線維芽細胞の細胞識別方法
【課題】本発明は複数のレクチンとの反応性の違いをもとに繊維芽細胞を識別する方法およびそれに用いる識別用組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】繊維芽細胞の細胞識別法は、レクチンプレート、検出方法、解析方法を有する。レクチンプレートは少なくとも1種類以上のレクチンを基板表面に固相化している。検出法はプレートに結合した細胞の量に対応して変化するシグナルを測定することにより、レクチンと細胞との反応を数値化する。細胞種の解析方法は上記の方法で検出した数値データをクラスタ解析法で統計処理し、得られたデンドログラムによる区分による。
【解決手段】繊維芽細胞の細胞識別法は、レクチンプレート、検出方法、解析方法を有する。レクチンプレートは少なくとも1種類以上のレクチンを基板表面に固相化している。検出法はプレートに結合した細胞の量に対応して変化するシグナルを測定することにより、レクチンと細胞との反応を数値化する。細胞種の解析方法は上記の方法で検出した数値データをクラスタ解析法で統計処理し、得られたデンドログラムによる区分による。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線維芽細胞を判別・識別する方法およびそれに用いる識別用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
線維芽細胞(fibroblasts)は真皮内での機能を担う細胞であり、この細胞への刺激を調べることで細胞の分裂寿命や老化研究が行われてきた。線維芽細胞は分化能を有さないが、生体内結合組織に存在し、組織損傷の際に活発に増殖し組織修復を行う、扁平で大型の形状の細胞であり、突起をいくつか有している。膠原線維や弾性線維、細胞間質のコラーゲンやプロテオグリカンなどの基質を産生し、組織内を埋めている。損傷の修復過程で作られた膠原線維は後に収縮し、周囲組織や器官生理機能を阻害・低下させるケースがある。また胎子由来線維芽細胞は、マウスなどの胚性幹細胞(ES細胞)の培養時にフィーダー細胞として用いられている。
これらの用途のために線維芽細胞は一定度に純化され、高度に工程管理されることが求められているが、他種の細胞との混在の恐れは常に存在している。線維芽細胞を他の正常細胞や、間葉系幹細胞(再生医療で使われる分化能力を持った潜在価値の高い細胞)と明確に区分し、分離して使用することは必須である。
線維芽細胞と間葉系幹細胞は形態的に特に非常によく似ており、また、表面発現抗原も極めて類似していることが知られており、特異的な細胞表面マーカーは見つかっていない。さらにDNAチップを用いた解析でも両者を明確に判別できる状況にはないことから、現状両者の区別は困難を極めており、両者を識別する有効な方法が求められている。
【0003】
識別の困難性の解決を図る方法として間葉系幹細胞と線維芽細胞の識別のためのマーカー遺伝子診断法が報告されている(例えば特許文献1、2、3、非特許文献1、2)。これらの方法はDNAアレイを用いて細胞中の複数のmRNAの発現パターンの違いを検出し、いくつかのmRNAの発現量の差で両細胞を識別する方法であり、間葉系幹細胞と線維芽細胞の違いを数値化して示すものであるが、この方法により、従来できなかった両細胞を区別することは可能となる。一方、レクチンを使った細胞の分析法の概念は骨分化能、間葉系幹細胞について、すでに入村らによって報告されている(特許文献4)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−290189「間葉系幹細胞検出用マーカー及び該マーカーを用いた間葉系幹細胞の識別方法」
【特許文献2】特開2005−27579「分別マーカーを用いた間葉系幹細胞の識別・分離方法」
【特許文献3】特開2007−82484「間葉系幹細胞の均質性識別方法、その方法を利用して得られる均質間葉系幹細胞」
【特許文献4】特許3658394「糖たんぱく質若しくは細胞の識別、血清若しくは細胞診断、或は糖たんぱく質若しくは細胞分画のためのレクチンライブラリの使用」
【非特許文献1】フジタら、ジャーナル オブ ペリオドンタル リサーチ、42巻(2007年)283−286頁(Fujita T.et.al.J.Periodontal Res.42(2007),pp283−286.)
【非特許文献2】イシイら、バイオケミカル アンド バイオフィジカル リサーチコミュニケーションズ、332巻(2005年)297−303頁(Ishii M.et.al,Biochemical and Biophysical Research Communications 332(2005),pp297−303)
【非特許文献3】大串ら、再生医療に用いられる細胞・再生組織の評価と安全性、(2007年)209−217頁、シーエムシー出版
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の方法では、由来が異なる線維芽細胞ではマーカーとなる遺伝子(mRNA)の種類も異なることから、種々の線維芽細胞を同時に調べ、由来のわからない線維芽細胞の区別を行なう場合にはいくつもの測定を行う必要があり、簡便性に欠けることになる。また、測定工程にRT−PCR反応、DNAアレイ反応を含むことから、手間がかかることと、抽出したRNAを取り扱うための特殊な設備が必要となること、高額な機器が必要となるなど、簡便に測定するには課題が多い。
特許文献4においては、糖タンパク質のレクチンによる分別法とともに、間葉系幹細胞とそれから派生した細胞との識別に触れているが、極めて限定的な組み合わせにおいての分別法についての記載である。多くの線維芽細胞、特に全く由来の異なる線維芽細胞を他細胞と分別する方法については言及がなく、また他の多数の種類の細胞の分別が実施できる内容のものとなっていない。
本発明は、このような課題の状況に鑑みてなされたものであり、種々の線維芽細胞と間葉系幹細胞などの識別を簡便に短時間に行うことのできる細胞識別方法およびそれに使用する、識別用試薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の(1)〜(13)に関する。
(1)以下のレクチンプレート、検出方法、解析方法を有する線維芽細胞の識別法。
(イ)少なくとも1種類以上のレクチンを固相化した基板プレート。
(ロ)基板上のレクチンに結合した細胞の量に対応して変化するシグナルを測定することにより、レクチンと細胞との反応を数値化する検出法。
(ハ)上記の方法で検出した数値データを統計的にデータ処理し、得られたデータを多変量解析により区分化することを特徴とした線維芽細胞の識別方法。
(2)レクチンが天然レクチンであることを特徴とする(1)の線維芽細胞の識別方法。
(3)レクチンが人工レクチンであることを特徴とする(1)の線維芽細胞の識別方法。
【0007】
(4)統計的データ処理が、クラスタ解析であることを特徴とする(1)−(3)の線維芽細胞の識別方法。
(5)多変量解析がデンドログラムによることを特徴とする(1)−(4)の線維芽細胞の識別方法。
(6)クラスタ解析が数値変換した値を用いる、階層的クラスタ解析である(1)−(5)の線維芽細胞の識別方法。
【0008】
(7)識別できる線維芽細胞が少なくとも1種類以上の組織由来の異なる線維芽細胞である(1)−(6)の線維芽細胞の識別方法。
【0009】
(8)識別する細胞が標識されていない生きた細胞であることを特徴とする(1)−(7)の線維芽細胞の識別方法。
【0010】
(9)レクチンを固定化する基板が、プラスチック基板であることを特徴とする(1)−(8)の線維芽細胞の識別方法。
【0011】
(10)基板がマイクロプレートの形状であることを特徴とする、(1)−(9)の線維芽細胞の識別方法。
【0012】
(11)レクチンと細胞との反応性を検出する方法が、色素による細胞染色法であることを特徴とする(1)−(10)の線維芽細胞の識別方法。
【0013】
(12)色素によるシグナルを、吸光度、蛍光強度として検出することを特徴とする(11)の線維芽細胞の識別方法。
【0014】
(13)(1)−(12)による線維芽細胞の識別方法に使用するために調製された、レクチン固定化基板および試薬。
【0015】
(14)線維芽細胞を他細胞と分別するためのレクチンとして、組換え型ピーナッツレクチン(組換え型PNA)を用いることを特徴とする(1)−(12)の線維芽細胞の識別方法ならびに(13)の試薬。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
本発明の細胞識別法によれば、組織由来の異なる種々の線維芽細胞と例えば間葉系幹細胞などの細胞を、染色や標識することなく生きたままの状態で、極めて短時間に、複数のレクチンとの反応パターンの違いとして区別することができる。また、反応パターンの基となる吸光度データを階層的クラスタ解析することで、線維芽細胞と例えば間葉系幹細胞をデンドログラム上で明確に区別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明における「レクチン」とは、ある糖鎖に結合親和性を有するタンパク質を言い、糖鎖抗原を認識する各種のイムノグロブリン以外のタンパク質をいう。このようなタンパク質の給源は植物、動物、微生物(菌・ウイルス)に求めることができ、分離・抽出・精製して取得することができる(天然レクチン)他、レクチンの糖結合部位に関連する部分の少なくとも一部を遺伝子工学的手法で取得することもできる。本発明に使用するレクチンは、特に給源を限定せず、亜種のレクチンなどが共存していてもよいが、全体の品質が一定であり、十分管理されていることが望ましい。さらにレクチンそのものの保存安定性、また基板に固定化した際の保存安定性がよいことが望ましい。市販品として、ConA、PNA、ABA、VVA−B4、SNA、UEA−I、WGA、PHA−L4等を入手して使用することができる(生化学工業社等)。
【0018】
本発明における「人工レクチン」とは天然レクチンの遺伝子配列を元に、大腸菌や動物細胞、昆虫細胞、植物細胞などを用い、遺伝子工学的手法により合成されたレクチンをいい、人工的にアミノ酸配列に改変が加えられたものを含むことができる。改変は分別可能性に影響を与えるほか、安定性にも影響があるが、多数の改変体より目的に応じた好適なものを選定することができる。その選別方法としては、例えばファージ提示法などが挙げられる。使用するレクチンの分子は完全形のレクチンに限定される必要はなく、その一部分のアミノ酸配列をもつ分子でもよく、一量体のもの、多量体のもの、酵素消化により断片化されたものなど、レクチンの糖鎖認識に関連する分子構造であれば全て使用できる。
【0019】
本発明において使用するレクチンを固定化する「基板」とは、板状のスライド、溶液を保持することのできる、96穴マイクロプレート、384マイクロプレート、分割可能なプレートであり、素材はガラスなどのシリカ類、ナイロン、ポリスチレン、ポリカーボネートなどの合成樹脂(プラスチックを含む)、金属(白金、銀、銅、金、等を含む)、シリコン、雲母、及び、これらの混合物を含むものを使用することができる。操作性や価格の点では、ポリスチレンやポリカーボネートが好適であり、細胞との反応時に非特異的吸着が少ないものを適宜使用することができる。なお、基板の形態は板状に限定されるわけではなく、ほかにチップ、ビーズなどそれ以外の形態もとることができる。一度に複数のレクチン反応を行うことのできる形態であればいかなるものも使用できる。
【0020】
本発明におけるレクチンの固定化方法としては、物理吸着法、静電力を用いた方法、架橋剤を用いた方法などがあり、適宜使用することができる。固定化時の濃度としては0.01μg/mL−50mg/mLを使用することができるが、好ましくは0.1mg/mL−5mg/mLである。
【0021】
固定化後、各種の高分子性ポリマー(デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、ポリカルボキシレート等)をブロッキング剤として使用することができる。市販品として、日本油脂社のリピデュア等も好適である。これらのブロッキング剤は非特異的吸着の防止の他に、レクチン固定化基板の安定性を上げることも可能である。グリシン等のアミノ酸や、サッカロース等をブロッキング時に共存させることもできる
【0022】
本発明における数値変換としては、底を10またはeとしたLog変換、Logit変換等の対数変換、Probit変換などがあり、いずれも適用可能であるが、Log10変換の使用が簡便である。
【0023】
本発明における「デンドログラム」とは樹形図のことをいい、意味のある集団ごとに分類のため使用する。樹形図内の距離によって、ある集団と別の集団の類似性が判断される。
【0024】
本発明における「クラスタ解析」とは集団を解析する方法であり、集団のもつ多数の特性(指標)を基準として、分類するものであり、種々の計算手法(アルゴリズム)を用いて行われる。分類を階層的に行う場合、「階層的クラスタ解析」と呼び、本発明の実施例で使用するが、限定されるものではなく、種々のものを制限なく適用することが可能である。
クラスター解析のためのソフトウエアはウエブ上でも入手することができ、TIGRmeV、NIA Array Analysis、Stalib−MULTI,MULTIV,NetLib,ALN,MIXMOD,Cluster 3.0,MeV V4.0などがあり、適宜選択して使用することができる。
【0025】
本発明における「線維芽細胞」は既に上述しているが、真皮に存在する細胞であり、Fibroblasts、結合組織形成細胞とも呼ばれている細胞であり、動物固体内の殆ど全ての組織中に分散して存在する中胚葉由来の細胞で、体外培養した場合の形状は扁平ないし紡錐形をなす特徴を有している。例えば、真皮に存在する線維芽細胞では、皮膚の機能を保つ上で重要な働きを持っている。皮膚に損傷が生じた場合損傷部に遊走し、コラーゲン・エラスチン・ムコ多糖などのマトリックスを産生する。また線維芽細胞は他の細胞と細胞外のマトリックスと相互作用を行う。他細胞から放出されたFGFなどの因子で調節される。
【0026】
本発明における「間葉系幹細胞」は、組織や臓器に成長する元となる細胞であり、主に骨髄の中に存在するものをいうが、未分化な細胞で、種類の異なるさまざまな細胞に分化できる能力を持ち、かつ自己複製の能力を持つ細胞であれば、骨髄以外の由来でもよい。間葉系幹細胞は骨、軟骨、脂肪、心臓、神経、肝臓などの細胞に分化するものであり、殆どすべての組織にも分化することのできる胚性幹細胞(ES細胞)に近い能力を有している。
【0027】
本発明における細胞数のカウント方法としては、直接顕微鏡下で目視にてカウントすることができ、最も簡便な方法である。他にトリパンブルーなどの色素、サイトックスグリーンやサイトックスレッド(インビトロジェン社)等の蛍光色素で細胞を染色した後、同様にカウントすることもできる。細胞は反応後の洗浄操作以外は基本的に未処理でカウントすることができるが、洗浄後残った細胞を染色し、グルタルアルデヒド等の架橋試薬によって固定してからカウントすることもできる。さらに洗浄後、細胞数と比例する色素を抽出し、色素濃度を計測することで間接的に細胞数を算出することもできる。しかしこれらの方法に限定されるものではなく、レクチンプレートに結合した細胞の数を反映するシグナルを測定する方法であればいかなるものも採用することができる。
【0028】
本発明におけるクラスタ解析に用いる数値データは、吸光度のほか蛍光強度を直接使用することができるほか、対数変換やその他の数値変換をした値を使用することができる。プレート上の固相化レクチンと細胞が反応し、結合した細胞の数に由来する数値を加工したものであれば、いかなるものも採用することができる。
【0029】
本発明において使用する、識別のために使用する試薬とは、比較する細胞を懸濁するための溶液、反応させた細胞を洗浄する洗浄液、細胞を染めるための染色液、細胞を固定化するための溶液などであり、それぞれの目的を最もよく達成するためのpH,濃度,組成を使用することができる。とくに細胞を固定化するための試薬として、グルタルアルデヒドを使用しているが、これに限定されるものではなく、ビスマレイミドヘキサン、ビス(スルホサクシニジル)スベレートなど種々の同価性架橋基、m−マレイミドベンジル−N−ヒロドキシスクシニミドエステル、スクシニミル4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレートなどの異価性架橋基を適宜使用することができる。なお列挙した各試薬は例示であり、これらに限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、細胞識別法にかかる発明の実施の形態の例について説明する。
細胞識別法に用いるレクチンプレートは少なくとも1種類以上のレクチンを表面上に固相化したマイクロタイタープレートを用いる。表面上に種々のレクチンを固相化したマイクロタイタープレートを用いることで、一度に多種類のレクチンと細胞との反応を行なうことができる。このレクチンプレートに、細胞懸濁液を添加してレクチンと細胞を反応させ、反応しなかった細胞を洗い流す。レクチンと細胞との反応性の程度を数値化するためには、プレートに結合して残った細胞を染色し、その色素の細胞吸着量を吸光度計により測定する。
得られたレクチンと細胞との反応に由来する複数の吸光度測定値を対数変換(log10変換)しクラスタ解析を行う。クラスタ解析の結果をデンドログラムとして表すと、線維芽細胞と間葉系幹細胞はデンドログラム上の異なったクラスタに分類され、線維芽細胞と間葉系幹細胞を識別することができる。
【0031】
以上のことから、本発明を実施するための最良の形態によれば、複数のレクチンを固相化したレクチンプレートを用いてレクチンと細胞を反応させることにより、間葉系幹細胞、線維芽細胞等のそれぞれに特徴的な反応パターンを短時間に検出することができる。さらに測定値をクラスタ解析することにより、線維芽細胞等をデンドログラム上で識別することができる。また、本発明は上述の実施形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0032】
表1−3にて使用するレクチン名の略号とその製造・販売メーカー、型番および本発明の実施例でのレクチン番号をまとめた。略号は一般に用いられるレクチンの表記に従った。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
以下本発明にかかる実施例について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0037】
レクチンの反応パターンによるヒト間葉系幹細胞の識別
(細胞の調製)
正常ヒト間葉系幹細胞(MSC、Cambrex社:以下C社と略。PT−2501、ロット番号6F3400、5F0972、6F3502)はMSCGM(C社PT−3001)を用いて37℃、5%CO2存在下で培養し、約3週間、2回の継代を行って拡大した。拡大培養した細胞はトリプシン・EDTA液(C社CC−3232)ではく離し、トリプシン中和液(C社CC−5002)で酵素反応を止めた後、10%DMSOを加えた増殖培地中に懸濁し、液体窒素中に凍結保存した。
線維芽細胞として、正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF、C社CC−2511)、正常歯根膜由来線維芽細胞(HPdLF、C社CC−7049)、正常ヒト心線維芽細胞(HCF、CAI社306−05f)はそれぞれFGM−2(C社CC−3132)、SCGM(C社CC−3205)、Lung/Cardiac Fibroblast Growth Medium(CAI社516−500)で培養し、同様に10%DMSOを含む増殖培地中で凍結保存した。
その他の細胞として、正常ヒトアストロサイト(NHA、C社CC−2565)、正常ヒト骨芽細胞(NHOst、C社CC−2538)、正常ヒト膝関節軟骨細胞(NHAc−Kn、C社CC−2550)、正常ヒト頭髪毛乳頭細胞(HFDPC、CAI社602−05a)、正常ヒト皮膚角化細胞(NHEK、C社CC−2501)はそれぞれAGM(C社CC−3186)、OGM(C社CC−3207)、CGM(C社CC−3216)、PCGM(東洋紡績社TMTPGM−250)、KGM(C社CC−3111)で培養し、同様に10%DMSOを含む増殖培地中で凍結保存した。
【0038】
(レクチンプレートの作製)
マイクロタイタープレート(スミロンELISAプレートH:MS−8896F:住友ベークライト社製)に0.05M炭酸緩衝液(pH9.6)で希釈した表1−3に示す76種類のレクチン(20μg/ml)を50μl/wellずつ添加し、4℃で一晩反応させた。未反応のレクチンを除くために、1mMカルシウムおよび1mMマグネシウムを含む50mMトリス緩衝生理食塩水(pH7.6)(CM−TBS)で2回洗浄した。洗浄操作はCM−TBSをゆっくりとウエルに添加した後、プレートを逆さにしてウエル内の液を捨て、ペーパータオル上で軽く叩いて液を完全に除くことで行った。さらにプレートをブロッキングするため、3%BSA/CM−TBS(170μl/well)を添加し、室温で3時間反応させた。その後、CM−TBSで2回プレートを洗浄し、レクチンプレートとして以下の細胞との反応に供した。
【実施例2】
【0039】
(細胞の調製)
液体窒素中に凍結保存した細胞を取り出し、37℃水浴にて急速に細胞を解凍した。細胞懸濁液を50ml遠心チューブに移し、αMEM(ナカライテスク社21444−05)(4℃)で1回、50mMトリス緩衝生理食塩水(TBS)(pH7.6、4℃)で3回を洗浄した。なお、細胞の洗浄操作は細胞懸濁液に培地(4℃)あるいはTBS(4℃)をゆっくりと攪拌しながら添加した後、遠心分離装置(1000rpm,5分、4℃)で細胞を回収することで行った。また、培地で洗浄した後にトリパンブルー法で細胞懸濁液中の総細胞数と生細胞率を測定し、細胞の状態を確認した。
このようにして洗浄した細胞に1% BSA/CM−TBS(4℃)を添加して、1×106個/mLとなるように懸濁し、レクチンプレートとの反応に供した。
【0040】
(レクチンプレートと細胞との反応)
洗浄したレクチンプレートに1×106個/mlとなるように調製した線維芽細胞3種と間葉系幹細胞3種のそれぞれの細胞懸濁液を100μl/wellずつ添加した。このレクチンプレートをプレートシールで蓋をして、冷蔵庫内に置き4℃下、2時間静置して細胞とレクチンを反応させた。なお、プレート間の測定誤差を補正するために各プレートには標準反応用ウエルを設定した。標準反応は固相化したDSAにCHO−Lec2細胞を反応させた。反応終了後、プレートを逆さにしてウエル内の液を捨てた後、ペーパータオル上で軽く叩いて液を完全に除いた。さらにレクチンと反応しない細胞を除くため、ウエルの洗浄を行った。洗浄操作はCM−TBS(4℃)をゆっくりとウエルに添加した後、プレートを逆さにしてウエル内の液を捨て、ペーパータオル上で軽く叩いて液を完全に除くことで行い、この操作を3回繰り返した。
【0041】
(反応した細胞の検出)
レクチンと反応した細胞は、プレート上に結合したままプレート表面に残るので0.25%(v/v)グルタルアルデヒドPBS溶液を用いてレクチンとの反応を停止させるとともに、プレートと結合したままの細胞を固定した(室温、30分)。反応後、ウエル中のグルタルアルデヒド溶液PBSは、プレートを逆さにして捨て、各ウエルをTBSで2回洗浄した。
レクチンとの反応によりプレートに結合した細胞を検出するために、0.1%クリスタルバイオレット/25%MeOH(50μl/well)を添加し、プレート上に結合した細胞を染色した(室温、30分)。その後、余分な染色液を流水下で十分に洗い流し、ペーパータオル上でプレートを軽く叩いて液を完全に除いた。続いて10%MeOH/40%EtOH(50μl/well)をウエルに添加して、細胞内の色素を溶媒中に抽出した(室温、60分)。
溶媒中に溶出させたクリスタルバイオレットをELISA測定用プレートリーダー(大日本製薬、マルチスキャンJX)にて570nmの吸光度を測定した。
【0042】
(取得データの処理)
得られた吸光度値から各プレートに設定した標準反応との相対%値を算出し、レクチンの反応パターンをレーダーチャート図として示した(図1−6)。これによると個々のレクチンの反応性の強弱は間葉系幹細胞の3ロットで似たものとなり、線維芽細胞群とは異なっていた。
【0043】
以上の工程に要する時間は細胞懸濁液を準備してから約4時間で完了することから、レクチンによってばらつきはあるものの、レクチンの反応パターンから短時間に間葉系幹細胞と線維芽細胞を区別することができる。
【実施例3】
【0044】
(クラスタ解析による繊維芽細胞の識別)
線維芽細胞と間葉系幹細胞について、実施例2で得られた各レクチンの吸光度値をlog10変換し、その数値と用いてTIGRmeV、NIA Array Analysis、ソフトウエアを用いて階層的クラスタ解析を行った。その結果得られたデンドログラムを図12に示した。これによると線維芽細胞と間葉系幹細胞はクラスタ番号11で区別された。また、間葉系幹細胞だけに注目すると各ロットの違いで間葉系幹細胞は異なったクラスタに分かれた(クラスタ番号10、7)。なお図中□内に囲まれた番号はクラスタ番号を示す。囲みのない数字番号は、区分に使用するレクチンの種類の数を示す。
【0045】
以上のことから、本実施例によれば、レクチンプレートと細胞との反応の結果得られた吸光度値をもとに相対%値のパターンを比較し、クラスタ解析を行うことで線維芽細胞や間葉系幹細胞を識別することができた。さらに線維芽細胞および間葉系幹細胞のそれぞれのロットの違いも識別できた。
【実施例4】
【0046】
(レクチンを選抜したクラスタ解析による線維芽細胞の識別)
実施例3では線維芽細胞と間葉系幹細胞の識別を行ったが、解析に用いるレクチンの種類を絞り込んだ場合の線維芽細胞と間葉系幹細胞の識別法について、他の細胞種も含めた場合の解析を行った。
実施例2と同様に種々のヒト正常細胞のレクチンの反応パターンを本発明の細胞識別法で取得した。図7−11に示したように様々な種類のヒト正常細胞の反応パターンは線維芽細胞のパターンとは異なったものとなった。
レクチンの中から線維芽細胞と他の細胞との間で反応性の有意差が高いレクチンをNIA Array Analysisソフトウエアにて2群検定法(ANOVA)で抽出し選ばれたレクチン(rPNA)を使ってクラスタ解析を行った。クラスタ解析は吸光度値を対数変換(log10変換)し、実施例3と同様に行った。その結果、図13に示すようにクラスタ番号21において、線維芽細胞は間葉系幹細胞および種々の細胞と異なったクラスタに分類された。なお図中□内に囲まれた番号はクラスタ番号を示す。囲みのない数字番号は、区分に使用するレクチンの種類の数を示す。なおクラスタ番号21に相当するレクチンは、組換え型ピーナッツレクチン(組換え型PNA、rPNA)であった。
【0047】
以上のことから、本実施例によれば、レクチンプレートと細胞との反応の結果得られた吸光度値をもとに、レクチンの種類を選抜することでクラスタ解析により線維芽細胞を、間葉系幹細胞及び、種々の細胞と明確に識別することができた。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】 線維芽細胞とレクチン基板との反応性をパターン化したものを示す。
【図2】 線維芽細胞レクチン基板との反応性をパターン化したものを示す。
【図3】 線維芽細胞レクチン基板との反応性をパターン化したものを示す。
【図4】 間葉系幹細胞とレクチン基板との反応性をパターン化したものを示す。
【図5】 間葉系幹細胞とレクチン基板との反応性をパターン化したものを示す。
【図6】 間葉系幹細胞とレクチン基板との反応性をパターン化したものを示す。
【図7】 正常ヒトアストロサイトとレクチン基板との反応性をパターン化したものを示す。
【図8】 正常ヒト骨芽細胞とレクチン基板との反応性をパターン化したものを示す。
【図9】 正常ヒト膝関節軟骨細胞とレクチン基板との反応性をパターン化したものを示す。
【図10】 正常ヒト頭髪毛乳頭細胞とレクチン基板との反応性をパターン化したものを示す。
【図11】 正常ヒト皮膚角化細胞とレクチン基板との反応性をパターン化したものを示す。
【図12】 レクチンの反応性データに基づいた線維芽細胞と他の細胞をクラスタ解析した例を示す。
【図13】 選定したレクチンを用いて、線維芽細胞と種々の細胞をクラスタ解析した例を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、線維芽細胞を判別・識別する方法およびそれに用いる識別用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
線維芽細胞(fibroblasts)は真皮内での機能を担う細胞であり、この細胞への刺激を調べることで細胞の分裂寿命や老化研究が行われてきた。線維芽細胞は分化能を有さないが、生体内結合組織に存在し、組織損傷の際に活発に増殖し組織修復を行う、扁平で大型の形状の細胞であり、突起をいくつか有している。膠原線維や弾性線維、細胞間質のコラーゲンやプロテオグリカンなどの基質を産生し、組織内を埋めている。損傷の修復過程で作られた膠原線維は後に収縮し、周囲組織や器官生理機能を阻害・低下させるケースがある。また胎子由来線維芽細胞は、マウスなどの胚性幹細胞(ES細胞)の培養時にフィーダー細胞として用いられている。
これらの用途のために線維芽細胞は一定度に純化され、高度に工程管理されることが求められているが、他種の細胞との混在の恐れは常に存在している。線維芽細胞を他の正常細胞や、間葉系幹細胞(再生医療で使われる分化能力を持った潜在価値の高い細胞)と明確に区分し、分離して使用することは必須である。
線維芽細胞と間葉系幹細胞は形態的に特に非常によく似ており、また、表面発現抗原も極めて類似していることが知られており、特異的な細胞表面マーカーは見つかっていない。さらにDNAチップを用いた解析でも両者を明確に判別できる状況にはないことから、現状両者の区別は困難を極めており、両者を識別する有効な方法が求められている。
【0003】
識別の困難性の解決を図る方法として間葉系幹細胞と線維芽細胞の識別のためのマーカー遺伝子診断法が報告されている(例えば特許文献1、2、3、非特許文献1、2)。これらの方法はDNAアレイを用いて細胞中の複数のmRNAの発現パターンの違いを検出し、いくつかのmRNAの発現量の差で両細胞を識別する方法であり、間葉系幹細胞と線維芽細胞の違いを数値化して示すものであるが、この方法により、従来できなかった両細胞を区別することは可能となる。一方、レクチンを使った細胞の分析法の概念は骨分化能、間葉系幹細胞について、すでに入村らによって報告されている(特許文献4)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−290189「間葉系幹細胞検出用マーカー及び該マーカーを用いた間葉系幹細胞の識別方法」
【特許文献2】特開2005−27579「分別マーカーを用いた間葉系幹細胞の識別・分離方法」
【特許文献3】特開2007−82484「間葉系幹細胞の均質性識別方法、その方法を利用して得られる均質間葉系幹細胞」
【特許文献4】特許3658394「糖たんぱく質若しくは細胞の識別、血清若しくは細胞診断、或は糖たんぱく質若しくは細胞分画のためのレクチンライブラリの使用」
【非特許文献1】フジタら、ジャーナル オブ ペリオドンタル リサーチ、42巻(2007年)283−286頁(Fujita T.et.al.J.Periodontal Res.42(2007),pp283−286.)
【非特許文献2】イシイら、バイオケミカル アンド バイオフィジカル リサーチコミュニケーションズ、332巻(2005年)297−303頁(Ishii M.et.al,Biochemical and Biophysical Research Communications 332(2005),pp297−303)
【非特許文献3】大串ら、再生医療に用いられる細胞・再生組織の評価と安全性、(2007年)209−217頁、シーエムシー出版
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の方法では、由来が異なる線維芽細胞ではマーカーとなる遺伝子(mRNA)の種類も異なることから、種々の線維芽細胞を同時に調べ、由来のわからない線維芽細胞の区別を行なう場合にはいくつもの測定を行う必要があり、簡便性に欠けることになる。また、測定工程にRT−PCR反応、DNAアレイ反応を含むことから、手間がかかることと、抽出したRNAを取り扱うための特殊な設備が必要となること、高額な機器が必要となるなど、簡便に測定するには課題が多い。
特許文献4においては、糖タンパク質のレクチンによる分別法とともに、間葉系幹細胞とそれから派生した細胞との識別に触れているが、極めて限定的な組み合わせにおいての分別法についての記載である。多くの線維芽細胞、特に全く由来の異なる線維芽細胞を他細胞と分別する方法については言及がなく、また他の多数の種類の細胞の分別が実施できる内容のものとなっていない。
本発明は、このような課題の状況に鑑みてなされたものであり、種々の線維芽細胞と間葉系幹細胞などの識別を簡便に短時間に行うことのできる細胞識別方法およびそれに使用する、識別用試薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の(1)〜(13)に関する。
(1)以下のレクチンプレート、検出方法、解析方法を有する線維芽細胞の識別法。
(イ)少なくとも1種類以上のレクチンを固相化した基板プレート。
(ロ)基板上のレクチンに結合した細胞の量に対応して変化するシグナルを測定することにより、レクチンと細胞との反応を数値化する検出法。
(ハ)上記の方法で検出した数値データを統計的にデータ処理し、得られたデータを多変量解析により区分化することを特徴とした線維芽細胞の識別方法。
(2)レクチンが天然レクチンであることを特徴とする(1)の線維芽細胞の識別方法。
(3)レクチンが人工レクチンであることを特徴とする(1)の線維芽細胞の識別方法。
【0007】
(4)統計的データ処理が、クラスタ解析であることを特徴とする(1)−(3)の線維芽細胞の識別方法。
(5)多変量解析がデンドログラムによることを特徴とする(1)−(4)の線維芽細胞の識別方法。
(6)クラスタ解析が数値変換した値を用いる、階層的クラスタ解析である(1)−(5)の線維芽細胞の識別方法。
【0008】
(7)識別できる線維芽細胞が少なくとも1種類以上の組織由来の異なる線維芽細胞である(1)−(6)の線維芽細胞の識別方法。
【0009】
(8)識別する細胞が標識されていない生きた細胞であることを特徴とする(1)−(7)の線維芽細胞の識別方法。
【0010】
(9)レクチンを固定化する基板が、プラスチック基板であることを特徴とする(1)−(8)の線維芽細胞の識別方法。
【0011】
(10)基板がマイクロプレートの形状であることを特徴とする、(1)−(9)の線維芽細胞の識別方法。
【0012】
(11)レクチンと細胞との反応性を検出する方法が、色素による細胞染色法であることを特徴とする(1)−(10)の線維芽細胞の識別方法。
【0013】
(12)色素によるシグナルを、吸光度、蛍光強度として検出することを特徴とする(11)の線維芽細胞の識別方法。
【0014】
(13)(1)−(12)による線維芽細胞の識別方法に使用するために調製された、レクチン固定化基板および試薬。
【0015】
(14)線維芽細胞を他細胞と分別するためのレクチンとして、組換え型ピーナッツレクチン(組換え型PNA)を用いることを特徴とする(1)−(12)の線維芽細胞の識別方法ならびに(13)の試薬。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
本発明の細胞識別法によれば、組織由来の異なる種々の線維芽細胞と例えば間葉系幹細胞などの細胞を、染色や標識することなく生きたままの状態で、極めて短時間に、複数のレクチンとの反応パターンの違いとして区別することができる。また、反応パターンの基となる吸光度データを階層的クラスタ解析することで、線維芽細胞と例えば間葉系幹細胞をデンドログラム上で明確に区別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明における「レクチン」とは、ある糖鎖に結合親和性を有するタンパク質を言い、糖鎖抗原を認識する各種のイムノグロブリン以外のタンパク質をいう。このようなタンパク質の給源は植物、動物、微生物(菌・ウイルス)に求めることができ、分離・抽出・精製して取得することができる(天然レクチン)他、レクチンの糖結合部位に関連する部分の少なくとも一部を遺伝子工学的手法で取得することもできる。本発明に使用するレクチンは、特に給源を限定せず、亜種のレクチンなどが共存していてもよいが、全体の品質が一定であり、十分管理されていることが望ましい。さらにレクチンそのものの保存安定性、また基板に固定化した際の保存安定性がよいことが望ましい。市販品として、ConA、PNA、ABA、VVA−B4、SNA、UEA−I、WGA、PHA−L4等を入手して使用することができる(生化学工業社等)。
【0018】
本発明における「人工レクチン」とは天然レクチンの遺伝子配列を元に、大腸菌や動物細胞、昆虫細胞、植物細胞などを用い、遺伝子工学的手法により合成されたレクチンをいい、人工的にアミノ酸配列に改変が加えられたものを含むことができる。改変は分別可能性に影響を与えるほか、安定性にも影響があるが、多数の改変体より目的に応じた好適なものを選定することができる。その選別方法としては、例えばファージ提示法などが挙げられる。使用するレクチンの分子は完全形のレクチンに限定される必要はなく、その一部分のアミノ酸配列をもつ分子でもよく、一量体のもの、多量体のもの、酵素消化により断片化されたものなど、レクチンの糖鎖認識に関連する分子構造であれば全て使用できる。
【0019】
本発明において使用するレクチンを固定化する「基板」とは、板状のスライド、溶液を保持することのできる、96穴マイクロプレート、384マイクロプレート、分割可能なプレートであり、素材はガラスなどのシリカ類、ナイロン、ポリスチレン、ポリカーボネートなどの合成樹脂(プラスチックを含む)、金属(白金、銀、銅、金、等を含む)、シリコン、雲母、及び、これらの混合物を含むものを使用することができる。操作性や価格の点では、ポリスチレンやポリカーボネートが好適であり、細胞との反応時に非特異的吸着が少ないものを適宜使用することができる。なお、基板の形態は板状に限定されるわけではなく、ほかにチップ、ビーズなどそれ以外の形態もとることができる。一度に複数のレクチン反応を行うことのできる形態であればいかなるものも使用できる。
【0020】
本発明におけるレクチンの固定化方法としては、物理吸着法、静電力を用いた方法、架橋剤を用いた方法などがあり、適宜使用することができる。固定化時の濃度としては0.01μg/mL−50mg/mLを使用することができるが、好ましくは0.1mg/mL−5mg/mLである。
【0021】
固定化後、各種の高分子性ポリマー(デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、ポリカルボキシレート等)をブロッキング剤として使用することができる。市販品として、日本油脂社のリピデュア等も好適である。これらのブロッキング剤は非特異的吸着の防止の他に、レクチン固定化基板の安定性を上げることも可能である。グリシン等のアミノ酸や、サッカロース等をブロッキング時に共存させることもできる
【0022】
本発明における数値変換としては、底を10またはeとしたLog変換、Logit変換等の対数変換、Probit変換などがあり、いずれも適用可能であるが、Log10変換の使用が簡便である。
【0023】
本発明における「デンドログラム」とは樹形図のことをいい、意味のある集団ごとに分類のため使用する。樹形図内の距離によって、ある集団と別の集団の類似性が判断される。
【0024】
本発明における「クラスタ解析」とは集団を解析する方法であり、集団のもつ多数の特性(指標)を基準として、分類するものであり、種々の計算手法(アルゴリズム)を用いて行われる。分類を階層的に行う場合、「階層的クラスタ解析」と呼び、本発明の実施例で使用するが、限定されるものではなく、種々のものを制限なく適用することが可能である。
クラスター解析のためのソフトウエアはウエブ上でも入手することができ、TIGRmeV、NIA Array Analysis、Stalib−MULTI,MULTIV,NetLib,ALN,MIXMOD,Cluster 3.0,MeV V4.0などがあり、適宜選択して使用することができる。
【0025】
本発明における「線維芽細胞」は既に上述しているが、真皮に存在する細胞であり、Fibroblasts、結合組織形成細胞とも呼ばれている細胞であり、動物固体内の殆ど全ての組織中に分散して存在する中胚葉由来の細胞で、体外培養した場合の形状は扁平ないし紡錐形をなす特徴を有している。例えば、真皮に存在する線維芽細胞では、皮膚の機能を保つ上で重要な働きを持っている。皮膚に損傷が生じた場合損傷部に遊走し、コラーゲン・エラスチン・ムコ多糖などのマトリックスを産生する。また線維芽細胞は他の細胞と細胞外のマトリックスと相互作用を行う。他細胞から放出されたFGFなどの因子で調節される。
【0026】
本発明における「間葉系幹細胞」は、組織や臓器に成長する元となる細胞であり、主に骨髄の中に存在するものをいうが、未分化な細胞で、種類の異なるさまざまな細胞に分化できる能力を持ち、かつ自己複製の能力を持つ細胞であれば、骨髄以外の由来でもよい。間葉系幹細胞は骨、軟骨、脂肪、心臓、神経、肝臓などの細胞に分化するものであり、殆どすべての組織にも分化することのできる胚性幹細胞(ES細胞)に近い能力を有している。
【0027】
本発明における細胞数のカウント方法としては、直接顕微鏡下で目視にてカウントすることができ、最も簡便な方法である。他にトリパンブルーなどの色素、サイトックスグリーンやサイトックスレッド(インビトロジェン社)等の蛍光色素で細胞を染色した後、同様にカウントすることもできる。細胞は反応後の洗浄操作以外は基本的に未処理でカウントすることができるが、洗浄後残った細胞を染色し、グルタルアルデヒド等の架橋試薬によって固定してからカウントすることもできる。さらに洗浄後、細胞数と比例する色素を抽出し、色素濃度を計測することで間接的に細胞数を算出することもできる。しかしこれらの方法に限定されるものではなく、レクチンプレートに結合した細胞の数を反映するシグナルを測定する方法であればいかなるものも採用することができる。
【0028】
本発明におけるクラスタ解析に用いる数値データは、吸光度のほか蛍光強度を直接使用することができるほか、対数変換やその他の数値変換をした値を使用することができる。プレート上の固相化レクチンと細胞が反応し、結合した細胞の数に由来する数値を加工したものであれば、いかなるものも採用することができる。
【0029】
本発明において使用する、識別のために使用する試薬とは、比較する細胞を懸濁するための溶液、反応させた細胞を洗浄する洗浄液、細胞を染めるための染色液、細胞を固定化するための溶液などであり、それぞれの目的を最もよく達成するためのpH,濃度,組成を使用することができる。とくに細胞を固定化するための試薬として、グルタルアルデヒドを使用しているが、これに限定されるものではなく、ビスマレイミドヘキサン、ビス(スルホサクシニジル)スベレートなど種々の同価性架橋基、m−マレイミドベンジル−N−ヒロドキシスクシニミドエステル、スクシニミル4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレートなどの異価性架橋基を適宜使用することができる。なお列挙した各試薬は例示であり、これらに限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、細胞識別法にかかる発明の実施の形態の例について説明する。
細胞識別法に用いるレクチンプレートは少なくとも1種類以上のレクチンを表面上に固相化したマイクロタイタープレートを用いる。表面上に種々のレクチンを固相化したマイクロタイタープレートを用いることで、一度に多種類のレクチンと細胞との反応を行なうことができる。このレクチンプレートに、細胞懸濁液を添加してレクチンと細胞を反応させ、反応しなかった細胞を洗い流す。レクチンと細胞との反応性の程度を数値化するためには、プレートに結合して残った細胞を染色し、その色素の細胞吸着量を吸光度計により測定する。
得られたレクチンと細胞との反応に由来する複数の吸光度測定値を対数変換(log10変換)しクラスタ解析を行う。クラスタ解析の結果をデンドログラムとして表すと、線維芽細胞と間葉系幹細胞はデンドログラム上の異なったクラスタに分類され、線維芽細胞と間葉系幹細胞を識別することができる。
【0031】
以上のことから、本発明を実施するための最良の形態によれば、複数のレクチンを固相化したレクチンプレートを用いてレクチンと細胞を反応させることにより、間葉系幹細胞、線維芽細胞等のそれぞれに特徴的な反応パターンを短時間に検出することができる。さらに測定値をクラスタ解析することにより、線維芽細胞等をデンドログラム上で識別することができる。また、本発明は上述の実施形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0032】
表1−3にて使用するレクチン名の略号とその製造・販売メーカー、型番および本発明の実施例でのレクチン番号をまとめた。略号は一般に用いられるレクチンの表記に従った。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
以下本発明にかかる実施例について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0037】
レクチンの反応パターンによるヒト間葉系幹細胞の識別
(細胞の調製)
正常ヒト間葉系幹細胞(MSC、Cambrex社:以下C社と略。PT−2501、ロット番号6F3400、5F0972、6F3502)はMSCGM(C社PT−3001)を用いて37℃、5%CO2存在下で培養し、約3週間、2回の継代を行って拡大した。拡大培養した細胞はトリプシン・EDTA液(C社CC−3232)ではく離し、トリプシン中和液(C社CC−5002)で酵素反応を止めた後、10%DMSOを加えた増殖培地中に懸濁し、液体窒素中に凍結保存した。
線維芽細胞として、正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF、C社CC−2511)、正常歯根膜由来線維芽細胞(HPdLF、C社CC−7049)、正常ヒト心線維芽細胞(HCF、CAI社306−05f)はそれぞれFGM−2(C社CC−3132)、SCGM(C社CC−3205)、Lung/Cardiac Fibroblast Growth Medium(CAI社516−500)で培養し、同様に10%DMSOを含む増殖培地中で凍結保存した。
その他の細胞として、正常ヒトアストロサイト(NHA、C社CC−2565)、正常ヒト骨芽細胞(NHOst、C社CC−2538)、正常ヒト膝関節軟骨細胞(NHAc−Kn、C社CC−2550)、正常ヒト頭髪毛乳頭細胞(HFDPC、CAI社602−05a)、正常ヒト皮膚角化細胞(NHEK、C社CC−2501)はそれぞれAGM(C社CC−3186)、OGM(C社CC−3207)、CGM(C社CC−3216)、PCGM(東洋紡績社TMTPGM−250)、KGM(C社CC−3111)で培養し、同様に10%DMSOを含む増殖培地中で凍結保存した。
【0038】
(レクチンプレートの作製)
マイクロタイタープレート(スミロンELISAプレートH:MS−8896F:住友ベークライト社製)に0.05M炭酸緩衝液(pH9.6)で希釈した表1−3に示す76種類のレクチン(20μg/ml)を50μl/wellずつ添加し、4℃で一晩反応させた。未反応のレクチンを除くために、1mMカルシウムおよび1mMマグネシウムを含む50mMトリス緩衝生理食塩水(pH7.6)(CM−TBS)で2回洗浄した。洗浄操作はCM−TBSをゆっくりとウエルに添加した後、プレートを逆さにしてウエル内の液を捨て、ペーパータオル上で軽く叩いて液を完全に除くことで行った。さらにプレートをブロッキングするため、3%BSA/CM−TBS(170μl/well)を添加し、室温で3時間反応させた。その後、CM−TBSで2回プレートを洗浄し、レクチンプレートとして以下の細胞との反応に供した。
【実施例2】
【0039】
(細胞の調製)
液体窒素中に凍結保存した細胞を取り出し、37℃水浴にて急速に細胞を解凍した。細胞懸濁液を50ml遠心チューブに移し、αMEM(ナカライテスク社21444−05)(4℃)で1回、50mMトリス緩衝生理食塩水(TBS)(pH7.6、4℃)で3回を洗浄した。なお、細胞の洗浄操作は細胞懸濁液に培地(4℃)あるいはTBS(4℃)をゆっくりと攪拌しながら添加した後、遠心分離装置(1000rpm,5分、4℃)で細胞を回収することで行った。また、培地で洗浄した後にトリパンブルー法で細胞懸濁液中の総細胞数と生細胞率を測定し、細胞の状態を確認した。
このようにして洗浄した細胞に1% BSA/CM−TBS(4℃)を添加して、1×106個/mLとなるように懸濁し、レクチンプレートとの反応に供した。
【0040】
(レクチンプレートと細胞との反応)
洗浄したレクチンプレートに1×106個/mlとなるように調製した線維芽細胞3種と間葉系幹細胞3種のそれぞれの細胞懸濁液を100μl/wellずつ添加した。このレクチンプレートをプレートシールで蓋をして、冷蔵庫内に置き4℃下、2時間静置して細胞とレクチンを反応させた。なお、プレート間の測定誤差を補正するために各プレートには標準反応用ウエルを設定した。標準反応は固相化したDSAにCHO−Lec2細胞を反応させた。反応終了後、プレートを逆さにしてウエル内の液を捨てた後、ペーパータオル上で軽く叩いて液を完全に除いた。さらにレクチンと反応しない細胞を除くため、ウエルの洗浄を行った。洗浄操作はCM−TBS(4℃)をゆっくりとウエルに添加した後、プレートを逆さにしてウエル内の液を捨て、ペーパータオル上で軽く叩いて液を完全に除くことで行い、この操作を3回繰り返した。
【0041】
(反応した細胞の検出)
レクチンと反応した細胞は、プレート上に結合したままプレート表面に残るので0.25%(v/v)グルタルアルデヒドPBS溶液を用いてレクチンとの反応を停止させるとともに、プレートと結合したままの細胞を固定した(室温、30分)。反応後、ウエル中のグルタルアルデヒド溶液PBSは、プレートを逆さにして捨て、各ウエルをTBSで2回洗浄した。
レクチンとの反応によりプレートに結合した細胞を検出するために、0.1%クリスタルバイオレット/25%MeOH(50μl/well)を添加し、プレート上に結合した細胞を染色した(室温、30分)。その後、余分な染色液を流水下で十分に洗い流し、ペーパータオル上でプレートを軽く叩いて液を完全に除いた。続いて10%MeOH/40%EtOH(50μl/well)をウエルに添加して、細胞内の色素を溶媒中に抽出した(室温、60分)。
溶媒中に溶出させたクリスタルバイオレットをELISA測定用プレートリーダー(大日本製薬、マルチスキャンJX)にて570nmの吸光度を測定した。
【0042】
(取得データの処理)
得られた吸光度値から各プレートに設定した標準反応との相対%値を算出し、レクチンの反応パターンをレーダーチャート図として示した(図1−6)。これによると個々のレクチンの反応性の強弱は間葉系幹細胞の3ロットで似たものとなり、線維芽細胞群とは異なっていた。
【0043】
以上の工程に要する時間は細胞懸濁液を準備してから約4時間で完了することから、レクチンによってばらつきはあるものの、レクチンの反応パターンから短時間に間葉系幹細胞と線維芽細胞を区別することができる。
【実施例3】
【0044】
(クラスタ解析による繊維芽細胞の識別)
線維芽細胞と間葉系幹細胞について、実施例2で得られた各レクチンの吸光度値をlog10変換し、その数値と用いてTIGRmeV、NIA Array Analysis、ソフトウエアを用いて階層的クラスタ解析を行った。その結果得られたデンドログラムを図12に示した。これによると線維芽細胞と間葉系幹細胞はクラスタ番号11で区別された。また、間葉系幹細胞だけに注目すると各ロットの違いで間葉系幹細胞は異なったクラスタに分かれた(クラスタ番号10、7)。なお図中□内に囲まれた番号はクラスタ番号を示す。囲みのない数字番号は、区分に使用するレクチンの種類の数を示す。
【0045】
以上のことから、本実施例によれば、レクチンプレートと細胞との反応の結果得られた吸光度値をもとに相対%値のパターンを比較し、クラスタ解析を行うことで線維芽細胞や間葉系幹細胞を識別することができた。さらに線維芽細胞および間葉系幹細胞のそれぞれのロットの違いも識別できた。
【実施例4】
【0046】
(レクチンを選抜したクラスタ解析による線維芽細胞の識別)
実施例3では線維芽細胞と間葉系幹細胞の識別を行ったが、解析に用いるレクチンの種類を絞り込んだ場合の線維芽細胞と間葉系幹細胞の識別法について、他の細胞種も含めた場合の解析を行った。
実施例2と同様に種々のヒト正常細胞のレクチンの反応パターンを本発明の細胞識別法で取得した。図7−11に示したように様々な種類のヒト正常細胞の反応パターンは線維芽細胞のパターンとは異なったものとなった。
レクチンの中から線維芽細胞と他の細胞との間で反応性の有意差が高いレクチンをNIA Array Analysisソフトウエアにて2群検定法(ANOVA)で抽出し選ばれたレクチン(rPNA)を使ってクラスタ解析を行った。クラスタ解析は吸光度値を対数変換(log10変換)し、実施例3と同様に行った。その結果、図13に示すようにクラスタ番号21において、線維芽細胞は間葉系幹細胞および種々の細胞と異なったクラスタに分類された。なお図中□内に囲まれた番号はクラスタ番号を示す。囲みのない数字番号は、区分に使用するレクチンの種類の数を示す。なおクラスタ番号21に相当するレクチンは、組換え型ピーナッツレクチン(組換え型PNA、rPNA)であった。
【0047】
以上のことから、本実施例によれば、レクチンプレートと細胞との反応の結果得られた吸光度値をもとに、レクチンの種類を選抜することでクラスタ解析により線維芽細胞を、間葉系幹細胞及び、種々の細胞と明確に識別することができた。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】 線維芽細胞とレクチン基板との反応性をパターン化したものを示す。
【図2】 線維芽細胞レクチン基板との反応性をパターン化したものを示す。
【図3】 線維芽細胞レクチン基板との反応性をパターン化したものを示す。
【図4】 間葉系幹細胞とレクチン基板との反応性をパターン化したものを示す。
【図5】 間葉系幹細胞とレクチン基板との反応性をパターン化したものを示す。
【図6】 間葉系幹細胞とレクチン基板との反応性をパターン化したものを示す。
【図7】 正常ヒトアストロサイトとレクチン基板との反応性をパターン化したものを示す。
【図8】 正常ヒト骨芽細胞とレクチン基板との反応性をパターン化したものを示す。
【図9】 正常ヒト膝関節軟骨細胞とレクチン基板との反応性をパターン化したものを示す。
【図10】 正常ヒト頭髪毛乳頭細胞とレクチン基板との反応性をパターン化したものを示す。
【図11】 正常ヒト皮膚角化細胞とレクチン基板との反応性をパターン化したものを示す。
【図12】 レクチンの反応性データに基づいた線維芽細胞と他の細胞をクラスタ解析した例を示す。
【図13】 選定したレクチンを用いて、線維芽細胞と種々の細胞をクラスタ解析した例を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のレクチンプレート、検出方法、解析方法を有する線維芽細胞の識別法。
(イ)少なくとも1種類以上のレクチンを固相化した基板プレート。
(ロ)基板上のレクチンに結合した細胞の量に対応して変化するシグナルを測定することにより、レクチンと細胞との反応を数値化する検出法。
(ハ)上記の方法で検出した数値データを統計的にデータ処理し、得られたデータを多変量解析により区分化することを特徴とした細胞の識別方法。
【請求項2】
レクチンが天然レクチンであることを特徴とする請求項1の線維芽細胞の識別方法。
【請求項3】
レクチンが人工レクチンであることを特徴とする請求項1の線維芽細胞の識別方法。
【請求項4】
統計的データ処理が、クラスタ解析であることを特徴とする請求項1−3の線維芽細胞の識別方法。
【請求項5】
多変量解析がデンドログラムによることを特徴とする請求項1−4の線維芽細胞の識別方法。
【請求項6】
クラスタ解析が数値変換した値を用いる、階層的クラスタ解析である請求項1−5の線維芽細胞の識別方法。
【請求項7】
識別できる線維芽細胞が少なくとも1種類以上の組織由来の異なる線維芽細胞である請求項1−6の線維芽細胞の識別方法。
【請求項8】
識別する細胞が標識されていない生きた細胞であることを特徴とする請求項1−7の線維芽細胞の識別方法。
【請求項9】
レクチンを固定化する基板が、プラスチック基板であることを特徴とする請求項1−8の線維芽細胞の識別方法。
【請求項10】
基板がマイクロプレートの形状であることを特徴とする、請求項1−9の線維芽細胞の識別方法。
【請求項11】
レクチンと細胞との反応性を検出する方法が、色素による細胞染色法であることを特徴とする請求項1−10の線維芽細胞の識別方法。
【請求項12】
色素によるシグナルを、吸光度、蛍光強度として検出することを特徴とする請求項11の線維芽細胞の識別方法。
【請求項13】
請求項1−12による線維芽細胞の識別方法に使用するために調製された、レクチン固定化基板および試薬。
【請求項14】
線維芽細胞を他細胞と分別するためのレクチンとして、組換え型ピーナッツレクチン(組換え型PNA)を用いることを特徴とする請求項1−12の線維芽細胞の識別方法ならびに請求項13の試薬。
【請求項1】
以下のレクチンプレート、検出方法、解析方法を有する線維芽細胞の識別法。
(イ)少なくとも1種類以上のレクチンを固相化した基板プレート。
(ロ)基板上のレクチンに結合した細胞の量に対応して変化するシグナルを測定することにより、レクチンと細胞との反応を数値化する検出法。
(ハ)上記の方法で検出した数値データを統計的にデータ処理し、得られたデータを多変量解析により区分化することを特徴とした細胞の識別方法。
【請求項2】
レクチンが天然レクチンであることを特徴とする請求項1の線維芽細胞の識別方法。
【請求項3】
レクチンが人工レクチンであることを特徴とする請求項1の線維芽細胞の識別方法。
【請求項4】
統計的データ処理が、クラスタ解析であることを特徴とする請求項1−3の線維芽細胞の識別方法。
【請求項5】
多変量解析がデンドログラムによることを特徴とする請求項1−4の線維芽細胞の識別方法。
【請求項6】
クラスタ解析が数値変換した値を用いる、階層的クラスタ解析である請求項1−5の線維芽細胞の識別方法。
【請求項7】
識別できる線維芽細胞が少なくとも1種類以上の組織由来の異なる線維芽細胞である請求項1−6の線維芽細胞の識別方法。
【請求項8】
識別する細胞が標識されていない生きた細胞であることを特徴とする請求項1−7の線維芽細胞の識別方法。
【請求項9】
レクチンを固定化する基板が、プラスチック基板であることを特徴とする請求項1−8の線維芽細胞の識別方法。
【請求項10】
基板がマイクロプレートの形状であることを特徴とする、請求項1−9の線維芽細胞の識別方法。
【請求項11】
レクチンと細胞との反応性を検出する方法が、色素による細胞染色法であることを特徴とする請求項1−10の線維芽細胞の識別方法。
【請求項12】
色素によるシグナルを、吸光度、蛍光強度として検出することを特徴とする請求項11の線維芽細胞の識別方法。
【請求項13】
請求項1−12による線維芽細胞の識別方法に使用するために調製された、レクチン固定化基板および試薬。
【請求項14】
線維芽細胞を他細胞と分別するためのレクチンとして、組換え型ピーナッツレクチン(組換え型PNA)を用いることを特徴とする請求項1−12の線維芽細胞の識別方法ならびに請求項13の試薬。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−148236(P2009−148236A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341834(P2007−341834)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(504000292)グライコリサーチ株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(504000292)グライコリサーチ株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
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