説明

編成列車及び先頭車両並びに列車長測定方法

【課題】列車長の算出及び入力を自動的に実施可能とし、及び列車長情報を必要とする車上装置へ自動的に情報を与えることができる編成列車及び先頭車両並びに列車長測定方法を提供する。
【解決手段】先頭車両11と、付随車13、25とからなり、先頭車両11から最後尾25まで空気ブレーキ管14が引き通されており、先頭車両11は、空気ブレーキ管14に圧縮空気を送り込むブレーキ指令を出す空気圧縮機12を備え、付随車のブレーキ制御を行う編成列車において、先頭車両11は、ブレーキ指令を出してから最後尾25に伝播されるまでに要する時間と列車長との関係データを基に、ブレーキ指令を出してから最後尾に伝播されるまでに要する時間から列車長を算出する装置を備える。空気ブレーキ管は、最後尾25にて先頭車両11へ戻すループ構成で、先頭車両11は、戻ってきたブレーキ指令における空気ブレーキ管の気圧を測定する装置を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編成列車及び先頭車両並びに列車長測定方法に関し、特に客車列車や貨物列車などの列車長を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、客車列車や貨物列車などの、列車長を容易に変えられるような列車の運行に必要とされている列車長の認識方法として、連結されている車両数から列車長を計算し、列車長のデータ入力を必要とする車上装置に対して、作業員が各々車両数や列車長を手動で入力している。従って、作業員が誤って入力する場合もある。
【0003】
一方、鉄道車両において、連結される全ての車両に対して一本のブレーキ管を引き通すことにより、運転手またはブレーキ制御装置等がブレーキ指令を出した場合、全車両に対して一斉にブレーキをかけることが可能な自動空気ブレーキ装置が装備されている(特許文献1参照)。そのため、ブレーキ装置は、列車の出庫検査に際し、列車に引き通されている空気ブレーキ管内の空気圧を測定することが必要とされている。
【特許文献1】特開2006−14543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
目標とする空気圧へ圧力が変化するのに要する時間は、対象となる空気の体積に比例する。このような空気の特徴を利用し、空気ブレーキ間の圧力測定に際し、圧力測定装置等を用いて、設定された空気圧に達するまでに要する時間を自動測定することにより、列車長を自動的に算出することが望まれしいが、従来、列車長を算出する方法としては、連結されている車両数を数える方法が一般的である。
【0005】
本発明の目的は、現在、手計算にて実施している列車長の算出及び入力を自動的に実施可能とし、及び列車長情報を必要とする車上装置へ自動的に情報を与えることができる編成列車及び先頭車両並びに列車長測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、先頭車両と、1以上の付随車とからなり、前記先頭車両から最後尾まで空気ブレーキ管が引き通されており、前記先頭車両は、前記空気ブレーキ管に圧縮空気を送り込むブレーキ指令を出す空気圧縮機を備え、前記空気ブレーキ管内の空気圧増減による前記付随車のブレーキ制御を行う編成列車において、
前記先頭車両は、ブレーキ指令を出してから最後尾に伝播されるまでに要する時間と列車長との関係データを基に、ブレーキ指令を出してから最後尾に伝播されるまでに要する時間から列車長を算出する列車長測定装置を備える編成列車である。
【0007】
また、本発明は、前記空気ブレーキ管は、前記最後尾にて先頭車両へ戻すループ構成であり、前記先頭車両は、戻ってきたブレーキ指令における空気ブレーキ管の気圧を測定する圧力測定装置を備える編成列車である。
【0008】
そして、本発明は、前記最後尾は、前記ブレーキ指令による空気ブレーキ管内の空気圧増減を検出し、検出結果を発信する圧力測定器兼発信機を備え、前記先頭車両は、前記最後尾からの検出結果を受信する受信装置を備える編成列車である。
【0009】
更に、本発明は、最後尾まで空気ブレーキ管が引き通されている1以上の付随車を連結し、前記空気ブレーキ管に圧縮空気を送り込むブレーキ指令を出す空気圧縮機を備え、前記空気ブレーキ管内の空気圧増減による前記付随車のブレーキ制御を行う編成列車の先頭車両において、ブレーキ指令を出してから最後尾に伝播されるまでに要する時間と列車長との関係データを基に、前記ブレーキ指令を出してから最後尾に伝播されるまでに要する時間から列車長を算出する列車長測定装置を備える先頭車両である。
【0010】
また、本発明は、先頭車両と、1以上の付随車とからなり、前記先頭車両から最後尾まで空気ブレーキ管が引き通されるとともに、最後尾にて先頭車両へ戻すループ構成であり、前記先頭車両は、前記空気ブレーキ管に圧縮空気を送り込むブレーキ指令を出す空気圧縮機を備え、前記空気ブレーキ管内の空気圧増減による前記付随車のブレーキ制御を行う編成列車における列車長を測定する方法において、前記ブレーキ指令を出すことと、前記ブレーキ指令を出してから最後尾でのループ構成で前記先頭車両へ戻るまでに要する時間を測定することと、ブレーキ指令を出してから最後尾に伝播されるまでに要する時間と列車長との関係データを基に列車長を算出することを含む列車長測定方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以前は、作業員の手が介在していた列車長の算出、及び入力に関して、自動化がなされ、更には他装置へ列車長情報を自動的に与えることが実現可能となり、また、列車停車中にも列車長の測定が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
まず、現在採用されている編成列車におけるブレーキシステムの構成について、図1、図4及び図5を用いて説明る。先頭車両11より列車最後尾25にまで、一本の空気ブレーキ管14が引き通されている。運転手または鉄道保安装置等からのブレーキ指令を、先頭車両11に搭載されているブレーキ制御回路12において制御し、最終的に空気ブレーキ管内の空気圧の増減制御を行う。ブレーキ出力は、空気ブレーキ管内の空気を媒介として、空気圧が伝播することにより各付随車13,25へ指令される。ブレーキをかける場合には空気圧を減少させる制御を、ブレーキを緩解する場合には、空気圧を増加させる制御を実施する。空気ブレーキ管14の圧力の増減に伴い、付随車13,25に設置されているブレーキシリンダが制御され、各車においてブレーキが動作する。
【0013】
列車の出庫検査に際し、列車のブレーキ圧の測定を実施することが必要とされている。ブレーキ圧の測定は、先頭車両11に搭載されている空気圧縮機17により、空気ブレーキ管14に圧縮空気を送り込む。現在のブレーキシステムの構成は、先頭車両11より空気ブレーキ管14を列車全体へ引き通す構成である。ブレーキの指令は圧力の伝播によりなされている。従って、現在のブレーキ管14の構成にて、空気圧の立ち上がりを検知による列車長の割り出しを実施しようとした場合、作業員が車両の最後尾まで圧力計を持参し、手動にて測定することが必要とされる。
【実施例1】
【0014】
以下、現在のシステムを改善した本発明の編成列車及び先頭車両並びに列車長測定方法の実施例を説明する。まず、実施例1について、図2及び図3を用いて説明する。本実施例は、現状システム(図1参照)における車両最後尾25に対して、一方向にのみ伸びている空気ブレーキ管14を、図2に示すように、最後尾にて先頭車へ戻すループ構成とする。この構成にすることにより、先頭車両11のブレーキ弁15により制御されるブレーキ指令が、空気を媒介として伝播し、空気ブレーキ管14の気圧の変化が車両最後尾25から戻って先頭車両11に伝播される。従って、図3に示すように、先頭車両内に空気ブレーキ管14の圧力を自動測定することが可能な圧力測定装置19を、空気ブレーキ管14に接続することにより、空気ブレーキ管内の圧力を自動的に測定することが可能となる。
【0015】
空気ブレーキ管内の空気圧の増加、減少の変化量と、戻ってくるのに要する時間を測定することにより、空気ブレーキ管14の長さを算出することが可能となる。従って、その半分にあたる長さがほぼ列車長として算出することが可能となる。
【0016】
また、列車が走行中にブレーキをかけた場合、または緩めた場合において、空気圧の増減の割合とそれに要した時間との関係より、列車長の確認のバックアップシステムとして用いることが可能となる。
【0017】
更に、圧力測定装置19に接続されている各車上装置26に対して自動的に車両長を与えることが可能となる。なお、空気ブレーキ管内の空気圧の増減の割合、戻ってくるのに要する時間と列車長の関係は、例えば列車長が分かっているもので事前にデータを採取する等により得ることができる。
【実施例2】
【0018】
実施例2について、図6及び図7を用いて説明する。本実施例は、現状システム(図1参照)における車両最後尾25に対して、一方向にのみ伸びている空気ブレーキ管14を、空気ブレーキ管14の最後尾に圧力測定器兼発信機27を取り付ける。そして、先頭車両11には、受信装置28を取り付ける。先頭車両11のブレーキ弁15により制御されるブレーキ指令が、空気を媒介として伝播し、空気ブレーキ管14の気圧の変化が列車最後尾25に伝播される。空気ブレーキ管14の最後尾に取り付けられた圧力測定器兼発信機27により、空気ブレーキ管14内の圧力を自動的に測定することが可能となる。その測定結果を先頭車に取り付けられた受信装置28へ送信する。空気ブレーキ管内の空気圧の増加、減少の変化量とそれに要する時間を測定することにより、空気ブレーキ管14の長さを算出することが可能となる。従って、空気ブレーク管14の長さがほぼ列車長となる。
【0019】
また、列車が走行中ブレーキをかけた場合、または緩めた場合において、空気圧の増減の割合とそれに要した時間との関係より、列車長の確認のバックアップシステムとして用いることが可能となる。更に、受信装置19に接続されている列車長を必要とする車上装置26,29などに対して自動的に車両長を与えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】現在の車両装置全体の構成を示す図である。
【図2】実施例1における車両装置全体の構成を示す図である。
【図3】実施例1におけるブレーキ制御システム内の構成を示す図である。
【図4】現在のブレーキ制御システム内の構成を示す図である。
【図5】付随車におけるブレーキ制御システム内の構成を示す図である。
【図6】実施例2における車両装置全体の構成を示す図である。
【図7】実施例2における先頭車両の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
11…先頭車両、12…ブレーキ制御システム、13…付随車、14…空気ブレーキ管、15…ブレーキ弁、16…元空気ダメ、17…空気圧縮機、18…、19…圧力測定装置、20…ブレーキシリンダ、21…補助空気ダメ、22…制御弁、23…排気、24…ブレーキ制御システム(付随車)、25…列車最後尾、26…列車長情報を使用する車上装置A、27…圧力測定器兼発信機、28…受信装置、29…列車長情報を使用する車上装置B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先頭車両と、1以上の付随車とからなり、前記先頭車両から最後尾まで空気ブレーキ管が引き通されており、前記先頭車両は、前記空気ブレーキ管に圧縮空気を送り込むブレーキ指令を出す空気圧縮機を備え、前記空気ブレーキ管内の空気圧増減による前記付随車のブレーキ制御を行う編成列車において、
前記先頭車両は、ブレーキ指令を出してから最後尾に伝播されるまでに要する時間と列車長との関係データを基に、ブレーキ指令を出してから最後尾に伝播されるまでに要する時間から列車長を算出する列車長測定装置を備えることを特徴とする編成列車。
【請求項2】
請求項1記載の編成列車において、
前記空気ブレーキ管は、前記最後尾にて先頭車両へ戻すループ構成であり、前記先頭車両は、戻ってきたブレーキ指令における空気ブレーキ管の気圧を測定する圧力測定装置を備えることを特徴とする編成列車。
【請求項3】
請求項1記載の編成列車において、
前記最後尾は、前記ブレーキ指令による空気ブレーキ管内の空気圧増減を検出し、検出結果を発信する圧力測定器兼発信機を備え、前記先頭車両は、前記最後尾からの検出結果を受信する受信装置を備えることを特徴とする編成列車。
【請求項4】
最後尾まで空気ブレーキ管が引き通されている1以上の付随車を連結し、前記空気ブレーキ管に圧縮空気を送り込むブレーキ指令を出す空気圧縮機を備え、前記空気ブレーキ管内の空気圧増減による前記付随車のブレーキ制御を行う編成列車の先頭車両において、
ブレーキ指令を出してから最後尾に伝播されるまでに要する時間と列車長との関係データを基に、前記ブレーキ指令を出してから最後尾に伝播されるまでに要する時間から列車長を算出する列車長測定装置を備えることを特徴とする先頭車両。
【請求項5】
先頭車両と、1以上の付随車とからなり、前記先頭車両から最後尾まで空気ブレーキ管が引き通されるとともに、最後尾にて先頭車両へ戻すループ構成であり、前記先頭車両は、前記空気ブレーキ管に圧縮空気を送り込むブレーキ指令を出す空気圧縮機を備え、前記空気ブレーキ管内の空気圧増減による前記付随車のブレーキ制御を行う編成列車における列車長を測定する方法において、
前記ブレーキ指令を出すことと、前記ブレーキ指令を出してから最後尾でのループ構成で前記先頭車両へ戻るまでに要する時間を測定することと、ブレーキ指令を出してから最後尾に伝播されるまでに要する時間と列車長との関係データを基に列車長を算出することを含むことを特徴とする列車長測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−222003(P2008−222003A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62501(P2007−62501)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】