説明

緩衝用の袋体

【課題】取扱性に優れ、内部の空気が漏れ出ることなく、コストの低減が図れる緩衝用の袋体を提供する。
【解決手段】本発明の緩衝用の袋体は、シート状の部材3a,3bを重ね、周囲を溶着することで空気が収容される収容部4が形成される。重ねた状態のシート状部材3a,3bの間には、収容部4に向けて突出する突出部12を具備したスパウト10が介在される。そして、突出部12にシート状部材を溶着すると共に、シート状部材同士を対になるように溶着した溶着部20,20を形成し、溶着部20,20間にシート状部材が密着することによる自封式の逆止弁を形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気を封入することで膨張する緩衝構造を備えた緩衝用の袋体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、物流などの分野では、物品を安全に輸送するように、物品と梱包体との間に緩衝構造を備えた袋体を介在することが行われている。一般的にこのような袋体は、合成樹脂シートを重ねて周囲を溶着した袋状に構成されており、取扱性等を考慮して、使用時に空気を内部空間に充填し、不使用時には、空気を抜いてコンパクトにできるよう構成されている。
【0003】
このため、使用時において空気を充填する際、空気が充填部分から漏れないように逆止弁構造を設けることが知られている。このような逆止弁構造は、様々な構成が知られており、例えば、特許文献1には、2枚の合成樹脂シートを重ねて周囲を溶着すると共に、一部の周縁部に未溶着領域を形成しておき、この未溶着領域の両端から漏斗状で線状に溶着部を形成することで、自封式の逆止弁構造を形成したものが開示されている。このような逆止弁構造は、未溶着領域からパイプを差し込んで空気を充填して行くと、漏斗状に次第に狭くなった部分の先端領域が、内圧が高まることで互いに密着してシールされるようになり、結果として、内部に充填された空気が抜けることなく、緩衝構造を備えた袋体となる。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、2枚の合成樹脂シート間に、空気を封入できるスクリュー式のキャップを有する注入口(スパウトと称されることもある)を溶着した緩衝用の袋体が開示されている。この注出口には、袋体の内部空間に開口する部分に、開口を閉塞できる片持ち状の逆止舌片が一体形成された逆止弁構造が設けられており、前記逆止舌片は、一般的に知られているように、空気を充填する際は、その流入動作によって開き、内部に空気が充填されて行くと内圧によって閉じるように作用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−72852号
【特許文献2】特開平11−292099号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記した特許文献1の構造では、2枚の合成樹脂シートの漏斗状に溶着された部分の先端領域が互いに密着して逆止弁構造が形成されるが、袋体を強く押し付ける(大きな圧力をかける)と、充填された空気が密着部分を介して抜ける可能性がある。このため、緩衝構造として機能が十分発揮できなくなる可能性があり、更には、コンプレッサなどで空気を充填する際にも、充填位置を直ちに把握できないこともあり、作業性に劣るという問題がある。
【0007】
これに対して、特許文献2に開示されている構造は、空気を充填する部分にスパウトが装着されているため取扱性に優れると共に、スクリュー式のキャップによって閉塞されるため使用時において空気が漏れ出ることが確実に防止される。
【0008】
しかしながら、そのような逆止舌片を有する注出口は、一体成型する際の加工が難しいと共に、袋体に対する溶着も容易にできないケースもあり、コストが高くなるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、取扱性に優れ、内部の空気が漏れ出ることなく、コストの低減が図れる緩衝用の袋体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、本発明は、シート状の部材を重ね、周囲を溶着することで空気が収容される収容部を形成した緩衝用の袋体であって、前記重ねた状態のシート状部材の間に介在され、前記収容部に向けて突出する突出部を具備したスパウトを有しており、前記突出部にシート状部材を溶着すると共に、シート状部材同士を対になるように溶着した溶着部を形成し、前記溶着部間にシート状部材が密着することによる自封式の逆止弁を形成したことを特徴とする。
【0011】
上記した構造の緩衝用の袋体によれば、スパウトを介して収容部に空気を充填できるため、充填すべき位置が明確になって取扱性の向上が図れる。また、収容部に充填された空気は、シート状部材同士が対になるように溶着された溶着部間に形成される自封式の逆止弁によって、スパウトを介して外部に漏れ出る可能性が低くなる。この場合、スパウトには、容易に栓部材を取着しておくことが可能であるため、空気が漏れ出ることを確実に防止することが可能となる。
【0012】
そして、上記した構成では、シート状の部材を重ね、その間にスパウトを介在して溶着する溶着工程時において、収容部に突出した突出部に対する溶着と同時に自封式の逆止弁機能を有する溶着部を形成することができるため、製造工程が容易になると共に、スパウト自体に、特殊な逆止弁構造を形成しておく必要がなくなり、製造コストの低減が図れるようになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、取扱性に優れ、内部の空気が漏れ出ることなく、コストの低減が図れる緩衝用の袋体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る緩衝用の袋体の一実施形態を示した正面図。
【図2】図1の主要部を拡大して示す図。
【図3】図1のA−A線に沿った断面図。
【図4】緩衝用の袋体に空気を充填した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明に係る緩衝用の袋体の一実施形態について説明する。
図1から図3は、本発明の一実施形態を示す図であり、図1は、緩衝用の袋体の一実施形態を示した正面図、図2は、図1の主要部を拡大して示す図、そして、図3は、図1のA−A線に沿った断面図である。
【0016】
本実施形態に係る緩衝用の袋体1は、例えば、図1に示すような形態で構成される。袋体1は、シート状の部材3a,3bを重ね合わせ、斜線で示す周囲をヒートバー等によって熱溶着すると共に、所定の箇所にプラスチック等によって成形されたスパウト10を熱溶着(周囲領域に介在)することで作成される。
【0017】
前記シート状の部材3a,3bは、内部に空気を充填した際に膨出して緩衝構造を発揮できる素材であれば特に限定されることはなく、例えば、柔軟性を有する合成樹脂製のシート(プラスチックフイルム)、例えば、溶着し易いように、ポリエチレンやポリプロピレンなどによって構成することが可能である。もちろん、シート状の部材は、単層構造とすることなく、強度性を持たせるために、ナイロン、アルミホイルなどを積層した複合層で構成しても良い。
【0018】
前記シート状の部材3a,3bを、図に示す斜線領域をヒートバーによって熱溶着することで、空気が充填される収容部4を有する袋体1が形成される。この場合、袋体1は、側壁や底壁を形成して自立体として構成されていても良いし、単に、シート状の部材3a,3bの周縁部を溶着した非自立体として構成されていても良い。すなわち、溶着する部分や、袋体を構成するシート状の部材の配置等については、使用用途などに応じて適宜変形することができ、特に限定されることはない。
【0019】
前記シート状の部材3a,3bを溶着する際、その上縁部5には、スパウト10が介在されて溶着工程がなされる。本実施形態のスパウト10は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂によって一体形成されており、その本体10Aには、溶着がし易いように、断面舟形状にされた溶着部11が一体形成され、この溶着部11を挟持するようにして、前記シート状の部材3a,3bが溶着される。
【0020】
前記本体10Aには、前記収容部4に向けて突出するように突出部12が一体形成されている。この突出部12は、溶着部11に溶着されるシート状の部材3a,3bが、更に下方側で後述する溶着部20を形成するに際して、未溶着領域が生じ難いよう構成されており、図3に示すように、その上端は、溶着部11の表面との間で大きな段差が生じないよう構成されている。
【0021】
この場合、本実施形態の突出部12は、空気が通過する筒状体として構成されている(以下、筒状体12と称する)。この筒状体12の形状については、特に限定されることはないが、両面側(シート状部材3a,3bに対向する部分)に、溶着部11と共に一体となってシート状部材3a,3bが溶着されることから、断面形状が楕円状に形成されていることが好ましい。
【0022】
前記筒状体12の下方には、スパウト10を介して空気を充填する際、その流入経路に沿ってシート状部材3a,3b同士を対になるように溶着した溶着部20,20が形成されている。この溶着部20,20は、それぞれ下方に沿って線状に延出するように延びており、このような溶着部分を形成することで、空気の流通経路が制限され、自封式の逆止弁を構成することが可能となる。すなわち、スパウト10を介して収容部4内に空気を充填して行くと、空気は、筒状体12を介して収容部4内に充填されて行くが、次第に収容部4内の内圧が高まることで、空気の流入部分となる溶着部20,20間の狭い領域(符号21で示し、逆止弁として機能する密着部分と称する)が相互に密着するようになり、空気が矢印方向に流出できない逆止弁として機能するようになる。
【0023】
なお、密着部分21の密着力については、例えば溶着部20,20の長さ、或いは、溶着部20,20間の距離(空気が通過する距離)によって容易に調整することができる。
【0024】
上記した溶着部20,20は、スパウト10(断面舟形状の溶着部11)に対するシート状の部材3a,3bを溶着する際に、一体的に形成することが可能となっている。すなわち、スパウト10の溶着工程時において、同時、もしくは連続する溶着工程によって、一度に形成することが可能となっており、これにより、スパウト自体に、予め逆止弁構造を形成しておく必要がなくなる。
【0025】
本実施形態では、自封式の逆止弁を構成する溶着部20,20が、容易に形成できるように、筒状体12の形状に工夫を施している。具体的には、断面が楕円形状に形成された前記筒状体12には、収容部4に向けて次第に肉厚が減少するように傾斜した傾斜脚部13が形成されている。傾斜脚部13の表面である傾斜部(面)13aは、筒状体12のシート状の部材3a,3bに対向する両側に形成されており、これにより、図3に示すように、シート状の部材3a,3bを溶着部11と共に傾斜部13aに沿って容易に溶着できるようになり、さらには、その下方に位置する溶着部20,20についても、例えば、同一のヒートバーを用いて一体的に溶着することが可能となる。
【0026】
上記したような傾斜脚部13については、例えば、形成された筒状体12の表面の上端位置Pから、下方に向かいながら中心に向けて切削することで容易に形成することが可能である。すなわち、このような切削加工を施すことで、図2に示すように、半楕円形状に切り欠かれた一対の傾斜脚部13を形成することが可能である。或いは、このような傾斜脚部13を成型によって一体形成しても良い。
【0027】
また、本実施形態のスパウト10は、収容部4の外部に突出する口部15と、口部15に対して嵌入される着脱可能な栓体16とを有している。この場合、栓体16は、口部15に対して切断可能に連結されており、最初の使用時において、栓体16を口部15から切り離すことで口部15の開口部15aを露出させることが可能となっている。そして、開口部15aを露出させた状態で空気を充填し、収容部4内に空気が充填された後は、図3に示すように、栓体16を開口部15aに嵌入することで、開口部15aを閉塞できるように構成されている。
【0028】
次に、上記した実施形態における緩衝用の袋体1の作用(使用方法)について説明する。
【0029】
上記した構造の緩衝用の袋体1は、シート状の部材3a,3bを互いに対向し、その間にスパウト10を介在して溶着部11を溶着する際、筒状体12に対しても溶着を施すと同時に自封式の逆止弁構造となる溶着部20,20を容易に溶着形成することが可能になる。このように、単なる溶着工程で逆止弁構造が形成されることから、予めスパウト自体に逆止弁を形成しておく必要がなくなり、コストを低減することが可能となる。特に、本実施形態では、スパウト10の筒状体12に、収容部4に向けて次第に肉厚が減少するように傾斜した傾斜脚部13を形成しているため、溶着工程時に溶着部20,20を容易に形成することが可能となる。
【0030】
上記のように製造される緩衝用の袋体1については、縁部となる上縁部5にスパウト10が取着されており、実際の使用時において、スパウト10を介して収容部4に空気を充填できるため、充填すべき位置が明確になって取扱性の向上が図れる。そして、図4に示すように、収容部4に充填された空気は、シート状の部材3a,3b同士が対になるように溶着された溶着部20,20間に形成される自封式の逆止弁(逆止弁として機能する密着部分21)によって、スパウト10を介して外部に漏れ出る可能性が低くなる。特に、本実施形態では、スパウト10に栓体16が装着されており、この栓体16を口部15の開口部15aに嵌入することにより、より確実に空気が漏れ出ることを防止することが可能となる。
【0031】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。例えば、スパウト10の構成や取着位置、更には、それに伴う溶着部20の形成位置等については適宜変形することが可能である。また、スパウト10に形成される突出部については、図に示したように筒状体として構成されていても良いが、単に、下方に向けて突出する部材として構成されていても良い。すなわち、スパウト10の溶着部11に対して溶着を施す際に、未溶着領域が生じることなく、自封式の逆止弁構造となる溶着部20,20が容易に形成できれば、突出部の形状等については、適宜変形することが可能である。
【0032】
また、スパウト10に取着される栓体については、開口部15aに嵌入される構成以外にも、例えば、スクリュー式に着脱される構造であっても良い。
【符号の説明】
【0033】
1 袋体
3a,3b シート状の部材
4 収容部
10 スパウト
11 溶着部
12 突出部(筒状体)
13 傾斜脚部
13a 傾斜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の部材を重ね、周囲を溶着することで空気が収容される収容部を形成した緩衝用の袋体であって、
前記重ねた状態のシート状部材の間に介在され、前記収容部に向けて突出する突出部を具備したスパウトを有しており、
前記突出部にシート状部材を溶着すると共に、シート状部材同士を対になるように溶着した溶着部を形成し、前記溶着部間にシート状部材が密着することによる自封式の逆止弁を形成したことを特徴とする緩衝用の袋体。
【請求項2】
前記突出部は、空気が通過する筒状体として構成されており、
前記筒状体には、前記収容部に向けて次第に肉厚が減少するように傾斜した傾斜脚部が形成されており、
前記シート状部材を前記傾斜脚部に沿って溶着すると共に、その下方に前記溶着部を形成することで、前記自封式の逆止弁を形成したことを特徴とする請求項1に記載の緩衝用の袋体。
【請求項3】
前記スパウトは、外部に突出する口部と、前記口部に対して嵌入される着脱可能な栓体とを有しており、
前記栓体は、前記口部に対して切断可能に連結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の緩衝用の袋体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−208654(P2010−208654A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56242(P2009−56242)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000228408)日本キム株式会社 (37)
【Fターム(参考)】