締付けバンド
【課題】偏平状の被締付け物を帯状のバンド部材を用いてトラック形状に周回させて締め付ける際に均等に締付け力を作用させ、かつ締付け作業や取り外し作業が容易に行なえる締付けバンドを提供する。
【解決手段】金属帯状のバンド部材2をトラック形状に周回させた内周側バンド部とその外周に外側バンド部が重ね合わせて巻かれる締付けバンド1であって、第1平坦部3bと第1重なり平坦部4cとの重なり領域Pと、第2平坦部3eと第2重なり平坦部4gとの重なり領域Qの少なくとも一方が50〜100%の範囲で形成される。
【解決手段】金属帯状のバンド部材2をトラック形状に周回させた内周側バンド部とその外周に外側バンド部が重ね合わせて巻かれる締付けバンド1であって、第1平坦部3bと第1重なり平坦部4cとの重なり領域Pと、第2平坦部3eと第2重なり平坦部4gとの重なり領域Qの少なくとも一方が50〜100%の範囲で形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電気自動車のバッテリーとモータとを連結する動力伝達ケーブルを結束する締付けバンドに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の電装部品にはワイヤーハーネスと呼ばれる電線を結束してインストルメンタルパネルに沿って配線することが行なわれている。例えば、エナメル線よりなる電線群を束ねて或いは並列状態にして絶縁樹脂チューブで被覆してハーネスを形成している。絶縁樹脂チューブは、非熱収縮チューブの外周側に熱収縮チューブを外装して熱収縮チューブを加熱して収縮させることにより電線群に密着被服させている(特許文献1参照)。
【0003】
近年、環境技術への関心と高まりとともに化石燃料の依存度が低いハイブリッド車や電気自動車が注目を集めている。例えば、電気自動車においては、駆動モータとインバータとを連結する比較的径の大きな動力伝達ケーブルが配線される。この動力伝達ケーブルも、走行面からの保護や、他の構造部品との干渉を避けて狭いスペースに配線する必要から、3本の動力伝達ケーブルを並列にして動力線の両端にコネクタを設け、該コネクタを通じてモータとインバータとを接続するようになっている。
【0004】
コネクタは、合成樹脂製のターミナルハウジングに金属製(アルミダイカスト製)のシールドハウジングを嵌め合わせて構成されている。3本の動力伝達ケーブルは、3か所のコネクタ端子と各々接続されて抜け止めされている。また、シールドハウジングは、長円状の筒状本体の外周にフランジ部を設けた構造になっており、筒状本体の外周には編組線がかしめリングによってかしめられて固定されている。このシールドハウジングの外周を絶縁用の樹脂ブーツ(例えばゴムブーツ)により覆って保護されている(特許文献2、図1参照)。この樹脂ブーツをシールドハウジングに取り付ける場合には、例えばアルミ筒などをかぶせて油圧圧着工具によりかしめて結束することが行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−163943号公報
【特許文献2】特開2007−227257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した長円状のシールドケースの筒状本体に樹脂ブーツをかぶせて締付ける場合、比較的大径で偏平な形状をしており、アルミ筒を油圧圧着工具で締め付ける場合には、アルミ筒全体を圧縮してかしめる必要があるため、油圧工具は大がかりな設備になってしまい、製造ラインに配置することができず、工具位置までワークを移動して作業を行う必要があるため、作業性が悪いという課題があった。また、部品交換などメンテナンスにおいて一旦締付けた外装部品を取り外す際に、かしめてあると取り外し難いという問題があった。よって、製造ライン上で効率よく締付け作業が行なえ、補給品としても使用できる開放型のクランプ(締付けバンド)が求められていた。
【0007】
また、金属帯状のバンドを用いて結束する場合、長円状のシールドケースの筒状本体を締め付けると、トラック形状に締め付けることになるが、この場合、両側の円弧部どうしを連結する平坦部では、被締付け物の内径方向に締付け力が伝わり難く、弛みが発生し易いという課題があった。
【0008】
本願発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、偏平状の被締付け物を帯状のバンド部材を用いてトラック形状に周回させて締め付ける際に平坦部においても均等に締付け力を作用させ、かつ締付け作業や取り外し作業が容易に行なえる締付けバンドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
即ち、金属帯状のバンド部材をトラック形状に周回させた内周側バンド部とその外周に外側バンド部が重ね合わせて巻かれる締付けバンドであって、前記内側バンド部は、内側バンド端より所定長有する平坦部にフック部が形成された第1平坦部と、該第1平坦部に連続する第1円弧部と、該第1円弧部に連続し所定長有する平坦部に係止突起が形成された第2平坦部と、該第2平坦部に連続し前記第1平坦部に周回して連続する第2円弧部と、を有し、前記外側バンド部は、前記第2円弧部に連続して前記第1平坦部と重ね合わされ、前記第1平坦部の先端の段差吸収する段差吸収部が形成されるとともに前記フック部が挿入係止されるスリットが形成された第1重なり平坦部と、該第1重なり平坦部に連続して前記第1円弧部と重ね合わされ、中途部に外方に門形に折り曲げ形成された締付け耳が形成された第1重なり円弧部と、前記第1重なり円弧部に連続して前記第2平坦部と重ね合わされ、前記係止突起の係止する係止孔が形成された第2重なり平坦部と、を具備し、前記第1平坦部と前記第1重なり平坦部との重なり領域と、前記第2平坦部と前記第2重なり平坦部との重なり領域の少なくとも一方が50〜100%の範囲で形成されていることを特徴とする。
【0010】
上記締付けバンドを用いれば、被締付け部をトラック形状に周回して締付ける内周側バンド部と外周側バンド部の第1平坦部と第1重なり平坦部との重なり領域と第2平坦部と第2重なり平坦部との重なり領域の少なくとも一方が50〜100%の範囲で形成されているため、内周側バンド部及び外周側バンド部で平坦部においても被締付け部の径方向に締め付け力が作用して均一に締め付けることができる。
また、締付け作業は、締付け耳を潰すだけで足りるため、大がかりな工具は不要であり、しかも取り外しも比較的容易に行なえる。
【0011】
また、本発明においては、被締付け物に前記第1平坦部、前記第1円弧部、前記第2平坦部を沿わせた状態で、直線的に連続する前記第2円弧部及び前記第1重なり平坦部と、前記第1重なり円弧部及び前記第2重なり平坦部とが、前記バンド部材のトラック形状の長手方向の中立線と締付け耳が形成された前記第1重なり円弧部の中立線とのなす角度が90度より大きく180度より小さい鈍角に形成されていることが望ましい。
【0012】
これにより、例えばケーブルを並列に収容した偏平状の被締付け物に第1平坦部、第1円弧部、第2平坦部を沿わせた状態で、内側バンド部とこれに連続する外側バンド部を周回して巻き付ける際に、外側バンド部の端部側である第2重なり平坦部が第1円弧部と干渉することなくスムーズに巻き付けることができ、作業性が向上する。
【0013】
また、本発明においては、前記第1重なり平坦部に形成された前記スリットの前記フック部が挿入係止される係止端部と反対側端部には外方に膨出した膨出部が形成されているのが好ましい。
これにより、締付け耳を潰して内側バンド部及び外側バンド部を縮径する際に、第1重なり平坦部と第1平坦部が相対的に逆方向にスライドしてフック部がスリットの係止端部より離れる向きにスライドする際に、スリット内に逃げた被締付け物の肉を膨出部で逃がして破損するのを防ぐことができる。
【0014】
また、本発明においては、前記第1重なり平坦部に形成された前記スリットの両側には外側に膨らんだ補強用突条が各々形成されているので、スリットがフック部を挿入して締付け時のガイドとなるほかに、スリットによるバンド部材の強度低下を補強用突条により補完することができる。
【0015】
更に、本発明においては、前記第1重なり円弧部に形成された前記締付け耳を潰すことにより前記内側バンド部材及び外側バンド部材を縮径させ、前記内側バンド部の前記第1平坦部先端を前記外側バンド部の段差吸収部に収容してバンド部材の内外段差吸収をする。
これにより、バンド部材による被締付け物のシール性が向上する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の締付けバンドを用いれば、並列配置されたケーブルを覆うシールドケースなどの偏平状の被締付け物を帯状のバンド部材を用いてトラック形状に周回させて締め付ける際に平坦部においても均等に締付け力を作用させ、かつ締付け作業や取り外し作業が容易に行なえる締付けバンドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】仮止め状態の締付けバンドの正面図、左側面図、上面図、底面図及びフック部の部分断面図である。
【図2】縮径後の締付けバンドの正面図である。
【図3】縮径後の締付けバンドのクランプ力の差異を説明する比較図である。
【図4】バンド部材の平面図及び正面図である。
【図5】被締付け物に対するバンド締付け動作の説明図である。
【図6】被締付け物に対するバンド締付け動作の説明図である。
【図7】被締付け物に対するバンド締付け動作の説明図である。
【図8】被締付け物に対するバンド締付け動作の説明図である。
【図9】被締付け物に対するバンド締付け動作の説明図である。
【図10】被締付け物に対するバンド締付け動作の説明図である。
【図11】被締付け物に対するバンド締付け動作の対比説明図である。
【図12】被締付け物に対するバンド締付け動作の対比説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る締付けバンドの一例について説明する。
先ず、図1乃至図4を参照して締付けバンドの構成について説明する。
図1(a)に示すように、締付けバンド1は、金属帯状のバンド部材2を被締付け物(シール材)5の周囲にトラック形状に周回させた内周側バンド部3とその外周に外側バンド部4が重ね合わせて巻かれる。バンド部材2は、金属帯状部材(例えばステンレススチール材(SUS301,SUS304,SUS430など)が用いられる。
【0019】
図4(a)(b)において、内側バンド部3は、内側バンド端より所定長有する平坦部にフック部3aが形成されて第1平坦部3bと(図1(a)参照)、該第1平坦部3bに連続する第1円弧部3cと(図1(a)参照)、該第1円弧部3cに連続し所定長有する平坦部に係止突起3dが2か所に形成された第2平坦部3eと(図1(c)参照)、該第2平坦部3eに連続し前記第1平坦部3b上に周回して連続する第2円弧部3fと(図1(a)参照)、を有する。第1平坦部3bの先端部は、Vノッチが形成された二股状端部3gが形成されている。尚、二股状端部3gに代えて舌片状端部など他の形態であってもよい。
【0020】
また、図4(a)(b)において、外側バンド部4は、第2円弧部3fに連続して第1平坦部3bと重ね合わされ、第1平坦部3bの先端の段差吸収する段差吸収部4aが形成されるとともにフック部3aが挿入されるスリット4bが形成された第1重なり平坦部4cと(図1(d)(e)参照)、該第1重なり平坦部4cに連続して第1円弧部3cと重ね合わされ、中途部に外方に門形に折り曲げ形成された締付け耳4dが形成された第1重なり円弧部4eと(図1(a)(b)参照)、該第1重なり円弧部4eに連続して第2平坦部3eと重ね合わされ、係止突起3dの係止する係止孔4fが形成された第2重なり平坦部4gと(図1(a)(c)参照)、を具備している。
【0021】
図4(a)において、第1重なり平坦部4cに形成されたスリット4bのフック部3aが挿入係止される係止端部と反対側端部には外方に膨出した膨出部4hが形成されている(図1(d)参照)。これにより、締付け耳4dを潰して内側バンド部3及び外側バンド部4を縮径する際に、第1重なり平坦部4cと第1平坦部3bが相対的に逆方向にスライドしてフック部3aがスリット4bの係止端部より離れる向きにスライドする際に、スリット4b内に逃げた被締付け物5の肉を膨出部4hで逃がして破損するのを防ぐことができる。
【0022】
また、図1(d)及び図4(a)において、第1重なり平坦部4cに形成されたスリット4bの両側には外側に膨らんだ補強用突条4iが形成されているので、スリット4bがフック部3aを挿入して締付け時のガイドとなるほかに、スリット4bによるバンド部材2の強度低下を補強用突条4iにより補完することができる。
【0023】
また、図2に示すように、第1重なり円弧部4eに形成された締付け耳4dを潰すことにより、内側バンド部材3及び外側バンド部材4を縮径させ、内側バンド部3の第1平坦部3b先端を外側バンド部4の段差吸収部4aに収容して段差吸収する。段差吸収部4aは、第1重なり平坦部4cの第2円弧部3fとの近傍に形成されている。
【0024】
図2において、締付けバンド1が縮径状態において、第1平坦部3bと第1重なり平坦部4cとの重なり領域Pと、第2平坦部3eと第2重なり平坦部4gとの重なり領域Qの少なくとも一方が50〜100%の範囲で形成されていることが望ましい。この理由について図3(a)(b)を参照して説明する。
【0025】
図3(a)に示すように締付けバンド1は、第1平坦部3bと第1重なり平坦部4cとの重なり領域Pと、第2平坦部3eと第2重なり平坦部4gとの重なり領域Qの双方が100%で形成されている。この状態で、締付け耳4dを工具で挟み込んで潰すと、第1重なり円弧部4eの両側が引っ張られて第1重なり平坦部4cが第1平坦部3bを押え込んで内周側へ締付ける締付け力が作用し、同様に第2重なり平坦部4gが第2平坦部3eを押え込んで内周側へ締付ける締付け力が作用する。よって、内側バンド部3及び外側バンド部4においても、平坦部においても被締付け物5の径方向に締め付け力が作用して均一に締め付けることができる。また、締付け作業は、締付け耳4dを潰すだけで足りるため、大がかりな工具は不要であり、しかも係止突起3dと係止孔4fの係止状態を解除するだけで取り外しも比較的容易に行なえる。
尚、第2平坦部3eに形成された係止突起3dと第2重なり平坦部4eに形成された係止孔4fは平坦部の重なり領域Qにおいて第2円弧部3fに近い方に形成されているのが望ましい。これにより、締付けバンド1を縮径した際のバンド端である第2重なり平坦部4eの浮き上がりが抑えられるためである。
【0026】
これに対して、図3(b)に示す締付けバンド1は、第1平坦部3bと第1重なり平坦部4cとの重なり領域Pと、第2平坦部3eと第2重なり平坦部4gとの重なり領域Qの双方が50%に満たない領域で形成されているこの状態で、締付け耳4dを工具で挟み込んで潰すと、第1重なり円弧部4eの両側が引っ張られて外側バンド部4の端部である第2重なり平坦部4gが浮き上がり、第2平坦部3eを押え込む力が弱まり、同様に第1重なり平坦部4cが重なり領域が少ない第1平坦部3bを押え込む力が弱まり、バンド全体として円弧部に比べて平坦部における内周側へ締付ける締付け力が弱まるため、シール性が低下する。
【0027】
次に被締付け物5に上述した締付けバンド1をオープン状態から取り付けて仮止めを経て縮径するまでの締付け動作について図5乃至図10を参照して説明する。
先ず、締付けバンド1は、図4(a)(b)のブランク板の状態から図5に示すように、第1平坦部3bに対して第1円弧部3cを円弧状に曲げ第2平坦部3e、第2円弧部3f、第1重なり平坦部4cが直線的に連なり、第1重なり円弧部4gが円弧状に形成されかつ締付け耳4dが門型に突出形成され、これに第2重なり平坦部4gが接線方向に連なった形状に予め曲げ成形されている。
【0028】
図5の偏平状の被締付け物5に、第1平坦部3b、第1円弧部3c、第2平坦部3eを沿わせた状態で、締付けバンド1を装着する。この状態で、直線的に連続する第2円弧部3f及び第1重なり平坦部4cと、第1重なり円弧部4e及び第2重なり平坦部4gとが、バンド部材2のトラック形状の長手方向の中立線L(例えば図示しない並列するケーブルの中心を水平につなぎ合わせた中心線)と締付け耳4dが形成された第1重なり円弧部4eの中立線M(円弧部4eの中心線)のとのなす角度θが90度より大きく180度より小さい鈍角に形成されている。本実施例では角度θは120°程度に形成されている。
【0029】
次に、図6に示すように、作業者が指で第2円弧部3fを押圧しながら円弧状に曲げながら巻き付ける。このとき、第2円弧部3fに連続する外側バンド部4の第2重なり平坦部4gは内側バンド部3が巻き付けられた被締付け物5に接近するが干渉することはない。
【0030】
次いで、図7に示すように、作業者は指で第1重なり平坦部4cを押圧して第1平坦部3b上に重ね合わせるようにする。そして、図8に示すように、フック部3aをスリット4bに挿入させて係止させる。このとき、外側バンド部4の第2重なり平坦部4gは内側バンド部3の第1円弧部3cを超えて巻き付けられる。
【0031】
次いで、図9に示すように、作業者は指で第1重なり円弧部4eを押圧して第1円弧部3c上に重ね合わせるようにする。このとき、フック部3aがスリット4bに係止しているため、第1重なり円弧部4eはフック部3aの係止部を支点として第1円弧部3c上に容易に重ね合わせることができる。そして、図10に示すように、第2重なり平坦部4gの係止孔4fを第2平坦部3eの係止突起3dに係止させて、締付けバンド1が被締付け物5に仮止めされる。このとき、外側バンド部4の第2重なり平坦部4gは、係止動作と反対向きの戻り力が作用するので、係止突起3dに係止したまま外れることがない。
【0032】
これにより、ケーブルが並列に並んだ偏平状の被締付け物5に第1平坦部3b、第1円弧部3c、第2平坦部3eを沿わせた状態で、内側バンド部3とこれに連続する外側バンド部4を周回して巻きつける際に、外側バンド部4の端部側である第2重なり平坦部4gが第1円弧部3cと干渉することなくスムーズに巻き付けることができ、作業性が向上する。
【0033】
最後に図2に示すように、締付け耳4dを工具で挟み込んで潰すことにより、第1重なり円弧部4eの両側に連続する第1重なり平坦部4c及び第2重なり平坦部4gが引っ張られて、第1平坦部3b及び第2平坦部3eを押え込んで内周側へ締付け、第1平坦部3bの二股状端部3gが相対的に段差吸収部4aに移動して収容されて締付け動作が完了する。尚、フック部3aがスリット4bに沿って移動するため、内側バンド部3と外側バンド部4が位置ずれするおそれはない。
【0034】
これに対して、図11に示すように、締付けバンド1が、全体として開口を有するトラック形状に形成されている。即ち、バンド部材2のトラック形状の長手方向の中立線L(例えば並列するケーブルの中心を水平につなぎ合わせた中心線)と締付け耳4dが形成された第1重なり円弧部4eの中立線M(円弧部4eの中心線)が重なり合う状態(θ=180°)に形成されている。
【0035】
この状態で図11の偏平状の被締付け物5に、第1平坦部3b、第1円弧部3c、第2平坦部3eを沿わせた状態で、締付けバンド1を装着する。そして図12に示すように、作業者が指で第2円弧部3fを押圧しながら円弧状に曲げながら巻き付ける。このとき、第2円弧部3fに連続する外側バンド部4の第2重なり平坦部4gは内側バンド部3の第1平坦部3bに突き当たって干渉するため、巻き付け難くなる。
【0036】
尚、バンド部材2のトラック形状の長手方向の中立線Lと第1重なり円弧部4eの中立線M(円弧部4eの中心線)とが90度の場合にも、第1重なり円弧部4eの第1重なり平坦部4cに対する曲げ量が多くなるため、バンド部材2に応力ひずみが残るおそれがあるため好ましくない。
【0037】
上述したように、本発明に係る締付けバンド1を用いれば、偏平状の被締付け物5を帯状のバンド部材2を用いてトラック形状に周回させて締め付ける際に均等に締付け力を作用させ、かつ締付け作業や取り外し作業が容易に行なえる。
【0038】
尚、締付けバンド1はトラック形状に平坦部どうしが重なり合うように巻き付けたが両側の円弧部どうしが重なり合うように二重に巻き付けてもよい。また、第1平坦部3bと重なる第1重なり平坦部4c及び第2平坦部3eと重なる第2重なり平坦部4gの重なり領域は、概ね50%以上であれば任意の長さにすることが可能である。また、締付けバンド1を被締付け物5に装着する際のバンド部材2のトラック形状の長手方向の中立線Lと第1重なり円弧部4eの中立線Mとのなす角度θも90°より大きく180°より小さい鈍角であれば、いずれでもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 締付けバンド
2 バンド部材
3 内側バンド部
3a フック部
3b 第1平坦部
3c 第1円弧部
3d 係止突起
3e 第2平坦部
3f 第2円弧部
3g 二股状端部
4 外側バンド部
4a 段差吸収部
4b スリット
4c 第1重なり平坦部
4d 締付け耳
4e 第1重なり円弧部
4f 係止孔
4g 第2重なり平坦部
4h 膨出部
4i 補強用突条
5 被締付け物
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電気自動車のバッテリーとモータとを連結する動力伝達ケーブルを結束する締付けバンドに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の電装部品にはワイヤーハーネスと呼ばれる電線を結束してインストルメンタルパネルに沿って配線することが行なわれている。例えば、エナメル線よりなる電線群を束ねて或いは並列状態にして絶縁樹脂チューブで被覆してハーネスを形成している。絶縁樹脂チューブは、非熱収縮チューブの外周側に熱収縮チューブを外装して熱収縮チューブを加熱して収縮させることにより電線群に密着被服させている(特許文献1参照)。
【0003】
近年、環境技術への関心と高まりとともに化石燃料の依存度が低いハイブリッド車や電気自動車が注目を集めている。例えば、電気自動車においては、駆動モータとインバータとを連結する比較的径の大きな動力伝達ケーブルが配線される。この動力伝達ケーブルも、走行面からの保護や、他の構造部品との干渉を避けて狭いスペースに配線する必要から、3本の動力伝達ケーブルを並列にして動力線の両端にコネクタを設け、該コネクタを通じてモータとインバータとを接続するようになっている。
【0004】
コネクタは、合成樹脂製のターミナルハウジングに金属製(アルミダイカスト製)のシールドハウジングを嵌め合わせて構成されている。3本の動力伝達ケーブルは、3か所のコネクタ端子と各々接続されて抜け止めされている。また、シールドハウジングは、長円状の筒状本体の外周にフランジ部を設けた構造になっており、筒状本体の外周には編組線がかしめリングによってかしめられて固定されている。このシールドハウジングの外周を絶縁用の樹脂ブーツ(例えばゴムブーツ)により覆って保護されている(特許文献2、図1参照)。この樹脂ブーツをシールドハウジングに取り付ける場合には、例えばアルミ筒などをかぶせて油圧圧着工具によりかしめて結束することが行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−163943号公報
【特許文献2】特開2007−227257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した長円状のシールドケースの筒状本体に樹脂ブーツをかぶせて締付ける場合、比較的大径で偏平な形状をしており、アルミ筒を油圧圧着工具で締め付ける場合には、アルミ筒全体を圧縮してかしめる必要があるため、油圧工具は大がかりな設備になってしまい、製造ラインに配置することができず、工具位置までワークを移動して作業を行う必要があるため、作業性が悪いという課題があった。また、部品交換などメンテナンスにおいて一旦締付けた外装部品を取り外す際に、かしめてあると取り外し難いという問題があった。よって、製造ライン上で効率よく締付け作業が行なえ、補給品としても使用できる開放型のクランプ(締付けバンド)が求められていた。
【0007】
また、金属帯状のバンドを用いて結束する場合、長円状のシールドケースの筒状本体を締め付けると、トラック形状に締め付けることになるが、この場合、両側の円弧部どうしを連結する平坦部では、被締付け物の内径方向に締付け力が伝わり難く、弛みが発生し易いという課題があった。
【0008】
本願発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、偏平状の被締付け物を帯状のバンド部材を用いてトラック形状に周回させて締め付ける際に平坦部においても均等に締付け力を作用させ、かつ締付け作業や取り外し作業が容易に行なえる締付けバンドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
即ち、金属帯状のバンド部材をトラック形状に周回させた内周側バンド部とその外周に外側バンド部が重ね合わせて巻かれる締付けバンドであって、前記内側バンド部は、内側バンド端より所定長有する平坦部にフック部が形成された第1平坦部と、該第1平坦部に連続する第1円弧部と、該第1円弧部に連続し所定長有する平坦部に係止突起が形成された第2平坦部と、該第2平坦部に連続し前記第1平坦部に周回して連続する第2円弧部と、を有し、前記外側バンド部は、前記第2円弧部に連続して前記第1平坦部と重ね合わされ、前記第1平坦部の先端の段差吸収する段差吸収部が形成されるとともに前記フック部が挿入係止されるスリットが形成された第1重なり平坦部と、該第1重なり平坦部に連続して前記第1円弧部と重ね合わされ、中途部に外方に門形に折り曲げ形成された締付け耳が形成された第1重なり円弧部と、前記第1重なり円弧部に連続して前記第2平坦部と重ね合わされ、前記係止突起の係止する係止孔が形成された第2重なり平坦部と、を具備し、前記第1平坦部と前記第1重なり平坦部との重なり領域と、前記第2平坦部と前記第2重なり平坦部との重なり領域の少なくとも一方が50〜100%の範囲で形成されていることを特徴とする。
【0010】
上記締付けバンドを用いれば、被締付け部をトラック形状に周回して締付ける内周側バンド部と外周側バンド部の第1平坦部と第1重なり平坦部との重なり領域と第2平坦部と第2重なり平坦部との重なり領域の少なくとも一方が50〜100%の範囲で形成されているため、内周側バンド部及び外周側バンド部で平坦部においても被締付け部の径方向に締め付け力が作用して均一に締め付けることができる。
また、締付け作業は、締付け耳を潰すだけで足りるため、大がかりな工具は不要であり、しかも取り外しも比較的容易に行なえる。
【0011】
また、本発明においては、被締付け物に前記第1平坦部、前記第1円弧部、前記第2平坦部を沿わせた状態で、直線的に連続する前記第2円弧部及び前記第1重なり平坦部と、前記第1重なり円弧部及び前記第2重なり平坦部とが、前記バンド部材のトラック形状の長手方向の中立線と締付け耳が形成された前記第1重なり円弧部の中立線とのなす角度が90度より大きく180度より小さい鈍角に形成されていることが望ましい。
【0012】
これにより、例えばケーブルを並列に収容した偏平状の被締付け物に第1平坦部、第1円弧部、第2平坦部を沿わせた状態で、内側バンド部とこれに連続する外側バンド部を周回して巻き付ける際に、外側バンド部の端部側である第2重なり平坦部が第1円弧部と干渉することなくスムーズに巻き付けることができ、作業性が向上する。
【0013】
また、本発明においては、前記第1重なり平坦部に形成された前記スリットの前記フック部が挿入係止される係止端部と反対側端部には外方に膨出した膨出部が形成されているのが好ましい。
これにより、締付け耳を潰して内側バンド部及び外側バンド部を縮径する際に、第1重なり平坦部と第1平坦部が相対的に逆方向にスライドしてフック部がスリットの係止端部より離れる向きにスライドする際に、スリット内に逃げた被締付け物の肉を膨出部で逃がして破損するのを防ぐことができる。
【0014】
また、本発明においては、前記第1重なり平坦部に形成された前記スリットの両側には外側に膨らんだ補強用突条が各々形成されているので、スリットがフック部を挿入して締付け時のガイドとなるほかに、スリットによるバンド部材の強度低下を補強用突条により補完することができる。
【0015】
更に、本発明においては、前記第1重なり円弧部に形成された前記締付け耳を潰すことにより前記内側バンド部材及び外側バンド部材を縮径させ、前記内側バンド部の前記第1平坦部先端を前記外側バンド部の段差吸収部に収容してバンド部材の内外段差吸収をする。
これにより、バンド部材による被締付け物のシール性が向上する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の締付けバンドを用いれば、並列配置されたケーブルを覆うシールドケースなどの偏平状の被締付け物を帯状のバンド部材を用いてトラック形状に周回させて締め付ける際に平坦部においても均等に締付け力を作用させ、かつ締付け作業や取り外し作業が容易に行なえる締付けバンドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】仮止め状態の締付けバンドの正面図、左側面図、上面図、底面図及びフック部の部分断面図である。
【図2】縮径後の締付けバンドの正面図である。
【図3】縮径後の締付けバンドのクランプ力の差異を説明する比較図である。
【図4】バンド部材の平面図及び正面図である。
【図5】被締付け物に対するバンド締付け動作の説明図である。
【図6】被締付け物に対するバンド締付け動作の説明図である。
【図7】被締付け物に対するバンド締付け動作の説明図である。
【図8】被締付け物に対するバンド締付け動作の説明図である。
【図9】被締付け物に対するバンド締付け動作の説明図である。
【図10】被締付け物に対するバンド締付け動作の説明図である。
【図11】被締付け物に対するバンド締付け動作の対比説明図である。
【図12】被締付け物に対するバンド締付け動作の対比説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る締付けバンドの一例について説明する。
先ず、図1乃至図4を参照して締付けバンドの構成について説明する。
図1(a)に示すように、締付けバンド1は、金属帯状のバンド部材2を被締付け物(シール材)5の周囲にトラック形状に周回させた内周側バンド部3とその外周に外側バンド部4が重ね合わせて巻かれる。バンド部材2は、金属帯状部材(例えばステンレススチール材(SUS301,SUS304,SUS430など)が用いられる。
【0019】
図4(a)(b)において、内側バンド部3は、内側バンド端より所定長有する平坦部にフック部3aが形成されて第1平坦部3bと(図1(a)参照)、該第1平坦部3bに連続する第1円弧部3cと(図1(a)参照)、該第1円弧部3cに連続し所定長有する平坦部に係止突起3dが2か所に形成された第2平坦部3eと(図1(c)参照)、該第2平坦部3eに連続し前記第1平坦部3b上に周回して連続する第2円弧部3fと(図1(a)参照)、を有する。第1平坦部3bの先端部は、Vノッチが形成された二股状端部3gが形成されている。尚、二股状端部3gに代えて舌片状端部など他の形態であってもよい。
【0020】
また、図4(a)(b)において、外側バンド部4は、第2円弧部3fに連続して第1平坦部3bと重ね合わされ、第1平坦部3bの先端の段差吸収する段差吸収部4aが形成されるとともにフック部3aが挿入されるスリット4bが形成された第1重なり平坦部4cと(図1(d)(e)参照)、該第1重なり平坦部4cに連続して第1円弧部3cと重ね合わされ、中途部に外方に門形に折り曲げ形成された締付け耳4dが形成された第1重なり円弧部4eと(図1(a)(b)参照)、該第1重なり円弧部4eに連続して第2平坦部3eと重ね合わされ、係止突起3dの係止する係止孔4fが形成された第2重なり平坦部4gと(図1(a)(c)参照)、を具備している。
【0021】
図4(a)において、第1重なり平坦部4cに形成されたスリット4bのフック部3aが挿入係止される係止端部と反対側端部には外方に膨出した膨出部4hが形成されている(図1(d)参照)。これにより、締付け耳4dを潰して内側バンド部3及び外側バンド部4を縮径する際に、第1重なり平坦部4cと第1平坦部3bが相対的に逆方向にスライドしてフック部3aがスリット4bの係止端部より離れる向きにスライドする際に、スリット4b内に逃げた被締付け物5の肉を膨出部4hで逃がして破損するのを防ぐことができる。
【0022】
また、図1(d)及び図4(a)において、第1重なり平坦部4cに形成されたスリット4bの両側には外側に膨らんだ補強用突条4iが形成されているので、スリット4bがフック部3aを挿入して締付け時のガイドとなるほかに、スリット4bによるバンド部材2の強度低下を補強用突条4iにより補完することができる。
【0023】
また、図2に示すように、第1重なり円弧部4eに形成された締付け耳4dを潰すことにより、内側バンド部材3及び外側バンド部材4を縮径させ、内側バンド部3の第1平坦部3b先端を外側バンド部4の段差吸収部4aに収容して段差吸収する。段差吸収部4aは、第1重なり平坦部4cの第2円弧部3fとの近傍に形成されている。
【0024】
図2において、締付けバンド1が縮径状態において、第1平坦部3bと第1重なり平坦部4cとの重なり領域Pと、第2平坦部3eと第2重なり平坦部4gとの重なり領域Qの少なくとも一方が50〜100%の範囲で形成されていることが望ましい。この理由について図3(a)(b)を参照して説明する。
【0025】
図3(a)に示すように締付けバンド1は、第1平坦部3bと第1重なり平坦部4cとの重なり領域Pと、第2平坦部3eと第2重なり平坦部4gとの重なり領域Qの双方が100%で形成されている。この状態で、締付け耳4dを工具で挟み込んで潰すと、第1重なり円弧部4eの両側が引っ張られて第1重なり平坦部4cが第1平坦部3bを押え込んで内周側へ締付ける締付け力が作用し、同様に第2重なり平坦部4gが第2平坦部3eを押え込んで内周側へ締付ける締付け力が作用する。よって、内側バンド部3及び外側バンド部4においても、平坦部においても被締付け物5の径方向に締め付け力が作用して均一に締め付けることができる。また、締付け作業は、締付け耳4dを潰すだけで足りるため、大がかりな工具は不要であり、しかも係止突起3dと係止孔4fの係止状態を解除するだけで取り外しも比較的容易に行なえる。
尚、第2平坦部3eに形成された係止突起3dと第2重なり平坦部4eに形成された係止孔4fは平坦部の重なり領域Qにおいて第2円弧部3fに近い方に形成されているのが望ましい。これにより、締付けバンド1を縮径した際のバンド端である第2重なり平坦部4eの浮き上がりが抑えられるためである。
【0026】
これに対して、図3(b)に示す締付けバンド1は、第1平坦部3bと第1重なり平坦部4cとの重なり領域Pと、第2平坦部3eと第2重なり平坦部4gとの重なり領域Qの双方が50%に満たない領域で形成されているこの状態で、締付け耳4dを工具で挟み込んで潰すと、第1重なり円弧部4eの両側が引っ張られて外側バンド部4の端部である第2重なり平坦部4gが浮き上がり、第2平坦部3eを押え込む力が弱まり、同様に第1重なり平坦部4cが重なり領域が少ない第1平坦部3bを押え込む力が弱まり、バンド全体として円弧部に比べて平坦部における内周側へ締付ける締付け力が弱まるため、シール性が低下する。
【0027】
次に被締付け物5に上述した締付けバンド1をオープン状態から取り付けて仮止めを経て縮径するまでの締付け動作について図5乃至図10を参照して説明する。
先ず、締付けバンド1は、図4(a)(b)のブランク板の状態から図5に示すように、第1平坦部3bに対して第1円弧部3cを円弧状に曲げ第2平坦部3e、第2円弧部3f、第1重なり平坦部4cが直線的に連なり、第1重なり円弧部4gが円弧状に形成されかつ締付け耳4dが門型に突出形成され、これに第2重なり平坦部4gが接線方向に連なった形状に予め曲げ成形されている。
【0028】
図5の偏平状の被締付け物5に、第1平坦部3b、第1円弧部3c、第2平坦部3eを沿わせた状態で、締付けバンド1を装着する。この状態で、直線的に連続する第2円弧部3f及び第1重なり平坦部4cと、第1重なり円弧部4e及び第2重なり平坦部4gとが、バンド部材2のトラック形状の長手方向の中立線L(例えば図示しない並列するケーブルの中心を水平につなぎ合わせた中心線)と締付け耳4dが形成された第1重なり円弧部4eの中立線M(円弧部4eの中心線)のとのなす角度θが90度より大きく180度より小さい鈍角に形成されている。本実施例では角度θは120°程度に形成されている。
【0029】
次に、図6に示すように、作業者が指で第2円弧部3fを押圧しながら円弧状に曲げながら巻き付ける。このとき、第2円弧部3fに連続する外側バンド部4の第2重なり平坦部4gは内側バンド部3が巻き付けられた被締付け物5に接近するが干渉することはない。
【0030】
次いで、図7に示すように、作業者は指で第1重なり平坦部4cを押圧して第1平坦部3b上に重ね合わせるようにする。そして、図8に示すように、フック部3aをスリット4bに挿入させて係止させる。このとき、外側バンド部4の第2重なり平坦部4gは内側バンド部3の第1円弧部3cを超えて巻き付けられる。
【0031】
次いで、図9に示すように、作業者は指で第1重なり円弧部4eを押圧して第1円弧部3c上に重ね合わせるようにする。このとき、フック部3aがスリット4bに係止しているため、第1重なり円弧部4eはフック部3aの係止部を支点として第1円弧部3c上に容易に重ね合わせることができる。そして、図10に示すように、第2重なり平坦部4gの係止孔4fを第2平坦部3eの係止突起3dに係止させて、締付けバンド1が被締付け物5に仮止めされる。このとき、外側バンド部4の第2重なり平坦部4gは、係止動作と反対向きの戻り力が作用するので、係止突起3dに係止したまま外れることがない。
【0032】
これにより、ケーブルが並列に並んだ偏平状の被締付け物5に第1平坦部3b、第1円弧部3c、第2平坦部3eを沿わせた状態で、内側バンド部3とこれに連続する外側バンド部4を周回して巻きつける際に、外側バンド部4の端部側である第2重なり平坦部4gが第1円弧部3cと干渉することなくスムーズに巻き付けることができ、作業性が向上する。
【0033】
最後に図2に示すように、締付け耳4dを工具で挟み込んで潰すことにより、第1重なり円弧部4eの両側に連続する第1重なり平坦部4c及び第2重なり平坦部4gが引っ張られて、第1平坦部3b及び第2平坦部3eを押え込んで内周側へ締付け、第1平坦部3bの二股状端部3gが相対的に段差吸収部4aに移動して収容されて締付け動作が完了する。尚、フック部3aがスリット4bに沿って移動するため、内側バンド部3と外側バンド部4が位置ずれするおそれはない。
【0034】
これに対して、図11に示すように、締付けバンド1が、全体として開口を有するトラック形状に形成されている。即ち、バンド部材2のトラック形状の長手方向の中立線L(例えば並列するケーブルの中心を水平につなぎ合わせた中心線)と締付け耳4dが形成された第1重なり円弧部4eの中立線M(円弧部4eの中心線)が重なり合う状態(θ=180°)に形成されている。
【0035】
この状態で図11の偏平状の被締付け物5に、第1平坦部3b、第1円弧部3c、第2平坦部3eを沿わせた状態で、締付けバンド1を装着する。そして図12に示すように、作業者が指で第2円弧部3fを押圧しながら円弧状に曲げながら巻き付ける。このとき、第2円弧部3fに連続する外側バンド部4の第2重なり平坦部4gは内側バンド部3の第1平坦部3bに突き当たって干渉するため、巻き付け難くなる。
【0036】
尚、バンド部材2のトラック形状の長手方向の中立線Lと第1重なり円弧部4eの中立線M(円弧部4eの中心線)とが90度の場合にも、第1重なり円弧部4eの第1重なり平坦部4cに対する曲げ量が多くなるため、バンド部材2に応力ひずみが残るおそれがあるため好ましくない。
【0037】
上述したように、本発明に係る締付けバンド1を用いれば、偏平状の被締付け物5を帯状のバンド部材2を用いてトラック形状に周回させて締め付ける際に均等に締付け力を作用させ、かつ締付け作業や取り外し作業が容易に行なえる。
【0038】
尚、締付けバンド1はトラック形状に平坦部どうしが重なり合うように巻き付けたが両側の円弧部どうしが重なり合うように二重に巻き付けてもよい。また、第1平坦部3bと重なる第1重なり平坦部4c及び第2平坦部3eと重なる第2重なり平坦部4gの重なり領域は、概ね50%以上であれば任意の長さにすることが可能である。また、締付けバンド1を被締付け物5に装着する際のバンド部材2のトラック形状の長手方向の中立線Lと第1重なり円弧部4eの中立線Mとのなす角度θも90°より大きく180°より小さい鈍角であれば、いずれでもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 締付けバンド
2 バンド部材
3 内側バンド部
3a フック部
3b 第1平坦部
3c 第1円弧部
3d 係止突起
3e 第2平坦部
3f 第2円弧部
3g 二股状端部
4 外側バンド部
4a 段差吸収部
4b スリット
4c 第1重なり平坦部
4d 締付け耳
4e 第1重なり円弧部
4f 係止孔
4g 第2重なり平坦部
4h 膨出部
4i 補強用突条
5 被締付け物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属帯状のバンド部材をトラック形状に周回させた内周側バンド部とその外周に外側バンド部が重ね合わせて巻かれる締付けバンドであって、
前記内側バンド部は、内側バンド端より所定長有する平坦部にフック部が形成された第1平坦部と、該第1平坦部に連続する第1円弧部と、該第1円弧部に連続し所定長有する平坦部に係止突起が形成された第2平坦部と、該第2平坦部に連続し前記第1平坦部に周回して連続する第2円弧部と、を有し、
前記外側バンド部は、前記第2円弧部に連続して前記第1平坦部と重ね合わされ、前記第1平坦部の先端の段差吸収する段差吸収部が形成されるとともに前記フック部が挿入係止されるスリットが形成された第1重なり平坦部と、該第1重なり平坦部に連続して前記第1円弧部と重ね合わされ、中途部に外方に門形に折り曲げ形成された締付け耳が形成された第1重なり円弧部と、前記第1重なり円弧部に連続して前記第2平坦部と重ね合わされ、前記係止突起の係止する係止孔が形成された第2重なり平坦部と、を具備し、
前記第1平坦部と前記第1重なり平坦部との重なり領域と、前記第2平坦部と前記第2重なり平坦部との重なり領域の少なくとも一方が50〜100%の範囲で形成されていることを特徴とする締付けバンド。
【請求項2】
被締付け物に前記第1平坦部、前記第1円弧部、前記第2平坦部を沿わせた状態で、直線的に連続する前記第2円弧部及び前記第1重なり平坦部と、前記第1重なり円弧部及び前記第2重なり平坦部とが、前記バンド部材のトラック形状の長手方向の中立線と締付け耳が形成された前記第2重なり円弧部の中立線とのなす角度が90度より大きく180度より小さい鈍角に形成されている請求項1記載の締付けバンド。
【請求項3】
前記第1重なり平坦部に形成された前記スリットの前記フック部が挿入係止される係止端部と反対側端部には、外方に膨出した膨出部が形成されている請求項1又は請求項2記載の締付けバンド。
【請求項4】
前記第1重なり平坦部に形成された前記スリットの両側には外側に膨らんだ補強用突条が各々形成されている請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の締付けバンド。
【請求項5】
前記第1重なり円弧部に形成された前記締付け耳を潰すことにより前記内側バンド部材及び外側バンド部材を縮径させ、前記内側バンド部の前記第1平坦部先端を前記外側バンド部の段差吸収部に収容して前記バンド部材の内外段差を吸収する請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の締付けバンド。
【請求項1】
金属帯状のバンド部材をトラック形状に周回させた内周側バンド部とその外周に外側バンド部が重ね合わせて巻かれる締付けバンドであって、
前記内側バンド部は、内側バンド端より所定長有する平坦部にフック部が形成された第1平坦部と、該第1平坦部に連続する第1円弧部と、該第1円弧部に連続し所定長有する平坦部に係止突起が形成された第2平坦部と、該第2平坦部に連続し前記第1平坦部に周回して連続する第2円弧部と、を有し、
前記外側バンド部は、前記第2円弧部に連続して前記第1平坦部と重ね合わされ、前記第1平坦部の先端の段差吸収する段差吸収部が形成されるとともに前記フック部が挿入係止されるスリットが形成された第1重なり平坦部と、該第1重なり平坦部に連続して前記第1円弧部と重ね合わされ、中途部に外方に門形に折り曲げ形成された締付け耳が形成された第1重なり円弧部と、前記第1重なり円弧部に連続して前記第2平坦部と重ね合わされ、前記係止突起の係止する係止孔が形成された第2重なり平坦部と、を具備し、
前記第1平坦部と前記第1重なり平坦部との重なり領域と、前記第2平坦部と前記第2重なり平坦部との重なり領域の少なくとも一方が50〜100%の範囲で形成されていることを特徴とする締付けバンド。
【請求項2】
被締付け物に前記第1平坦部、前記第1円弧部、前記第2平坦部を沿わせた状態で、直線的に連続する前記第2円弧部及び前記第1重なり平坦部と、前記第1重なり円弧部及び前記第2重なり平坦部とが、前記バンド部材のトラック形状の長手方向の中立線と締付け耳が形成された前記第2重なり円弧部の中立線とのなす角度が90度より大きく180度より小さい鈍角に形成されている請求項1記載の締付けバンド。
【請求項3】
前記第1重なり平坦部に形成された前記スリットの前記フック部が挿入係止される係止端部と反対側端部には、外方に膨出した膨出部が形成されている請求項1又は請求項2記載の締付けバンド。
【請求項4】
前記第1重なり平坦部に形成された前記スリットの両側には外側に膨らんだ補強用突条が各々形成されている請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の締付けバンド。
【請求項5】
前記第1重なり円弧部に形成された前記締付け耳を潰すことにより前記内側バンド部材及び外側バンド部材を縮径させ、前記内側バンド部の前記第1平坦部先端を前記外側バンド部の段差吸収部に収容して前記バンド部材の内外段差を吸収する請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の締付けバンド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−210042(P2012−210042A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73319(P2011−73319)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【特許番号】特許第4842405号(P4842405)
【特許公報発行日】平成23年12月21日(2011.12.21)
【出願人】(390034784)株式会社ミハマ (14)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【特許番号】特許第4842405号(P4842405)
【特許公報発行日】平成23年12月21日(2011.12.21)
【出願人】(390034784)株式会社ミハマ (14)
【Fターム(参考)】
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