繊維ろ材を用いたろ過処理方法とそのろ過装置
【課題】 原水中のSS、BOD等の懸濁物質の高い除去性能と薬品費を低減できる繊維ろ材を用いたろ過処理方法とそのろ過装置を提供する。
【解決手段】 前処理として高分子凝集剤による凝集反応を組込み、懸濁物質の一部を凝集沈殿させた後、繊維ろ材(29)を用いた高速繊維ろ過槽(17)により濁質除去を行なう運転を、降雨初期の汚濁負荷の高い時には薬注処理で開始し、流入下水が設定濁度以下となった時に無薬注処理に切換え、或いは、雨天時の流入下水の発生時には薬注処理で開始し、所定時間を超える雨水流入下水には無薬注処理を行うもので、前段に凝集沈殿を組込み、高速繊維ろ過の処理技術を利用して、SS、BOD等の懸濁物質の除去性能を向上させ、降雨パターンに応じて薬注処理と無薬注処理を使い分け、経済的かつ法的処理水質を達成し、高い除去性能と薬品費を低減して、経済性を発揮できるシステムとなる。
【解決手段】 前処理として高分子凝集剤による凝集反応を組込み、懸濁物質の一部を凝集沈殿させた後、繊維ろ材(29)を用いた高速繊維ろ過槽(17)により濁質除去を行なう運転を、降雨初期の汚濁負荷の高い時には薬注処理で開始し、流入下水が設定濁度以下となった時に無薬注処理に切換え、或いは、雨天時の流入下水の発生時には薬注処理で開始し、所定時間を超える雨水流入下水には無薬注処理を行うもので、前段に凝集沈殿を組込み、高速繊維ろ過の処理技術を利用して、SS、BOD等の懸濁物質の除去性能を向上させ、降雨パターンに応じて薬注処理と無薬注処理を使い分け、経済的かつ法的処理水質を達成し、高い除去性能と薬品費を低減して、経済性を発揮できるシステムとなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生活廃水等の下水に雨水を合流させる合流式下水道の濁質除去に関し、特に、雨天時にポンプ場から排出される合流下水、または終末処理場における最初沈殿池や雨水沈殿池への流入水を対象として、原水中のSS、BOD等の懸濁物質を除去する繊維ろ材を用いたろ過処理方法とそのろ過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
古くから下水道の普及に取り組んできた都市では、汚水と雨水を同一の管渠で速やかに排除する合流式下水道を採用し、公衆衛生の向上と、浸水防除を同時に行うことを目的とした整備が進められてきた。合流式下水道は、雨天時に遮集管渠能力を超える雨水が汚水に混入し、未処理下水が公共用水域に放流されて生態系への影響や衛生学的安全性に係る影響が懸念されている。近年の下水道施行令では、合流式下水道からの放流水について雨水の影響が大きい時は、処理区域毎にSS、BOD濃度を40mg/L以下とすることが示されている。雨天時の流入下水の高濃度は数時間以内のファーストフラッシュ時に発生するため、雨天時にポンプ場から排出される下水、または終末処理場における最初沈殿池や雨水沈殿池への流入水を対象として、合流下水からSS、BOD等の懸濁物質の除去が必要である。近年浮上性の繊維ろ材を用いたろ過技術が、従来技術の懸濁物質を除去する雨水沈殿池より効率的で懸濁物質除去性能を超えるろ過技術として注目を集めている。そして、雨天時の未処理下水の処理装置としては、繊維ろ材を使用したろ過槽に、下水を上向流で供給して高速ろ過を行なう無薬注処理のろ過装置は、例えば、特許文献1に記載してあるように、この発明の出願人が提案している。また、雨天時の大流量であるか、非雨天時の小流量であるかに応じて、高速ろ過モードと小流量の通常ろ過モード(無薬注)に切換える浮上性の粒状ろ材のろ過層を形成する移動床式ろ過装置も、例えば、特許文献2に記載してあるように公知である。
【特許文献1】特開2004−188265号公報(段落番号0011、図1及び図2)
【特許文献2】特開2004−113940号公報(要約の解決手段、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の夾雑物を分離した下水から懸濁物質を除去する繊維ろ材を用いた高速繊維ろ過装置は、下水の無薬注処理が可能であり、薬品管理や溶解作業が不要で運転管理が容易で、ランニングコストも安価であるが、SS、BOD等の濁質の除去性能に限界がある。浮上性の粒状ろ材を用いた移動床式ろ過装置は、抜き出した浮上性の粒状ろ材を洗浄して、下水中の濁質除去の連続処理が可能であるが、ろ材は浮上性の小さい粒径であり、移動床式ろ過装置の大容量設備の設置が困難である。また、雨天時と非雨天時で薬注の有無を切換えるもので、雨天時には全て薬注を行うものとなっており、経済的に負担が大きいものである。そして、ろ過槽から抜出した浮上ろ材をろ材循環ポンプで撹拌しても、懸濁物質を剥離できていないろ材が洗浄時に洗浄排水とともに流出する恐れがある。この発明は、合流式下水道の雨天時の流入下水において、前段に凝集沈殿を組込み、高速繊維ろ過の処理技術を利用して、SS、BOD等の懸濁物質の除去性能を向上させ、降雨パターンに応じて凝集剤の使用の有無を使い分け、経済的かつ法的処理水質を達成し、高い除去性能と薬品費を低減できる繊維ろ材を用いたろ過処理方法とそのろ過装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明に係わる繊維ろ材を用いたろ過処理方法の要旨は、合流式下水道の雨天時の流入下水に含まれる懸濁物質の一部を前処理装置で沈殿分離させた後、ろ過装置で濁質除去を行なうろ過処理方法において、前処理として高分子凝集剤による凝集反応を組込み、懸濁物質の一部を凝集沈殿させた後、繊維ろ材を用いた高速繊維ろ過槽により濁質除去を行なうろ過処理方法であって、前処理装置の凝集処理により懸濁物質の除去性能を向上させ、ろ過装置に使用する繊維ろ材が、従来の粒状の浮上ろ材や砂などを利用したろ過技術に比べ、高い空隙率を有するので、高速での下水中の濁質除去を可能とし、高い濁質の除去率が得られる。
【0005】
高速繊維ろ過槽の運転は、降雨初期の汚濁負荷の高い時にはカチオン系高分子凝集剤の薬注処理で開始し、流入下水が設定濁度以下となった時に無薬注処理に切換える運転方法であって、雨天時の濁度の高い流入初期のファーストフラッシュ時に、流入下水に薬注処理を行い、雨水により希釈されて汚濁負荷が低くなった時点で、薬注処理から無薬注に切換えるので、凝集剤が節約できてランニングコストが安くなる。また、高速繊維ろ過槽の運転は、降雨初期の流入下水の発生時にはカチオン系高分子凝集剤の薬注処理で開始し、所定時間を超える流入下水には無薬注処理を行う運転方法でも良いもので、予測降水量や雨天の長さに応じて所定時間を設定して無薬注処理に切換えれば、薬注処理と無薬注処理を組み合わせることで、濁度の高い必要な時に薬注処理を行って濁質の高い除去率が得られ、濁度の低い時に無薬注処理を行うので、経済的な運転管理が図れる。そして、高速繊維ろ過槽に用いる繊維ろ材は、浮上性の繊維ろ材を使用して流入下水を上向流で供給させるもので、繊維ろ材は比重が軽く空隙率が大きいので、洗浄が容易となり洗浄水も少なくて良い。
【0006】
ろ過処理方法を実施するための繊維ろ材を用いた高速繊維ろ過装置は、合流式下水道の雨天時の流入下水に含まれる懸濁物質の一部を前処理装置で沈殿分離させた後、ろ過装置で濁質除去を行なうろ過処理方法において、凝集反応槽に流入した原水にカチオン系高分子凝集剤を添加して撹拌混合し、凝集汚泥を沈殿池に供給して懸濁物質の一部を分離した後、浮上性の繊維ろ材を配設した高速繊維ろ過槽に上向流で供給して濁質除去を行なうと共に、ろ過処理装置にタイマーまたは濁度計を配設して、降雨初期の濁質の高い流入下水の発生時には、凝集反応槽に高分子凝集剤を添加して、所定時間後または設定濁度以下となった時点で、無薬注処理に切換えるもので、SS、BOD等の懸濁物質の除去性能を向上させ、降雨パターンに応じて薬品使用の有無を使い分けることで、高い除去性能とともに薬品費を低減できるシステムとなる。
【0007】
高速繊維ろ過槽に用いる浮上性の繊維ろ材は、繊維径が異なる数種類のウエブ起毛状態の合成樹脂繊維を混合し、平滑化することなく加熱処理した板状態の不織性繊維ろ材を、発泡性樹脂に両側から接着して、ろ材寸法を3〜30mmの方形に形成し、見掛け比重が0.2〜0.8の浮上性の繊維ろ材としたもので、繊維ろ材は、SSをろ材間の空隙やろ材内部の繊維の間隙で捕捉するため、ろ層全体でSSの捕捉ができ高負荷に強い機能を発揮する。
【発明の効果】
【0008】
この発明は上記のように構成してあり、前段に凝集沈殿を組込む高速繊維ろ過の処理技術は、SS、BOD等の懸濁物質の除去性能を向上させ、降雨パターンに応じて薬注処理と無薬注処理を使い分けることで、経済的かつ法的処理水質の達成が図れる。従来の沈殿池や無薬注処理の繊維ろ材を用いたろ過装置では達成できないSS除去率とBOD除去率が得られ、高い除去性能とともに薬品費を低減できる経済性を発揮できるシステムとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
この発明の実施例を図面に基づき詳述すると、図1は繊維ろ材を用いたろ過処理装置の縦断面図であって、繊維ろ材を用いたろ過処理装置は、雨天時にポンプ場から排出される合流下水、または終末処理場における最初沈殿池や雨水沈殿池への流入下水に凝集剤を添加して撹拌混合する凝集反応槽1と、凝集処理を行った流入下水を横向流でフロックの一部を凝集沈殿させる凝集沈殿装置2と、上向流で固液分離を行なう高速繊維ろ過装置3で構成してある。凝集反応槽1に降雨時の流入下水を流入させる原水管4と、高分子凝集剤の薬注管5が連結してあり、降雨初期の数時間のファーストフラッシュ時のように汚濁負荷の高いときは流入下水に高分子凝集剤を添加して、凝集反応槽1に配設した撹拌機6で撹拌混合して薬注処理を行う。凝集反応槽1の排出側の槽壁に案内壁7が立設してあり、薬注処理の下水中の懸濁物質のフロックを生成させながら、凝集反応槽1の案内壁7から越流させて凝集反応槽1の流出管8から凝集沈殿装置2に流入させる。降雨時の流入下水を流入させる原水管4に濁度計Nを設置し、濁度計Nの設定濁度が50〜200NTU以下となった時点で流入下水に高分子凝集剤の添加を中止する。または、降雨時間や降雨量に応じて、タイマーTで時間を設定し、30分〜10時間の所定時間後に、流入下水は無薬注処理に切換える。或いは、所定時間を超える雨天時の流入下水に対しては無薬注処理を行なってもよい。
【0010】
図1に示すように、凝集沈殿装置2は、凝集反応槽1から薬注処理を行った下水を流入させる流入渠9と懸濁物質の一部を沈殿分離させる沈殿池10で構成してあり、流入渠9と沈殿池10の間に流入ゲート11を配設した流入口12が開口してある。沈殿池10の入口近傍に多孔板の流入案内板13が垂下してあり、流入汚水の整流と、高分子凝集剤との反応を促進させる。垂下した流入案内板13の下方の沈殿池10に凹状の集泥ピット10aを形成して、沈殿池10の傾斜させた槽底に汚泥掻寄機14が配設してある。流入渠9から沈殿池10に流入した汚水を横向流で流動させ、凝集反応を行った比重の重い懸濁物質を沈殿させて、汚泥掻寄機14で沈殿汚泥を集泥ピット10aに集積する。流入下水は高分子凝集剤の添加を中止して無薬注処理に切換えても、沈殿池10は薬注時の高分子凝集剤の影響が残り、SS、BODの懸濁物質の除去率は良好となる。
【0011】
図2は高速繊維ろ過装置の縦断面図であって、懸濁物質の一部を沈殿分離した流入下水を処理する高速繊維ろ過装置3は、沈殿池10から凝集処理を行った汚水を流入させる調圧槽15と、汚水を上向流で供給して繊維ろ層16で懸濁物質を分離する高速繊維ろ過槽17と、懸濁物質を分離した処理水を流入させる処理水流出渠18と、処理水流出渠18から流入した処理水に消毒処理を行って放流する雨水放流渠19と、高速繊維ろ過槽17の繊維ろ層16の洗浄排水を流出させる洗浄排水渠20とで構成してある。図1及び図2に示すように、沈殿池10と調圧槽15の間の側壁の上部に汚泥を流入させる越流口21と、その下部に沈殿汚泥を沈殿池10に排出するドレン口22が開口してあり、ドレン口22はドレンゲート23で通常は閉止してある。図2に示すように、調圧槽15の槽底に原水流入ゲート24を配設した供給口25が開口してあり、調圧槽15の原水を高速繊維ろ過槽17に供給し、調圧槽15に貯水する水頭圧で高速繊維ろ過槽17への汚水の供給圧を一定に保持させる。高速繊維ろ過槽17、調圧槽15及び沈殿池10の槽底を集泥ピット10aに向かって傾斜させてあり、調圧槽15のドレンゲート23と原水流入ゲート24を開放して凝集させた沈殿汚泥を集泥ピット10aに排出できるようにしてある。
【0012】
図3は高速繊維ろ過槽の縦断面図であって、高速繊維ろ過槽17の繊維ろ層16の上部に多数の通孔を有するろ材支持板26が配設してあり、上向流ろ過時のろ材支持とろ材流出を防止させる。繊維ろ層16の下方にろ材が旋回流動できる、ろ層展開部を有する汚水の流入室27を形成し、ろ材支持板26の上方を分離水の処理水室28としてある。調圧槽15の槽底から繊維ろ層16の流入室27に汚水を流入させて、上向流の汚水でろ材支持板26の下部に繊維ろ層16を形成させ、繊維ろ層16で懸濁物質を捕捉して、処理水をろ材支持板26の上方の処理水室28に流入させる。
【0013】
図4は繊維ろ材の斜視図であって、高速繊維ろ過槽17に使用する浮上性の繊維ろ材29は、繊維径が異なる3種類のウエブ起毛状態の合成樹脂繊維を混合し、平滑化することなく加熱処理した板状態の不織性繊維ろ材を、発泡性樹脂に両側から接着して、ろ材寸法を3〜30mmの方形に形成し、見掛け比重が0,2〜0.8の繊維ろ材29としてある。3種類の合成樹脂繊維は、ポリプロピレンの芯にポリエチレンを被覆した繊度が3〜10デニールの熱融着性複合繊維の第一フィラメント29aと、繊度が3〜10デニールのポリプロピレン繊維の第二フィラメント29bと、ポリプロピレンの芯にポリエチレンを被覆した繊度が1.5〜6デニールの熱融着性複合繊維の第三フィラメント29cの三種類の繊維を混合し、ニードルパンチ法により布形化し、ウエブ起毛状態を平滑化することなく加熱処理して板状態としてある。発泡性樹脂板29dは、比重が0.1〜0.5のポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステルなどを発泡シートに形成してある。発泡性樹脂に両側から接着した不織性繊維ろ材は、ろ過性能を発揮できる強度、耐久性、浮上性を有する繊維ろ材29となる。繊維ろ材29は処理すべき原水の性状に応じて、見掛け比重を0.2〜0.8の範囲で調整できる。
【0014】
図2及び図3に示すように、高速繊維ろ過槽17の処理水室28には処理水流出渠18に開口した処理水の流出口42と、洗浄排水渠20に開口した洗浄排水の洗浄排水口30が配設してあり、流出口42の位置は洗浄排水口30より高く設定してある。処理水流出渠18の槽底に高速繊維ろ過槽17の流入室27に開口した洗浄水口31が設けてあり、洗浄排水口30と洗浄水口31には、洗浄排水ゲート32と洗浄水ゲート33が配設してある。常態においては、洗浄排水口30の洗浄排水ゲート32と洗浄水口31の洗浄水ゲート33を閉止し、処理水室28の処理水を処理水流出渠18に排水し、処理水流出渠18から雨水放流渠19に越流させ、消毒処理を行って公共用水域に放流する。
【0015】
図2に示すように、高速繊維ろ過槽17の流入室27の洗浄水口31の近傍に洗浄用空気管34が配設してあり、繊維ろ層16が目詰まりした時に、繊維ろ層16の下方から空気を供給する。高速繊維ろ過槽17の繊維ろ層16が目詰まりした時には、調圧槽15の供給口25を原水流入ゲート24で閉止して、高速繊維ろ過槽17への汚水の供給を停止し、洗浄用空気管34から繊維ろ層16の下方に空気を供給しながら、洗浄排水口30の洗浄排水ゲート32と洗浄水口31の洗浄水ゲート33を開放すれば、処理水流出渠18に貯水する処理水が高速繊維ろ過槽17の流入室27に流入し、繊維ろ層16を形成する繊維ろ材29を、流入室27のろ層展開部で旋回流動させて、繊維ろ材29から分離した懸濁物質と洗浄排水を洗浄排水渠20に排出させる。繊維ろ層16を形成する繊維ろ材29は空隙率が大きく、ろ材が軽いので、流動性が良く、洗浄が容易となる。繊維ろ材29は合成樹脂繊維なので捕捉した懸濁物質の剥離性も良い。なお、符号35は、洗浄排水渠20の底部に沈殿する汚泥を高速繊維ろ過槽17の流入室27に排出するドレン口である。
【0016】
図5は洗浄装置を配設した高速繊維ろ過装置の他の実施例であって、高速繊維ろ過槽17aの流入室27aと処理水流出渠18aの槽底の間に洗浄水弁36を介装した洗浄水管37が連結してある。洗浄水管37の洗浄水弁36を開放すれば、処理水流出渠18aに貯水する処理水を繊維ろ層16aの下方の流入室27aに流入させるようにしてある。洗浄水管37の洗浄水弁36より流入室27a側と洗浄排水渠20aの槽底の間に排水弁38を介装した排水管39が分岐して連結してある。高速繊維ろ過槽17aの繊維ろ層16aが目詰まりした時に、洗浄水弁36を閉止した状態で排水弁38を開放すれば、処理水室28aの水頭圧により流入室27aの汚水を洗浄排水渠20aに排水し、高速繊維ろ過槽17aの水位をろ材支持板26aの下方近傍まで低下させるようにしてある。
繊維ろ層16aが目詰まりした時に、繊維ろ層16aの下方から空気を供給する洗浄用空気管34aに洗浄用ブロア40が接続してある。
【0017】
図6は他の実施例の大型の高速繊維ろ過槽の概念図であって、大型の高速繊維ろ過槽17bにあっては、繊維ろ層16bにろ材分割プレート41・・・を等間隔に垂設してある。高速繊維ろ過槽17bに充填する繊維ろ層16bのろ材厚みを標準1mとすることが可能であり、繊維ろ層16bにろ材分割プレート41・・・を等間隔に垂設することにより、繊維ろ材29・・・の均一な洗浄と洗浄後の均一な繊維ろ層16bの形成が可能となる。この発明の実施例では、高速繊維ろ過槽17bを分割するろ材分割プレート41・・・の間隔を3m程度とし、流入室27bのろ層展開部を0.8m、繊維ろ層16bの厚みを1.0m、処理水室28bの水深を0.7mとすることができる。大きい空隙率の繊維ろ材29を使用することにより、雨天時の未処理下水のような高濃度の流入下水を、1,000〜3,000m/日と、大量に高速処理を行うことができる。なお、符号34bは分割した繊維ろ層16bに配設した洗浄用空気管である。
【0018】
図1に示す繊維ろ材を用いたろ過処理装置の雨天時の運転は、降水時にポンプ場から排出される合流下水、または終末処理場における最初沈殿池や雨水沈殿池への流入水の原水を凝集反応槽1に流入させ、運転員が操作盤を操作する時に、降雨パターンに応じて薬注処理と無薬注処理を選択して運転を開始する。図7は操作員が選定する場合の操作フローであって、雨天時の雨が降り続く長雨か、晴天日数が長く続いた後の雨天か、或いは、予測雨量等に基づき、操作員は高分子凝集剤の薬注をタイマー方式か濁度計方式かを決定してスイッチを操作する。図8はタイマーによる運転の操作フローであって、降雨初期のファーストフラッシュ時の汚濁負荷の高い時は、降雨時間や降雨量に応じて30分〜10時間の所定時間の間、高分子凝集剤を原水に添加して薬注処理を行うようタイマーTを設定し、30分〜10時間の設定時間を超える雨天時の流入下水に対しては高分子凝集剤の添加を停止させ、無薬注処理に切換える。
図9は濁度計による運転の操作フローであって、降雨時間や降雨量に応じて、タイマーTを設定し、流入下水に高分子凝集剤の添加を開始し、タイマーTをONにする。原水の流入経路に設置した濁度計Nに基づき、流入下水中の懸濁物質が設定濁度(50〜200NTU)より高く検出された時には、高分子凝集剤の添加を継続し、タイマーTの設定時間を超えた時点で、高分子凝集剤の添加を停止させ、無薬注処理に切換える。タイマーTの設定時間内に、降雨開始後数時間経過し雨水により希釈されて汚濁負荷が低くなり、或いは、降り続く雨で流入下水の水質が一定値以下となり、濁度計Nで検知する流入下水中の濁度が設定濁度より低く5〜10分継続して検知された時には、薬注処理から無薬注処理に切換える。図10は他の濁度計による運転の操作フローであって、降雨時間や降雨量に応じて、タイマーTを設定し、流入下水に高分子凝集剤の添加を開始し、タイマーTをONにする。原水の流入経路に設置した濁度計Nに基づき、流入下水中の懸濁物質が設定濁度(50〜200NTU)より高く検出された時には、濁度計Nで検知しながら高分子凝集剤の添加を継続する。流入下水の水質が一定値以下となり、濁度計Nで検知する流入下水中の濁度が設定濁度より低く5〜10分継続して検知された時には、薬注処理から無薬注処理に切換える。合流式下水道の改善技術について、前段に凝集沈殿を組込む高速繊維ろ過システムは、降雨パターンに応じて薬注処理と無薬注処理を使い分けることで、高い除去性能と経済性が期待できる。
【0019】
上記の構成に基づき、図1の繊維ろ材を用いたろ過処理装置の雨天時について、ろ過工程と洗浄工程のサイクルを説明する。
(1)ろ過工程
雨天時にポンプ場から排出される合流下水、または終末処理場における最初沈殿池や雨水沈殿池への流入水を凝集反応槽1に流入させ、高分子凝集剤を添加して撹拌機6で撹拌混合して凝集フロックを形成する。凝集フロックを形成した流入下水を沈殿池10に流入させ、比重の重い懸濁物質を沈殿させて流入下水を調圧槽15に投入する。流入下水は調圧槽15から高速繊維ろ過槽17の下部より流入し、ろ過槽上部に形成された浮上性の繊維ろ層16を上向流で通過して、流入下水中のSSが繊維ろ層16に捕捉・除去される。処理水は処理水流出渠18に流出し、雨水放流渠19の消毒設備を経て放流される。ろ過が進行すると、捕捉したSSによりろ過損失水頭が上昇し、これに伴い調圧槽15の水位が上昇する。調圧槽15の水位が所定の水位になると、洗浄工程に切換える。
(2)洗浄工程:水抜工程
水抜工程では、調圧槽15と高速繊維ろ過槽17の間の原水流入ゲート24を閉じて原水の流入を停止し、排水弁(図示せず)を開いて流入室27の槽底に沈殿した比較的比重の大きい沈殿物を排出する。水位がろ材支持板26から設定水位(0.3m)まで低下すると、排水弁を閉じて水抜工程を完了する。この水抜工程は、次工程の空気撹拌においてろ過圧力によりろ材支持板26で圧密状の繊維ろ層16を分散しやすくし、同時に流入室27に沈降した比較的比重の大きい沈殿物を排出する。
(3)洗浄工程:撹拌工程
撹拌工程ではろ層下部に設けた洗浄用空気管34より空気を供給し、ろ過圧力により形成された繊維ろ層16を分散し、繊維ろ材29を流動状態にすることで捕捉したSS等を排水中に解離させ、次に、洗浄排水ゲート32を開く。
(4)洗浄工程:撹拌・排水工程
撹拌・排水工程では、繊維ろ材29の再生を行うとともに、捕捉したSS等を系外に排出するために、洗浄用空気により繊維ろ材29を撹拌流動させながら洗浄水ゲート33を開く、流入室27の下部からろ過水を通水して処理水室28の上部より洗浄排水を抜き、洗浄排水渠20に流出させる。
【実施例】
【0020】
下水道施行令において、合流式下水道からの放流水が雨水により大きな影響を受ける時には、処理区域毎にBOD濃度を40mg/L以下とすることが示されている。そこで、雨天時の流入下水のBOD水質データについて、雨水ポンプ起動後の経過時間と、流入下水のBOD濃度の分布傾向を、某浄化センターにおいて調査した。雨天時流入下水は、流入水質の分析から降雨初期にBOD濃度が高く、時間の経過とともにBOD濃度は低下する傾向がある。高濃度の流入下水は、雨水流入開始から数時間以内のファーストフラッシュ時に発生しており、BOD濃度が100mg/Lを超える流入下水の発生は、5時間経過後は非常に少なくなっている。また、合流式下水道における雨天時の流入下水は、晴天日数が長く続いた後の降雨初期の流入下水は、懸濁物質の濃度が高くなる。梅雨時のように長く降り続く雨天時の流入下水は、懸濁物質の濃度が低くなる傾向がある。その汚濁濃度の状況を表1に示す。
【0021】
【表1】
BOD水質データに基づき、雨天時の流入下水に対して,凝集剤の選定試験、反応時間および薬注率変化の基礎実験を行った。先ず、凝集剤の種類を次のように選択した。
a.無機凝集剤:PAC(ポリ塩化アルミニウム)、硫酸バンド(硫酸アルミニウム)、ポリ硫酸第二鉄、塩化第二鉄
b.高分子凝集剤:カチオン系、両性系、アニオン系
の7種類の凝集剤を対称として、流入下水200CCを分取したビーカーに、5〜30mg/Lの無機凝集剤と、1〜10mg/Lの高分子凝集剤を個別に注入し、ジャーテスターにより凝集状態を確認した。
【0022】
先ず、PAC、硫酸バンド、ポリ硫酸第二鉄、及び塩化第二鉄の無機凝集剤を使用して凝集試験を行った。その凝集剤選定試験の実験結果を表2に示す。無機凝集剤を単独(一液法)で用いた場合は、薬品注入率が最も低かったものはPACであり、10〜30mg/L必要であった。硫酸バンドは,25〜40mg/L、ポリ硫酸第二鉄と塩化第二鉄は20〜40mg/L必要であった。また、ポリ硫酸第二鉄と塩化第二鉄では、薬品注入後、着色が見られた。PACを10mg/L注入して凝集させたSSは、5分程度静置することで完全に沈降し、上澄水のSS除去率は65%程度であった。この結果により、無機凝集剤による撹拌時間の確認は、PACを使用することとした。
【0023】
【表2】
次に、カチオン系、両性系、及びアニオン系の高分子凝集剤を使用して凝集試験を行った。その凝集剤選定試験の実験結果を表3に示す。高分子凝集剤を単独(一液法)で用いた場合は、カチオン系が良い凝集状態であり、薬品注入率は2〜5mg/L必要であった。カチオン系ポリマーの種類については、分子量、イオン濃度による凝集効果に大きな違いはなかったが、分子量が大きいほど薬品注入率が下がる傾向が見られた。カチオン系ポリマーを2mg/L注入して凝集させたSSは、5分程度静置することで完全に沈降し、上澄水のSS除去率は82%程度であった。この結果により、高分子凝集剤による撹拌時間の確認は、カチオン系ポリマーを使用することとした。
【0024】
【表3】
次に、晴天時の汚水を用いて凝集反応槽で凝集剤を注入した後、凝集反応時間を変化させ横流沈殿によるSS除去率で評価することにした。無機凝集剤の凝集剤選定試験で薬品注入率が最も低かったPACを使用し、晴天時の汚水に対してPACを10mg/Lを注入し,凝集反応槽における凝集反応時間を変化させ、凝集反応時間変化実験を行った。沈殿時間8分,水面積負荷420m3/(m2・日)で横流沈殿させたSS除去率を表4に示す。その結果は、凝集反応時間を長くするに従いSS除去率は向上し,凝集反応時間50秒でSS除去率は8%程度であった。
【0025】
【表4】
次に、無機凝集剤のPACと同じ条件で、高分子凝集剤の凝集剤選定試験で凝集状態の最も良いカチオン系ポリマーを使用して撹拌時間とSS除去率を確認した。ポリマー凝集反応時間とSS除去率の関係を表5に示す。その結果は、凝集反応時間を長くするに従いSS除去率は向上し,凝集反応時間30秒でSS除去率は13%程度,凝集反応時間50秒でSS除去率は16%程度であった。
【0026】
【表5】
薬品注入率変化実験を、薬品注入率が最も低かった無機凝集剤のPACを使用して行った。
a.凝集反応時間は一液法:10秒、30秒、50秒
b.沈殿時間:8分(水面積負荷420m3/(m2・日))
晴天時の汚水を用いて凝集反応槽で凝集剤を注入した後、凝集反応時間を変化させ横流沈殿によるSS除去率で評価した。PAC注入率とSS除去率の関係を表6に示す。その結果は、PAC注入率を高くするに従いSS除去率は向上するが、30mg/Lを超えるとSS除去率の向上が小さくなる傾向を示した。PAC注入率30mg/LにおいてSS除去率は10%程度であった。
【0027】
【表6】
次に、凝集状態の最も良いカチオン系ポリマー(一液法)を使用して、薬品注入率変化実験を行った。
a.カチオン系ポリマー:1、2、4、6mg/L
b.凝集反応時間一液法:30秒
c.沈殿時間:8分(水面積負荷420m3/(m2・日))
晴天時の汚水を用いて凝集反応槽でポリマーを変化させて注入した後、凝集反応時間を30秒とし、横流沈殿によるSS除去率で評価した。カチオン系ポリマーの注入率とSS除去率の関係を表7に示す。その結果は、カチオン系ポリマー注入率を高くするに従いSS除去率は向上し,注入率4mg/LにおいてSS除去率22%程度,注入率6mg/LにおいてSS除去率24%程度であった。基礎実験の結果、合流下水に添加する凝集剤は、高分子凝集剤のカチオン系ポリマーが無機凝集剤のPACよりSS除去率が良く、経済的であることが分かる。
【0028】
【表7】
次に、実証実験機を使用して、上記の凝集剤の選定試験、反応時間および薬注率変化の基礎実験に基づき、SS除去性能とBOD除去性能を調査した。雨天時の高濃度の流入下水は、雨水流入開始から数時間以内のファーストフラッシュ時に発生するため、懸濁物質除去は高速ろ過が必要となる。そこで、従来の粒状の浮上ろ材や砂などを利用したろ過技術に比べ、高い空隙率を持ち、高速ろ過が確保できる繊維ろ材を使用する。繊維ろ材は、SSをろ材間の空隙やろ材内部の繊維の間隙で捕捉するため、表層ろ過になりにくく、ろ層全体でSSの捕捉ができ高負荷に強い特徴を有している。実証実験機に使用する高速繊維ろ過槽と繊維ろ材を次のように選定した。
a.ろ過槽:ろ過面積0.5m2、ろ層高さ1.0m×2台(交互運転)
b.繊維ろ材:材質がPP(ポリプロピレン)およびPE(ポリエチレン)製繊維により構成された8mm×8mm×8mmの立方体
図11に実証実験機(凝集沈殿+高速繊維ろ過)の実験フローを示す。実証実験機は、雨天時にポンプ場から排出される合流下水に凝集剤を添加して撹拌混合する凝集反応槽1と、凝集反応させたフロックの一部を沈殿させる凝集沈殿装置2と、高速繊維ろ過装置3で構成してある
雨天時流入下水に対して実証実験機(凝集沈殿+高速繊維ろ過)の実験条件を設定した。
a.凝集沈殿:各降雨に対する高分子凝集剤のカチオン系ポリマーの注入量4mg/L
b.凝集反応時間:30秒
c.沈殿時間:8分(水面積負荷420m3/(m2・日))
d.運転時間:降雨開始後200分実施、200分以降は無薬注で、沈殿(沈殿時間8分)+高速繊維ろ過、の運転を行う
e.ろ過速度:1,500、2,000、2,500m/日
なお、基礎実験の結果、凝集剤は高分子凝集剤一液とし、二液法については、基礎実験を行ったが経済性に劣るため実証実験機による実験の対象から除外した。また、合流式下水道の終末処理場における最初沈殿池への流入水に対する懸濁物質の除去の性能目標を、
1.SS除去率をシステム全体において80%以上
2.BOD除去率システム全体において75%以上
に設定した。実証実験機(凝集沈殿+高速繊維ろ過)による実験条件を表8に示す。
【0029】
【表8】
表8の実験条件に基づき、3パターンの降雨に対してろ過速度を変化させ、自動運転してSS除去性能を調査した。沈殿処理は薬注(凝集)処理による沈降速度の向上を期待して沈殿時間を8分(水面積負荷420m3/(m2・日))としたが,薬注時の平均SS除去率は17.2%であった。高速繊維ろ過における薬注時のSS除去率は93.7〜96.0%であり、ろ過速度1,500〜2,500m/日における平均SS除去率は大きく向上した。無薬注による降雨開始200分以降の沈殿池は薬注の影響が残り、沈殿時間8分の平均SS除去率は11.2%で大きく低下していた。無薬注時の高速繊維ろ過における平均SS除去率は88.7%で良好な結果となった。また,ろ過速度の違いによる性能差は見られなかった。システム全体では高速繊維ろ過によるSS除去性能の向上により,薬注時のSS除去率は94.3〜96.8%と高い除去性能を示した。
表9は流入負荷に対するSS除去性能(%)を示し、表10は流入下水に対する処理水のSS濃度(mg/L)の実証結果を示す。
【0030】
【表9】
【0031】
【表10】
次に、実験条件に基づき、3パターンの降雨に対してろ過速度を変化させ、自動運転してBOD除去性能を調査した。沈殿処理は沈殿時間を8分(水面積負荷420m3/(m2・日))における薬注時の平均BOD除去率は16.4%であり、無薬注時は14.2%であった。高速繊維ろ過における薬注時のBOD除去率は73.2〜75.1%と大きく向上した。また,ろ過速度の違いによる性能差は見られなかった。システム全体では高速繊維ろ過によるBOD除去性能の向上により,薬注時のBOD除去率は77.2〜79.8%と高い除去性能を示し,目標性能の75%以上の結果となった。表11は流入負荷に対するBOD除去性能(%)を示し、表12は流入下水に対する処理水のBOD濃度(mg/L)の実証結果を示す。
【0032】
【表11】
【0033】
【表12】
上記の雨天時の流入下水のBOD濃度の分布傾向と、BOD水質データに基づく凝集剤の選定試験、反応時間および薬注率変化の基礎実験と、実証試験の結果から、次の条件で実施することにした。前処理としてカチオン系高分子凝集剤による凝集反応を組込み、凝集沈殿を行った後に浮上性繊維ろ材を用いた上向流ろ過方式により、例えば、ろ過速度1,000〜3,000m/日で高速ろ過を行なえば、従来の沈殿池や無薬注処理の繊維ろ材を用いたろ過装置では達成できない高いSS除去率とBOD除去率が得られる。
a.降雨初期のファーストフラッシュ時のように汚濁負荷の高いときは薬注処理を行い、所定時間(3〜5時間)を超える雨天時の流入下水に対しては無薬注処理を行う。
b.或いは、降雨開始後数時間経過し雨水により希釈されて汚濁負荷が低くなった時点を濁度計で検知し、無薬注処理に切り替えることも可能である。
c.降り続く雨に対しては、原水の水質が一定値以下になれば薬注処理から無薬注処理に切り替えることにより、システムとして高い除去性能と経済性が期待できる。
d.先行晴天日数が長い後の雨天時、流入下水に対しては薬注処理を行う。
合流式下水道の改善技術について、前段に凝集沈殿を組込む高速繊維ろ過の処理技術は、懸濁物質(SS、BOD等)の除去性能を向上させ、降雨パターンに応じて使い分けることで、経済的かつ法的処理水質の達成が図れる。高い除去性能とともに薬品費を低減できる経済性を発揮できるシステムとなることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
この発明は、合流式下水道において、前段に凝集沈殿を組込み、高速繊維ろ過の処理技術を利用して、SS、BOD等の懸濁物質の除去性能を向上させ、降雨パターンに応じて薬注処理と無薬注処理を使い分け、経済的かつ法的処理水質を達成し、高い除去性能と薬品費を低減できる繊維ろ材を用いたろ過処理方法とそのろ過装置となる。従って、雨天時にポンプ場から排出される合流下水、または終末処理場における最初沈殿池や雨水沈殿地への流入水を対象とした、下水中のSS、BOD等の懸濁物質を除去する繊維ろ材を用いたろ過処理方法とそのろ過装置に適するものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る繊維ろ材を用いたろ過処理装置の縦断面図である。
【図2】同じく、高速繊維ろ過槽の縦断面図である。
【図3】同じく、洗浄装置を配設した高速繊維ろ過装置の縦断面図である。
【図4】本発明に使用する繊維ろ材の斜視図である。
【図5】同じく、他の実施例の、洗浄装置を配設した高速繊維ろ過装置の縦断面図である。
【図6】同じく、他の実施例の、大型の高速繊維ろ過槽の概念図である。
【図7】同じく、操作員が選定する場合の操作フローである。
【図8】同じく、タイマーによる運転の操作フローである。
【図9】同じく、濁度計による運転の操作フローである。
【図10】同じく、濁度計による運転の操作フローである。
【図11】同じく、実証実験機(凝集沈殿+高速繊維ろ過)の実験フローを示す。
【符号の説明】
【0036】
1 凝集反応槽
10 沈殿池
17、17a、17b 高速繊維ろ過槽
29 繊維ろ材
29a 第一フィラメント
29b 第二フィラメント
29c 第三フィラメント
29d 発泡性樹脂板
N 濁度計
T タイマー
【技術分野】
【0001】
この発明は、生活廃水等の下水に雨水を合流させる合流式下水道の濁質除去に関し、特に、雨天時にポンプ場から排出される合流下水、または終末処理場における最初沈殿池や雨水沈殿池への流入水を対象として、原水中のSS、BOD等の懸濁物質を除去する繊維ろ材を用いたろ過処理方法とそのろ過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
古くから下水道の普及に取り組んできた都市では、汚水と雨水を同一の管渠で速やかに排除する合流式下水道を採用し、公衆衛生の向上と、浸水防除を同時に行うことを目的とした整備が進められてきた。合流式下水道は、雨天時に遮集管渠能力を超える雨水が汚水に混入し、未処理下水が公共用水域に放流されて生態系への影響や衛生学的安全性に係る影響が懸念されている。近年の下水道施行令では、合流式下水道からの放流水について雨水の影響が大きい時は、処理区域毎にSS、BOD濃度を40mg/L以下とすることが示されている。雨天時の流入下水の高濃度は数時間以内のファーストフラッシュ時に発生するため、雨天時にポンプ場から排出される下水、または終末処理場における最初沈殿池や雨水沈殿池への流入水を対象として、合流下水からSS、BOD等の懸濁物質の除去が必要である。近年浮上性の繊維ろ材を用いたろ過技術が、従来技術の懸濁物質を除去する雨水沈殿池より効率的で懸濁物質除去性能を超えるろ過技術として注目を集めている。そして、雨天時の未処理下水の処理装置としては、繊維ろ材を使用したろ過槽に、下水を上向流で供給して高速ろ過を行なう無薬注処理のろ過装置は、例えば、特許文献1に記載してあるように、この発明の出願人が提案している。また、雨天時の大流量であるか、非雨天時の小流量であるかに応じて、高速ろ過モードと小流量の通常ろ過モード(無薬注)に切換える浮上性の粒状ろ材のろ過層を形成する移動床式ろ過装置も、例えば、特許文献2に記載してあるように公知である。
【特許文献1】特開2004−188265号公報(段落番号0011、図1及び図2)
【特許文献2】特開2004−113940号公報(要約の解決手段、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の夾雑物を分離した下水から懸濁物質を除去する繊維ろ材を用いた高速繊維ろ過装置は、下水の無薬注処理が可能であり、薬品管理や溶解作業が不要で運転管理が容易で、ランニングコストも安価であるが、SS、BOD等の濁質の除去性能に限界がある。浮上性の粒状ろ材を用いた移動床式ろ過装置は、抜き出した浮上性の粒状ろ材を洗浄して、下水中の濁質除去の連続処理が可能であるが、ろ材は浮上性の小さい粒径であり、移動床式ろ過装置の大容量設備の設置が困難である。また、雨天時と非雨天時で薬注の有無を切換えるもので、雨天時には全て薬注を行うものとなっており、経済的に負担が大きいものである。そして、ろ過槽から抜出した浮上ろ材をろ材循環ポンプで撹拌しても、懸濁物質を剥離できていないろ材が洗浄時に洗浄排水とともに流出する恐れがある。この発明は、合流式下水道の雨天時の流入下水において、前段に凝集沈殿を組込み、高速繊維ろ過の処理技術を利用して、SS、BOD等の懸濁物質の除去性能を向上させ、降雨パターンに応じて凝集剤の使用の有無を使い分け、経済的かつ法的処理水質を達成し、高い除去性能と薬品費を低減できる繊維ろ材を用いたろ過処理方法とそのろ過装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明に係わる繊維ろ材を用いたろ過処理方法の要旨は、合流式下水道の雨天時の流入下水に含まれる懸濁物質の一部を前処理装置で沈殿分離させた後、ろ過装置で濁質除去を行なうろ過処理方法において、前処理として高分子凝集剤による凝集反応を組込み、懸濁物質の一部を凝集沈殿させた後、繊維ろ材を用いた高速繊維ろ過槽により濁質除去を行なうろ過処理方法であって、前処理装置の凝集処理により懸濁物質の除去性能を向上させ、ろ過装置に使用する繊維ろ材が、従来の粒状の浮上ろ材や砂などを利用したろ過技術に比べ、高い空隙率を有するので、高速での下水中の濁質除去を可能とし、高い濁質の除去率が得られる。
【0005】
高速繊維ろ過槽の運転は、降雨初期の汚濁負荷の高い時にはカチオン系高分子凝集剤の薬注処理で開始し、流入下水が設定濁度以下となった時に無薬注処理に切換える運転方法であって、雨天時の濁度の高い流入初期のファーストフラッシュ時に、流入下水に薬注処理を行い、雨水により希釈されて汚濁負荷が低くなった時点で、薬注処理から無薬注に切換えるので、凝集剤が節約できてランニングコストが安くなる。また、高速繊維ろ過槽の運転は、降雨初期の流入下水の発生時にはカチオン系高分子凝集剤の薬注処理で開始し、所定時間を超える流入下水には無薬注処理を行う運転方法でも良いもので、予測降水量や雨天の長さに応じて所定時間を設定して無薬注処理に切換えれば、薬注処理と無薬注処理を組み合わせることで、濁度の高い必要な時に薬注処理を行って濁質の高い除去率が得られ、濁度の低い時に無薬注処理を行うので、経済的な運転管理が図れる。そして、高速繊維ろ過槽に用いる繊維ろ材は、浮上性の繊維ろ材を使用して流入下水を上向流で供給させるもので、繊維ろ材は比重が軽く空隙率が大きいので、洗浄が容易となり洗浄水も少なくて良い。
【0006】
ろ過処理方法を実施するための繊維ろ材を用いた高速繊維ろ過装置は、合流式下水道の雨天時の流入下水に含まれる懸濁物質の一部を前処理装置で沈殿分離させた後、ろ過装置で濁質除去を行なうろ過処理方法において、凝集反応槽に流入した原水にカチオン系高分子凝集剤を添加して撹拌混合し、凝集汚泥を沈殿池に供給して懸濁物質の一部を分離した後、浮上性の繊維ろ材を配設した高速繊維ろ過槽に上向流で供給して濁質除去を行なうと共に、ろ過処理装置にタイマーまたは濁度計を配設して、降雨初期の濁質の高い流入下水の発生時には、凝集反応槽に高分子凝集剤を添加して、所定時間後または設定濁度以下となった時点で、無薬注処理に切換えるもので、SS、BOD等の懸濁物質の除去性能を向上させ、降雨パターンに応じて薬品使用の有無を使い分けることで、高い除去性能とともに薬品費を低減できるシステムとなる。
【0007】
高速繊維ろ過槽に用いる浮上性の繊維ろ材は、繊維径が異なる数種類のウエブ起毛状態の合成樹脂繊維を混合し、平滑化することなく加熱処理した板状態の不織性繊維ろ材を、発泡性樹脂に両側から接着して、ろ材寸法を3〜30mmの方形に形成し、見掛け比重が0.2〜0.8の浮上性の繊維ろ材としたもので、繊維ろ材は、SSをろ材間の空隙やろ材内部の繊維の間隙で捕捉するため、ろ層全体でSSの捕捉ができ高負荷に強い機能を発揮する。
【発明の効果】
【0008】
この発明は上記のように構成してあり、前段に凝集沈殿を組込む高速繊維ろ過の処理技術は、SS、BOD等の懸濁物質の除去性能を向上させ、降雨パターンに応じて薬注処理と無薬注処理を使い分けることで、経済的かつ法的処理水質の達成が図れる。従来の沈殿池や無薬注処理の繊維ろ材を用いたろ過装置では達成できないSS除去率とBOD除去率が得られ、高い除去性能とともに薬品費を低減できる経済性を発揮できるシステムとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
この発明の実施例を図面に基づき詳述すると、図1は繊維ろ材を用いたろ過処理装置の縦断面図であって、繊維ろ材を用いたろ過処理装置は、雨天時にポンプ場から排出される合流下水、または終末処理場における最初沈殿池や雨水沈殿池への流入下水に凝集剤を添加して撹拌混合する凝集反応槽1と、凝集処理を行った流入下水を横向流でフロックの一部を凝集沈殿させる凝集沈殿装置2と、上向流で固液分離を行なう高速繊維ろ過装置3で構成してある。凝集反応槽1に降雨時の流入下水を流入させる原水管4と、高分子凝集剤の薬注管5が連結してあり、降雨初期の数時間のファーストフラッシュ時のように汚濁負荷の高いときは流入下水に高分子凝集剤を添加して、凝集反応槽1に配設した撹拌機6で撹拌混合して薬注処理を行う。凝集反応槽1の排出側の槽壁に案内壁7が立設してあり、薬注処理の下水中の懸濁物質のフロックを生成させながら、凝集反応槽1の案内壁7から越流させて凝集反応槽1の流出管8から凝集沈殿装置2に流入させる。降雨時の流入下水を流入させる原水管4に濁度計Nを設置し、濁度計Nの設定濁度が50〜200NTU以下となった時点で流入下水に高分子凝集剤の添加を中止する。または、降雨時間や降雨量に応じて、タイマーTで時間を設定し、30分〜10時間の所定時間後に、流入下水は無薬注処理に切換える。或いは、所定時間を超える雨天時の流入下水に対しては無薬注処理を行なってもよい。
【0010】
図1に示すように、凝集沈殿装置2は、凝集反応槽1から薬注処理を行った下水を流入させる流入渠9と懸濁物質の一部を沈殿分離させる沈殿池10で構成してあり、流入渠9と沈殿池10の間に流入ゲート11を配設した流入口12が開口してある。沈殿池10の入口近傍に多孔板の流入案内板13が垂下してあり、流入汚水の整流と、高分子凝集剤との反応を促進させる。垂下した流入案内板13の下方の沈殿池10に凹状の集泥ピット10aを形成して、沈殿池10の傾斜させた槽底に汚泥掻寄機14が配設してある。流入渠9から沈殿池10に流入した汚水を横向流で流動させ、凝集反応を行った比重の重い懸濁物質を沈殿させて、汚泥掻寄機14で沈殿汚泥を集泥ピット10aに集積する。流入下水は高分子凝集剤の添加を中止して無薬注処理に切換えても、沈殿池10は薬注時の高分子凝集剤の影響が残り、SS、BODの懸濁物質の除去率は良好となる。
【0011】
図2は高速繊維ろ過装置の縦断面図であって、懸濁物質の一部を沈殿分離した流入下水を処理する高速繊維ろ過装置3は、沈殿池10から凝集処理を行った汚水を流入させる調圧槽15と、汚水を上向流で供給して繊維ろ層16で懸濁物質を分離する高速繊維ろ過槽17と、懸濁物質を分離した処理水を流入させる処理水流出渠18と、処理水流出渠18から流入した処理水に消毒処理を行って放流する雨水放流渠19と、高速繊維ろ過槽17の繊維ろ層16の洗浄排水を流出させる洗浄排水渠20とで構成してある。図1及び図2に示すように、沈殿池10と調圧槽15の間の側壁の上部に汚泥を流入させる越流口21と、その下部に沈殿汚泥を沈殿池10に排出するドレン口22が開口してあり、ドレン口22はドレンゲート23で通常は閉止してある。図2に示すように、調圧槽15の槽底に原水流入ゲート24を配設した供給口25が開口してあり、調圧槽15の原水を高速繊維ろ過槽17に供給し、調圧槽15に貯水する水頭圧で高速繊維ろ過槽17への汚水の供給圧を一定に保持させる。高速繊維ろ過槽17、調圧槽15及び沈殿池10の槽底を集泥ピット10aに向かって傾斜させてあり、調圧槽15のドレンゲート23と原水流入ゲート24を開放して凝集させた沈殿汚泥を集泥ピット10aに排出できるようにしてある。
【0012】
図3は高速繊維ろ過槽の縦断面図であって、高速繊維ろ過槽17の繊維ろ層16の上部に多数の通孔を有するろ材支持板26が配設してあり、上向流ろ過時のろ材支持とろ材流出を防止させる。繊維ろ層16の下方にろ材が旋回流動できる、ろ層展開部を有する汚水の流入室27を形成し、ろ材支持板26の上方を分離水の処理水室28としてある。調圧槽15の槽底から繊維ろ層16の流入室27に汚水を流入させて、上向流の汚水でろ材支持板26の下部に繊維ろ層16を形成させ、繊維ろ層16で懸濁物質を捕捉して、処理水をろ材支持板26の上方の処理水室28に流入させる。
【0013】
図4は繊維ろ材の斜視図であって、高速繊維ろ過槽17に使用する浮上性の繊維ろ材29は、繊維径が異なる3種類のウエブ起毛状態の合成樹脂繊維を混合し、平滑化することなく加熱処理した板状態の不織性繊維ろ材を、発泡性樹脂に両側から接着して、ろ材寸法を3〜30mmの方形に形成し、見掛け比重が0,2〜0.8の繊維ろ材29としてある。3種類の合成樹脂繊維は、ポリプロピレンの芯にポリエチレンを被覆した繊度が3〜10デニールの熱融着性複合繊維の第一フィラメント29aと、繊度が3〜10デニールのポリプロピレン繊維の第二フィラメント29bと、ポリプロピレンの芯にポリエチレンを被覆した繊度が1.5〜6デニールの熱融着性複合繊維の第三フィラメント29cの三種類の繊維を混合し、ニードルパンチ法により布形化し、ウエブ起毛状態を平滑化することなく加熱処理して板状態としてある。発泡性樹脂板29dは、比重が0.1〜0.5のポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステルなどを発泡シートに形成してある。発泡性樹脂に両側から接着した不織性繊維ろ材は、ろ過性能を発揮できる強度、耐久性、浮上性を有する繊維ろ材29となる。繊維ろ材29は処理すべき原水の性状に応じて、見掛け比重を0.2〜0.8の範囲で調整できる。
【0014】
図2及び図3に示すように、高速繊維ろ過槽17の処理水室28には処理水流出渠18に開口した処理水の流出口42と、洗浄排水渠20に開口した洗浄排水の洗浄排水口30が配設してあり、流出口42の位置は洗浄排水口30より高く設定してある。処理水流出渠18の槽底に高速繊維ろ過槽17の流入室27に開口した洗浄水口31が設けてあり、洗浄排水口30と洗浄水口31には、洗浄排水ゲート32と洗浄水ゲート33が配設してある。常態においては、洗浄排水口30の洗浄排水ゲート32と洗浄水口31の洗浄水ゲート33を閉止し、処理水室28の処理水を処理水流出渠18に排水し、処理水流出渠18から雨水放流渠19に越流させ、消毒処理を行って公共用水域に放流する。
【0015】
図2に示すように、高速繊維ろ過槽17の流入室27の洗浄水口31の近傍に洗浄用空気管34が配設してあり、繊維ろ層16が目詰まりした時に、繊維ろ層16の下方から空気を供給する。高速繊維ろ過槽17の繊維ろ層16が目詰まりした時には、調圧槽15の供給口25を原水流入ゲート24で閉止して、高速繊維ろ過槽17への汚水の供給を停止し、洗浄用空気管34から繊維ろ層16の下方に空気を供給しながら、洗浄排水口30の洗浄排水ゲート32と洗浄水口31の洗浄水ゲート33を開放すれば、処理水流出渠18に貯水する処理水が高速繊維ろ過槽17の流入室27に流入し、繊維ろ層16を形成する繊維ろ材29を、流入室27のろ層展開部で旋回流動させて、繊維ろ材29から分離した懸濁物質と洗浄排水を洗浄排水渠20に排出させる。繊維ろ層16を形成する繊維ろ材29は空隙率が大きく、ろ材が軽いので、流動性が良く、洗浄が容易となる。繊維ろ材29は合成樹脂繊維なので捕捉した懸濁物質の剥離性も良い。なお、符号35は、洗浄排水渠20の底部に沈殿する汚泥を高速繊維ろ過槽17の流入室27に排出するドレン口である。
【0016】
図5は洗浄装置を配設した高速繊維ろ過装置の他の実施例であって、高速繊維ろ過槽17aの流入室27aと処理水流出渠18aの槽底の間に洗浄水弁36を介装した洗浄水管37が連結してある。洗浄水管37の洗浄水弁36を開放すれば、処理水流出渠18aに貯水する処理水を繊維ろ層16aの下方の流入室27aに流入させるようにしてある。洗浄水管37の洗浄水弁36より流入室27a側と洗浄排水渠20aの槽底の間に排水弁38を介装した排水管39が分岐して連結してある。高速繊維ろ過槽17aの繊維ろ層16aが目詰まりした時に、洗浄水弁36を閉止した状態で排水弁38を開放すれば、処理水室28aの水頭圧により流入室27aの汚水を洗浄排水渠20aに排水し、高速繊維ろ過槽17aの水位をろ材支持板26aの下方近傍まで低下させるようにしてある。
繊維ろ層16aが目詰まりした時に、繊維ろ層16aの下方から空気を供給する洗浄用空気管34aに洗浄用ブロア40が接続してある。
【0017】
図6は他の実施例の大型の高速繊維ろ過槽の概念図であって、大型の高速繊維ろ過槽17bにあっては、繊維ろ層16bにろ材分割プレート41・・・を等間隔に垂設してある。高速繊維ろ過槽17bに充填する繊維ろ層16bのろ材厚みを標準1mとすることが可能であり、繊維ろ層16bにろ材分割プレート41・・・を等間隔に垂設することにより、繊維ろ材29・・・の均一な洗浄と洗浄後の均一な繊維ろ層16bの形成が可能となる。この発明の実施例では、高速繊維ろ過槽17bを分割するろ材分割プレート41・・・の間隔を3m程度とし、流入室27bのろ層展開部を0.8m、繊維ろ層16bの厚みを1.0m、処理水室28bの水深を0.7mとすることができる。大きい空隙率の繊維ろ材29を使用することにより、雨天時の未処理下水のような高濃度の流入下水を、1,000〜3,000m/日と、大量に高速処理を行うことができる。なお、符号34bは分割した繊維ろ層16bに配設した洗浄用空気管である。
【0018】
図1に示す繊維ろ材を用いたろ過処理装置の雨天時の運転は、降水時にポンプ場から排出される合流下水、または終末処理場における最初沈殿池や雨水沈殿池への流入水の原水を凝集反応槽1に流入させ、運転員が操作盤を操作する時に、降雨パターンに応じて薬注処理と無薬注処理を選択して運転を開始する。図7は操作員が選定する場合の操作フローであって、雨天時の雨が降り続く長雨か、晴天日数が長く続いた後の雨天か、或いは、予測雨量等に基づき、操作員は高分子凝集剤の薬注をタイマー方式か濁度計方式かを決定してスイッチを操作する。図8はタイマーによる運転の操作フローであって、降雨初期のファーストフラッシュ時の汚濁負荷の高い時は、降雨時間や降雨量に応じて30分〜10時間の所定時間の間、高分子凝集剤を原水に添加して薬注処理を行うようタイマーTを設定し、30分〜10時間の設定時間を超える雨天時の流入下水に対しては高分子凝集剤の添加を停止させ、無薬注処理に切換える。
図9は濁度計による運転の操作フローであって、降雨時間や降雨量に応じて、タイマーTを設定し、流入下水に高分子凝集剤の添加を開始し、タイマーTをONにする。原水の流入経路に設置した濁度計Nに基づき、流入下水中の懸濁物質が設定濁度(50〜200NTU)より高く検出された時には、高分子凝集剤の添加を継続し、タイマーTの設定時間を超えた時点で、高分子凝集剤の添加を停止させ、無薬注処理に切換える。タイマーTの設定時間内に、降雨開始後数時間経過し雨水により希釈されて汚濁負荷が低くなり、或いは、降り続く雨で流入下水の水質が一定値以下となり、濁度計Nで検知する流入下水中の濁度が設定濁度より低く5〜10分継続して検知された時には、薬注処理から無薬注処理に切換える。図10は他の濁度計による運転の操作フローであって、降雨時間や降雨量に応じて、タイマーTを設定し、流入下水に高分子凝集剤の添加を開始し、タイマーTをONにする。原水の流入経路に設置した濁度計Nに基づき、流入下水中の懸濁物質が設定濁度(50〜200NTU)より高く検出された時には、濁度計Nで検知しながら高分子凝集剤の添加を継続する。流入下水の水質が一定値以下となり、濁度計Nで検知する流入下水中の濁度が設定濁度より低く5〜10分継続して検知された時には、薬注処理から無薬注処理に切換える。合流式下水道の改善技術について、前段に凝集沈殿を組込む高速繊維ろ過システムは、降雨パターンに応じて薬注処理と無薬注処理を使い分けることで、高い除去性能と経済性が期待できる。
【0019】
上記の構成に基づき、図1の繊維ろ材を用いたろ過処理装置の雨天時について、ろ過工程と洗浄工程のサイクルを説明する。
(1)ろ過工程
雨天時にポンプ場から排出される合流下水、または終末処理場における最初沈殿池や雨水沈殿池への流入水を凝集反応槽1に流入させ、高分子凝集剤を添加して撹拌機6で撹拌混合して凝集フロックを形成する。凝集フロックを形成した流入下水を沈殿池10に流入させ、比重の重い懸濁物質を沈殿させて流入下水を調圧槽15に投入する。流入下水は調圧槽15から高速繊維ろ過槽17の下部より流入し、ろ過槽上部に形成された浮上性の繊維ろ層16を上向流で通過して、流入下水中のSSが繊維ろ層16に捕捉・除去される。処理水は処理水流出渠18に流出し、雨水放流渠19の消毒設備を経て放流される。ろ過が進行すると、捕捉したSSによりろ過損失水頭が上昇し、これに伴い調圧槽15の水位が上昇する。調圧槽15の水位が所定の水位になると、洗浄工程に切換える。
(2)洗浄工程:水抜工程
水抜工程では、調圧槽15と高速繊維ろ過槽17の間の原水流入ゲート24を閉じて原水の流入を停止し、排水弁(図示せず)を開いて流入室27の槽底に沈殿した比較的比重の大きい沈殿物を排出する。水位がろ材支持板26から設定水位(0.3m)まで低下すると、排水弁を閉じて水抜工程を完了する。この水抜工程は、次工程の空気撹拌においてろ過圧力によりろ材支持板26で圧密状の繊維ろ層16を分散しやすくし、同時に流入室27に沈降した比較的比重の大きい沈殿物を排出する。
(3)洗浄工程:撹拌工程
撹拌工程ではろ層下部に設けた洗浄用空気管34より空気を供給し、ろ過圧力により形成された繊維ろ層16を分散し、繊維ろ材29を流動状態にすることで捕捉したSS等を排水中に解離させ、次に、洗浄排水ゲート32を開く。
(4)洗浄工程:撹拌・排水工程
撹拌・排水工程では、繊維ろ材29の再生を行うとともに、捕捉したSS等を系外に排出するために、洗浄用空気により繊維ろ材29を撹拌流動させながら洗浄水ゲート33を開く、流入室27の下部からろ過水を通水して処理水室28の上部より洗浄排水を抜き、洗浄排水渠20に流出させる。
【実施例】
【0020】
下水道施行令において、合流式下水道からの放流水が雨水により大きな影響を受ける時には、処理区域毎にBOD濃度を40mg/L以下とすることが示されている。そこで、雨天時の流入下水のBOD水質データについて、雨水ポンプ起動後の経過時間と、流入下水のBOD濃度の分布傾向を、某浄化センターにおいて調査した。雨天時流入下水は、流入水質の分析から降雨初期にBOD濃度が高く、時間の経過とともにBOD濃度は低下する傾向がある。高濃度の流入下水は、雨水流入開始から数時間以内のファーストフラッシュ時に発生しており、BOD濃度が100mg/Lを超える流入下水の発生は、5時間経過後は非常に少なくなっている。また、合流式下水道における雨天時の流入下水は、晴天日数が長く続いた後の降雨初期の流入下水は、懸濁物質の濃度が高くなる。梅雨時のように長く降り続く雨天時の流入下水は、懸濁物質の濃度が低くなる傾向がある。その汚濁濃度の状況を表1に示す。
【0021】
【表1】
BOD水質データに基づき、雨天時の流入下水に対して,凝集剤の選定試験、反応時間および薬注率変化の基礎実験を行った。先ず、凝集剤の種類を次のように選択した。
a.無機凝集剤:PAC(ポリ塩化アルミニウム)、硫酸バンド(硫酸アルミニウム)、ポリ硫酸第二鉄、塩化第二鉄
b.高分子凝集剤:カチオン系、両性系、アニオン系
の7種類の凝集剤を対称として、流入下水200CCを分取したビーカーに、5〜30mg/Lの無機凝集剤と、1〜10mg/Lの高分子凝集剤を個別に注入し、ジャーテスターにより凝集状態を確認した。
【0022】
先ず、PAC、硫酸バンド、ポリ硫酸第二鉄、及び塩化第二鉄の無機凝集剤を使用して凝集試験を行った。その凝集剤選定試験の実験結果を表2に示す。無機凝集剤を単独(一液法)で用いた場合は、薬品注入率が最も低かったものはPACであり、10〜30mg/L必要であった。硫酸バンドは,25〜40mg/L、ポリ硫酸第二鉄と塩化第二鉄は20〜40mg/L必要であった。また、ポリ硫酸第二鉄と塩化第二鉄では、薬品注入後、着色が見られた。PACを10mg/L注入して凝集させたSSは、5分程度静置することで完全に沈降し、上澄水のSS除去率は65%程度であった。この結果により、無機凝集剤による撹拌時間の確認は、PACを使用することとした。
【0023】
【表2】
次に、カチオン系、両性系、及びアニオン系の高分子凝集剤を使用して凝集試験を行った。その凝集剤選定試験の実験結果を表3に示す。高分子凝集剤を単独(一液法)で用いた場合は、カチオン系が良い凝集状態であり、薬品注入率は2〜5mg/L必要であった。カチオン系ポリマーの種類については、分子量、イオン濃度による凝集効果に大きな違いはなかったが、分子量が大きいほど薬品注入率が下がる傾向が見られた。カチオン系ポリマーを2mg/L注入して凝集させたSSは、5分程度静置することで完全に沈降し、上澄水のSS除去率は82%程度であった。この結果により、高分子凝集剤による撹拌時間の確認は、カチオン系ポリマーを使用することとした。
【0024】
【表3】
次に、晴天時の汚水を用いて凝集反応槽で凝集剤を注入した後、凝集反応時間を変化させ横流沈殿によるSS除去率で評価することにした。無機凝集剤の凝集剤選定試験で薬品注入率が最も低かったPACを使用し、晴天時の汚水に対してPACを10mg/Lを注入し,凝集反応槽における凝集反応時間を変化させ、凝集反応時間変化実験を行った。沈殿時間8分,水面積負荷420m3/(m2・日)で横流沈殿させたSS除去率を表4に示す。その結果は、凝集反応時間を長くするに従いSS除去率は向上し,凝集反応時間50秒でSS除去率は8%程度であった。
【0025】
【表4】
次に、無機凝集剤のPACと同じ条件で、高分子凝集剤の凝集剤選定試験で凝集状態の最も良いカチオン系ポリマーを使用して撹拌時間とSS除去率を確認した。ポリマー凝集反応時間とSS除去率の関係を表5に示す。その結果は、凝集反応時間を長くするに従いSS除去率は向上し,凝集反応時間30秒でSS除去率は13%程度,凝集反応時間50秒でSS除去率は16%程度であった。
【0026】
【表5】
薬品注入率変化実験を、薬品注入率が最も低かった無機凝集剤のPACを使用して行った。
a.凝集反応時間は一液法:10秒、30秒、50秒
b.沈殿時間:8分(水面積負荷420m3/(m2・日))
晴天時の汚水を用いて凝集反応槽で凝集剤を注入した後、凝集反応時間を変化させ横流沈殿によるSS除去率で評価した。PAC注入率とSS除去率の関係を表6に示す。その結果は、PAC注入率を高くするに従いSS除去率は向上するが、30mg/Lを超えるとSS除去率の向上が小さくなる傾向を示した。PAC注入率30mg/LにおいてSS除去率は10%程度であった。
【0027】
【表6】
次に、凝集状態の最も良いカチオン系ポリマー(一液法)を使用して、薬品注入率変化実験を行った。
a.カチオン系ポリマー:1、2、4、6mg/L
b.凝集反応時間一液法:30秒
c.沈殿時間:8分(水面積負荷420m3/(m2・日))
晴天時の汚水を用いて凝集反応槽でポリマーを変化させて注入した後、凝集反応時間を30秒とし、横流沈殿によるSS除去率で評価した。カチオン系ポリマーの注入率とSS除去率の関係を表7に示す。その結果は、カチオン系ポリマー注入率を高くするに従いSS除去率は向上し,注入率4mg/LにおいてSS除去率22%程度,注入率6mg/LにおいてSS除去率24%程度であった。基礎実験の結果、合流下水に添加する凝集剤は、高分子凝集剤のカチオン系ポリマーが無機凝集剤のPACよりSS除去率が良く、経済的であることが分かる。
【0028】
【表7】
次に、実証実験機を使用して、上記の凝集剤の選定試験、反応時間および薬注率変化の基礎実験に基づき、SS除去性能とBOD除去性能を調査した。雨天時の高濃度の流入下水は、雨水流入開始から数時間以内のファーストフラッシュ時に発生するため、懸濁物質除去は高速ろ過が必要となる。そこで、従来の粒状の浮上ろ材や砂などを利用したろ過技術に比べ、高い空隙率を持ち、高速ろ過が確保できる繊維ろ材を使用する。繊維ろ材は、SSをろ材間の空隙やろ材内部の繊維の間隙で捕捉するため、表層ろ過になりにくく、ろ層全体でSSの捕捉ができ高負荷に強い特徴を有している。実証実験機に使用する高速繊維ろ過槽と繊維ろ材を次のように選定した。
a.ろ過槽:ろ過面積0.5m2、ろ層高さ1.0m×2台(交互運転)
b.繊維ろ材:材質がPP(ポリプロピレン)およびPE(ポリエチレン)製繊維により構成された8mm×8mm×8mmの立方体
図11に実証実験機(凝集沈殿+高速繊維ろ過)の実験フローを示す。実証実験機は、雨天時にポンプ場から排出される合流下水に凝集剤を添加して撹拌混合する凝集反応槽1と、凝集反応させたフロックの一部を沈殿させる凝集沈殿装置2と、高速繊維ろ過装置3で構成してある
雨天時流入下水に対して実証実験機(凝集沈殿+高速繊維ろ過)の実験条件を設定した。
a.凝集沈殿:各降雨に対する高分子凝集剤のカチオン系ポリマーの注入量4mg/L
b.凝集反応時間:30秒
c.沈殿時間:8分(水面積負荷420m3/(m2・日))
d.運転時間:降雨開始後200分実施、200分以降は無薬注で、沈殿(沈殿時間8分)+高速繊維ろ過、の運転を行う
e.ろ過速度:1,500、2,000、2,500m/日
なお、基礎実験の結果、凝集剤は高分子凝集剤一液とし、二液法については、基礎実験を行ったが経済性に劣るため実証実験機による実験の対象から除外した。また、合流式下水道の終末処理場における最初沈殿池への流入水に対する懸濁物質の除去の性能目標を、
1.SS除去率をシステム全体において80%以上
2.BOD除去率システム全体において75%以上
に設定した。実証実験機(凝集沈殿+高速繊維ろ過)による実験条件を表8に示す。
【0029】
【表8】
表8の実験条件に基づき、3パターンの降雨に対してろ過速度を変化させ、自動運転してSS除去性能を調査した。沈殿処理は薬注(凝集)処理による沈降速度の向上を期待して沈殿時間を8分(水面積負荷420m3/(m2・日))としたが,薬注時の平均SS除去率は17.2%であった。高速繊維ろ過における薬注時のSS除去率は93.7〜96.0%であり、ろ過速度1,500〜2,500m/日における平均SS除去率は大きく向上した。無薬注による降雨開始200分以降の沈殿池は薬注の影響が残り、沈殿時間8分の平均SS除去率は11.2%で大きく低下していた。無薬注時の高速繊維ろ過における平均SS除去率は88.7%で良好な結果となった。また,ろ過速度の違いによる性能差は見られなかった。システム全体では高速繊維ろ過によるSS除去性能の向上により,薬注時のSS除去率は94.3〜96.8%と高い除去性能を示した。
表9は流入負荷に対するSS除去性能(%)を示し、表10は流入下水に対する処理水のSS濃度(mg/L)の実証結果を示す。
【0030】
【表9】
【0031】
【表10】
次に、実験条件に基づき、3パターンの降雨に対してろ過速度を変化させ、自動運転してBOD除去性能を調査した。沈殿処理は沈殿時間を8分(水面積負荷420m3/(m2・日))における薬注時の平均BOD除去率は16.4%であり、無薬注時は14.2%であった。高速繊維ろ過における薬注時のBOD除去率は73.2〜75.1%と大きく向上した。また,ろ過速度の違いによる性能差は見られなかった。システム全体では高速繊維ろ過によるBOD除去性能の向上により,薬注時のBOD除去率は77.2〜79.8%と高い除去性能を示し,目標性能の75%以上の結果となった。表11は流入負荷に対するBOD除去性能(%)を示し、表12は流入下水に対する処理水のBOD濃度(mg/L)の実証結果を示す。
【0032】
【表11】
【0033】
【表12】
上記の雨天時の流入下水のBOD濃度の分布傾向と、BOD水質データに基づく凝集剤の選定試験、反応時間および薬注率変化の基礎実験と、実証試験の結果から、次の条件で実施することにした。前処理としてカチオン系高分子凝集剤による凝集反応を組込み、凝集沈殿を行った後に浮上性繊維ろ材を用いた上向流ろ過方式により、例えば、ろ過速度1,000〜3,000m/日で高速ろ過を行なえば、従来の沈殿池や無薬注処理の繊維ろ材を用いたろ過装置では達成できない高いSS除去率とBOD除去率が得られる。
a.降雨初期のファーストフラッシュ時のように汚濁負荷の高いときは薬注処理を行い、所定時間(3〜5時間)を超える雨天時の流入下水に対しては無薬注処理を行う。
b.或いは、降雨開始後数時間経過し雨水により希釈されて汚濁負荷が低くなった時点を濁度計で検知し、無薬注処理に切り替えることも可能である。
c.降り続く雨に対しては、原水の水質が一定値以下になれば薬注処理から無薬注処理に切り替えることにより、システムとして高い除去性能と経済性が期待できる。
d.先行晴天日数が長い後の雨天時、流入下水に対しては薬注処理を行う。
合流式下水道の改善技術について、前段に凝集沈殿を組込む高速繊維ろ過の処理技術は、懸濁物質(SS、BOD等)の除去性能を向上させ、降雨パターンに応じて使い分けることで、経済的かつ法的処理水質の達成が図れる。高い除去性能とともに薬品費を低減できる経済性を発揮できるシステムとなることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
この発明は、合流式下水道において、前段に凝集沈殿を組込み、高速繊維ろ過の処理技術を利用して、SS、BOD等の懸濁物質の除去性能を向上させ、降雨パターンに応じて薬注処理と無薬注処理を使い分け、経済的かつ法的処理水質を達成し、高い除去性能と薬品費を低減できる繊維ろ材を用いたろ過処理方法とそのろ過装置となる。従って、雨天時にポンプ場から排出される合流下水、または終末処理場における最初沈殿池や雨水沈殿地への流入水を対象とした、下水中のSS、BOD等の懸濁物質を除去する繊維ろ材を用いたろ過処理方法とそのろ過装置に適するものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る繊維ろ材を用いたろ過処理装置の縦断面図である。
【図2】同じく、高速繊維ろ過槽の縦断面図である。
【図3】同じく、洗浄装置を配設した高速繊維ろ過装置の縦断面図である。
【図4】本発明に使用する繊維ろ材の斜視図である。
【図5】同じく、他の実施例の、洗浄装置を配設した高速繊維ろ過装置の縦断面図である。
【図6】同じく、他の実施例の、大型の高速繊維ろ過槽の概念図である。
【図7】同じく、操作員が選定する場合の操作フローである。
【図8】同じく、タイマーによる運転の操作フローである。
【図9】同じく、濁度計による運転の操作フローである。
【図10】同じく、濁度計による運転の操作フローである。
【図11】同じく、実証実験機(凝集沈殿+高速繊維ろ過)の実験フローを示す。
【符号の説明】
【0036】
1 凝集反応槽
10 沈殿池
17、17a、17b 高速繊維ろ過槽
29 繊維ろ材
29a 第一フィラメント
29b 第二フィラメント
29c 第三フィラメント
29d 発泡性樹脂板
N 濁度計
T タイマー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合流式下水道の雨天時の流入下水に含まれる懸濁物質の一部を前処理装置で沈殿分離させた後、ろ過装置で濁質除去を行なうろ過処理方法において、
前処理として高分子凝集剤による凝集反応を組込み、懸濁物質の一部を凝集沈殿させた後、繊維ろ材(29)を用いた高速繊維ろ過槽(17、17a、17b)により濁質除去を行なうことを特徴とする繊維ろ材を用いたろ過処理方法。
【請求項2】
上記高速繊維ろ過槽(17、17a、17b)の運転は、降雨初期の汚濁負荷の高い時にはカチオン系高分子凝集剤の薬注処理で開始し、流入下水が設定濁度以下となった時に無薬注処理に切換えることを特徴とする請求項1に記載の繊維ろ材を用いたろ過処理方法。
【請求項3】
上記高速繊維ろ過槽(17、17a、17b)の運転は、降雨初期の流入下水の発生時にはカチオン系高分子凝集剤の薬注処理で開始し、所定時間を超える流入下水には無薬注処理を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の繊維ろ材を用いたろ過処理方法。
【請求項4】
上記高速繊維ろ過槽(17、17a、17b)に用いる繊維ろ材(29)は、浮上性の繊維ろ材を使用して流入下水を上向流で供給させることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の繊維ろ材を用いたろ過処理方法。
【請求項5】
合流式下水道の雨天時の流入下水に含まれる懸濁物質の一部を前処理装置で沈殿分離させた後、ろ過装置で濁質除去を行なうろ過処理方法において、凝集反応槽(1)に流入した原水にカチオン系高分子凝集剤を添加して撹拌混合し、凝集汚泥を沈殿池(10)に供給して懸濁物質の一部を分離した後、浮上性の繊維ろ材(29)を配設した高速繊維ろ過槽(17、17a、17b)に上向流で供給して濁質除去を行なうと共に、ろ過処理装置にタイマー(T)または濁度計(N)を配設して、降雨初期の濁質の高い流入下水の発生時には、凝集反応槽(1)に高分子凝集剤を添加して、所定時間後または設定濁度以下となった時点で、無薬注処理に切換えることを特徴とする繊維ろ材を用いたろ過処理装置。
【請求項6】
上記繊維ろ材は、繊維径が異なる数種類のウエブ起毛状態の合成樹脂繊維を混合し、平滑化することなく加熱処理した板状態の不織性繊維ろ材(29、29a、29b、29c)を、発泡性樹脂板(29d)に両側から接着して、ろ材寸法を3〜30mmの方形に形成し、見掛け比重が0.2〜0.8の浮上性の繊維ろ材(29)としたことを特徴とする請求項5に記載の繊維ろ材を用いたろ過処理装置。
【請求項1】
合流式下水道の雨天時の流入下水に含まれる懸濁物質の一部を前処理装置で沈殿分離させた後、ろ過装置で濁質除去を行なうろ過処理方法において、
前処理として高分子凝集剤による凝集反応を組込み、懸濁物質の一部を凝集沈殿させた後、繊維ろ材(29)を用いた高速繊維ろ過槽(17、17a、17b)により濁質除去を行なうことを特徴とする繊維ろ材を用いたろ過処理方法。
【請求項2】
上記高速繊維ろ過槽(17、17a、17b)の運転は、降雨初期の汚濁負荷の高い時にはカチオン系高分子凝集剤の薬注処理で開始し、流入下水が設定濁度以下となった時に無薬注処理に切換えることを特徴とする請求項1に記載の繊維ろ材を用いたろ過処理方法。
【請求項3】
上記高速繊維ろ過槽(17、17a、17b)の運転は、降雨初期の流入下水の発生時にはカチオン系高分子凝集剤の薬注処理で開始し、所定時間を超える流入下水には無薬注処理を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の繊維ろ材を用いたろ過処理方法。
【請求項4】
上記高速繊維ろ過槽(17、17a、17b)に用いる繊維ろ材(29)は、浮上性の繊維ろ材を使用して流入下水を上向流で供給させることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の繊維ろ材を用いたろ過処理方法。
【請求項5】
合流式下水道の雨天時の流入下水に含まれる懸濁物質の一部を前処理装置で沈殿分離させた後、ろ過装置で濁質除去を行なうろ過処理方法において、凝集反応槽(1)に流入した原水にカチオン系高分子凝集剤を添加して撹拌混合し、凝集汚泥を沈殿池(10)に供給して懸濁物質の一部を分離した後、浮上性の繊維ろ材(29)を配設した高速繊維ろ過槽(17、17a、17b)に上向流で供給して濁質除去を行なうと共に、ろ過処理装置にタイマー(T)または濁度計(N)を配設して、降雨初期の濁質の高い流入下水の発生時には、凝集反応槽(1)に高分子凝集剤を添加して、所定時間後または設定濁度以下となった時点で、無薬注処理に切換えることを特徴とする繊維ろ材を用いたろ過処理装置。
【請求項6】
上記繊維ろ材は、繊維径が異なる数種類のウエブ起毛状態の合成樹脂繊維を混合し、平滑化することなく加熱処理した板状態の不織性繊維ろ材(29、29a、29b、29c)を、発泡性樹脂板(29d)に両側から接着して、ろ材寸法を3〜30mmの方形に形成し、見掛け比重が0.2〜0.8の浮上性の繊維ろ材(29)としたことを特徴とする請求項5に記載の繊維ろ材を用いたろ過処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−229658(P2007−229658A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−56361(P2006−56361)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(000197746)株式会社石垣 (116)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(000197746)株式会社石垣 (116)
【Fターム(参考)】
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