説明

線材繰り出し装置

【課題】 レバーの操作によるチャックを拡開させながらの挿着作業となってしまうのである。即ち、太い線はんだの挿着は兎も角、一方の手で付勢力に抗してレバー操作を行いながら、他方の手で細い線はんだを挿着する作業は、線はんだの先端の位置合わせが難しく、チャック内面に当接し屈曲させてしまったりしていた。
【解決手段】 軟質な材質からなる線材を繰り出す装置であって、その線材を少なくとも一対のローラーで挟持し繰り出すと共に、少なくとも1つのローラーに操作部を設けた線材繰り出し装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質な材質からなる線材を繰り出す装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子機器のはんだ付けには、はんだを線状に加工した線はんだや線はんだの内部に松脂などのフラックス成分を含浸させたやに入りはんだをはんだ鏝を用いてはんだ付けするマニュアルソルダリングがあり、特にフローソルダリングやリフローソルダリングで付けられない部品のはんだ付けやはんだ付け後の修正に広く用いられている。近年の電子機器の小型化に伴い、電子部品も小型化しており、マニュアルソルダリングに使用する線はんだややに入りはんだの線径も細くなっている。はんだは軟質な材料であり、線径が細くなると供給時に折れ曲がってしまう。線径の細いはんだを供給する装置として、線はんだを開閉可能、且つ、前後動可能なチャック体で繰り出す装置が知られている(特許文献1参照)。詳述すると、外筒の内部には線はんだを保持する三角形の突起が形成されたチャックが配置されており、そのチャックの前方の離隔した位置には線はんだの後退(戻り)を阻止する保持部材が配置されている。又、チャックの後方には、コイルスプリングの付勢力に抗してチャックを前進させ線はんだの繰り出し操作を行うレバーが取り付けられている。
【特許文献1】実願昭62−169776号(実開平1−72974号)のマイクロフィルム。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来技術にあっては、レバーの操作によって一定量の線はんだを繰り出すことができ、使用性に優れている。
また、一般的に前記線はんだは、その直径が0.7mm〜1.0mmの物が多く使用されているが、近年においては直径が0.5mmや0.3mm、0.1mmと言った物も要求され使用されつつある。製品のコンパクト化が進んでおり、それ故に、その製品の内部に具備される部品も小さく、その部品の極小化に伴って線はんだも極細化しているのである。
しかし、この様に極細化された線はんだを、上記従来の線材繰り出し装置に挿着するには、些か問題があった。具体的に説明すると、前記チャックは常時コイルスプリングによって閉鎖せしめられている為、レバーの操作によるチャックを拡開させながらの挿着作業となってしまうのである。即ち、太い線はんだの挿着は兎も角、一方の手で付勢力に抗してレバー操作を行いながら、他方の手で細い線はんだを挿着する作業は、線はんだの先端の位置合わせが難しく、チャック内面に当接し屈曲させてしまったりしていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、軟質な材質からなる線材を繰り出す装置であって、その線材を少なくとも一対のローラーで挟持し繰り出すと共に、少なくとも1つのローラーに操作部を設けたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、軟質な材質からなる線材を繰り出す装置であって、その線材を少なくとも一対のローラーで挟持し繰り出すと共に、少なくとも1つのローラーに操作部を設けたので、線材の装置への挿着が容易な線材繰り出し装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
作用について説明する。一対のローラーを回転させることによって、線材は挟持されると共に、回転操作量に準じて繰り出される。
【0007】
線材繰り出し装置の本体1は、全体として偏平な容器状である。上蓋体2と下蓋体3とよりなり、線材である線はんだ4が巻回されたカートリッジ5を内蔵している。しかし、カートリッジ5の1部が露出するような構造であっても良いし、線はんだの巻回手段を本体1とは別な箇所に設置しても良い。前記カートリッジ5は内孔6を有しており、下蓋体3の設けられた軸支部7に回転自在に嵌着している。この軸支部7は、カートリッジ5の回転部となっているが、カートリッジ5を下蓋体3に装着する際の案内部ともなっている。
【0008】
前記本体1の線はんだが繰り出される方向には、一対のローラーが配置されている。具体的に説明する。一対の軸部材8、9が前記上蓋体2並びに、下蓋体3の内側に形成された軸孔10に回転自在に軸支されている。その一方の軸部材8には、滑り止め加工が施されたローラー11が着脱自在に挿着されているが、そのローラー11の中間部は大径部12となっている。そして、他方の軸部材9には同様に滑り止め加工が施されたローラー13が挿着されているが、そのローラー13の両端部は大径部となっている。即ち、ローラー11の大径部12がローラー13に嵌り込むことによって互いが接触し、線はんだ4を挟持し得るようになっている。また、ローラー13の大径部は前記本体1から露出し、ローラー11やローラー13を回転させ線はんだ4を繰り出す操作部14となっている。その操作部14の周面には、直線上の凹凸部やローレット加工が施されており、回転操作を容易なものとしているが、リング状のゴム弾性体などを巻き付けても良い。つまり、この操作部14を大形にすることによって、線はんだ4を挟持するローラーへの指の接触などを防止している。
なお、前記ローラー11、並びにローラー12の表面に施される滑り止め手段としては、ローレット加工や梨地加工、或いは、各種塗料やゴム状弾性体を塗布或いは挿着する手段などがあるが、各ローラー11、12によって挟持し繰り出される線はんだ4の表面に損傷を与えないような手段を選択するのが好ましい。
【0009】
前記本体1の線はんだが繰り出される方向の前部近傍には、回転体15が軸支されている。その回転体15は、摩擦抵抗を付与されながらの回転となっており、また、回転の範囲も5度から45度程度のものとなっている。後述するが、使用する際に、その使用を容易となすために多少の揺動性を持たせたのである。
その回転体15には貫通孔16が形成されており、その貫通孔16に繰り出された線はんだを案内するガイドパイプ17が固定されている。尚、そのガイドパイプ17の先端には外周部と共に内周部も縮径し、細径部を形成しても良い。具体的には、使用する線はんだ4の直径が0.3mmである場合には、ガイドパイプ17の内径を0.5mmとしているが先端細径部においては0.38mmとしても良い。作業時における線はんだ4の安定性(振れ防止)を向上させていると共に、視認性を向上させるものとなる。又、ガイドパイプ17の内径としては、本例に限らず、使用する線はんだ4の外径の1.25〜10倍程度で有れば良好な繰り出し動作が得られる。一方、内径が線はんだ4の外径の1.25倍未満のガイドパイプであると、線はんだ4の多少の湾曲によって摺動(通過)性が悪くなってしまい、10倍を超えるとガイドパイプ内で座屈が発生してしまう危険性がある。このガイドパイプ17の内径のより好ましい範囲は、線はんだ4の外径の1.25倍〜5倍未満である。又、ガイドパイプ17の本体1からの突出長さとしては、視認性やガイドパイプ先端における安定性を考慮すると、1.0mm〜50.0mmの範囲が好ましい。
また、ガイドパイプ17の他端は回転体15の貫通孔16を貫通して前記ローラー11、13近傍まで達しており、その端部にはローラー11、並びにローラー13から繰り出された線はんだ4を前記ガイドパイプ17に導く案内部材18が固定されている。なお、その案内部材18の内面には、線はんだ4を容易に導くために漏斗状の貫通孔19が形成されている。
【0010】
尚、本例においては、本体の組み立てを簡素化するため、並びに、カートリッジ5の交換を容易になすために、上蓋体2と下蓋体3との固定は、下蓋体3の透孔20に対して上蓋体2に設けた一対の弾性突起21の係合突起22が係合するものとしてある(図6参照)。指先等で両弾性突起21を近づけるように変形させれば上蓋体2と下蓋体3とを分離できる。また、弾性突起21の突出端部分の幅は狭くしてあるので、固定するときには弾性突起21を透孔20に合わせて単に押圧すればよい。
また、線はんだ4の残量確認を容易なものとするために、本体1を適宜透明性を有する材質から成形した。内部透視度は、例えば、表面を梨地にしたり少し着色したりして調整すればよい。1例として本例のものには、把持したときの滑り止め部に小リブ形成領域を設けてあるが、これも透明性の調整に役立っている。
【0011】
次ぎに使用例並びに動作について説明する。本体1を手のひらに持ち、ローラー13の操作部14を回転させると、ローラー11も回転を開始する。このとき、互いのローラは接触状態にあるため、相対的に反対方向に回転する。この回転により線はんだ4が繰り出され、ガイドパイプ17の先端から突出する。このとき、ガイドパイプ17に固定している回転体15が本体1に対して摩擦抵抗を付与されながらも回転自在に配置されているため、使用者は好みに応じてガイドパイプ17と作業面との角度を調整することができる。
ここで、カートリッジ5の線はんだ4を使い切ってしまった場合には、上蓋体2の弾性突起21を摘んでその上蓋体2とした蓋体3を分離する。そして、使用済みのカートリッジ5を取り去り、新たなカートリッジ5を装填する。このとき、ローラー11を下蓋体3から外し、線はんだ4を案内部材18の貫通孔19へと導く。次いで、前記外したローラー11を再び挿着し線はんだ4をローラー13と共に挟持させる。最後に、上蓋2を再びした蓋体3に組み付けカートリッジ5の交換作業が完了する。
【0012】
尚、本例においては、線はんだ4を挟持するローラーの横断面形状を円形状なものとし、線はんだ4を連続的に繰り出せるようにしたが、例えば、ローラーの横断面形状を三角形や四角形状など異形形状とし間欠的に線はんだ4を繰り出せるようにしても良い。
また、ローラーを本体1に着脱自在に配置することによって、線はんだ4の挟持・非挟持をなしカートリッジ5の交換をなし得るようにしたが、ローラーを本体に対して移動可能に配置し、線はんだ4の挟持・非挟持をなし得るようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の1例を示す分解斜視図。
【図2】本発明の底面図。
【図3】本発明の上蓋体を外した上面図。
【図4】図2の側面図。
【図5】図2のA−A線断面図。
【図6】図2のB−B線断面図。
【図7】図4のC−C線断面図。
【符号の説明】
【0014】
1 本体
2 上蓋体
3 下蓋体
4 線はんだ
5 カートリッジ
6 内孔
7 軸支部
8 軸部材
9 軸部材
10 軸孔
11 ローラー
12 大径部
13 ローラー
14 操作部
15 回転体
16 貫通孔
17 ガイドパイプ
18 案内部材
19 貫通孔
20 透孔
21 弾性突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質な材質からなる線材を繰り出す装置であって、その線材を少なくとも一対のローラーで挟持し繰り出すと共に、少なくとも1つのローラーに操作部を設けたことを特徴とする線材繰り出し装置。
【請求項2】
前記操作部を線材の挟持部よりも大形にしたことを特徴とする請求項1記載の線材繰り出し装置。
【請求項3】
前記ローラーは、互いに接近・離脱が可能であることを特徴とする請求項1、或いは、請求項2に記載の線材繰り出し装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つのローラーは、線材繰り出し装置に対して着脱が可能であることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の線材繰り出し装置。
【請求項5】
前記線材の繰り出し方向に線材を案内するガイドパイプを配置したことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の線材繰り出し装置。
【請求項6】
前記線材繰り出し装置に線材が巻回されたカートリッジを着脱可能に内設したことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れかに記載の線材繰り出し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−182514(P2006−182514A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−378438(P2004−378438)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】