説明

線路下の地盤改良方法および地盤改良用ロッド

【課題】 直接基礎としての支持力を向上させるように地盤を改良することができる手段を提供する。
【解決手段】 まず施工部位のマクラギ4を除去する。次いでバラストを除去し、施工部位の地盤8を露出させる。施工部位の地盤8の表層土を除去する。表層土を除去した部分に、再生骨材10と固化材12とを混合したものを注入して、除去した表層土と置き換える。除去した表層土と置き換えた再生骨材10と固化材12が固化すると、改良された地盤14となり、施工部位の地盤は強化されたものとなる。改良された地盤14上に受け桁16を敷き、さらにその上に工事桁18を設ける。地盤8にはアンカー20が打ち込まれる。所望箇所の地盤8の土を掘削して除去することにより、改良された地盤14によって、工事桁18及びレール2を安定して支持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線路下の地盤改良方法および地盤改良用ロッド関する。
【背景技術】
【0002】
線路下の地盤を掘削して、線路下に人や自動車が通る道路を建設したり、店舗を建設する場合がある。このような場合、従来から工事桁等の線路下の仮設構造物は、H鋼杭等の杭基礎で支持する場合が多い。例えば、非特許文献1には杭基礎工法として、振動工法、プレボーリング工法、中堀工法、回転工法、オイルケーシング工法、逆循環方法、正循環方式、および深礎工法が記載されている。
【非特許文献1】荒井政男、小原直、「狭隘箇所における基礎杭の施工と施工機械」、基礎工、総合土木研究所、平成10年8月、p15〜21
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような線路下に仮設構造物を建設する場合に、杭を打ち込む必要がある杭基礎で支持するのは、直接基礎では地盤の支持力が不足するためであり、簡易な直接基礎における支持力向上方法がないためである。しかし、上記のようなH鋼杭等による杭基礎では、施工箇所が線路内であるため、狭隘、低空頭の施工条件の厳しいところが多く、工事費、工期を増大させている。線路下の工事は、列車が通過しない線路閉鎖間合いである夜間等に行われる。そのため、施工時間は数時間しかなく、短時間で工事を終了することができる簡易な方法が望まれていた。
【0004】
本発明は、斯かる実情に鑑み、直接基礎としての支持力を向上させるように地盤を改良することができる手段を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、線路下の地盤改良方法であって、施工部位の地盤の土を固化材と再生骨材とで置き換えてから、固化材と再生骨材とを固化させることを特徴とする。
このような構成によれば、地盤の表層土が、固化材と再生骨材とが固化したものに置き換わるため、直接基礎としての支持力を向上させるように地盤を改良することができる。
【0006】
本発明の別の態様は、線路下の地盤改良方法であって、側面に孔を設けられた管状の地盤改良用ロッドを用意する第1ステップと、地盤改良用ロッドを施工部位の地盤の土中に貫入する第2ステップと、地盤改良用ロッドの側面の孔から固化材を施工部位の地盤の土に染み込ませる第3ステップと、を含むことを特徴とする。
このような構成によれば、ロッドの孔から固化材が施工部位の地盤の表層土中に染み込み固化するので、直接基礎としての支持力を向上させるように地盤を改良することができる。
【0007】
本発明の別の態様は、線路下の地盤改良方法であって、側面外周にスクリューを設けられ先端に吐出孔を設けられた管状の地盤改良用ロッドを用意する第1ステップと、地盤改良用ロッドを施工部位の地盤の土中に回転させつつ貫入する第2ステップと、地盤改良用ロッドの先端の吐出穴から固化材を施工部位の地盤の土に染み込ませる第3ステップと、を含むことを特徴とする。
このような構成によれば、地盤改良用ロッドのスクリューによる鉛直支持力と、固化材による地盤改良により、地盤を補強することができる。
【0008】
本発明の別の態様は、線路下における施工部位の地盤の土中に貫入される地盤改良用ロッドであって、側面に孔が設けられた管状部材と、管状部材内に入った固化材と、を有することを特徴とする。
このような構成の地盤改良用ロッドを用いることにより、直接基礎としての支持力を向上させるように地盤を改良できる。
【0009】
本発明の別の態様は、線路下における施工部位の地盤の土中に貫入される地盤改良用ロッドであって、管状部材と、管状部材の側面外周に設けられたスクリューと、管状部材内に入った固化材と、を有し、管状部材の端部には、固化材を吐出する吐出孔が設けられていることを特徴とする。
このような構成の地盤改良用ロッドを用いることでも、地盤を改良できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明による線路下の地盤改良方法、地盤改良用ロッドおよび地盤改良用プレートによれば、直接基礎としての支持力を向上させるように地盤を改良することができる。その結果として、従来の杭基礎に比べて工事費、工期を減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0012】
図1(a)〜(f)は、本発明の第1実施形態に係る線路下の地盤改良方法における工程を示すフロー図である。図1(a)〜(f)は、線路の延伸方向に平行な鉛直断面を示す。図1(a)に示すように、線路下の地盤は、地盤8の上に砂利等のバラスト6が積まれている。そして、バラスト6の上にマクラギ4が等間隔で並べられ、マクラギ4の上にレール2が敷かれている。なお、以下に示す本発明の実施形態における実際の工事は、線路閉鎖間合いの夜間等に行われる。
【0013】
図1(b)に示すように、本実施形態では、まず施工部位のマクラギ4を前後にずらして施工部位から除去する。次いでバラスト4を除去し、施工部位の地盤8を露出させる。そして、図1(c)に示すように、施工部位の地盤8の表層土を除去する。
【0014】
図1(d)に示すように、表層土を除去した部分に、再生骨材10と固化材12とを混合したものを注入して、除去した表層土と置き換える。ここで再生骨材10としては、再生材であるガラスくず、再生砕石、再生砂、レンガくず、陶磁器くず、砕ホタテ貝等を用いる。このような再生骨材は安価であり、工費を低く抑えることができる。さらに、環境問題の改善にも有益なものである。また、固化材としては、セメントを主体とした粉末あるいは粒状の材料を用いる。
【0015】
図1(e)に示すように、水をまいて振動ローラで転圧することにより、除去した表層土と置き換えた再生骨材10と固化材12が固化すると、改良された地盤14となり、施工部位の地盤は強化されたものとなる。
【0016】
図1(f)に示すように、実際に線路を敷設したままで線路下の地盤を掘削して、線路下にトンネルや店舗等、あるいは跨線橋を建設する場合には、改良された地盤14上に受け桁16を敷き、さらにその上に工事桁18を設ける。図1(f)では、工事桁18の一方の端での支持部のみを示しているが、工事桁18のもう一方の端も同様に改良された地盤上の受け桁で支持される。この場合、列車の荷重の有無により、レール2を地盤8から浮き上がらせる力が働く。そこで、レール2が地盤8から浮き上がるのを防ぐために、地盤8にはアンカー20が打ち込まれる。そして図1(f)に示すように、所望箇所の地盤8の土を掘削して除去することにより、改良された地盤14によって、工事桁18及びレール2を安定して支持することができる。
【0017】
本実施形態の方法では、直接基礎としての支持力を向上させるように十分に地盤を改良することができるため、地盤に杭を打ち込む杭基礎とする必要がない。そのため、狭隘で低空頭である線路下であっても、効率良く作業することができる。その結果、工期を短縮することができる。さらに、施工部位の地盤の表層土と置き換える再生骨材は、再生材であるため安価である。その結果、工費を低減することができる。
【0018】
図2は、本発明の第2実施形態に係る地盤改良方法に用いる地盤改良用ロッドを示す斜視図である。図2に示すように、本実施形態の地盤改良用ロッド22は管状部材からなり、管の一端は端部24により封止されている。本実施形態では、もう一方の端部は開放端となっている。そのため、使用時には開放端を上にして、開放端から固化材を入れた地盤改良用ロッド22を地盤中に挿入することができるようにされている。地盤改良用ロッド22の長さは、例えば、0.3〜0.7m程度とすることができ、地盤改良用ロッド22の直径は50〜150mm程度とすることができる。地盤改良用ロッド22の材質は、例えば、鋼や硬質塩化ビニルからなるものとすることができる。地盤改良用ロッド22の側面26には、複数の孔28が設けられている。これにより地盤改良用ロッド22内に入れた固化材が、孔28を通って地盤改良用ロッド22が貫入された地盤に染み込むことができるようにされている。孔28の直径は、例えば、10〜20mmとすることができる。
【0019】
図3(a)〜(d)は、本発明の第2実施形態に係る線路下の地盤改良方法における工程を示すフロー図である。本実施形態では図3(a)に示すように、第1実施形態と同様に、地盤8上に、バラスト6、マクラギ4、およびレール2が順次敷設された状態から施工を開始する。
【0020】
次に、図2で示した地盤改良用ロッド22に、固化材を注入したものを用意する。固化材には、セメントを主体とした粉末あるいは粒状の材料に水を加えてセメントミルク状としたものを用いることができる。あるいは、セメントに石灰を加えたものを用いることができる。そして図3(b)に示すように、地盤改良用ロッド22を、マクラギ4の間からバラスト6を通して、地盤8に貫入させる。この場合の地盤改良用ロッド22の貫入は、人力や油圧機械を用いることができる。この場合、第1実施例と異なり、マクラギ4やバラスト6を除去しなくても済むという利点がある。地盤改良用ロッド22は、施工部位に複数本貫入される。
【0021】
そして、地盤改良用ロッド22が貫入されてからしばらくたつと、図3(c)に示すように、地盤改良用ロッド22の孔28から固化材が周りの地盤8に染み出す。そして、染み出した固化材が固化すると、改良された地盤30が形成される。その後、図3(d)に示すように受け桁16および工事桁18を設置する。本実施形態の方法によれば、地盤が弱い場合であっても、地盤の支持力を強化できる。本実施形態の方法によれば、バラストを除去する必要がなく、簡単な短時間の工程で地盤を改良することができる。
【0022】
なお上記例では、地盤改良用ロッドを地盤に貫入する前に、予め地盤改良用ロッド内に固化材を注入したが、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、内部に固化材を入れていない地盤改良用ロッドを地盤内に貫入させ、その後、加圧ポンプ等で圧力を加えて地盤改良用ロッド内に固化材を注入することにより、地盤改良用ロッドの孔から固化材を染み出させても良い。あるいは、固化材として粉末あるいは粒状のセメントを予め地盤改良用ロッド内に入れておき、地盤改良用ロッドを地盤内に貫入させてから、何らかの方法で、地盤改良用ロッド内に水を注入して、固化材を固化させても良い。
【0023】
すなわち、本明細書で「染み込ませる」とは、地盤改良用ロッド内に入った固化材が自然に孔から出て地盤の土に染み込む場合と、加圧により固化材を地盤の土に染み込ませる場合との両方を含むものとする。
【0024】
図4は、本発明の第3実施形態に係る地盤改良方法で用いる地盤改良用ロッドを示す斜視図である。図4に示すように、本実施形態の地盤改良用ロッド32は管状部材34からなる。管状部材34の側面外周にはスクリュー36が設けられている。管状部材34の先端には、管状部材34内に入った固化材を吐出するための吐出孔38が設けられている。管状部材34の他端には、不図示の固化材供給口が設けられ、固化材を供給することができるようにされている。管状部材34の直径は100〜200mm程度とすることができ、長さは0.5〜1.0m程度とすることができる。この地盤改良用ロッド32の材質は、鋼からなるものとすることができる。また、スクリュー36の外径は、400〜600mm程度とすることができる。
【0025】
図5(a)〜(d)は、本発明の第3実施形態に係る線路下の地盤改良方法における工程を示すフロー図である。本実施形態でも図5(a)に示すように、第1実施形態と同様に、地盤8上に、バラスト6、マクラギ4、およびレール2が順次敷設された状態から施工を開始する。
【0026】
そして図5(b)に示すように、地盤改良用ロッド32を、マクラギ4の間からバラスト6を通して、地盤8に回転させつつ貫入させる。この場合の地盤改良用ロッド32の貫入は、人力や油圧機械を用いることができる。本実施形態においても、第1実施形態と異なり、マクラギ4やバラスト6を除去しなくても済むという利点がある。地盤改良用ロッド32は、施工部位に複数本貫入される。そして、地盤改良用ロッド32を地盤8に貫入する際に、地盤改良用ロッド32の吐出孔38から固化材が吐出される。固化材としては、セメントミルク等を用いることができる。
【0027】
その後、図5(c)に示すように、地盤改良用ロッド32の吐出孔38から固化材が周りの地盤8に染み出す。そして、染み出した固化材が固化すると、改良された地盤40が形成される。その後、図5(d)に示すように、受け桁16および工事桁18を設置する。本実施形態では、スクリューの羽根による鉛直支持力と固化材による地盤補強により、地盤の支持力をより一層強固なものにできる。そのため、より強固な工事桁基礎の支持力を確保できる。
【0028】
尚、本発明の線路下の地盤改良方法、地盤改良用ロッドは、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(a)〜(f)は、本発明の第1実施形態に係る線路下の地盤改良方法における工程を示すフロー図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る地盤改良方法で用いる地盤改良用ロッドを示す斜視図である。
【図3】(a)〜(d)は、本発明の第2実施形態に係る線路下の地盤改良方法における工程を示すフロー図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る地盤改良方法で用いる地盤改良用ロッドを示す斜視図である。
【図5】(a)〜(d)は、本発明の第3実施形態に係る線路下の地盤改良方法における工程を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0030】
2…レール、4…マクラギ、6…バラスト、8…地盤、10…再生骨材、12…固化材、14…改良された地盤、16…受け桁、18…工事桁、20…アンカー、22…地盤改良用ロッド、24…端部、26…側面、28…孔、30…改良された地盤、32…地盤改良用ロッド、34…管状部材、36…スクリュー、38…吐出孔、40…改良された地盤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線路下の地盤改良方法であって、施工部位の地盤の土を固化材と再生骨材とで置き換えてから、前記固化材と前記再生骨材とを固化させることを特徴とする線路下の地盤改良方法。
【請求項2】
線路下の地盤改良方法であって、
側面に孔を設けられた管状の地盤改良用ロッドを用意する第1ステップと、
前記地盤改良用ロッドを施工部位の地盤の土中に貫入する第2ステップと、
前記地盤改良用ロッドの側面の孔から固化材を前記施工部位の地盤の土に染み込ませる第3ステップと、
を含むことを特徴とする線路下の地盤改良方法。
【請求項3】
線路下の地盤改良方法であって、
側面外周にスクリューを設けられ先端に吐出孔を設けられた管状の地盤改良用ロッドを用意する第1ステップと、
前記地盤改良用ロッドを施工部位の地盤の土中に回転させつつ貫入する第2ステップと、
前記地盤改良用ロッドの先端の吐出穴から固化材を前記施工部位の地盤の土に染み込ませる第3ステップと、
を含むことを特徴とする線路下の地盤改良方法。
【請求項4】
線路下における施工部位の地盤の土中に貫入される地盤改良用ロッドであって、
側面に孔が設けられた管状部材と、
前記管状部材内に入った固化材と、
を有することを特徴とする地盤改良用ロッド。
【請求項5】
線路下における施工部位の地盤の土中に貫入される地盤改良用ロッドであって、
管状部材と、
前記管状部材の側面外周に設けられたスクリューと、
前記管状部材内に入った固化材と、
を有し、
前記管状部材の端部には、前記固化材を吐出する吐出孔が設けられていることを特徴とする地盤改良用ロッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−37413(P2006−37413A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−216372(P2004−216372)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【Fターム(参考)】