説明

緩衝機構

【課題】 衝突時等の直線的に付加される衝撃力に対応し、単純な構成で効率よく衝撃を緩和できることに加え、強度を高くすることができ、制御精度や安定性と衝撃緩和性能との両立が容易に図れる緩衝機構を提供する。
【解決手段】 三つのリンク部材を連結して、二つの回転対偶と一つの滑り対偶を有する自由度が0の単純な機構を構成する一方、この連結したのみの無変形状態では、衝撃力の方向に第1リンク部材10の無限小変位を生じうる性質を有することにより、無変形状態で剛性、粘性共に0となって衝撃力に対し柔らかさを発揮することとなり、衝撃力を緩和できることに加え、無変形状態から第1リンク部材10が衝撃力の方向にわずかでも変位すれば、剛性、粘性共に急激に増加し、荷重に対しそのまま自由度0の機構として安定的な支持が行える硬さを発揮することができ、制御精度や安定性への悪影響が無い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物に対する外部からの衝撃力の伝達を緩和する緩衝機構に関する。
【背景技術】
【0002】
物体との頻繁な衝突や、物体と衝突を伴って接触する作業機械においては、物体との非接触状態から接触状態へと不連続に状態変化した直後の極めて短時間に衝撃力を受けることとなり、これが原因となって制御系の発振や、機構等の破損を招くことがある。従って、衝撃力を緩和することが必要であるが、これに制御で対応しようとしても、高い周波数領域で外界からの入力に安定に応答することが要求されるため、一般的なフィードバック制御のみでこれを解決するのは極めて難しい。
【0003】
このため、衝撃緩和の目的では、通常、ラバーなどの柔軟な弾性要素による緩衝材が用いられる。ただし、こうした弾性要素は接触時に受動的に大変形することから、制御精度や安定性低下の原因となり、物体との接触状態において機構が安定に荷重を保持する目的の点で問題がある。これに対し、衝撃緩和等の弾性的な特徴を備えつつ、制御精度を高められるものとして、剛性特性(弾性特性)を状況に応じて能動的に変化させる剛性可変機構が種々提案されており、その一例として、特開2006−250296号公報に開示されるものがある。
【0004】
しかしながら、こうした機構は、剛性を能動的に変化させることに伴い、機構の複雑化や大型化、アクチュエータの増加といった問題を有していた。こうした中、近年、制御精度や安定性を損わず、且つ機構の複雑化等を招かずに衝撃の緩和を図るものとして、高剛性部材のみで非線形ばね特性を有して、衝撃を吸収する柔らかさと駆動力を伝える硬さの両立を目指した剛性可変機構が提案されている(下記非特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−250296号公報
【非特許文献1】岡田昌史、紀晋太郎、「構造的特異性を利用した受動可変剛性を持つトルク伝達機構」、日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会’07 講演予稿、平成19年(2007年)5月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の剛性可変機構は前記各文献に示される構成となっており、機構の強度や安定性、制御性と、衝撃緩和性能との両立を図れる可能性を有し、特に、前記非特許文献に示されるものは、剛性を能動的に変化させるためのアクチュエータ等が不要で機構を簡略化できる特徴を有していたが、その機構は、軸周りのねじり剛性について非線形特性を有する構成であり、ねじりに係る衝撃力(衝撃的に付加されるトルク)を吸収できる可能性を有しているものの、衝突時等の単純に直線的に付加される衝撃力をそのまま受けて緩和することはできず、当該機構をこうした衝撃力に対応させるためには、加わる力の向きを機構に合せて変換したり、機構そのものを自由に支持するような付加機構が別途必要となり、結果的に全体機構が複雑化してしまうという課題を有していた。
【0006】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、衝突時等の直線的に付加される衝撃力に対応し、単純な構成で効率よく衝撃を緩和できることに加え、強度を高くすることができ、制御精度や安定性と衝撃緩和性能との両立が容易に図れる緩衝機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る緩衝機構は、所定の物体から衝撃力を受ける第1リンク部材と、緩衝対象物に当接する又は連結固定される第2リンク部材とを少なくとも有し、前記緩衝対象物が受ける衝撃を緩和する緩衝機構において、前記第1リンク部材と第2リンク部材が、所定方向への相対移動のみ許容する状態で互いにスライド自在に連結され、前記第1リンク部材と第2リンク部材にそれぞれ回動自在に連結する第3リンク部材が、第1リンク部材との連結部の回動軸方向と第2リンク部材との連結部の回動軸方向とを互いに平行とすると共に、第1リンク部材との連結部の回動中心と第2リンク部材との連結部の回動中心とを通る直線を、前記所定方向と略直角とし、且つ前記各連結部の回動軸方向と直角とする位置関係となしうる配置として配設されるものである。
【0008】
このように本発明によれば、三つのリンク部材を連結して、二つの回転対偶と一つの滑り対偶を有する自由度が0の単純な機構を構成する一方、この連結したのみの無変形状態では、スライドの向きである前記所定方向に第1リンク部材の無限小変位を生じうる性質を有することにより、無変形状態で剛性、粘性共に0となって第1リンク部材へ前記所定方向に加わる衝撃力に対し柔らかさを発揮することとなり、衝撃力を緩和できることに加え、無変形状態から第1リンク部材が衝撃力の方向にわずかでも変位すれば、剛性、粘性共に急激に増加し、荷重に対しそのまま自由度0の機構として安定的な支持が行える硬さを発揮することができ、制御精度や安定性への悪影響が無いなど、少ない部材による単純な機構で制御に適した優れた受動的特性を得られる。
【0009】
また、本発明に係る緩衝機構は必要に応じて、前記第1リンク部材及び第2リンク部材が、少なくとも前記衝撃力に対して弾性変形しない剛性をそれぞれ有すると共に、前記第3リンク部材が、少なくとも前記所定の物体又は緩衝対象物の支持に係る静荷重に対して弾性変形しない剛性を有するものである。
【0010】
このように本発明によれば、各リンク部材が十分な剛性を有することにより、各リンク部材が機構本来の理想的な動作のみ行うこととなり、制御に際し各リンク部材の弾性の影響を考慮せずに済むと共に、静荷重に対して十分な強度を発揮して変形無く安定した支持状態を確保できる。
【0011】
また、本発明に係る緩衝機構は必要に応じて、前記第3リンク部材が、前記第1リンク部材との連結部の回動中心と第2リンク部材との連結部の回動中心とを通る直線が前記所定方向と真直角ではない直角近傍の所定角度をなす位置関係となる配置で配設されるものである。
【0012】
このように本発明によれば、第3リンク部材における他リンク部材との連結部中心をいずれも通る直線が、スライドの向きである前記所定方向と真直角とはならない直角近傍の所定角度をなす配置状態とし、各リンク部材が連結したのみの無変形状態における前記所定方向についての剛性を完全に0とせず極わずかに付与することにより、衝撃緩和性能を確保しつつ、剛性が0の構造的に不安定な状態を避けて、連結部等のガタに伴う悪影響を抑えられると共に、物体と衝突して衝撃力を受ける際における第1リンク部材の衝突してから静止するまでの相対変位量を低減でき、機構の制御精度や安定性をさらに向上させられる。
【0013】
また、本発明に係る緩衝機構は必要に応じて、前記第3リンク部材が、前記所定方向と平行な向きに所定間隔で複数並列配置され、前記第1リンク部材との各連結部を前記所定方向と平行な一直線上に位置させると共に、前記第2リンク部材との各連結部を前記所定方向と平行な他の直線上に位置させるものである。
【0014】
このように本発明によれば、第3リンク部材を前記所定方向に並列させて複数配設し、各第3リンク部材の他リンク部材との連結関係を一致させることにより、各第3リンク部材の剛性及び弾性の影響が加算状態となり、衝撃力の緩和性能は維持しつつ、機構の強度を高くすることができ、衝撃力を与えた物体や緩衝対象物の荷重を支持する能力を大きく高められると共に、第3リンク部材の追加のみで機構としての補強が容易に行えることとなり、緩衝機構としてのみでなく支持体としての使い勝手も優れたものにできる。また、各第3リンク部材に剛性の低い材質を用いたとしても、機構全体の剛性を高い状態とすることができ、荷重の支持能力を十分確保しつつリンク部材の材質の選択範囲を広げられる。
【0015】
また、本発明に係る緩衝機構は必要に応じて、前記第1リンク部材が、前記所定方向と直交する向きに所定間隔で複数並列配置され、前記第3リンク部材との各連結部を前記所定方向と直交する一直線上に位置させ、各第1リンク部材の衝撃力を受ける点から前記第3リンク部材との連結部までの距離を一致させるものである。
【0016】
このように本発明によれば、第1リンク部材を前記所定方向と直交する向きに並列させて複数配設し、各第1リンク部材における弾性力を受ける点を同一平面上に位置させることにより、各第1リンク部材が衝撃力を与える物体と同時且つ一様に接触する場合には、複数の第1リンク部材で衝撃力を分担して受けて衝撃力の緩和効果を高くすることができる一方、各第1リンク部材の衝撃力を受ける点のある仮想平面が斜めに傾いて着地する場合などの、衝撃力が時間差をおいて各第1リンク部材に順次付加される場合には、そのつど衝撃を緩和することとなり、衝撃を分散してその影響を極めて小さくできる。
【0017】
また、本発明に係る緩衝機構は必要に応じて、前記第1リンク部材の衝撃力を受ける点と、第1リンク部材と第2リンク部材とのスライド連結部と、第1リンク部材と第3リンク部材との連結部とが、前記所定方向と平行な一直線上に配置されるものである。
【0018】
このように本発明によれば、第1リンク部材における衝撃力を受ける点、第2リンク部材とのスライド連結部、並びに第3リンク部材との連結部の三箇所を一直線上に配置することにより、現実には完全な剛体とならない各リンク部材や、ガタ及び抵抗を完全に0にはできない各連結部における力の伝達をスムーズにして、余分な力やモーメントの影響を回避でき、また各連結部の対偶としてのすべりや回転を問題なく実現でき、確実に機構として衝撃を緩和できることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る緩衝機構を図1ないし図7に基づいて説明する。図1は本実施形態に係る緩衝機構の概略構成図、図2は本実施形態に係る緩衝機構の模式図、図3は本実施形態に係る緩衝機構の仮想変位状態の模式図、図4は本実施形態に係る緩衝機構のばね−ダンパモデルの模式図、図5は本実施形態に係る緩衝機構のモデルにおける剛性変化説明図、図6は本実施形態に係る緩衝機構のモデルにおける粘性変化説明図、図7は本実施形態に係る緩衝機構のモデル及び比較例の衝突シミュレーション結果説明図である。
【0020】
前記各図において本実施形態に係る緩衝機構1は、衝撃力を受ける第1リンク部材10と、この第1リンク部材10に対し所定方向への相対移動のみ許容する状態で互いにスライド自在に連結され、緩衝対象物50に当接する第2リンク部材20と、第1リンク部材10及び第2リンク部材20にそれぞれ回動自在に連結する第3リンク部材30とを備える構成である。
【0021】
前記第1リンク部材10は、略棒状体で形成され、連結部Cで第2リンク部材20とスライド自在に連結されると共に、端部の連結部Bで第3リンク部材30と相互に回動自在に連結され、前記所定方向、すなわち連結部Cのスライド方向に長手方向を一致させて配設される構成である。よって、この第1リンク部材10における衝撃力を受ける端部Dと、第2リンク部材20との連結部Cと、第3リンク部材30との連結部Bとは、スライド方向に一致して一直線上に配置されることとなる。この第1リンク部材10に対し、前記スライド方向と同じ向きの衝撃力又は衝撃力の当該方向成分が、端部Dから加わることとなる。
【0022】
前記第2リンク部材20は、前記第1リンク部材10に対し平行をなす基部21と、第1リンク部材10と直交し且つ前記第3リンク部材30とは平行をなす腕部22とからなる略鉤状体で形成される構成である。この第2リンク部材20は、一端部、すなわち腕部22の基部21と一体となった側でない端部を、前記第1リンク部材10とスライド自在に連結する連結部Cとされ、また、基部21の側部所定箇所を第3リンク部材30と相互に回動自在に連結する連結部Aとされ、他端部、すなわち基部21の腕部22と一体となった側でない端部Eを緩衝対象物に当接させて配設される構成である。
【0023】
これら第1リンク部材10及び第2リンク部材20は、衝撃力に対して弾性変形しない剛性をそれぞれ有するものとされる。荷重に対する弾性変形がほとんど無視でき、一般的な状況でほぼ剛体と見なせるような金属材料が好ましい。また、第1リンク部材10及び第2リンク部材20は、それぞれ十分な剛性を確保できれば、材質の異なる複数の部材を連結一体化して形成することもできる。
【0024】
前記第3リンク部材30は、両端部を第1リンク部材10及び第2リンク部材20にそれぞれ回動自在に連結させ、第1リンク部材10との連結部Bの回動中心と第2リンク部材20との連結部Aの回動中心とを通る直線を、前記スライド方向と直角とし、且つ第1リンク部材10との連結部Bの回動軸方向及び第2リンク部材20との連結部Aの回動軸方向と直角とする位置関係となしうる配置として配設される構成である。
【0025】
この第3のリンク部材30は、第1リンク部材10又は第2リンク部材20において支持する衝突後の物体又は緩衝対象物50の支持に係る静荷重に対して、弾性変形しない剛性を有するものとされる。第3のリンク部材30の場合、金属ばねより高い剛性を有し、荷重に対し弾性変形がほぼ無視できるような金属材料が好ましい。
【0026】
第3リンク部材30を他の各リンク部材と連結する連結部A、Bとしては、衝撃力で破損が生じない強度を有しつつ、連結する一方のリンク部材が他方に対し抵抗なく回動する状態を確保できるよう構成するのが好ましい。本実施形態の例では、一方又は両方のリンク部材を貫通する軸を用いた連結で回動自在な状態と十分な剛性を確保しているが、設置スペースと剛性が確保できれば軸受を用いることもできる。
【0027】
また、実際の連結部Cとしては、リニアブシュやリニアスライド等のリニアガイド機構を用い、第2リンク部材20をガイド機構の固定側、第1リンク部材10をガイド機構の可動側として、各リンク部材が相対的にスライド可能な状態とすることとなる。ガイド機構としては十分な剛性を有し、ガタが小さいものが好ましい。
【0028】
次に、本実施形態に係る緩衝機構が、自由度0ながら衝撃力を緩和可能な性質を有することを、図2の模式図を用いて説明する。
三つの各リンク部材10、20、30を連結する各連結部A、B、Cのうち、連結部A、Bは回転対偶、連結部Cはすべり対偶であり、連結部A、Bは大きさを持たない点状、連結部Cは大きさを持たない線状と見なす。連結部Cの拘束で第1リンク部材10と第2リンク部材20の基部21とは平行をなしている。ここで、連結部Cにおける拘束を外した状態を仮定し、図3に示すように、連結部Aを原点としたxy座標系を設け、第3リンク部材30の長さをl、第1リンク部材10の長さ(連結部Bから衝撃力を受ける端点Dまでの長さ)をLとする。連結部Aにおける第3リンク部材30の当初位置からの回転角度をθ1、連結部Bにおける第1リンク部材10の当初位置からの回転角度をθ2、端点Dの座標を(x、y)、第1リンク部材10のy軸に対する傾きをφとそれぞれおくと、以下の式が成り立つ。
【0029】
x=lcosθ1+Lsin(θ1+θ2) (1)
y=lsinθ1−Lcos(θ1+θ2) (2)
φ=θ1+θ2 (3)
ここで、本発明の機構が成立する条件、すなわち、第1リンク部材10が連結部Cを通るための条件は、第1リンク部材10の向きが当初の向き(第2リンク部材20の基部21と平行)を維持することと、第1リンク部材10のx方向の位置が当初の連結部Cと同じ位置を維持することであるため、
x=lcosθ1+Lsin(θ1+θ2)=l
φ=θ1+θ2=0
以上から、
θ1=θ2=0 (4)
【0030】
この結果から、本機構が実現されるのはθ1=θ2=0においてのみであり、この姿勢を適合点と呼称する。ただし、この姿勢において自由度は0である。
ここで、微小変位δθ1、δθ2について検討するために、x、φのヤコビ行列を求めると、
【0031】
【数1】

よって、
【0032】
【数2】

【0033】
これにより、前記適合点において、本機構は、δθ1+δθ2=0を満たす無限小変位δθ1、δθ2を生じ得る、すなわち、無変形状態で剛性が0となって連結部Cにおけるスライド方向と同じ向きに加わる衝撃の緩和が可能となる機構的特異点にあることがわかる。
【0034】
続いて、可変粘弾性モデルによる剛性解析及び衝突解析を行う。前記図2、3の模式図を用いた説明では、各リンク部材は全て剛体と見なして弾性要素については考慮していない。しかしながら、実際には完全な剛体は存在しないので、剛性も0と無限大の二値ではなく、変位に伴って連続的に変化する。ここで、第3リンク部材30のみが弾性体と見なせるとし(すなわちそのようにリンク材料を選び)、ばね、ダンパでモデル化する(ばね定数k、ダンパ係数c)。図4に示すように、適合点における第1リンク部材10の端点Dの位置を原点とし、第1リンク部材10に沿ってz軸を新たに設けると、端点Dが変位zおよび速度z’を持つときにz軸方向に働く力fは次式となる。なお、前記速度をあらわす「z’」は、下記数式中で使用されている、zの上にドットを付けた記号、すなわちニュートン記法でzの時間微分をあらわす記号を便宜上置換えたものである。
【0035】
【数3】

また、剛性は、z’=0と見なせる場合、
【0036】
【数4】

さらに、粘性は、
【0037】
【数5】

で表される。
【0038】
これらの式に基づき、zを準静的に(すなわちz’≒0と見なせる条件で)変化させた場合を検討した。図5、図6にこの変化した剛性∂f/∂z及び粘性の値をプロットしたものを示している。なお、現実の機構に合わせ、k=2.04×108[N/m]、c=7.0×105[N/m・s-1]、l=0.028[m]とした。
【0039】
各図より、|z|<2.0×10-4[m]の範囲で剛性が0から4×103[N/m]程度まで大きく変化する様子がわかる。また、粘性も0から3×103[N/m・s-1]程度まで大きく変化する様子がわかる。参考までに、一般的な工業用重荷重ばねの剛性は1×104〜3×105[N/m]程度である。また図5より、変位をさらに引き伸ばすと機構の剛性が部材自身の剛性kに漸近することがわかる。
【0040】
このように、モデル化した機構の解析から、本発明の緩衝機構は、適合点において剛性、粘性共に0となり、この適合点からずれると、変位がμmオーダでも剛性、粘性共に急激に増加することがわかる。
【0041】
さらに、質量1kgの物体にこの機構を取り付けて落下させ、速度1.0m/sで地面に衝突させるシミュレーションを、同条件の比較例として単純に線形ばねダンパを物体と直列につなげたものと共に行った。なお、地面は剛体であると仮定し、シミュレーションに係る数値計算には埋め込み型陽的解法であるRunge-Kutta-Fehlberg法を用いた。
【0042】
このシミュレーション結果については、図7に示すように、剛性と粘性の影響がある比較例の機構では、衝突の瞬間に5×104[N]程度の衝撃力が発生し、0.001[s]に満たない時間で消散する。これに対し、変位0では剛性、粘性共に0である本発明の機構では、衝突の瞬間には衝撃力は発生せず、0.008[s]ほどでピークに達する。このときの最大衝撃力は40[N]弱程度である。その後は0.05[s]程度で一定荷重9.8[N]に収束している。地面を剛体と仮定しているため両者の挙動の差が誇張されて現れているが、傾向として、本機構は時間方向に衝撃を緩和できるものと言える。またこの結果より、変位が生じていない衝突の瞬間に剛性、粘性共に0となっている本発明の機構は、衝撃緩和効果に優れていることがわかる。
【0043】
このように、本実施形態に係る緩衝機構は、三つのリンク部材10、20、30を連結して、二つの回転対偶と一つの滑り対偶を有する自由度が0の単純な機構を構成する一方、この連結したのみの無変形状態では、連結部Cにおけるスライド方向に第1リンク部材10の無限小変位を生じうる性質を有することから、無変形状態で剛性、粘性共に0となって前記スライド方向に加わる衝撃力に対し柔らかさを発揮することとなり、衝撃力を緩和できることに加え、無変形状態から第1リンク部材10が衝撃力の方向にわずかでも変位すれば、剛性、粘性共に急激に増加し、荷重に対しそのまま自由度0の機構として安定的な支持が行える硬さを発揮することができ、制御精度や安定性への悪影響が無いなど、少ない部材による単純な機構で制御に適した優れた受動的特性を得られる。
【0044】
なお、本発明の緩衝機構をなす各リンク部材の形状や配置については、前記実施形態に示した構成に限られるものではなく、第1リンク部材と第2リンク部材が所定方向にスライド自在に連結され、且つ第3リンク部材がこのスライドの方向と直角となる配置で第1リンク部材と第2リンク部材にそれぞれ回動自在に連結するといった条件を満たすものであれば、どのような構成とすることもでき、例えば、第3リンク部材30と第2リンク部材20の腕部22の上下関係を入替えたもの(図8(A)、(B)参照)や、第2リンク部材の緩衝対象物50と当接又は連結一体化する位置を調整したもの(図8(B)、(C)参照)、第1リンク部材10の端部Dと連結部C、連結部Bとがスライド方向に一致する直線上に配置されないもの(図9(A)参照)とすることができる。また、衝撃力を受ける第1リンク部材と緩衝対象物に力を伝える第2リンク部材がそのまま入れ替った構成、すなわち、前記実施形態の例では略棒状の第1リンク部材10が端点Dで緩衝対象物50と当接し、略鉤状の第2リンク部材20が端点Eで衝撃力を受けるようにする構成(図9(B)参照)としてもかまわない。
【0045】
また、本発明の緩衝機構においては、衝撃力を与える物体と緩衝対象物との間に単純に介在させるだけでなく、ロボットの関節部など機械装置における所定の衝撃が加わる部材間に適宜配設することもでき、例えば、図9(C)に示すように、回動部分などねじり力として衝撃力が加わる部位に補助部材を併用して本機構を配設すれば,こうした衝撃力についても緩和性能を発揮でき、同時に荷重に対する安定的な支持も確保できる。
【0046】
(本発明の第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る緩衝機構を図10に基づいて説明する。図10は本実施形態に係る緩衝機構の模式図である。
前記図10において本実施形態に係る緩衝機構2は、前記第1の実施形態と同様、第1リンク部材11と、第2リンク部材23と、第3リンク部材31とを備える構成を有する一方、異なる点として、第1リンク部材11及び第2リンク部材23が、連結部Cにおけるスライド方向と平行な向きへ長くした形状とされることに加え、第3リンク部材31が、前記スライド方向と平行な向きに所定間隔で複数並列配置される構成とされるものである。
【0047】
各第3リンク部材31は、第1リンク部材11との各連結部Bを前記スライド方向と平行な一直線上に位置させると共に、第2リンク部材23との各連結部Aを前記スライド方向と平行な他の直線上に位置させて配設される構成である。
【0048】
本実施形態に係る緩衝機構においても、前記第1の実施形態と同様、各リンク部材の連結により自由度0となっているが、無変形状態において第1リンク部材11の前記連結部Cにおけるスライド方向への無限小変位を生じ得る性質、すなわち前記スライド方向についての剛性が0となる性質を有し、第1リンク部材11に対し前記スライド方向と同じ向きに加わる衝撃力の緩和が可能となる。
【0049】
この場合、各第3リンク部材31は、前記第1の実施形態における第3リンク部材30と同じ剛性を有する材質を用いた場合でも、各第3リンク部材31の剛性が加算されて作用することで、衝撃力の緩和性能は維持しつつ、前記第1の実施形態の構成に比べて強度を高くすることができ、衝撃力を与えた物体や緩衝対象物50の荷重を支持する能力を大きく高められる。また、第3リンク部材31を増やすほど強度を高められることで、第3リンク部材31を取付けるスペースを十分確保していれば、第3リンク部材31の追加のみで機構としての補強が容易に行え、緩衝機構としてのみでなく支持体としての使い勝手も優れたものとなる。
【0050】
また、第3リンク部材31を複数用いることで、機構全体としては、各々の第3リンク部材31より剛性の高い材質のリンク部材を一つ用いる場合と同様の特性を示すこととなり、各第3リンク部材31として剛性の低い(弾性の高い)材質を用いたとしても、機構全体の剛性を高い状態とすることができ、荷重の支持能力を十分確保しつつリンク部材の選択範囲を広げられる。
【0051】
この複数の第3リンク部材31として、ばね定数が既知の工業用ばねをそれぞれ用いれば、金属材料そのものを用いる場合よりも、塑性変形の影響の少ない性質の良い衝撃緩和及び荷重支持特性を得られる可能性が高い。
【0052】
(本発明の第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る緩衝機構を図11に基づいて説明する。図11は本実施形態に係る緩衝機構の模式図である。
前記図11において本実施形態に係る緩衝機構3は、前記第1の実施形態と同様、第1リンク部材12と、第2リンク部材24と、第3リンク部材32とを備える構成を有する一方、異なる点として、第2リンク部材24及び第3リンク部材32が、連結部Cにおけるスライド方向と直角の向きへ長くした形状とされることに加え、第1リンク部材12が、前記スライド方向と直角の向きに所定間隔で複数並列配置される構成とされるものである。
【0053】
前記各第1リンク部材12は、それぞれ第2リンク部材24と連結部Cで所定方向にスライド自在に連結され、且つ第3リンク部材32と回動自在に連結される状態で、連結部Cにおけるスライドの方向と直角の向きに所定間隔で並べて配置されると共に、衝撃力を受ける端部Dから第3リンク部材32との連結部Bまでの距離を一致させて配設される構成である。
【0054】
本実施形態に係る緩衝機構においても、前記第1の実施形態と同様、各リンク部材の連結により自由度0となっているが、無変形状態において第1リンク部材12の前記連結部Cにおけるスライド方向への無限小変位を生じ得る性質、すなわち前記スライド方向についての剛性が0となる性質を有し、第1リンク部材12に対し前記スライド方向と同じ向きに加わる衝撃力の緩和が可能となる。
【0055】
各第1リンク部材12の端部Dは同一平面上に位置しており、衝撃力を与える物体と同時且つ一様に接触する場合、衝撃力は各第1リンク部材12に一様に伝わり、一斉に衝撃が緩和されることとなる。複数の第1リンク部材12で衝撃力を分担して受けることから、衝撃力の緩和効果を高くすることができる。
【0056】
一方、各第1リンク部材12の端部Dが衝撃力を与える物体と同時ではなく順次接触(衝突)していく場合、衝撃力はわずかな時間差をおいて物体から各第1リンク部材に順次付加され、そのつど衝撃が緩和されていくこととなる。これにより、物体との接触に伴う衝撃力を分散することができ、その影響を極めて小さくできる。
【0057】
前記いずれの場合も、第2リンク部材24の基部25から離れた第1リンク部材12ほど第3リンク部材32の長さの影響が大きくなることで、現実の第3リンク部材32の弾性が無視できない場合には、基部25から離れた第1リンク部材12ほどスライド方向への微小変位をより大きくすることができる状態となって、その分衝撃力の緩和性能が高まることとなる。
【0058】
このため、本機構をロボットの脚等の着地部分に応用し、基部25から離れた側の第1リンク部材12から順次着地していく機構とした場合、人間の歩行時の足における踵から着地して足先側へ徐々に着地領域を増やしていく着地運動において、最も大きな衝撃を最初に着地する踵で受け、足先側へ着地が進むにつれて衝撃力が小さくなっていく状況と、極めて類似する衝撃緩和状態を作り出すことができ、着地時の衝撃を効果的に緩和できることとなる。
【0059】
(本発明の第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る緩衝機構を図12ないし図14に基づいて説明する。図12は本実施形態に係る緩衝機構の模式図、図13は本実施形態に係る緩衝機構のばね−ダンパモデルの模式図、図14は本実施形態に係る緩衝機構のモデルにおける剛性変化及び粘性変化説明図である。
【0060】
前記各図において本実施形態に係る緩衝機構4は、前記第1の実施形態と同様、第1リンク部材13と、第2リンク部材26と、第3リンク部材33とを備える構成を有する一方、異なる点として、第3リンク部材33を、第1リンク部材13との連結部Bの回動中心と第2リンク部材26との連結部Aの回動中心とを通る直線が連結部Cにおけるスライド方向と真直角ではない直角近傍の所定角度(注:図12、13ではこの角度を理解容易のために誇張して記載している)をなす位置関係となる配置で配設する構成とするものである。
【0061】
こうして、第3リンク部材33を、連結部Bの回動中心と連結部Aの回動中心とを通る直線が連結部Cにおけるスライド方向と直角近傍の所定角度をなす位置関係となる配置で配設して、各リンク部材が連結したのみの無変形状態における前記スライド方向についての剛性を完全に0とせず極わずかに付与しておくことで、衝撃緩和性能を確保しつつ、剛性が0の構造的に不安定な状態を避けて、連結部等のガタに伴う悪影響を抑えられると共に、物体と衝突して衝撃力を受ける際における第1リンク部材13の衝突してから静止するまでの相対変位量を低減でき、機構の制御精度や安定性をさらに向上させられる。
【0062】
次に、本実施形態に係る緩衝機構が、前記第1の実施形態と同様、自由度0ながら衝撃力を緩和可能な性質を有することを説明する。なお、第3リンク部材33を、連結部Bの回動中心と連結部Aの回動中心とを通る直線が前記スライド方向と直角近傍の所定角度をなす(直角から初期角度ψだけ傾いた)位置関係となる配置で配設する点以外は、前記第1の実施形態と同じ条件である。
【0063】
ここで、連結部Cにおける拘束を外した状態を仮定し、前記第1の実施形態と同様、連結部Aを原点としたxy座標系を設け、第3リンク部材33の長さをl’、第1リンク部材13の長さ(連結部Bから衝撃力を受ける端点Dまでの長さ)をL’とする。連結部Aにおける第3リンク部材33の回転角度をθ1、連結部Bにおける第1リンク部材の回転角度をθ2、端点Dの座標を(x、y)、第1リンク部材13のy軸に対する傾きをφとそれぞれおくと、以下の式が成り立つ。
【0064】
x=l’cosθ1+L’sin(θ1+θ2) (10)
y=l’sinθ1−L’cos(θ1+θ2) (11)
φ=θ1+θ2 (12)
ここで、本発明の機構が成立する条件、すなわち、第1リンク部材13が連結部Cを通るための条件は、第1リンク部材13の向きが当初の向き(第2リンク部材26の基部27と平行)を維持することと、第1リンク部材13のx方向の位置が当初の連結部Cと同じ位置を維持することであるため、
x=l’cosθ1+L’sin(θ1+θ2)=l=l’cosψ
φ=θ1+θ2=0
以上から、
θ1=ψ (13)
θ2=−ψ (14)
【0065】
この結果から、本機構が実現されるのはθ1=ψ、θ2=−ψにおいてのみであり、前記第1の実施形態と同様、この姿勢を適合点と呼称する。なお、この姿勢において自由度は0である。
【0066】
続いて、図13に示すように、第3リンク部材33のみが弾性体と見なせるとし、ばね、ダンパでモデル化する(ばね定数k、ダンパ係数c)。適合点における第1リンク部材13の端点Dの位置を原点とし、第1リンク部材13に沿ってz軸を新たに設けると、端点Dが変位zおよび速度z’を持つときにz軸方向に働く力fは次式となる。なお、前記速度をあらわす記号「z’」は、下記数式中で使用されている、zの上にドットを付けた記号、すなわちニュートン記法でzの時間微分をあらわす記号を便宜上置換えたものである。
【0067】
【数6】

これから、z’≒0と見なせる条件で機構の剛性を求めると、
【0068】
【数7】

となる。z=0の時の剛性は、
【0069】
【数8】

となるため、角度ψ≠0なら剛性は0とはならない。
【0070】
仮に、ψ=0.5°とし、実際の機構に合わせ、k=2.04×108[N/m]、l=0.028[m]としたときの、変位−0.5×10-4<z<1.5×10-4[m]に対する剛性変化を図14(A)に示す。z=0のときの剛性は約15535[N/m]となっている。なお、約0.15[mm]の変位では、前記第1の実施形態の場合より5倍程度剛性が上がることとなる。
また、機構の粘性を求めると、
【0071】
【数9】

となる。z=0の時の粘性は、
【0072】
【数10】

となるため、角度ψ≠0なら粘性は0とはならない。
【0073】
前記剛性の場合と同様、ψ=0.5°とし、また、c=7.0×105[N/m・s-1]、l=0.028[m]としたときの、変位−0.5×10-4<z<1.5×10-4[m]に対する粘性変化を図14(B)に示す。z=0のときの粘性は約53[N/m・s-1]となっている。なお、約0.15[mm]の変位では、前記第1の実施形態の場合より3倍程度粘性が上がることとなる。
【0074】
この角度ψ=0.5°とした前記各条件を採用した本実施形態の機構は、前記第1の実施形態で行ったシミュレーションや、下記実施例における衝撃緩和性能に係る測定の各条件で衝撃力を受ける場合においては、前記第1の実施形態の機構と比較して、剛性及び粘性が0でない分、衝突の瞬間に極わずかな衝撃力が発生するものの、ほぼ同様の衝撃緩和性能を発揮することができる。
このように、本実施形態に係る緩衝機構は、適合点において衝撃緩和性能を有しつつ、所定の剛性及び粘性を有し、機構として構造的により安定した状態であることがわかる。
【実施例】
【0075】
本発明に係る緩衝機構を備えた試験体の衝撃緩和性能について測定を実施し、得られた測定結果について、比較例としての緩衝機構を有しない試験体の測定結果と比較評価した。
【0076】
まず、本発明に係る緩衝機構(図1参照)を製作し、四つを組合わせて一体に連結し、図15に示すような台状の試験体を作成した。緩衝機構は、第3リンク部材30のみを弾性体と見なせるという条件に合わせ、第2リンク部材20の基部21にA7075(ヤング率73[GPa])、腕部22にSKD11(同212[GPa])、第3リンク部材30にA2017(同69[GPa])、第1リンク部材10にSUS304(同199[GPa])をそれぞれ使用した。第2リンク部材20の基部21と腕部22は、ボルトおよびノックピンによって固定されている。
また、比較例として、前記緩衝機構部分をSUS304製の中実ロッド四本で置き換えた試験体を作成した。
【0077】
この本発明に係る緩衝機構を用いた試験体と比較例の試験体について、各試験体をロードセルLC上に載せ、試験体の上面から10cm上方より約9kgの石Sを落下させて、荷重変化の様子をそれぞれ測定した。なお、測定は各試験体について3回ずつ実施した。測定結果は、サンプリング時間(間隔)を20μsとして、荷重変化をグラフに表したものを図16に示す。図16においては、衝突の瞬間を時刻0とし、また荷重における試験体の自重分はあらかじめ差引いている。
【0078】
図16に示すように、石自体が弾性を持つため、シミュレーションで得られた解析結果ほどの大きな差は生じていないが、比較例では最大120kgf(1180N)程度の衝撃力が発生しているのに対し、本発明に係る緩衝機構を用いた試験体では最大70kgf(686N)程度まで力が緩和されている。また、力のピークが0.01秒弱、後方にシフトしており、時間方向に衝撃を緩和する性質が現れている。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る緩衝機構の概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る緩衝機構の模式図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る緩衝機構の仮想状態の模式図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る緩衝機構のばね−ダンパモデルの模式図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る緩衝機構のモデルにおける剛性変化説明図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る緩衝機構のモデルにおける粘性変化説明図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る緩衝機構のモデル及び比較例の衝突シミュレーション結果説明図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る緩衝機構の他例の模式図及び概略構成図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る緩衝機構の他例の概略構成図及び応用例説明図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る緩衝機構の模式図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る緩衝機構の模式図である。
【図12】本発明の第4の実施形態に係る緩衝機構の模式図である。
【図13】本発明の第4の実施形態に係る緩衝機構のばね−ダンパモデルの模式図である。
【図14】本発明の第4の実施形態に係る緩衝機構のモデルにおける剛性変化及び粘性変化説明図である。
【図15】本発明の第1の実施形態に係る緩衝機構を組合わせた試験体の概略構成図である。
【図16】本発明に係る緩衝機構と比較例の衝撃力測定結果説明図である。
【符号の説明】
【0080】
1、2、3、4 緩衝機構
10、11、12、13 第1リンク部材
20、23、24、26 第2リンク部材
21、25、27 基部
22 腕部
30、31、32、33 第3リンク部材
50 緩衝対象物
A、B、C 連結部
D、E 端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の物体から衝撃力を受ける第1リンク部材と、緩衝対象物に当接する又は連結固定される第2リンク部材とを少なくとも有し、前記緩衝対象物が受ける衝撃を緩和する緩衝機構において、
前記第1リンク部材と第2リンク部材が、所定方向への相対移動のみ許容する状態で互いにスライド自在に連結され、
前記第1リンク部材と第2リンク部材にそれぞれ回動自在に連結する第3リンク部材が、第1リンク部材との連結部の回動軸方向と第2リンク部材との連結部の回動軸方向とを互いに平行とすると共に、第1リンク部材との連結部の回動中心と第2リンク部材との連結部の回動中心とを通る直線を、前記所定方向と略直角とし、且つ前記各連結部の回動軸方向と直角とする位置関係となしうる配置として配設されることを
特徴とする緩衝機構。
【請求項2】
前記請求項1に記載の緩衝機構において、
前記第1リンク部材及び第2リンク部材が、少なくとも前記衝撃力に対して弾性変形しない剛性をそれぞれ有すると共に、
前記第3リンク部材が、少なくとも前記所定の物体又は緩衝対象物の支持に係る静荷重に対して弾性変形しない剛性を有することを
特徴とする緩衝機構。
【請求項3】
前記請求項2に記載の緩衝機構において、
前記第3リンク部材が、前記第1リンク部材との連結部の回動中心と第2リンク部材との連結部の回動中心とを通る直線が前記所定方向と真直角ではない直角近傍の所定角度をなす位置関係となる配置で配設されることを
特徴とする緩衝機構。
【請求項4】
前記請求項1ないし3のいずれかに記載の緩衝機構において、
前記第3リンク部材が、前記所定方向と平行な向きに所定間隔で複数並列配置され、前記第1リンク部材との各連結部を前記所定方向と平行な一直線上に位置させると共に、前記第2リンク部材との各連結部を前記所定方向と平行な他の直線上に位置させることを
特徴とする緩衝機構。
【請求項5】
前記請求項1ないし3のいずれかに記載の緩衝機構において、
前記第1リンク部材が、前記所定方向と直交する向きに所定間隔で複数並列配置され、前記第3リンク部材との各連結部を前記所定方向と直交する一直線上に位置させ、
各第1リンク部材の衝撃力を受ける点から前記第3リンク部材との連結部までの距離を一致させることを
特徴とする緩衝機構。
【請求項6】
前記請求項1ないし5のいずれかに記載の緩衝機構において、
前記第1リンク部材の衝撃力を受ける点と、第1リンク部材と第2リンク部材とのスライド連結部と、第1リンク部材と第3リンク部材との連結部とが、前記所定方向と平行な一直線上に配置されることを
特徴とする緩衝機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−133495(P2010−133495A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310150(P2008−310150)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年6月5日 社団法人日本機械学会発行の「ロボティクス・メカトロニクス講演会2008 講演論文集(DVD)」に発表
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】