説明

緑化屋根及び緑化屋根の施工方法

【課題】折板屋根の種類にかかわらず歩行可能な強度を確保することができるとともに、断熱保温効果を向上することができる緑化屋根及び折板屋根の緑化工法を提供する。
【解決手段】折板屋根11の種類によってピッチ幅が異なっても、ピッチ幅に応じて厚さを調子した支持板13を備えさせる。これにより折板屋根11のピッチ幅に応じた緑化屋根10上の歩行可能強度を確保することができる。支持板13を中空溝131が形成された中空構造板とする。これにより、支持板13による断熱効果及び保温効果を奏することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結された折板屋根を緑化する緑化屋根及び緑化屋根の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートアイランド現象の緩和と、良好な自然的環境を創出する手法の一つとして、建物の屋根上に植物を栽植する屋上緑化が知られている。このような屋上緑化を行う技術として、例えば特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載された緑化屋根では、折板屋根の連続して形成された山形部の頂部に支持具を設けて、この支持具により溝板を並設して折板屋根上に固定する。そして、並設された溝板上に植栽マット材を敷設して、植物を成長させる。
【特許文献1】特開2003−184238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
折板屋根に緑化の施工をしたり、メンテナンスをする場合には、緑化屋根上を歩行できることが望ましい。
しかしながら、上述した特許文献1に記載された緑化屋根では、溝板が薄く歩行可能な強度を保つことができない場合があった。特に、折板屋根のピッチが大きい場合には、薄い溝板では歩行可能な強度を保つことが難しかった。
【0004】
また、緑化屋根により建物自体の夏における断熱効果および冬における保温効果を得ることができるが、上述した特許文献1に記載の緑化屋根では、十分な断熱・保温効果が得られない場合があった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、折板屋根の種類にかかわらず歩行可能な強度を確保することができるとともに、断熱保温効果を向上することができる緑化屋根及び折板屋根の緑化工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の緑化屋根は、
山形部が連続する折板屋根と、この折板屋根の山頂部に設けられた取付具と、この取付具により前記折板屋根に取り付けられた支持板及び植栽可能な緑化基盤とを有する緑化屋根であって、
前記支持板は、中空構造板により構成されたことを特徴とする。
【0007】
また、前記支持板は、複数の中空溝を有することを特徴とする。
【0008】
また、前記中空溝は、複数の段状に形成されるようにしてもよい。
【0009】
また、前記支持板は、前記折板屋根の山形部のピッチ幅に応じて歩行可能な強度となるような厚さであるようにしてもよい。
【0010】
また、前記支持板は、複数枚から構成されるようにしてもよい。
【0011】
また、本発明の緑化屋根の施工方法は、
山形部が連続する折板屋根の山頂部に取付具を固定する工程と、
前記取付具により中空構造板からなる支持板及び植栽可能な緑化基盤とを前記折板屋根に取り付ける工程とを有することを特徴とする。
【0012】
また、前記支持板は、前記折板屋根の山形部のピッチ幅に応じて歩行可能な強度となるような厚さに構成するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、折板屋根の種類にかかわらず歩行可能な強度を確保することができるとともに、断熱保温効果を向上することができる緑化屋根及び折板屋根の緑化工法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態に係る緑化屋根について、以下図面を参照して説明する。緑化屋根10は、図1に示すように、折板屋根11と、取付具12と、支持板13と、保水シート14と、植栽が可能な緑化基盤15と、金網16とを備えている。緑化屋根10では、複数の取付具12により、折板屋根11上に複数枚の支持板13,保水シート14,緑化基盤15及び金網16が取り付けられる。
【0015】
折板屋根11は、図1及び図2に示すように、複数の折板屋根材11A,11B…が連結されて構成されている。折板屋根材11A,11B…は、谷部111A,111B…と、斜面部112A,112B…と、山頂部113A,113B…とを備えている。山頂部113A,113B…と斜面部112A,112B…により、それぞれ山形部が形成される。山頂部113A,113B…には、図2に示すように、折板屋根材11A,11B…を連結するためのハゼ部114A,114B…が形成されている。なお、ハゼ部114A,114B…は、折板屋根材11A,11B…の長手方向に沿って形成されている。ハゼ部114A,114B…を、図2に示すように、それぞれ接合してハゼ締めすることにより、折板屋根11A,11B…は連結され、折板屋根11が構成される。
【0016】
取付具12は、折板屋根11上に支持板13、保水シート14,緑化基盤15及び金網16を固定して取り付けるための部材である。取付具12には、例えば金属部材が用いられる。
【0017】
取付具12は、図3に示すように、固定用基台12aと、固定用ボルト12bと、一対の挟持板12c,12dと、固着ボルト12eと、締め付けボルト12fと、ナット12gとから構成される。取付具12は、折板屋根材11A,11B…の山頂部113A,113B…上に設けられる。
【0018】
固定用基台12a及び固定用ボルト12bは、主に、折板屋根11に取付具12を固定するために用いられる。固定用基台12aは、コの字状に形成されている。固定用基台12aの一方の側面の下方には舌片部121aが形成されている。固定用基台12aの他方の側面に、固定用ボルト12bが取り付けられている。固定用基台12aは、図1に示すように、折板屋根11の山頂部113A,113B…上に載置される。固定用ボルト12bを締め付けることによって、対向する舌片部121aと固定用ボルト12bの先端部との間に接合されたハゼ部114A,114B…を挟持する。これにより、固定用基台12aは、折板屋根11上に固定される。
【0019】
一対の挟持板12c,12d及び固定基台12aの上面によって、支持板13、保水シート14,緑化基盤15及び金網16が挟持される。一対の挟持板12c,12dは、例えば円盤状に形成された金属部材からなる。一対の挟持板12c,12dの中央には、中央孔121c及び121dがそれぞれ形成されている。中央孔121c及び121dには、それぞれ固着ボルト12e及び締め付けボルト12fが挿入される。一対の挟持板12c,12dの互いに向き合う面には、金属部材に切れ目を入れて立ち上げられた先端が鋭角である複数の突起122c,122dが形成されている。
【0020】
固着ボルト12eは、固定基台12aの上面から突設して固着されている。ナット12gは、比較的長いナットであり、タカナット等が用いられる。ナット12gの一方側には、固着ボルト12eが螺合されるとともに、ナット12gの他方側には締め付けボルト12fが螺合される。
【0021】
折板屋根11に固定された固定用基台12aの上面と、固着ボルト12eが挿入された一方の挟持板12cの固定用基台12a側の面との間に支持板13を配置し、ナット12gを固着ボルト12eに締め付ける。これにより、固定用基台12aの上面と一方の挟持板12cとの間に、支持板13が挟持されて固定される。また、一方の挟持板12cの突起122cが形成された面と、他方の挟持板12dの突起122dが形成された面との間に、一方の挟持板12c側から保水シート14,緑化基盤15及び金網16を順次配置して、締め付けボルト12fを他方の挟持板12dの中央孔122dに挿入するとともに、ナット12gに締め付けて螺合させる。これにより、一方の挟持板12cの突起122cが形成された面と、この面と対向する他方の挟持板12dの突起122dが形成された面との間に、保水シート14,緑化基盤15及び金網16が挟持されて固定される。一対の挟持板12c,12dにそれぞれ形成された突起122c,122dにより、緑化基盤15等は安定して挟持されることになる。
【0022】
支持板13は、保水シート14,緑化基盤15及び金網16を安定して取付具12に固定させるプレートであるとともに、緑化屋根10上を歩行可能とする強度を確保するものである。
【0023】
支持板13は、例えば樹脂材料からなり、図4に示すように、複数の並設された中空溝131を有する中空構造板である。折板屋根11は、用途等により様々なピッチ幅(働き巾)を有するものが用いられるが、ピッチ幅に応じて、支持板13の厚さを調整することにより、緑化屋根10上を歩行可能とする強度を確保する。例えば、折板屋根11のピッチ幅が大きい場合には、支持板13の厚さを厚くし、折板屋根11のピッチ幅が小さい場合には、支持板13の厚さを薄くすることにより、緑化屋根10上の歩行可能強度を保つ。また、支持板13は、図5に示すように、複数枚を積層することにより歩行可能強度を調整するようにしてもよい。
【0024】
保水シート14は、吸収した水分を緑化基盤15に供給するシートである。保水シート14には、例えば不織布等が用いられる。
【0025】
緑化基盤15は、植栽が施される薄型で軽量の基盤である。緑化基盤15には、例えば杉の間伐材が材料として用いられる。緑化基盤15には、芝、野菜、果物、花等の植物が植栽される。緑化基盤15は、切断などの加工性に優れており、設置スペースに応じて自由な形状に加工することができる。
【0026】
金網16は、緑化基盤15を覆うことにより緑化基盤15を折板屋根11上に安定して固定させるためのものである。また、さらに飛散防止用ネットにより、金網16上を覆うようにしてもよい。
【0027】
なお、支持板13には、固着ボルト12eを挿入するための挿入孔(図示せず)が形成され、保水シート14、緑化基盤15には、ナット12gを挿入するための挿入孔(図示せず)が形成されている。
【0028】
このように本実施の形態の緑化屋根では、折板屋根11の種類によってピッチ幅が異なっても、ピッチ幅に応じて厚さを調整して支持板13を備えさせるようにしたので、折板屋根11のピッチ幅に応じた緑化屋根10上の歩行可能強度を確保することができる。よって、緑化屋根10の施工時、または、メンテナンス時において、緑化屋根10上を歩行することが可能になる。
【0029】
また、支持板13の厚さが調整されても、それに応じて、固定用基台12aの上面と、一方の挟持板12cの固定用基台12a側の面との間の距離は、一方の挟持板12cを移動させることにより調整が可能であるので、容易な構造により、緑化屋根10上の歩行可能強度を確保することができる。
【0030】
また、本実施の形態の緑化屋根では、支持板13を中空溝131が形成された中空構造板としたので、支持板13により断熱効果及び保温効果を奏することができ、建物室内の夏の断熱効果、及び、冬の保温効果を向上させて建物室内環境の改善に貢献することができる。また、支持板13は中空構造板であるので、重量を軽減することもできる。
【0031】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、本実施の形態では、支持板13は一段の並設された中空溝131を備える例について説明したが、支持板13は、一枚の支持板に二段以上の多段構造の中空溝131を備えるようにしてもよい。また、本実施の形態では、支持板13を図5に示すように2枚積層する例について説明したが、3枚以上の支持板13を積層するようにしてもよい。
【0032】
また、本実施の形態では、折板屋根11をハゼ部114A,114B…により連結する例について説明したが、折板屋根材の連結部を締結ボルトで連結した折板屋根にも本発明を適用することができる。この場合には、折板屋根材の締結ボルトを利用してナット等により固定用基台を折板屋根に固定する。
【0033】
また、本実施の形態では、固定用基台12aと、固定用ボルト12bと、一対の挟持板12c,12dと、固着ボルト12eと、締め付けボルト12fと、ナット12gとから構成される取付具12を用いる例について説明したが、取付具は、このような構成のものに限られず、折板屋根11上に支持板13、緑化基盤15等を取り付けられる構造のものであればよい。例えば、一対の挟持板12c,12dは円盤状の構造のものに限らず、棒状の構造のものであってもよいし、挟持板の数も2枚である必要はなく、3枚以上であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態に係る緑化屋根の概略構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した緑化屋根が備えた折板屋根の一部の構成を表す断面図である。
【図3】図1に示した緑化屋根が備えた取付具の斜視図である。
【図4】図1に示した緑化屋根が備えた支持板の斜視図である。
【図5】支持板の別の例の斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
10 緑化屋根
11 折板屋根
11A,11B… 折板屋根材
12 取付具
12a 固定用基台
12c 一方の挟持板
12d 他方の挟持板
13 支持板
131 中空溝
14 保水シート
15 緑化基盤
16 金網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
山形部が連続する折板屋根と、この折板屋根の山頂部に設けられた取付具と、この取付具により前記折板屋根に取り付けられた支持板及び植栽可能な緑化基盤とを有する緑化屋根であって、
前記支持板は、中空構造板により構成されたことを特徴とする緑化屋根。
【請求項2】
前記支持板は、複数の中空溝を有することを特徴とする請求項1に記載の緑化屋根。
【請求項3】
前記中空溝は、複数の段状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の緑化屋根。
【請求項4】
前記支持板は、前記折板屋根の山形部のピッチ幅に応じて歩行可能な強度となるような厚さであることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の緑化屋根。
【請求項5】
前記支持板は、複数枚から構成されることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項に記載の緑化屋根。
【請求項6】
山形部が連続する折板屋根の山頂部に取付具を固定する工程と、
前記取付具により中空構造板からなる支持板及び植栽可能な緑化基盤とを前記折板屋根に取り付ける工程とを有する緑化屋根の施工方法。
【請求項7】
前記支持板は、前記折板屋根の山形部のピッチ幅に応じて歩行可能な強度となるような厚さに構成することを特徴とする請求項6に記載の緑化屋根の施工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−239216(P2007−239216A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59910(P2006−59910)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(591280197)株式会社構造計画研究所 (59)
【Fターム(参考)】