説明

線材収納容器

【課題】巻き癖が付き難く、かつ、取扱性などの操作性に優れ、特に線材の巻解き作業がスムーズになされる線材収納容器を提供する。
【解決手段】容器1は第1の半体1aと第2の半体1bとを備え、第1の半体1aおよび第2の半体1bには環状凹部5の内側端に沿って凹および/または凸7を構成し、前記凸の前記環状凹部側の立設壁面は該環状凹部の内側端の立設壁面の延長上に在り、第1の半体1aと第2の半体1bとの合体時には、凹凸7が互いに噛み合っていて、第1の半体1aと第2の半体1bとの接合ラインが一平面上には無いよう構成されてなり、前記線材収納空間となる環状凹部5の内側に沿って第1の半体1aと第2の半体1bとはスポット的な接着一体化がなされているものの、環状凹部5の外側においては第1の半体1aと第2の半体1bとは接着一体化がなされていない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、高強力ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂などの樹脂製線材の収納容器に関する。特に、釣糸などの線材の収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
釣糸は、例えば100mの長さに裁断されており、そして保管・取扱の便宜上から、スプールに巻き取られた状態で販売されている。
【0003】
ところで、大物用の釣糸、例えば直径が0.3mm以上の釣糸を、直径が6cm程度の通常の釣糸用のスプールに巻き付けていると、釣糸には巻き癖が付いてしまう。すなわち、スプールから釣糸を巻き解いても、釣糸は真っ直ぐにならず、リング状に曲がったものとなってしまう。これでは、釣に際して、非常に使い難いものとなる。従って、大物用の釣糸は、直径が20cm程度となるように巻き回し、この巻回状の釣糸をポリ袋に入れて販売している。
【0004】
しかしながら、上記したポリ袋での収納は、例えばポリ袋は破れ易いとか、又、100mもの釣糸を一度に使用してしまうもので無いことから、使用に際してはポリ袋から出し入れしなければならず、取扱いが非常に面倒などの問題が有る。
【0005】
又、直径が20cmものスプールに釣糸を巻いていたのでは、重く、持ち運びや取扱が非常に厄介である。
【0006】
このようなことから、図3及び図4に示される如くの容器が提案されている。
【0007】
図3及び図4中、21a,21bは、各々、容器の円盤状半体である。尚、円盤状半体21aと円盤状半体21bとは対称である。22a,22bは、半体21a,21bの内側において、その外周縁部に沿って構成された釣糸収納空間となる環状凹部である。そして、円盤状半体21aと円盤状半体21bとは、環状凹部22a,22bより少し内側に入り込んだ位置23,24において、溶着されている。
【0008】
上記の容器を用いれば、半体21a,21bを肉厚が薄いプラスチック板で構成できるから、スプールを用いる場合に比べて、軽量化が図れ、又、取扱も楽である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、図3や図4に示される釣糸収納容器には、次のような問題点が有ることが判って来た。
【0010】
すなわち、この釣糸収納容器は、所定形状に成形した円盤状半体21aの環状凹部22a上に、巻回された釣糸を配置し、この後で円盤状半体21bを被せ、そして位置23,24において、例えば超音波溶着により一体化している。
【0011】
ここで、環状凹部22a,22bより内側に入り込んだ位置23,24で溶着しているのは、次の理由によると考えられる。
【0012】
すなわち、溶着位置が、丁度、環状凹部22a,22b端であると、環状凹部22a上に置かれている釣糸が少しでもズレると、釣糸まで一緒に溶着する恐れが有るからと思われる。従って、円盤状半体21aと円盤状半体21bとの溶着位置は、余裕を持って、環状凹部22a,22bより内側の位置23,24にせざるを得ない。
【0013】
しかしながら、溶着位置を環状凹部22a,22bより内側の位置23,24にすると、釣糸収納容器に巻回収納されている釣糸を巻き解いて行くに際して、釣糸が環状凹部22a,22b端と溶着位置23との間における半体21aと半体21bとの隙間25に喰い込むようになる場合が有る。そうすると、釣糸の巻き解きがスムーズに行われない。
【0014】
特に、半体21aと半体21bとの溶着が、例えば90°間隔での4点におけるスポット溶着であったとすると、釣糸を巻き解いて行くに際して、釣糸が環状凹部22a,22b端とスポット溶着位置23との間における半体21aと半体21bとの隙間25、更にはスポット溶着間にも確実に喰い込むようになり、釣糸の巻き解きがスムーズに行われない。
【0015】
従って、細かな間隔(例えば、1°置き)で一周に亘って溶着、即ち、一周に亘って全面的に溶着を行わざるを得ない。
【0016】
しかしながら、一周に亘っての全面的な溶着は、それだけ、面倒である。
【0017】
かつ、釣糸の巻き解きに際しては、半体21aの端部と半体21bの端部との間に隙間が出来る(半体間を開く)ように釣糸にテンションを作用させなければならないのであるが、一周全域に亘って全面的に溶着していると、半体同士の合体力が大きいから、釣糸に作用させなければならないテンションをそれだけ大きなものとせざるを得ず、スムーズに釣糸を巻き解くことが出来ない。
【0018】
従って、本発明が解決しようとする課題は、巻き癖が付き難く、かつ、取扱性などの操作性に優れ、特に線材の巻解き作業がスムーズになされる線材収納容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記の課題は、線材を収納する容器であって、
前記容器は第1の半体と第2の半体とを備え、
前記第1の半体の内側には、その外周縁部に沿って線材収納空間となる環状凹部が構成されており、
前記第2の半体の内側には、その外周縁部に沿って、前記環状凹部に対応した線材収納空間となる環状凹部が構成されており、
前記第1の半体には前記環状凹部の内側端に沿って凹および/または凸が構成されており、
前記第2の半体には前記環状凹部の内側端に沿って凸および/または凹が構成されており、
前記凸の前記環状凹部側の立設壁面は該環状凹部の内側端の立設壁面の延長上に在り、
前記第1の半体と前記第2の半体との合体時には、前記凹凸が互いに噛み合っていて、前記第1の半体と前記第2の半体との接合ラインが一平面上には無いよう構成されてなり、
前記線材収納空間となる前記環状凹部の内側に沿って前記第1の半体と前記第2の半体とはスポット的な接着一体化がなされているものの、該環状凹部の外側においては前記第1の半体と前記第2の半体とは接着一体化がなされていない
ことを特徴とする線材収納容器によって解決される。
【0020】
又、前記の課題は、線材を収納する容器であって、
前記容器は第1の半体と第2の半体とを備え、
前記第1の半体の内側には、その外周縁部に沿って線材収納空間となる環状凹部が構成されており、
前記第1の半体には前記環状凹部の内側端に沿って凹および/または凸が構成されており、
前記第2の半体には、前記第1の半体の凹および/または凸に対応して凸および/または凹が構成されており、
前記凸の前記環状凹部側の立設壁面は該環状凹部の内側端の立設壁面の延長上に在り、
前記第1の半体と前記第2の半体との合体時には、前記凹凸が互いに噛み合っていて、前記第1の半体と前記第2の半体との接合ラインが一平面上には無いよう構成されてなり、
前記線材収納空間となる前記環状凹部の内側に沿って前記第1の半体と前記第2の半体とはスポット的な接着一体化がなされているものの、該環状凹部の外側においては前記第1の半体と前記第2の半体とは接着一体化がなされていない
ことを特徴とする線材収納容器によって解決される。
【0021】
特に、上記構成の線材収納容器であって、
前記第1の半体の外周縁端は第2の半体から遠ざかるように構成されると共に、第2の半体の外周縁端は第1の半体から遠ざかるように構成されてなり、
前記第1の半体と前記第2の半体との合体により構成されてなる前記容器の外周縁端部は、その断面が略<形状である
ことを特徴とする線材収納容器によって解決される。
【0022】
又、上記構成の線材収納容器であって、
前記第1の半体および第2の半体には、その略中央部に孔が設けられてなることを特徴とする線材収納容器によって解決される。
【0023】
又、上記構成の線材収納容器であって、
前記第1の半体および/または第2の半体には、その外周縁部に延在片部が設けられており、
前記延在片部には線材先端部が挿入される孔が複数個設けられてなる
ことを特徴とする線材収納容器によって解決される。
【0024】
又、上記構成の線材収納容器であって、
前記延在片部に設けられた孔に線材を案内する案内溝が該延在片部に構成されてなることを特徴とする線材収納容器によって解決される。
【発明の効果】
【0025】
本発明の線材収納容器は、第1の半体と第2の半体とを備え、前記第1の半体や第2の半体の内側には、その外周縁部に沿って線材収納空間となる環状凹部を構成し、前記環状凹部の内側に沿って前記第1の半体と前記第2の半体とは接着一体化しているものの、該環状凹部の外側に沿っては前記第1の半体と前記第2の半体とは接着一体化しないものとした。従って、第1の半体や第2の半体を肉厚の薄いプラスチック材で構成すれば、第1の半体や第2の半体を直径が20cm程度のものとしても、軽量であるから、取扱性が良い。そして、スプールに強く巻き付けるような形態で線材を収納するものでは無く、単に、巻回した線材を環状凹部で構成される線材収納空間に配置するだけであるから、線材に巻き癖が付き難い大きな特長を奏する。
【0026】
そして、第1の半体と第2の半体とは環状凹部の内側に沿って接着一体化されているから、環状凹部で構成される線材収納空間に収納されている巻回状態の線材は、位置規制されており、収納容器から抜け取れることは無い。
【0027】
かつ、第1の半体と第2の半体とは環状凹部の外側において接着一体化されていないから、巻回状態の線材を先端側から巻き解くようにして簡単に取り出せる。しかも、その際、線材に強く引っ張るような力を作用させることなく、即ち、線材の巻回直径を小さくするような力を作用させることなく、線材をスムーズに取り出せる。
【0028】
これに対して、第1の半体と第2の半体とを環状凹部の外側において接着一体化していた場合には、巻回状態の線材を取り出すには、線材を引っ張るようにして取り出すしか無く、即ち、巻回状態の線材を巻き解くようにして取り出すことが出来ない。そして、巻回状体に在る線材は回転し難いことから、線材の巻回直径を小さくする(絞る)ような力を線材に対して作用させることを意味する。その結果、線材はスムーズに取り出せない。
【0029】
又、第1の半体や第2の半体には環状凹部の内側端に沿って凹凸を構成し、前記凹凸の凸部の前記環状凹部側の立設壁面は該環状凹部の内側端の立設壁面の延長上に在り、第1の半体と第2の半体との合体時には前記凹凸が互いに噛み合っていて、第1の半体と第2の半体との接合ラインが一平面上には無いように構成させているから、線材が第1の半体と第2の半体との間に喰い込まれ(挟み込まれ)ない。
【0030】
ところで、線材が収納された容器は、半体の環状凹部上に巻回された線材を配置し、この後で残りの半体を被せ、例えば超音波溶着により一体化することで得られる。この時、本発明の如く、環状凹部の内側端に沿って凹凸を構成し、この凹凸が噛み合う構造にしておけば、巻回されている線材が半体同士の接合面間には挟み込まれない。特に、溶着箇所が90°置きの4点スポット溶着であったとしても、線材が第1の半体と第2の半体との間に喰い込まれ(挟み込まれ)ない。
【0031】
そして、数点でのスポット溶着で済むから、非常に、簡単に出来る。
【0032】
かつ、数点でのスポット溶着の場合、半体同士の合体力が大き過ぎるものとならない。このことは、巻回収納されている線材を巻き解いて行くに際して、線材に作用させなければならない力が小さくて済み、それだけスムーズに巻き解きが行われる。かつ、線材を傷付け難い。
【0033】
これに対して、上記のように構成させていない場合、即ち、第1の半体と第2の半体との接合ラインが一平面上に在る場合、第1の半体と第2の半体との接着一体化がスポット溶着的なものであると、例えば90°間隔の4点においてスポット溶着したのみであると、溶着されていない部分の隙間に線材が喰い込むような現象が起きる。これでは、線材が傷付いたり、線材の取出しがスムーズに行われない場合も起きる。そこで、このような事が起きないようにする為には、スポット溶着箇所を非常に多くするしか無く、これでは作業性が非常に悪い。
【0034】
しかしながら、上記のように構成させた場合には、例えば90°間隔での4箇所のスポット溶着による接着一体化でも問題が起こらず、かつ、接着一体化の作業性も良い。又、第1の半体や第2の半体を成形手段で成形すれば、前記の凹凸は簡単に出来るものであり、凹凸を形成するのにも格別な問題は無い。
【0035】
又、第1の半体の外周縁端を第2の半体から遠ざけるように構成すると共に、第2の半体の外周縁端を第1の半体から遠ざけるように構成し、前記第1の半体と前記第2の半体との合体により構成されてなる前記容器の外周縁端部の断面が略<形状であるように構成させていると、線材の取出しに際して、引き出されている線材が第1の半体の外周縁端(自由端)や第2の半体の外周縁端(自由端)に角度が付いて擦れると言ったことが少なくなる。従って、線材の取出しに際して、線材が傷付き難いものとなる。
【0036】
又、第1の半体および第2の半体には略中央部に孔を設けていると、線材の巻き解きに際して、前記中央部の孔を中心として収納容器を回転させることが出来るから、線材の巻き解き作業(取出作業)が非常にスムーズなものになる。
【0037】
又、第1の半体および/または第2の半体には、その外周縁部に延在片部を設け、前記延在片部には線材先端部が挿入される孔を複数個設けていると、この孔に線材の先端部を挿入しておけば、線材が自然に巻き解かれたり、又、線材の先端部が線材収納空間に入り込んでしまうことが無い。従って、非常に好都合である。
【0038】
又、前記延在片部に設けられた孔に線材を案内する案内溝を該延在片部に構成させていると、線材を孔に挿入している状態において、線材が傷付き難い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
図1は本発明になる釣糸収納容器の分解状態での斜視図、図2は本発明になる釣糸収納容器の一部断面図である。
【0040】
各図中、1は、樹脂製の線材、例えば釣糸の収納容器である。この円盤状の収納容器1の大きさは、直径が20〜30cm程度、厚さが2〜3cm程度、肉厚が0.3〜0.7mm程度である。
【0041】
1a,1bは収納容器1の半体である。そして、収納容器1は、半体1aと半体1bとを互いに合体させ、所定のポイントで接着(溶着)一体化することによって構成されたものである。
【0042】
半体1a,1bの構成材料は如何なる樹脂であっても良い。但し、成形可能な樹脂であることが好ましい。又、透明あるいは半透明な樹脂であることが好ましい。例えば、ポリエチレン樹脂などを好ましいものとして挙げることが出来る。又、樹脂材のみで無く、収納された釣糸の紫外線による劣化を防止する為、紫外線吸収剤とか、染料または顔料などの着色剤を適宜用いる。成形方法は、如何なる技術のものでも良いが、例えば真空成形とか射出成形などを適宜用いることが出来る。
【0043】
半体1a,1bの中央部には直径3cm程度の孔2が設けられている。この孔2の周囲には、孔2の部分の機械的強度を強化する為に、リング状のリブ3が設けられている。勿論、リブ3は外側に凸状(内側には凹状)となっている。そして、半体1aと半体1bとを合体させた場合、図2からも判る通り、孔2の周囲の平坦面部4同士は互いに面接合するようになっている。
【0044】
半体1a,1bの外周縁部には、その外周縁に沿って環状凹部5が構成されている。勿論、環状凹部5は、外側には凸状(内側には凹状)となるように構成されたものである。そして、半体1aと半体1bとを合体させた場合に、半体1aの環状凹部5と半体1bの環状凹部5とで構成されるドーナツ状の閉鎖空間が釣糸収納空間となるように構成されたものである。
【0045】
環状凹部5の部分には、外側に凸状(内側には凹状)のリブ6が45°間隔で設けられている。更に、環状凹部5の内側端に沿って凹凸7が繰り返して設けられている。但し、凹凸7の環状凹部5側の立設壁面7aは環状凹部5の内側端の立設壁面5aの延長上に在るように凹凸7が構成されている。すなわち、凹凸7の立設壁面7a(本実施例にあっては、凹凸7の凹の部分は、その高さが平坦面部4より低くなっており、環状凹部5の側に入り込むような形状である。従って、凹凸7の立設壁面7aとは、凸部分の立設壁面7aのことである。)が、環状凹部5の内側端の立設壁面5aの延長上に在るように構成されたものである。半体1aと半体1bとは、基本的に、対称に構成されている。しかしながら、凹凸7は、半体1aと半体1bとでは、少しの位相差が有るようにズレて構成されている。これは、半体1aと半体1bとを合体させた場合、特に、リブ6同士が対向するような関係で合体させた場合、半体1aの凹凸7の凹が半体1bの凹凸7の凸に嵌合すると共に、半体1aの凹凸7の凸が半体1bの凹凸7の凹に嵌合するよう、即ち、半体1aの凹凸7が半体1bの凹凸7に噛合するように構成されている。
【0046】
又、半体1aの凹凸7の部分には、凹凸7に代わって、溶着用の凹部8aが90°間隔で構成されている。そして、半体1aに設けられた溶着用の凹部8aに対向して、半体1bには、凹部8aに嵌合する溶着用の凸部8bが構成されている。尚、凹凸7、凹部8aや凸部8bが形成されていない平坦面部分(平坦面部4)も有る。
【0047】
本実施例において、凹凸7を設けたのは、半体1aと半体1bとを合体させた場合に、環状凹部5側における接合ラインが一平面上には無いものとする為である。尚、半体1a,1bの双方に凹凸7を形成したが、半体1aには凸のみ(勿論、凸が形成されていない部分は平坦面部であるから、この平坦面部を相対的に凹と見做すことが出来る。)、半体1bには凹のみ(勿論、凹が形成されていない部分は平坦面部であるから、この平坦面部を相対的に凸と見做すことが出来る。)であっても、環状凹部5側における接合ラインは一平面上には無く、その目的が達成される。すなわち、凹凸による繰り返しての連続的噛合が構成されておれば、半体1aと半体1bとの接合ラインの空隙に釣糸が挟まれてしまうと言った事故は起きない。
【0048】
半体1aの外周縁端9aは、環状凹部5の外側の平坦面部10より外側に反っているように構成されている。半体1bの外周縁端9bも、環状凹部5の外側の平坦面部10より外側に反っているように構成されている。従って、半体1aと半体1bとを合体させた場合、半体1aの平坦面部10と半体1bの平坦面部10とは互いに面接合しているものの、収納容器1の外周縁端部は、図2からも判る通り、その断面が略<形状となるように構成されている。すなわち、収納容器1の外周縁端部は口が広がっているように構成されている。
【0049】
半体1aの外周縁部には、略三角形状の延在片部11が設けられている。この延在片部11には釣糸挿入(掛止)用の孔12が2個形成されている。かつ、孔12に釣糸を案内する案内溝13が環状凹部5から続いて設けられている。更に、フックに吊り下げる為の孔14が形成されている。尚、半体1aに構成した延在片部11は、半体1bには構成されていない。
【0050】
そして、上記のように構成させた半体1aの環状凹部5内にドーナツ状に巻回した釣糸15を配し、そして互いの環状凹部5が対向するよう、かつ、凹凸7同士が噛合するよう半体1bを半体1aに対して配し、溶着用の凹部8a(溶着用の凸部8b)の箇所にて、例えば超音波溶着の手段でスポット溶着を行い、半体1aと半体1bとを一体化する。尚、この溶着一体化は、溶着用の凹部8a(溶着用の凸部8b)の4箇所のみである。従って、環状凹部5の内側に沿っては、半体1aと半体1bとは接着一体化がなされている。しかしながら、環状凹部5の外側に沿っては、半体1aと半体1bとは接着一体化が行われていない。
【0051】
さて、上記のように構成させた本発明の収納容器は、軽量であるから、取扱性が良い。そして、スプールに強く巻き付けられるような形態で釣糸が収納されておらず、即ち、単に、巻回した釣糸15を環状凹部5で構成される収納空間に配置するだけであるから、釣糸15に巻き癖が付き難い。
【0052】
そして、半体1aと半体1bとは環状凹部5の内側に沿って接着一体化されているから、環状凹部5で構成される収納空間に収納されている巻回状態の釣糸15は、位置規制されており、収納容器1から抜け取れない。かつ、半体1aと半体1bとは環状凹部5の外側においては接着一体化が行われて無いから、半体1aの外周縁端9aと半体1bの外周縁端9bとの間より、巻回状態の釣糸15を先端側から巻き解くようにして簡単に取り出せる。しかも、その際、釣糸15に強く引っ張るような力を作用させることが無い。すなわち、釣糸15の巻回直径を小さくする(絞る)ような力を作用させることが無い。つまり、巻回状態にある釣糸15を締め付けるような力を作用させることが無い。従って、釣糸15をスムーズに取り出せる。
【0053】
そして、釣糸15を半体1aの環状凹部5内に配し、互いの環状凹部5同士が対向するよう、かつ、凹凸7同士が噛合するよう半体1bを半体1aに対して配した後、溶着用の凹部8a(溶着用の凸部8b)の箇所にて超音波溶着の手段でスポット溶着を行う場合に、環状凹部5の内側に沿って凹凸(特に、背が高くなった部分(凸))7が存在しているから、釣糸15を間に挟み込み難い。
【0054】
かつ、釣糸15を巻き解く場合でも、半体1aと半体1bとの接合ラインが一平面上には無いから、釣糸15が半体1aと半体1bとの間に喰い込むような現象は起きない。特に、半体1aと半体1bとが、数点におけるスポット溶着による一体化であっても、釣糸15が半体1aと半体1bとの間に喰い込むような現象は起きない。
【0055】
そして、数点でのスポット溶着で済むから、非常に、簡単に出来る。
【0056】
かつ、数点でのスポット溶着の場合、半体1aと半体1bとの合体力が大き過ぎるものとはならない。このことは、半体1aの平坦面部10と半体1bの平坦面部10とを互いに遠ざける方向に開く力が小さくて済むことを意味している。従って、巻回収納されている釣糸15を巻き解いて行くに際して、半体1aの平坦面部10と半体1bの平坦面部10とを離間させなければならないのであるが、その力は小さくて良いから、釣糸15をスムーズに解くことが出来る。
【0057】
しかも、釣糸15の巻き解きによる取出しに際して、半体1aや半体1bの外周縁端は互いに距離が大きくなるよう(遠ざかるよう)になっているから、釣糸15が半体1aや半体1bの外周縁端(自由端)に当たり難い。従って、釣糸15が傷付き難い。
【0058】
又、半体1a,1bの中央部には孔2が設けられているので、この孔2を中心として収納容器1を回転させることが出来、釣糸15の巻き解き作業(取出作業)が非常にスムーズなものになる。
【0059】
又、半体1aの環状凹部5と半体1bの環状凹部5とで構成される釣糸15の収納空間は、平坦面部4,10等によって仕切られた閉鎖空間である。従って、外部から塵や埃が入り難く、釣糸15が汚れ難い。
【0060】
又、半体1aには、その外周縁部に延在片部11が設けられており、この延在片部11には釣糸15の先端部が挿入される孔12を複数個設けている。従って、孔12に釣糸15の先端部を挿入・掛止しておけば、釣糸15が自然に巻き解かれたり、又、釣糸15の先端部が環状凹部5による収納空間に入り込んでしまうことが無い。又、延在片部11に設けられた孔12に釣糸15を案内する案内溝13が設けられているので、釣糸15を孔12に挿入している状態において、釣糸15が傷付き難い。
【0061】
尚、上記の例にあっては、双方の半体1a,1bに環状凹部5が設けられた例であったが、これは半体1aのみであっても良い。すなわち、一方の半体のみにしか環状凹部5を設けない場合でも良い。そして、一方の半体のみに環状凹部5を設けるようにした場合には、環状凹部5による収納空間から釣糸15を巻き解いて行く場合、半体1aと半体1bとの接合面から順に引き出されるようになり、即ち、巻き解いて行く場合に巻回されている釣糸15を崩して引き出すような無理な力が作用し難く、釣糸15の巻解性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明になる釣糸収納容器の分解状態の斜視図
【図2】本発明になる釣糸収納容器の一部断面図
【図3】従来の釣糸収納容器の分解状態の斜視図
【図4】従来の釣糸収納容器の一部断面図
【符号の説明】
【0063】
1 釣糸収納容器
1a,1b 半体
2 孔
4 平坦面部
5 環状凹部
5a 立設壁面
7 凹凸
7a 立設壁面
8a 溶着用凹部
8b 溶着用凸部
9a,9b 外周縁端
10 平坦面部
11 延在片部
12 釣糸挿入用孔
13 案内溝
15 釣糸

代 理 人 宇 高 克 己

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材を収納する容器であって、
前記容器は第1の半体と第2の半体とを備え、
前記第1の半体の内側には、その外周縁部に沿って線材収納空間となる環状凹部が構成されており、
前記第2の半体の内側には、その外周縁部に沿って、前記環状凹部に対応した線材収納空間となる環状凹部が構成されており、
前記第1の半体には前記環状凹部の内側端に沿って凹および/または凸が構成されており、
前記第2の半体には前記環状凹部の内側端に沿って凸および/または凹が構成されており、
前記凸の前記環状凹部側の立設壁面は該環状凹部の内側端の立設壁面の延長上に在り、
前記第1の半体と前記第2の半体との合体時には、前記凹凸が互いに噛み合っていて、前記第1の半体と前記第2の半体との接合ラインが一平面上には無いよう構成されてなり、
前記線材収納空間となる前記環状凹部の内側に沿って前記第1の半体と前記第2の半体とはスポット的な接着一体化がなされているものの、該環状凹部の外側においては前記第1の半体と前記第2の半体とは接着一体化がなされていない
ことを特徴とする線材収納容器。
【請求項2】
線材を収納する容器であって、
前記容器は第1の半体と第2の半体とを備え、
前記第1の半体の内側には、その外周縁部に沿って線材収納空間となる環状凹部が構成されており、
前記第1の半体には前記環状凹部の内側端に沿って凹および/または凸が構成されており、
前記第2の半体には、前記第1の半体の凹および/または凸に対応して凸および/または凹が構成されており、
前記凸の前記環状凹部側の立設壁面は該環状凹部の内側端の立設壁面の延長上に在り、
前記第1の半体と前記第2の半体との合体時には、前記凹凸が互いに噛み合っていて、前記第1の半体と前記第2の半体との接合ラインが一平面上には無いよう構成されてなり、
前記線材収納空間となる前記環状凹部の内側に沿って前記第1の半体と前記第2の半体とはスポット的な接着一体化がなされているものの、該環状凹部の外側においては前記第1の半体と前記第2の半体とは接着一体化がなされていない
ことを特徴とする線材収納容器。
【請求項3】
第1の半体の外周縁端は第2の半体から遠ざかるように構成されると共に、第2の半体の外周縁端は第1の半体から遠ざかるように構成されてなり、
前記第1の半体と前記第2の半体との合体により構成されてなる前記容器の外周縁端部は、その断面が略<形状である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2の線材収納容器。
【請求項4】
第1の半体および第2の半体には、その略中央部に孔が設けられてなる
ことを特徴とする請求項1〜請求項3いずれかの線材収納容器。
【請求項5】
第1の半体および/または第2の半体には、その外周縁部に延在片部が設けられており、
前記延在片部には線材先端部が挿入される孔が複数個設けられてなる
ことを特徴とする請求項1〜請求項4いずれかの線材収納容器。
【請求項6】
延在片部に設けられた孔に線材を案内する案内溝が該延在片部に構成されてなる
ことを特徴とする請求項5の線材収納容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−160479(P2006−160479A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−356430(P2004−356430)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(391024250)第一プラスチック工業株式会社 (7)
【出願人】(591051966)株式会社サンライン (8)
【出願人】(592079804)三菱商事プラスチック株式会社 (9)
【Fターム(参考)】