説明

線材の圧造機及び圧造方法

【課題】周囲の環境温度に拘わらず、最初に加工される線材であっても、その線材の先端に対する据込みを正確且つ確実に実施できる線材の圧造機及び圧造方法を提供する。
【解決手段】本発明の圧造方法を実施する圧造機は、線材(A)を把持するチャック装置(8)と、圧造パンチ(16)を含み、チャック装置(8)と協働して線材(A)の先端を据込む据込み装置(4)と、圧造機の稼働に先立ち、圧造パンチ(16)を予熱する誘導加熱コイル(50)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材の先端を据込んで拡径させる線材の圧造機及びその圧造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の線材の圧造機及び圧造方法は、例えば特許文献1に開示されている。この特許文献1の圧造機及び圧造方法は、線材の先端を所定の長さだけ突出させてチャックにより把持し、この状態で、圧造パンチにより線材の先端を叩いて据込み、先端の外径を一定に拡径させるようにしている。
【特許文献1】特公昭52-476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した特許文献1の圧造機及び圧造方法にあっては、圧造パンチによる線材の据込みが所定本数の線材に対して繰り返され、圧造機が定常の動作環境に達した後、線材の先端を規定の外径に拡径させることができるものの、定常の動作環境に達する前の段階にあっては、線材の先端を所望の外径まで拡径させることができず、線材の先端は規定の外径よりも小さい。
【0004】
それ故、線材に対する据込みが繰り返されるとき、初期の段階では据込み不良の発生を避けることができず、不良の加工品が製造されてしまう。これは圧造機の周囲温度、つまり、室温が低い冬季等にて顕著になる。
本発明は上述の事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは周囲温度に拘わらず、最初の線材に対する据込みから、線材の先端を規定の外径に安定して拡径させることができる線材の圧造機及び圧造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明の線材の圧造機は、線材の移送経路に配置され、線材の通過を許容し且つ線材の先端が移送経路の下流側に突出した状態で線材を把持可能なチャック装置と、移送経路にチャック装置よりも下流に位置して配置され、チャック装置により把持された線材の先端を圧造パンチにより据込んで拡径させる据込み装置とを具備し、本発明の場合、据込み装置は圧造パンチを予熱する予熱手段を備えている(請求項1)。
【0006】
好ましくは、予熱手段は、線材の据込みが所定の回数繰り返して実施された後に圧造パンチの温度が達する定常温度まで圧造パンチを予熱する(請求項2)。
請求項1,2の圧造機によれば、線材に対する据込みが開始されるに先立ち、即ち、圧造機の稼働に先立ち、据込み装置の圧造パンチは予熱手段により予熱され、前述した定常温度まで予め加熱される。
【0007】
具体的には、予熱手段は、移送経路に配置され、圧造パンチを囲繞可能な誘導加熱コイルを含むことができ(請求項3)、この誘導加熱コイルは、線材の先端を据込み加工温度に加熱するヒータとして兼用されるのが好ましい(請求項4)。この場合、誘導加熱コイルは、圧造パンチの予熱のみならず、線材の先端の加熱にも使用される。
また、本発明は、チャック装置から線材の先端を突出させてチャック装置に前記線材を把持し、この状態で、圧造パンチにより線材の先端を据込んで拡径させる線材の圧造方法をも提供し、本発明の圧造方法では、線材の据込みが繰り返して実施されるに先立ち、圧造パンチを予熱する(請求項5)。
【0008】
具体的には、前述の圧造機での場合と同様に、圧造パンチの予熱は、線材の据込みが所定の回数繰り返して実施された後に圧造パンチの温度が達する定常温度まで実施される(請求項6)。
【発明の効果】
【0009】
請求項1〜6の線材の圧造機及び圧造方法は、線材に対する据込みが繰り返して実施されるに先立ち、即ち、圧造機の稼働に先立ち、据込み装置の圧造パンチを予熱するようにしたから、周囲の環境温度に拘わらず、線材に対する初回の据込みから、その線材の先端を規定の外径まで確実に拡径させることができ、加工不良を効果的に防止することができる。
【0010】
圧造パンチの予熱がその定常温度に達するまでなされれば、据込み加工後の線材の先端を規定の外径に正確に一致させることができる。
更に、圧造パンチを予熱する誘導加熱コイルが線材の先端の加熱にも使用されれば、圧造機はその構成が簡素なものになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、一実施例の線材の圧造機を概略的に示す。
圧造機は線材Aの移送経路2を備え、この移送経路2は水平に延びている。ここで、線材AはPC(プレストレストコンクリート)鋼棒からなり、その外周面に複数状の螺旋溝(図示しない)を有する。
移送経路2の下流端には据込み装置4が配置され、そして、この据込み装置4の上流側には線材Aの移送装置が配置されている。なお、図1中、移送装置は一対のピンチローラ6のみで示されている。これらピンチローラ6は移送経路2を挟んで配置されているとともに互いに接離可能であり、線材Aが移送装置により移送経路2に沿って往復的に移送される際、その移送を案内する。即ち、線材Aは据込み装置4に対して進退可能となっている。
【0012】
更に、一対のピンチローラ6と据込み装置4との間にはチャック装置8が配置されており、このチャック装置8については後述する。
据込み装置4はシリンダブロック10を備え、このシリンダブロック10は移送経路2と同軸のシリンダボア12を有する。このシリンダボア12にはプランジャ14が摺動自在に嵌合され、プランジャ14はシリンダボア12からチャック装置8に向けて突出している。プランジャ14の突出端には圧造パンチ16が取り付けられ、この圧造パンチ16は移送経路2上に位置付けられている。
【0013】
一方、シリンダボア12には複動型の圧造シリンダ18が接続されており、この圧造シリンダ18はシリンダボア12内に進入するピストンロッド20を有する。
更に、シリンダブロック10にはシリンダボア12と平行なシリンダボア22が形成されており、このシリンダボア22内に複動型の寸出しシリンダ24のピストンロッド26が摺動自在に嵌合されている。ピストンロッド26はシリンダブロック10からチャック装置8に向けて突出し、プランジャ14及びピストンロッド26の突出端部は互いにアーム28を介して連結されている。
【0014】
より詳しくは、アーム28はプランジャ14に固定されているものの、ピストンロッド26に対しては図1に示す状態から右方のみに移動可能となっている。即ち、ピストンロッド26の突出端部はその先端側が小径部として形成され、この小径部との境界に段差面を有する。それ故、図示の状態にあるとき、アーム28はピストンロッド26の段差面に当接した状態にある。
【0015】
一方、ピストンロッド26の先端にはばね座30が設けられ、このばね座30とアーム28との間に圧縮コイルばね32が架け渡されている。この圧縮コイルばね32はピストンロッド26の段差面に向けてアーム28を押圧付勢している。
更に、アーム28にはラック34が取り付けられており、このラック34にはピニオン36を介してロータリエンコーダ38に接続されている。なお、ロータリエンコーダ38はシリンダブロック10側に固定されている。
【0016】
上述した圧造シリンダ18及び寸出しシリンダ24は図1に示す油圧回路40からの圧油の供給を受けて作動する。具体的には、油圧回路40は油圧源42を備え、この油圧源42はモータ駆動の油圧ポンプ43を含む。油圧源42と圧造シリンダ18との間には電磁方向切換弁44,46が配置され、これら電磁方向切換弁44,46はそれらの切換作動により圧造シリンダ18に対する圧油の給排を制御し、圧造シリンダ18のピストンロッド20を往復動させる。
【0017】
また、油圧源42と寸出しシリンダ24との間にも電磁方向切換弁48が配置され、この電磁方向切換弁48はその切換作動により寸出しシリンダ24に対する圧油の給排を制御し、寸出しシリンダ24のピストンロッド26を往復動させる。
更に、前述した圧造パンチ16とチャック装置8との間には誘導加熱コイル50が設けられており、この誘導加熱コイル50は移送経路2と同心にして配置され、図1から明らかなように移送経路2に沿って延びている。誘導加熱コイル50はリード線を介して給電源(図示しない)に電気的に接続され、この給電源から給電を受けることができる。
【0018】
図1に示す状態にあるとき、圧造パンチ16はその先端部が誘導加熱コイル50内に進入しており、この際、誘導加熱コイル50に給電されると、この誘電加熱コイル50は圧造パンチ16を誘導加熱し、これにより、圧造パンチ16の予熱がなされる。
次に、前述したチャック装置8について説明する。
図1の下部に示したチャック装置8から明らかなように、チャック装置8は一対のチャック円筒52,52を備えている。これらチャック円筒52,52は移送経路2を挟んで移送経路2の両側にそれぞれ配置され、移送経路2と平行な軸線を有する。チャック円筒52,52はこれらの外周面を部分的に覆う受け部材53にそれらの軸線回りに回転自在に支持され、また、チャック円筒52に対し、チャック円筒52はその受け部材53を介して移送経路2を横断する方向に接離自在となっている。即ち、この実施例の場合、チャック円筒52は水平方向に移動自在となっている。
【0019】
また、移送経路2でみて、一対のチャック円筒52,52の上流側の端面は端板55にてそれぞれ支持されており、この端板55は図1の上部に描いたチャック装置8に明瞭に示されている。
図1の下部に描かれているチャック装置8から明らかなように、チャック円筒52の側方にはチャックシリンダ54が配置されており、このチャックシリンダ54はチャック円筒52に対向するピストン56を含む。ピストン56はチャック円筒52に向けて露出した先端面を有し、この先端面は押圧部材(図示しない)を介してチャック円筒52と組みをなす受け部材53に当接されている。
【0020】
更に、チャックシリンダ54はプルロッド60を備えており、このプルロッド60はチャック円筒52の受け部材53にねじ込まれた内端58と、チャックシリンダ54の外筒を形成する端壁から外側に突出した外端とを有し、この外端と外筒との間に圧縮コイルばねからなるプルスプリング62が架け渡されている。このプルスプリング62はピストン56をチャック円筒52から離間する方向に付勢している。
【0021】
一方、チャックシリンダ54もまた前述した油圧回路40に接続され、油圧源42とチャックシリンダ54との間には電磁方向切換弁64及びブーストシリンダ66が油圧源42側から順次配置されている。電磁方向切換弁64はその切換作動によりブーストシリンダ66に対する圧油の給排を制御し、ブーストシリンダ66を作動させる。
休止位置から作動位置(図示の位置)への電磁方向切換弁64の切り換え作動を受けて、ブーストシリンダ66が作動したとき、ブーストシリンダ66はチャックシリンダ54に高圧の圧油を供給し、これにより、チャックシリンダ54のピストン56は押圧部材及び受け部材53を介し、チャック円筒52をその休止位置からチャック円筒52に向けて押圧する。それ故、受け部材53に連結されているプルロッド60はプルスプリング62の付勢力に抗し、このプルスプリング62を収縮させながら受け部材53とともにチャック円筒52L側に移動される。
【0022】
一方、電磁方向切換弁64が休止位置に戻されると、プルロッド60はプルスプリング62の付勢力を受けて引き戻され、これに伴い、受け部材53はチャック円筒52を伴って引き戻され、これにより、チャックシリンダ54のピストン56、そして、ブーストシリンダ66のピストンもまた休止位置に戻される。
チャック円筒52,52は同一の構造を有しているので、以下には、一方のチャック円筒52に着目し、その構造を説明する。
【0023】
チャック円筒52,52はそれらの外周面に複数のチャック溝を有し、これらチャック溝はそのチャック円筒52の周方向に等間隔を存して配置されている。なお、図1中には、チャック円筒52,52における1個ずつのチャック溝のみが示されている。
チャック円筒52の各チャック溝は断面円弧形状をなし、チャック円筒52の全長に亘り、その軸線に沿って延びているが、それらのサイズは互いに異なる。
【0024】
図1の下部に描いたチャック装置8から明らかなように、チャック円筒52,52のチャック溝は線材Aの径に応じて、同一のサイズ同士が移送経路2を挟んで互いに対向し、これらチャック溝間にて線材Aの挟持通路78が形成され、この挟持通路78は移送経路2上に配置されている。
図1の挟持通路78は開いた状態にあり、移送経路2に沿って線材Aが移送されてきたとき、線材Aは挟持通路78を通過することができる。この後、前述したチャックシリンダ54がそのピストン56を押し出すと、一対のチャック円筒52,52の軸線間隔が狭められることから、挟持通路78が閉じ、この挟持通路78を形成する一対のチャック溝68間にて線材Aは強固に締付けられる。
【0025】
一方、一対のチャック円筒52,52は回転装置80に接続されており、この回転装置80について以下に説明する。
回転装置80は、駆動源としての排出シリンダ82を備えている。この排出シリンダ82は一対のチャック円筒52,52の下方に配置され、これらチャック円筒52,52に向けて上方に延びるピストンロッド84を有する。ピストンロッド84の上端にはロッドエンド86が取り付けられ、このロッドエンド86は左右一対ずつリンクアーム88,90を介して対応する側のチャック円筒52に接続されている。
【0026】
より詳しくは、上側のリンクアーム90は軸92に取り付けられており、この軸92は対応する側のチャック円筒52に複数の連結ボルト(図示しない)を介して連結されている。
図示の状態から、排出シリンダ82のピストンロッド84が収縮されると、ロッドエンド86は下降し、この下降は左右一対ずつのリンクアーム88,90を介して対応するチャック円筒52の回転に変換される。この場合、一対のチャック円筒52,52は挟持通路78を形成する一対のチャック溝が上方に向けて移動するべく互いに逆向きに回転する。それ故、これらチャック溝は互いに離れ、これにより、挟持通路78が開かれることになる。
【0027】
この後、排出シリンダ82のピストンロッド84が伸長されると、一対のチャック円筒52,52はそれぞれ逆向きに回転されることから、前記チャック溝は移送経路2を挟み、挟持通路78を再び形成する。
上述した排出シリンダ82のピストンロッド84を伸縮させるため、排出シリンダ82もまた前述した油圧回路40に接続されており、油圧源42と排出シリンダ82との間に電磁方向切換弁94が配置されている。この電磁方向切換弁94はその切換作動により排出シリンダ82に対する圧油の給排を制御し、排出シリンダ82のピストンロッド84を伸縮させる。
【0028】
なお、必要に応じて、ピストンロッド84の近傍には近接スイッチ96が配置され、一方、ロッドエンド86には近接スイッチ96をオンオフ作動させる被検出子98が取り付けられる。これら近接スイッチ96及び被検出子98は、圧造機の自動運転が実施される場合、排出シリンダ82の作動、つまり、チャック円筒52,52の回転を検出するために使用される。
【0029】
次に、前述した圧造機を使用して実施される線材Aの圧造方法について、図2及び図3を参照しながら説明する。
なお、図2及び図3中、作図上の都合から回転装置80及び一対のピンチローラ6の姿勢は実際の姿勢とは異なる状態で示されている。
先ず、圧造機が稼働する前、圧造機は図2に示す予熱動作を実施する。
【0030】
この予熱動作では、前述した寸出しシリンダ24が伸長され、圧造パンチ16は据込み装置4のプランジャ14とともにアーム28を介して前述した誘導加熱コイル50に向けて移動され、この誘導加熱コイル50内の所定位置まで進入される。この状態で、給電源から誘導加熱コイル50に通電され、誘導加熱コイル50は圧造パンチ16を予熱する。ここでの予熱温度は、図3に示す後述の据込み動作が所定本数の線材Aに対して繰り返して実施された後、圧造パンチ16の温度が達する定常温度である。具体的には、定常温度は400℃程度であって、それ故、圧造パンチ16は400℃程度まで予熱される。
【0031】
圧造パンチ16の予熱が完了すると、誘導加熱コイル50への通電は停止され、図3に示す据込み動作が実施可能となる。
この据込み動作では、先ず、図3(a)に示されるように、線材Aが移送装置より据込み装置4に向けて移送され、この線材Aはチャック装置8の挟持通路78を通過した後、その先端が圧造パンチ16の先端に当接される。即ち、線材Aの移送はその先端が圧造パンチ16の先端に当接した時点で停止され、この際、線材Aの先端部は挟持通路78から一定の長さだけ突出し、そして、圧造パンチ16とともに前述した誘導加熱コイル50に囲まれた状態にある。
【0032】
そして、圧造パンチ16に線材Aの先端が当接した時点で、チャックシリンダ54が作動される一方、寸出しシリンダ24が収縮され、そして、給電源から誘導加熱コイル50に再び通電され、線材Aの先端部は所定の据込み加工温度まで急速に加熱される(図3(b))。ここでの据込み加工温度は700℃程度であり、誘導加熱コイル50は前述した圧造パンチ16の予熱のみならず、線材Aの先端部を据込み加工温度まで加熱するヒータとしても機能する。
【0033】
前述したようにチャックシリンダ54はチャック円筒52をチャック円筒52に向けて押し出すことから、挟持通路78内の線材Aは、挟持通路78を形成する一対のチャック溝間にて締付けられ、チャック円筒52,52間に強固にチャックされる。
線材Aの先端部が据込み加工温度に達すると、寸出しシリンダ24は圧造パンチ16を線材Aの先端に当接させる(図3c)。この後、圧造シリンダ18は伸長作動し、そのピストンロッド20を介してプランジャ14が圧造パンチ16とともに線材Aの一端に向けて急速に押し出される。この結果、圧造パンチ16が線材Aの先端部に叩き付けられることで、線材Aの先端部は据込み加工を受け、拡径した据込み端Bに形成される(図3(d))。この際、圧造パンチ16の押込みは寸出しシリンダ24の圧縮コイルばね32を収縮させ、そして、エンコーダ38は、圧造パンチ16が線材Aの先端に当接した後の押し込み量、即ち、据込み量を計測する。
【0034】
据込みが完了すると、チャックシリンダ54の作動解除を受け、一対の円筒チャック52,52による線材Aの締付けが解放され、この後、圧造シリンダ18は更に作動し、圧造パンチ16を介して線材Aの据込み端Bを一対の円筒チャック52,52に向けて押し戻す(図3(d))。このような据込み端Bの押し込みは、据込み端Bを誘導加熱コイル50から逃がす。
【0035】
この後、図3(e)に示されるように回転装置80、即ち、その排出シリンダ82が作動され、チャック円筒52,52は互いに逆向きに回転される。それ故、挟持通路78が前述したように開かれ、線材Aはチャック円筒52,52から解放され、据込み端B側の線材Aの部位はチャック円筒52の上方に持ち上げられる。
この後、前述したピンチローラ6を作動させれば、線材Aはその据込み端Bがチャック円筒52,52と干渉することなく、移送経路2に沿って引き戻される(図3(f))。
【0036】
ここで、図3(f)に示されるように、移送装置はその一対のピンチローラ6の直上流にひげ状の被検出子152及びリミットスイッチ154を備えており、線材Aの据込み端Bが被検出子152を通過すると、被検出子152は線材Aから解放され、リミットスイッチ154をオン作動させる。このオン作動を受け、図3(g)に示されるように一対のピンチローラ6は据込み端Bの通過を許容すべく互いに離間する。これにより、これらピンチローラ6の存在に拘わらず、線材Aは所定の位置まで更に引き戻され、一方、圧造シリンダ1が復動することで、圧造機は図3(a)に示す状態に復帰する。
【0037】
なお、図3(a)から明らかなように、線材Aがチャック装置8に向けて移送され、一対のピンチローラ6を通過した時点で、線材Aは被検出子152と当接して、被検出子152をリミットスイッチ154から離間させ、リミットスイッチ154をオフ作動させている。
また、加工済みの線材Aは移送経路2上から後段のステージ(図示しない)に向けて移送され、この後、圧造機は新たな線材Aの供給を受け、この新たな線材Aに対して上述の図3(a)〜(g)の据込み動作が繰り返される。
【0038】
本発明は、上述の一実施例に制約されるものではなく、種々の変形が可能である。
例えば、本発明の圧造機の具体的な構造は、本発明の要旨を逸脱することなく任意に変更可能である。例えば、圧造パンチ16の予熱と線材Aの先端部の加熱とを別個に配置した誘導加熱コイルで行うようにしてもよい。また、線材もPC鋼棒に限られるものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】一実施例の圧造機を概略的に示す図である。
【図2】圧造パンチの予熱動作を説明するための図である。
【図3】線材Aの先端部に対する据込み動作を、(a)〜(g)の順序で示した図である。
【符号の説明】
【0040】
2 移送経路
4 据込み装置
8 チャック装置
16 圧造パンチ
50 誘導加熱コイル(予熱手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材の移送経路に配置され、前記線材の通過を許容し且つ前記線材の先端が前記移送経路の下流側に突出した状態で前記線材を把持可能なチャック装置と、
前記移送経路に前記チャック装置よりも下流に位置して配置され、前記チャック装置により把持された前記線材の前記先端を圧造パンチにより据込んで拡径させる据込み装置と
を具備し、
前記据込み装置は、前記圧造パンチを予熱する予熱手段を備えることを特徴とする線材の圧造機。
【請求項2】
前記予熱手段は、線材の据込みが所定の回数繰り返して実施された後に前記圧造パンチの温度が達する定常温度まで前記圧造パンチを予熱することを特徴とする請求項1に記載の線材の圧造機。
【請求項3】
前記予熱手段は、前記移送経路に配置され、前記圧造パンチを囲繞可能な誘導加熱コイルを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の線材の圧造機。
【請求項4】
前記誘導加熱コイルは、前記線材の前記先端を据込み加工温度に加熱するためのヒータを兼用していることを特徴とする請求項3に記載の線材の圧造機。
【請求項5】
チャック装置から線材の先端を突出させて前記チャック装置に前記線材を把持し、この状態で、圧造パンチにより前記線材の先端を据込んで拡径させる線材の圧造方法において、
前記線材の据込みが繰り返して実施されるに先立ち、前記圧造パンチを予熱することを特徴とする線材の圧造方法。
【請求項6】
前記圧造パンチの予熱は、線材の据込みが所定の回数繰り返して実施された後に前記圧造パンチの温度が達する定常温度まで実施されることを特徴とする請求項5に記載の線材の圧造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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