説明

線形運動デバイスの制御装置、線形運動デバイスの制御方法

【課題】 線形運動デバイスが端点間の移動の際に発生する衝突音を抑制する。
【解決手段】磁石10が発生する磁場から出力信号SDを出力する磁場センサ13、線形運動デバイス12が目標位置にある場合に出力されるデバイス位置指令信号SEを出力するデバイス位置指令信号生成回路22と出力信号SDとデバイス位置指令信号SEとの偏差を示す操作量信号SFを出力する差動増幅器14、線形運動デバイス12に、XBOTに向かう力とXTOPに向かう力とを交互に加えながら、XBOT、XTOP間を移動させるドライバ制御信号SGを出力する端点移動制御回路19、ドライバ制御信号SG、操作量信号SFのいずれか一方を選択するスイッチ20、ドライバ制御信号SGまたは操作量信号SFに応じて線形運動デバイス12を駆動する出力ドライバ17、18によって線形運動デバイスを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線形運動デバイスの制御装置及び、線形運動デバイスの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
入力信号と、この入力信号に応じた変位とが一次関数で表されるデバイスは、線形運動デバイスとも呼ばれている。線形運動デバイスには、例えば、カメラのオートフォーカスレンズ等がある。
図6は、線形運動デバイス112を制御する従来の制御装置を示した図である。図6に示した制御装置は、磁場センサ113と、差動増幅器114と、非反転出力バッファ115と、反転出力バッファ116と、第1の出力ドライバ117と、第2の出力ドライバ118とを備えている。図中に符号112を付して示したのは、制御装置によってフィードバック制御される線形運動デバイス112である。線形運動デバイス112は、コイル111と磁石110とを備えている。
【0003】
磁場センサ113は、検出した磁場に基づいて信号を生成し、出力信号SAとして出力する。磁場センサ出力信号SAとデバイス位置指令信号SBは、差動増幅器114の正転入力端子と反転入力端子とにそれぞれ入力される。磁場センサ出力信号SAとデバイス位置指令信号SBとが入力された差動増幅器114からは、出力ドライバ117、118の操作量(偏差と増幅度の積)を表す操作量信号SCが出力される。
【0004】
操作量信号SCの大きさによって線形運動デバイス112のコイル111を流れる電流方向及び電流量が変化する。コイル111を流れる電流により、磁石110を含む線形運動デバイス112の位置が変化する(移動する)。このとき、磁場センサ113の出力信号SAは、磁石110の移動に伴って変化する。制御装置は、出力信号SAの変化によって線形運動デバイス112の位置を検出し、この位置が外部から入力されるデバイス位置指令信号SBによって指示される位置に一致するようにフィードバック制御を行っている。
【0005】
ここで、図6に示した線形運動デバイス112では、磁石110の着磁のばらつきが生じ得る。また、制御装置では、磁場センサ113の搭載位置のずれにばらつきが生じ得る。このようなばらつきにより、線形運動デバイス112の位置と、磁場センサ113によって検出される磁場が設計時に想定された関係と相違する。
図7は、図6に示した磁場センサ113によって検出される磁場(以下、検出磁場とも記す)と、線形運動デバイス112の位置との関係を示した図である。図7では、図中左側の縦軸には磁場センサ113によって検出された磁場が示され、図中右側の縦軸には磁場センサ113の出力信号SAの値が示されている。また、図7の横軸は、線形運動デバイス112の位置である。
【0006】
図7中の実線aは、検出磁場と線形運動デバイス112の位置とのずれがない(設計値のとおり)場合の特性を比較のため示している。一点鎖線bは、検出磁場と線形運動デバイス112の位置とのずれがある場合の特性を示している。
図7に示したように、磁石110に着磁のばらつき、または磁場センサ113の位置にずれがある場合、検出磁場が線形運動デバイス112の正しい位置を示さない。このため、制御装置が、線形運動デバイス112を適正に位置制御することができなくなる場合がある。
【0007】
つまり、実線aで表された設計値通りの場合だと線形運動デバイス112が端点XBOTから他方の端点XTOPまで移動する場合、磁場センサ出力SAはVMLaからVMHaまで変化する(図中にこの範囲をSA(a)として示す)。このとき、磁場センサ出力SAと同じ電圧範囲であるVMLaからVMHaまでの位置指令信号SBが制御装置に入力される。そして、中間の電位VMM(=(VMHa−VMLa)/2+VMLa)の位置指令信号SBが入力されると、線形運動デバイス112は中間の位置XMIDを得る。
【0008】
一方、磁石110に着磁のばらつき、または磁場センサ113の位置にずれがある場合、磁場センサ出力SAは、実線aとは異なる傾きで、例えばVMLbからVMHbまで変化する(図7中に実線aとは異なる傾きを持った一点鎖線bを示し、この変化の範囲をSA(b)として示す)。このとき、電位VMM(=(VMHa−VMLa)/2+VMLa)の位置指令信号SBが制御装置に入力されると、線形運動デバイス112は位置XPOSに位置することになり、制御装置は線形運動デバイス112を正しく位置制御できなくなる。
【0009】
上述した、問題を解決するためには、磁場センサ出力SAとデバイス位置の同期化が必要不可欠である。しかし、同期化を行うためには、デバイス位置を端点XBOTから他方の端点XTOPまで移動させる手段が必要である。さらに、同期化中の線形運動デバイス112の移動では位置制御が実施できないためオープンループによりコイル111に強制的に電流を流すことで実施する必要がある。
【0010】
ただし、位置制御を行わず線形運動デバイス112を端点XBOTまたはXTOPに移動させた場合、端点衝突時に衝突音が発生する。この衝突音を抑制する従来技術としては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。特許文献1には、コイル111に流す電流を段階的に増減させる方法が記載されている。
図8(a)、(b)は、従来の衝突音を抑制する方法を実施した場合のコイル電流と線形運動デバイス位置の状態を説明するための図である。図8(a)の縦軸は、コイル111に流れる電流を示し、図8(b)の縦軸は、線形運動デバイスの位置(以下、デバイス位置とも記す)を示している。図8(a)、(b)の横軸は、図8(a)、(b)に共通の時間軸である。
【0011】
特許文献1に記載された方法によれば、図8(a)、(b)に示したように、コイル電流を段階的に増減させることで端点の衝突が起こる時間T7及びT8の直前の移動距離を短くできる。このため、衝突時の速度が下げられて、衝突音を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−64937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図9は、特許文献1に記載の発明が適用できる線形運動デバイスを説明するための図である。図9の縦軸はデバイス位置を示し、横軸はコイル111に流れるコイル電流を示している。特許文献1に記載された従来技術は、図9に示すように、コイル111に流れる電流により発生する磁場と、磁石110との磁場により得られる移動トルクと、線形運動デバイス112を端点XBOTに復元させる、機械的なバネ等による復元トルクと、が釣り合う位置に線形運動デバイス112を移動させる構造のものに適用される。
【0014】
しかしながら、線形運動デバイスには、復元トルクが無い、または小さく、図9に示すようなコイル電流と線形運動デバイス位置の関係が成り立たないものがあり、特許文献1記載の従来技術は、このような線形運動デバイスには適用することができない。なお、携帯電話等のカメラモジュールでは、消費電力を下げるため、復元トルクを弱めた構造の線形運動デバイスが用いられる場合が多い。
【0015】
図10(a)、(b)は、復元トルクが無い、または小さい線形運動デバイスの挙動を説明するための図である。図10(a)の縦軸は、コイル111に流れる電流を示し、図10(b)の縦軸は、線形運動デバイスの位置(以下、デバイス位置とも記す)を示している。図10(a)、(b)の横軸は、図10(a)、(b)に共通の時間軸である。
図10に示すように、復元トルクが無い、または小さい場合には、図10(b)の実線に示すように、線形運動デバイスは、少ないコイル電流で端点XBOTまたはXTOPまで移動する。このため、端点の衝突が起こる時間T9及びT10の直前の移動量が大きくなり、速度も速くなるため衝突音は大きくなる。なお、コイル電流を0からi(max)まで流した後、0から−i(max)まで流す理由は、復元トルクが無いまたは小さい場合、コイル電流が流れていないとき線形運動デバイスには端点XBOTまで移動するための移動トルクが存在せず、端点XBOTまで移動するには端点XTOPへ移動した時とは逆方向のコイル電流を流し、端点XTOPへ移動した時とは逆の移動トルクを発生させる必要があるからである。
【0016】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、端点に復元させるトルクが無い、または小さい線形運動デバイスを、磁場センサ出力とデバイス位置指令信号の同期化のために必要な端点と端点との間の移動の際に発する衝突音を抑制できるように制御する、線形運動デバイスの制御装置、線形運動デバイスの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
以上の課題を解決するため、本発明の一態様の線形運動デバイスの制御装置は、磁石(例えば図1に示した磁石10)を備える線形運動デバイスの制御装置であって、前記磁石が発生する磁場を検出し、検出された磁場の値に対応する検出位置信号(例えば図1に示した出力信号SD)を出力する磁場センサ(例えば図1に示した磁場センサ13)と、前記線形運動デバイスを移動すべき目標位置を指示する目標指示信号(例えば図1に示した目標位置信号SH)に基づいて、位置指令信号(例えば図1に示したデバイス位置指令信号SE)を出力するデバイス位置指令回路(例えば図1に示したデバイス位置指令信号生成回路22)と、前記検出位置信号と、前記位置指令信号とを入力し、前記検出位置信号と前記位置指令信号との偏差を示す操作量信号(例えば図1に示した操作量信号SF)を出力する差動増幅器(例えば図1に示した差動増幅器14)と、前記線形運動デバイスに対し、予め定められている移動範囲の一方の端点(例えばXBOT)に向かう力と、他方の端点(例えばXTOP)に向かう力とを交互に加えながら、前記一方の端点から前記他方の端点まで前記線形運動デバイスを移動させる端点移動信号(例えば図1に示したドライバ制御信号SG)を出力する端点移動制御回路(例えば図1に示した端点移動制御回路19)と、前記端点移動信号、前記操作量信号のいずれか一方を選択する選択回路(例えば図1に示したスイッチ20)と、前記選択回路によって選択された、前記端点移動信号または前記操作量信号に応じて前記線形運動デバイスを駆動する出力ドライバ(例えば図1に示した出力ドライバ17、18)と、を含み、前記位置指令信号と前記線形運動デバイスの位置とを同期化する場合、前記選択回路は前記端点移動信号を選択し、前記出力ドライバは前記端点移動信号に応じて前記線形運動デバイスを前記端点に移動させることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の一態様の線形運動デバイスの制御装置は、前記デバイス位置指令回路が、前記出力ドライバが前記端点移動信号に応じて前記線形運動デバイスを前記端点に移動したときに出力された前記検出位置信号に基づいて、前記目標指示信号から前記位置指令信号を生成することが望ましい。
本発明の一態様の線形運動デバイスの制御装置は、前記線形運動デバイスが、コイルを備え、該コイルにコイル電流が流れることによって発生する力によって移動し、前記端点移動制御回路は、前記線形運動デバイスの移動方向のトルクを生む電流方向と、前記移動方向のトルクとは逆のトルクを生む電流方向との割合を変更させながら、前記端点に到達するときには、前記移動方向のトルクを生む電流方向のみへと変化するようなコイル電流が前記コイルに流れるように前記端点移動信号を出力することが望ましい。
【0019】
本発明の一態様の線形運動デバイスの制御装置は、前記端点移動信号が、PWM信号であることが望ましい。
本発明の一態様の線形運動デバイスの制御装置は、前記PWM信号の周期が、前記コイルの抵抗成分及びインダクタ成分で決定される電気的時定数より長いことが望ましい。
本発明の一態様の線形運動デバイスの制御装置は、前記PWM信号の周期が、前記線形運動デバイスの前記コイルが発生する磁場及び前記磁石で決定される機械的時定数よりも短いことが望ましい。
【0020】
本発明の一態様の線形運動デバイスの制御方法は、線形運動デバイスが備える磁石が発生する磁場を検出する磁場センサと、デバイス位置指令回路と、差動増幅器と、端点移動制御回路と、選択回路と、出力ドライバと、を含む線形運動デバイスの制御装置において行われる線形運動デバイスの制御方法であって、前記磁場センサが、検出された磁場の値に対応する検出位置信号を出力するステップと、前記デバイス位置指令回路が、前記線形運動デバイスを移動すべき目標位置を指示する目標指示信号に基づいて、位置指令信号を出力するステップと、前記差動増幅器が、前記検出位置信号と、前記位置指令信号とを入力し、前記検出位置信号と前記位置指令信号との偏差を示す操作量信号を出力するステップと、前記端点移動制御回路が、予め定められている移動範囲の一方の端点に向かう力と、他方の端点に向かう力とを交互に前記線形運動デバイスに加えながら、前記一方の端点から前記他方の端点まで前記線形運動デバイスを移動させる端点移動信号を出力するステップと、前記位置指令信号と前記線形運動デバイスの位置とを同期化させる処理を行う場合、前記選択回路が、前記端点移動信号、前記操作量信号のうちの前記端点移動信号を選択するステップと、前記出力ドライバが、前記端点移動信号に応じて前記線形運動デバイスを前記端点に移動させるステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、線形運動デバイスの位置と磁場センサの出力信号とを同期化させるにあたり、操作量信号とは別の端点移動信号を出力することができる。また、端点移動信号は、線形運動デバイスが予め定められている移動範囲の一方の端点に向かう力と、他方の端点に向かう力とを交互に加えながら、一方の端点から他方の端点まで移動させるので、線形運動デバイスが端点に衝突する際の速度を抑制し、線形運動デバイスと端点との衝突音を小さくすることができる。
【0022】
このような本発明によれば、端点に復元させるトルクが無い、または小さい線形運動デバイスを、磁場センサ出力とデバイス位置指令信号の同期化のために必要な端点と端点との間の移動の際に発する衝突音を抑制できるように制御する、線形運動デバイスの制御装置、線形運動デバイスの制御方法を提供することができる。
そして、本発明は、携帯電話のカメラモジュール等の低消費電力を目的とした端点XBOTに復元させるトルクが無いまたは小さい線形運動デバイスの場合においても、磁場センサ出力とデバイス位置指令信号の同期化のために必要な端点XBOT及びXTOPへの移動の際に発生する衝突音を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態の線形運動デバイスの制御装置の構成を説明するための図である。
【図2】図1に示した位置指令信号生成回路を説明するための回路図である。
【図3】図1に示した端点移動制御回路を説明するための回路図である。
【図4】本発明の一実施形態の線形運動デバイスの動作概要を説明するためのタイミングチャートである。
【図5】本発明の一実施形態の変形例を説明するための図である。
【図6】線形運動デバイスを制御する従来の制御装置を示した図である。
【図7】図6に示した磁場センサによって検出される検出磁場と、線形運動デバイスの位置との関係を示した図である。
【図8】従来の衝突音を抑制する方法を実施した場合のコイル電流と線形運動デバイス位置の状態を説明するための図である。
【図9】特許文献1に記載の発明が適用できる線形運動デバイスを説明するための図である。
【図10】復元トルクが無い、または小さい線形運動デバイスの挙動を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態の線形運動デバイス制御装置を、図面を参照して説明する。
(実施形態1)
(1) 回路構成
図1は、本実施形態の線形運動デバイスの制御装置(以下、単に制御装置とも記す)の構成を説明するための図である。
【0025】
本実施形態の制御回路は、磁場を検出し、検出磁場に応じた出力信号SDを出力する磁場センサ13と、出力信号SDを反転入力端子に入力し、デバイス位置指令信号SEを非反転入力端子に入力し、この差分を操作量信号SF(偏差と増幅度の積)として出力する差動増幅器14と、操作量信号SFを反転させずに非反転操作量信号として出力する非反転出力バッファ15と、操作量信号SFを反転させ、反転操作量信号として出力する反転出力バッファ16と、非反転操作量信号を出力する出力ドライバ17と、反転操作量信号を出力する出力ドライバ18を含んでいる。また、本実施形態の制御装置は、同期化実行信号SMを入力し、線形運動デバイスの端点移動時のドライバ制御信号SGを生成する端点移動制御回路19を含んでいる。なお、図1中に示した破線は、本実施形態の制御装置が、線形運動デバイスの同期化処理を実行する場合にのみ流れる信号を示している。
【0026】
また、本実施形態の制御装置は、外部から入力される目標位置信号SH(例えば、0〜255の整数)に対して出力信号SDと同期がとれたデバイス位置指令信号SEを生成するデバイス位置指令信号生成回路22を含んでいる。さらに、図1中に符号12を付して示したのは、上記した制御装置によってフィードバック制御される線形運動デバイス12である。線形運動デバイス12は、コイル11と磁石10とを備えている。
【0027】
目標位置信号SHは、線形運動デバイス12を移動すべき目標位置を示す信号である。同期化実行信号SMは、外部から制御装置に線形運動デバイス12の同期化を指示するための信号であり、本実施形態では、同期化実行信号SMがハイレベルになったことによって同期化開始の指示が制御装置に入力される。ドライバ制御信号SGとは、磁場センサ13の出力信号SDとデバイス位置指令信号SEの同期化を実施するために必要な信号である。スイッチ20は、線形運動デバイス12の通常の操作時と同期化時とで、操作量信号SFまたはドライバ制御信号SGのいずれか一方が出力ドライバ17、または出力ドライバ18に入力されるように切り替える。同期化実行信号SMがスイッチ20の図示しない制御回路に入力されおり、同期化実行信号SMがローレベルの場合は、操作量信号SFを選択し、ハイレベルの場合は、ドライバ制御信号SGを選択する。
【0028】
図1に示した構成では、操作量信号SFの大きさによって線形運動デバイス12のコイル11を流れる電流方向及び電流量が変化する。コイル11を流れる電流により、磁石10を含む線形運動デバイス12の位置が変化する(移動する)。このとき、磁場センサ13の出力信号SDは、磁石10の移動に伴って変化する。本実施形態の制御装置は、出力信号SDの変化によって線形運動デバイス12の位置を検出し、この位置が、デバイス位置指令信号生成部22から入力されるデバイス位置指令信号SEによって指示される位置に一致するようにフィードバック制御を行っている。
また、デバイス位置指令信号生成回路22は、外部から入力される、目標位置信号SH(例えば、0〜255の整数)に対して磁場センサ出力SDと同期がとれたデバイス位置指令信号SEを生成する回路である。
【0029】
図2は、図1に示した位置指令信号生成回路22を説明するための回路図である。位置指令信号生成回路22は、記憶装置40、42と、例えば、正側の基準電位を正電源電圧(VDD)、負側の基準電位をグランド電位(GND)とするD/A変換器48、49、と正側の基準電位をD/A変換器48の出力電位、負側の基準をD/A変換器49の出力電位とするD/A変換器50とを含んでいる。同期化が行われる場合、線形運動デバイス12を端点XBOTに固定した状態で出力された磁場センサ13の出力信号SDの値(図7に示したVMLaまたはVMLb)が、記憶装置40に記憶される。
【0030】
続いて、線形運動デバイス12が他方の端点XTOPに固定した状態で、磁場センサ13から出力された出力信号SDの値(図7に示したVMHaまたはVMHb)が、記憶装置42に記憶される。記憶装置40に記憶された値は、D/A変換器48に出力され、アナログ値に変換される。また、記憶装置42に記憶された値は、D/A変換器49に出力され、アナログ値に変換される。D/A変換器48、49から出力されたアナログ値は、D/A変換器50に入力される。D/A変換器50は、D/A変換器49から出力された値のVMLaまたはVMLbを下限値、D/A変換器48から出力された値をVMHaまたはVMHbを上限値とし、目標位置信号SHの値に基づいてその間の値をリニアに変化するアナログ信号を出力する。
【0031】
同期化が終了すると、デバイス位置指令信号SEの出力範囲がVMHaまたはVMHbからVMLaまたはVMLbとなり、目標位置信号SHの値が「0」から「255」の値と対応する。このような処理により、本実施形態では、同期化の結果が、デバイス位置指令信号生成回路22によって生成されるデバイス位置指令信号SEに反映される。
図3は、図1に示した端点移動制御回路19を説明するための回路図である。端点移動制御回路19は、同期化実行を指示する同期化実行信号SMに基づいてカウントを行うカウンタ30、カウンタ30がカウントしたカウント値SJをデコードするデコーダ31、カウンタ32がカウントを行ったカウント値とデコーダ31にデコードされたカウント値SJ(デコード値SK)とを比較する比較器33と、を含んでいる。
【0032】
(2) 動作
図4は、本実施形態の線形運動デバイスの動作概要を説明するためのタイミングチャートである。図4の縦軸は信号の出力タイミングを示し、横軸は時間を示している。図4には、図1に示した同期化実行信号SM、図3に示したカウント値SJ、デコード値SK、カウント値SL、ドライバ制御信号SGの出力タイミングと、そのとき、出力ドライバ17、18によって駆動された図1に示したコイル11に流れるコイル電流(図4中にはCoil Currentと記す)と、線形運動デバイス12の位置(図4中にはPositionと記す)が示されている。カウント値SLは、0〜9の値をとる。
【0033】
図3に示した比較器33は、デコード値SKとカウント値SLとを比較する。そして、カウント値SLがデコード値SK未満の場合には、ハイレベルのドライバ制御信号SGを出力し、カウント値SLがデコード値SK以上の場合には、ローレベルのドライバ制御信号SGを出力する。同期化実行を指示する同期化実行信号SMがローレベルからハイレベルへと変化すると、カウンタ30及びカウンタ32がカウントを開始する。カウンタ32のカウント周期は、カウンタ30のカウント周期の、例えば1/10以下となっている。
【0034】
上記したように、ドライバ制御信号SGが、カウント値SLがデコード値SK未満の場合にはハイレベル、カウント値SLがデコード値SK以上の場合にはローレベルとなる。このことから、図4に示したように、ドライバ制御信号SGはデコード値SKが大きくなるにしたがってハイレベルの割合が大きくなっている。
また、カウンタ30は「0」からカウントを開始し、例えば「11」までカウントし終えたらカウントを終了する。一方、カウンタ32は、「0」からカウントを開始し、例えば「9」までカウントをしたら再度「0」からカウントする。デコーダ31は、カウンタ30のカウント値SJに応じて、図4に示したような値を出力する。具体的には、デコーダ31は、図4に示したように、カウント値SJが「0」のときデコード値SK「5」を出力し、カウント値SJが「1」のときにデコード値SK「4」を出力する。また、カウント値SJが「11」のとき、デコード値SK「10」を出力する。
【0035】
比較器33は、デコード値SKとカウント値SLとを比較する。そして、カウント値SLがデコード値SK未満の場合はハイレベルのドライバ制御信号SGを、カウント値SLがデコード値SK以上の場合には、ローレベルのドライバ制御信号SGを出力する。このため、ドライバ制御信号SGは、Duty50%からDuty0%まで減少した後、Duty50%からDuty100%まで増加するPWM(Pulse-Width-Modulation)波形となる。このPWM波形のDutyの変化はカウンタ30のカウント周期で変化し、PWM周波数はカウンタ32のカウント周期×カウント数の逆数となる。
【0036】
上述した端点移動制御回路19で生成されたPWM波形を用い、出力ドライバ17、18を介して線形運動デバイスを駆動すると、コイル11に流れる電流は、図に示すような波形となる。コイル電流は、端点移動制御回路19で生成されたPWM波形のDutyの変化にしたがって、線形運動デバイス11の移動方向にトルクを生じる成分と、移動方向とは逆のトルクを生む成分との割合を変化させる。そして、コイル11に流れる電流は、最終的に、線形運動デバイス12の移動方向のトルクを生じる成分だけになる。
【0037】
以上のことから、線形運動デバイス12は、端点方向(XTOP)の移動トルクとブレーキとなるトルクとを交互に受けながら移動する。このため、本実施形態の制御回路は、線形運動デバイス12が端点に衝突する際の速度を低下させ、衝突音を抑制することができる。
このとき、コイル11を流れる電流の基となるPWM波形の周期は、コイル11の抵抗成分及びインダクタ成分で決定される電気的時定数より長いことが好ましい。コイル電流が平坦化されないようにするためである。また、PWM波形の周期は、線形運動デバイス12のコイル11が発生する磁場や磁石10等の構成部品で決定される機械的時定数よりも短いことが望ましい。線形運動デバイス12を滑らかに移動させるためである。
【0038】
(3) 変形例
以上、本実施形態では、PWM波形のDutyが同一周期でDuty50%からDuty100%まで単調増加、Duty50%からDuty0%まで減少となるように制御する例を説明した。しかし、本実施形態は、このような構成に限定されるものではなく、例えば、次のように構成することも可能である。
【0039】
図5は、本実施形態の変形例を説明するための図である。図5は、コイル11のコイル電流、線形運動デバイス12の位置を縦軸に、横軸に時間を示している。図5に示した変形例では、Dutyは、例えば、時間T0からT1までは、Duty50%からDuty30%まで単調減少し、後に時間T1においてDuty0%に変化する。そして、Dutyは、時間T3からT4までは、Duty50%からDuty70%まで単調増加した後に時間T4において一気にDuty100%に変化する。さらに、Dutyは、時間T5においてDuty70%に変化した後、時間T5からT6までは、Duty70%からDuty50%まで単調減少してもいる。図5中破線で示しているのは、コイル電流のDutyの変化をわかりやすくするために、コイル電流の平均値を表したものである。
【0040】
このような変形例によれば、Dutyを単調増加、または単調減少させる区間を限定することにより、図4に示した制御に比べ、同一の制御時間内における線形運動デバイス12の位置をよりなだらかに変化させることができる。このため、変形例は、線形運動デバイス12の移動速度をさらに下げて衝突音を抑制できる。
また、本実施形態は、図5中に破線で示したように、Dutyを一定の割合で単調に変化させる必要はない。例えば、衝突音抑制にDutyの変化するタイミングが影響しない時間T2から時間T3の区間の動作周期を他の区間よりも早くすることもできる。動作周期は、制御対象の線形運動デバイスの特性に合わせて変更してもよい。本実施形態は、このように、衝突音抑制に影響しない区間を短くすることで、同期化動作の無駄時間を削減することができる。
【0041】
本実施形態のDutyは、端点移動制御回路19中のデコーダ値SKを変更することで容易に制御することが可能である。変化のタイミングは、カウンタ30のカウント周期を変更することにより、容易に変更可能であることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、端点に復元させるトルクが無い、または小さい線形運動デバイスに適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
10、110 磁石
11、111 コイル
12、112 線形運動デバイス
13、113 磁場センサ
14、114 差動増幅器
15、115 正転出力バッファ
16、116 反転出力バッファ
17、18、117、118 出力ドライバ
19 端点移動制御回路
20 制御信号切り替えスイッチ
30 カウンタ
31 デコーダ
32 カウンタ
33 比較器
40、42 記憶装置
48、49、50 D/A変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石を備える線形運動デバイスの制御装置であって、
前記磁石が発生する磁場を検出し、検出された磁場の値に対応する検出位置信号を出力する磁場センサと、
前記線形運動デバイスを移動すべき目標位置を指示する目標指示信号に基づいて、位置指令信号を出力するデバイス位置指令回路と、
前記検出位置信号と、前記位置指令信号とを入力し、前記検出位置信号と前記位置指令信号との偏差を示す操作量信号を出力する差動増幅器と、
前記線形運動デバイスに対し、予め定められている移動範囲の一方の端点に向かう力と、他方の端点に向かう力とを交互に加えながら、前記一方の端点から前記他方の端点まで前記線形運動デバイスを移動させる端点移動信号を出力する端点移動制御回路と、
前記端点移動信号、前記操作量信号のいずれか一方を選択する選択回路と、
前記選択回路によって選択された、前記端点移動信号または前記操作量信号に応じて前記線形運動デバイスを駆動する出力ドライバと、
を含み、
前記位置指令信号と前記線形運動デバイスの位置とを同期化させる処理を行う場合、前記選択回路は前記端点移動信号を選択し、前記出力ドライバは前記端点移動信号に応じて前記線形運動デバイスを前記端点に移動させることを特徴とする線形運動デバイスの制御装置。
【請求項2】
前記デバイス位置指令回路は、前記出力ドライバが前記端点移動信号に応じて前記線形運動デバイスを前記端点に移動したときに出力された前記検出位置信号に基づいて、前記目標指示信号から前記位置指令信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の線形運動デバイスの制御装置。
【請求項3】
前記線形運動デバイスは、コイルを備え、該コイルにコイル電流が流れることによって発生する力によって移動し、
前記端点移動制御回路は、前記線形運動デバイスの移動方向のトルクを生む電流方向と、前記移動方向のトルクとは逆のトルクを生む電流方向と、の割合を変更させながら、前記端点に到達するときには、前記移動方向のトルクを生む電流方向のみへと変化するようなコイル電流が前記コイルに流れるように前記端点移動信号を出力することを特徴とする請求項1または2に記載の線形運動デバイスの制御装置。
【請求項4】
前記端点移動信号は、PWM信号であることを特徴とする請求項3に記載の線形運動デバイスの制御装置。
【請求項5】
前記PWM信号の周期は、前記コイルの抵抗成分及びインダクタ成分で決定される電気的時定数より長いことを特徴とする請求項4に記載の線形運動デバイスの制御装置。
【請求項6】
前記PWM信号の周期は、前記線形運動デバイスの前記コイルが発生する磁場及び前記磁石で決定される機械的時定数よりも短いことを特徴とする請求項4に記載の線形運動デバイスの制御装置。
【請求項7】
線形運動デバイスが備える磁石が発生する磁場を検出する磁場センサと、デバイス位置指令回路と、差動増幅器と、端点移動制御回路と、選択回路と、出力ドライバと、を含む線形運動デバイスの制御装置において行われる線形運動デバイスの制御方法であって、
前記磁場センサが、検出された磁場の値に対応する検出位置信号を出力するステップと、
前記デバイス位置指令回路が、前記線形運動デバイスを移動すべき目標位置を指示する目標指示信号に基づいて、位置指令信号を出力するステップと、
前記差動増幅器が、前記検出位置信号と、前記位置指令信号とを入力し、前記検出位置信号と前記位置指令信号との偏差を示す操作量信号を出力するステップと、
前記端点移動制御回路が、予め定められている移動範囲の一方の端点に向かう力と、他方の端点に向かう力とを交互に前記線形運動デバイスに加えながら、前記一方の端点から前記他方の端点まで前記線形運動デバイスを移動させる端点移動信号を出力するステップと、
前記位置指令信号と前記線形運動デバイスの位置とを同期化させる処理を行う場合、前記選択回路が、前記端点移動信号、前記操作量信号のうちの前記端点移動信号を選択するステップと、
前記出力ドライバが、前記端点移動信号に応じて前記線形運動デバイスを前記端点に移動させるステップと、
を含むことを特徴とする線形運動デバイスの制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate