説明

縦可動手摺

【課題】手摺体の使用状態の姿勢を安定保持することができ、構成部材の削減を図ることができると共に、組立作業を容易に行えるようにした縦可動手摺を提供すること。
【解決手段】壁面に固定されるベース11と一対の支持片12とからなる支持部材10と、先端部が弧状の略U字形のパイプ部材からなる手摺体20と、該手摺体の上下の基端部21,22を固定保持するブラケット30と、該ブラケットに貫通固着され、両支持片に回転可能に枢着される回転軸40と、を具備し、使用時における水平位置と、不使用時における起立位置で停止可能な縦可動手摺において、手摺体の下部側基端部を上部側基端部に対して平行に近接して設け、ブラケットを、手摺体の上下部側基端部が嵌挿可能な2つの手摺体基端部嵌挿用穴31,32を設けたアルミニウム製部材にて形成し、回転軸を、ブラケット及び該ブラケットに設けられた上記穴に嵌挿される上部側基端部に貫通させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は縦可動手摺に関するもので、更に詳細には、例えばトイレ等の場所において、高齢者等の身体的弱者の介助に供する縦可動手摺に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トイレ等において使用者の身体を支持するために手摺が設置されているが、トイレ内は面積に余裕がないことが多く、壁面から突出する手摺を常設しておくと不便なことが多いので、壁面側に回動させて格納することができるようにした手摺が使用されている。特に、縦方向に回動する縦可動手摺は回動時に必要なスペースを小さく取ることができるため、多く使用されている。
【0003】
このような縦可動手摺として、壁面に固定されるベースと、該ベース面に溶接等によって起立固定される一対の支持片とからなる支持部材と、先端部が弧状の略U字形のパイプ部材からなる手摺体と、該手摺体の上下の基端部を固定保持するブラケットと、該ブラケットに貫通固着され、上記両支持片に回転可能に枢着される回転軸と、回転軸の一端部に係合され、手摺体の下降時に手摺体に持ち上げ方向の復元弾力を付勢する渦巻きスプリングと、回転軸の他端部に係合され、回転軸の回動を制動するディスクダンパと、を具備する縦可動手摺が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−220876号公報(段落0010〜0012,0016,0017、図1,図2,図10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、回転軸と手摺体の基端部の取付位置が離れて設けられているので、使用時に手摺体に荷重が加わると、ブラケットと手摺体の取付部に大きな負荷がかかり、使用時に手摺体にがたつきが生じたり、ブラケットから手摺体が外れる懸念がある。そのため、ブラケットと手摺体とを強固に連結する必要がある。
【0005】
また、特許文献1に記載のものにおいては、手摺体の上下の基端部は平行でなく、傾斜しているため、手摺体の基端部をブラケットに嵌挿して取り付けることができず、ブラケットを2分割にして手摺体を挟持し、溶接等によって固定する必要がある。したがって、構成部材が多くなると共に、組立が面倒であるという問題があった。
【0006】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、手摺体の使用状態の姿勢を安定保持することができ、かつ、構成部材の削減を図ることができると共に、組立作業を容易に行えるようにした縦可動手摺を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、壁面に固定されるベースと一対の支持片とからなる支持部材と、先端部が弧状の略U字形のパイプ部材からなる手摺体と、該手摺体の上下の基端部を固定保持するブラケットと、該ブラケットに貫通固着され、上記両支持片に回転可能に枢着される回転軸と、を具備し、使用時における水平位置と、不使用時における起立位置で停止可能な縦可動手摺であって、 上記手摺体の基端部は、下部側基端部が上部側基端部に対して平行に近接して設けられ、 上記ブラケットは、上記手摺体の上下部側基端部が嵌挿可能な2つの手摺体基端部嵌挿用穴を設けたアルミニウム製部材にて形成され、 上記回転軸は、上記ブラケット及び該ブラケットに設けられた手摺体基端部嵌挿用穴に嵌挿される上部側基端部を貫通してなる、ことを特徴とする。ここで、アルミニウムとはアルミニウム合金を含む意味である。
【0008】
このように構成することにより、ブラケットに設けられた2つの手摺体基端部嵌挿用穴に手摺体の上下部側基端部を同時に嵌挿して、ブラケットと手摺体とを連結することができ、また、ブラケット及び該ブラケットに設けられた手摺体基端部嵌挿用穴に嵌挿される上部側基端部に回転軸を貫通して、ブラケットと手摺体とを固定することができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の縦可動手摺において、上記ブラケットは、2つの手摺体基端部嵌挿用穴及び該両穴を連通するスリットを有するアルミニウム製押出形材にて形成され、上記手摺体の上部側基端部の中空部内に補強部材が挿入固定され、上部補強部材には、回転軸が貫通される、ことを特徴とする。
【0010】
このように構成することにより、ブラケットを軽量にすることができると共に、2つの手摺体基端部嵌挿用穴の平行度を高精度にすることができ、手摺体の上下部側基端部の嵌挿を容易かつ確実にすることができる。また、手摺体の上部側基端部の中空部内に補強部材を挿入固定し、上部補強部材には回転軸を貫通することで、ブラケットと手摺体との連結を強固にすることができる。
【0011】
また、請求項3記載の発明は、請求項1記載の縦可動手摺において、上記ブラケットは、有底拡開テーパ状の2つの手摺体基端部嵌挿用穴を有するアルミダイキャスト製部材にて形成され、上記有底拡開テーパ状の手摺体基端部嵌挿用穴と上記手摺体の基端部との間に、内周面が上記手摺体の基端部を嵌挿し、外周面が上記手摺体基端部嵌挿用穴の内周面に嵌挿されるカップ状塞ぎ部材が介在され、上記手摺体の上部側基端部の中空部内に補強部材が挿入固定され、上部補強部材には、回転軸が貫通される、ことを特徴とする。
【0012】
このように構成することにより、ブラケットに設けられた2つの手摺体基端部嵌挿用穴が有底拡開テーパ状に形成されるので、手摺体の上下部側基端部の嵌挿を容易かつ確実にすることができる。また、有底拡開テーパ状の手摺体基端部嵌挿用穴と手摺体の基端部との間に、カップ状塞ぎ部材が介在され、かつ、手摺体の上部側基端部の中空部内に補強部材を挿入固定し、上部補強部材には回転軸を貫通することで、ブラケットと手摺体との連結を強固にすることができる。
【発明の効果】
【0013】
上記のように構成することにより、以下のような効果が得られる。
【0014】
(1)請求項1記載の発明によれば、ブラケットに設けられた2つの手摺体基端部嵌挿用穴に手摺体の上下部側基端部を同時に嵌挿して、ブラケットと手摺体とを連結することができ、ブラケットと手摺体とを容易に連結することができる。また、ブラケット及び該ブラケットに設けられた手摺体基端部嵌挿用穴に嵌挿される上部側基端部に回転軸を貫通して、ブラケットと手摺体とを固定することにより、ブラケットと手摺体とを強固に連結することができる。したがって、手摺体の使用状態の姿勢を安定保持することができ、かつ、構成部材の削減を図ることができると共に、組立作業を容易にすることができる。
【0015】
(2)請求項2記載の発明によれば、上記(1)に加えて更に、ブラケットを軽量にすることができると共に、ブラケットと手摺体の連結を容易かつ確実にすることができ、かつ、強固に連結することができる。
【0016】
(3)請求項3記載の発明によれば、上記(1)に加えて更に、ブラケットに設けられた2つの手摺体基端部嵌挿用穴が有底拡開テーパ状に形成され、かつ、有底拡開テーパ状の手摺体基端部嵌挿用穴と手摺体の基端部との間に、カップ状塞ぎ部材が介在されるので、ブラケットと手摺体の連結を容易かつ確実にすることができると共に、強固に連結することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、この発明の最良の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、この発明に係る縦可動手摺をトイレに適用した場合について説明する。
【0018】
図1は、この発明に係る縦可動手摺をトイレに取り付けた場合の使用状態を示す概略斜視図、図2は、上記縦可動手摺の使用状態の一部を断面で示す斜視図(a)及び要部を断面で示す斜視図(b)、図3は、上記縦可動手摺の不使用時(格納時)の状態を示す斜視図である。
【0019】
上記縦可動手摺H(以下に、単に手摺Hという)は、壁面1に固定されるベース11と互いに平行に対峙する一対の支持片12とからなる支持部材10と、使用時における水平位置と、不使用時における起立位置との間で回動自在に形成され、水平位置及び起立位置で停止可能な先端部が弧状の略U字形の手摺体20と、この手摺体20の上下の基端部21,22を固定保持するブラケット30と、ブラケット30に貫通固着され、両支持片12に回転可能に枢着される回転軸40と、を具備している。
【0020】
上記手摺体20は、図4ないし図10に示すように、外周を例えば合成樹脂部材20aで被覆した中空円筒状のパイプ部材20bにて形成されており、先端に略半円の弧状部23を有する略U字形に屈曲されると共に、基端側は下部側基端部22が上部側基端部21に対して平行に近接して設けられている。すなわち、手摺体20の主要部を構成する略U字形の手摺本体24の互いに平行な上部24aと下部24bにおける上部24aに延在する上部側基端部21に対して、下部24bの基端側から上部24a側に向かって傾斜する傾斜部24cを介して上部側基端部21に平行に近接して下部側基端部22が設けられている。
【0021】
また、手摺体20の上部側基端部21の中空部内には、例えば鉄製の矩形ブロック状の補強部材25が挿入されている(図11及び図12参照)。この補強部材25は、上部側基端部21の中空部内にほぼ内接するように挿入されている。また、補強部材25には、図5,図6,図8及び図10に示すように、基端側に回転軸40の嵌挿用孔25aが設けられると共に、基端面から嵌挿用孔25aに向かって固定ねじ孔25bが刻設されている。また、補強部材25の挿入側の2箇所には、係止ねじ孔25cが刻設されており、補強部材25が手摺体20の上部側基端部21内に挿入された状態で、ブラケット30及び上部側基端部21を貫通する固定ねじ26を係止ねじ孔25cに螺合することで、補強部材25が手摺体20の上部側基端部21内に固定される。この補強部材25は、取付状態においてブラケット30より突出する長さに形成されている。また、補強部材25の基端面から嵌挿用孔25aに向かって固定ねじ孔25bを設けることにより、嵌挿用孔25a内に嵌挿される回転軸40の中間部に設けられた平坦面41に、固定ねじ孔25bに螺合される例えば芋ねじからなる押しねじ27を押圧して、補強部材25と回転軸40とを固定することができる。
【0022】
また、手摺体20の下部側基端部22の中空部内には、例えば鉄製の矩形ブロック状の当て板部材28が挿入されている(図11及び図12参照)。この当て板部材28は、補強部材25に比べて強度が小さくてもよいので、小さく形成されており、両端部の2箇所には、係止ねじ孔28aが刻設され、当て板部材28が手摺体20の上部側基端部21内に挿入された状態で、ブラケット30及び下部側基端部22を貫通する固定ねじ26を係止ねじ孔28aに螺合することで、当て板部材28が手摺体20の上部側基端部21内に固定される。
【0023】
上記補強部材25と当て板部材28は、手摺Hを組み立てる前に、手摺体20の上下部側基端部21,22の中空部内に挿入固定される。そして、後述する支持部材10に設けられた貫通孔10a、ブラケット30に設けられた貫通孔30aと手摺体20の上部側基端部21に設けられた貫通孔21a及び補強部材25に設けられた嵌挿用孔25aを貫通する回転軸40を、押しねじ27で固定することで、手摺体20とブラケット30及び回転軸40が一体に固定される。
【0024】
上記ブラケット30は、互いに平行な2つの手摺体基端部嵌挿用穴31,32(以下に穴31,32という)及び両穴31,32を連通するスリット33を有するアルミニウム製押出形材にて形成されている。この場合、ブラケット30は、図11及び図12に示すように、2つの穴31,32の両側面と上端面及び下端面は平坦状に形成され、スリット33の両側面は凹状に括れている。これにより、ブラケット30の無駄な材料を削減すると共に、ブラケット30の押出成形を容易にすることができる。また、ブラケット30の基端部側の上部側の穴31の側面には回転軸40が嵌挿可能な貫通孔30aが設けられている。なお、ブラケット30の先端側の上端面には円形凹状のマグネット受け34が設けられており、このマグネット受け34に円柱状のマグネット35が例えば両面接着テープ等の接着手段を介して固着されるようになっている。
【0025】
上記のように形成されるブラケット30の小口側の2つの穴31,32及びスリット33には、キャップ部材37が被着されて、外部から目隠しされている。このキャップ部材37は、図11及び図12に示すように、2つの穴31,32内に嵌挿される2つの円板部37a,37bと両円板部37a,37bの間に連結され、スリット33内に挿入される矩形ブロック状の挿入部37cとからなり、例えば合成ゴム製部材にて形成されている。
【0026】
上記回転軸40はステンレス鋼製の部材にて形成されており、図11及び図12に示すように、中間部の両側に平坦面41が設けられ、両端部の中央には軸方向に沿うスリット部42が形成されている。このように形成される回転軸40は、上述したように、支持部材10,ブラケット30,手摺体20及び補強部材25を貫通して取り付けられた状態で、一端のスリット部42に、手摺体20の下降時に手摺体20を持ち上げる方向の復元弾力を付与するばね部材例えば渦巻きスプリング43が係合され、他端のスリット部42には回転軸40を制動するための制動部材例えばオイルの粘性を利用してトルクを発生させるディスクダンパ44が係合されている。
【0027】
一方、上記支持部材10は、図6,図11及び図12に示すように、矩形状のベース11と、このベース11の中心部に対して互いに平行に対峙する一対の支持片12とからなる断面略π字状のアルミニウム製押出形材にて形成されている。この場合、ベース11の上下両端部の4箇所には取付孔13が穿設され、また、両側縁の表面側すなわち支持片12側には、後述するカバー部材60を係止する係止爪片14が突設されている(図6参照)。
【0028】
また、両支持片12は、中間部から基端部側に渡って厚肉部15が形成されると共に、中間部から先端側に薄肉部16が形成され、先端部には、カバー部材60を係止する係止段部17が形成されている。この支持片12の厚肉部15に回転軸40を嵌挿する貫通孔10aが穿設されている。
【0029】
また、支持部材10のベース11における両支持片12間には、手摺体20の使用時の水平位置及び不使用時の格納位置を維持するための位置規制部材50が取り付けられている。この位置規制部材50は、図5,図8,図10,図11及び図12に示すように、両支持片12a間のベース11表面に位置する略矩形状の位置規制片51と、この位置規制片51の上端から直角に折曲され、ベース11の上端部に係止される水平係止片52とからなる。
【0030】
この場合、位置規制片51の上部側には、上記ブラケット30に取り付けられたマグネット35に吸着可能な例えば鋼板等の磁性プレート36が嵌挿可能な嵌合溝53が横設されている。この嵌合溝53は、上下に対峙する一対の断面逆L字状の案内凸条53aによって形成されている。このように形成された嵌合溝53内に磁性プレート36が嵌挿固定される。これにより、手摺体20が水平状態から起立された際に、ブラケット30に固定されたマグネット35と磁性プレート36が吸着して手摺体20の格納位置が維持される。
【0031】
また、位置規制片51の下部側には、手摺体20が水平位置におかれた際に、ブラケット30の端面に当接して手摺体20の水平位置を維持する平坦隆起部54が形成されている。なお、この平坦隆起部54の裏面側には、互いに平行な複数の補強リブ55が突設されている。このように平坦隆起部54の裏面側に補強リブ55を突設することにより、手摺体20の使用位置でブラケット30が当接する平坦隆起部54の耐圧強度を高めることができる。
【0032】
また、位置規制片51における嵌合溝53と平坦膨隆部54との間には、手摺体20の回動に伴って回動するブラケット30の上端角部38が干渉しないように上端角部38の回動軌跡よりやや大きい曲率の凹状円弧部56が形成されている(図4,図5,図7〜図11参照)。この場合、凹状円弧部56とブラケット30の上端角部38との隙間sは、小児の指が入り込まない隙間例えば4mm以下に設定されている。
【0033】
上記のように形成される位置規制部材50を支持部材10の両支持片12間に取り付けた状態で、支持部材10の両側にそれぞれカバー部材60が被着されて、渦巻きスプリング43及びディスクダンパ44が外部から目隠しされている。
【0034】
この場合、カバー部材60は、支持部材10のベース11の一方の外方張り出し部と、支持片12の上端及び下端を塞ぐ略三角形状の天板部61及び底板部62と、天板部61と底板部62を連結する傾斜側板部63とからなる例えばABS樹脂等の合成樹脂製部材にて形成されている。
【0035】
なおこの場合、傾斜側板部63は、一端に支持部材10の係止爪片14に係合する係止爪64を有し、他端に支持部材10の係止段部17に係合する二股状の係止溝部65を有しており、支持部材10に係止された状態において、係止溝部65の外側面は支持片12の対向側面と同一平面上に位置するように形成されている。なお、係止爪64は、傾斜側板部63の上下端部と中間部の3箇所に設けられている。また、天板部61は、位置規制部材50の水平係止片52の上面と同一平面上に位置する上面を有すると共に、支持片12の上端部を覆う垂下片61aを有している。なお、垂下片61aの端部は係止溝部65の外側面の上端部に膨隆形成されている。また、底板部62は、支持片12の下端部を覆う起立片62aを有しており、起立片62aの端部は係止溝部65の外側面の下端部に膨隆形成されている。
【0036】
上記のように形成されるカバー部材60は、支持部材10の支持片12の外方側面に両面接着テープ等によって固着されるカバー受け70を介して支持部材10の両側に被着される。この場合、カバー受け70は、カバー部材60の傾斜側板部63の傾斜面に沿った傾斜角を有する傾斜受け片71と、傾斜受け片71の両端に折曲される一対の脚片72と、両脚片72の先端から外側に折曲される取付片73とからなる例えばアルミニウム製押出形材にて形成されている。このように形成されるカバー受け70は、取付片73の裏面に両面接着剤等を介して支持部材10の支持片12の外方側面に固着される。
【0037】
次に、手摺Hの組み立て及び壁面1への取付け手順について説明する。まず、手摺体20の上下側基端部21,22内にそれぞれ補強部材25と当て板部材28を挿入し、手摺体20の上下側基端部21,22をブラケット30の2つの穴31,32内に挿入し、ブラケット30に設けられた貫通孔30aと補強部材25に設けられた嵌挿用孔25aとを合致させた状態で、固定ねじ26によってブラケット30と手摺体20の上下側基端部21,22を固定する。
【0038】
次に、両支持片12間の上部に位置規制部材50が取り付けられた支持部材10の両支持片12間に、手摺体20を固定保持したブラケット30を挿入し、支持部材10の貫通孔10aとブラケット30の貫通孔30aとを合致させる。次に、回転軸40を、支持部材10の貫通孔10aとブラケット30の貫通孔30a及び補強部材25の嵌挿用孔25aに嵌挿する。この状態で、押しねじ27を補強部材25の固定ねじ孔25bに螺合して押しねじ27を回転軸40の平坦面41に押圧して回転軸40とブラケット30を固定する。その後、ブラケット30の小口側の2つの穴31,32とスリット33にキャップ部材37を被着する。
【0039】
次に、上記のようにしてブラケット30に固定された回転軸40の突出側のスリット部42にそれぞれ渦巻きスプリング43及びディスクダンパ44を取り付ける。この際、ブラケット30と両支持片12との間に隙間がある場合は座金45を介在してもよい。
【0040】
支持部材10に手摺体20及びブラケット30を組み付けた状態で出荷され、現場において、支持部材10が取付ねじ(図示せず)によって便器2の側方の壁面1に取り付けられた後に、支持部材10の両側にカバー部材60が取り付けられる。
【0041】
なお、上記実施形態では、ブラケット30がアルミニウム製押出形材にて形成される場合について説明したが、押出形材に代えてアルミダイキャスト製のブラケット30Aを用いてもよい。この場合、ブラケット30Aは、図14ないし図19に示すように、基端側の底部39aから先端側の開口部39bに向かって拡開テーパ状を有する有底拡開テーパ状の2つの穴31A,32Aが設けられており、先端側の上端面には円形凹状のマグネット受け34Aが設けられている。なお、穴31Aの底部39aには、回転軸40を固定する押しねじ27の貫挿孔39cが穿設されている。
【0042】
また、手摺体20の上端側基端部21及び下端側基端部22内に挿入される補強部材25及び当て板部材28には、それぞれ係止ねじ孔25c,28aが3個設けられており、上端側基端部21及び下端側基端部22の一側に設けられた固定孔29を介して挿入される固定ねじ26Aを係止ねじ孔25c,28aに螺合することによって、上端側基端部21及び下端側基端部22内に補強部材25及び当て板部材28が固定されている。
【0043】
上記のように形成されるアルミダイキャスト製のブラケット30Aによって手摺体20を固定保持する場合は、内周面が手摺体20の基端部21,22を嵌挿する平行穴81を有し、外周面が穴31A,32Aのテーパ状内周面に嵌挿されるテーパ面82を有する例えば合成樹脂製のカップ状塞ぎ部材80,80Aを介在して、ブラケット30Aの2つの穴31A,32A内に手摺体20の基端部21,22を嵌挿する。これにより、アルミダイキャスト製のブラケット30Aの製作上拡開テーパ状に形成される穴31A,32Aを利用して手摺体20の基端部21,22の嵌挿を容易にすることができると共に、カップ状塞ぎ部材80を介在することで、嵌挿状態を強固にすることができる。なお、一方のカップ状塞ぎ部材80の基端部側すなわち底部側の対向する側面には、回転軸40が挿通可能な嵌挿孔83が設けられ、一方の嵌挿孔83には先端側すなわち開口側に連なって固定ねじ26が挿通可能な第1の長孔84aが設けられ、先端側すなわち開口側の一側面には、固定ねじ26が挿通可能な第2の長孔84bが設けられている(図15,図17参照)。また、穴31A内に挿入されるカップ状塞ぎ部材80の底部には、押しねじ27の貫挿孔85が穿設されている。また、他方のカップ状塞ぎ部材80Aの基端部側すなわち底部側及び先端側すなわち開口側の一側面には、それぞれ固定ねじ26が挿通可能な第1及び第2の長孔84a,84bが設けられている(図15参照)。
【0044】
なお、第2実施形態において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0045】
上記のように構成される第2実施形態の手摺Hを組み立てる場合は、まず、上下側基端部21,22内にそれぞれ補強部材25及び当て板部材28を挿入し、固定ねじ26Aによって固定する。次に、手摺体20の上下側基端部21,22にカップ状塞ぎ部材80を被着すなわちカップ状塞ぎ部材80の平行穴81内に手摺体20の上下側基端部21,22を嵌挿した後、ブラケット30Aの2つの穴31A,32A内に手摺体20の基端部21,22を嵌挿する。次に、手摺体20の上下側基端部21,22にカップ状塞ぎ部材80を被着した状態で、ブラケット30Aの2つの穴31A,32A内に挿入し、ブラケット30Aに設けられた貫通孔30aと補強部材25に設けられた嵌挿用孔25aとを合致させる。
【0046】
そして、支持部材10の両支持片12間に、手摺体20を固定保持したブラケット30Aを挿入し、支持部材10の貫通孔10aとブラケット30Aの貫通孔30aとを合致させる。次に、回転軸40を、支持部材10の貫通孔10aとブラケット30Aの貫通孔30a及び補強部材25の嵌挿用孔25aに嵌挿する。この状態でブラケット30Aの保持部38に設けられた貫挿孔39c及びカップ状塞ぎ部材80に設けられた貫挿孔85を介して押しねじ27を補強部材25の固定ねじ孔25bに螺合して押しねじ27を回転軸40の平坦面41に押圧して回転軸40とブラケット30A及び手摺体20を固定(連結)する。
【0047】
上記のようにしてブラケット30Aに固定された回転軸40の突出側のスリット部42にそれぞれ渦巻きスプリング43及びディスクダンパ44を取り付ける。この際、ブラケット30Aと両支持片12との間に隙間がある場合は座金45を介在してもよい。
【0048】
支持部材10に手摺体20及びブラケット30Aを組み付けた状態で出荷され、現場において、支持部材10が取付ねじ(図示せず)によって便器2の側方の壁面1に取り付けられた後に、支持部材10の両側にカバー部材60が取り付けられる。
【0049】
上記のように構成されるこの発明に係る手摺Hは、手摺体20の上部側基端部21がブラケット30,30Aの穴31,31A内に嵌挿された状態で、回転軸40が貫通してブラケット30,30Aと手摺体20が固定されるので、ブラケット30,30Aと手摺体20とを強固に連結することができる。したがって、使用状態において、手摺体20に大きな荷重を加えても手摺体20のがたつきの心配がない。また、使用状態すなわち手摺体20が水平位置にある状態では、ブラケット30,30Aの基端側部が、裏面に複数の補強リブ55を有する位置規制部材50の平坦隆起部54に当接するので、手摺体20に大きな荷重が加わっても平坦隆起部54によって手摺体20の水平姿勢を安定して維持することができる(図5,図15参照)。
【0050】
また、不使用状態すなわち手摺体20が垂直に起立した格納状態では、手摺体20の上部24a及び該上部24aの端部に延在する上部側基端部21が壁面1に平行に近接するので、壁面1との間の隙間を小さくして格納することができる(図10,図19参照)。
【0051】
なお、上記実施形態では、この発明に係る縦可動手摺をトイレに適用した場合について説明したが、トイレ以外の例えばバスルームや、その他高齢者施設等の介助に供することができる場所にも同様に適用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明に係る縦可動手摺をトイレに取り付けた場合の使用状態を示す概略斜視図である。
【図2】上記縦可動手摺の使用状態の一部を断面で示す斜視図(a)及び要部を断面で示す斜視図(b)である。
【図3】上記縦可動手摺の不使用時(格納時)の状態を示す斜視図である。
【図4】上記縦可動手摺の使用時の状態の一部を断面で示す側面図である。
【図5】図4の要部拡大断面図である。
【図6】図5の横断面図である。
【図7】上記縦可動手摺の回動状態の一部を断面で示す側面図である。
【図8】図7の要部拡大断面図である。
【図9】上記縦可動手摺の不使用時(格納時)の状態の一部を断面で示す側面図である。
【図10】図9の要部拡大断面図である。
【図11】上記縦可動手摺の構成部材を示す分解斜視図である。
【図12】組立状態を示す分解斜視図である。
【図13】この発明におけるカバー部材の取り付け前の状態を示す斜視図である。
【図14】この発明の第2実施形態におけるブラケットと手摺体を示す斜視図である。
【図15】この発明の第2実施形態におけるブラケットとカップ状塞ぎ部材を示す一部断面斜視図である。
【図16】第2実施形態の使用状態の要部拡大断面図である。
【図17】図15の横断面図である。
【図18】第2実施形態の縦可動手摺の回動状態の要部拡大断面図である。
【図19】第2実施形態の縦可動手摺の不使用時(格納時)の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 壁面
10 支持部材
10a 貫通孔
11 ベース
12 支持片
20 手摺体
21 上部側基端部
22 下部側基端部
25 補強部材
25a 嵌挿用孔
26 固定ねじ
26A 固定ねじ
27 押しねじ
30,30A ブラケット
30a 貫通孔
31,32 穴
31A,32A 有底拡開テーパ状穴
33 スリット
37 キャップ部材
40 回転軸
80 カップ状塞ぎ部材
H 縦可動手摺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に固定されるベースと一対の支持片とからなる支持部材と、先端部が弧状の略U字形のパイプ部材からなる手摺体と、該手摺体の上下の基端部を固定保持するブラケットと、該ブラケットに貫通固着され、上記両支持片に回転可能に枢着される回転軸と、を具備し、使用時における水平位置と、不使用時における起立位置で停止可能な縦可動手摺であって、
上記手摺体の基端部は、下部側基端部が上部側基端部に対して平行に近接して設けられ、
上記ブラケットは、上記手摺体の上下部側基端部が嵌挿可能な2つの手摺体基端部嵌挿用穴を設けたアルミニウム製部材にて形成され、
上記回転軸は、上記ブラケット及び該ブラケットに設けられた手摺体基端部嵌挿用穴に嵌挿される上部側基端部を貫通してなる、
ことを特徴とする縦可動手摺。
【請求項2】
請求項1記載の縦可動手摺において、
上記ブラケットは、2つの手摺体基端部嵌挿用穴及び該両穴を連通するスリットを有するアルミニウム製押出形材にて形成され、
上記手摺体の上部側基端部の中空部内に補強部材が挿入固定され、上部補強部材には、回転軸が貫通される、
ことを特徴とする縦可動手摺。
【請求項3】
請求項1記載の縦可動手摺において、
上記ブラケットは、有底拡開テーパ状の2つの手摺体基端部嵌挿用穴を有するアルミダイキャスト製部材にて形成され、
上記有底拡開テーパ状の手摺体基端部嵌挿用穴と上記手摺体の基端部との間に、内周面が上記手摺体の基端部を嵌挿し、外周面が上記手摺体基端部嵌挿用穴の内周面に嵌挿されるカップ状塞ぎ部材が介在され、
上記手摺体の上部側基端部の中空部内に補強部材が挿入固定され、上部補強部材には、回転軸が貫通される、
ことを特徴とする縦可動手摺。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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