説明

締固め機

【課題】深溝内での締固め作業において深溝の際を確実に締め固めることができ、締固め作業の作業性を向上させた締固め機を提供する。
【解決手段】上下方向の往復運動を与えるための動力源(6)と、前記動力源の外周を囲んで配設されたハンドル(18)と、前記動力源の下側に配設され、前記往復運動を伝達するための伝達機構を有し、上下に伸縮可能な本体部(4)と、前記本体部の下端部に取り付けられた取付ベース(8)と、前記取付ベースに複数個の取付部材を介して接続され、前記伝達機構からの往復運動を受けて上下動しながら前記地盤を叩いて締め固める整地板(3)とを備えた締固め機(1)において、前記整地板は、前記整地板の中央部分に設けられ、前記複数個の取付部材が取り付けられるべき一組の被取付部からなる第1の被取付部(12)と、前記第1の被取付部の左右方向の少なくともいずれか一方にずれた位置に設けた第2の被取付部(11)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深溝内での作業性を高めた締固め機に関する。
【背景技術】
【0002】
締固め機が特許文献1に開示されている。この締固め機は、道路工事や配管工事等において、地盤の締固め作業に使用されるためのものである。
特許文献1の締固め機は、本体と、本体の上部に取り付けられた原動機と、本体の下部に取り付けられた輾圧板(整地板)と、本体に取り付けられ原動機の回転力を往復運動力に変換する往復運動機構とを備えている。また、本体の上部には操向用のハンドルが取り付けられており、このハンドルは本体の上方にて当該本体を囲んでいる。したがって、原動機が駆動され、この回転力が往復運動機構にて往復運動力に変換されることにより輾圧板が上下に振動する。そして、作業者はハンドルを握り、締固め機を操向することで、地盤の締固め作業を実施する。
【0003】
また、このような締固め機は、作業現場での多様な作業内容に対応するために、輾圧板の小型化が進んでいる。このことからも、現状、締固め機の最外縁はハンドルによって規定されている(特許文献1の図1(a)、(b)、(c)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−3310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載の締固め機が、例えば、上下水道やガス等の配管を埋設するために深溝内で使用される場合、締固め機の本体上部まで深溝内に入り込むことになる。その場合、締固め機の最外縁となるハンドルが溝壁に当接することになるため、整地板を溝壁に寄せることができず、深溝の際(きわ)、すなわち溝壁に沿った位置にある深溝の地盤を締め固めることが困難である。
【0006】
また、締固め機を傾けて、整地板を無理に深溝の際に寄せることは、作業者に無理な姿勢での締固め作業を要求することになり、作業性の著しい低下を招く。そして、このような姿勢での作業は、ハンドル内側に収容されている原動機等に悪影響を与えることにもなり、原動機等の故障を招く原因にもなる。
本発明は、上記従来の問題点を考慮したものであって、深溝内での締固め作業において深溝の際を容易に締め固めることができ、締固め作業の作業性を向上させることのできる締固め機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1の発明では、上下方向の往復運動を与えるための動力源と、前記動力源の外周を囲んで配設されたハンドルと、前記動力源の下側に配設され、前記往復運動を伝達するための伝達機構を有し、上下に伸縮可能な本体部と、前記本体部の下端部に取り付けられた取付ベースと、前記取付ベースに複数個の取付部材を介して接続され、前記伝達機構からの往復運動を受けて上下動しながら前記地盤を叩いて締め固めるための整地板とを備えた締固め機において、前記整地板は、前記整地板の中央部分に設けられ、前記複数個の取付部材が取り付けられるべき一組の被取付部からなる第1の被取付部と、前記第1の被取付部の左右方向の少なくともいずれか一方にずれた位置に設けられた第2の被取付部とを有することを特徴とする締固め機が提供される。
【0008】
また、請求項2の発明では、前記整地板の左右方向の幅は、前記ハンドルの幅よりも狭く、前記第2の被取付部は、前記整地板の左右両方向に並んで配設されていることを特徴としている。
また、請求項3の発明では、前記第2の被取付部を用いて前記取付ベースに前記整地板を取り付けたとき、前記整地板の最外縁と前記ハンドルの最外縁が鉛直方向にて略同一の位置となるように、前記第2の被取付部の位置を設定したことを特徴としている。
【0009】
また、請求項4の発明では、前記第1及び第2の被取付部は、複数のボルト孔であり、前記取付部材は前記ボルト孔を挿通可能なボルトであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、整地板には、取付ベースと接続するための第2の被取付部が、第1の被取付部の左右方向の少なくともいずれか一方にずれた位置に設けられている。このため、取付部材で取り付けられるべき被取付部を第1の被取付部から第2の被取付部に変更することにより、締め固めるべき地盤の形状等に適合させて整地板を移動させることができる。したがって、例えば深溝の地盤を締め固める場合において、整地板を深溝の際(きわ)、すなわち溝壁に沿った位置まで移動させて、このような際の地盤を締め固めることができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、整地板の左右方向の幅は、ハンドルの幅よりも狭く、第2の被取付部は、本体部の左右両方向に並んで配設されている。このため、被取付部を第1の被取付部から第2の被取付部に変更することにより、整地板を本体部に対して左右方向、即ち、幅方向に移動させることができる。すなわち、整地板を本体部に対してオフセットさせることができる。これにより、深溝に対する締固め機の本体部の位置を変えることなく、ハンドルの幅より狭い整地板であっても、確実に深溝の溝壁側に寄せることができる。したがって、締め固めるべき地盤が深溝の底面にある場合において、締固め機の本体部が深溝内に入り込んで締固め機の最外縁となるハンドルが溝壁に当接しても、整地板を溝壁に寄せることができる。これにより、深溝の際(きわ)、すなわち溝壁に沿った位置にある深溝の地盤を容易に、そしてより確実に締め固めることができる。
【0012】
また、整地板を無理に深溝の際に寄せることが不要になり、締固め機を傾ける等、作業者は無理な姿勢で締固め作業をすることはない。このため、深溝の際の地盤を締め固めるときの作業性が著しく向上する。そして、このような姿勢での作業は、ハンドル内側に備わる動力源等に悪影響を与えることがないので、動力源等の故障を防ぐことができる。また、深溝の際の締固めを効果的に実施できるので、締固め精度が向上し、締固め作業後の地面の沈下等を防止することができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、第2の被取付部を用いて取付ベースに整地板を取り付けたとき、整地板の最外縁とハンドルの最外縁が鉛直方向にて略同一の位置となるように、第2の被取付部の位置を設定したため、締固め機の最外縁を規定するハンドルを溝壁に寄せることにより、整地板の最外縁も溝壁に確実に寄せることができる。したがって、作業者は無理な姿勢をとることなく深溝の際を締め固めることができるとともに、深溝の際を確実に締め固めることができる。これにより、締固め作業の作業性が向上する。
【0014】
請求項4の発明によれば、第1及び第2の被取付部を複数のボルト孔とし、取付部材をボルト孔に挿通可能なボルトとすることで、整地板と本体部との取付を簡単な構造で実現できる。さらに、整地板の交換作業も容易且つ迅速となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る締固め機の概略図である。
【図2】整地板の上面図である。
【図3】整地板をオフセットして取り付けた際の締固め機の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る締固め機ついて図面を参照して説明する。
図1を参照すれば、締固め機としてのランマ1は、地盤2に当接し、地盤2を締め固めるための整地板3を備えている。整地板3の上側には、整地板3から上方に延びる本体部4が備わっている。本体部4にはベローズ5が備わり、このベローズ5により本体部4は上下に伸縮可能である。本体部4の上側には、動力源(エンジン6)を有する頭部7が備わる。頭部7は、この頭部7の外周を囲んで配設されたハンドル18を含む。図より明らかなように、整地板3の左右方向の幅は、頭部7の幅よりも狭くなっている。その寸法は、例えば整地板3が250〜300mmであるのに対し、頭部7は350〜420mmである。
【0017】
このようにランマ1は、エンジン6から発生する回転運動を上下の往復運動に変換させ、これを整地板3に伝達するものである。なお、図の例のように往復運動を間接的に整地板3に与えてもよいし、動力源として直接往復運動を整地板3に与えるものを用いてもよい。この往復運動は、例えば本体部4内に形成された往復運動伝達機構(不図示)により整地板3に伝達される。往復運動が伝達された整地板3は、上下に往復運動し、地盤2を叩いて締固めながら前進する。このときの反発力でベローズ5が伸縮し、衝撃を受け止める。
【0018】
本体部4の下端には、取付ベース8が備わり、この取付ベース8は取付部材たる複数個のボルト9を介して整地板3と接続されている。このため、整地板3にはボルト9を挿通させるためのボルト孔10が形成されている。図の例では、4本のボルト9及びナット13を用いて整地板3と取付ベース8が接続されている。このように、ボルト9をボルト孔10に挿通するだけで、整地板3と本体部4との接続を簡単な構造で実現できる。さらに、整地板3の交換作業も容易且つ迅速となる。
【0019】
上述した例の場合、4個のボルト孔10で一組の被取付部が形成されている。特に、整地板3の中央部分に設けられた一組の被取付部は、第1の被取付部12を形成している。この第1の被取付部12を用いて整地板3と本体部4とを接続すると、整地板3が本体部に対して中心に位置することになる。通常使用する場合は、この第1の被取付部12を用いる。
さらに、整地板3にはこの第1の被取付部12とは別の一又は複数組(図1では二組)の第2の被取付部11が設けられている。この第2の被取付部11もまた4個のボルト孔14が組をなしており、これらボルト孔14は、第1の被取付部12の一組のボルト孔10と同様な間隔を存して互いに配置されている。
【0020】
このように、整地板3には、本体部4と接続するための第2の被取付部11が、第1の被取付部12の左右方向の少なくともいずれか一方にずれた位置に設けられているため、ボルト9で取り付けられるべき被取付部を変更することにより、締め固めるべき地盤の形状等に適合させて整地板3を移動させることができる。したがって、例えば、図1に示すような、深溝の地盤2を締め固める場合において、整地板3を深溝の際、すなわち溝壁20に沿った位置まで移動させて、このような際の地盤2を締め固めることができる。
【0021】
具体的には、図2に示されるように、整地板3には第1の被取付部12とは別の二組の第2の被取付部11が設けられており、これら第2の被取付部11は整地板3の左右両方向に並んで配置されている。さらに詳述すると、各第2の被取付部11のボルト孔14のうち2つはそれぞれ、第1の被取付部12のボルト孔10より整地板3の幅方向外側に位置付けられている。また、各第2の被取付部11のボルト孔14のうち他の2つはそれぞれ、整地板3の幅方向に離間する第1の被取付部12の2つのボルト孔10の間に位置付けられている。したがって、二組の第2の被取付部11は整地板3の幅方向に第1の被取付部12を挟んで配置されている。この場合、整地板3の幅方向に離間するボルト孔10の間に配置された第2の被取付部11の2つのボルト孔14は、二組の第2の被取付部11それぞれに共用されている。
【0022】
上述のように、整地板3の左右方向の幅は、頭部7、即ち、ハンドル18の幅よりも狭く、複数組の第2の被取付部11は、本体部4の左右両方向に並んで配設されている。このため、被取付部を第1の被取付部12から第2の被取付部11に変更することにより、整地板3を本体部4に対して左右方向、即ち、幅方向に移動させることができる。すなわち、整地板3を本体部4に対してオフセットさせることができる。これにより、深溝に対するランマ1の本体部4の位置を変えることなく、ハンドル18の幅より狭い整地板3であっても、確実に深溝の溝壁20側に寄せることができる。したがって、締め固めるべき地盤が深溝の底面にある場合において、ランマ1の本体部が深溝内に入り込んでランマ1の最外縁となるハンドル18が溝壁に当接しても、整地板3を溝壁20に寄せることができる。これにより、深溝の際(きわ)、即ち、溝壁20に沿った位置にある深溝の地盤を容易に、そしてより確実に締め固めることができる。
【0023】
また、整地板3を無理に深溝の際に寄せることが不要になり、ランマ1を傾ける等、作業者は無理な姿勢で締固め作業をすることはない。このため、深溝の際の地盤を締め固めるときの作業性が著しく向上する。そして、このような姿勢での作業は、ハンドル18内側の頭部7に収容されているエンジン6等に悪影響を与えることがないので、エンジン6等の故障を防ぐことができる。また、深溝の際の締固めを効果的に実施できるので、締固め精度が向上し、締固め作業後の地面の沈下等を防止することができる。
【0024】
さらに、第2の被取付部11を用いて取付ベース8に整地板3を取り付けたとき、本体部4に対する整地板3の最外縁とハンドル18との最外縁は鉛直方向にて略同一の位置にある(図1参照)。
このため、ランマ1の最外縁を規定するハンドル18を溝壁に寄せることにより、整地板3の最外縁も溝壁20に確実に寄せることができる。したがって、作業者は無理な姿勢をとることなく深溝の際を締め固めることができるとともに、深溝の際を確実に締め固めることができる。これにより、締固め作業の作業性が向上する。
【0025】
以上で本発明の一実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の実施形態を逸脱しない範囲で種々の変更ができる。
例えば、第2の被取付部11は、整地板3の幅方向に限らず、任意の方向に対して並べることができる。
【0026】
また、第1及び第2の被取付部12,11はボルト孔10,14に、又、取付部材はボルト9に限らず、整地板3と取付ベース8とを確実に接続できるものであればよい。
また、本発明に係るランマ1は、頭部7まで溝内に入り込まないような深さの溝においても十分にその効果を発揮する。
【符号の説明】
【0027】
1 ランマ(締固め機)
2 地盤
3 整地板
4 本体部
5 ベローズ
6 エンジン(動力源)
7 頭部
8 取付ベース
9 ボルト(取付部材)
10 ボルト孔(第1の被取付部)
11 第2の被取付部
12 第1の被取付部
13 ナット
14 ボルト孔(第2の被取付部)
18 ハンドル
20 溝壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向の往復運動を与えるための動力源と、
前記動力源の外周を囲んで配設されたハンドルと、
前記動力源の下側に配設され、前記往復運動を伝達するための伝達機構を有し、上下に伸縮可能な本体部と、
前記本体部の下端部に取り付けられた取付ベースと、
前記取付ベースに複数個の取付部材を介して接続され、前記伝達機構からの往復運動を受けて上下動しながら前記地盤を叩いて締め固めるための整地板と
を備えた締固め機において、
前記整地板は、
前記整地板の中央部分に設けられ、前記複数個の取付部材が取り付けられるべき一組の被取付部からなる第1の被取付部と、
前記第1の被取付部の左右方向の少なくともいずれか一方にずれた位置に設けられた第2の被取付部と
を有することを特徴とする締固め機。
【請求項2】
前記整地板の左右方向の幅は、前記ハンドルの幅よりも狭く、
前記第2の被取付部は、前記整地板の左右両方向に並んで配設されていることを特徴とする請求項1に記載の締固め機。
【請求項3】
前記第2の被取付部を用いて前記取付ベースに前記整地板を取り付けたとき、前記整地板の最外縁と前記ハンドルの最外縁が鉛直方向にて略同一の位置となるように、前記第2の被取付部の位置を設定したことを特徴とする請求項1又は2に記載の締固め機。
【請求項4】
前記第1及び第2の被取付部は、複数のボルト孔であり、前記取付部材は前記ボルト孔を挿通可能なボルトであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の締固め機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−172298(P2012−172298A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31897(P2011−31897)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(594201397)株式会社日立建機カミーノ (18)
【Fターム(参考)】