説明

緩衝用部材、その製造方法、及び光ファイバケーブル

【課題】取り扱いの容易な緩衝用部材、及びその製造方法を提供する。また、そうした緩衝用部材を用いた光ファイバケーブルを提供する。
【解決手段】緩衝用部材11は、長さ方向を有し、光ファイバ心線31に縦添えされることで光ファイバ心線31を支持する支持部12を複数備えている。緩衝用部材11は、複数の支持部12,12…がシート状の基材13で連結された構成を有する。緩衝用部材11は、光ファイバ心線31とシースとの間に配置して光ファイバケーブルの緩衝層を形成する。緩衝用部材11は、複数の支持部12,12…の長さ方向に沿った押出成形で一体成形されることで製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ心線とシースとの間に配置して緩衝層を形成するための緩衝用部材、その製造方法、及び光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ心線とシースとの間に光ファイバ心線を保護する緩衝層を設けた光ファイバケーブルが知られている(例えば特許文献1参照)。こうした緩衝層は、例えば樹脂材料からなる紐状体により形成される。具体的には、複数の紐状体を光ファイバ心線に縦添えし、その外周にシースを形成することで、光ファイバ心線とシースとの間の紐状体を配置させる。これにより、複数の紐状体を含む緩衝層が形成される。特許文献1は、複数の紐状体を光ファイバ心線に螺旋巻きすることで、緩衝層を形成する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−233572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、複数の紐状体により緩衝層を形成する場合、光ファイバ心線の外周に紐状体を配置する工程において、複数の紐状体を各別に供給することになる。このように複数の紐状体を各別に取り扱う作業は煩雑となっている。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、取り扱いの容易な緩衝用部材、及びその製造方法を提供することにある。また、そうした緩衝用部材を用いた光ファイバケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、光ファイバ心線とシースとの間に配置して光ファイバケーブルの緩衝層を形成するための緩衝用部材であって、長さ方向を有するとともに前記光ファイバ心線に縦添え又は螺旋巻きされることで前記光ファイバ心線を支持する支持部を複数備えてなり、前記複数の支持部がシート状の基材で連結された構成を有することを要旨とする。
【0007】
この構成によれば、複数の支持部がシート状の基材で連結された構成を有するため、光ファイバ心線に対する縦添え又は螺旋巻きに際して、複数の支持部を一体として供給することができる。このため、複数の支持部を各別に供給して緩衝層を形成する場合よりも、緩衝層の形成が容易となる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の緩衝用部材において、前記複数の支持部において隣り合う一対の支持部が、前記基材を平坦としたとき、離間していることを要旨とする。
【0009】
ここで、基材を平坦としたとき、隣り合う一対の支持部が接している場合、基材を湾曲させて緩衝層を形成したときに、それら支持部が突き当たることで、それら支持部が過剰に変形しやすくなる。この点、上記のように基材を平坦としたとき、隣り合う一対の支持部が離間している構成によれば、緩衝層を形成したときに、支持部同士が突き当たることを回避、又は各支持部の過剰な変形を抑制できるため、各支持部による緩衝作用が発揮され易くなる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の緩衝用部材において、前記複数の支持部において隣り合う一対の支持部は、前記緩衝層を形成したとき、接触する間隔で配置されていることを要旨とする。
【0011】
この構成によれば、緩衝層を形成したとき、基材と一対の支持部とに囲まれた中空部が形成されるため、中空部に基づく緩衝作用が発揮される。
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の緩衝用部材において、前記複数の支持部のうち、少なくとも一つは、長さ方向に延びる中空部を有することを要旨とする。
【0012】
この構成によれば、支持部の有する中空部に基づく緩衝作用が発揮される。
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の緩衝用部材の製造方法であって、前記緩衝用部材は、前記複数の支持部の長さ方向に沿った押出成形で一体成形されることを要旨とする。
【0013】
この方法によれば、連続した長尺状の緩衝用部材を効率よく製造することができる。
請求項6に記載の発明は、光ファイバ心線と、シースと、前記光ファイバ心線と前記シースとの間に位置する緩衝層とを備えた光ファイバケーブルであって、前記緩衝層は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の緩衝用部材により形成され、前記光ファイバ心線と前記基材との間に前記複数の支持部が配置されてなることを要旨とする。
【0014】
このように、上述した緩衝用部材により形成された緩衝層を有する光ファイバケーブルが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、取り扱いの容易な緩衝用部材、及びその製造方法が提供される。また、そうした緩衝用部材を用いた光ファイバケーブルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は実施形態の緩衝用部材及び光ファイバ心線を示す斜視図、(b)は緩衝用部材の部分断面図。
【図2】(a)は緩衝用部材を光ファイバ心線に縦添えした状態を示す斜視図、(b)は(a)に示すA−A線に沿った断面図、(c)は光ファイバケーブルを示す断面図。
【図3】(a)は変更例の緩衝用部材を示す部分断面図、(b)はその緩衝用部材からなる緩衝層を備えた光ファイバケーブルを示す断面図。
【図4】(a)は変更例の緩衝用部材を示す部分断面図、(b)はその緩衝用部材からなる緩衝層を備えた光ファイバケーブルを示す断面図。
【図5】(a)は変更例の緩衝用部材を示す部分断面図、(b)はその緩衝用部材からなる緩衝層を備えた光ファイバケーブルを示す断面図。
【図6】(a)は変更例の緩衝用部材を示す部分断面図、(b)はその緩衝用部材からなる緩衝層を備えた光ファイバケーブルを示す断面図、(c)は変更例の緩衝用部材を示す部分断面図、(d)はその緩衝用部材からなる緩衝層を備えた光ファイバケーブルを示す断面図。
【図7】(a)は変更例の緩衝用部材を示す部分断面図、(b)はその緩衝用部材からなる緩衝層を備えた光ファイバケーブルを示す断面図。
【図8】(a)は変更例の緩衝用部材を示す部分断面図、(b)はその緩衝用部材からなる緩衝層を備えた光ファイバケーブルを示す断面図。
【図9】(a)は緩衝用部材を光ファイバ心線に螺旋巻きした状態を示す正面図、(b)は(a)に示すB−B線に沿った部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した実施形態について図1及び図2を参照して詳細に説明する。
図1(a)に示すように、本実施形態の緩衝用部材11は、長さ方向を有する支持部12を複数備え、各支持部12の基端がシート状の基材13で連結された構成を有する。緩衝用部材11は、光ファイバ心線31a,31a…とシースとの間に配置される緩衝層を形成するために用いられる。緩衝用部材11は、巻芯Cに巻き取られたロール21として光ファイバケーブルの製造に供される。以下の説明では、複数の光ファイバ心線31a,31a…を合わせて単に光ファイバ心線31という。
【0018】
緩衝用部材11は、熱可塑性高分子材料から可撓性を有するように形成されている。図1(a)及び図1(b)に示すように、ロール21から繰り出された緩衝用部材11は、平坦状の基材13の外面に複数の支持部12,12…が突出した形状をなしている。各支持部12は、それぞれシート状をなし、基材13の外面において等間隔かつ平行となるように離間して配置されている。各支持部12の基端から先端までの寸法は、同じ寸法に設定されている。
【0019】
各支持部12は、基材13の外面に対して傾斜している。具体的には、各支持部12は、基端から先端に向かうにしたがって、基材13の幅方向における一端部側(一方の側縁側)に位置している。こうした各支持部12の長さ方向に直交する断面は、円弧の一部をなすように湾曲した形状をなしている。また、隣り合う支持部12の間隔は、支持部12の基端から先端までの寸法よりも短く形成されている。
【0020】
各支持部12は、外圧により、基材13の幅方向における一端部側へ向かって傾倒可能とされている。上記のロール21として巻き取られた状態では、各支持部12が傾倒された状態である一方で、緩衝用部材11がロール21から繰り出され、外圧が開放されると、各支持部12は弾性によって起立するようになっている。
【0021】
緩衝用部材11を形成する熱可塑性高分子材料としては、例えば、ゴム、エラストマー等のゴム状弾性材料、アミド系樹脂、オレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、及びエステル系樹脂から選ばれる少なくとも一種の樹脂系材料が好適に用いられる。
【0022】
次に、緩衝用部材11から形成される緩衝層について説明する。
緩衝層は、光ファイバ心線31の長さ方向に対して緩衝用部材11の長さ方向を合わせる縦添えによって形成される。まず、緩衝用部材11の各支持部12側に接するように光ファイバ心線31が配置されるとともに、緩衝用部材11の両端を重ね合わせるようにして同緩衝用部材11が光ファイバ心線31に巻き付けられる。これにより、光ファイバ心線31の周囲には、図2(a)及び図2(b)に示すように、基材13を外側として光ファイバ心線31に沿って円筒状に湾曲された緩衝用部材11が配置される。続いて、図2(c)に示すように、基材13の外面がシース32で被覆されることで、光ファイバケーブル41(所謂、スロットレスケーブル)が形成される。このようにして、光ファイバ心線31とシース32との間には、緩衝用部材11から形成された緩衝層33が配置される。すなわち、光ファイバ心線31と基材13との間に複数の支持部12,12…が配置される。
【0023】
緩衝層33では、隣り合う一対の支持部12,12において一方の支持部12の先端が他方の支持部12の基端と先端との中間に接触されている。これにより、一対の支持部12,12及び基材13により囲まれる中空部33a(中空構造)が形成される。換言すると、基材13を平坦としたときの隣り合う一対の支持部12,12の間隔は、緩衝層33を形成したときに、一方の支持部12の先端が他方の支持部12に接触する間隔に設定される。
【0024】
中空部33aは、三角柱状をなし、基材13の長さ方向(光ファイバ心線31の長さ方向)に沿って延在している。中空部33aを有する中空構造は、光ファイバ心線31の周方向全体にわたって形成されている。すなわち、上述した緩衝用部材11において、複数の支持部12,12…は、緩衝層33を形成したとき、光ファイバ心線31の周方向全体にわたって連なる配置とされることで、その周方向全体にわたって中空構造が形成されるようになる。なお、光ファイバ心線31の周方向とは、複数の光ファイバ心線31a,31a…を合わせた柱状をなす心線の群における周方向を示している。
【0025】
シース32は、例えば、基材13の外周に沿って熱可塑性高分子材料を押し出す押出成形により形成される。シース32を形成する熱可塑性高分子材料としては、例えば、エチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、及び難燃性オレフィン系樹脂が挙げられる。ここで、シース32の成形時には、熱可塑性高分子材料からの伝熱により緩衝用部材11(緩衝層33)が加熱されることになる。このため、上述した緩衝用部材11を形成する熱可塑性高分子材料は、シース32の成形時における加熱に対して耐熱性を有する材料とされる。例えば、シース32をポリエチレン樹脂から形成する場合、緩衝用部材11を形成する熱可塑性高分子材料の融点又は軟化点は、120℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。
【0026】
次に、緩衝用部材11の作用について説明する。
緩衝用部材11の有する複数の支持部12,12…は、基材13で連結されている。このため、光ファイバ心線31に対する縦添えに際して、複数の支持部12,12…を一体として供給することができる。従って、例えば複数の支持部12,12…を各別に供給して緩衝層33を形成する場合よりも、緩衝層33の形成が容易となる。
【0027】
ここで、基材13を平坦としたとき、隣り合う一対の支持部12,12が接している場合、基材13を湾曲させて緩衝層33を形成したときに、それら支持部12,12が突き当たることで、各支持部12が過剰に変形し易くなる。この点、上記のように基材13を平坦状としたとき、隣り合う一対の支持部12,12が離間している構成によれば、緩衝層33を形成したときに、各支持部12の過剰な変形を抑制できるため、各支持部12による緩衝作用が発揮され易くなる。
【0028】
また、隣り合う一対の支持部12,12は、緩衝層33を形成したときに接触する間隔で配置されているため、中空部33aが形成される。こうした中空部33aに基づく緩衝作用が発揮される。
【0029】
次に、緩衝用部材11の製造方法について説明する。
緩衝用部材11は、複数の支持部12,12…の長さ方向に沿った押出成形により一体成形される。この押出成形は、押出機とそれに連結されたダイスとを備えた周知の押出成形機を用いて行われる。本実施形態では、熱可塑性高分子材料として熱可塑性エラストマー(日本ミラクトラン株式会社製、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、商品名:ミラクトランE−395)を押出温度220℃で下方へ向けて押出し、ダイスの吐出口の下方に配置された水槽で冷却することで凝固させる。このときの吐出口の先端と水面との距離は100mmに設定し、緩衝用部材11の巻取(引取)速度は10m/minとされる。これにより、緩衝用部材11(幅寸法15mm)を押出成形して巻き取ることで、緩衝用部材11のロール21が得られる。
【0030】
以上詳述した本実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)緩衝用部材11は、長さ方向を有し、光ファイバ心線31に縦添えされることで光ファイバ心線31を支持する支持部12を複数備えている。そして、複数の支持部12,12…がシート状の基材13で連結された構成を有している。この構成によれば、光ファイバ心線31に対する縦添えに際して、複数の支持部12,12…を一体として供給することができる。このように、取り扱いの容易な緩衝用部材11が提供される。
【0031】
(2)複数の支持部12,12…において隣り合う一対の支持部12,12が離間している。これにより、各支持部12の過剰な変形を抑制できるため、各支持部12による緩衝作用が発揮され易くなる。従って、光ファイバ心線31を好適に保護することができる。
【0032】
(3)複数の支持部12,12…において隣り合う一対の支持部12,12は、緩衝層33を形成したときに接触する間隔で配置されている。この構成によれば、中空部33aに基づく緩衝作用が発揮されることで、光ファイバ心線31を好適に保護することができる。
【0033】
(4)緩衝用部材11は、複数の支持部12,12…の長さ方向に沿った押出成形で成形されることにより、連続した長尺状の緩衝用部材11を効率よく製造することができる。
【0034】
(5)各支持部12は、外圧により基材13の面に沿うように傾倒可能であるとともに外圧の開放により起立される弾性を有し、基材13の面に対して傾斜している。このように構成されることで、緩衝用部材11を容易に巻き取ることができる。そして、緩衝用部材11のロール21とすることで、搬送や光ファイバケーブル41の製造ラインへの供給が容易となる。
【0035】
(6)緩衝用部材11は、単一種の熱可塑性高分子材料を用いた押出成形により成形されることで、リサイクルの容易な緩衝用部材11を得ることができる。また、基材13に各支持部12を結合する別の工程が不要となるため、そうした工程を管理する手間を省くことができる。従って、緩衝用部材11の品質の安定化、コスト削減等の観点から有利である。また、緩衝用部材11は、不織布等の材料を複合していないため、脱落繊維等の異物の混入を回避することが容易である。
【0036】
(7)緩衝用部材11は、熱可塑性高分子材料から形成されているため、その材料を適宜選択することで、緩衝層33に透明性を付与することができる。このため、緩衝用部材11を光ファイバ心線31の周囲に配置する工程において、緩衝用部材11を通じて光ファイバ心線31の状態を視認可能とすることができる。これにより、光ファイバケーブル41の製造における品質管理を行うことができる。また、シース32を剥離した段階で光ファイバ心線31の状態を確認することができるため、例えば光ファイバケーブル41を分岐する作業(中間後分岐作業)が容易となる。
【0037】
(変更例)
なお、前記実施形態を次のように変更して構成してもよい。
・隣り合う一対の支持部12,12の間隔を広く設定することで、緩衝層33を形成したときに、隣り合う一対の支持部12,12が接触しない構成に変更することもできる。
【0038】
・例えば、各支持部12を構成する熱可塑性高分子材料の弾性や、隣り合う一対の支持部12,12の間隔によっては、基材13を平坦としたとき、それら支持部12,12が接触することになる。このように、基材13を平坦としたとき、隣り合う一対の支持部12,12が接触する構成にしてもよい。
【0039】
・複数の支持部12,12…の数、又は、複数の支持部12,12…の基端から先端までの寸法は適宜変更することができる。例えば、図3(a)及び図3(b)に示すように、光ファイバ心線31の数に応じて、複数の支持部12,12…の寸法を変更することができる。このように、複数の支持部12,12…の寸法を変更した場合、隣り合う一対の支持部12,12の間隔を調整することで、それら支持部12,12が接触した中空構造を有する緩衝層33を形成することができる。
【0040】
・図3(a)に二点鎖線で示すように、複数の支持部12,12…の基端部は、基材13の面に対して傾斜して立設されていてもよい。
・前記各支持部12の長さ方向に直交する断面は、湾曲した形状をなしている。例えば、図4(a)及び図4(b)に示すように、各支持部12の長さ方向に直交する断面が直線状をなすように各支持部12の形状を変更してもよい。
【0041】
・各支持部12の形状を、例えば屈曲形状に変更することもできる。図5(a)及び図5(b)に示す緩衝用部材11では、基材13の外面に立設される第1支持部12aと、その第1支持部12aの先端部において一体とされる第2支持部12bとを備え、第1支持部12aに対して第2支持部12bのなす角度を鈍角としている。図6(a)及び図6(b)に示す緩衝用部材11では、第1支持部12aに対して第2支持部12bのなす角度は鋭角としている。図6(c)及び図6(d)に示す緩衝用部材11では、前記断面において、第2支持部12bは、基材13の外面に向かって延びるように屈曲されている。なお、第2支持部12bは、第1支持部12aの先端で一体とされる構成に限らず、第2支持部12bは、第1支持部12aの基端と先端との間で一体とされていてもよい。
【0042】
・各支持部12の形状を、長さ方向に延びる中空部を有する形状に変更してもよい。例えば図7(a)及び図7(b)に示す各支持部52は、長さ方向に直交する断面において環状をなし、長さ方向に延びる中空部52aを有している。この場合、前記中空部33aに基づく緩衝作用に加えて、各支持部52の有する中空部52aに基づく緩衝作用が発揮される。また、各支持部52は、図7(a)に二点鎖線で示すように、外圧により圧縮変形可能に構成されているため、緩衝用部材51を巻き取ったロールとすることができる。この緩衝用部材51は、ロールから繰り出され、外圧が開放されると、各支持部52の中空部52aは弾性によって復元されるようになっている。
【0043】
なお、このような支持部52は、図8(a)及び図8(b)に示すように、長さ方向に延びる中空部52aを有する本体部52bと、その本体部52bを基材13に連結する連結部52cとを備えた支持部52に変更することもできる。
【0044】
また、隣り合う一対の支持部52,52は、緩衝層33を形成したとき、離間しているように配置されていてもよい。各支持部52の少なくとも一つを中実な支持部に変更することも可能である。各支持部52の断面の外形又は中空部52aの断面形状は、例えば、多角形状、楕円形状等に変更されてもよい。また、一つの支持部52に複数の中空部を有する構成に変更することもできる。
【0045】
・前記実施形態及び上述した支持部12,52に、長さ方向に沿って延びる突条を設けてもよい。
・前記実施形態及び上述した支持部12,52を組み合わせて緩衝用部材11を構成してもよい。
【0046】
・前記基材13に、その長さ方向に沿って延びる突条を形成してもよい。また、前記基材13の支持部12とは反対側の外面に、エンボス加工を施したり、粘着層等を積層したりすることもできる。
【0047】
・前記基材13と各支持部12,52とを別体で押出成形した後に、基材13と各支持部12,52とを溶着や接着により連結してもよい。この場合、基材13と各支持部12,52を異なる熱可塑性高分子材料から構成することもできる。
【0048】
・発泡体を形成する熱可塑性高分子材料から緩衝用部材11,51の一部を成形してもよい。但し、強度や弾性を高め易いという観点から、緩衝用部材11,51を成形するための熱可塑性高分子材料は非発泡性であることが好ましい。
【0049】
・前記緩衝用部材11は、ロール21として光ファイバケーブル41の製造に供されるが、緩衝用部材11を成形する押出成形機とシース32を成形する押出成形機とを備えた製造ラインを用いて、成形した緩衝用部材11を巻き取らずに、光ファイバケーブル41の製造に供することもできる。
【0050】
・前記緩衝用部材11,51は、複数の光ファイバ心線31a,31aを備えた光ファイバケーブル41の緩衝層33に適用しているが、光ファイバ心線の数は限定されず、単数の光ファイバ心線31aを備えた光ファイバケーブルの緩衝層に適用してもよい。また、光ファイバケーブルは、周知の支持線やテンションメンバを備えていてもよい。
【0051】
・前記緩衝用部材11,51は、光ファイバ心線31に縦添えされているが、緩衝用部材11は、光ファイバ心線31に対して螺旋状に巻き付ける螺旋巻きによっても、緩衝層を形成することができる。例えば、図9(a)及び図9(b)に示す緩衝用部材11は、各支持部12の突出している面を内側として光ファイバ心線31に螺旋巻きされる。この場合、光ファイバ心線31の長さ方向に沿って螺旋状に延びる中空部33aによって中空構造が形成されるため、その構造に基づく緩衝作用が発揮される。
【符号の説明】
【0052】
11,51…緩衝用部材、12,52…支持部、13…基材、31,31a…光ファイバ心線、32…シース、33…緩衝層、33a,52a…中空部、41…光ファイバケーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ心線とシースとの間に配置して光ファイバケーブルの緩衝層を形成するための緩衝用部材であって、
長さ方向を有するとともに前記光ファイバ心線に縦添え又は螺旋巻きされることで前記光ファイバ心線を支持する支持部を複数備えてなり、
前記複数の支持部がシート状の基材で連結された構成を有することを特徴とする緩衝用部材。
【請求項2】
前記複数の支持部において隣り合う一対の支持部が、前記基材を平坦としたとき、離間していることを特徴とする請求項1に記載の緩衝用部材。
【請求項3】
前記複数の支持部において隣り合う一対の支持部は、前記緩衝層を形成したとき、接触する間隔で配置されていることを特徴とする請求項2に記載の緩衝用部材。
【請求項4】
前記複数の支持部のうち、少なくとも一つは、長さ方向に延びる中空部を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の緩衝用部材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の緩衝用部材の製造方法であって、
前記緩衝用部材は、前記複数の支持部の長さ方向に沿った押出成形で一体成形されることを特徴とする緩衝用部材の製造方法。
【請求項6】
光ファイバ心線と、シースと、前記光ファイバ心線と前記シースとの間に位置する緩衝層とを備えた光ファイバケーブルであって、
前記緩衝層は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の緩衝用部材により形成され、前記光ファイバ心線と前記基材との間に前記複数の支持部が配置されてなることを特徴とする光ファイバケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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