説明

緩衝包装材

【課題】包装箱の内部に配置される緩衝包装材において、緩衝性能を十分に保持した上で、組み立て性の向上や省資源化、低コスト化が図られた緩衝包装材を提供する。
【解決手段】緩衝包装材1は、矩形板状部材の対向する二辺の箇所である折り目11でその外側部分を略垂直下方に折り曲げ、さらにその外側の折り目12で略垂直上方に折り曲げることにより形成した二重の略垂直な脚部13を有する側壁10と、この側壁10における重ね合わせた板状部材の各々の分離を阻止する接合構造30とを備える。これにより、接着部材を使用することなく、二重にした板状部材がその弾性によって元通りになろうとするのを防止して、二重の状態を保持することができる。したがって、板状部材を用いて、緩衝性能が高い二重の箇所を形成する場合に、組み立て易く、且つ板状部材に掛かる資源やコストを大幅に抑制することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被包装物である物品を包装するための包装箱の内部に配置される緩衝包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置や家庭用電化製品、そしてそれらを構成する機能部材や電子部品等の物品は、通常段ボールなどで構成される包装箱によって包装され、出荷されている。包装箱は、被包装物である物品を段ボール製の箱にすっぽりと収容する形のものが多い。搬送時の衝撃から被包装物を保護するために、緩衝包装材を介して包装箱に被包装物を収容する場合も多い。
【0003】
単一の包装箱に複数の被包装物を収容したり、包装箱と被包装物との間に間隙を設けて収容したりする場合には、包装箱の内部に、緩衝包装材が配置される。この緩衝包装材は、包装箱内の複数の被包装物が互いに衝突したり、包装箱が衝撃を受けて被包装物が大きく移動し、内壁に衝突したりしないように、緩衝作用をもたらすものである。このようにして緩衝包装材は、包装箱内に収容された被包装物を破損から保護している。
【0004】
上記のような緩衝包装材の一例を、特許文献1に見ることができる。特許文献1に記載された包装用緩衝固定材(緩衝包装材)は、1枚の段ボール板に対して、その外縁部を段ボール板が二重になるように一旦折り曲げ、さらにその重ね合わせた部分の上層の1枚を箱状断面となるように上方に折り曲げることにより被包装物の収容部や緩衝部、側壁などを形成している。
【特許文献1】実開平5−42170号公報(図1−3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された包装用緩衝固定材(緩衝包装材)は、1枚の段ボール板の外縁部を、段ボール板が二重になるように一旦折り曲げることにより、被包装物に対する緩衝固定部の組み立てが極めて簡単にできるようにしている。しかしながら、二重にするために折り曲げた折り目の箇所は、段ボールの弾性で元に戻ろうとするので、緩衝包装材の形状の維持は容易ではない。そこで、特許文献1に記載された包装用緩衝固定材(緩衝包装材)は、二重にした段ボール板の一部を接着固定する方法を採用している。したがって、接着剤や両面テープなどの接着部材が必要になるとともに、組み立て工程も増加する。その結果、包装材に掛かる資源やコストが大幅に増加する恐れがあり、昨今推し進められている省資源化、低コスト化に反することとなる。
【0006】
また、段ボールなどといった板状部材を用いて局部的に二重の箇所を設ける場合、他の箇所を折り曲げている間に、二重の箇所の折り目が元に戻ろうとするので、組み立て性が悪いといった問題もある。そこで、段ボールなどの板状部材を二重にすることによる緩衝性能上のメリットを得ながら、できるだけ組み立て性の向上や省資源化、低コスト化が図られた形で緩衝包装材を構成する必要がある。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、包装箱の内部に配置される緩衝包装材において、緩衝性能を十分に保持した上で、組み立て性の向上や省資源化、低コスト化が図られた緩衝包装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明は、緩衝包装材において、矩形板状部材の対向する二辺の箇所を下方に折り曲げ、さらにその外側で上方に折り曲げることにより形成した二重の略垂直な脚部を有する側壁と、この側壁及び/または側壁近傍の板状部材を利用して構成された、側壁における重ね合わせた板状部材の各々の分離を阻止する接合構造とを備えることとした。
【0009】
また、上記構成の緩衝包装材において、前記接合構造は、前記側壁形成における前記下方への折り曲げに伴って、前記矩形板状部材の略中央部から切り起こしにて側壁の方に向かって延びるように形成された差し込み片と、前記側壁に設けられ、前記差し込み片を保持する係合孔とを備えることとした。
【0010】
また、上記構成の緩衝包装材において、前記接合構造は、前記側壁における重ね合わせた板状部材の各々の、互いに対応する箇所に設けられ、一方を他方に向かって折り曲げることにより、他方を折り曲げてできた穴または溝に係合する、対をなす切り起こし片を備えることとした。
【発明の効果】
【0011】
本発明の構成によれば、緩衝包装材が、矩形板状部材の対向する二辺の箇所を下方に折り曲げ、さらにその外側で上方に折り曲げることにより形成した二重の略垂直な脚部を有する側壁と、この側壁及び/または側壁近傍の板状部材を利用して構成された、側壁における重ね合わせた板状部材の各々の分離を阻止する接合構造とを備えることとしたので、接着剤や両面テープなどといった接着部材を使用することなく、二重にした板状部材がその弾性によって元通りになろうとするのを防止して、二重の状態を保持することができる。これにより、板状部材を用いて、緩衝性能が高い二重の箇所を形成する場合に、組み立て易く、且つ板状部材に掛かる資源やコストを大幅に抑制することが可能である。したがって、緩衝性能を十分に保持した上で、組み立て性の向上や省資源化、低コスト化が図られた緩衝包装材を得ることができる。
【0012】
また、前記接合構造は、前記側壁形成における前記下方への折り曲げに伴って、前記矩形板状部材の略中央部から切り起こしにて側壁の方に向かって延びるように形成された差し込み片と、前記側壁に設けられ、前記差し込み片を保持する係合孔とを備えることとしたので、別部材を差し込むなどして構成する必要がない。これにより、できるだけ少量の板状部材を使用して、被包装物に対する緩衝性能が高い二重の箇所を形成することが可能である。また、別部材を用いることがないので、組み立て性も良好である。したがって、被包装物を保護する作用を十分考慮しながら、組み立て性、省資源化、及び低コスト化を一層高めることができる。
【0013】
また、前記接合構造は、前記側壁における重ね合わせた板状部材の各々の、互いに対応する箇所に設けられ、一方を他方に向かって折り曲げることにより、他方を折り曲げてできた穴または溝に係合する、対をなす切り起こし片を備えることとしたので、上記接合構造の構成の場合と同様に、別部材を差し込むなどして構成する必要がない。これにより、できるだけ少量の板状部材を使用して、被包装物に対する緩衝性能が高い二重の箇所を形成することが可能である。また、別部材を用いることがないので、組み立て性も良好である。したがって、被包装物を保護する作用を十分考慮しながら、組み立て性、省資源化、及び低コスト化を一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図1〜図6に基づき説明する。
【0015】
最初に、本発明の第1の実施形態に係る緩衝包装材について、図1〜図3を用いてその構成を説明する。図1は緩衝包装材全体の斜視図、図2は緩衝包装材の展開図、図3は図1のAの箇所における矢印方向から見た緩衝包装材の垂直断面図である。
【0016】
緩衝包装材1は、図1に示すように、その外形寸法が、直方体形状をなす包装箱100の内部にぴったりと収まるように形成されている。緩衝包装材1は、対向する2箇所の略垂直な側壁10と、この側壁10に直交し、対向する2箇所の緩衝部20とを備えている。これらの側壁10及び緩衝部20で包囲された緩衝包装材1の内部の収容空間に、被包装物である物品(図示せず)が収容される。
【0017】
緩衝包装材1を展開すると、図2に示す展開図となる。緩衝包装材1は、展開した状態において略矩形の板状をなす部材であって、段ボールで構成されている。図2において、矩形板状部材の状態にある緩衝包装材1の左右方向長さXが、包装箱100の内側面の、一対の対向面の距離に略一致し、上下方向長さYが、他方の一対の対向面の距離に略一致する。
【0018】
図2において、緩衝包装材1の折り目11でその外側部分を略垂直下方に折り曲げ、さらにその外側の折り目12で略垂直上方に折り曲げることにより、図2における左右方向に位置する、対向する二辺の箇所に略垂直な側壁10が形成される(図1参照)。そして、このように2回にわたって折り曲げることにより、側壁10は、図1及び図3に示すように、板状部材を二重にして構成された脚部13を有している。
【0019】
また、2箇所の側壁10には、それぞれ接合構造30が備えられている。接合構造30は、差し込み片31と、係合孔32とを備えている。
【0020】
差し込み片31は、矩形板状部材の略中央部から切り起こしにて側方に、すなわち側壁10の方に向かって延びるように形成されている。差し込み片31は、前述のように、側壁10を形成する際、折り目11におけるその外側部分の下方への折り曲げに伴って形成される。
【0021】
係合孔32は、側壁10の、差し込み片31に対応する箇所に設けられている。係合孔32は、差し込み片31を受け入れ可能な大きさの長方形形状をなしている。そして、側壁10を形成する際、差し込み片31を、その根元部までしっかりと係合孔32に挿入して、保持させることにより、二重になった板状部材を互いに密着状態にして脚部13を形成することができる。
【0022】
図2において、緩衝包装材1の折り目21でその外側部分を略垂直上方に折り曲げ、さらにその外側の折り目22で略水平内側に、さらにその外側の折り目23で略垂直下方に、さらにその外側の折り目24で略水平外側に折り曲げることにより、図2における上下に位置する、対向する二辺の箇所に緩衝部20が形成される(図1参照)。緩衝部20は、垂直断面形状がロ字状をなす、横に倒した角形筒形状で構成されている。緩衝部20は、前述のように、側壁10に直交して延びている。
【0023】
図1に示すように、緩衝部20が延びる方向の、その外側には切り込み25が、さらにその外側には緩衝片26が備えられている。
【0024】
切り込み25は、下方から上方に向かって延びている。そして、切り込み25は、側壁10に設けられた、その上縁から下方に向かって延びる切り込み14に係合する。
【0025】
緩衝片26は、折り目23から略垂直下方に、緩衝包装材1の底面部近傍まで延びている。緩衝片26は、緩衝部20が延びる方向(図2のX方向)における包装箱100(図1参照)の変形に対する緩衝作用を高めている。
【0026】
なお、緩衝部20や矩形板状部材の略中央部には、緩衝性能を調節したり、被包装物の収納方向を示したりすることを目的として、三角形状の切り抜き部40が複数箇所に設けられている。
【0027】
上記のように、緩衝包装材1は、矩形板状部材の対向する二辺の箇所である折り目11でその外側部分を略垂直下方に折り曲げ、さらにその外側の折り目12で略垂直上方に折り曲げることにより形成した二重の略垂直な脚部13を有する側壁10と、この側壁10及び/または側壁10近傍の板状部材を利用して構成された、側壁10における重ね合わせた板状部材の各々の分離を阻止する接合構造30とを備えているので、接着剤や両面テープなどといった接着部材を使用することなく、二重にした板状部材がその弾性によって元通りになろうとするのを防止して、二重の状態を保持することができる。これにより、板状部材を用いて、緩衝性能が高い二重の箇所を形成する場合に、組み立て易く、且つ板状部材に掛かる資源やコストを大幅に抑制することが可能である。したがって、緩衝性能を十分に保持した上で、組み立て性の向上や省資源化、低コスト化が図られた緩衝包装材1を得ることができる。
【0028】
また、接合構造30は、側壁10の形成における折り目11での下方への折り曲げに伴って、矩形板状部材の略中央部から切り起こしにて側壁10の方に向かって延びるように形成された差し込み片31と、側壁10に設けられ、差し込み片31を保持する係合孔32とを備えているので、別部材を差し込むなどして構成する必要がない。これにより、できるだけ少量の板状部材を使用して、被包装物に対する緩衝性能が高い二重の箇所を形成することが可能である。また、別部材を用いることがないので、組み立て性も良好である。したがって、被包装物を保護する作用を十分考慮しながら、組み立て性、省資源化、及び低コスト化を一層高めることができる。
【0029】
次に、本発明の第2の実施形態に係る緩衝包装材について、図4〜図6を用いてその構成を説明する。図4は緩衝包装材全体の斜視図、図5は緩衝包装材の展開図、図6は図4のBの箇所における矢印方向から見た緩衝包装材の垂直断面図である。なお、この実施形態の基本的な構成は、図1〜図3を用いて説明した前記第1の実施形態と同じであるので、第1の実施形態と共通する構成要素には前と同じ符号を付し、説明は省略するものとする。
【0030】
第2の実施形態に係る緩衝包装材1では、図4〜図6に示すように、接合構造30が、対をなす切り起こし片33、34を備えている。切り起こし片33、34は、側壁10の脚部13において、重ね合わせた板状部材の各々の、互いに対応する箇所に1個ずつ設けられている。切り起こし片33、34は、ともに略同じ向き、略同じ大きさ、略同じ形状をなすように形成されている。
【0031】
外側に設けられた切り起こし片33を内側、すなわち切り起こし片34に向かって折り曲げることにより、切り起こし片34を折り曲げてできた穴34aに係合する。なお、内側に設けられた切り起こし片34を外側、すなわち切り起こし片33に向かって折り曲げることにより、切り起こし片33を折り曲げてできた穴33aに係合させることも可能である。
【0032】
このようにして、接合構造30は、側壁10における重ね合わせた板状部材の各々の、互いに対応する箇所に設けられた、対をなす切り起こし片33、34を備え、切り起こし片33を切り起こし片34に向かって折り曲げることにより、切り起こし片34を折り曲げてできた穴34aに係合するので、第1の実施形態に係る接合構造30の構成の場合と同様に、別部材を差し込むなどして構成する必要がない。これにより、できるだけ少量の板状部材を使用して、被包装物に対する緩衝性能が高い二重の箇所を形成することが可能である。また、別部材を用いることがないので、組み立て性も良好である。したがって、被包装物を保護する作用を十分考慮しながら、組み立て性、省資源化、及び低コスト化を一層高めることができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【0034】
例えば、第1及び第2の実施形態においては、1枚の側壁10に対して接合構造30を1箇所設けることとしたが、接合構造30を複数箇所に設けることとしても構わない。また、接合構造30の配置箇所や、差し込み片31、係合孔32、及び切り起こし片33、34の大きさや形状といった構成は、上記実施形態の構成に限定されるわけではなく、変更しても構わない。
【0035】
また、第2の実施形態では、接合構造30を脚部13の略中央部に設け、切り起こし片33、34を折り曲げることにより穴33a、34aができることとしたが、接合構造30を脚部13の周縁部に設けて、切り起こし片33、34を折り曲げることにより溝ができるようにしても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、被包装物である物品を包装するための包装箱の内部に配置される緩衝包装材全般において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る緩衝包装材全体の斜視図である。
【図2】図1に示す緩衝包装材の展開図である。
【図3】図1のAの箇所における矢印方向から見た緩衝包装材の垂直断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る緩衝包装材全体の斜視図である。
【図5】図4に示す緩衝包装材の展開図である。
【図6】図4のBの箇所における矢印方向から見た緩衝包装材の垂直断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 緩衝包装材
10 側壁
11、12 折り目
13 脚部
20 緩衝部
30 接合構造
31 差し込み片
32 係合孔
33、34 切り起こし片
100 包装箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形板状部材の対向する二辺の箇所を下方に折り曲げ、さらにその外側で上方に折り曲げることにより形成した二重の略垂直な脚部を有する側壁と、この側壁及び/または側壁近傍の板状部材を利用して構成された、側壁における重ね合わせた板状部材の各々の分離を阻止する接合構造とを備えることを特徴とする緩衝包装材。
【請求項2】
前記接合構造は、前記側壁形成における前記下方への折り曲げに伴って、前記矩形板状部材の略中央部から切り起こしにて側壁の方に向かって延びるように形成された差し込み片と、前記側壁に設けられ、前記差し込み片を保持する係合孔とを備えることを特徴とする請求項1に記載の緩衝包装材。
【請求項3】
前記接合構造は、前記側壁における重ね合わせた板状部材の各々の、互いに対応する箇所に設けられ、一方を他方に向かって折り曲げることにより、他方を折り曲げてできた穴または溝に係合する、対をなす切り起こし片を備えることを特徴とする請求項1に記載の緩衝包装材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−83872(P2009−83872A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253309(P2007−253309)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】