説明

緑色着色組成物および有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタ

【課題】本発明は、多色塗り分け方式の有機EL表示装置に用いた場合に高輝度の緑色光が得られる緑色着色組成物および有機EL表示装置用カラーフィルタを提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、少なくともシアン色色材および黄色色材を含有し、ピーク波長が520nm〜540nmの範囲内にあり、ピーク波長の透過率を70%とした際の、波長510nmの透過率が40%以下、波長560nmの透過率が40%以下となる分光特性を有することを特徴とする緑色着色組成物を提供することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多色塗り分け方式の有機エレクトロルミネッセンス表示装置に用いられるカラーフィルタの製造に使用される緑色着色組成物、およびそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと略す。)表示装置は、自己発色により視認性が高いこと、液晶表示装置と異なり全固体ディスプレイであるため耐衝撃性に優れていること、応答速度が速いこと、温度変化による影響が少ないこと、および視野角が大きいことなどの利点が注目されている。
【0003】
有機EL表示装置のフルカラー化には、大別して、三色塗り分け方式と色変換方式とカラーフィルタ方式とがある。三色塗り分け方式は赤色・緑色・青色の三色の発光層を用いる方法であり、色変換方式は青色発光層を用いて色変換層を組み合わせる方法であり、カラーフィルタ方式は白色発光層を用いてカラーフィルタを組み合わせる方法である。また、三色塗り分け方式では、色純度を高めるためにカラーフィルタを併用する場合がある。
【0004】
従来、カラーフィルタを構成する緑色着色層には緑色顔料および黄色顔料を混合して用いていた。また近年では、波長490nm〜520nm付近の領域における色再現性を高めるために、緑色着色層にシアン色顔料および黄色顔料を混合して用いることが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−45399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
白色発光層とカラーフィルタを組み合わせる方式では、白色発光をカラーフィルタで分光するため、カラーフィルタを構成する緑色着色層には、短波長域(青)および長波長域(赤)の光を透過しないような分光特性が要求される。そのため、この方式の緑色着色層では、短波長域(青)および長波長域(赤)の透過率を低くする必要があり、結果として中波長域(緑)の透過率も低くなってしまう。
なお、液晶表示装置に用いられるカラーフィルタにおいても、白色光をカラーフィルタで分光するため、カラーフィルタを構成する緑色着色層には上記のような分光特性が要求される。
【0007】
一方、赤色・緑色・青色の三色の発光層とカラーフィルタを組み合わせる方式では、各色の発光層に対応して各色の着色層が配置されるため、緑色着色層は中波長域(緑)の光を透過すればよい。すなわち、この方式の緑色着色層は、短波長域(青)および長波長域(赤)の光を透過しないような分光特性を有する必要がない。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、多色塗り分け方式の有機EL表示装置に用いた場合に高輝度の緑色光が得られる緑色着色組成物および有機EL表示装置用カラーフィルタを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、少なくともシアン色色材および黄色色材を含有し、ピーク波長が520nm〜540nmの範囲内にあり、ピーク波長の透過率を70%とした際の、波長510nmの透過率が40%以下、波長560nmの透過率が40%以下となる分光特性を有することを特徴とする緑色着色組成物を提供する。
【0010】
本発明の緑色着色組成物は所定の分光特性を有するので、本発明の緑色着色組成物を用いたカラーフィルタを備える多色塗り分け方式の有機EL表示装置においては、色純度および輝度の高い緑色光を得ることができる。
【0011】
上記発明においては、上記シアン色色材が、ピーク波長が480nm〜500nmの範囲内にあり、ピーク波長の透過率を90%とした際の、波長530nmの透過率が60%以上、波長575nmの透過率が20%以下となる分光特性を有し、上記黄色色材が、波長560nm〜700nmの平均透過率を98%とした際の、波長530nmの透過率が50%以上、波長495nmの透過率が5%以下となる分光特性を有することが好ましい。シアン色色材および黄色色材がこのような分光特性を有することにより、本発明の緑色着色組成物の分光スペクトルにおいてピーク波長の透過率を高くすることができるからである。
【0012】
また本発明においては、上記シアン色色材が、β型銅フタロシアニン、β型亜鉛フタロシアニン、塩素化亜鉛フタロシアニン、または無金属フタロシアニンであり、上記黄色色材が、C.I.ピグメントイエロー139であることが好ましい。
【0013】
また本発明は、β型銅フタロシアニン、β型亜鉛フタロシアニン、塩素化亜鉛フタロシアニン、または無金属フタロシアニンのいずれかのシアン色色材と、C.I.ピグメントイエロー139の黄色色材とを含有することを特徴とする緑色着色組成物を提供する。
【0014】
本発明の緑色着色組成物は所定のシアン色色材および黄色色材を含有するので、本発明の緑色着色組成物を用いたカラーフィルタを備える多色塗り分け方式の有機EL表示装置においては、色純度および輝度の高い緑色光を得ることができる。
【0015】
さらに本発明は、少なくとも緑色を含む複数色の発光層が平面的に配列された有機EL表示装置に用いられ、透明基板と、上記透明基板上に形成され、少なくとも緑色を含む複数色の着色層とを有する有機EL表示装置用カラーフィルタであって、緑色の上記着色層は、少なくともシアン色色材および黄色色材を含有し、ピーク波長が520nm〜540nmの範囲内にあり、ピーク波長の透過率を70%とした際の、波長510nmの透過率が40%以下、波長560nmの透過率が40%以下となる分光特性を有することを特徴とする有機EL表示装置用カラーフィルタを提供する。
【0016】
本発明においては、緑色着色層が所定の分光特性を有するので、本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタを多色塗り分け方式の有機EL表示装置に用いた場合には、高色純度および高輝度の緑色光を得ることができる。
【0017】
上記発明においては、上記シアン色色材が、ピーク波長が480nm〜500nmの範囲内にあり、ピーク波長の透過率を90%とした際の、波長530nmの透過率が60%以上、波長575nmの透過率が20%以下となる分光特性を有し、上記黄色色材が、波長560nm〜700nmの平均透過率を98%とした際の、波長530nmの透過率が50%以上、波長495nmの透過率が5%以下となる分光特性を有することが好ましい。シアン色色材および黄色色材がこのような分光特性を有することにより、緑色着色層の分光スペクトルにおいてピーク波長の透過率を高くすることができるからである。
【0018】
また本発明においては、上記シアン色色材が、β型銅フタロシアニン、β型亜鉛フタロシアニン、塩素化亜鉛フタロシアニン、または無金属フタロシアニンであり、上記黄色色材が、C.I.ピグメントイエロー139であることが好ましい。
【0019】
また本発明は、少なくとも緑色を含む複数色の発光層が平面的に配列された有機EL表示装置に用いられ、透明基板と、上記透明基板上に形成され、少なくとも緑色を含む複数色の着色層とを有する有機EL表示装置用カラーフィルタであって、緑色の上記着色層が、β型銅フタロシアニン、β型亜鉛フタロシアニン、塩素化亜鉛フタロシアニン、または無金属フタロシアニンのいずれかのシアン色色材と、C.I.ピグメントイエロー139の黄色色材とを含有することを特徴とする有機EL表示装置用カラーフィルタを提供する。
【0020】
本発明においては、緑色着色層が所定のシアン色色材および黄色色材を含有するので、本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタを多色塗り分け方式の有機EL表示装置に用いた場合には、高色純度および高輝度の緑色光を得ることができる。
【0021】
本発明においては、緑色の上記発光層が、ピーク波長が525nm〜535nmの範囲内にあり、ピーク波長の発光強度を100%とした際の、波長500nmの発光強度が50%以下、波長560nmの発光強度が50%以下となる発光特性を有すること好ましい。本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタは、このような発光特性を有する緑色発光層を備える有機EL表示装置に好適である。
【発明の効果】
【0022】
本発明においては、緑色着色組成物または緑色着色層が所定の分光特性を有するので、多色塗り分け方式の有機EL表示装置において緑色光の輝度を向上させることが可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタを備える有機EL表示装置の一例を示す概略断面図である。
【図3】実施例1,2、比較例1,2における顔料の透過率スペクトルを示すグラフである。
【図4】実施例1,2、比較例1,2におけるカラーフィルタの透過率スペクトルおよび有機EL表示装置の発光スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の緑色着色組成物および有機EL表示装置用カラーフィルタについて詳細に説明する。
【0025】
A.緑色着色組成物
本発明の緑色着色組成物は、2つの実施態様を有する。以下、各実施態様に分けて説明する。
【0026】
I.第1実施態様
本実施態様の緑色着色組成物は、少なくともシアン色色材および黄色色材を含有し、上述の分光特性を有することを特徴とするものである。
【0027】
本実施態様の緑色着色組成物は所定の分光特性を有するので、本実施態様の緑色着色組成物を用いたカラーフィルタを備える多色塗り分け方式の有機EL表示装置においては、色純度および輝度の高い緑色光を得ることができる。
以下、本実施態様の緑色着色組成物の分光特性および組成について説明する。
【0028】
1.分光特性
本実施態様の緑色着色組成物は、上述の分光特性を有していればよい。ピーク波長は520nm〜540nmの範囲内であればよいが、中でも525nm〜535nmの範囲内であることが好ましい。ピーク波長の透過率を70%とした際の、波長510nmの透過率は40%以下であればよいが、中でも35%以下であることが好ましい。また、ピーク波長の透過率を70%とした際の、波長560nmの透過率は40%以下であればよいが、中でも35%以下であることが好ましい。
【0029】
また、本実施態様の緑色着色組成物は、ピーク波長の透過率を70%とした際の、波長400nm〜470nmの範囲内の平均透過率が1%以上となり、波長620nm〜700nmの範囲内の平均透過率が5%以上となる分光特性を有していてもよい。このような分光特性を有することにより、ピーク波長の透過率を高くすることができるからである。また、本実施態様の緑色着色組成物を多色塗り分け方式の有機EL表示装置に用いられるカラーフィルタの製造に使用する場合には、緑色着色組成物は短波長域(青)および長波長域(赤)の光を透過しないような分光特性を有する必要がないので、このような分光特性を有していても構わないのである。
【0030】
ピーク波長の透過率を70%とした際の、波長400nm〜470nmの範囲内の平均透過率は1%以上であればよいが、中でも2%〜5%の範囲内であることが好ましい。また、ピーク波長の透過率を70%とした際の、波長620nm〜700nmの範囲内の平均透過率は5%以上であればよいが、中でも5%〜20%の範囲内であることが好ましい。本実施態様の緑色着色組成物を用いてカラーフィルタを作製する場合、外光反射を考慮すると、上述の波長域における透過率は比較的低いことが好ましいからである。
【0031】
なお、分光特性は、緑色着色組成物透過率測定用サンプルを顕微分光装置OSP−SP2000(OLYMPUS社製)を用いて透過率スペクトルを測定することにより得ることができる。
ここで、上記緑色着色組成物透過率測定用サンプルは、次のようにして形成することができる。まず、本実施態様の緑色着色組成物を、厚さ0.7mmのガラス基板上にスピンコート法で塗布し、80℃で3分間の条件でプリベークする。次いで、紫外線露光(100mJ/cm)した後、アルカリ現像し、その後200℃で30分間焼成する。その際、ピーク波長の透過率が70%となる膜厚が得られるよう、スピンコート法の塗布条件を適宜変更することで、所望の緑色着色組成物透過率測定用サンプルを形成することができる。
【0032】
2.組成
本実施態様の緑色着色組成物は、少なくともシアン色色材および黄色色材を含有していればよく、通常はこれらの色材をバインダ樹脂に分散または溶解させたものとなる。また、本実施態様の緑色着色組成物は、必要に応じて、溶剤、光重合開始剤、分散剤を含有していてもよく、さらには増感剤、塗布性改良剤、現像改良剤、架橋剤、重合禁止剤、可塑剤、難燃剤等を含有していてもよい。
以下、色材およびバインダ樹脂について説明する。
【0033】
(1)色材
本実施態様の緑色着色組成物は、色材として、シアン色色材および黄色色材を含有する。以下、シアン色色材および黄色色材に分けて説明する。
【0034】
(a)シアン色色材
本実施態様に用いられるシアン色色材としては、顔料および染料のいずれも使用することができる。
【0035】
シアン色色材は、ピーク波長が480nm〜500nmの範囲内にあり、ピーク波長の透過率を90%とした際の、波長530nmの透過率が60%以上、波長575nmの透過率が20%以下となる分光特性を有することが好ましい。このような分光特性を有することにより、本実施態様の緑色着色組成物のピーク波長の透過率を高くすることができるからである。
【0036】
ピーク波長は480nm〜500nmの範囲内であればよいが、中でも485nm〜495nmの範囲内であることが好ましい。ピーク波長の透過率が90%とした際の、波長530nmの透過率は60%以上であればよいが、中でも65%〜75%の範囲内であることが好ましい。また、ピーク波長の透過率が90%とした際の、波長575nmの透過率は20%以下であればよいが、中でも5%〜15%の範囲内であることが好ましい。
【0037】
なお、分光特性は、シアン色色材透過率測定用サンプルを顕微分光装置OSP−SP2000(OLYMPUS社製)を用いて透過率スペクトルを測定することにより得ることができる。
ここで、上記シアン色色材透過率測定用サンプルは、次のようにして形成することができる。まず、色材としてシアン色色材のみを用いる以外は、本実施態様の緑色着色組成物と同様にして、シアン色着色組成物を調製する。次に、シアン色着色組成物を、厚さ0.7mmのガラス基板上にスピンコート法で塗布し、80℃で3分間の条件でプリベークする。次いで、紫外線露光(100mJ/cm)した後、アルカリ現像し、その後200℃で30分間焼成する。その際、ピーク波長の透過率が90%となる膜厚が得られるよう、スピンコート法の塗布条件を適宜変更することで、所望のシアン色色材透過率測定用サンプルを形成することができる。
【0038】
このような分光特性を有するシアン色色材としては、例えば、β型銅フタロシアニン、β型亜鉛フタロシアニン、塩素化亜鉛フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどのシアン色顔料が挙げられる。カラーインデックス(C.I.)番号が付されているシアン色顔料としては、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16等が挙げられる。
【0039】
本実施態様に用いられるシアン色色材の、上記緑色着色組成物に含まれる全色材における含有比率としては、90質量%以下であることが好ましく、中でも20質量%〜80質量%の範囲内であることが好ましく、特に30質量%〜70質量%の範囲内であることが好ましい。上記シアン色色材の含有比率が、上記範囲内であることにより、上記緑色着色組成物のピーク波長の透過率をより大きいものとすることができるからである。
【0040】
(b)黄色色材
本実施態様に用いられる黄色色材としては、顔料および染料のいずれも使用することができる。
【0041】
黄色色材は、波長560nm〜700nmの平均透過率を98%とした際の、波長530nmの透過率が50%以上、波長495nmの透過率が5%以下となる分光特性を有することが好ましい。このような分光特性を有することにより、本実施態様の緑色着色組成物のピーク波長の透過率を高くすることができるからである。
【0042】
波長560nm〜700nmの平均透過率を98%とした際の、波長530nmの透過率は50%以上であればよいが、中でも60%以上、更には70%以上であることが好ましい。また、波長560nm〜700nmの平均透過率を98%とした際の、波長495nmの透過率は5%以下であればよいが、中でも3%以下、更には1.5%以下であることが好ましい。
【0043】
なお、分光特性は、黄色色材透過率測定用サンプルを顕微分光装置OSP−SP2000(OLYMPUS社製)を用いて透過率スペクトルを測定することにより得ることができる。
ここで、上記黄色色材透過率測定用サンプルは、次のようにして形成することができる。まず、色材として黄色色材のみを用いる以外は、本実施態様の緑色着色組成物と同様にして、黄色着色組成物を調製する。次に、黄色着色組成物を、厚さ0.7mmのガラス基板上にスピンコート法で塗布し、80℃で3分間の条件でプリベークする。次いで、紫外線露光(100mJ/cm)した後、アルカリ現像し、その後200℃で30分間焼成する。その際、ピーク波長の透過率が90%となる膜厚が得られるよう、スピンコート法の塗布条件を適宜変更することで、所望の黄色色材透過率測定用サンプルを形成することができる。
【0044】
このような分光特性を有する黄色色材としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー139などの黄色顔料が挙げられる。
【0045】
本実施態様に用いられる黄色色材の、上記緑色着色組成物に含まれる全色材における含有比率としては、40質量%以下であることが好ましく、中でも5質量%〜40質量%の範囲内であることが好ましく、特に10質量%〜35質量%の範囲内であることが好ましい。上記黄色色材の含有比率が、上記範囲内であることにより、上記緑色着色組成物のピーク波長の透過率をより大きいものとすることができるからである。
【0046】
(c)その他の色材
本実施態様の緑色着色組成物は、シアン色色材および黄色色材の他に、調色用に緑色色材を含有していてもよい。
緑色色材としては、顔料および染料のいずれも使用することができる。具体的に、緑色色材としては、C.I.ピグメントグリーン7などの緑色顔料が挙げられる。
【0047】
本実施態様に用いられる緑色色材の、上記緑色着色組成物に含まれる全色材における含有比率としては、1質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましい。
【0048】
(2)バインダ樹脂
本実施態様に用いられるバインダ樹脂としては、例えば、アクリレート系、メタクリレート系、ポリ桂皮酸ビニル系、もしくは環化ゴム系等の反応性ビニル基を有する感光性樹脂が用いられる。また、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ヒドロキシエチルセルロース樹脂、カルボキシメチルセルロース樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂等も用いることができる。
【0049】
3.用途
本実施態様の緑色着色組成物は、多色塗り分け方式の有機EL表示装置に用いられるカラーフィルタを構成する緑色着色層の形成に好適である。
【0050】
II.第2実施態様
本実施態様の緑色着色組成物は、β型銅フタロシアニン、β型亜鉛フタロシアニン、塩素化亜鉛フタロシアニン、または無金属フタロシアニンのいずれかのシアン色色材と、C.I.ピグメントイエロー139の黄色色材とを含有することを特徴とするものである。
【0051】
本実施態様の緑色着色組成物は所定のシアン色色材および黄色色材を含有するので、本実施態様の緑色着色組成物を用いたカラーフィルタを備える多色塗り分け方式の有機EL表示装置においては、色純度および輝度の高い緑色光を得ることができる。
【0052】
本実施態様の緑色着色組成物は、上述のシアン色色材および黄色色材を含有していればよく、通常はこれらの色材をバインダ樹脂に分散または溶解させたものとなる。
なお、シアン色色材、黄色色材、およびバインダ樹脂については、上記第1実施態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0053】
また、本実施態様の緑色着色組成物は、シアン色色材および黄色色材の他に、緑色色材を含有していてもよい。緑色色材を含有することで、緑色着色組成物中の色材含有率を下げることができる為、パターニング特性を向上させることができる。
なお、緑色色材については、上記第1実施態様に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0054】
さらに、本実施態様の緑色着色組成物は、必要に応じて、溶剤、光重合開始剤、分散剤を含有していてもよく、さらには増感剤、塗布性改良剤、現像改良剤、架橋剤、重合禁止剤、可塑剤、難燃剤等を含有していてもよい。
【0055】
本実施態様の緑色着色組成物は、多色塗り分け方式の有機EL表示装置に用いられるカラーフィルタを構成する緑色着色層の形成に好適である。
【0056】
B.有機EL表示装置用カラーフィルタ
次に、本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタについて説明する。
本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタは、2つの実施態様を有する。以下、各実施態様に分けて説明する。
【0057】
I.第3実施態様
本実施態様の有機EL表示装置用カラーフィルタは、少なくとも緑色を含む複数色の発光層が平面的に配列された有機EL表示装置に用いられ、透明基板と、上記透明基板上に形成され、少なくとも緑色を含む複数色の着色層とを有する有機EL表示装置用カラーフィルタであって、緑色の上記着色層は、少なくともシアン色色材および黄色色材を含有し、上述の分光特性を有することを特徴とするものである。
【0058】
本実施態様の有機EL表示装置用カラーフィルタについて、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施態様の有機EL表示装置用カラーフィルタの一例を示す概略断面図である。図1に例示するように、有機EL表示装置用カラーフィルタ1は、透明基板2と、この透明基板2上に形成された遮光部3と、遮光部3の開口部に形成され、赤色着色層4R、緑色着色層4Gおよび青色着色層4Bを含む三色の着色層4とを備えている。そして、緑色着色層4Gは、少なくともシアン色色材および黄色色材を含有し、所定の分光特性を有している。
【0059】
図2は、図1に例示する本実施態様の有機EL表示装置用カラーフィルタを備える有機EL表示装置の一例を示す概略断面図である。図2に例示するように、有機EL表示装置10は、有機EL表示装置用カラーフィルタ1と、有機EL素子基板11と、有機EL素子を封止するシール剤19とを備えている。有機EL表示装置用カラーフィルタ1は、上述したとおりである。一方、有機EL素子基板11は、基板12と、基板12上に形成された背面電極層13と、背面電極層13の開口部に形成された絶縁層14と、背面電極層13上に形成され、赤色発光層15R、緑色発光層15Gおよび青色発光層15Bを含む三色の発光層15と、発光層15上に形成された透明電極層16と、透明電極層16上に形成されたガスバリア層17とを有している。この有機EL表示装置10においては、有機EL表示装置用カラーフィルタ1の着色層4(赤色着色層4R、緑色着色層4Gおよび青色着色層4B)が、有機EL素子基板11の発光層15(赤色発光層15R、緑色発光層15Gおよび青色発光層15B)の発光色に応じて配置されている。
【0060】
このような有機EL表示装置においては、緑色発光層に対応して配置されている緑色着色層が所定の分光特性を有するので、高色純度および高輝度の緑色光を得ることができる。これにより、有機EL表示装置の消費電力の低減が可能となる。
以下、本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタにおける各構成について説明する。
【0061】
1.着色層
本実施態様に用いられる着色層は、透明基板上に形成され、少なくとも緑色を含む複数色の着色層から構成されるものである。
着色層は、少なくとも緑色着色層を有していればよく、一般に、赤色着色層、緑色着色層および青色着色層の3色の着色層から構成される。
【0062】
複数色の着色層の配列としては、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の公知の配列とすることができる。
着色層の膜厚は、通常、1μm〜5μm程度で設定される。
着色層の形成方法としては、カラーフィルタにおける一般的な着色層の形成方法と同様とすることができ、例えばフォトリソグラフィー法、インクジェット法、印刷法等が挙げられる。
以下、緑色着色層、赤色着色層および青色着色層に分けて説明する。
【0063】
(1)緑色着色層
本実施態様に用いられる緑色着色層は、少なくともシアン色色材および黄色色材を含有し、ピーク波長が520nm〜540nmの範囲内にあり、ピーク波長の透過率を70%とした際の、波長510nmの透過率が40%以下、波長560nmの透過率が40%以下となる分光特性を有するものである。
【0064】
本実施態様における緑色着色層は、上記「A.緑色着色組成物」の項に記載した第1実施態様の緑色着色組成物を用いて形成されたものであることが好ましい。
なお、緑色着色層の分光特性については、上述の緑色着色組成物の分光特性と同様であるので、ここでの説明は省略する。
ここで、分光特性は、顕微分光装置OSP−SP2000(OLYMPUS社製)を用いて測定した透過率スペクトル、および、接触式膜厚測定装置P−15(KLA−TENCHOR社製)にて測定した膜厚を用い、膜厚調整による色濃度調整シミュレーションによる透過率算出にてピーク波長の透過率を70%に合せることで算出する。
例えば、測定値が膜厚:A(μm)、透過率:α(%)の場合、調整膜厚:B(μm)での透過率:β(%)はβ=α(B/A)となる。ピーク波長の透過率β(%)が70%となるように調整膜厚B(μm)を算出し、算出した調整膜厚B(μm)を用いて各波長での透過率を算出することで、ピーク波長の透過率を70%に合せた際の透過率スペクトルを得ることができる。
【0065】
(2)赤色着色層および青色着色層
赤色着色層および青色着色層の材料としては、カラーフィルタの赤色着色層および青色着色層に一般的に用いられる材料を使用することができる。
【0066】
2.透明基板
本実施態様に用いられる透明基板は、上記着色層を形成可能であり、可視光に対して透明な透明基板であれば特に限定されるものではなく、カラーフィルタに一般的に用いられる透明基板と同様とすることができる。具体的には、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材等が挙げられる。
【0067】
3.その他の部材
本実施態様の有機EL表示装置用カラーフィルタは、上述の着色層および透明基板以外にも適宜必要な部材を有することができる。例えば、透明基板上に遮光部が形成されていてもよい。
遮光部は、画素を画定するものである。このような遮光部の材料、形状、および形成方法としては、有機EL表示装置用カラーフィルタに一般的に用いられるものと同様とすることができる。
【0068】
4.用途
本実施態様の有機EL表示装置用カラーフィルタは、少なくとも緑色を含む複数色の発光層が平面的に配列された有機EL表示装置に用いられる。すなわち、多色塗り分け方式の有機EL表示装置に用いられる。
【0069】
有機EL表示装置は、例えば本実施態様の有機EL表示装置用カラーフィルタと有機EL素子基板とを備えるものである。
有機EL素子基板は、有機EL素子を有するものであればよく、例えば、基板と、基板上にパターン状に形成された背面電極層と、背面電極層の開口部に形成された絶縁層と、背面電極層上に形成され、少なくとも緑色を含む複数色の発光層と、発光層上に形成された透明電極層とを有することができる。
以下、有機EL表示装置における有機EL表示装置用カラーフィルタ以外の構成について説明する。
【0070】
(1)発光層
発光層は少なくとも緑色を含む複数色の発光層からなり、複数色の発光層は平面的に配列されるものである。
発光層は、少なくとも緑色発光層を有していればよく、一般に、赤色発光層、緑色発光層および青色発光層の3色の発光層から構成される。
発光層の配列としては、各色の発光層が巨視的に見て平均的に配列されていれば特に限定されるものではなく、例えば、ストライプ配列、モザイク配列、デルタ配列等が挙げられる。
発光層の形成方法としては、カラーフィルタにおける一般的な発光層の形成方法と同様とすることができ、ドライプロセスおよびウェットプロセスのいずれも用いることができる。例えば、インクジェット法、印刷法、フォトリソグラフィー法、マスクを用いた蒸着法等が挙げられる。
以下、緑色発光層、赤色発光層および青色発光層に分けて説明する。
【0071】
(a)緑色発光層
緑色発光層は、短波長域(青)および長波長域(赤)の光を発光しないような発光特性を有することが好ましい。具体的に、緑色発光層は、ピーク波長が525nm〜535nmの範囲内にあり、ピーク波長の発光強度を100%とした際の、波長500nmの発光強度が50%以下、波長560nmの発光強度が50%以下となる発光特性を有すること好ましい。このような発光特性を有する緑色発光層を備える有機EL表示装置に、本実施態様の有機EL表示装置用カラーフィルタが好適だからである。
【0072】
緑色発光層の材料としては、有機EL表示装置の緑色発光層に一般的に用いられる材料を使用することができる。
【0073】
(b)赤色発光層および青色発光層
赤色発光層および青色発光層の材料としては、有機EL表示装置の赤色発光層および青色発光層に一般的に用いられる材料を使用することができる。
【0074】
(2)電荷注入輸送層
発光層と透明電極層または背面電極層との間には、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層などの電荷注入輸送層が形成されていてもよい。電荷注入輸送層としては、有機EL表示装置に一般的に用いられるものを使用することができる。
【0075】
(3)透明電極層および背面電極層
透明電極層および背面電極層は、発光層に電圧を印加し、発光層で発光を起こさせるために設けられるものである。透明電極層は、発光層と有機EL表示装置用カラーフィルタとの間に配置される。一方、背面電極層は、発光層と基板との間に配置される。透明電極層および背面電極層としては、有機EL表示装置に一般的に用いられるものを使用することができる。
【0076】
(4)絶縁層
絶縁層は、隣接する背面電極層間で導通したり、透明電極層および背面電極層間で導通したりするのを防ぐために形成されるものである。絶縁層としては、有機EL表示装置に一般的に用いられるものを使用することができる。
【0077】
(5)基板
基板としては、透明電極層、発光層および背面電極層等を支持することができるものであればよく、有機EL表示装置に一般的に用いられるものを使用することができる。本実施態様においては、有機EL表示装置用カラーフィルタ側から光が取り出されるため、基板は、透明であっても不透明であってもよい。
【0078】
(6)シール剤
シール剤は、有機EL表示装置用カラーフィルタおよび有機EL素子基板の周縁部に形成され、有機EL素子を封止するものである。シール剤としては、有機EL素子が大気中の水分等と接触するのを抑制することができるものであればよく、有機EL表示装置に一般的に用いられるものを使用することができる。
【0079】
II.第4実施態様
本実施態様の有機EL表示装置用カラーフィルタは、少なくとも緑色を含む複数色の発光層が平面的に配列された有機EL表示装置に用いられ、透明基板と、上記透明基板上に形成され、少なくとも緑色を含む複数色の着色層とを有する有機EL表示装置用カラーフィルタであって、緑色の上記着色層が、β型銅フタロシアニン、β型亜鉛フタロシアニン、塩素化亜鉛フタロシアニン、または無金属フタロシアニンのいずれかのシアン色色材と、C.I.ピグメントイエロー139の黄色色材とを含有することを特徴とするものである。
【0080】
本実施態様によれば、緑色着色層が所定のシアン色色材および黄色色材を含有するので、本実施態様の有機EL表示装置用カラーフィルタを有機EL表示装置に用いた場合には、高色純度および高輝度の緑色光を得ることができる。これにより、有機EL表示装置の消費電力の低減が可能となる。
【0081】
緑色着色層は、上記「A.緑色着色組成物」の項に記載した第2実施態様の緑色着色組成物を用いて形成されたものであることが好ましい。
なお、シアン色色材および黄色色材については、上記「A.緑色着色組成物」の第1実施態様の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
また、有機EL表示装置用カラーフィルタのその他の点については、上記第3実施態様と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0082】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0083】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
[実施例1]
(カラーフィルタ基板の形成)
基板として、大きさが100mm×100mm、厚みが0.7mmのガラス基板(コーニング社製1737ガラス)を準備した。この基板を定法にしたがって洗浄した後、ネガ型感光性レジスト(東京応化工業(株)製 CFPR DN-83)を塗布し、所定のマスクを介して露光、現像して焼成して、ブラックマトリックスを形成した。
次に、下記組成の赤色着色層用のネガ型感光性樹脂組成物、緑色着色層用のネガ型感光性樹脂組成物、青色着色層用のネガ型感光性樹脂組成物を調製した。
【0084】
<赤色着色層用のネガ型感光性樹脂組成物>
・赤顔料(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 クロモフタルレッドA2B)
4.8重量部
・黄顔料(BASF社製 パリオトール イエローD1819) 1.2重量部
・分散剤(ビックケミー社製ディスパービック161) 3.0重量部
・モノマー(サートマー社製 SR399) 4.0重量部
・ポリマーI 5.0重量部
・開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 イルガキュア907)
1.4重量部
・開始剤(2,2´−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4´,5´−テトラフェニル−1,2´−ビイミダゾール) 0.6重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート) 80.0重量部
【0085】
<緑色着色層用のネガ型感光性樹脂組成物>
・シアン色顔料(BASF社製 ヘリオゲン ブルーL7080(ピグメントブルー15:3、β型銅フタロシアニン顔料)) 4.2重量部
・黄顔料(BASF社製 パリオトール イエロー1820(ピグメントイエロー139)) 1.8重量部
・分散剤(ビックケミー社製ディスパービック161) 3.0重量部
・モノマー(サートマー社製 SR399) 4.0重量部
・ポリマーI 5.0重量部
・開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 イルガキュア907)
1.4重量部
・開始剤(2,2´−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4´,5´−テトラフェニル−1,2´−ビイミダゾール) 0.6重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート) 80.0重量部
【0086】
<青色着色層用のネガ型感光性樹脂組成物>
・青顔料(BASF社製 ヘリオゲン ブルーL6700F) 6.0重量部
・顔料誘導体(アビシア社製 ソルスパース5000) 0.6重量部
・分散剤(ビックケミー社製ディスパービック161) 2.4重量部
・モノマー(サートマー社製 SR399) 4.0重量部
・ポリマーI 5.0重量部
・開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 イルガキュア907)
1.4重量部
・開始剤(2,2´−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4´,5´−テトラフェニル−1,2´−ビイミダゾール) 0.6重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート) 80.0重量部
【0087】
なお、上記のポリマーIは、ベンジルメタクリレート:スチレン:アクリル酸:2−ヒドロキシエチルメタクリレート=15.6:37.0:30.5:16.9(モル比)の共重合体100モル%に対して、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを16.9モル%付加したものであり、重量平均分子量は42500である。
【0088】
上記の緑色着色層用のネガ型感光性樹脂組成物において、シアン色顔料(BASF社製 ヘリオゲン ブルーL7080(ピグメントブルー15:3、β型銅フタロシアニン顔料))は、図3に示すように、ピーク波長が480nm〜500nmの範囲内にあり、ピーク波長の透過率を90%とした際の、波長530nmの透過率が60%以上、波長575nmの透過率が20%以下となる分光特性を有するものである。
また、黄顔料(BASF社製 パリオトール イエロー1820(ピグメントイエロー139))は、波長560nm〜700nmの平均透過率を98%とした際の、波長530nmの透過率が50%以上、波長495nmの透過率が5%以下となる分光特性を有するものである。
【0089】
次いで、ガラス基板上にブラックマトリックスを覆うように赤色着色層用のネガ型感光性樹脂組成物をスピンコート法により塗布し、赤色着色層用のフォトマスクを介して、露光、現像して、焼成して赤色着色層を形成した。
【0090】
その後、緑色着色層用のネガ型感光性樹脂組成物、青色着色層用のネガ型感光性樹脂組成物を用いて、同様の操作により、緑色着色層、青色着色層を形成した。これにより、赤色着色層、緑色着色層、青色着色層が配列された着色層を形成した。
【0091】
(TFT基板の作製)
基板として、大きさが100mm×100mm、厚みが0.7mmのガラス基板(コーニング社製1737ガラス)を準備した。この基板を定法にしたがってTFT基板を作製した。
【0092】
(透明電極層の形成)
TFT基板上に、DCスパッタリング法により膜厚0.4μmのクロム膜を形成し、さらに連続してスパッタリング法により膜厚150nmのITO膜を形成した。次に、このITO膜上の全面に感光性レジストを塗布し、マスク露光、現像、ITO膜のエッチングを行って、透明電極層を形成した。その後、クロム膜をパターニングするために、ITO膜およびクロム膜の上に感光性レジストを塗布し、マスク露光、現像、クロム膜のエッチングを行って、補助電極を形成した。
【0093】
(絶縁層の形成)
ポリイミド系樹脂(東レ社製、DL1602)を用いて絶縁層形成用塗工液を調製した。この絶縁層形成用塗工液をスピンコート法により透明電極層上に塗布した後、プリベーク(100℃、5分間)を行って、厚み1μmの樹脂膜を形成した。次に、マスク露光、現像、ポストベーク(200℃、30分間)を行って、絶縁層を形成した。
【0094】
(有機EL層の形成)
次いで、表示領域よりも広い所定の開口部を備えたメタルマスクを介して、真空蒸着法により正孔注入層、各色発光層、電子注入層からなる有機EL層を形成した。
【0095】
(対向電極層の形成)
次に、表示領域よりも広い所定の開口部を備えたメタルマスクを介して、真空蒸着法によりマグネシウムと銀とを同時に蒸着(マグネシウムの蒸着速度=1.3nm/秒〜1.4nm/秒、銀の蒸着速度=0.1nm/秒)して成膜した。これにより、隔壁がマスクとなって、マグネシウム/銀化合物からなる厚み200nmの対向電極層を有機EL層上に形成した。
次に、窒素が充填されたグローボックスにてカラーフィルタ基板により封止を行い、有機EL表示装置を得た。
【0096】
[実施例2]
下記の緑色着色層用のネガ型感光性樹脂組成物を使用した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0097】
<緑色着色層用のネガ型感光性樹脂組成物>
・シアン色顔料(BASF社製 ヘリオゲン ブルーL7460(ピグメントブルー16、無金属フタロシアニン顔料)) 4.0重量部
・黄顔料(BASF社製 パリオトール イエロー1820(ピグメントイエロー139)) 2.0重量部
・分散剤(ビックケミー社製ディスパービック161) 3.0重量部
・モノマー(サートマー社製 SR399) 4.0重量部
・ポリマーI 5.0重量部
・開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 イルガキュア907)
1.4重量部
・開始剤(2,2´−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4´,5´−テトラフェニル−1,2´−ビイミダゾール) 0.6重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート) 80.0重量部
【0098】
上記の緑色着色層用のネガ型感光性樹脂組成物において、シアン色顔料(BASF社製 ヘリオゲン ブルーL7460(ピグメントブルー16、無金属フタロシアニン顔料))は、図3に示すように、ピーク波長が480nm〜500nmの範囲内にあり、ピーク波長の透過率を90%とした際の、波長530nmの透過率が60%以上、波長575nmの透過率が20%以下となる分光特性を有するものである。
なお、黄顔料(BASF社製 パリオトール イエロー1820(ピグメントイエロー139))については、上述のとおりである。
【0099】
[比較例1]
下記の緑色着色層用のネガ型感光性樹脂組成物を使用した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0100】
<緑色着色層用のネガ型感光性樹脂組成物>
・緑顔料(BASF社製 ヘリオゲン グリーンL9361(ピグメントグリーン36、ハロゲン化銅フタロシアニン顔料)) 5.0重量部
・黄顔料(BASF社製 パリオトール イエロー1820(ピグメントイエロー139)) 1.0重量部
・分散剤(ビックケミー社製ディスパービック161) 3.0重量部
・モノマー(サートマー社製 SR399) 4.0重量部
・ポリマーI 5.0重量部
・開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 イルガキュア907)
1.4重量部
・開始剤(2,2´−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4´,5´−テトラフェニル−1,2´−ビイミダゾール) 0.6重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート) 80.0重量部
【0101】
上記の緑色着色層用のネガ型感光性樹脂組成物において、緑顔料(BASF社製 ヘリオゲン グリーンL9361(ピグメントグリーン36、ハロゲン化銅フタロシアニン顔料))は、図3に示すように、ピーク波長が480nm〜500nmの範囲外にある分光特性を有するものである。
なお、黄顔料(BASF社製 パリオトール イエロー1820(ピグメントイエロー139))については、上述のとおりである。
【0102】
[比較例2]
下記の緑色着色層用のネガ型感光性樹脂組成物を使用した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0103】
<緑色着色層用のネガ型感光性樹脂組成物>
・青顔料(BASF社製 ヘリオゲン ブルーL6700F(ピグメントブルー15:6、ε型銅フタロシアニン顔料)) 4.3重量部
・黄顔料(BASF社製 パリオトール イエロー1820(ピグメントイエロー139))1.7重量部
・分散剤(ビックケミー社製ディスパービック161) 3.0重量部
・モノマー(サートマー社製 SR399) 4.0重量部
・ポリマーI 5.0重量部
・開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 イルガキュア907)
1.4重量部
・開始剤(2,2´−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4´,5´−テトラフェニル−1,2´−ビイミダゾール) 0.6重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート) 80.0重量部
【0104】
上記の緑色着色層用のネガ型感光性樹脂組成物において、青顔料(BASF社製 ヘリオゲン ブルーL6700F(ピグメントブルー15:6、ε型銅フタロシアニン顔料))は、図3に示すように、ピーク波長が480nm〜500nmの範囲外にある分光特性を有するものである。
なお、黄顔料(BASF社製 パリオトール イエロー1820(ピグメントイエロー139))については、上述のとおりである。
【0105】
[評価]
上述した実施例1,2および比較例1,2で作製したカラーフィルタ基板の緑色着色層の透過率スペクトルを顕微分光装置OSP−SP2000(OLYMPUS社製)にて測定した。また、有機EL表示装置の緑色発光層の領域の色度をトプコンエンジニアリング(株)製分光放射輝度計SR−3を用いて測定した。この際、比較例1と比較して輝度アップ率を算出した。結果を表1、図4に記す。
【0106】
【表1】

【0107】
表1、図4に示すように、所定の分光特性を示すシアン色色材及び黄色色材を用いた緑色発光層の領域ではいずれの実施例においても高輝度が得られた。
【0108】
1 … 有機EL表示装置用カラーフィルタ
2 … 透明基板
3 … 遮光部
4 … 着色層
4R … 赤色着色層
4G … 緑色着色層
4B … 青色着色層
10 … 有機EL表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともシアン色色材および黄色色材を含有し、ピーク波長が520nm〜540nmの範囲内にあり、ピーク波長の透過率を70%とした際の、波長510nmの透過率が40%以下、波長560nmの透過率が40%以下となる分光特性を有することを特徴とする緑色着色組成物。
【請求項2】
前記シアン色色材が、ピーク波長が480nm〜500nmの範囲内にあり、ピーク波長の透過率を90%とした際の、波長530nmの透過率が60%以上、波長575nmの透過率が20%以下となる分光特性を有し、
前記黄色色材が、波長560nm〜700nmの平均透過率を98%とした際の、波長530nmの透過率が50%以上、波長495nmの透過率が5%以下となる分光特性を有することを特徴とする請求項1に記載の緑色着色組成物。
【請求項3】
前記シアン色色材が、β型銅フタロシアニン、β型亜鉛フタロシアニン、塩素化亜鉛フタロシアニン、または無金属フタロシアニンであり、前記黄色色材が、C.I.ピグメントイエロー139であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の緑色着色組成物。
【請求項4】
β型銅フタロシアニン、β型亜鉛フタロシアニン、または無金属フタロシアニンのいずれかのシアン色色材と、C.I.ピグメントイエロー139の黄色色材とを含有することを特徴とする緑色着色組成物。
【請求項5】
少なくとも緑色を含む複数色の発光層が平面的に配列された有機エレクトロルミネッセンス表示装置に用いられ、透明基板と、前記透明基板上に形成され、少なくとも緑色を含む複数色の着色層とを有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタであって、
緑色の前記着色層は、少なくともシアン色色材および黄色色材を含有し、ピーク波長が520nm〜540nmの範囲内にあり、ピーク波長の透過率を70%とした際の、波長510nmの透過率が40%以下、波長560nmの透過率が40%以下となる分光特性を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタ。
【請求項6】
前記シアン色色材が、ピーク波長が480nm〜500nmの範囲内にあり、ピーク波長の透過率を90%とした際の、波長530nmの透過率が60%以上、波長575nmの透過率が20%以下となる分光特性を有し、
前記黄色色材が、波長560nm〜700nmの平均透過率を98%とした際の、波長530nmの透過率が50%以上、波長495nmの透過率が5%以下となる分光特性を有することを特徴とする請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタ。
【請求項7】
前記シアン色色材が、β型銅フタロシアニン、β型亜鉛フタロシアニン、塩素化亜鉛フタロシアニン、または無金属フタロシアニンであり、前記黄色色材が、C.I.ピグメントイエロー139であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタ。
【請求項8】
少なくとも緑色を含む複数色の発光層が平面的に配列された有機エレクトロルミネッセンス表示装置に用いられ、透明基板と、前記透明基板上に形成され、少なくとも緑色を含む複数色の着色層とを有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタであって、
緑色の前記着色層が、β型銅フタロシアニン、β型亜鉛フタロシアニン、塩素化亜鉛フタロシアニン、または無金属フタロシアニンのいずれかのシアン色色材と、C.I.ピグメントイエロー139の黄色色材とを含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタ。
【請求項9】
緑色の前記発光層が、ピーク波長が525nm〜535nmの範囲内にあり、ピーク波長の発光強度を100%とした際の、波長500nmの発光強度が50%以下、波長560nmの発光強度が50%以下となる発光特性を有することを特徴とする請求項5から請求項8までのいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−123302(P2012−123302A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275725(P2010−275725)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】