説明

締結具及び締結方法

【課題】複数の被締結部材を好適に締結することができる、締結具及び締結方法を提供することを目的とする。
【解決手段】第一FRP材200及び第二FRP材210に打ち込まれ、第一FRP材200と、第二FRP材210とを締結するための締結具10である。締結具10は、パンチ部20と、ファスナ部40とを備える。パンチ部20は、第一FRP材200及び第二FRP材210への締結具10の打ち込みによって、第一FRP材200及び第二FRP材210を貫通する貫通孔220を形成する。ファスナ部40は、パンチ部20の後端部分と取り外し自在に固定され、第一FRP材200及び第二FRP材210への締結具10の打ち込みに伴い貫通孔220に挿入され、パンチ部20が取り外された状態において、第一FRP材200と、第二FRP材210とを締結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の被締結部材を締結するための締結具、及び、締結具を用いた締結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の被締結部材を締結するための技術が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。特許文献1には、FRP接合構造が開示されている。FRP接合構造では、セルフピアスリベットが用いられる。FRP接合構造は、FRP部材としての右半体及び左半体とが重ね合わせられて接着剤を介して相互に接合され、接着剤が未硬化の状態で、右半体から打ち込まれたセルフピアスリベットの先端が左半体内に留まっているように構成されている。右半体を貫通したセルフピアスリベットの先端側は、左半体内でダイによって座屈変形するとともに、左半体内に留まったまま展開する。特許文献1では、FRP部材としての右半体及び左半体は、CFRP積層部材である。
【0003】
特許文献2には、重ね合せられたFRP板の締結方法及びその締結構造が開示されている。FRP板の締結には、セルフピアスリベットが用いられる。FRP板の締結では、一方のFRP板の被締結部に金属板が密着され、他方のFRP板の被締結部から両FRP板にセルフピアスリベットが打ち込まれる。リベット頭部は、他方のFRP板の被締結部に密着し、両FRP板を貫通したリベット胴部の環状先端部分は、金属板に食い込み、拡径変形する。リベット胴部の穴内には両FRP板に対するピアシングにより生じたFRPくず及び金属板の中心部分が進入する。特許文献2では、FRP板は、炭素繊維製織布とエポキシ樹脂とよりなる積層板である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−229980号公報
【特許文献2】特開2005−69451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、自動車、船舶、鉄道、航空機等の車両を製作(生産)する場合、これらを構成する各部品の材質には鉄鋼が用いられ、それらの組立には溶接が用いられている。これに対し近年、軽量化等を目的として、各部品の材質にアルミニウム、アルミニウム合金、及び/又は、GFRP材、CFRP材等の繊維強化樹脂材(以下、「FRP材」ともいう。)等を用いる研究がなされ、既に一部車両において量産化されている。鉄鋼以外の材質の場合、溶接による組立は、困難又は不可能である。そのため、組立に接着剤を用いることがある。しかし、接着剤は、完全に乾くまでは、固着力が低い。
【0006】
複数の被締結部材を締結する方法として、リベット締結がある。リベット締結は、材質に関わらず安定した締結ができる利点がある。しかし、事前に、被締結部材に穴加工を行う必要があり、作業工程が増加してしまう。被締結部材がFRP材の場合、ドリル、パンチ等の穴開け工具の消耗が激しく、工具寿命が、極端に短くなる場合もある。特許文献1又は特許文献2のようなセルフピアスリベットによれば、下穴加工が不要となる。
【0007】
しかし、特許文献1に開示されているような形状のセルフピアスリベットでは、FRP材のような被締結部材を締結する際、被締結部材に打ち込まれる部分(特許文献1における「セルフピアスリベットの先端側」に対応)で、座屈が発生してしまう。なお、ここでいう座屈は、特許文献1に開示されたダイによる座屈とは異なる。FRP材は延性が非常に低いため、実際には、FRP材自身が大きく変形することはなく、破損してしまう。被締結部材がCFRP材である場合、層間剥離が発生し易い。従って、リベット締結が行われた部分において気密性を確保可能な、所謂、シールドかしめを、特許文献1に開示されたような態様で、好適に行うことは、困難を伴う。
【0008】
特許文献2のような態様の、所謂、打ち抜きかしめでは、特許文献2に開示されているように、被締結部材を打ち抜く際、カス(特許文献2における「FRPくず」に対応)が発生する。被締結部材が、例えば鉄鋼材である場合、リベットの中空穴に、このカスを、収納することが可能であるが、FRP材では、困難となる。そのため、次工程又は最終製品内にて、カスが脱落する可能性がある。特許文献2のように金属板を用い、この金属板によってシールドかしめを実現する構成によれば、カスの脱落と、FRP材の破損等に対応することが可能であるとも考えられる。しかし、常に、金属板を用いなければならず、金属板を含む締結構造となってしまう。この他、金属板の採用は、作業工程の追加を伴い、設備の複雑化等についての検討が必要となる。さらに、金属板の追加に伴う、コスト増加を考慮しなければならない。
【0009】
本発明は、複数の被締結部材を好適に締結することができる、締結具及び締結方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来の課題に鑑みなされた本発明の一側面は、第一被締結部材と、第二被締結部材と、が重ね合わされた状態において、前記第一被締結部材の側から、前記第一被締結部材及び前記第二被締結部材に打ち込まれ、前記第一被締結部材と、前記第二被締結部材と、を締結するための締結具であって、前記第一被締結部材及び前記第二被締結部材への前記締結具の打ち込みによって、前記第一被締結部材及び前記第二被締結部材を貫通する貫通孔を形成するパンチ部と、前記締結具が打ち込まれる打ち込み方向の後尾側となる前記パンチ部の後端部分と取り外し自在に固定され、前記第一被締結部材及び前記第二被締結部材への締結具の打ち込みに伴い前記貫通孔に挿入され、前記パンチ部が取り外された状態において、前記第一被締結部材と、前記第二被締結部材と、を締結するファスナ部と、を備える、締結具である。
【0011】
これによれば、締結具は、貫通孔を形成するための専用部位としてのパンチ部と、締結するための専用部位としてのファスナ部とを備える。そのため、第一被締結部材及び第二被締結部材への締結具の打ち込みによって、第一被締結部材及び第二被締結部材を打ち抜き、貫通孔を形成する際に生じるカスを、貫通孔を形成するパンチ部と共に、取り除くことが可能となり、カスを取り除いた状態で、ファスナ部による好適な締結を実現することができる。ファスナ部は、パンチ部の後端部分と取り外し自在に固定されている。そのため、パンチ部による貫通孔の形成に伴い、ファスナ部を、好適に貫通孔に挿入することができる。締結対象となる第一被締結部材及び第二被締結部材に、事前に、貫通孔を形成するような作業は必要なく、そのための工具に関し、摩耗等の問題も生じない。
【0012】
この締結具は、次のようにしてもよい。前記パンチ部は、前記打ち込み方向の先頭側が開口した筒状である、ようにしてもよい。これによれば、カスの少なくとも一部を、パンチ部に収容させることができる。そのため、より好適に、パンチ部と共に、カスを取り除くことができる。
【0013】
また、前記パンチ部は、前記打ち込み方向の先頭側が開口した有底筒状である、ようにしてもよい。これによれば、パンチ部に収容されたカスが、ファスナ部の側に進入することを防止することができる。
【0014】
また、前記打ち込み方向の先頭側となる前記パンチ部の先端部分の外径は、前記パンチ部の先端部分と、前記パンチ部の後端部分と、の間の前記パンチ部の中間部分の外径より、小径である、ようにしてもよい。これによれば、貫通孔を、スムーズに形成することができる。
【0015】
また、前記ファスナ部は、前記打ち込み方向の先頭側が開口した筒状をなし、前記打ち込み方向の後尾側となる前記ファスナ部の後端部分で、外周に張り出し、前記ファスナ部が前記貫通孔に挿入された状態において、前記貫通孔の外周部である前記第一被締結部材の部分に係合する第一鍔部を含み、前記貫通孔を通過して前記第二被締結部材の側に突出した前記ファスナ部の先端部分は、前記貫通孔の内径より大きく拡径される、ようにしてもよい。これによれば、パンチ部にて形成された貫通孔を介して、第一被締結部材及び第二被締結部材を、好適に締結することができる。
【0016】
また、前記ファスナ部は、前記打ち込み方向に貫通する筒状をなし、前記打ち込み方向の先頭側となる前記ファスナ部の先端部分に形成され、筒状の前記ファスナ部の内部空間に突出した爪部と、前記打ち込み方向の後尾側となる前記ファスナ部の後端部分で、外周に張り出し、前記ファスナ部が前記貫通孔に挿入された状態において、前記貫通孔の外周部である前記第一被締結部材の部分に係合する第一鍔部と、を含み、前記締結具は、前記ファスナ部の後端部分から、前記内部空間に挿入され、前記締結具が、前記第一被締結部材及び前記第二被締結部材に打ち込まれる場合、前記打ち込み方向に押圧される第一ピン部を、さらに備え、前記第一ピン部は、前記パンチ部を、前記打ち込み方向に押圧し、前記貫通孔を形成した前記パンチ部を前記ファスナ部から取り外し、前記爪部を、前記打ち込み方向に交差する方向に押圧し、前記貫通孔を通過して前記第二被締結部材の側に突出した前記ファスナ部の先端部分を、前記貫通孔の内径より大きく拡径させる、ようにしてもよい。これによれば、第一被締結部材及び第二被締結部材を締結するために要する作業工程を少なくし、好適な締結方法を実現可能な締結具とすることができる。締結構造において、気密性を確保することもできる。
【0017】
また、前記ファスナ部は、前記打ち込み方向に貫通する筒状をなし、前記打ち込み方向の後尾側となる前記ファスナ部の後端部分で、外周に張り出し、前記ファスナ部が前記貫通孔に挿入された状態において、前記貫通孔の外周部である前記第一被締結部材の部分に係合する第一鍔部を含み、前記締結具は、前記打ち込み方向の先頭側となる前記ファスナ部の先端部分から、筒状の前記ファスナ部の内部空間に挿入され、前記内部空間に挿入された状態において、前記貫通孔の外周部である前記第二被締結部材の部分に係合する、第二ピン部を、さらに備え、前記第二ピン部は、前記ファスナ部が前記貫通孔に挿入され、前記ファスナ部から前記パンチ部が取り外された状態において、前記内部空間に挿入され、前記内部空間を通過して前記第一鍔部の側に突出した前記第二ピン部の先端部分は、前記第一鍔部に係合するよう、前記内部空間の内径より大きく拡径される、ようにしてもよい。これによれば、締結構造において、第一被締結部材及び第二被締結部材に接する部材を低硬度とすることが可能な締結具とすることができる。即ち、低硬度とされたファスナ部及び第二ピン部によって、第一被締結部材及び第二被締結部材を締結することができる。ファスナ部及び第二ピン部を低硬度とすると、これらにそれぞれ接する第一被締結部材及び第二被締結部材の各部分の破損を抑制することができる。締結構造において、気密性を確保することもできる。
【0018】
また、前記締結具は、管状で、前記パンチ部と前記ファスナ部とに嵌合される、樹脂製の固定部を、さらに備える、ようにしてもよい。これによれば、貫通孔を封止し、気密性の高い締結構造を実現可能な締結具とすることができる。
【0019】
本発明の他の側面は、第一被締結部材と、第二被締結部材と、が重ね合わされた状態において、前記第一被締結部材の側から、前記第一被締結部材及び前記第二被締結部材に打ち込まれ、前記第一被締結部材と、前記第二被締結部材と、を締結するための締結具を用いた締結方法であって、前記第一被締結部材及び前記第二被締結部材への前記締結具の打ち込みによって、前記締結具が備えるパンチ部にて、前記第一被締結部材及び前記第二被締結部材を貫通する貫通孔を形成し、前記締結具が打ち込まれる打ち込み方向の後尾側となる前記パンチ部の後端部分と取り外し自在に固定された、前記締結具が備えるファスナ部を、前記貫通孔に挿入する挿入工程と、前記貫通孔に挿入された前記ファスナ部から、前記パンチ部を取り外す分離工程と、前記貫通孔に挿入され、前記パンチ部が取り外された状態の前記ファスナ部で、前記第一被締結部材と、前記第二被締結部材と、を締結する締結工程と、を含む締結方法である。
【0020】
この締結方法は、次のようにしてもよい。前記ファスナ部は、前記打ち込み方向の先頭側が開口した筒状をなし、前記打ち込み方向の後尾側となる前記ファスナ部の後端部分で、外周に張り出し、前記ファスナ部が前記貫通孔に挿入された状態において、前記貫通孔の外周部である前記第一被締結部材の部分に係合する第一鍔部を含み、前記締結工程では、前記貫通孔を通過して前記第二被締結部材の側に突出した前記ファスナ部の先端部分を、前記貫通孔の内径より大きく拡径させ、前記第一被締結部材の部分に係合した前記第一鍔部と、拡径された前記ファスナ部の先端部分と、で、前記第一被締結部材と、前記第二被締結部材と、を締結する、ようにしてもよい。
【0021】
また、前記ファスナ部は、前記打ち込み方向に貫通する筒状をなし、前記打ち込み方向の先頭側となる前記ファスナ部の先端部分に形成され、筒状の前記ファスナ部の内部空間に突出した爪部と、前記打ち込み方向の後尾側となる前記ファスナ部の後端部分で、外周に張り出し、前記ファスナ部が前記貫通孔に挿入された状態において、前記貫通孔の外周部である前記第一被締結部材の部分に係合する第一鍔部と、を含み、前記締結具は、前記ファスナ部の後端部分から、前記内部空間に挿入され、前記締結具が、前記第一被締結部材及び前記第二被締結部材に打ち込まれる場合、前記打ち込み方向に押圧される第一ピン部を、さらに備え、前記挿入工程では、前記第一ピン部を、前記打ち込み方向に押圧すると共に、前記打ち込み方向に押圧された前記第一ピン部にて、前記パンチ部を、前記打ち込み方向に押圧して前記貫通孔を形成し、前記分離工程では、前記第一ピン部を、前記打ち込み方向に押圧すると共に、前記打ち込み方向に押圧された前記第一ピン部にて、前記パンチ部を、前記打ち込み方向に押圧して、前記貫通孔に挿入された前記ファスナ部から、前記パンチ部を取り外し、前記締結工程では、前記第一ピン部を、前記打ち込み方向に押圧すると共に、前記打ち込み方向に押圧された前記第一ピン部にて、前記爪部を、前記打ち込み方向に交差する方向に押圧して、前記貫通孔を通過して前記第二被締結部材の側に突出した前記ファスナ部の先端部分を、前記貫通孔の内径より大きく拡径させ、前記第一被締結部材の部分に係合した前記第一鍔部と、拡径された前記ファスナ部の先端部分と、で、前記第一被締結部材と、前記第二被締結部材と、を締結する、ようにしてもよい。
【0022】
また、
前記ファスナ部は、前記打ち込み方向に貫通する筒状をなし、前記打ち込み方向の後尾側となる前記ファスナ部の後端部分で、外周に張り出し、前記ファスナ部が前記貫通孔に挿入された状態において、前記貫通孔の外周部である前記第一被締結部材の部分に係合する第一鍔部を含み、前記締結具は、前記打ち込み方向の先頭側となる前記ファスナ部の先端部分から、筒状の前記ファスナ部の内部空間に挿入され、前記内部空間に挿入された状態において、前記貫通孔の外周部である前記第二被締結部材の部分に係合する、第二ピン部を、さらに備え、前記挿入工程では、前記打ち込み方向に押圧される前記締結方法のための型部材を、前記ファスナ部の後端部分から、前記内部空間に挿入し、前記型部材を介して、前記パンチ部を、前記打ち込み方向に押圧して、前記貫通孔を形成し、前記分離工程では、前記型部材を介して、前記パンチ部を、前記打ち込み方向に押圧して、前記貫通孔に挿入された前記ファスナ部から、前記パンチ部を取り外し、前記締結工程では、前記パンチ部が取り外された前記ファスナ部の先端部分から、前記第二ピン部を、前記内部空間に挿入し、前記内部空間を通過して前記第一鍔部の側に突出した前記第二ピン部の先端部分を、前記内部空間の内径より大きく拡径させて前記第一鍔部に係合させ、前記第一被締結部材の部分に係合し、且つ、拡径された前記第二ピン部の先端部分に係合した前記第一鍔部と、前記第二被締結部材の部分に係合した前記第二ピン部と、で、前記第一被締結部材と、前記第二被締結部材と、を締結する、ようにしてもよい。
【0023】
上述したような各締結方法は、上述した何れかの締結具を用いた締結方法として特定されるものである。従って、上述したような有利な機能が実現される締結方法とすることができる。この他、前記第一被締結部材及び前記第二被締結部材の少なくとも何れか一方が、繊維強化樹脂材である、ような場合を対象とした締結方法として特定することもできる。これによれば、繊維強化樹脂材を被締結部材とする締結を、好適に行うことができる。従って、繊維強化樹脂材による締結構造を好適に生産することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、複数の被締結部材を好適に締結することができる、締結具及び締結方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第一実施形態の締結具の概略構成を示す断面図である。
【図2】(A)〜(C)は、図1に示す第一実施形態の締結具を用いた締結方法の概略を説明する断面図である。
【図3】(A)及び(B)は、図1に示す第一実施形態の締結具を用いた締結方法の概略を説明する断面図である。(C)は、図1に示す第一実施形態の締結具による締結構造の概略構成を示す断面図である。
【図4】第一実施形態の他の締結具の概略構成を示す断面図である。
【図5】図1及び図4に示す第一実施形態の締結具による他の締結方法及び締結構造の概略を説明する断面図である。
【図6】図1及び図4に示す第一実施形態の締結具に基づき、固定部を備える構成を説明する図である。(A)は、図1に示す締結具に基づいた締結具の概略構成を示す断面図である。(B)は、図4に示す他の締結具に基づいた締結具の概略構成を示す断面図である。(C)は、図6(A)及び(B)に示す締結具のファスナ部が、重ね合わされた2枚の被締結部材としてのFRP材を貫通する貫通孔に挿入された状態を説明する断面図である。
【図7】図1及び図4に示す第一実施形態の締結具に基づき、他の固定部を備える構成を説明する図である。(A)は、図1に示す締結具に基づいた締結具の概略構成を示す断面図である。(B)は、図4に示す他の締結具に基づいた締結具の概略構成を示す断面図である。(C)は、図7(A)及び(B)に示す締結具のファスナ部が、重ね合わされた2枚の被締結部材としてのFRP材を貫通する貫通孔に挿入された状態を説明する断面図である。
【図8】第二実施形態の締結具の概略構成を示す断面図である。
【図9】(A)及び(B)は、図8に示す第二実施形態の締結具を用いた締結方法の概略を説明する断面図である。(C)は、図8に示す第二実施形態の締結具による締結構造の概略構成を示す断面図である。
【図10】第三実施形態の締結具の概略構成を示す断面図である。
【図11】(A)〜(C)は、図10に示す第三実施形態の締結具を用いた締結方法の概略を説明する断面図である。
【図12】図10に示す第三実施形態の締結具による締結構造の概略構成を示す断面図である。
【図13】第四実施形態の締結具の概略構成を示す断面図である。
【図14】(A)〜(C)は、図13に示す第四実施形態の締結具を用いた締結方法の概略を説明する断面図である。
【図15】(A)及び(B)は、図13に示す第四実施形態の締結具を用いた締結方法の概略を説明する断面図である。(C)は、図13に示す第四実施形態の締結具による締結構造の概略構成を示す断面図である。
【図16】第五実施形態の締結具の概略構成を示す断面図である。
【図17】(A)及び(B)は、図16に示す第五実施形態の締結具を用いた締結方法の概略を説明する断面図である。(C)は、図16に示す第五実施形態の締結具による締結構造の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を実施するための実施形態を、図面を用いて説明する。本発明は、以下に記載の各構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。例えば、以下に示す構成の一部は、省略し又は他の構成等に置換してもよい。他の構成を含むようにしてもよい。この他、以下の第一実施形態〜第五実施形態において、所定の実施形態での各構成は、適宜、他の実施形態に採用することができる。説明に用いる各図において、ハッチングは、断面を示すものである。
【0027】
以下では、締結対象の被締結部材が、2枚の板(薄板)状のFRP材(「第一FRP材200」及び「第二FRP材210」)である場合を例に説明する。ただし、第一実施形態〜第五実施形態に係る締結具10〜19は、2枚以上の被締結部材を締結対象とし、これら複数枚の被締結部材を締結する場合にも採用することができる。締結具10〜19は、各種の被締結部材を好適に締結することが可能で、何れの材質の被締結部材についても採用することができる。被締結部材が、2枚以上である場合、及び/又は、FRP材以外の材質である場合については、説明を省略するが、これらを締結対象とした締結は、以下と同様に、締結具10〜19を用いて実施される。締結具10〜19は、重ね合わされた第一FRP材200及び第二FRP材210のうち、第一FRP材200の側から、第二FRP材210の側に向けて打ち込まれるものとする。
【0028】
<第一実施形態>
<締結具>
第一実施形態の締結具10について、図1等を参照して説明する。締結具10は、パンチ部20と、ファスナ部40とを備える。締結具10は、例えば、クロム・モリブデン鋼材(SCM材)等のような合金鋼材の焼入材によって形成される(締結具11〜19についても同じ)。締結具10において、パンチ部20は、ファスナ部40に取り付けられ、固定された状態とされる。パンチ部20とファスナ部40とは、それぞれ、別体の構成であって、パンチ部20は、ファスナ部40に嵌合され、ファスナ部40から取り外し自在とされる。締結具10は、重ね合わされた第一FRP材200及び第二FRP材210に打ち込まれ、これらを締結する。
【0029】
パンチ部20は、締結具10が、重ね合わされた第一FRP材200及び第二FRP材210に打ち込まれるとき、これらを貫通する貫通孔220(図3等参照)を形成する。パンチ部20は、締結具10において、貫通孔220を形成するための専用部位である。後述するように、パンチ部20は、締結具10の打ち込みに伴い、貫通孔220を形成した後、ファスナ部40から分離した状態となるよう、取り外される。パンチ部20は、図1に示すように、打ち込み方向の先頭側となるパンチ部20の先端部分が開口した筒状である。より具体的には、パンチ部20は、有底筒状である。従って、パンチ部20の内部には、打ち込み方向の先頭側が開口した内部空間31が形成されている。パンチ部20を筒状とし、締結対象との接触面積を減少させると、締結具10の打ち込み荷重を低下させることができる。
【0030】
締結具10が打ち込まれ、パンチ部20によって貫通孔220が形成されるとき、内部空間31には、パンチ部20によって打ち抜かれた第一FRP材200の破片であるカス201が収容される(図2(B)等参照)。即ち、内部空間31は、締結具10の打ち込みに伴い生じるカス201を収容する機能を有する。内部空間31の容積は、締結具10が打ち込まれる際、打ち込み側に配置される第一FRP材200のカス201の一部又は全部を収容できる程度の大きさとするとよい。内部空間31の容積を、カス201の一部を収容できる程度とする場合、内部空間31の容積は、例えば、第一FRP材200が打ち抜かれることによって生じるカス201の体積の1/4〜1/2程度、例えば、1/3程度であってもよい。内部空間31の容積は、打ち込みに対して要求されるパンチ部20の剛性(例えば、パンチ部20の側壁の座屈強度)等の諸条件を考慮して設定するとよい。内部空間31が、カス201と共に、第二FRP材210の破片であるカス211の一部又は全部を、収容する機能を有するようにしてもよい。パンチ部20を有底筒状とすると、カス201,211が、ファスナ部40の内部に進入することを防止することができる。ただし、諸条件の下、ファスナ部40の内部へのカス201,211の進入が問題とならない場合等においては、パンチ部20は、パンチ部20を貫通する内部空間が形成された筒状としてもよい。カス201,211の収容部としての内部空間の容積を増加させることができる。この他、被締結部材の硬度等によって、打ち込み荷重が問題とならず、及び/又は、カス201,211が問題とならないような場合には、パンチ部20は、内部空間31が形成されていない無空(中実)状としてもよい。
【0031】
筒状(有底筒状)のパンチ部20の側壁の形状に関し、パンチ部20の先端部分の外径φ1は、図1に示すように、パンチ部20の中間部分の外径φ2より、小径(φ1<φ2)とされる。これによって、筒状(有底筒状)のパンチ部20の側壁には、段差32が形成される。パンチ部20の中間部分は、パンチ部20の先端部分と、打ち込み方向の後尾側となるパンチ部20の後端部分(底部)との間の部分である。詳細は後述するが、このような段差32を設けることで、好適な状態の貫通孔220を、スムーズに形成することができる。外径φ1と外径φ2との比率に関し、外径φ1は、外径φ2に対して数パーセント(例えば、2%程度)小さくされる。打ち込み方向において、パンチ部20の先端部分の寸法L1は、パンチ部20の先端から外径φ2とされる中間部分の端部までの寸法L2に対して、所定の比率とされる。例えば、寸法L1は、寸法L2に対して50%程度とされる。パンチ部20の後端部分には、ファスナ部40の側に突出した凸部33が形成される。凸部33は、パンチ部20のファスナ部40への取り外し自在な固定に用いられる。
【0032】
ファスナ部40は、パンチ部20の後端部分と固定されているため、締結具10の打ち込みにおいて、パンチ部20と共に、打ち込み方向に移動する。ファスナ部40は、図1に示すように、打ち込み方向の先頭側となるファスナ部40の先端部分が開口した筒状である。より具体的には、ファスナ部40は、有底筒状である。従って、ファスナ部40の内部には、打ち込み方向の先頭側が開口した内部空間51が形成されている。有底筒状のファスナ部40の側壁を形成する筒状部53の外径は、パンチ部20の中間部分と同様、外径φ2とされる。そのため、ファスナ部40は、締結具10の打ち込みに伴い、パンチ部20と共に移動し、貫通孔220に挿入される。ファスナ部40が貫通孔220に挿入された状態において、パンチ部20は、ファスナ部40から取り外された状態(分離された状態)となる。ファスナ部40は、パンチ部20から取り外された単独の状態で、第一FRP材200と第二FRP材210とを締結する。即ち、ファスナ部40は、締結具10において、第一FRP材200と第二FRP材210とを締結するための専用部位である。
【0033】
打ち込み方向の後尾側となるファスナ部40の後端部分には、外周に張り出した第一鍔部52が設けられている。第一鍔部52は、ファスナ部40が貫通孔220に挿入された状態において、貫通孔220の外周部である第一FRP材200の部分に係合する。即ち、第一鍔部52によれば、打ち込み方向において、ファスナ部40の移動範囲が規制される。そのため、ファスナ部40の全体が貫通孔220に挿入され、又は、ファスナ部40が貫通孔220を通過することが、防止される。有底筒状のファスナ部40において、内部空間51には、凸部33が挿入される。内部空間51が形成されたファスナ部40の側壁となる筒状部53の内径は、凸部33の外径と同等に設定される。例えば、凸部33及び筒状部53との嵌合は、隙間ばめ又は中間ばめとされる。このような嵌合によれば、ファスナ部40からパンチ部20を、スムーズに取り外した状態とすることができる。筒状部53の打ち込み方向の寸法L3は、重ね合わされた第一FRP材200及び第二FRP材210の全体の厚みより、大きくなるように設定される。従って、ファスナ部40が貫通孔220に挿入された状態において、ファスナ部40の先端部分(筒状部53の先端部分)は、貫通孔220を通過して第二FRP材210の側に突出する。第二FRP材210の側に突出したファスナ部40の先端部分は、後述するように、貫通孔220の内径φ2より大きな外径φ10に拡径される(図3(C)参照)。
【0034】
<締結方法及び締結構造>
締結具10を用いた締結方法と、締結具10による締結構造90とについて、図2及び図3等を参照して説明する。締結方法は、例えば、下金型100及び上金型110と、プレス装置等の所定の装置(不図示。以下、「プレス装置」を例に説明する。他の実施形態についても同じ)とを用いて行われる。下金型100及び上金型110は、それぞれ、プレス装置に取り付けられる。締結方法は、図2(A)〜(C)及び図3(A),(B)に示すような複数の工程を含む。以下、各工程を順に説明する。打ち込み方向の先頭側を、上下方向の下側とし、後尾側を、上下方向の上側とする。
【0035】
図2(A)に示す第一準備工程は、第一準備工程に続けて、順次、行われる挿入工程及び分離工程のための工程である。下金型100は、貫通孔220を形成するための穴部101が形成されたダイスである。第一準備工程では、締結対象である第一FRP材200及び第二FRP材210が、重ね合わされた状態で、下金型100にセットされる。続けて、締結具10が、上金型110の内部にセットされる。上金型110において、締結具10が収容される空間は、締結具10のうち、外径が最も大きな第一鍔部52の外周形状に対応した形状とされる。上金型110は、可動部112を含む。可動部112は、プレス装置の可動に伴い、締結具10が収容される空間を、上金型110の内壁111に沿って移動する。例えば、締結具10の打ち込みに際し、可動部112は、打ち込み方向に移動(下降)する。
【0036】
図2(B)に示す挿入工程は、パンチ部20によって貫通孔220を形成し、ファスナ部40を、形成された貫通孔220に挿入する工程である。挿入工程では、プレス装置が稼働し、締結具10の打ち込みが開始される。締結具10の打ち込みは、可動部112が打ち込み方向に移動し、締結具10を打ち込み方向に押圧して行われる。押圧された締結具10は、収容された上金型110の空間内を、打ち込み方向に移動する。挿入工程では、先ず、締結具10が、前述したように押圧されることで、パンチ部20が、打ち込み方向に押圧され、打ち込み方向に移動する。これによって、重ね合わされた第一FRP材200及び第二FRP材210が、パンチ部20によって打ち抜かれ、貫通孔220が形成される。貫通孔220の形成について、具体的に説明する。第一FRP材200及び第二FRP材210には、パンチ部20の先端部分によって、この先端部分の外径φ1(図1参照)に対応した内径φ1の貫通孔(以下、「小径の貫通孔」という。)が形成される。小径の貫通孔の第二FRP材210の側の開口端部には、バリが発生する。続けて、外径φ2のパンチ部20の中間部分が、小径の貫通孔に入り込み、小径の貫通孔内を、外径φ1と外径φ2との差に対応した段差32の寸法分だけ、小径の貫通孔の壁面を削り取るようにして、進行する。段差32が、小径の貫通孔の第二FRP材210の側の開口端部を通過する際、この部分に発生していたバリを切断する。これによって、好適な状態の貫通孔220が形成される。貫通孔220は、パンチ部20の外径φ2に対応した内径φ2となる(図2(C)参照)。
【0037】
内部空間31には、パンチ部20によって打ち抜かれた第一FRP材200のカス201が収容される。第二FRP材210のカス211は、図2(B)に示すように、パンチ部20の先端部分に付着する。パンチ部20によって打ち抜かれた、第一FRP材200及び第二FRP材210の各部分は、打ち抜きの際の摩擦熱によって、溶融し、再度、凝固した後、カス201,211となる。従って、カス201,211は、パンチ部20の内壁及び先端部分に付着する。
【0038】
パンチ部20の先端部分を外径φ1とし、段差32を形成した場合、貫通孔220を、スムーズに形成することができる。この点について、考察する。可動部112の移動に伴い、締結具10は、上金型110の空間内を、打ち抜き方向に移動する。しかし、締結具10は、移動途中に、設計上(理論上)の打ち抜き方向に対して、傾いてしまう。これは、次のようなことが一因であると考えられる。即ち、締結具10において、打ち込み方向の先頭側に位置するパンチ部20は、可動部112の移動に伴い、第一FRP材200の内部及び第二FRP材210の内部を、順次、進行する。第一FRP材200及び第二FRP材210は、微視的には、板厚方向(打ち込み方向に一致)に、強度(硬度)が均質ではなく、ばらつきがある。仮に、可動部112が、理論上の打ち抜き方向に移動し、締結具10が適切に押圧されたとしても、パンチ部20は、第一FRP材200の内部及び第二FRP材210の内部を、強度の低い方向に進行する。その結果、パンチ部20の進行方向は、パンチ部20の先端の外周角部(図2(B)に示す「M部」参照)が、下金型100の穴部101の外周部に向かう方向に傾く。締結具10のように、パンチ部20の先端部分を細径とする構成によれば、パンチ部20の進行方向が傾いたとしても、パンチ部20を、穴部101に挿入することができる。パンチ部20が、下金型100に不必要に接触することがなく、締結具10を、打ち抜き方向に、スムーズに移動させることが可能となる。その結果、前述したように、貫通孔220を、スムーズに形成することができる。
【0039】
締結具10の打ち込みに伴い、パンチ部20と一体的な状態とされたファスナ部40は、パンチ部20と共に打ち込み方向に移動し、パンチ部20によって形成された貫通孔220に挿入される。ファスナ部40の貫通孔220への挿入が継続されると、第一鍔部52が、貫通孔220の外周部である第一FRP材200の部分に係合し、ファスナ部40の移動が、規制される。これによって、挿入工程が完了し、締結方法は、分離工程に移行する。挿入工程から分離工程への移行は、連続的に行われる。
【0040】
図2(C)に示す分離工程は、貫通孔220に挿入されたファスナ部40から、パンチ部20を取り外す工程である。第一鍔部52が、貫通孔220の外周部である第一FRP材200の部分に係合すると、締結具10の打ち込み方向への移動は、急停止する。ここで、挿入工程において、締結具10の打ち込みは、可動部112を高速で移動させ、締結具10に衝撃的な荷重を付加して行われる。従って、第一鍔部52の係合によって、締結具10の打ち込み方向への移動が、急停止すると、締結具10には、慣性力が作用する。上述したように、凸部33と筒状部53との嵌合は、隙間ばめ又は中間ばめとされている。従って、締結具10に作用する慣性力は、パンチ部20にも作用し、パンチ部20は、この慣性力によって、ファスナ部40から取り外される。
【0041】
ファスナ部40から取り外され、分離したパンチ部20は、下金型100内を落下し、下金型100から排出される。貫通孔220の形成に際し、パンチ部20によって打ち抜かれたカス201,211は、パンチ部20の内壁及び先端部分に付着する。従って、カス201,211についても、パンチ部20と共に排出される。これによって、分離工程が完了し、締結方法は、第二準備工程に移行する。図3(A)に示す第二準備工程は、次に行われる締結工程のための工程である。第二準備工程では、第一準備工程〜分離工程で用いられた下金型100が、締結工程のための下金型120とされる。下金型120は、貫通孔220を通過して第二FRP材210の側に突出したファスナ部40の先端部分を、貫通孔220の内径φ2より大きく拡径するためのダイスである。具体的に、下金型120は、内部空間51の形状に対応した形状の突起部121と、この突起部121を囲むように凹部122とが、上金型110と対向する端面に形成されたダイスである。
【0042】
図3(B)に示す締結工程は、第一FRP材200及び第二FRP材210を、貫通孔220に挿入されたファスナ部40によって、具体的に締結する工程である。締結工程では、プレス装置が稼働し、下金型120が、第二FRP材210に接するまで、下金型120又は上金型110の少なくとも何れか一方を、打ち込み方向に対応した方向(鉛直方向)に移動させ、下金型120及び上金型110を、漸次、接近させる。このとき、下金型120の突起部121は、内部空間51に挿入される。ファスナ部40の先端部分は、凹部122の傾斜面に沿って変形し、貫通孔220の内径φ2より大きな外径φ10に拡径される。第一FRP材200及び第二FRP材210は、貫通孔220の外周部である第一FRP材200の部分に係合した第一鍔部52と、拡径されたファスナ部40の先端部分とによって挟み込まれ、締結される。これによって、締結工程は完了する。締結工程が完了した後、下金型120又は上金型110の少なくとも何れか一方を、締結工程の際とは反対の方向に移動させ、下金型120及び上金型110を、離間させる。その後、第一FRP材200及び第二FRP材210をファスナ部40で締結した締結構造90が、プレス装置から取り外される。これによって、図3(C)に示すような締結構造90が得られる。以上、締結方法は、終了する。
【0043】
<第一実施形態における効果>
締結具10によれば、締結具10を、重ね合わされた第一FRP材200及び第二FRP材210に打ち込む際に、パンチ部20によって、貫通孔220を形成することとした。そのため、事前に、第一FRP材200及び第二FRP材210のそれぞれに貫通孔を形成しておく必要がなく、第一FRP材200及び第二FRP材210を重ね合わせる際に、それぞれに形成された貫通孔の位置合わせを行う必要もない。従って、生産性よく、第一FRP材200及び第二FRP材210を締結することができる。パンチ部20を、ファスナ部40から自動的に取り外すことが可能であるため、この点においても、生産性を向上させることができる。
【0044】
締結具10によれば、貫通孔220を形成した際に生じるカス201,211を、パンチ部20と共に除去することができる。そのため、締結構造90を含む製品において、カス201,211が残存し、これが問題となるようなことをなくすことができる。パンチ部20を筒状とすれば、カス201,211がパンチ部20の内壁及び先端部分に付着するため、カス201,211を、確実且つスムーズに除去することができる。特に、パンチ部20を有底筒状とすれば、カス201,211が、パンチ部20を通過することを防止可能で、より好適に、カス201,211を除去することができる。ドリル等の工具を用いて、事前に、貫通孔220を形成するような場合、締結対象がFRP材であると、ドリル等の寿命が問題となることがある。締結具10は、それぞれが、パンチ部20を備えているため、貫通孔220を形成するための工具等の寿命に関する問題は生じない。
【0045】
<他の締結具>
締結具10は、図4に示すような、パンチ部21を備える締結具11としてもよい。締結具11について、図4等を参照して説明する。ただし、上述した締結具10と共通する点についての説明は、省略する。図4に示すような締結具11によっても、上述した締結具10の場合と同様の有利な機能が実現され、有利な効果を得ることができる。
【0046】
締結具11は、パンチ部21と、ファスナ部40とを備える。ファスナ部40は、上述したファスナ部40と同様の構成である。パンチ部21は、締結具11の打ち込み方向の先頭側となるパンチ部21の先端部分が開口し、内部空間31が形成された筒状(有底筒状)である。筒状のパンチ部21の側壁の形状に関し、パンチ部21では、打ち込み方向の全域(「L2」の部分参照)で、同一の外径φ2とされる。このような構成によれば、筒状のパンチ部21の側壁において、所定の肉厚を容易に確保でき、側壁を、高剛性とすることができる。そのため、好適な打ち抜きを実現することができる。パンチ部21の内径φ3を拡大すると、内部空間31の容積を大きくすることができる。例えば、第一FRP材200の板厚が厚くなり、カス201の体積が増加するような場合においても、内部空間31に、カス201を好適に収容することができる。なお、筒状部53の外径を、外径φ2より大きくすれば、ファスナ部40の先端部分の外周側に、段差を設けることができる。
【0047】
締結具11を用いた締結方法では、挿入工程(図2(B)参照)において、小径の貫通孔は形成されず、パンチ部21の外径φ2に対応した内径φ2の貫通孔220が、1回で形成される。パンチ部21には、パンチ部20のような段差32は形成されていないため、上述したようなバリの切断は行われない。バリが発生し難い場合(例えば、次に記載の「座金230」を用いた構成参照)に有用である。
【0048】
<他の締結方法及び締結構造>
図1に示す締結具10及び図4に示す締結具11を用いた他の締結方法と、締結具10,11による締結構造91とについて、図5等を参照して説明する。ただし、上述した締結具10等による場合と共通する点についての説明は、省略する。図5に示す他の締結方法(以下、「図5の締結方法」という。)及び締結構造91によっても、上述した締結具10を用いた締結方法及び締結構造90と同様の有利な機能が実現され、有利な効果を得ることができる。図5に関し、上段に示す2図は、図2(A)に対応した図である。上段に示す2図において、左図は、締結具10による場合を示し、右図は、締結具11による場合を示す。図5中段に示す図は、図2(C)に対応した図である。図5上段及び中段に示す各図では、図2に示す下金型100及び上金型110に対応した構成に関する図示を省略している。図5下段に示す図は、図3(C)に対応した図である。
【0049】
図5の締結方法では、図5上段の2図に示すように、第一FRP材200及び第二FRP材210と共に、座金230が、第二FRP材210の下側で、第二FRP材210に隣接した状態で、下金型(図5で不図示。図11(A)に示す「下金型102」参照)にセットされる。座金230は、位置決めされた状態で、下金型にセットされる。座金230の貫通孔231の内径(座金230の内径)は、諸条件を考慮して設定される。例えば、貫通孔231の内径は、外径φ1より小径に設定され(締結具10の場合)、又は、外径φ2より小径(締結具11の場合)に設定される。貫通孔231の内径が、外径φ1又は外径φ2より小径とされた場合、貫通孔231の外周部である座金230の部分は、パンチ部20,21によって、第一FRP材200及び第二FRP材210と共に、打ち抜かれる。貫通孔231の内径は、パンチ部20の先端部分の外径φ1に対応した寸法、又は、パンチ部20,21の外径φ2に対応した寸法に設定されてもよい。
【0050】
図5の締結方法において、挿入工程(図2(B)参照)、及び、分離工程(図2(C)参照)は、上記同様に行われ、図5中段に示すような状態とされる。ファスナ部40において、筒状部53の打ち込み方向の寸法L3は、第一FRP材200及び第二FRP材210の全体の厚みと、座金230の厚みとを考慮して設定される。即ち、筒状部53の寸法L3は、ファスナ部40が貫通孔220,231に挿入された状態で、ファスナ部40の先端部分が、第二FRP材210の側(座金230の側)に突出するような長さとされる。第二準備工程(図3(A)参照)、及び、締結工程(図3(B)参照)も、上記同様に行われる。その結果、第一FRP材200及び第二FRP材210と、座金230とが、貫通孔220の外周部である第一FRP材200の部分に係合した第一鍔部52と、第二FRP材210の側(座金230の側)に突出し、外径φ10に拡径されたファスナ部40の先端部分とによって挟み込まれ、締結された、図5下段に示すような締結構造91を形成することができる。
【0051】
ところで、座金230を用いない場合、締結工程において、ファスナ部40の先端部分を拡径させる際、第二FRP材210において、貫通孔220の開口端の角部の周辺(図5中段に示す「N」部参照)が、拡径のために付与される荷重によって、破損するおそれがある。そのため、破損に対する対策が必要となる場合がある。座金230を用いた図5の締結方法によれば、拡径のための荷重は、直接的には、座金230に作用する。そのため、このような破損に対する対策を、別途、講じる必要がなく、好適な締結を行うことができる。
【0052】
貫通孔231の内径を、パンチ部20,21の最大外径(外径φ2)以下とすれば、締結具10,11を打ち込む際、座金230が、貫通孔220を形成するためのダイスとして機能する。そのため、前述したN部にバリが発生することを防止することができる。貫通孔231の内径を、パンチ部20,21の最大外径(外径φ2)以下とすれば、ファスナ部40は、貫通孔231に圧入又はガタのない状態で挿入される。分離工程が完了した後、第二準備工程では、下金型が、他の下金型(図5で不図示。図3(A)に示す「下金型120」参照)に交換される。この際、ファスナ部40が、貫通孔231に圧入又はガタのない状態で挿入されていれば、ファスナ部40から座金230が抜け落ちることがなく、図5中段の状態が維持され、第二準備工程をスムーズに行うことができる。締結構造91において、ファスナ部40が貫通孔231に圧入又はガタのない状態で挿入されていると、ファスナ部40(筒状部53)が、貫通孔220内で傾くことを防止することができる。そのため、せん断荷重を向上させ、せん断特性に優れた締結構造91とすることができる。
【0053】
発明者は、締結対象がFRP材であって、本実施形態(後述する他の実施形態を含む)のような締結構造となる場合、FRP材に接する部材の硬度を低くすると、FRP材が破損し易いことを知見している。図5の締結方法及び締結構造91によれば、第二FRP材210に接する座金230を低硬度とすることが可能で、この部分における第二FRP材210の破損を防止することができる。従って、好適な締結構造91を実現することができる。
【0054】
<変形例>
図1及び図4に示す締結具10,11は、図6に示すような固定部60を備える締結具12,13とし、又は、図7に示すような固定部61を備える締結具14,15としてもよい。固定部60,61は、例えば、ファスナ部40に対する、パンチ部20,21の取り外し自在な固定を、より好適に行うための構成である。固定部60,61は、共に、管状で、パンチ部20,21と、ファスナ部40とに嵌合される。固定部60,61は、樹脂材等によって形成される。図6及び図7に示すような締結具12〜15によっても、上述した締結具10,11の場合と同様の有利な機能が実現され、有利な効果を得ることができる。なお、締結具12〜15を用いた締結方法及び締結構造についても、上述したような、座金230を用いた構成としてもよい。
【0055】
(1)締結具12,13について、図6等を参照して説明する。固定部60は、内径φ2の管状とされる。固定部60は、図6(A),(B)に示すように、締結具12,13の軸部に嵌合され、締結具12,13の軸部において、パンチ部20,21とファスナ部40との接触部を覆うような中間位置に設けられる。締結具12,13の軸部は、第一鍔部52の部分を除く、パンチ部20,21の側壁と、筒状部53とにより形成される部分である。固定部60と締結具12,13の軸部との嵌合は、例えば、中間ばめ又は締まりばめとされる。図6(A)に示す例では、打ち込み方向の先頭側となる固定部60の先端部分は、外径φ1であるパンチ部20の先端部分に対して、打ち込み方向の後尾側の位置とされている。
【0056】
締結具12,13を用いた締結方法は、図2(A)〜(C)及び図3(A),(B)と同様の各工程によって実現される。固定部60の外径は、外径φ4とされる。外径φ4は、図6(A),(B)からも明らかな通り、パンチ部20,21の外径φ2より、大径である。従って、挿入工程(図2(B)参照)において、固定部60は、パンチ部20,21の外径φ2に対応した内径φ2の貫通孔220に挿入されることはない。固定部60は、締結具12,13の打ち込みに際し、パンチ部20,21によって形成される貫通孔220の外周部である第一FRP材200の部分に接する。その後、固定部60は、締結具12,13の打ち込み方向への移動に伴い、締結具12,13の軸部に沿って、打ち込み方向の後尾側に押し込まれる。固定部60は、樹脂製であるから、分離工程(図2(C)参照)が完了した時点で、図6(C)に示すように、第一FRP材200と、第一鍔部52との間で押し潰され、この位置に、押し潰された状態で介在する。その後、図6(C)のような状態の構成を対象として、図3の(A),(B)に示す第二準備工程及び締結工程が行われ、完成した締結構造(不図示)は、第一FRP材200と、第一鍔部52との間に押し潰された状態の固定部60が介在する構成を有する。ところで、貫通孔220に起因し、十分な気密性を確保することが困難となる場合もある。押し潰された固定部60が介在する締結構造によれば、固定部60が封止材として機能し、固定部60によって、貫通孔220、詳細には、筒状部53と貫通孔220との間の隙間を封止することができる。即ち、気密性が確保された締結構造を実現することが可能となる。
【0057】
固定部60は、上述した通り、パンチ部20,21とファスナ部40との接触部を覆うような中間位置で、締結具12,13の軸部に嵌合した状態で設けられる。そのため、締結具12,13によれば、ファスナ部40へのパンチ部20,21の固定を、固定部60によって実現することが可能となり、凸部33と筒状部53との嵌合を、緩い状態(隙間ばめ)とすることができる。挿入工程(図2(B)参照)において、固定部60は、打ち込み方向の後尾側に押し込まれるため、パンチ部20,21とファスナ部40との接触部を覆わなくなる。これによって、固定部60による固定は、解除される。凸部33と筒状部53との嵌合を緩い状態とすれば、図2(C)に示す分離工程において、より好適に、パンチ部20,21を、ファスナ部40から取り外すことができる。
【0058】
(2)上述した固定部60は、さらに、図7(A),(B)に示すような、固定部61としてもよい。締結具14(図7(A)参照)又は締結具15(図7(B)参照)では、ファスナ部40の外径が、パンチ部20,21の外径φ2より小径の外径φ5とされる。外径φ5は、ファスナ部40において、先端部分を拡径させ、第一FRP材200及び第二FRP材210を締結したときの締結強度等の諸条件を考慮し、設定される。パンチ部20,21の側壁において、打ち込み方向の後尾側となる一部(図7(A),(B)に示す「L4」の部分参照)は、外径φ5とされる。固定部61は、内径φ5とされ、外径φ5とされた締結具14,15の軸部の部分(図7(A),(B)に示す「L5」の部分参照)に嵌合される。固定部61と締結具14,15の軸部の部分との嵌合は、気密性、及び、締結方法の分離工程(図2(C)参照)における、パンチ部20,21の取り外し等の点を考慮し、好適なはめ合いとされる。嵌合された状態で、打ち込み方向の後尾側となる固定部61の後端部分は、第一鍔部52に接する。固定部61は、図7(A),(B)に示すよう、締結具14,15の軸部(締結具14,15の軸部の部分)において、パンチ部20,21とファスナ部40との接触部を覆う。固定部61の外径は、パンチ部20,21の外径φ2とされる。固定部61の外径φ2に関し、設計上の寸法公差は、気密性を考慮し、パンチ部20,21によって形成される貫通孔220の内径φ2に対して、プラス(大径)となるように設定するとよい。
【0059】
締結具14,15を用いた締結方法は、図2(A)〜(C)及び図3(A),(B)と同様の各工程によって実現される。挿入工程(図2(B)参照)においても、固定部61が押し込まれるようなことはなく、固定部61を備えない場合と同様、ファスナ部40と共に、固定部61も、図7(C)に示すよう、貫通孔220に挿入される。固定部61の外径φ2は、貫通孔220に対して、上述したような寸法に設定されている。そのため、固定部61によっても、固定部60の場合と同様、貫通孔220(筒状部53と貫通孔220との間の隙間)を封止することができ、気密性が確保された締結構造を実現することが可能となる。固定部61は、貫通孔220に挿入される際、貫通孔220の内壁と接触し、接触による摩擦等によって、外周が溶融する。パンチ部20,21による打ち抜きによって、第一FRP材200及び第二FRP材210に微小な層間剥離が生じることがある。ただし、固定部61によれば、仮に層間剥離が生じたとしても、溶融した固定部61を形成する樹脂材が、層間剥離に入り込み、剥離を修復させることができる。なお、締結具14,15では、固定部61の先端部分を、ファスナ部40の先端部分と同一の長さとする必要がある場合、分離工程(図2(C)参照)が完了した時点で、固定部61の先端部分(図7(A),(B)に示す「L5」の部分参照)は、取り除かれ、図7(C)のような状態とされる。
【0060】
<第二実施形態>
<締結具>
第二実施形態の締結具16について、図8等を参照して説明する。締結具16は、パンチ部20と、ファスナ部41とを備える。パンチ部20は、上述したパンチ部20と同様の構成である。締結具16が備えるパンチ部20を、上述した締結具11が備えるパンチ部21(図4参照)としてもよい。パンチ部20,21に関する説明は、省略する。ファスナ部41は、上述したファスナ部40に対応する構成である。ファスナ部41は、打ち込み方向の先頭側及び後尾側が開口し、打ち込み方向に貫通する筒状である。ファスナ部41の内部には、打ち込み方向に貫通した内部空間54が形成されている。ファスナ部41においても、打ち込み方向の後尾側となるファスナ部41の後端部分には、外周に張り出した第一鍔部52が設けられている。内部空間54には、凸部33が挿入される。内部空間54が形成されたファスナ部41の側壁となる筒状部53の内径寸法に関し、凸部33及び筒状部53の嵌合は、第一実施形態の場合と同様とすることもできる。ただし、第一実施形態の場合と比較し、より密着した嵌合としてもよい。例えば、パンチ部20が、ファスナ部41から、容易に脱落することを防止可能な程度の嵌合としてもよい。具体的には、中間ばめ又は締まりばめとしてもよい。締結具16を用いた締結方法が、図9に基づき説明する手法で行われるためである。ファスナ部41に関し、この他の点は、ファスナ部40と同様であり、省略する。
【0061】
<締結方法及び締結構造>
締結具16を用いた締結方法と、締結具16による締結構造92とについて、図9等を参照して説明する。図9では、挿入工程に対応した図(図2(B)参照)と、第二準備工程及び締結工程に対応した図(図3(A),(B)参照)は、省略されている。締結具16を用いた締結方法における上金型113の可動部115は、内部空間54の形状に対応したセンターピン116を有する。可動部115は、プレス装置の可動に伴い、締結具16が収容される空間を、上金型113の内壁114に沿って移動する。例えば、締結具16の打ち込みに際し、可動部115は、打ち込み方向に移動(下降)する。この締結方法では、先ず、第一準備工程が行われる。第一準備工程では、図9(A)に示すように、締結対象である第一FRP材200及び第二FRP材210が、重ね合わされた状態で、下金型100にセットされる。続けて、締結具16が、上金型113の内部にセットされる。このとき、センターピン116は、ファスナ部41の後端部分から、内部空間54に挿入される。センターピン116の先端は、図9(A)に示すよう、凸部33に接する。従って、プレス装置が稼働し、可動部115が、打ち込み方向に移動(下降)すると、パンチ部20が、センターピン116によって押圧され、締結具16は、収容された上金型113の空間内を、打ち込み方向に移動する。プレス装置の稼働開始によって、締結方法は、挿入工程に移行する。挿入工程では、センターピン116によって押圧されるパンチ部20が、打ち込み方向に移動し、貫通孔220が形成される。このとき、ファスナ部41は、パンチ部20と共に、打ち込み方向に移動し、形成された貫通孔220にファスナ部41が挿入される。挿入工程に関し、この他の点は、図2(B)に基づき説明したように行われる。これに関する説明は、省略する。
【0062】
分離工程では、図9(B)に示すように、貫通孔220に挿入されたファスナ部41から、パンチ部20が取り外される。第一鍔部52が、貫通孔220の外周部である第一FRP材200の部分に係合した後も、センターピン116を有する可動部115の打ち込み方向への移動は、継続される。そのため、センターピン116は、内部空間54を、打ち込み方向に移動し、パンチ部20を押圧する。パンチ部20は、センターピン116による押圧力によって、打ち込み方向に移動し、凸部33が内部空間54から抜け落ちる。これによって、パンチ部20は、ファスナ部41から取り外される。ファスナ部41から取り外されたパンチ部20は、下金型100内を落下し、下金型100から排出される。分離工程が完了した後、締結方法は、第二準備工程に移行する。第二準備工程では、下金型100の他、上金型113も、センターピン116を有さない可動部を含む金型、例えば、図3(A)に示す上金型110のようなタイプの金型とされる。分離工程、第二準備工程及び締結工程に関し、この他の点は、図2(C)及び図3(A),(B)に基づき説明したように行われる。これらに関する説明は、省略する。
【0063】
締結具16を用いた締結方法によれば、第一FRP材200及び第二FRP材210が、貫通孔220の外周部である第一FRP材200の部分に係合した第一鍔部52と、第二FRP材210の側に突出し、外径φ10に拡径されたファスナ部41(筒状部53)の先端部分とによって挟み込まれ、締結された、図9(C)に示すような締結構造92を形成することができる。締結構造92において、気密性を確保しなければならないとき、締結工程後の工程で、内部空間54を封止する栓部材を、内部空間54に挿入(圧入)するとよい。締結構造92に、より高い気密性が要求される場合、第一実施形態の変形例と同様、締結具16が、さらに、固定部60又は固定部61を備える構成とするとよい。この場合、凸部33と筒状部53との嵌合によって好適な固定を実現することが可能であるため、固定部60又は固定部61は、パンチ部20とファスナ部41との接触部を覆うような中間位置に設けられなくてもよい。固定部61においては、打ち込み方向の長さ(図7(A),(B)に示す「L5」参照)を寸法L3(以下)とすることもできる。この場合、上述したような、先端部分を取り除くための作業は、不要となる。締結具16が、固定部60又は固定部61を備える場合について、この他の点は、上述した通りであり、これに関する説明は省略する。
【0064】
<第二実施形態における効果>
締結具16によれば、第一実施形態の場合と同様の有利な機能が実現され、有利な効果を得ることができる。締結具16では、ファスナ部41を貫通した筒状とし、センターピン116によって、パンチ部20をファスナ部41から取り外すこととした。そのため、締結方法の分離工程において、確実に、この取り外しを行うことができる。この点に関連し、凸部33と筒状部53との嵌合を、より密着した状態とすることが可能となり、分離工程以前に、パンチ部20がファスナ部41から脱落してしまうことを防止することができる。従って、取り扱い易い締結具16とすることができる。
【0065】
<第三実施形態>
<締結具>
第三実施形態の締結具17について、図10等を参照して説明する。締結具17は、パンチ部21と、ファスナ部42と、第一ピン部70とを備える。パンチ部21は、上述したパンチ部21と同様の構成である。締結具17が備えるパンチ部21を、上述した締結具10が備えるパンチ部20(図1参照)としてもよい。パンチ部20,21に関する説明は、省略する。ファスナ部42は、上述したファスナ部40,41に対応する構成である。ファスナ部42は、打ち込み方向の先頭側及び後尾側が開口し、打ち込み方向に貫通する筒状である。ファスナ部42の内部には、打ち込み方向に貫通した内部空間54が形成されている。ファスナ部42においても、打ち込み方向の後尾側となるファスナ部42の後端部分には、外周に張り出した第一鍔部52が設けられている。打ち込み方向の先頭側となるファスナ部42の先端部分、換言すれば、筒状部53の先端部分には、爪部55が、内部空間54に突出した状態で、形成されている。爪部55は、筒状部53の内周において、全周にわたって形成されていてもよいし、複数の爪部55が所定の角度間隔、例えば、等間隔で形成されていてもよい。爪部55が形成された部分(図10に示す「L6」の部分参照)を含む筒状部53の内径に関し、爪部55の内径φ6は、爪部55が形成されていない部分(図10に示す「L7」の部分参照)の内径φ7より、小径である。締結具17では、内部空間54に挿入された凸部33は、内径φ6の爪部55と嵌合し、爪部55によって挟持される。ファスナ部42に関し、この他の点は、ファスナ部40,41と同様であり、省略する。
【0066】
第一ピン部70は、ファスナ部42の後端部分から、内部空間54に挿入される。第一ピン部70は、第一頭部71と、第一ピン本体72とを含む。第一頭部71は、第一鍔部52の外形に対応した形状を有する平板状の構成である。第一頭部71は、締結具17による締結構造93(図12参照)において、第一鍔部52に接するように配置される。第一ピン本体72は、内部空間54に挿入される構成である。第一ピン本体72は、先端部721と、溝部722と、基部723とから形成される。第一ピン本体72において、これら各部721,722,723は、打ち込み方向の先頭側から、先端部721、溝部722、基部723の順で設けられる。先端部721及び基部723は、爪部55が形成された部分を除く筒状部53の内径φ7に対応し、外径φ7とされる。基部723と筒状部53の嵌合は、例えば、隙間ばめ又は中間ばめとされる。締結構造93において、気密性等が要求される場合、締まりばめとしてもよい。溝部722は、外径φ8とされる。外径φ8は、爪部55の内径φ6より、大径である。溝部722及び基部723の境界には、外径寸法の相違(φ7>φ8)に基づき、段差724が形成される。
【0067】
締結構造93において、段差724は、溝部722に、はまり込んだ爪部55と係合する。詳細は後述するが、締結具17を用いた締結方法において、第一ピン部70は、内部空間54を、打ち込み方向に移動する。このとき、先端部721は、爪部55が突出した内部空間54の部分(図10に示す「L6」の部分参照)を通過し、爪部55を、打ち込み方向に交差(具体的には、直交)する方向に押圧し、爪部55の内径φ6を拡径する。第一ピン部70の移動をスムーズに行わせるため、先端部721は、打ち込み方向の先頭側となる角部が面取りされた形状とされる。基部723は、打ち込み方向の長さが、ファスナ部42の後端部分から爪部55までの寸法L7に一致した長さに設定される。これによって、爪部55が溝部722に、はまり込み、爪部55と段差724とが係合した状態で、第一頭部71は、第一鍔部52に接した状態となる。溝部722の打ち込み方向における幅は、爪部55の寸法L6に対応した寸法に設定される。締結構造93において、第一ピン部70が、打ち込み方向に、がたつくことを抑制するためである。
【0068】
<締結方法及び締結構造>
締結具17を用いた締結方法と、締結具17による締結構造93とについて、図11及び図12等を参照して説明する。この締結方法は、例えば、下金型102及び上金型110と、プレス装置とを用いて行われる。下金型102及び上金型110は、それぞれ、プレス装置に取り付けられる。締結方法は、図11に示すような複数の工程を含む。図11では、挿入工程(図2(B)参照)に対応した図は、省略されている。以下、各工程を順に説明する。
【0069】
図11(A)に示す第一準備工程は、第一準備工程に続けて、順次、行われる挿入工程、分離工程及び締結工程のための工程である。下金型102には、内径φ9の穴部103が形成されている。穴部103には、第一FRP材200及び第二FRP材210を貫通したパンチ部21と、貫通孔220に挿入されたファスナ部42の先端部分等が挿入される。穴部103の内径φ9は、拡径後のファスナ部42の先端部分の外径φ10(図12参照)より大径である。後述する締結工程(図11(C)参照)が完了した後、外径φ10に拡径したファスナ部42の先端部分を、下金型102から取り外せるようにするためである。締結具17を用いた締結方法では、内径φ2の貫通孔220を形成するために、座金230が用いられる。座金230は、第一実施形態において、図5に基づき説明した座金230と同様の座金であって、貫通孔220を形成するためのダイスとして機能する。座金230に関する説明は、省略する。
【0070】
第一準備工程では、第一FRP材200及び第二FRP材210と共に、座金230が、第二FRP材210の下側で、第二FRP材210に隣接した状態で、下金型102にセットされる。下金型102は、座金230の外周形状に対応し、座金230を位置決めするための構成(例えば座金230を収容する凹部)を含む。座金230は、位置決めされた状態で、下金型102にセットされる。続けて、締結具17が、上金型110の内部にセットされる。上金型110は、上述した上金型110(図2参照)と同様の金型である。これに関する説明は省略する。上金型110において、締結具17が収容される空間の形状は、締結具17のうち、外径が最も大きな第一鍔部52及び第一頭部71の外周形状に対応した形状とされる。プレス装置が稼働し、可動部112が、打ち込み方向に移動(下降)すると、第一ピン部70が、可動部112によって押圧される。これに伴い、締結具17は、収容された上金型110の空間内を、打ち込み方向に移動する。プレス装置の稼働開始によって、締結方法は、挿入工程に移行する。
【0071】
挿入工程では、先ず、可動部112にて押圧された第一ピン部70によってパンチ部21が押圧される。押圧されたパンチ部21は、打ち込み方向に移動し、第一FRP材200及び第二FRP材210が打ち抜かれ、貫通孔220が形成される。貫通孔220は、外径φ2で一定のパンチ部21によって、1回で形成される。このとき、パンチ部21は、パンチ部21の外径φ2より小径とされた座金230の貫通孔231の外周部を、第一FRP材200及び第二FRP材210と共に、打ち抜き、貫通孔231を内径φ2の貫通孔とする。挿入工程において、締結具17が、打ち込まれ、所定量、打ち込み方向に移動すると、ファスナ部42が、パンチ部21によって形成された貫通孔220に挿入される。ファスナ部42の貫通孔220への挿入が継続されると、第一鍔部52が、貫通孔220の外周部である第一FRP材200の部分に係合し、ファスナ部42の移動が、規制される。これによって、挿入工程が完了し、締結方法は、分離工程に移行する。挿入工程から分離工程への移行は、連続的に行われる。
【0072】
図11(B)に示す分離工程に移行した状態においても、可動部112の打ち込み方向への移動は継続される。そのため、第一ピン部70への押圧も、継続され、第一ピン部70は、内部空間54を、打ち込み方向に移動する。第一ピン部70の打ち込み方向への移動に伴い、第一ピン本体72の先端部721は、爪部55が突出した内部空間54の部分(図10に示す「L6」の部分参照)に挿入される。先端部721は、爪部55を、打ち込み方向に交差する方向に押圧する。これによって、貫通孔220,231を通過して第二FRP材210の側(座金230の側)に突出したファスナ部42の先端部分は、貫通孔220,231の内径φ2より、拡径した状態となる。また、内部空間54を打ち込み方向に移動する第一ピン部70は、パンチ部21を押圧する。パンチ部21は、第一ピン部70による押圧力によって、打ち込み方向に移動し、凸部33が内部空間54から抜け落ちる。これによって、パンチ部21は、ファスナ部42から取り外される。ファスナ部42から取り外されたパンチ部21は、図11(B)に示すように、下金型102内を落下し、下金型102から排出される。パンチ部21によって打ち抜かれたカス201,211は、上記同様、図11(B)に示すような状態となり、パンチ部21と共に排出される。これによって、分離工程が完了し、締結方法は、締結工程に移行する。分離工程から締結工程への移行も、連続的に行われる。
【0073】
図11(C)に示す締結工程は、爪部55を第一ピン本体72の溝部722に嵌め込み、爪部55を段差724に係合させ、第一ピン部70を、ファスナ部42に固定すると共に、第一FRP材200及び第二FRP材210を締結する工程である。締結工程に移行後も、可動部112の打ち込み方向への移動は継続され、第一ピン部70は、打ち込み方向に押圧され、移動する。第一ピン部70の打ち込み方向への移動に伴い、第一ピン本体72の先端部721は、爪部55が突出した内部空間54の部分を通過し、第二FRP材210の側(座金230の側)に突出する。このとき、第一頭部71は、第一鍔部52に接し、第一ピン部70の打ち込み方向への移動が規制される。第一ピン本体72の溝部722は、図11(C)に示すように、爪部55が突出した内部空間54の部分に挿入され、爪部55が、溝部722に、はまり込む。図10に示すように、第一ピン本体72の溝部722の外径φ8は、先端部721の外径φ7より、小径である。そのため、爪部55が、溝部722に、はまり込んだ状態では、ファスナ部42の先端部分の外径は、図11(B)に示す状態からは縮径する。ただし、締結具17では、打ち込み方向に交差(直交)する方向に突出する爪部55の突出量、及び、溝部722(段差724)の深さは、それぞれ、爪部55が溝部722に、はまり込んだ状態において、ファスナ部42の先端部分が、拡径されるような寸法に設定される。具体的に、「爪部55の突出量>溝部722(段差724)の深さ」との関係が満たされるような寸法に設定される。従って、締結構造93では、ファスナ部42の先端部分の外径φ10は、図12に示すように、パンチ部21によって形成された貫通孔220,231の内径φ2より、大径となる。
【0074】
爪部55が溝部722に、はまり込んだ状態において、爪部55は、段差724に係合する。このような係合状態では、溝部722には、外径φ10に拡径したファスナ部42の先端部分の弾性力が作用する。このようにして、ファスナ部42及び第一ピン部70が、固定される。第一FRP材200及び第二FRP材210と、座金230とは、貫通孔220の外周部である第一FRP材200の部分に係合した第一鍔部52と、第二FRP材210の側に突出し、第一ピン部70によって、外径φ10に拡径されたファスナ部42の先端部分とによって挟み込まれ、締結される。これによって、締結工程は完了する。締結工程が完了した後、下金型102又は上金型110の少なくとも何れか一方を、締結工程等の際とは反対の方向に移動させ、下金型102及び上金型110を、離間させる。その後、第一FRP材200及び第二FRP材210等をファスナ部42で締結した締結構造93が、プレス装置から取り外される。これによって、図12に示すような、締結構造93が得られる。以上、締結方法は、終了する。
【0075】
締結具17を用いた締結方法では、座金230を省略することもできる。この場合、下金型は、貫通孔220を形成するための穴部(図2(A)の穴部101参照)が形成されたダイス構造を有し、例えば、この穴部が半円状となる位置で分割可能な分割構造を有する。締結具17を用いた締結方法の締結工程が完了した後、所定のタイミングで、下金型は分割され、外径φ10に拡径したファスナ部42の先端部分が、貫通孔220を形成するための穴部から取り外される。この下金型では、座金230を収容する凹部は省略される。
【0076】
<第三実施形態における効果>
締結具17によれば、第一実施形態の場合と同様の有利な機能が実現され、有利な効果を得ることができる。締結具17は、第一ピン部70を備え、締結具17を用いた締結方法では、第一ピン部70を、打ち込み方向に移動させることとした。そのため、第一ピン部70で、パンチ部21を押圧し、パンチ部21をファスナ部42から取り外すと共に、これと同時に、ファスナ部42の先端部分を、外径φ2から外径φ10に拡径させることができる。この締結方法では、締結に要する工程を少なくし、効率よく締結作業を行うことができる。締結構造93では、内部空間54に、第一ピン部70が、挿入される。そのため、内部空間54を封止し、締結構造93の気密性を確保することができる。締結構造93に、より高い気密性が要求される場合、第一実施形態の変形例と同様、締結具17が、さらに、固定部60又は固定部61を備える構成とするとよい。これに関する説明は、上述した通りであり、省略する。
【0077】
締結具17を用いた締結方法では、座金230が用いられ、締結構造93は、座金230を含む構成となる。従って、締結構造93によっても、上述したような、バリの発生と、拡径のために付与される荷重に起因した第二FRP材210の破損とに対応することができる。第二FRP材210に接する座金230を低硬度とすることが可能で、この部分における第二FRP材210の破損を防止することができる。これらに関する説明は、上述した通りであり、省略する。この締結方法では、ファスナ部42が、可動部112によって、直接押圧されることはない。そのため、ファスナ部42の強度、特に、第一FRP材200と接する第一鍔部52の強度を低下させることができる。即ち、ファスナ部42(第一鍔部52)の硬度を低硬度とすることが可能となる。従って、第一鍔部52に接する第一FRP材200の部分が、破損することを防止可能な締結構造93とすることができる。
【0078】
<第四実施形態>
<締結具>
第四実施形態の締結具18について、図13等を参照して説明する。締結具18は、パンチ部20と、ファスナ部43と、第二ピン部80とを備える。パンチ部20は、上述したパンチ部20と同様の構成である。締結具18が備えるパンチ部20を、上述した締結具11が備えるパンチ部21(図4参照)としてもよい。パンチ部20,21に関する説明は、省略する。ファスナ部43は、上述したファスナ部40〜42に対応する構成である。ファスナ部43は、ファスナ部41に類似した形状を有する。即ち、ファスナ部43は、ファスナ部41と同様、打ち込み方向に貫通する内部空間54が形成された筒状である。ファスナ部43においても、打ち込み方向の後尾側となるファスナ部43の後端部分には、外周に張り出した第一鍔部52が設けられている。内部空間54には、凸部33が挿入される。内部空間54が形成されたファスナ部43の側壁となる筒状部53の内径寸法に関し、凸部33及び筒状部53の嵌合は、第二実施形態の場合と同様としてもよい。筒状部53の寸法L3は、重ね合わされた第一FRP材200及び第二FRP材210の全体の厚み以下となるように設定される。従って、ファスナ部43が貫通孔220に挿入された状態において、ファスナ部43(筒状部53)の先端部分は、貫通孔220に収容された状態となる。ファスナ部43に関し、この他の点は、ファスナ部40〜42と同様であり、省略する。
【0079】
第二ピン部80は、貫通孔220が形成され、ファスナ部43が貫通孔220に挿入され、ファスナ部43からパンチ部20が取り外された状態において、内部空間54に挿入される。内部空間54への挿入は、打ち込み方向の先頭側となるファスナ部43の先端部分から行われる。第二ピン部80は、第二鍔部81と、第二ピン本体82とを含む。第二鍔部81は、平板状の構成である。第二鍔部81は、締結具18による締結構造94(図15(C)参照)において、貫通孔220の外周部である第二FRP材210の部分に係合する。第二ピン本体82は、内部空間54に挿入される構成である。第二ピン本体82は、筒状部53の内径φ7に対応し、外径φ7とされる。第二ピン本体82の寸法L8は、重ね合わされた第一FRP材200及び第二FRP材210の全体の厚みと、第一鍔部52の厚み寸法L9との合計より、長く設定される。従って、第二ピン部80が内部空間54に挿入された状態で、打ち込み方向の後尾側となる第二ピン本体82の先端部分は、第一鍔部52の側(第一FRP材200の側)に突出する。第一鍔部52の側に突出した第二ピン本体82の先端部分は、締結具18を用いた締結方法において、第一鍔部52に係合するよう、内部空間54の内径φ7より大きく拡径される。
【0080】
<締結方法及び締結構造>
締結具18を用いた締結方法と、締結具18による締結構造94とについて、図14及び図15等を参照して説明する。締結方法は、例えば、下金型100及び上金型113と、プレス装置とを用いて行われる。下金型100及び上金型113は、それぞれ、プレス装置に取り付けられる。下金型100及び上金型113は、共に、上述した下金型100及び上金型113(図9(A),(B)参照)と同様の金型である。これらに関する説明は省略する。締結方法は、図14(A)〜(C)及び図15(A),(B)に示すような複数の工程を含む。図14では、挿入工程に対応した図(図2(B)参照)は、省略されている。以下、各工程を順に説明する。
【0081】
締結具18を用いた締結方法では、先ず、図14(A)に示す第一準備工程が行われる。第一準備工程は、図9(A)に基づき説明した第一準備工程と同様に行われる。続けて、この締結方法では、挿入工程と、図14(B)に示す分離工程とが、順次連続して実行される。挿入工程は、図2(B)に基づき説明した挿入工程と同様に行われ、分離工程は、図9(B)に基づき説明した分離工程と同様に行われる。第一準備工程、挿入工程及び分離工程に関する説明は、省略する。分離工程が完了した後、締結方法は、第二準備工程に移行する。第二準備工程では、下金型100又は上金型113の少なくとも何れか一方を、挿入工程及び分離工程の際とは反対の方向に移動させ、下金型100及び上金型113を、離間させる。その後、第一FRP材200及び第二FRP材210に形成された貫通孔220にファスナ部43が挿入された状態の構成(以下、「締結前構成」という。)が、プレス装置、詳細には、下金型100又は上金型113から取り外される。続けて、図14(C)に示すような、載置面が平面状の下金型130の所定の位置に、第二ピン部80がセットされる。下金型130は、次工程である締結工程のためのプレス装置に取り付けられている。下金型130が取り付けられたプレス装置には、上金型113とは異なる、この締結工程のための上金型(不図示)も、取り付けられている。
【0082】
次に、図15(A)に示すように、内部空間54に第二ピン部80(第二ピン本体82)が挿入された状態となるよう、締結前構成が、下金型130にセットされる。筒状部53の寸法L3は、上述したような値に設定されているため、締結前構成において、ファスナ部43の先端部分は、第二FRP材210の側に突出することなく、内部空間54に収容される。従って、締結前構成が、下金型130にセットされた状態において、第二ピン部80の第二鍔部81と、第二FRP材210とは、接した状態となる。第二ピン本体82の寸法L8は、上述したような値に設定されているため、締結前構成が、下金型130にセットされた状態において、第二ピン部80(第二ピン本体82)の先端部分は、第一鍔部52の側(第一FRP材200の側)に突出した状態となる。第二準備工程は、これによって完了し、締結方法は、図15(B)に示す締結工程に移行する。
【0083】
締結工程では、下金型130が取り付けられたプレス装置が稼働し、このプレス装置に取り付けられた上金型(不図示)が打ち込み方向に移動(下降)し、第一鍔部52の側に突出した第二ピン部80の先端部分が、上金型を介して、打ち込み方向に押圧され、かしめられる。第二ピン部80の先端部分は、塑性変形して拡径し、内部空間54の内径φ7より大径の外径φ7’となる(図15(B)参照)。外径φ7’となった第二ピン部80の先端部分は、図15(B)に示すように、第一鍔部52に係合する。第一FRP材200及び第二FRP材210は、貫通孔220の外周部である第一FRP材200の部分に係合し、且つ、外径がφ7’に拡径された第二ピン部80の先端部分に係合した第一鍔部52と、貫通孔220の外周部である第二FRP材210の部分に係合した第二鍔部81とによって挟み込まれ、締結される。この状態において、打ち込み方向とは反対側へのファスナ部43の移動は、外径φ7’となった第二ピン部80の先端部分が、第一鍔部52と係合することで規制される。これによって、締結工程は完了する。締結工程が完了した後、下金型130が取り付けられたプレス装置を、下金型130又は上金型(不図示)の少なくとも何れか一方を、締結工程の際とは反対の方向に移動させ、下金型130及び上金型を、離間させる。その後、第一FRP材200及び第二FRP材210を、ファスナ部43及び第二ピン部80で締結した締結構造94が、プレス装置から取り外される。これによって、図15(C)に示すような締結構造94が得られる。以上、締結方法は、終了する。
【0084】
<第四実施形態における効果>
締結具18によれば、第一実施形態の場合と同様の有利な機能が実現され、有利な効果を得ることができる。締結具18は、第二ピン部80を備える構成とし、締結具18を用いた締結方法では、第二ピン部80をファスナ部43の先端部分から内部空間54に挿入し、第一鍔部52の側に突出した第二ピン部80の先端部分をかしめ、第一鍔部52と、第二鍔部81とによって、第一FRP材200及び第二FRP材210を挟み込み、締結することとした。そのため、第二ピン部80で、貫通孔220を封止することが可能となり、気密性が確保された締結構造94とすることができる。締結構造94に、より高い気密性が要求される場合、第一実施形態の変形例と同様、締結具18が、さらに、固定部60又は固定部61を備える構成とするとよい。これに関する説明は、上述した通りであり、省略する。
【0085】
締結具18を用いた締結方法では、ファスナ部43が、可動部115によって、直接押圧されることはない。第二ピン部80は、貫通孔220を形成する際には用いられない。そのため、ファスナ部43の強度、特に、第一FRP材200と接する第一鍔部52の強度を低下させ、また、第二ピン部80の強度、特に、第二FRP材210と接する第二鍔部81の強度を低下させることができる。即ち、締結具18では、第一FRP材200に接するファスナ部43(第一鍔部52)の硬度と、第二FRP材210に接する第二ピン部80(第二鍔部81)の硬度とを低硬度とすることが可能となる。従って、ファスナ部43及び第二ピン部80にそれぞれ接する第一FRP材200及び第二FRP材210の部分の破損を防止することができる。締結具18を用いた締結方法の締結工程では、下金型130は、平面状であればよく、下金型130の構成をシンプルにすることができる。
【0086】
<第五実施形態>
<締結具>
第五実施形態の締結具19について、図16等を参照して説明する。締結具19は、パンチ部22と、ファスナ部44とを備える。パンチ部22は、上述したパンチ部21のような凸部33を含まないが、これ以外は、パンチ部21と同様の構成である。締結具19が備えるパンチ部22を、上述した締結具10が備えるパンチ部20(図1参照)のように、パンチ部20の先端部分を小径とし、段差32が形成された構成としてもよい。このようなパンチ部も、上述したパンチ部20と同様(凸部33を含まず)に構成される。このように、パンチ部22は、上述したパンチ部21(パンチ部20)と同様であり、これに関する説明は、省略する。
【0087】
ファスナ部44は、第一ファスナ部401と、第二ファスナ部402とを含む。第一ファスナ部401は、上述した締結具10,11が備えるファスナ部40に対応する構成である。第一ファスナ部401の内部空間51には、第二ファスナ部402が挿入される。第一ファスナ部401に関し、この他の点は、ファスナ部40と同様であり、省略する。第二ファスナ部402は、インナー部403と、第二頭部404とを含む。インナー部403は、打ち込み方向の先頭側となる第一ファスナ部401(筒状部53)の先端部分から、内部空間51に挿入される。インナー部403は、第一ファスナ部401の先端部分が、第二頭部404に接する位置まで、内部空間51に挿入される。筒状部53と、インナー部403との嵌合は、例えば、締まりばめとされ、両者は、圧入状態とされる。詳細は後述するが、締結具19による締結構造95(図17(C)参照)では、第一ファスナ部401と第二ファスナ部402とは固定され、第二ファスナ部402が第一ファスナ部401から脱落することを防止することができる。
【0088】
第二頭部404は、インナー部403と一体的に形成される。インナー部403と第二頭部404との境界部分(図16に記載の「P部」参照)は、打ち込み方向の先頭側に向けて拡径するように傾斜面、例えばテーパー形状(図16参照)とされる。傾斜面は、R状としてもよい。第一ファスナ部401の先端部分は、締結具19を用いた締結方法の締結工程において、この傾斜面の部分で拡径される。第二頭部404は、打ち込み方向の先頭側となる面が、平面状とされる。第二頭部404は、打ち込み方向の後尾側となるパンチ部22の後端部分と取り外し自在に固定される。第二頭部404を介した、ファスナ部44(第二ファスナ部402)と、パンチ部22との固定は、締結方法の分離工程において、パンチ部22を自動的に取り外すことが可能であれば、種々の手法を採用することができる。例えば、微量の接着剤等で接着しておいてもよい。上述したパンチ部21等と同様、凸部33に対応した構成を含むパンチ部とし、第二ファスナ部402に、これと嵌合する凹部を形成し、両者を、上記同様、嵌合させる構成としてもよい。この他、上述した固定部60又は固定部61を、上記同様に採用してもよい。この場合、固定部60又は固定部61は、少なくとも、第一ファスナ部401の先端部分からパンチ部22の後端部分までの範囲を覆う。
【0089】
<締結方法及び締結構造>
締結具19を用いた締結方法と、締結具19による締結構造95とについて、図17等を参照して説明する。図17では、第一準備工程、挿入工程及び分離工程に対応した図(図2(A)〜(C)参照)は、省略されている。この締結方法においても、第一準備工程、挿入工程及び分離工程の各工程が、順次、行われる。第一準備工程、挿入工程及び分離工程の各工程は、図2(A)〜(C)に基づき説明したように行われる。これに関する説明は、省略する。分離工程が完了した後、この締結方法は、図17(A)に示す第二準備工程に移行し、その後、図17(B)に示す締結工程が行われる。第二準備工程では、第一準備工程〜分離工程で用いられた下金型(図2(A)〜(B)に示す「下金型100」参照)が、締結工程のための下金型140とされる。下金型140は、第二頭部404に対向する面が、平面状をした金型である。
【0090】
締結工程では、プレス装置が稼働し、下金型140が、第二FRP材210に接するまで、下金型140又は上金型110の少なくとも何れか一方を、打ち込み方向に対応した方向(鉛直方向)に移動させ、下金型140及び上金型110を、漸次、接近させる。第二ファスナ部402は、第一ファスナ部401に対して、打ち込み方向と反対側に移動し、第二ファスナ部402が、内部空間51にさらに挿入される。内部空間51へのさらなる挿入は、打ち込み方向の後尾側となるインナー部403の先端部分が、有底筒状の第一ファスナ部401の底部に接近するまで行われる。インナー部403の先端部分と、第一ファスナ部401の底部との間に、一定間隔の内部空間51を残存させ、両部を非接触とするとよい。締結構造95、及び/又は、締結構造95におけるファスナ部44に、この挿入に伴う応力が作用することを防止又は低減することができる。前述のように第二ファスナ部402を内部空間51にさらに挿入する際、第一ファスナ部401の先端部分は、インナー部403と第二頭部404との境界部分(図16に示す「P部」参照)で、第二頭部404の外径方向(打ち込み方向に交差(直交)する方向に一致)に変形する。即ち、第一ファスナ部401の先端部分は、貫通孔220の内径φ2より大きな外径φ10に拡径される。第一FRP材200及び第二FRP材210は、貫通孔220の外周部である第一FRP材200の部分に係合した第一鍔部52と、外径がφ10に拡径された第一ファスナ部401の先端部分とによって挟み込まれ、締結される。これによって、締結工程は完了する。締結工程が完了した後、下金型140又は上金型110の少なくとも何れか一方を、締結工程の際とは反対の方向に移動させ、下金型140及び上金型110を、離間させる。その後、第一FRP材200及び第二FRP材210をファスナ部44で締結した締結構造95が、プレス装置から取り外される。これによって、図17(C)に示すような締結構造95が得られる。以上、締結方法は、終了する。
【0091】
締結工程において、第一ファスナ部401の先端部分の拡径は、次のようにして行ってもよい。この場合、インナー部403と第二頭部404との境界部分の円周上には、複数の刃部が、所定の間隔(例えば等間隔)で設けられる。締結工程では、内部空間51への第二ファスナ部402のさらなる挿入に伴い、第一ファスナ部401(筒状部53)の先端部分が、複数の刃部で、短冊状に切断される。短冊状に切断された第一ファスナ部401の先端部分は、それぞれ、インナー部403と第二頭部404との境界部分で、第二FRP材210に接近する側にカールし、貫通孔220の内径φ2より大きな外径φ10に拡径される。
【0092】
<第五実施形態における効果>
締結具19によれば、第一実施形態の場合と同様の有利な機能が実現され、有利な効果を得ることができる。締結具19では、ファスナ部44を、第一ファスナ部401と、第二ファスナ部402とに分割して構成し、第二ファスナ部402を介して、第一ファスナ部401の先端部分を、貫通孔220の内径φ2より大きな外径φ10に拡径するようにした。そのため、第一ファスナ部401の先端部分を、好適に拡径することができる。締結具19では、第一ファスナ部401が有底筒状であるため、貫通孔220を封止することが可能となり、気密性が確保された締結構造95とすることができる。内部空間51には、第二ファスナ部402が挿入される。そのため、内部空間51に、例えば、カス201,211が進入することを、好適に防止することができる。締結具19を用いた締結方法の締結工程では、下金型140は、平面状であればよく、下金型140の構成をシンプルにすることができる。
【符号の説明】
【0093】
10,11,12,13,14,15,16,17,18,19 締結具
20,21,22 パンチ部、 31 内部空間、 32 段差、 33 凸部
40,41,42,43,44 ファスナ部、 401 第一ファスナ部
51,54 内部空間、 52 第一鍔部、 53 筒状部、 55 爪部
402 第二ファスナ部、 403 インナー部、 404 第二頭部
60,61 固定部
70 第一ピン部、 71 第一頭部、 72 第一ピン本体
721 先端部、 722 溝部、 723 基部、 724 段差
80 第二ピン部、 81 第二鍔部、 82 第二ピン本体
90,91,92,93,94,95 締結構造
200 第一FRP材、 210 第二FRP材、 220 貫通孔
230 座金、 231 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一被締結部材と、第二被締結部材と、が重ね合わされた状態において、前記第一被締結部材の側から、前記第一被締結部材及び前記第二被締結部材に打ち込まれ、前記第一被締結部材と、前記第二被締結部材と、を締結するための締結具であって、
前記第一被締結部材及び前記第二被締結部材への前記締結具の打ち込みによって、前記第一被締結部材及び前記第二被締結部材を貫通する貫通孔を形成するパンチ部と、
前記締結具が打ち込まれる打ち込み方向の後尾側となる前記パンチ部の後端部分と取り外し自在に固定され、前記第一被締結部材及び前記第二被締結部材への締結具の打ち込みに伴い前記貫通孔に挿入され、前記パンチ部が取り外された状態において、前記第一被締結部材と、前記第二被締結部材と、を締結するファスナ部と、を備える、締結具。
【請求項2】
前記パンチ部は、前記打ち込み方向の先頭側が開口した筒状である、請求項1に記載の締結具。
【請求項3】
前記パンチ部は、前記打ち込み方向の先頭側が開口した有底筒状である、請求項2に記載の締結具。
【請求項4】
前記打ち込み方向の先頭側となる前記パンチ部の先端部分の外径は、前記パンチ部の先端部分と、前記パンチ部の後端部分と、の間の前記パンチ部の中間部分の外径より、小径である、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の締結具。
【請求項5】
前記ファスナ部は、
前記打ち込み方向の先頭側が開口した筒状をなし、
前記打ち込み方向の後尾側となる前記ファスナ部の後端部分で、外周に張り出し、前記ファスナ部が前記貫通孔に挿入された状態において、前記貫通孔の外周部である前記第一被締結部材の部分に係合する第一鍔部を含み、
前記貫通孔を通過して前記第二被締結部材の側に突出した前記ファスナ部の先端部分は、前記貫通孔の内径より大きく拡径される、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の締結具。
【請求項6】
前記ファスナ部は、
前記打ち込み方向に貫通する筒状をなし、
前記打ち込み方向の先頭側となる前記ファスナ部の先端部分に形成され、筒状の前記ファスナ部の内部空間に突出した爪部と、
前記打ち込み方向の後尾側となる前記ファスナ部の後端部分で、外周に張り出し、前記ファスナ部が前記貫通孔に挿入された状態において、前記貫通孔の外周部である前記第一被締結部材の部分に係合する第一鍔部と、を含み、
前記締結具は、前記ファスナ部の後端部分から、前記内部空間に挿入され、前記締結具が、前記第一被締結部材及び前記第二被締結部材に打ち込まれる場合、前記打ち込み方向に押圧される第一ピン部を、さらに備え、
前記第一ピン部は、
前記パンチ部を、前記打ち込み方向に押圧し、前記貫通孔を形成した前記パンチ部を前記ファスナ部から取り外し、
前記爪部を、前記打ち込み方向に交差する方向に押圧し、前記貫通孔を通過して前記第二被締結部材の側に突出した前記ファスナ部の先端部分を、前記貫通孔の内径より大きく拡径させる、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の締結具。
【請求項7】
前記ファスナ部は、
前記打ち込み方向に貫通する筒状をなし、
前記打ち込み方向の後尾側となる前記ファスナ部の後端部分で、外周に張り出し、前記ファスナ部が前記貫通孔に挿入された状態において、前記貫通孔の外周部である前記第一被締結部材の部分に係合する第一鍔部を含み、
前記締結具は、前記打ち込み方向の先頭側となる前記ファスナ部の先端部分から、筒状の前記ファスナ部の内部空間に挿入され、前記内部空間に挿入された状態において、前記貫通孔の外周部である前記第二被締結部材の部分に係合する、第二ピン部を、さらに備え、
前記第二ピン部は、前記ファスナ部が前記貫通孔に挿入され、前記ファスナ部から前記パンチ部が取り外された状態において、前記内部空間に挿入され、
前記内部空間を通過して前記第一鍔部の側に突出した前記第二ピン部の先端部分は、前記第一鍔部に係合するよう、前記内部空間の内径より大きく拡径される、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の締結具。
【請求項8】
前記締結具は、管状で、前記パンチ部と前記ファスナ部とに嵌合される、樹脂製の固定部を、さらに備える、請求項1から請求項7の何れか1項に記載の締結具。
【請求項9】
第一被締結部材と、第二被締結部材と、が重ね合わされた状態において、前記第一被締結部材の側から、前記第一被締結部材及び前記第二被締結部材に打ち込まれ、前記第一被締結部材と、前記第二被締結部材と、を締結するための締結具を用いた締結方法であって、
前記第一被締結部材及び前記第二被締結部材への前記締結具の打ち込みによって、前記締結具が備えるパンチ部にて、前記第一被締結部材及び前記第二被締結部材を貫通する貫通孔を形成し、前記締結具が打ち込まれる打ち込み方向の後尾側となる前記パンチ部の後端部分と取り外し自在に固定された、前記締結具が備えるファスナ部を、前記貫通孔に挿入する挿入工程と、
前記貫通孔に挿入された前記ファスナ部から、前記パンチ部を取り外す分離工程と、
前記貫通孔に挿入され、前記パンチ部が取り外された状態の前記ファスナ部で、前記第一被締結部材と、前記第二被締結部材と、を締結する締結工程と、を含む締結方法。
【請求項10】
前記ファスナ部は、
前記打ち込み方向の先頭側が開口した筒状をなし、
前記打ち込み方向の後尾側となる前記ファスナ部の後端部分で、外周に張り出し、前記ファスナ部が前記貫通孔に挿入された状態において、前記貫通孔の外周部である前記第一被締結部材の部分に係合する第一鍔部を含み、
前記締結工程では、前記貫通孔を通過して前記第二被締結部材の側に突出した前記ファスナ部の先端部分を、前記貫通孔の内径より大きく拡径させ、前記第一被締結部材の部分に係合した前記第一鍔部と、拡径された前記ファスナ部の先端部分と、で、前記第一被締結部材と、前記第二被締結部材と、を締結する、請求項9に記載の締結方法。
【請求項11】
前記ファスナ部は、
前記打ち込み方向に貫通する筒状をなし、
前記打ち込み方向の先頭側となる前記ファスナ部の先端部分に形成され、筒状の前記ファスナ部の内部空間に突出した爪部と、
前記打ち込み方向の後尾側となる前記ファスナ部の後端部分で、外周に張り出し、前記ファスナ部が前記貫通孔に挿入された状態において、前記貫通孔の外周部である前記第一被締結部材の部分に係合する第一鍔部と、を含み、
前記締結具は、前記ファスナ部の後端部分から、前記内部空間に挿入され、前記締結具が、前記第一被締結部材及び前記第二被締結部材に打ち込まれる場合、前記打ち込み方向に押圧される第一ピン部を、さらに備え、
前記挿入工程では、前記第一ピン部を、前記打ち込み方向に押圧すると共に、前記打ち込み方向に押圧された前記第一ピン部にて、前記パンチ部を、前記打ち込み方向に押圧して前記貫通孔を形成し、
前記分離工程では、前記第一ピン部を、前記打ち込み方向に押圧すると共に、前記打ち込み方向に押圧された前記第一ピン部にて、前記パンチ部を、前記打ち込み方向に押圧して、前記貫通孔に挿入された前記ファスナ部から、前記パンチ部を取り外し、
前記締結工程では、前記第一ピン部を、前記打ち込み方向に押圧すると共に、前記打ち込み方向に押圧された前記第一ピン部にて、前記爪部を、前記打ち込み方向に交差する方向に押圧して、前記貫通孔を通過して前記第二被締結部材の側に突出した前記ファスナ部の先端部分を、前記貫通孔の内径より大きく拡径させ、前記第一被締結部材の部分に係合した前記第一鍔部と、拡径された前記ファスナ部の先端部分と、で、前記第一被締結部材と、前記第二被締結部材と、を締結する、請求項9に記載の締結方法。
【請求項12】
前記ファスナ部は、
前記打ち込み方向に貫通する筒状をなし、
前記打ち込み方向の後尾側となる前記ファスナ部の後端部分で、外周に張り出し、前記ファスナ部が前記貫通孔に挿入された状態において、前記貫通孔の外周部である前記第一被締結部材の部分に係合する第一鍔部を含み、
前記締結具は、前記打ち込み方向の先頭側となる前記ファスナ部の先端部分から、筒状の前記ファスナ部の内部空間に挿入され、前記内部空間に挿入された状態において、前記貫通孔の外周部である前記第二被締結部材の部分に係合する、第二ピン部を、さらに備え、
前記挿入工程では、前記打ち込み方向に押圧される前記締結方法のための型部材を、前記ファスナ部の後端部分から、前記内部空間に挿入し、前記型部材を介して、前記パンチ部を、前記打ち込み方向に押圧して、前記貫通孔を形成し、
前記分離工程では、前記型部材を介して、前記パンチ部を、前記打ち込み方向に押圧して、前記貫通孔に挿入された前記ファスナ部から、前記パンチ部を取り外し、
前記締結工程では、前記パンチ部が取り外された前記ファスナ部の先端部分から、前記第二ピン部を、前記内部空間に挿入し、前記内部空間を通過して前記第一鍔部の側に突出した前記第二ピン部の先端部分を、前記内部空間の内径より大きく拡径させて前記第一鍔部に係合させ、前記第一被締結部材の部分に係合し、且つ、拡径された前記第二ピン部の先端部分に係合した前記第一鍔部と、前記第二被締結部材の部分に係合した前記第二ピン部と、で、前記第一被締結部材と、前記第二被締結部材と、を締結する、請求項9に記載の締結方法。
【請求項13】
前記第一被締結部材及び前記第二被締結部材の少なくとも何れか一方が、繊維強化樹脂材である、請求項9から請求項12の何れか1項に記載の締結方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−15161(P2013−15161A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146725(P2011−146725)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(390011198)福井鋲螺株式会社 (41)
【Fターム(参考)】