説明

線条安定材を有するマルチフィラメント耐AC伝導体を形成する方法、それに関連する物品、およびそれを組み込む装置

基板、バッファ層、マルチフィラメント超伝導体層、および、少なく人も一つの厚い安定材層からなる、厚く線条の安定材を有するマルチフィラメント高温超伝導体が開示される。さらに、超伝導テープを組込んだ構成要素及びこれを製造する方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、高温超伝導体(HTS)に関し、より詳細には、厚い線条安定材を有するマルチフィラメント耐AC超伝導体を形成するための新規な方法、およびその方法を使用して製造された物品に関する。
【背景技術】
【0002】
(連邦出資研究開発に関する記述)
本発明は、契約番号FA865004−C−2476の、米国空軍研究所(United States Air Force Research Laboratory)との契約の成果である。
【0003】
米国におけるエネルギーコストと最終使用消費は、過去数年にわたって劇的に上昇している。電気、これは米国における最終使用エネルギー消費のほぼ半分を占めるものであるが、化石燃料の価格に大きく依存している。上昇する需要とコストに伴って、より効率的かつコスト効果的な電力が必要となり、化石燃料への依存を削減するために、エネルギー効率の改善が必要とされている。
【0004】
超伝導体材料は、技術の世界において長い間知られており、理解されている。しかし、液体窒素の温度(77K)より高い温度で超伝導特性を有する最初の酸化物ベースの高温(高Tc)伝導体、すなわちYBaCu(YBCO)は、1986年に初めて発見された。それ以来、BiSrCaCu10+y(BSCCO)など、追加の高Tc超伝導体(HTS)材料もまた、開発されている。
【0005】
HTS材料のより最近の開発により、経済的に実現可能な超伝導体構成部品の製造の可能性がもたらされている。おそらくは、発電、伝送、分配、貯蔵への応用を含め、電力産業で使用するための材料の開発が最も著しい。
【0006】
具体的には、より効率的な電力システムは、より効率的なワイヤ技術に依存する。従って、HTS材料の開発および使用は、新しいワイヤ技術の開発をもたらした。HTSワイヤは、同じ物理的寸法の従来の銅およびアルミニウム伝導体より著しく多い電流を搬送することができ、サイズ、重量、効率の大きな利益をもたらす。電力産業におけるHTS超伝導体は、従来の技術に勝る電力処理能力(power handling capacity)の1桁から2桁の増大、電力機器のサイズ(すなわち、フットプリント)の著しい削減、環境への影響の低減、より大きな安全、および容量の増大を含む。
【0007】
したがって、HTS技術は、コストを下げ、電力システムの容量および信頼性を高めることができる。HTSワイヤにおける開発は、電力グリッドの性能を、それらの環境上のフットプリントを低減しながら改善するための強力なツールを提供することになる。
【0008】
しかしながら、HTS超伝導体の商品化には、多数の挑戦課題が存在する。具体的には、1つの障害としては、様々な電力構成部品を形成するために使用することができる商業的に実現可能なHTSテープの作製があった。「第1世代」のHTSテープには、典型的には貴金属(たとえば、銀)のマトリクス内に埋め込まれた、上述のBSCCO高Tc超伝導体の使用が含まれていた。しかし、材料と製造コスト面から、そのようなテープは、延伸された長さのニーズに合う商業的に実現可能な製品の好例にはならない。
【0009】



つい最近、「第2世代」HTSテープが優れた商業的実行可能性を有することが示された。これらのテープは、一般的には層状構造からなり、典型的には機械的な支持を可能にする可撓性基板と、基板を覆う少なくとも1つのバッファ層と、バッファ膜を覆うHTS層と、HTS層を覆う、典型的には非貴金属で形成された少なくとも1つの安定材層とで構成される。一般に、複数の安定材層が使用され、敏感なHTS層を非貴金属安定材層と反応しないように絶縁するために、キャップ層、典型的には貴金属層が、HTSテープの側面を含めた全体に沿って付着される。
【0010】
そのような第2世代HTSテープのひとつは、YBCO被覆伝導体技術を使用する。しかし、この被覆伝導体のアーキテクチャは、モータ、発電機、変圧器など、ACへの応用に最大限に利用されていない。具体的には、HTSテープの幅と厚さは寸法比が高く、そのため、HTS被覆伝導体は、非常に高いヒステリシス損失を示す。従来技術は、超伝導層が、非超伝導の抵抗障壁によって分離された多数の平行超伝導ストライプに分割された場合、磁化損失を低減できることを開示している。したがって、ACヒステリシス損失を最小限に抑えるために、テープのHTS層を、長くて薄い直線の、糸状のストライプまたは線条(線紋)に小分割することが望ましい。
【0011】
これらのマルチフィラメント伝導体は、ヒステリシス損失を大きく低減することが示されているが、線条第2世代テープの十分な商品化の前には、多数の工学的および製造上の挑戦課題が残されている。被覆伝導体内の磁化損失を著しく低減することは、変圧器、発電機、モータなど、AC電力への応用においてそれらを使用するための前提条件である。また、どんな修正も被覆伝導体を製造する現行の技法と適合することが重要であり、HTSテープ内の磁束および電流の分布を制御することが不可欠である。
【0012】
今までのところ、ヒステリシス損失を低減するように線条HTS層をも組み込む厚い安定材層でカプセル化されたHTSワイヤを作製するための方法は、存在しない。図1Aに示されているように、従来、HTSテープは、最初に可撓性基板(12)を付着することによって作製される。次に、少なくとも1つのバッファ層(14)が基板上に付着され、その後に、バッファ層を覆うHTS層(18)が続く。次いで、典型的にはAgなど貴金属で形成された薄い保護キャップ層(13)が、HTS層上に付着される。最後に、典型的にはCuまたは他の非貴金属で形成された安定材層(19)が、貴金属キャップ層上に付着される。より厚く、より強い(robust)安定材層の存在は有益である。というのは、過電流保護およびクエンチ安定性が得られ、最終的な非伝導体層が設けられる後続のステップで(単にAgの薄い層だけの場合よりも)HTSテープに対する、よりよい保護が得られるからである。
【0013】
この点で、従来の方法では、所望のフィラメントパターンを安定材層上に転写するためにフォトリソグラフィまたは他のパターン転写技法の使用が必要となり、その後に、ウェットエッチングまたはレーザアブレーション技法を使用し、安定材層およびHTS層内に所望の線条を形成することが続く。図1B〜1Cに示されているように、この線条技法は、薄いキャップ層しか存在しないときマルチフィラメントHTSワイヤを生み出すために使用されてきた。しかし、適切な過電流の電流処理能力およびクエンチ安定性をもたらすためには、薄い貴金属キャップ層と厚い非貴金属安定材層を共に使用し、双方によってHTSワイヤを完全にカプセル化することが望ましい。このようにして、HTSワイヤのアーキテクチャは、実際のACへの使用に向けてより効果的になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、安定材層の厚さは、概して約1〜1000ミクロンの範囲内、最も典型的には約10ミクロンから約400ミクロンの範囲内である。公知の化学エッチング技法を使用して、厚い安定材層を通って線条を形成することは、途方もなく労力を要するものであり、その結果、厚い安定材層を有するマルチフィラメントHTSテープの作製は、依然として可能でない。具体的には、薄いキャップ層に加えて厚い安定材層を通ってエッチングすると、HTS層に達する前に、特定のエッチング剤と、はるかに長い時間接触する。エッチング接触時間が長いほど、化学反応が増大し、HTS材料の劣化および超伝導特性の損失を大きくする。従って、厚い安定材層を有するマルチフィラメントHTSテープを形成するために現況の最新技術のエッチング技法を使用することは、実現可能なものとなっていない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様によれば、厚い安定材を有するマルチフィラメント耐AC超伝導体であって、互いに反対向きの対向する第1および第2の表面を有する基板と、基板の第1の対向表面を覆うバッファ層と、バッファ層を覆うマルチフィラメント超伝導体層と、マルチフィラメント超伝導体層を覆う少なくとも1つの安定材層とを備え、少なくとも1つの安定材層が、少なくとも5.0ミクロンの厚さを有する、超伝導体が提供される。
【0016】
本発明の他の態様によれば、厚い安定材を有するマルチフィラメント耐AC超伝導体を作り出すための方法であって、第1および第2の主表面を有する基板と、基板の第1の主表面上に配置された少なくとも1つのバッファ層と、バッファ層上に配置された超伝導層とを備える高温超伝導テープを用意するステップと、マルチフィラメントパターンを形成するようにパターン転写ステップを実施するステップと、少なくとも1つの安定材層を付着するステップと、マルチフィラメントパターンを除去して超伝導層の一部分を露出するステップと、超伝導層の露出した一部分をエッチングして超伝導層を通って延在する少なくとも1つの溝を作りだすステップとを含む方法が提供される。
【0017】
他の態様によれば、厚い安定材を有するマルチフィラメント耐AC超伝導体を作り出すための方法であって、第1および第2の主表面を有する基板と、基板の第1の主表面上に配置された少なくとも1つのバッファ層と、バッファ層上に配置された超伝導層とによって特徴付けられる高温超伝導テープを用意するステップと、第1の安定材層を超伝導層上に付着するステップと、パターン転写ステップを実施するステップと、第2の安定材層を付着するステップと、残留パターンを除去して第1の安定材層を露出するステップと、第1の安定材層の露出した部分および超伝導層をエッチングして超伝導層を通って延在する少なくとも1つの溝を生み出すステップとを含む方法が提供される。
【0018】
本願発明は、添付の図面を参照することにより、当業者にとってよりよく理解され、その多くの目的、特徴、利点が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】従来技術で知られている、厚い安定材を有する被覆導体の断面図である。
【図1B】従来技術で知られている、線条安定材のないマルチフィラメント超伝導体テープを作製するための連続工程を示す例示的な図である。
【図1C】従来技術で知られている、線条安定材のないマルチフィラメント超伝導体テープを作製するための連続工程を示す例示的な図である。
【図2】本発明の一実施形態による、線条安定材を有する新規なマルチフィラメント耐AC導体の断面図である。
【図3A】本発明による、線条安定材を有する新規なマルチフィラメント耐AC伝導体を作製するための連続工程を示す例示的な図である。
【図3B】本発明による、線条安定材を有する新規なマルチフィラメント耐AC伝導体を作製するための連続工程を示す例示的な図である。
【図3C】本発明による、線条安定材を有する新規なマルチフィラメント耐AC伝導体を作製するための連続工程を示す例示的な図である。
【図3D】本発明による、線条安定材を有する新規なマルチフィラメント耐AC伝導体を作製するための連続工程を示す例示的な図である。
【図3E】本発明による、線条安定材を有する新規なマルチフィラメント耐AC伝導体を作製するための連続工程を示す例示的な図である。
【図3F】本発明による、線条安定材を有する新規なマルチフィラメント耐AC伝導体を作製するための連続工程を示す例示的な図である。
【図4】超伝導テープ全体が絶縁層によってカプセル化されている、本発明の他の実施形態による、線条の厚い安定材を有する新規なマルチフィラメント耐AC伝導体の断面図である。
【図5】本発明の一実施形態による線条形成(striating)工程の図である。
【図6A】超伝導フィラメントが少なくとも1つの安定材によってカプセル化されている、本発明による他の好ましい実施形態の図である。
【図6B】超伝導フィラメントが少なくとも1つの安定材によってカプセル化されている、本発明による他の好ましい実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面における同じ符号の使用は、同様または同一の部分を示している。
【0021】
本発明は、厚い安定材層でカプセル化される線条(線紋を付された)のマルチフィラメントHTS被覆伝導体を形成するための方法、およびそこから得られる物品を対象とする。耐AC超伝導体用の線条安定材の作製における、鍵となるステップは、フォトリソグラフィまたはレーザアブレーションなどパターン転写ステップを実施し、次いで、未現像の残留フォトレジスト部分が依然としてHTSテープの表面上に残されている間に、安定材めっきステップを実施することである。安定材が付着された後に、残留フォトレジスト部分が除去(「リフトオフ」としても知られる)され、それにより、その下にあるHTSテープの表面を露出させ、最終エッチングステップおよびマルチフィラメントHTSテープの形成を容易にする。
【0022】
図2は、多層組成物を有する、本発明の一実施形態によるHTS伝導体10の断面図である。HTS伝導体10は、電流搬送能力を増大し、HTSワイヤ内のAC抵抗損失を低減するのに特に有用であると期待されている。HTS伝導体10は、約77Kおよび自己電磁界で、少なくとも約0.5MA/cm、好ましくは少なくとも約1MA/cmの臨界電流密度(Jc)をもたらすことができる。
【0023】
HTS伝導体10は、概して、基板12と、基板12を覆うバッファ層14と、HTS層18と、それに続くキャップ層13、典型的には貴金属層とを含む。本発明の特定の特徴によれば、超伝導体層18を覆うように、特にキャップ層13を覆い、キャップ層13に直接接触するように、安定材層19が組み込まれる。キャップ層13および安定材層19は、概して電気的な安定のために実装される。より具体的には、キャップ層13と安定材層19は共に、冷却ができなくなり、または臨界電流密度を超え、HTS層18が超伝導状態から変動し、抵抗性になった場合、HTS伝導体10に沿って電荷の流れを継続する上で助けとなる。
【0024】
さらに、超伝導テープをカプセル化することによって、付着した安定材層の断面積を本質的に倍加することにより、電流搬送能力がさらに改善される。好適に導電性である材料が基板12用に使用されている範囲で、図1に示されているカプセル化によって、さらなる電流搬送能力をもたらすことができる。すなわち、側方向に延びテープの側面を画定する側部は、基板それ自体に対して電気的に接続し、これにより、被覆超伝導テープの電流搬送能力が追加できる。
【0025】
本発明の他の態様によれば、HTS伝導体10はさらに線条(線紋)20を有し、その結果、HTS層18が複数のフィラメントに分割される。
【0026】
図3Aから図3Fは、本発明による、線条安定材を有するマルチフィラメント耐AC伝導体を作製するための連続工程を示す例示的な図である。この例では、YBaCuOの合成酸化物超伝導体が酸化物超伝導体として使用される。
【0027】
最初に、図3Aに示されているように、HTSテープ11が形成される。HTSテープ11は、基板12、キャップ層13、HTS層18、バッファ層14を含む。本明細書ではこの予備的なステップについて詳述しているが、これに限定するものではなく、当技術分野で一般的に知られているHTSテープ11作成の任意の方法を使用することができることを理解されたい。さらに、本発明は、本明細書で述べられているHTSテープ11の特定の実施形態に限定されない。
【0028】
基板12は、HTS伝導体10を支持するものであり、概して金属または多結晶セラミックである。金属の場合、基板12は、典型的には、Ni基金属合金など、少なくとも2つの金属元素からなる合金である。基板材料は、超伝導物品の所期の使用に従って変わることになり、本発明にとって決定的なものではない。基板12は、リールからリールへの並進 (reel-to-reel translation) など、任意の好適な並進工程を使用して配置することができる。基板の厚さもまた、使用目的によって変わることになる。
【0029】
基板12は、典型的には、高い寸法比を有するテープ状に構成されている。本明細書では、「寸法比 (dimension rate)」という用語は、物品の最も長い寸法(長さ)の、物品の次に長い寸法(幅)に対する比を示すために使用される。「テープ(tape)」または「テープ状の/に(tape-like)」という用語は、約10以上の寸法比を有する物品を指す。典型的には、寸法比は、約10より大きく、いくつかの実施形態では、約10以上の寸法比さえも有する。
【0030】
基板12は、HTSテープの構成層を後から付着するための望ましい表面特性を有するように処理されてもよい。たとえば、表面を所望の平面度および表面粗さに、軽く研磨することができる。さらに、基板は、2軸配向されるように処理することができる。2軸配向基板を形成するための1つの工程は、当技術分野で一般的に理解されている、RABiTS(roll assisted biaxially textured substrates)として当技術分野で知られている工程である。
【0031】
バッファ層14が基板表面12上に配置される。バッファ層14は、単一の層とすることも、より一般的には、少なくとも1つの追加の膜を補うこともできる。典型的には、バッファ層は、優れた超伝導特性のための望ましい結晶方位を有するHTS層を後から形成するのに適した2軸配向膜を含む。そのような2軸配向は、当技術分野で理解されている、また参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,190,752号において定義および記載されているイオンビームアシスト溶着(IBAD)によって行うことができる。MgOがIBAD膜として選ばれる典型的な材料であり、50から500オングストローム、例えば、50から200オングストロームのオーダーとすることができる。特に示されてないが、バッファ層14はまた、当技術分野で理解されているように、基板12をエピタキシャル膜から絶縁するために、またはHTS層18とエピタキシャル膜の間の格子定数の不整合を低減するために、追加の膜を含むことができる。基板12が2軸配向表面を備える場合、バッファ層14は、一般に、バッファ層14内で2軸配向を保存するように配向基板12上でエピタキシャル成長される。
【0032】
本発明の工程は、任意の公知のHTS材料で実施することができる。本発明の実施にとって決定的ではないが、HTS層18は、一般に、HTS層18に関連する望ましいアンペア定格を得るために、約1から約30ミクロン、最も典型的には約2から約20ミクロン、好ましくは約2から約10ミクロンの範囲内の厚さを有する。典型的には、HTS層18は、液体窒素の温度、77Kを上回ると超伝導特性を示す任意の高温超伝導材料から選択され、好ましくは酸化物超伝導体である。材料の1つの部類は、REBaCu7−xであり、ここで、REは、Y等の希土類元素および関連の化合物である。そのような材料は、たとえばBiSrCaCu10+y、TiBaCaCu10+y、HgBaCaCu8+yを含むこともできる。前述のうち、一般にYBCOとも呼ばれるYBaCu7−xが有利に使用され得る。
【0033】
原則として基板上のHTSの溶着方法に制限はなく、任意の公知の一般に使用されている技法を使用することができる。そのような方法には、厚膜形成技法と薄膜形成技法の両方がある。好ましくは、高い溶着速度のためにパルスレーザ溶着(PLD)など物理気相溶着技法を使用することができ、または、より低コストでより大きな表面積の処理のために化学気相溶着技法を使用することができる。代替の方法には、同時蒸着、電子ビーム蒸着、活性化反応性蒸着を含む蒸着や、マグネトロンスパッタリング、イオンビームスパッタリング、イオンアシストスパッタリングを含むスパッタリングや、陰極アーク溶着や、有機金属化学気相溶着、プラズマ化学気相溶着、分子ビームエピタキシや、ゾル−ゲル法や、液相エピタキシなどが含まれる。
【0034】
図3Aにさらに示されているように、第1の安定材層、またはキャップ層13は、HTS層18上に付着することができる。典型的には、貴金属をキャップ層13用に使用し、安定材層19(図2に図示)とHTS層18の間の望ましくない相互作用を防止する。典型的な貴金属には、金、銀、プラチナ、パラジウムが含まれる。より典型的には、そのコストと一般に入手しやすいことにより、銀が使用される。キャップ層13はコスト面からは薄いことが望ましいが、安定材層19からHTS層18への成分の望ましくない拡散を防止するのに十分厚いことが好ましい。キャップ層13の典型的な厚さは、約0.1から約10.0ミクロン、より具体的には約1.5から約3.0ミクロン内である。物理気相溶着およびマグネトロンスパッタリング法を含めて、様々な技法を、キャップ層13の溶着に使用することができる。
【0035】
図2および図3Aにさらに示されているように、一般に、HTSテープがキャップ層13によって完全にカプセル化されるように、キャップ層13をHTSテープ11の全体に沿って、特にHTSテープの側面に沿って付着することが望ましい。これは、HTS層18を、(下記で述べるように)銅またはアルミニウムなど非貴金属とすることができる安定材19の側部から絶縁するために好ましい。従って、本発明によれば、キャップ層13は、基板の2つの対向する主表面のうちの一方、または両主表面を覆うことも、基板、バッファ層、超伝導体層を完全にカプセル化することもできる。
【0036】
次に、図3B〜3Cに示されているように、本発明には、パターン転写ステップが含まれている。HTS材料をパターニングする実際の工程は当技術分野で周知であり、したがってあまり詳細に述べない。本明細書で開示されている特定の例では、標準的なフォトリソグラフィ技法に言及しているが、設計されたパターンをHTSテープ11のキャップ層13の表面に転写するために使用される工程に特定の制限はない。本発明に合わせて、図3Bの転写ステップは、レーザアブレーション、インプリントリソグラフィ、直接インク描画(direct ink writing)、スクリーン印刷など、他の好適な、公知の技法を使用して実施することができる。好ましい実施形態では、フォトリソグラフィ技法が使用される。フォトリソグラフィが使用される範囲では、任意の好適な感光性ポリマー材料を使用することができる。本発明にとって重大なことは、図3B〜3Cに示されているパターン転写ステップが、安定材溶着ステップ(図3D)およびリフトオフステップ(図3E)のどちらよりも先に実施されることである。
【0037】
図3Bに示されているように、フォトレジスト膜が、最初にHTSテープ11の主表面に付着され、HTS層18を覆う。フォトレジストポリマー、プラスチック薄膜などを付与するために、フォトレジスト膜を、スピンコーティング、スプレーコーティング、またはホットローララミネーション(hot−roller lamination)などの任意の好都合なコーティング技法を使用して付着することができ、それによりHTSテープ11上にマスク層22を形成する。被覆されるマスク層は、本明細書で詳細に述べられている、キャップ層13およびHTS層18の後続のエッチング中に使用されることになるウェットエッチング薬品と適合しなければならない。たとえば、実施例1で述べられているように、アルカリベースの溶液を使用して銀のキャップ層をエッチングしようとする場合には、フォトレジストポリマーは、マスク層として使用すべきでない。
【0038】
図3Cに転じると、所望のフィラメントパターンがキャップ層13の表面に転写されるように、適切なフォトマスクが使用される。より具体的には、適切なフォトマスクがフォトレジスト上に載置されて、所望のマルチフィラメントHTSテープを形成するためにエッチングされることになるキャップ層13(およびHTS層18)の選択された部分をマスクする。フォトレジスト層22のマスクされていない部分が、次いで、現像され、剥ぎ取られる。フォトレジスト層22の、マスクされていた、したがって除去されなかった部分は、HTSテープ11の表面上で残留部分22aを形成する。これらの残留フォトレジスト部分22aがマスクする領域において、これより下にあるキャップ層13およびHTS層18内に線条が求められ、本明細書で述べられているように、この線条は後でエッチング工程を使用して形成されることになる。
【0039】
本明細書でより十分に述べられているように、また本発明の新規な態様によれば、後続のエッチングステップ中には、キャップ層13およびHTS層18だけがエッチングされ、安定材層19はエッチングされない。そのため、残留部分22aの幅は、もしHTS層18内に所望の線条を形成するために安定材層にエッチングをかけることが必要とされることになる場合があるとしても、その場合より広くすることができる。具体的には、本発明の好ましい実施形態では、残留部分22aの幅は、概して5〜100ミクロンの範囲内である。より広い残留部分22aを作ることができることから、ドライフィルムレジストまたはプラスチック膜など、より好ましいパターン転写工程を使用することができる。また、より広いスペースにより、本明細書で述べられている後続のステップ中に確実なウェットエッチング技法を可能にできる。
【0040】
次に、図3Dに示されているように、二次安定材層19が付着される。本発明によれば、電気めっきなど電気化学溶着技法を使用し、HTSテープ11を適切な二次安定材で完全に被覆およびカプセル化し、キャップ層13の露出域上に安定材層19を形成する。残留フォトレジスト部分22aによってマスクされている、キャップ層13上の領域は、二次安定材材料がないままとなる。
【0041】
二次安定材層内で適切な電流搬送能力をもたらすために、典型的には、安定材層19は、約1から約1,000ミクロンの範囲内、最も典型的には、約10ミクロンから約400ミクロンの範囲内、たとえば、約10から約200ミクロンなどの範囲内の厚さを有する。特定の実施形態は、約20ミクロンから約50ミクロンの範囲内の公称厚さを有していた。
【0042】
図1〜3に示されている好ましい実施形態では、超伝導テープ全体が安定材層19でカプセル化されているので、その結果、安定材層19は、超伝導テープの対向する主表面ならびに超伝導テープの側面上に設けられている。この特定の構造は、さらに、低温装置故障、超伝導クエンチなどの場合に、HTS層18を保護する。電気めっき技法の使用により、1つのステップで、HTSテープ11を安定材層19で完全にカプセル化することが可能になる。しかし、本明細書で述べられている発明は、HTSテープ11を安定材でカプセル化する使用に限定されず、安定材層19が、HTS層18を覆う1つの主表面上だけに設けられる使用にも適用することができる。
【0043】
この実施形態の特定の特徴によれば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第2006/0079403号(通し番号11/130,349)に規定および記載されている電気めっき技法が安定材層19を形成するために使用される。この技法によれば、キャップ層13の露出域は導電性であるため、電気めっきは、高い溶着速度、典型的には1分当たり約1ミクロン以上の速度で実施され、超伝導テープ上に厚い安定材層19を速やかに作り上げることができる。より具体的には、キャップ層13は、キャップ層上に銅または他の金属を溶着するためのシード層として機能する。
【0044】
前述では概して銅に言及しているが、その他の金属、たとえば、アルミニウム、銀、金、および他の熱伝導性および導電性の金属もまた、安定材層19を形成するための二次安定材として使用することができることに留意されたい。しかし、一般に、超伝導テープを形成するための材料コスト全体を削減するために、非貴金属を使用することが望ましい。
【0045】
本明細書で開示されている特定の例では、標準的な電気めっき技法に言及しているが、図3Dに示されているステップ中に使用される電気化学溶着法に特定の制限はない。無電界めっき、金属スプレー、および真空メタライゼーションなど、代替の電気化学溶着法を、安定材層19を付着するために使用することができる。本発明によれば、安定材層19は、基板の2つの対向する主表面のうちの一方、または両主表面を覆うこと、あるいは、基板、バッファ層、超伝導体層を完全にカプセル化することもできる。
【0046】
図3Eを参照すると、一旦安定材層19が付着した後、本明細書で開示されている方法は、当技術分野で知られている技法を使用して、残留フォトレジスト部分22aを取り除くために提供される。たとえば、残留フォトレジスト部分は、アクリルポリマーベースのフォトレジストを除去するように特に配合された酢酸ベースのリムーバ、または他の好適な有機溶剤など、フォトレジストリムーバで洗い落とすことができる。図3Eに示されているように、残留フォトレジスト部分22aが除去されると溝20aが形成され、それにより、下にあるキャップ層13が、線条パターンが求められる領域内に露出する。
【0047】
図3Fは、厚い安定材層を有するマルチフィラメントHTS伝導体が得られる最終ステップを示す。化学エッチングが、キャップ層および超伝導層内で所望の設計を構成するための1つの可能な方法である。
【0048】
このステップでは、キャップ層13の一部分が溝20aを介して露出する。キャップ層13の露出した部分が、まず最初に、当技術分野で公知の化学エッチング技法を使用して除去される。たとえば、ヨウ化カリウム/ヨウ素混合物を用いたスプレーエッチングまたはディップエッチングを使用することができる。図3Fにさらに示されているように、ここで露出した下にあるHTS層18が、次いで、溝20bが形成されるように、リン酸またはクエン酸を使用するウェットエッチングなど当技術分野の公知のエッチング技法を使用して除去される。マルチフィラメントHTS層は、レーザアブレーションなど、他のエッチング技法によって作り出すこともできる。好ましい実施形態では、実施例1で後述するように、圧力スプレーエッチング(pressure spray etching)および/またはディープトレンチ洗浄を使用し、HTS材料のオーバーエッチングを最小限に抑える。
【0049】
溝または線条がキャップ層13およびHTS層18を介して延在し、その結果、所望のマルチフィラメントパターンが生み出される。使用される技法の如何にかかわらず、好ましい実施形態では、エッチング工程によりキャップ層13およびHTS層18の不要部分が非常に短い時間(典型的には、キャップ層について30秒、HTS層について60秒)で除去され、溝20bが形成される。
【0050】
好ましい実施形態では、安定材層19およびキャップ層13を介して延在する溝20bの部分は、互いに実質的に垂直かつ平行の側壁を有する。この特定のアーキテクチャは、溝20aが安定材溶着の前に形成され、如何なるエッチング工程をも必要としないため、本明細書で開示されている本発明に従って可能である。ひとたび溝20aが形成されれば、キャップ層13を除去するためのエッチング工程中に、より短い接触時間しか必要とされない。以前のエッチング方法によると、20ミクロン厚の安定材およびキャップ層だとすると、典型的には、エッチング剤との接触は約40分から60分持続することになる。この長いエッチング時間に化学反応は増大し、超伝導特性の損失を引き起こす。しかし、溝20aを形成することにより、露出したキャップ層およびHTS層は、安定材層が定位置にあった場合よりはるかに高い速度で除去されることになる。したがって、溝20bがはるかに短い時間で生み出されることになり、側壁は、互いに実質的に垂直かつ平行になる。
【0051】
図4に示されているように、本発明の他の態様によれば、マルチフィラメント導体10が、所望の超伝導装置(デバイス)として使用されるために次の段階に渡される前に、絶縁体層30をマルチフィラメント導体10上に付着することができる。本発明は広範囲な使用、適用、特に伝送ライン、モータ、発電機、または高磁界の磁気操作に使用できる高温超伝導ワイヤまたはテープに有用である。
【0052】
本発明の一実施形態による、上述の新規な線条形成工程を含む個々のステップの流れ図が、図5に示されている。
【0053】
上記の特定の実施形態において、パターン転写工程が、キャップ層13を付着した後で形成されると述べられているが、上述のステップは、最初にキャップ層13を付着することを省略することができ、その結果、フォトリソグラフィまたは他のパターン転写工程が、線条が求められる領域の上のHTS層18上に直接フォトレジスト部分を形成するために使用されることになることを、当業者なら容易に理解するであろう。次いで、パターン転写ステップの後に、少なくとも1つの安定材層の溶着が続くことになる。それに続くリフトオフステップおよびエッチングステップは、上述したものと同じである。
【0054】
図6Aおよび図6Bは本発明による代替の好ましい実施形態を示し、ここでは、個々のHTSフィラメントのそれぞれが少なくとも1つの安定材によって完全にカプセル化される。
【0055】
図示されていないさらに他の代替の実施形態では、HTS伝導体が両面(dual−sided)構造を有し、その結果、バッファ層が基板12の両側に付着され、次いで超伝導材料が、両バッファ層の両側に付着される。次いで、HTS材料をカプセル化するために、キャップ層が両HTS層上に付着される。フォトリソグラフィまたは他のパターン転写工程を使用し、線条が求められる領域の上に残留フォトレジスト部分を形成し、その後に、超伝導物品をカプセル化するための第2の安定材層の溶着が続く。残りのリフトオフステップおよびエッチングステップは、上述したものと同じである。
【0056】
HTS伝導体10は、電力ケーブル、電力変圧器、発電機、電力グリッドなど、商業的電力構成部品内に組み込むことができることを、当業者なら容易に理解するであろう。これらの追加の実施形態は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第2006/0079403号(通し番号11/130,349)でより詳細に述べられている。
【0057】
本明細書では、本発明の特定の態様について詳細に述べているが、当業者ならそれらに修正を加えることができ、それはなお本特許請求の範囲内にあることは十分に理解されることである。本発明は、本明細書で開示されている特定の実施形態に限定されるものでは決してない。
【実施例】
【0058】
本明細書で述べられている実施例および実施形態は、例示のためのものにすぎないこと、またそれらを参照して様々な修正または変更が当業者に示唆され、それは本願の精神および範囲内に含まれることを理解されたい。本発明は、その精神または本質的な属性から逸脱することなしに他の特定の形態をとることができる。
【0059】
以下のサンプルは、上述の技法を使用して作成された。
【実施例1】
【0060】
上述の新規な線条技法を使用してサンプルが作成された。具体的には、50ミクロンの厚さを有する4mm幅の基板を使用して、サンプルが用意された。これらの特定のサンプルにおいて、使用された基板は、ニッケル基合金(ハステロイC276)であった。アルミナ、イットリア、MgO、およびLaMnOからなるバッファ層スタックが、合計160nmの厚さに付着された。次に、MOCVD(有機金属化学気相溶着)工程を実施し、1ミクロン厚のYBCO層を形成した。次に、サンプルを、次いで銀のマグネトロンスパッタリングにかけ、3ミクロン厚のキャップ層を形成した。次に、公知のフォトリソグラフィ技法、すなわち広帯域UV露光およびフォトレジスト現像を使用し、所望の線条パターンを転写することができるように、1層のドライフィルムフォトレジストが被覆された。これらのサンプルは、銅−硫酸溶液内に配置され、アノードを銅板として、キャップ層がカソードを形成するようにバイアスされた。電気めっきを実施し、約20ミクロンの公称厚さを有する銅層を形成した。この銅層は、厚い安定材として機能する。残りのフォトレジストは、フォトレジストリムーバで洗い落とされた。次に、サンプルは、銅によって覆われていない部分において銀エッチングにかけられた。ヨウ化カリウム/ヨウ素溶液を用いたスプレーエッチングまたはディップエッチングを使用することができる。銀エッチングの後で、露出し下にあるHTS層が、次に、0.2Mクエン酸などエッチャントを使用して、厚い銅安定材、銀層、およびHTS層を介して溝を形成するように除去された。最後に、サンプルが、非電導性の絶縁材料で被覆された。
【実施例2】
【0061】
上述の新規な線条技法を使用してサンプルが作成された。具体的には、50ミクロンの厚さを有する4mm幅の基板を使用して、サンプルが用意された。これらの特定のサンプルにおいて、使用された基板は、ニッケル基合金(ハステロイC276)であった。アルミナ、イットリア、MgO、およびLaMnOからなるバッファ層スタックが、合計160nmの厚さに付着された。次に、MOCVD(有機金属化学気相溶着)工程を実施し、1ミクロン厚のYBCO層を形成した。次に、サンプルを、銀のマグネトロンスパッタリングにかけ、3ミクロン厚のキャップ層を形成した。次に、公知のレーザアブレーション技法、すなわち308nmまたは248nmエキシマレーザを使用するものを使用し、所望の線条パターンを単一のステップで転写することができるように、ポリイミド膜が積層された。これらのサンプルは、銅−硫酸溶液内に配置され、アノードを銅板として、キャップ層がカソードを形成するようにバイアスされた。電気めっきを実施し、約20ミクロンの公称厚さを有する銅層を形成した。この銅層は、厚い安定材として機能する。ポリイミド膜のアブレーションされていない帯が剥ぎ取られた。次に、サンプルは、銅によって覆われていない部分が銀エッチングにかけられた。アルカリベースの溶液(すなわち、20体積%のH+20体積%のNHOH+60体積%の脱イオン水)を用いたスプレーエッチングまたはディップエッチングを使用することができる。銀エッチングの後で、露出し下にあるHTS層が、0.1Mリン酸溶液などエッチャントを使用して、厚い銅安定材、銀層、およびHTS層を介して溝を形成するように除去された。最後に、サンプルが、非伝導性の絶縁材料で被覆された。
【実施例3】
【0062】
上述の新規な線条技法を使用してサンプルが作成された。具体的には、50ミクロンの厚さを有する4mm幅の基板を使用して、サンプルが用意された。これらの特定のサンプルにおいて、使用された基板は、ニッケル基合金(ハステロイC276)であった。アルミナ、イットリア、MgO、およびLaMnOからなるバッファ層スタックが、合計160nmの厚さに付着された。次に、MOCVD(有機金属化学気相溶着)工程を実施し、1ミクロン厚のYBCO層を形成した。次に、公知のフォトリソグラフィ技法、すなわち広帯域UV露光およびフォトレジスト現像を使用し、所望の線条パターンを転写することができるように、ドライフィルムフォトレジストの30ミクロン厚の層が被覆された。次いで、サンプルを物理気相溶着工程にかけ、銅など、1ミクロン厚のキャップ層を被覆した。金属蒸着など、この溶着工程では、サンプル上に残るフォトレジストと適合するように、温度が制御される。次に、これらのサンプルは、銅−硫酸溶液内に配置され、アノードを銅板として、キャップ層がカソードを形成するようにバイアスされた。電気めっきを実施し、約20ミクロンの公称厚さを有する銅層を形成した。この銅層は、厚い安定材として機能する。次いで、残りのフォトレジスト帯(30ミクロン厚)が、フォトレジストリムーバによってエッチング除去された。このエッチングステップ中に、銅の第1および第2の層がリフトオフされる。このようにして、所望の領域内でYBCOを露出するようにトレンチまたは溝が形成され、次いでこのYBCOを、0.2Mクエン酸などエッチャントを使用して除去することができた。最後に、サンプルは、HTSフィラメントを絶縁するために溝内で、非導電性の絶縁材料で被覆された。
【0063】
本明細書で述べられている実施例および実施形態は、例示のためのものにすぎないこと、またこれらを考慮した様々な修正または変更が、本特許請求の範囲から逸脱することなしに当業者に示唆されることになることを理解されたい。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に対向する第1及び第2対向面を有する基板と、
前記基板の第1対向面を覆うバッファ層と、
前記バッファ層を覆うマルチフィラメント超伝導体層と、
前記マルチフィラメント超伝導体層を覆う少なくとも一つの安定材層であって、前記一つの安定材層が少なくとも5.0ミクロンの厚みを有する層とからなることを特徴とする高温被覆超伝導体物品。
【請求項2】
前記マルチフィラメント超伝導体層が、約77K以上の臨界温度を有する高温超伝導体材からなることを特徴とする請求項1記載の超伝導体物品。
【請求項3】
前記マルチフィラメント超伝導体層が、REBaCu7−xからなり、ここで、REは希土類元素であることを特徴とする請求項1記載の超伝導体物品。
【請求項4】
前記マルチフィラメント超伝導体層がYBCOであることを特徴とする請求項1記載の超伝導体物品。
【請求項5】
前記バッファ層が2軸結晶方位を有する膜からなり、当該膜は、膜の平面(in-plane) 及び非平面(out-of-plane)の両方に略整列した結晶を有することを特徴とする請求項1記載の超伝導体物品。
【請求項6】
前記基板が、10以上の寸法比を有することを特徴とする請求項1記載の超伝導体物品。
【請求項7】
さらに、非導電性絶縁層を有する請求項1記載の超伝導体物品。
【請求項8】
前記少なくとも一つも安定材層が延びて前記マルチフィラメント超伝導体層をカプセル化する第1および第2側面を画定する請求項1記載の超電導体物品。
【請求項9】
前記少なくとも一つも安定材層が第1及び第2安定材層からなりそれぞれが超伝導体層と基板の第2対向面を覆って前記超伝導体物品をカプセル化していることを特徴とする請求項1記載の超伝導体物品。
【請求項10】
前記第1安定材層が約0.1ミクロンから約10.0ミクロン、より具体的には約1.5ミクロンから約3.0ミクロンの範囲内の厚みを有することを特徴とする特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記第1安定材層が貴金属からなることを特徴とする請求項10記載の超伝導体物品。
【請求項12】
前記貴金属が銀であることを特徴とする請求項11記載の超伝導体物品。
【請求項13】
前記第2安定材層が非貴金属からなることを特徴とする請求項9記載の超伝導体物品。
【請求項14】
前記非貴金属が銅、アルミニウム、これらの合金からなるグループから選択される材料であることを特徴とする請求項13記載の超伝導体物品。
【請求項15】
前記非貴金属が銅であることを特徴とする請求項14記載の超伝導体物品。
【請求項16】
前記第1及び第2安定材層が伸びて、超伝導テープの第1及び第2の側面を画定するとともに超伝導テープをカプセル化することを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項17】
前記第2安定材層が電気メッキされていることを特徴とする請求項9記載の超伝導体物品。
【請求項18】
前記超伝導物品が、両面構造からなり、前記基板が相互に対向する第1及び第2表面を有し、前記バッファ層がそれぞれ基板の第1及び第2表面を覆う第1及び第2バッファ層を有し、前記マルチフィラメント超伝導体層がそれぞれ第1及び第2バッファ層を覆う第1及び第2マルチフィラメント超伝導体層を有し、第1及び第2安定材層がそれぞれ第1及び第2マルチフィラメント超伝導体層を覆って、前記超伝動物品をカプセル化しており、前記第2安定材層が少なくとも5ミクロンの厚みを有していることを特徴とする請求項9記載の超伝導物品。
【請求項19】
a.第1及び第2の主表面を有する基板、前記基板の第1主表面上に設けられた少なくとも一つのバッファ層、及び、前記バッファ層に設けられた超伝導層からなる高温超伝導テープを用意する段階、
b.マルチフィラメントパターンを形成するためにパターン転写工程を行う段階、
c.少なくとも一つの安定材層を付着する段階、
d.前記マルチフィラメントパターンを取り除いて超伝導層の一部を露出する段階、
e.前記超伝導層の露出した部分をエッチングして超伝導層を通って延びる少なくとも一つの溝をつくる段階、
からなる高温被覆超伝導体の作製方法。
【請求項20】
前記少なくとも一つの安定材層が少なくとも5.0ミクロンの厚みを有することを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも一つの安定材層が延伸して、超伝導テープの第1及び第2の側面を画定するとともに超伝導テープをカプセル化することを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項22】
前記超伝導層が約77K以上の臨界温度Tを有する高温超伝導材からなることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記超伝導層がREBaCu7−xからなり、ここで、REは希土類元素であることを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項24】
前記超伝導層がYBCOであることを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項25】
前記バッファ層が2軸結晶方位を有する膜からなり、当該膜は、膜の平面(in-plane) 及び非平面(out-of-plane)の両方に略整列した結晶を有することを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項26】
さらに、前記第2安定材層上であって、超伝導層を介して延びる前記少なくとも一つの溝に、非導電性絶縁材を付着する段階を含む請求項19記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも一つの安定材層が、それぞれ超伝導体層及び基板の第2対向面覆う第1及び第2安定材層を有し、超伝導物品をカプセル化していることを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項28】
前記第1安定材層が貴金属からなることを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記貴金属が銀であることを特徴とする請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記第1安定材層が約0.1ミクロンから約10.0ミクロン、より具体的には、約1.5ミクロンから3.0ミクロンの範囲内の厚みを有することを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項31】
前記第2安定材層が非貴金属からなることを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項32】
前記非貴金属が銅、アルミニウム、これらの合金からなるグループから選択される材料であることを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記非貴金属が銅であることを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項34】
前記第2安定材層が、約1ミクロンから約1,000ミクロンの範囲内、もっとも典型的には約5ミクロンから約400ミクロンの範囲内の厚みを有することを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項35】
前記第2安定材層が電気メッキ技術を使用して付着されていることを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項36】
前記パターン転写行程がフォトリソグラフィであることを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項37】
前記パターン転写ステップが
フォトレジスト層を付着するステップ、及び
前記フォトレジスト層の選択した部分を取り除いてその下にある超伝導層を露出させ、少なくとも一部のフォトレジスト部分を保持してその下にある超伝導体層をマスクするステップからなることを特徴とする請求項36記載の方法。
【請求項38】
さらに、前記高温被覆超伝導体からなる、キロメーター長さのテープ、ケーブル又はコイルを作成する段階を含む請求項19記載の方法。
【請求項39】
さらに、少なくとも電力ケーブル、電力伝送、電力発電及び電力グリッドの一つにおいて、前記高温被覆超伝導体を使用する段階からなる請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記電力ケーブルが、冷却流動体の通路用導管からなり、前記高温被覆超伝導体が導管に近接して設けられていることを特徴とする請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記電力ケーブルが、電力移送ケーブル及び電力配給ケーブルの少なくとも一つからなることを特徴とする請求項39記載の方法。
【請求項42】
a.第1及び第2の主表面を有する基板、前記基板の第1主表面上に設けられた少なくとも一つのバッファ層、及び、前記バッファ層上に設けられた超伝導層によって特徴付けられる高温超伝導テープを用意する段階、
b.前記超伝導層上に第1安定材層を付着する段階、
c.パターン転写ステップを行う段階、
d.第2安定材層を付着する段階、
e.残留パターンを取り除いて第1安定材層を露出させる段階、及び、
f.第1安定材層の露出部分と超伝導層をエッチングして、前記超伝導層を通って延在する少なくとも一つの溝を作りだす段階
からなる高温被覆超伝導体の作製方法。
【請求項43】
少なくとも5.0ミクロンの厚みの安定材層を有する耐ACマルチフィラメント超伝導体テープからなる高温被覆超伝導体物品。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図3D】
image rotate

【図3E】
image rotate

【図3F】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate


【公表番号】特表2009−544144(P2009−544144A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−520921(P2009−520921)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/073478
【国際公開番号】WO2008/079443
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(505448796)スーパーパワー インコーポレイテッド (18)
【Fターム(参考)】