説明

締め忘れ防止具及び配管接続方法

【課題】ボルトやナットの締め付け状態を簡単且つ確実に視認可能とする。
【解決手段】押し輪15を固定する押しボルト16の軸部に、軸方向の半分が円柱部2、残りの半分が蛇腹部3となり、円柱部2と蛇腹部3とに互いに異なる色の着色が施されている締め忘れ防止具1を外装させて、押し輪15が固定状態となる押しボルト16の締め付け位置では、押しボルト16の頭部26による締め忘れ防止具1の軸方向の押圧で蛇腹部3を完全収縮させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の接続等に用いられるボルトやナットの締め忘れを防止するために用いられる締め忘れ防止具と、その締め忘れ防止具を用いた配管接続方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に示すように、配管の接続には、半割となる一対のハウジング等のジョイント金具が用いられ、このジョイント金具の組み付けには、ボルト及びナットが専ら利用される。特にここでは、ボルトの締め付けをし忘れたり、締め付けが不十分であったりすると、接続部分から漏水するおそれがあることから、ボルトの頭部とハウジングとの間やナットとハウジングとの間に、着色した凸面を互いに対向させた一対の皿バネを重ねて介在させるようにしている。これによれば、ボルトの締付によって皿バネが座屈して着色面が覆い隠されることで、ボルトの締め付け状態を視認することができる。特許文献2にも同様の座金付きねじ具が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−234684号公報
【特許文献2】実開昭63−133621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、皿バネを用いた場合、締め付けの前後において軸方向への変形量が小さいため、離れた場所や暗い場所では視認しづらい。また、ボルトの頭部やナットとジョイント金具との間の寸法が、皿バネが伸縮する程度に小さいことが必要となり、例えばK形継手の特殊押し輪に対して半径方向に締め付けられる押しボルト(竪ボルトとも言う)のように、ボルトの頭部が突出した状態で締め付けられる箇所には適用できない。
【0005】
そこで、本発明は、ボルトやナットの締め付け状態を簡単且つ確実に視認できて信頼性に優れ、K形継手の竪ボルトのようにボルトの頭部が突出状態で締め付けられるような場合でも好適に使用できる締め忘れ防止具と、その締め忘れ防止具を用いた配管接続方法とを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、締め忘れ防止具であって、ボルトの軸部に外装可能な筒状体で、一部に、所定の色で着色されて軸方向に伸縮可能な蛇腹部を有することを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、蛇腹部以外の部分が、蛇腹部と異なる色で着色されていることを特徴とするものである。
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、一方の配管の挿入端部に、中心に向けて半径方向に複数の押しボルトを螺合させた押し輪を外装し、挿入端部を、開口縁にフランジを周設した他方の配管の受口端部に差し込み、フランジと押し輪とをボルト及びナットで連結した後、押しボルトを夫々締め付けて押し輪の抜け出しを防止する配管接続方法であって、押しボルトの軸部に、請求項1又は2に記載の締め忘れ防止具を外装させて押し輪に螺合させ、押し輪が固定状態となる押しボルトの締め付け位置では、押しボルトの頭部による締め忘れ防止具の押圧で蛇腹部を完全収縮させるようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、離れた場所や暗い場所でもボルト又はナットの締め付け状態を簡単且つ確実に視認でき、信頼性に優れる。よって、K形継手の押しボルトのように頭部が突出状態で締め付けられるような場合に好適に使用可能となる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、蛇腹部以外の部分の着色により、蛇腹部が完全収縮した際には蛇腹部の色が消えて蛇腹部以外の部分が目立つことになるため、締め付け状態の視認性がより高まる。
請求項3に記載の発明によれば、K形継手の押しボルトの締め付け状態が簡単且つ確実に視認できる。よって、押しボルトの締め忘れや締め付け不足及び片締めがなくなって配管接続後の押し輪離脱による漏水を効果的に防止可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、締め忘れ防止具の一例を示す説明図で、締め忘れ防止具1は、合成樹脂製の筒状体で、軸方向の半分が円柱部2、残りの半分が蛇腹部3となっており、円柱部2と蛇腹部3とには互いに異なる色の着色(例えば円柱部を黄色、蛇腹部を赤色)が施されている。この着色は、塗料を塗布する等の任意の着色手段で行えばよいが、特に円柱部では色付きの粘着テープやシールを貼着したり等、必ずしも円柱部と蛇腹部とで同じ着色手段を採用する必要はない。
よって、この締め忘れ防止具1は、蛇腹部3が軸方向に伸縮可能となり、蛇腹部3の完全収縮時には、図2のように軸方向に短くなって円柱部2が目立つことになる。
【0009】
一方、図3は、配管接続構造の一例を示すもので、右が縦断面図、左が正面図となっている。この配管接続構造はK形継手と称される構造で、一方の配管10の挿入端部11を、開口縁にフランジ14を周設した他方の配管12の受口端部13に差し込み、押し輪15と受口端部13のフランジ14との間を、T頭ボルト17及びナット18で連結した後、複数の押しボルト16,16・・を締め付けて挿入端部11の外周に押し輪15を固定することで、両配管10,12の端部同士が接続される形態となっている。
【0010】
押し輪15は、押しボルト16が中心に向けて螺合される半径方向の雌ねじ穴19,19・・と、T頭ボルト17が貫通する軸方向の透孔20,20・・とを交互に8箇所形成したリング状で、内周には、各雌ねじ穴19と連通する凹溝21が周設されて、凹溝21内に、円弧状の4つの弓形爪22,22・・が嵌入されている。23は、隣り合う弓形爪22,22の間で凹溝21に嵌入される爪固定ゴムである。
また、押し輪15における受口端部13側の端面には、挿入端部11の外面に沿って位置決めフランジ24が周設されて、受口端部13のフランジ14の内周側で挿入端部11に外装されたゴム輪25に当接している。
【0011】
そして、ここでは押しボルト16に締め忘れ防止具1が用いられている。すなわち、押し輪15の外周面から突出する押しボルト16の軸部に、円柱部2を押しボルト16の頭部26側にして外装させて、締め忘れ防止具1を頭部26と押し輪15の外周面との間に介在させたもので、押しボルト16の締め付け前では、同図に示すように蛇腹部3は伸長状態となっている。
【0012】
以上の如く構成された配管接続構造において、接続手順を説明すると、まず押し輪15とゴム輪25とを夫々挿入端部11に外装させて、押し輪15の各雌ねじ穴19に、締め忘れ防止具1を外装させた押しボルト16を螺合させる。そして、挿入端部11を受口端部13に差し込んで、ゴム輪25が受口端部13の内面に当接し、そのゴム輪25に位置決めフランジ24が当接する位置で押し輪15を位置決めする。この状態で、受口端部13のフランジ14に設けた透孔27を介してT頭ボルト17を夫々差し込み、対応する押し輪15の透孔20に差し込んで、ナット18を締め付けると、フランジ14と押し輪15とが連結される。
【0013】
そして、押し輪15の各押しボルト16を締め付ける。すると、押しボルト16によって弓形爪22が挿入端部11の外面に押圧されて、押し輪15は挿入端部11に固定され、配管10,12の接続が完了する。
この押しボルト16の締め付けに伴い、頭部26が押し輪15の外周面に近づくことで、締め忘れ防止具1が頭部26と押し輪15の外周面との間で軸方向に押圧されるため、蛇腹部3が収縮して徐々に短くなる。そして、押し輪15が固定状態となる押しボルト16の締め付け位置では、図4のように蛇腹部3が完全収縮し、円柱部2のみが軸部に残る格好となり、押し輪15の離脱防止が図られる。
【0014】
ここで、何れかの押しボルト16に締め忘れや締め付け不足があった場合には、当該押しボルト16の締め忘れ防止具1の蛇腹部3が伸長したまま、或いは完全収縮せずに残るため、蛇腹部3の色が表れたままとなる。従って、作業者は蛇腹部3の色の有無によって全ての押しボルト16の締め付け状態が視認可能となる。特に、円柱部2が黄色等に着色されていれば、作業者は全ての押しボルト16において黄色の円柱部2のみが視認できることで締め忘れがないことを容易に理解できる。
【0015】
このように、上記形態の締め忘れ防止具1及び配管接続方法によれば、離れた場所や暗い場所でも押しボルト16の締め付け状態を簡単且つ確実に視認でき、信頼性に優れる。よって、押しボルト16の締め忘れや締め付け不足及び片締めがなくなって配管接続後の押し輪15の離脱による漏水を効果的に防止可能となる。
特にここでは、締め忘れ防止具1の円柱部2も蛇腹部3と異なる色で着色されているので、蛇腹部3が完全収縮した際には蛇腹部3の色が消えて円柱部2が目立つことになるため、締め付け状態の視認性がより高まる。
【0016】
なお、締め忘れ防止具の軸方向の長さや円柱部と蛇腹部との軸方向の割合は上記形態に限らず、締め付け前後のボルトのストロークに応じて適宜変更可能である。また、蛇腹部以外の部分は円柱に限らず、角柱等の他の形状でも差し支えないし、着色も、少なくとも蛇腹部に施されていれば、それ以外は未着色でもよい。さらに、ボルトへの外装は、蛇腹部をボルトの頭部側にすることも可能である。
加えて、締め忘れ防止具の軸方向全長に亘ってスリット(すり割り)を形成し、ボルトを押し輪等に螺合させた状態でもスリットを介してボルトの軸部に外装できるようにすることも考えられる。勿論押し輪等の他の構造も上記形態に限らない。例えば配管の径によって押しボルトの数が増減すればそれに合わせた数の締め忘れ防止具が使用される。
【0017】
一方、上記形態では、K形継手の押しボルトに締め忘れ防止具を適用した例で説明しているが、本発明の締め忘れ防止具は当該継手に限定するものではなく、例えば先の背景技術で説明したように、半割のジョイント金具を用いた継手において、ジョイント金具同士を組み付けるボルトに適用する等、他の構造であっても採用可能である。また、ボルトの頭部による押圧で蛇腹部を収縮させる形態に限らず、ナットの締め付けによる押圧で蛇腹部を収縮させるようにしても差し支えない。
その他、本発明の締め忘れ防止具は、配管接続の分野以外に、建築、土木現場等の他の分野においても使用すれば、ボルトやナットの締め付け状態の視認が可能となり、安全且つ信頼性の高い施工に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】締め忘れ防止具の斜視図である。
【図2】蛇腹部が完全収縮した状態を示す斜視図である。
【図3】配管接続構造の説明図である(押しボルト締め付け前)。
【図4】配管接続構造の説明図である(押しボルト締め付け後)。
【符号の説明】
【0019】
1・・締め忘れ防止具、2・・円柱部、3・・蛇腹部、10,12・・配管、11・・挿入端部、13・・受口端部、14・・フランジ、15・・押し輪、16・・押しボルト、19・・雌ねじ穴、22・・弓形爪、26・・頭部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルトの軸部に外装可能な筒状体で、一部に、所定の色で着色されて軸方向に伸縮可能な蛇腹部を有することを特徴とする締め忘れ防止具。
【請求項2】
前記蛇腹部以外の部分が、前記蛇腹部と異なる色で着色されていることを特徴とする請求項1に記載の締め忘れ防止具。
【請求項3】
一方の配管の挿入端部に、中心に向けて半径方向に複数の押しボルトを螺合させた押し輪を外装し、前記挿入端部を、開口縁にフランジを周設した他方の配管の受口端部に差し込み、前記フランジと押し輪とをボルト及びナットで連結した後、前記押しボルトを夫々締め付けて前記押し輪の抜け出しを防止する配管接続方法であって、
前記押しボルトの軸部に、請求項1又は2に記載の締め忘れ防止具を外装させて前記押し輪に螺合させ、前記押し輪が固定状態となる前記押しボルトの締め付け位置では、前記押しボルトの頭部による前記締め忘れ防止具の押圧で前記蛇腹部を完全収縮させるようにしたことを特徴とする配管接続方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−293644(P2009−293644A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144923(P2008−144923)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(591270556)名古屋市 (77)
【Fターム(参考)】