コケ類・シダ類、草本類等を育成させることができる緑化コンクリート体の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートの壁面を緑化する方法にはツタ植物などを這わす方法があるが、育成伸長までに時間がかかり、また、所望の場所に正確に這わすことが難しい。
【0003】
これに対して特公平6−68171号公報では、緑化基材を混入した緑化基盤材を拘束体で拘束形成して成形基盤材を型枠に取付け、該型枠内にコンクリートを打設して前記成形基盤材を固定することで、コンクリート構造体が形成された状態でその表面に成形基盤材が現れるようになるものが提案されている。
【0004】
また、特開平7−207643号公報では、生コンクリートを打設して構造物本体を設け、この生コンクリートが硬化する前にその表面に植物の種子、肥料、土壌及び保水材を混合してなる植生材を取着した後、植生材及び生コンクリートの表面を棒等の尖ったもので突きまぜて多数の凹部を有する植裁層を形成するとともに、植裁層の凹部に植生材を充填すること、もしくは、生コンクリートが硬化する前にその表面を棒等の尖ったもので突きまぜて多数の凹部を有する植裁層を形成し、この植裁層に植物の種子、肥料、土壌及び保水材を混合してなる植生材を取着したことを特徴とする植裁層を備えたコンクリート製構造物の製法が示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記特公平6−68171号公報では、緑化基盤材を拘束する拘束体は袋体、網体、枠体、箱体であり、これが型枠を脱型した際にコンクリート構造体の表面に大きく露出して、デザイン性が制限されてしまう。特に、コンクリート構造体をパネルとして例えば石積のような形状を得ようとする場合はこの拘束体の存在が障害となる。
【0006】
一方、特開平7−207643号公報のものでは、生コンクリートが硬化する前にその表面を棒等の尖ったもので突きまぜて多数の凹部を有する植裁層を形成するもので、凹部が深くなればなるほど植生材の充填や取着が困難で、安定した植生基盤を確保し難い。
【0007】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、石積のような要望の多い形状や色調を確保できるとともに、簡単かつ安定した状態で植生材を設置して緑化が可能な緑化コンクリート体が得られる緑化コンクリート体の成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するため、第1に、型枠内に、含水率40%以上で、かつ水には溶けにくい性質を有する土に、植物繊維を加え、保水材を混合し、さらに水溶性接着材を添加した緑化基盤を配設し、型枠内にコンクリート打設後、脱型時に前記緑化基盤を成形コンクリート面に残置させたことを要旨とするものである。
【0009】
第2に、緑化基盤には植物体を植込むこと、第3に、型枠内に配設する緑化基盤を凸部に形成すること、第4に、凸部は、突起または突条であるか、円弧状のものであることを要旨とするものである。
【0010】
本発明によれば、緑化基盤は、含水率40%以上で、かつ水には溶けにくい性質を有する土に、植物繊維を加え、保水材を混合し、さらに水溶性接着材を添加したものであり、一般的な緑化用資材、例えば土砂に土壌改良資材等を混合したものに種子や苗を植えた場合に比較して、乾燥による基盤の収縮や接着不良によって、脱落するおそれがない。それゆえ、コンクリート打設後、型枠内の凸部により溝または孔が成形コンクリートに形成されなくとも脱型時に緑化基盤を成形コンクリート面に残置させることができる。
【0011】
請求項2記載の本発明によれば、前記請求項1記載の作用に加えて、緑化基盤には植物体を植込むことにより、確実に育成させることができる。脱型時には植物体を植込んだ緑化基盤がコンクリート体表面に露出するので成形コンクリート面の緑化部分が多くなる。
【0012】
請求項3、請求項4、及び請求項5記載の本発明によれば、前記作用に加えて、型枠内に配設する緑化基盤を凸部に形成し、その凸部は、突起または突条、あるいは円弧状のものであるので、型枠内に凸部の位置や大きさ等を自由に形成することができ、さまざまな緑化コンクリート体を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上述べたように本発明の緑化コンクリート体の成形方法は、成形する緑化コンクリート体として、石積のような要望の多い形状や色調を確保できるとともに、簡単かつ安定した状態で植生材を設置して緑化が可能なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1、図2は本発明の緑化コンクリート体の成形方法の第1実施形態を示すもので、型枠1内に、含水率40%以上で、かつ水には溶けにくい性質を有する土14に、植物繊維を加え、保水材を混合し、さらに水溶性接着材を添加した緑化基盤10を配設し、型枠1内にコンクリート11を打設後、脱型時に前記緑化基盤10を成形コンクリート12の表面に残置させた。
【0015】
コンクリート構造物の目地や、階段部分に緑化する目的でコンクリート体の表面に土砂を充填する方法が知られている。しかし、一般的な緑化用資材、例えば土砂に土壌改良資材等を混合したものに種子や苗を植えて緑化を行っているが、その多くが乾燥による基盤の収縮や接着不良によって、脱落することが問題になっている。
【0016】
本実施形態における緑化基盤の条件として、(1)根を張るための基盤、(2)栄養分を保つための基盤、(3)水分を供給するための基盤、(4)生育した植物を安定させるための基盤をそれぞれ満足することが望ましいと判断した。まず(1)、(2)、及び(3)を満たす基盤を構成する資材には土として軟土が好ましく、特に、含水率40%以上で、かつ水には溶けにくい性質を有するものを選択した。
【0017】
前記植物繊維は、(1)及び(4)のために加えるもので、軟土の強度、特に曲げ強度をより増し、さらに、水分の吸収を向上し、毛管作用を促進させる。短長の両者の繊維を混合したものが好適であり、例えば麻繊維、ヤシ繊維、あるいはヨシ繊維が適用できる。
【0018】
また前記保水材は、(2)及び(3)のために混合するもので、保水力を強め、養水分の供給に寄与する。保水材にはさまざまな種類があるが、吸水性ポリマー等の高分子系土壌改良資材が好ましい。
【0019】
前記水溶性接着材は、(4)のために添加するもので、植物繊維が分散するのを防ぎ、さらに緑化を行う基材に固定するためのものである。
【0020】
一実施例として、軟土の一種であるケト土0.4kg、麻繊維0.4kg、PVA(ポリビニールアルコール)を主体にする保水材(商品名「みずもち一番」)飽和状態0.3kg、水溶性接着材(商品名「ルナゾールAH」)0.1kg、化学肥料0.1kg、水0.6kgを混合した。
【0021】
前記量は、50cm×50cm×厚さ10cmの型枠1に配設する緑化基盤10をつくる場合のものである。この緑化基盤10に前述した植物体の一例として種子13を植込むことで緑化できる。なお、種子13等の植物体は、あらかじめ緑化基盤10に植込んでおいてもよい。
【0022】
この緑化基盤10の特性は、従来の基盤と違い、含水率70%のケト土、含水率90%の保水材、含水率50%の麻繊維などの混合によって、75〜85%以上の含水率を有し、その含水率は1ヶ月後でも60%以上を保ち、雨水を受ければ、吸水率(15〜30%)が高いので直に水を吸収し、常に50%以上の含水率を維持することができる。従来のものは含水率が徐々に低下し、雨水を受けても吸水率(5%以下)は低く、2週間ほどで20%以下になる。
【0023】
また、従来のものは緑化を行う基材に対する接着力が弱いが、本発明の緑化基盤は麻等の植物繊維が露出しているため、この繊維が基材に接着材と一緒に付着し、より強力な接着性を備える。
【0024】
なお、上記水の量を3倍にすると、本発明の緑化基盤は従来の吹き付け工法と同様に施工もでき、大きな面積に緑化を行うときに効果的である。
【0025】
第2実施形態として、図3、図4に示すように、平面体ではなく、台形等立体的な成形コンクリート12とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の緑化コンクリート体の成形方法の第1実施形態を示す成形中の斜視図である。
【図2】本発明の緑化コンクリート体の成形方法の第1実施形態を示す成形後の斜視図である。
【図3】本発明の緑化コンクリート体の成形方法の第2実施形態を示す成形中の斜視図である。
【図4】本発明の緑化コンクリート体の成形方法の第2実施形態を示す成形後の斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1…型枠 10…緑化基盤
11…コンクリート 12…成形コンクリート
13…種子 14…土

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠内に、含水率40%以上で、かつ水には溶けにくい性質を有する土に、植物繊維を加え、保水材を混合し、さらに水溶性接着材を添加した緑化基盤を配設し、型枠内にコンクリート打設後、脱型時に前記緑化基盤を成形コンクリート面に残置させたことを特徴とする緑化コンクリート体の成形方法。
【請求項2】
緑化基盤には植物体を植込む請求項1記載の緑化コンクリート体の成形方法。
【請求項3】
型枠内に配設する緑化基盤を凸部に形成する請求項1または請求項2記載の緑化コンクリート体の成形方法。
【請求項4】
凸部は、突起または突条である請求項3記載の緑化コンクリート体の成形方法。
【請求項5】
凸部は、円弧状のものである請求項3記載の緑化コンクリート体の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−131948(P2008−131948A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338763(P2007−338763)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【分割の表示】特願2002−120001(P2002−120001)の分割
【原出願日】平成14年4月23日(2002.4.23)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000230010)ジオスター株式会社 (77)
【Fターム(参考)】