説明

緩衝包装装置

【課題】構造が簡単で組立てが容易であるとともに、比較的重量物の物品を弾性的に確実に包装できるようにした物品の包装装置を提供する。
【解決手段】一面に収容開口を有する保持体2と、この収容開口6を覆うように張り渡して配置され、その上面に物品を弾性的に支持する弾性シート7と、この弾性シートの物品側に位置するとともに挿入された物品の収容開口に直交する方向の移動を抑止する抑止体13と、物品を弾性支持した保持体と抑止体とを収容する外箱3とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、緩衝包装装置に係り、一面の開口全面に弾性シートを張り渡して設けた保持体によって、電子機器のような、比較的重量があり、衝撃をきらう物品を緩衝支持するとともに、その支持された物品の開口面と直交する方向の移動を抑制する抑止体を配置して、物品を、簡便に、弾力的に包装することができる緩衝包装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パソコンなど比較的重量のある、衝撃に弱い物品を輸送するに際して、物品を保護するために、緩衝支持して包装する緩衝包装装置がある。
【0003】
一例として、下記特許文献に開示されたもののように、箱状の物品保持体の表面に開口部を設け、この開口部周辺の上縁部に伸縮性のあるプラスチックシートを固着したものを1対用意しておき、この保持体のシート面を互いに接するように配置してそのシート間に物品を収め、これら全体を外箱に収容することによって、物品を空間状態に保持して衝撃から保護するものがある。またこれによって物品を外箱から間隔をもって保持できるので、外箱に対する直接的外圧からも保護できる。
【0004】
しかしながら、このものは、所定の緩衝支持が可能であるものの、プラスチックシートを固着した物品保持体を1対用意しなければならず、高価となり、かつ保持装置の組み立てに倍の労力を要するばかりでなく、ややかさばるという問題もあり、さらに、一層簡便な構成の緩衝包装装置が要望されるに至っている。
【特許文献1】特開2007−290741号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、これらの欠点を除去するとともに、より簡便な構成の緩衝包装装置を提供することができるようにしたもので、一面の開口全面に弾力を有する弾性シートを張り渡して設けた保持体によって物品を緩衝支持するとともに、この弾性シートの物品支持側に配置され、前記支持された物品の前記収容開口に直交する方向の移動を抑制する抑止体と、前記物品を弾性支持した保持体と抑止体とを一体に収容する外箱とを設けて、物品を、簡便に、弾力的に包装することができる緩衝包装装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、この発明は、第1に、一面に収容開口を有する保持体と、この収容開口を覆うように張り渡して配置され、その上面に物品を弾性的に支持する弾性シートと、この弾性シート側に位置するとともに前記挿入された物品の前記収容開口に直交する方向の移動を抑止する抑止体と、前記物品を弾性支持した保持体と抑止体とを収容する外箱とを有することを特徴とする緩衝包装装置である。
【0007】
第2に、前記抑止体は、前記収容された物品とは反対側に位置して設けた収納空間を形成した緩衝包装装置である。
【0008】
また、前記抑止体は、前記外箱と一体に連設されるようにしたものである。
【0009】
さらには、前記収容開口の少なくとも一部を横切るように配置され、前記弾性シートに離間可能に重合されて、その両端部を前記保持体に固定されるとともに、前記弾性シートとの間に前記物品を挿入できる押さえシートとを有する緩衝包装装置である。
【0010】
またさらには、前記弾性シートと押さえシートとの少なくともー方は、透視可能である緩衝包装装置である。
【発明の効果】
【0011】
したがって、この発明は上記のような構成によって、構造が簡単で、組立てが比較的に容易であるとともに、操作が簡便な、物品の緩衝包装装置を提供し得るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、この発明に係る物品の包装装置の第1の実施例について、図1から図3Aの図面を参照して説明する。
【0013】
この緩衝包装装置は、全体を1で示されているが、ポータブルパソコンのような、比較的重量があって、衝撃をきらう電子機器等の物品P(図2図示)を収容する保持体2と、この保持体をその内部に収容する外箱3とから構成される。この保持体2は、側壁4を有し、下面を開放するとともに上面をその周縁部5を残して一面全体を開口して収容開口6とする箱体を構成している。その収容開口6には、弾性を有して伸縮可能であり、その開口全面を覆うようにしてポリウレタンシートのような透明な弾性シート7が張り渡され、その全周を保持体2の開口周縁部5に熱溶着のような手段で固着されている。この開口6についての平面図で見れば、図3Aに示すように開口全面に弾性シート7が張り渡された構成である。
【0014】
そして、前記保持体2をその側壁4を基礎にして水平に置いた状態で、包装すべき物品Pを収容開口6に張り渡されている弾性シート7の上面に載置すると、図2に示されるように、弾性シート7は物品Pの重量によって、弾力的に伸び、物品Pを沈み込んだ位置に弾性的に緩衝支持するように構成されている。
【0015】
さらに、図1に示されるように、外箱3は、通常、段ボール紙のような平坦な材料から打抜いて、さらにこれを折りたたんで構成されるもので、底板10に連設して対向する側壁11、11が設けられるとともに、それぞれその上部には縁部12が形成される。さらにその内側に位置するとともに、弾性シート7の物品P支持側に配置されて、収容空間Sが形成されるように、好ましくは縁部12から下方位置に、折り曲げ形成されて、閉塞時には、水平をなす押さえ蓋13、13がそれぞれ形成されている。すなわち、この押さえ蓋13、13には、その先端に切込み14、14が形成され、この切込み14、14を相互に挿入することによって結合され、重ね合わされて、外箱3の内部全体を覆って閉塞し、後述するように収納されている物品Pの上下方向、すなわち開口に直交する方向の動きを抑制する機能を有する。すなわち、押さえ蓋13、13は、物品Pの移動を抑制する抑止体を構成する。そして、この押さえ蓋13、13が閉塞された状態の上方、すなわち、物品Pとは反対側には、前述した収容空間Sが形成される。
【0016】
またさらに、底板10の残りの辺(図1では、一方のみ図示)からは、同様に側壁15を介して、外箱3の蓋16が連設され、したがって、包装完了時に、前記収容空間Sに対する蓋としても機能するように構成される。この蓋16は、図示されていないが、相互に結合用切込み等を介して連結される。
【0017】
このように構成されたこの発明の一実施例について、その緩衝包装の手順にしたがって以下に説明する。
すなわち、緩衝包装に際しては、前述したように、先ず、前記保持体2をその側壁4を基礎にして水平に置いた状態で、包装すべき物品Pを収容開口6に張り渡されている弾性シート7の上面に載置すると、図2に示されるように弾性シート7は物品Pの重量にしたがって、弾力的に伸び、物品Pは、保持体2内の沈み込んだ所定位置に弾性的に緩衝支持される。
【0018】
この状態の保持体2を、外箱3の底板10上に位置するとともに、外箱3の側壁11を介して押さえ蓋13、13を閉じて相互に結合することによって、物品Pの上下方向の移動に対する抑止体を外箱3と一体に形成して構成する。すなわち、この押さえ蓋13、13の下面は、保持体2内に収容された物品Pを押圧し、その物品Pを弾性シート7と押さえ蓋13、13との間に挟持固定することができ、物品Pの上下方向の動きを抑制して、抑止体として機能して安定した緩衝包装をすることができる。この押さえ蓋13、13の閉塞状態で、これが、弾性シート7上面に支持された物品Pと常時接する位置にない場合でも、輸送中の物品Pが上下方向、すなわち収容開口6と直交する方向に過剰に移動する場合にそれに接することによって同様にその移動を抑止することができる。
【0019】
この抑止体である押さえ蓋13、13は、物品Pの移動を抑制するものであるから、好ましくは、弾性的に抑止できるものであることが、押さえ蓋13の材料や構造によって、すなわち、材料としては、後述するように外箱3と一体に形成する必要がなければ、柔軟性を有する材料から形成することができる。さらに一体に形成する場合であっても、その押さえ蓋が弾力性を有するような、例えば収容空間内で数サイクル程度の緩い波型としたり、押さえ蓋間で相互に弾性的に摺動することができるような構成を採用することによって、弾力的な抑制を実現することもできる。
【0020】
この状態で、閉塞された押さえ蓋13、すなわち抑止体の上方には、収容空間Sが形成されるため、その空間Sには、図示していないが、物品Pと同梱すべき小物部品や取扱説明書等の小冊子や必要な書類等を収容することができる。
【0021】
その後、外箱3の蓋16を収容空間Sの上方を覆うように、相互に連結して閉塞する。このようにして、この発明の構成による一連の緩衝包装が完了する。
【0022】
この第1の実施例においては、物品Pに対する抑止体は、外箱3と一体に連設されるように構成し、したがって、包装時には、外箱3内に、物品Pを弾性支持した保持体2を、外箱3と一体に形成された抑止体と一体的に重ねて収納することができる。しかしながら、抑止体は、外箱3とは別体に独立して内部に収容空間Sを形成する箱状に形成するようにしてもよい。この場合には、前述したように抑止体の材料は、外箱とは異なって弾性的な材料を使用することができるもので、この場合、包装時には、外箱3内に、物品Pを弾性支持した保持体2と抑止体とを一体的に重ねて収納することができる。
【0023】
以上の実施例では、その保持体2の収容開口6に張り渡された弾性シート7は、単一の一面全面のものであるものについて説明したが、この弾性シート7は、図3Bに示すように、弾性シート7を、開口6の1対をなす対向縁を除いて全面に張り渡したものでもよく、この場合は、残りの対向縁側が保持体2の周縁部5に熱溶着等で固定されたものを使用することができる。したがって、この場合には、弾性シート7の弾力伸縮は同様に全面的ではあるが、より一層伸縮し易い帯状の弾性シート7として使用することができる。
【0024】
また、図3Cに示すように、弾性シート7を開口6の4隅部を除いて、全面的に張り渡して固定したもので、弾性シートから除かれたその4隅部の部分の広さによって、弾性シート7としての異なる弾性支持能力を選択的に構成することができる。
【0025】
一方、図3Dに示すように、前記第1の実施例と同様に、弾性シート7を開口全面に張り渡すとともに、この弾性シート7と離脱可能に重合してその両端部を前記保持体に熱溶着等によって弾性シート7とともに固定して、押さえシート17Dを開口6の中央を横断して張り渡し、両シート7、17D間に前記物品を挿入して緩衝包装できるようにした実施例について説明する。
【0026】
この実施例において、押さえシート17Dは、弾性シート7と同一の材料からなる。そして、基本的には前述の第1実施例の場合と同様に、物品Pを緩衝包装するものであるが、包装に当っては、物品Pは、弾性シート7と押さえシート17Dとの間に挿入され、したがって先ず物品Pは、弾性シート7によって弾性支持されるとともに、押さえシート17Dによって一層安定的に弾性支持されるものである。
【0027】
さらに図3Eに示されたものは、第1の実施例と同様に弾性シート7を開口全面に張り渡すとともに、この弾性シート7と離脱可能に重合して押さえシート17Eをその開口6の1対角間に張り渡したものである。このものは前記図3Dに示された前記実施例の押さえシート17Dよりは、押さえシート17Eを長尺に選定できるとともに、シート間に物品Pを挿入する操作がより容易である。
【0028】
また図3Fに示されたものは、同様に第1の実施例と同じく弾性シート7を開口全面に張り渡すとともに、この弾性シート7と離脱可能に重合して押さえシート17Fを1対角部にのみ部分的に張り渡したものである。この押さえシート17Fで挿入保持すれば足りる寸法、形状の物品P、例えばその両端または対角端部分を押さえれば足りる物品pに対してはそれで充分である。
【0029】
さらに、図3Gに示されたものは、弾性シート7を開口全面に張り渡すとともに、隣り合う辺縁間にこの弾性シート7と離脱可能に重合して押さえシート17Gを部分的に1対張り渡したもので、この押さえシート17Gによって物品Pを保持するようにすることができる。図2には、この押さえシート17Gによる保持を模式的に示してある。
【0030】
また、図3Hに示されるものは、弾性シート7と押さえシート17とを重ね合わせる構成でなく、弾性シート7を開口全面に張り渡すとともに、この弾性シート7自体に1対のスリット18を形成したものである。物品Pの形状、重量によってはそれをこの1対のスリット18に挿通して支持することによって、安定して弾性保持し、全体として緩衝的に支持することができる。
【0031】
以上、説明してきた各実施例における弾性シート7および押さえシート17D−17Gは、透明であるから、包装作業において、それらのシート7、17を介して物品Pを視認できるので、作業が容易であるばかりでなく、包装後も、保持体2の外側から物品Pを視認できるので、扱い易い。
【0032】
また、これらのシート7、17は、必ずしも透明である必要はなく、物品Pを視認できる程度の透視性があれば充分である。
【0033】
さらに、押さえシート17の材料は、弾性シート7と同一材料であることが好ましいが、より弾性のない材料を使用することができ、さらには、両者が重ね合わされた状態では前者が識別しにくいことがあることから、これに色彩をもたせて扱い易くすることも可能である。
【0034】
また、前記押さえシート17D、17Eは、単一のものが張り渡された実施例に代えて、包装される物品の大きさ、形状、重量によっては、複数並置することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】弾性シートおよび押さえシートを開口に張り渡した保持体と、この保持体を収容する外箱を一部切り欠いて、相互に分解した状態の一実施例を示す斜視図である。
【図2】物品を保持した保持体を外箱内に収容した状態の一実施例を示す断面図である。
【図3A】弾性シートを開口全面に張り渡した状態を示す平面図である。
【図3B】弾性シートを1対の対向縁を除いて全面に張り渡した状態を示す平面図である。
【図3C】弾性シートを開口の4隅部を除いて全面に張り渡した状態を示す平面図である。
【図3D】弾性シートを開口全面に張り渡すとともに、押さえシートを重合してその開口の中央を横断して張り渡した状態を示す平面図である。
【図3E】弾性シートを開口全面に張り渡すとともに、押さえシートをその開口の1対角間に張り渡した状態を示す平面図である。
【図3F】弾性シートを開口全面に張り渡すとともに、押さえシートをその1対角部にのみ張り渡した状態を示す平面図である。
【図3G】弾性シートを開口全面に張り渡すとともに、押さえシートを隣り合う辺縁間にのみ張り渡した状態を示す平面図である。
【図3H】弾性シートを開口全面に張り渡すとともに、1対のスリットを形成した状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0036】
1・・・緩衝包装装置、 2・・・保持体、 3・・・外箱、 4・・・側壁、 5・・・周縁部、 6・・・収容開口、 7・・・弾性シート、 10・・・底板、 11・・・側壁、 12・・・縁部、 13・・・押さえ蓋、 14・・・切込、 15・・・側壁、 16・・・蓋(抑止体)、 17D−17G・・・押さえシート、 P・・・物品、 S・・・収容空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に収容開口を有する保持体と、この収容開口全面を覆うように張り渡して前記保持体に固定され、その上面に物品を弾力的に支持する弾性シートと、この弾性シートの物品支持側に配置され、前記支持された物品の前記収容開口に直交する方向の移動を抑制する抑止体と、前記物品を弾性支持した保持体と抑止体とを一体的に収容する外箱とを有することを特徴とする緩衝包装装置。
【請求項2】
前記抑止体は、前記支持された物品とは反対側に位置して収納空間を設けたことを特徴とする請求項1記載の緩衝包装装置。
【請求項3】
前記抑止体は、前記外箱と一体に連設されることを特徴と前記請求項1または2記載の緩衝包装装置。
【請求項4】
前記収容開口の少なくとも一部を横切るように配置され、前記弾性シートに離間可能に重合され、その両端部を前記保持体に固定されるとともに、前記弾性シートとの間に前記物品を挿入できる押さえシートとを、さらに有することを特徴と前記請求項1から3のいずれか1項記載の緩衝包装装置。
【請求項5】
前記弾性シートと押さえシートとの少なくともー方は、透視可能であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の緩衝包装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図3H】
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【公開番号】特開2010−83572(P2010−83572A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257575(P2008−257575)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(508250383)株式会社 洋光商会 (4)
【Fターム(参考)】