説明

繊維シート

【課題】クッション性及び吸収性を兼ね備え、吸収性物品の中高構造を形成するのに適した繊維シートを提供すること、並びに該繊維シートを効率的に製造できる繊維シートの製造方法及び該繊維シートを備えた吸収性物品を提供すること。
【解決手段】本発明の繊維シートは、伸縮性を有する第1繊維層51と第2繊維層52とを有し、第1繊維層51と第2繊維層52とが部分的に接合されて接合部53が形成されており、第2繊維層は51、前記接合部53以外の部分が、第1繊維層側とは反対側に向かって凸の突出部54を形成しており、第1繊維層51は、捲縮繊維を含み、前記伸縮性が主として該捲縮繊維の伸縮性に由来するものであり、前記接合部53の近傍57における捲縮繊維の捲縮の程度が、該接合部53から遠い部分58における捲縮繊維の捲縮の程度より大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維シート及びその製造方法並びにそれを用いた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生理用ナプキン等の吸収性物品において、着用者の体へのフィット性を向上させるために、吸収層を中高構造にしたものが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。中高構造を形成する吸収層としては、着用者の体の形状にフィットするようにふんわりと柔らかなクッション性と、着用者から排泄された排泄物を速やかに吸収する吸収性とを兼ね備えていることが望まれている。
また、吸収性物品用の表面シートとして、凹凸ロール間に噛み込ませて凹凸を形成した第1不織布と第2不織布とを有し、第1不織布の凸部と第2不織布との間に短繊維が充填されている表面シートが知られている(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−152250号公報
【特許文献2】特開2006−115974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の吸収性物品においては、発泡体からなるシート状物を吸収層に配設することにより中高構造を形成している。そのため、特許文献1に記載の吸収性物品においては、クッション性は優れているが、吸収性が優れていない。
また、特許文献2の表面シートは、第1不織布と第2不織布とを熱融着する際に両不織布間に短繊維が入り易く、熱融着部が硬くなり易く、シート全体としての柔軟性にやや劣る。
【0005】
従って、本発明の目的は、クッション性及びシート全体としての柔軟性に優れており、例えばクッション性に優れた中高構造を形成するのに好ましく用いられるら繊維シートを提供することにある。
また、本発明の目的は、そのような繊維シートを効率的に製造することができる繊維シートの製造方法及び該繊維シートを備え、クッション性及び柔軟性に優れた吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、伸縮性を有する第1繊維層と第2繊維層とを有し、第1繊維層と第2繊維層とが部分的に接合されて接合部が形成されており、第2繊維層は、前記接合部以外の部分が、第1繊維層側とは反対側に向かって凸の突出部を形成しており、第1繊維層は、捲縮繊維を含み、前記伸縮性が主として該捲縮繊維の伸縮性に由来するものであり、前記接合部の近傍における捲縮繊維の捲縮の程度が、該接合部から遠い部分における捲縮繊維の捲縮の程度より大きい、繊維シートを提供することにより前記目的を達成したものである。
【0007】
また、前記繊維シートの製造方法であって、潜在捲縮性繊維を含む第1の繊維集合体と第2の繊維集合体との積層体に熱エンボス加工を施すことにより、多数の接合部を形成すると共に該接合部近傍の潜在捲縮性繊維に螺旋状の捲縮を発現させる工程、及び該接合部を形成した後の積層体に、前記熱エンボス加工の温度より低温の熱風処理を施し、該積層体を、縦横両方向に収縮させる工程を具備する、繊維シートの製造方法を提供することにより前記目的を達成したものである。
【0008】
また、本発明は、前記繊維シートを含み、該繊維シートは、前記第1繊維層側を肌当接面側に向けた状態に配されている吸収性物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の繊維シートは、本発明の目的は、クッション性及びシート全体としての柔軟性に優れており、例えばクッション性に優れた中高構造を形成するのに好ましく用いられる。
また、本発明の繊維シートの製造方法によれば、そのような繊維シートを効率的に製造することができる。
また、本発明の吸収性物品は、クッション性及び柔軟性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の繊維シート及びそれを用いた吸収性物品について、その好ましい一実施形態に基づき、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の吸収性物品の一実施形態である生理用ナプキンを示す図である。
本実施形態の生理用ナプキン1は、通常の生理用ナプキンと同様に縦長の形状を有しており、図1に示すように、液透過性の表面シート2、液不透過性又は液難透過性の裏面シート3及び両シート2,3間に介在配置された液保持性の吸収層4を備えている。
【0011】
本実施形態の生理用ナプキン1における、着用時に着用者の液排泄部に対向配置される部位には、図1に示すように、着用者の肌側に向かって突出する中高部6が形成されている。突出部6は、生理用ナプキン1の幅方向中央部に形成されており、着用者の液排泄部から肛門のやや後方までに亘る長さを有している。
吸収層4は、図1に示すように、上部吸収層41及び下部吸収層42が積層された構造を有しており、上部吸収層41は、下部吸収層42より小型であり、ナプキンの長手方向及び幅方向の何れの方向の長さも上部吸収層41より小さくなっている。吸収層4は、下部吸収層42上に上部吸収層41が積層されている部分が上述した中高部6を形成している。
本実施形態のナプキン1における中高部6は、着用者の液排泄部に柔軟にフィットし、該液排泄部から排泄された液をすばやく吸収する機能を有する。
【0012】
本実施形態のナプキン1における表面シート2、裏面シート3、上部吸収層41及び下部吸収層42の形成材料としては、生理用ナプキン等の吸収性物品において従来用いられている各種材料を特に制限なく用いることができる。
表面シート2としては、例えば、親水化処理が施された各種不織布や開孔フィルム等の液透過性のシートを用いることができる。裏面シート3としては、例えば、熱可塑性樹脂のフィルムや、該フィルムと不織布とのラミネート等の液不透過性又は撥水性のシートを用いることができ、水蒸気透過性を有するものを用いることもできる。上部吸収層41及び下部吸収層42としては、パルプ繊維を堆積させて得られた積繊層、パルプと高吸水性ポリマーとを堆積させて得られた混合積繊層、パルプ繊維等の親水性繊維を原料とする不織布からなるもの等を用いることができる。上部吸収層41は、下部吸収層42より柔軟なものを用いることが好ましい。
【0013】
上述した生理用ナプキン1における、表面シート2と上部吸収層41との間には、本発明の繊維シートの一実施形態である繊維シート5が配されている。
本実施形態である繊維シート5は、図2及び図3に示すように、伸縮性を有する第1繊維層51と第2繊維層52とを有し、第1繊維層51と第2繊維層52とが部分的に接合されて多数の接合部53が形成されている。
本実施形態における接合部53は、第1繊維層51と第2繊維層52とが一体的に加圧及び加熱されて形成されており、接合部53における、第1繊維層51と第2繊維層52とは、第1繊維層51の構成繊維及び/又は第2繊維層52の構成繊維の溶融固化により一体化されている。
【0014】
第2繊維層52は、図3に示すように、接合部53以外の部分が、第1繊維層51側とは反対側に向かって凸の突出部54を形成している。
本実施形態における接合部53は、図2に示すように、繊維シート5の平面方向(繊維シートの厚み方向に直交する方向)に分散した状態に多数形成されている。より具体的には、図2に示すように、多数の接合部53は、12個の接合部53に囲まれた四角形状の領域56が、繊維シート5のMD方向(製造時における機械方向、繊維の配向方向に同じ)及びCD方向(製造時における機械方向に直交する方向、繊維の配向方向の直交方向と同じ)の両方向に連続して複数生じるように形成されている。
第2繊維層52は、繊維シート5の平面視において、前記領域56内に位置する部分が、上部吸収層41側に向かって断面アーチ状(図3参照)に突出し、前記突出部54を形成している。他方、繊維シート5を第2繊維層52側から見たときの各突出部54の周囲は凹部55となっており、該凹部55の底部には、接合部53が間欠的に配置されている。
【0015】
第1繊維層51は伸縮性を有している。この伸縮性は、主として、第1繊維層51に含まれる捲縮繊維の伸縮性に由来する。
より具体的には、第1繊維層51は、潜在捲縮性繊維が螺旋状に捲縮して生じたコイル状繊維を含んでおり、コイル状繊維を含んで構成されていることによって、MD方向及びCD方向の両方向に伸縮性を有している。より具体的には、厚み方向と垂直な総ての方向に伸縮性を有している。第1繊維層51を平面方向に引っ張ると、コイル状繊維が伸び、開放するとコイル状繊維が元の状態に戻ろうとして収縮し、この収縮に伴って、第1繊維層51全体としても収縮する。
【0016】
本実施形態の繊維シート5は、該繊維シート5を厚み方向に圧縮する力が加わると、突出部54が高さ方向に圧縮され、その高さが減少すると共に、第2繊維層52の構成繊維によって、該突出部54の周囲に位置する第1繊維層51に、第1繊維層51を平面方向に押し広げようとする力が加わる。これにより、第1繊維層51における、前記領域56内に位置する部分が、平面方向に伸張された状態となる。
他方、繊維シート5を厚み方向に圧縮する力が除かれると、伸張状態の第1繊維層51が収縮し、その収縮する力が、第2繊維層52の構成繊維に伝わり、突出部54の構成繊維を圧縮前の湾曲状態に回復させる力として働く。このような第1繊維層51の収縮力による突出部54の突出状態の回復力が、突出部54を構成する繊維自体の圧縮状態からの嵩回復力と相俟って、突出部54が、ほぼ圧縮前の突出状態に回復する。
このような作用により、本実施形態の繊維シート5は、優れたクッション性を示す。このような作用及び効果は、本実施形態におけるように、突出部54の断面形状がアーチ状であると一層確実に発現される。
【0017】
また、本実施形態の繊維シート5の第1繊維層51は、図2及び図3に示すように、接合部53の近傍57における捲縮繊維の捲縮の程度が、該接合部53から遠い部分58における捲縮繊維の捲縮の程度より大きくなっている。具体的には、潜在捲縮性繊維が螺旋状に捲縮して生じたコイル状繊維の一定長さ当たりの巻き数が、接合部53の近傍57のコイル状繊維の方が、接合部53から遠い部分58のコイル状繊維よりも多くなっている。
【0018】
本実施形態の繊維シート5によれば、このような構成を有するため、クッション性に優れていると共に、シート全体としての柔軟性(特に可撓性)も良好である。
特に、接合部53の近傍57と遠方58とで繊維の捲縮の程度が上述の如く異なっていることにより、クッション性及び吸収性で、以下の特筆すべき効果を発現する。
接合部53近傍57の捲縮繊維の捲縮(即ち第1繊維層51の収縮)が特別大きい事によって、突出部54のアーチ状の起立性がよくなり、圧縮後の弾性回復性にも優れる。
【0019】
また、捲縮繊維の捲縮の程度の差に起因して、接合部53の近傍57の毛管力が特別に高くなる。その結果、第1繊維層51に吸収された液は接合部の近傍57に集中し、シート全体のドライネスが向上する。
特に、第1繊維層51は、接合部53及びその近傍57より、遠方58の方が厚みがあり、表面シート2と接するのは主として遠方58部分となるが、上述したように、第1繊維層51に吸収された液が接合部53の近傍57に集中する一方、遠方58部分の液残存性が少なくなるため、表面シート2への液戻りが減る。
【0020】
捲縮繊維の捲縮の比較は、接合部53からの距離が1.6mm以内、好ましくは1.0mm以内の範囲内に位置する捲縮繊維の捲縮の程度(巻き数等)と、接合部53に囲まれた領域56内に位置し、何れの接合部53からも2mm以上離れた部分に位置する捲縮繊維の捲縮の程度(巻き数等)とを比較することが好ましい。
又は、第1繊維層側から着色液を滴下したときの着色(液)の分布を比較して、繊維の捲縮の比較を行うこともできる。具体的には、接合部53を中心に1.6mm以内の接合部近傍57の着色と2mm以上の遠方58の着色の程度を比較して判定することも可能である。
尚、本実施形態の繊維シート5においては、捲縮繊維(コイル状繊維)の捲縮の程度が、接合部53に近づくにつれて漸次大きくなっている。
【0021】
コイル状繊維は、上述した通り、潜在捲縮性繊維が捲縮して形成される。潜在捲縮性繊維とは、加熱される前においては捲縮を発現していないが、所定の捲縮開始温度以上の加熱によって螺旋状の捲縮が発現して収縮する性質を有する繊維である。
潜在捲縮性繊維は、例えば、収縮率の異なる2種類の熱可塑性ポリマー材料を成分とする偏心芯鞘型複合繊維又はサイド・バイ・サイド型複合繊維からなり、具体的には、特開平9−296325号公報や特許第2759331号公報に記載のものが挙げられる。収縮率の異なる2種類の熱可塑性ポリマー材料の例としては、例えば、エチレン−プロピレンランダム共重合体(EP)とポリプロピレン(PP)との組み合わせが好適に挙げられる。
【0022】
コイル状繊維を含むことに起因する前述の各種効果を有効に発現させるためには、潜在捲縮性繊維(捲縮を発現したコイル状繊維を含む)は、第1繊維層51中に25重量%以上含まれていることが好ましく、60重量%以上含まれていることが更に好ましい。また、コイル状(螺旋状)の捲縮に限られず、2次元的な捲縮を有するものであっても良く、例えばジグザグに屈曲した繊維であっても良い。
【0023】
第1繊維層51は、潜在捲縮性繊維(捲縮を発現したコイル状繊維を含む)以外の繊維を含むものであっても良く、潜在捲縮性繊維(捲縮を発現したコイル状繊維を含む)以外の繊維としては、第2繊維層の構成繊維として後述する各種繊維が挙げられる。
【0024】
本発明の繊維シートは、MD方向及びCD方向に伸縮性を有し、MD方向及びCD方向の何れにおいても、幅30mmの試験片の50g荷重時伸長率が25%以上であり且つ同50g荷重1分後の開放長が伸長前の長さの110%以内であることが、クッション性に優れた繊維シートとする観点から好ましい。
【0025】
第2繊維層52は、繊維シート5が圧縮される際に、第1繊維層51を平面方向に伸張させると共に、圧縮から開放された際の第1繊維層51の収縮により突出部54の高さを回復させる観点から、合成繊維を25重量%以上含んで構成されていることが好ましく、より好ましくは合成繊維の割合が30〜80重量%、更に好ましくは35〜75重量%である。
合成繊維としては、熱可塑性樹脂からなる繊維が好ましく用いられる。熱可塑性樹脂からなる繊維の構成樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミドなどが挙げられる。またこれらの熱可塑性ポリマー材料の組み合わせからなる芯鞘型複合繊維やサイド・バイ・サイド型複合繊維を用いることもできる。
【0026】
また、第2繊維層52は、平均繊維長が異なる2種類の繊維を含むことが好ましい。平均繊維長が異なる2種類の繊維を含んでいると、図3に示すように、繊維長が長い方の繊維52aにより、繊維シートが圧縮される際に第1繊維層51を平面方向に伸張させ得る形状の突出部54を確実に形成できる。
また、繊維長の短い方の繊維52bは、接合部53を起点に立ち上がりやすく、繊維シート5に隣接する部材(図3に示す例では上部吸収層41)に突き刺さり易い。これにより、接合部53又はその近傍57に集まった液は、該繊維52bを通路にして、繊維シート5から、それに隣接する部材へとスムーズに移行する。これにより、繊維シート5から、それに隣接する部材への液の移行性が向上する。
【0027】
第1繊維層51を平面方向に伸張させ得る形状の突出部54の形成及び液の移行性の一層の向上の観点から、繊維長が長い方の繊維は、合成繊維、特に熱可塑性樹脂からなる繊維であることが好ましく、繊維長が短い方の繊維が本質的に親水性の繊維であることが好ましい。
本質的に親水性の繊維としては、レーヨン、コットン、パルプ等のセルロース系繊維が好ましく用いられ、特にレーヨンが好ましい。レーヨンは、ビスコース法、銅アンモニア法等、製法を問わずに用いることができる。
第2繊維層52中における、本質的に親水性の繊維の配合割合は、20〜75重量%であることが好ましく、より好ましくは25〜65重量%である。
また、繊維長が長い方の繊維の繊維長は、少なくとも接合部53間距離より長いことが好ましく、41〜120mmであることが更に好ましく、51〜100mmであることが最も好ましい。繊維長が短い方の繊維の繊維長は、22〜70mmであることが好ましく、より好ましくは30〜60mmである。
【0028】
尚、第2繊維層中の合成繊維は、非熱収縮性繊維であることが好ましい。非熱収縮性繊維は、熱収縮性を全く示さないか又はほとんど示さない繊維、及び第1繊維層中に含まれる潜在捲縮性繊維の捲縮開始温度以下では実質的に熱収縮しない熱収縮性繊維を包含する。
【0029】
また、第2繊維層52中の短い方の繊維(本質的に親水性の繊維)52bは、同長い方の繊維(合成繊維)52aに比べ繊維径が太い方が、第2繊維層52のアーチから突き抜けて起立しやすいため好ましい(52bが相対的に細いと、52aに負けて屈曲し、突出できなくなる)。
短い方の繊維52bの好ましい太さは、4dtex以上、より好ましくは6.5dtex以上である。長い方の繊維52aの好ましい太さは、少なくとも短いほうの繊維52bより細いこと、より好ましくは10dtex以下であり、更に好ましくは8dtex以下である。
【0030】
上述した生理用ナプキン1においては、図3に示すように、繊維シート5が、第2繊維層52が、親水性繊維層としての上部吸収層41に接触した状態に配されており、それにより、生理用ナプキン1の中高部6が、クッション性及び液吸収性(上部吸収層41への液の移行性)に優れたものとなっている。親水性繊維層としては、パルプ繊維等の親水性繊維の積繊物や親水性繊維と高吸水性ポリマーとの混合積繊物、あるいはこのような積繊物を被覆するパルプ繊維等からなる紙等が挙げられる。
【0031】
次に、本発明の繊維シートの製造方法の好ましい一実施形態について説明する。
本実施態様の繊維シートの製造方法は、上述した繊維シート5の好ましい製造方法であり、図4に示すように、潜在捲縮性繊維を含む第1の繊維集合体51aと第2の繊維集合体52aとの積層体5aに熱エンボス加工を施すことにより、多数の接合部53(図2参照)を形成すると共に該接合部近傍57の潜在捲縮性繊維に螺旋状の捲縮を発現させる工程、及び該接合部53を形成した後の積層体5bに、熱エンボス加工の温度より低温の熱風処理を施して、該積層体5bを、MD方向及びCD方向の両方向に収縮させる工程を具備する。
【0032】
詳述すると、本実施形態においては、第1の繊維集合体51aとして、潜在捲縮性繊維を含み、カード機により形成した、構成繊維間が結合されていない帯状のカードウエブを用い、第2の繊維集合体52aとして、合成繊維(熱可塑性樹脂からなる繊維)及び本来的に親水性の繊維(レーヨン等)を混合し、カード機により形成した、構成繊維間が結合されていない帯状のカードウエブを用いた。
先ず、第1の繊維集合体51aと第2の繊維集合体52aとを、図4に示すように積層し、その積層体5aに、断面円形のピン(エンボス用の凸部)が周面に所定のパターンで形成されたエンボスロール7を押し当て、図2に示すようなパターンの接合部53を形成する。エンボスロール7のピンは、下に配設されたフラットロール(図示せず)との間で積層体5aを圧縮する。
【0033】
エンボスロール7のピンは、第1の繊維集合体51a及び/又は第2の繊維集合体52aの構成繊維を溶融させ得ると共に、第1の繊維集合体51a中の潜在捲縮性繊維の収縮開始温度以上の温度に加熱しておく。
エンボスロール7のピンの温度は、接合部53の近傍に、捲縮が発現したコイル状繊維を生じさせる観点から、第1の繊維集合体51a中の潜在捲縮性繊維の収縮開始温度に対して15〜130℃高い温度、特に35〜90℃高い温度であることが好ましい。
また、積層体5aは、エンボスロール7のピンに比較的長い時間接触させていることが好ましく、エンボスロールによる積層体5aのだき角θ(図4参照)は、70〜220度、特に100〜180度とすることが好ましい。
【0034】
このようにして接合部53を形成した積層体5bに、図4に示すように、エアスルー方式の熱処理機8により熱風処理を施す。熱処理機8としては、ピンテンター等が好ましく用いられる。この熱風の温度は、エンボスロール7のピンの温度より低いことが好ましく、該ピンの温度より、20℃以上低いことがより好ましい。また、この熱風の温度は、第1の繊維集合体51a中の潜在捲縮性繊維の収縮開始温度に対して40℃以内の高い温度、特に3〜30℃高い温度であることが好ましい。
【0035】
本実施形態の製造方法によれば、エンボス時に、接合部53の回りに位置する潜在捲縮性繊維に螺旋状の捲縮を強く発現させることができ、その後のエアスルー方式による熱処理により、それ以外の部分の潜在捲縮性繊維に螺旋状の捲縮を発現させることができる。 本実施形態の製造方法によれば、このようにして上述した構成の繊維シート5を効率よく製造することができる。
熱風処理においては、接合部を形成した積層体5bを、MD方向及びCD方向の両方向に収縮させることが好ましく、両方向とも、収縮前の寸法の0.8倍以下の寸法となるように収縮させることが、クッション性の良好な繊維シートを得る観点から好ましい。
【0036】
また、本実施形態の製造方法においては、第1の繊維集合体51a及び第2の繊維集合体52aとして、構成繊維間が結合されていないウエブを用いたため、上記のエンボス加工時に、繊維の自由度が高い状態で、接合部近傍の潜在捲縮性繊維に捲縮を発現させることができる。これにより、捲縮の程度が大きい捲縮繊維(コイル状繊維)を接合部近傍に確実に形成させることができる。
【0037】
以上、本発明の繊維シート、製造方法及び吸収性物品は、前述した実施形態に制限されることなく、各発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
例えば、図2に示す繊維シートにおいては、12個の接合部53に囲まれた領域56が多数形成されるように多数の接合部を形成したが、図5(a)に示すように、8個の接合部53に囲まれた領域56や、図5(b)に示すように、5個の接合部53に囲まれた領域56が多数形成されるように、多数の接合部を形成しても良い。第1繊維層51と第2繊維層52層との接合部は、4個〜30個程度の接合部53に囲まれた領域56が、MD方向及びCD方向に連続形成されるように形成することが好ましく、5個以上の接合部53に囲まれた領域56が、同様に連続形成されるようにすることが好ましい。
【0038】
また、領域56の輪郭の形状は、正方形ないし菱形の他、長方形や平行四辺形、三角形、五角形、六角形、楕円形、円形等であっても良い。また、繊維シート5の個々の接合部の平面視形状やそれを形成するためのエンボスロール7のピンの断面形状も、円形の他、正方形、長方形、菱形、平行四辺形、三角形、五角形、六角形、楕円形等、任意の形状とすることができる。
図6には、接合部の平面視形状及びその接合部の配置パターンの他の例が示されている。
【0039】
また、本発明の繊維シートは、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、失禁パッド、使い捨ておむつ等の各種吸収性物品における表面シートと吸収層との間、あるいは吸収層の一部又は全部、表面シート等の各種構成部材等として用いることもできる。また、外科用衣類、清掃シート等の吸収性物品以外の各種用途に用いることもできる。また、吸収性物品に中高部を設ける場合の中高部は、着用者の液排泄部のみ、あるいは液排泄部より後方の臀部間の谷間のみに当接するものであっても良い。また、吸収層を、上部吸収層と該上部吸収層より小型の下部吸収層とから構成して中高部を形成することもできる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例を用いて更に説明するが、本発明は、以下の実施例により何ら制限されるものではない。
【0041】
〔実施例1〕
1)第1繊維層(第1の繊維集合体)の製造
大和紡績(株)製の潜在捲縮性繊維(CPP繊維(商品名)、2.2dtex×51mm)をカード積繊し、坪量18g/m2のウエブを作成した。
2)第2繊維層(第2の繊維集合体)の製造
チッソ(株)製のPET/PE芯鞘複合繊維(4.6dtex×51mm)と、大和紡績(株)製のレーヨン繊維(8dtex×33mm)を重量比で50%ずつ混合してカード積繊し、坪量26g/m2のウエブを作成した。
3)第1及び第2繊維層の結合
上記2層のウエブを重ねあわせ、長さ1000mm×幅350mmにカットし、図6(a)に示すように、断面円形のピンが千鳥状に配されたパターン(エンボス面積率5%)のエンボス加圧プレートを用いて、温度220℃、圧着時間10秒でエンボス一体化した。このとき予めウエブの中央にサインペンで矩形を描き、エンボス前後で矩形がどの程度収縮したか確認した。このときの収縮面積率を、「エンボス収縮率R1」とした。
4)不織布化(収縮一体化)
結合後の繊維シートをピンテンターにかけて所定の寸法にセットし、実測温度95℃の熱風乾燥機に90秒置いて、縦方向収縮率60%、横方向収縮率70%(収縮面積率R=42%)の不織布を得た。この収縮率Rには、エンボス収縮率R1と、エンボス周縁部以外の収縮率R2の両方が含まれることになる。尚、エンボス周縁部は、より低温の熱風処理では上記3)の工程以上には収縮しないと見なした。
得られた不織布(繊維シート)において、第1及び第2繊維層の坪量は、順に43g/m2、62g/m2であった。
【0042】
〔実施例2〕
第2繊維層(第2の繊維集合体)の製造に、PET/PE芯鞘複合繊維(2.2dtex×51mm)40%と、レーヨン繊維(1.8dtex×33mm)60%とを混合して用いると共に、エンボスパターンを、図6(b)に示す様に変更した以外は、実施例1と同様にして不織布を得た。得られた不織布における第1及び第2繊維層の坪量は、順に43g/m2、62g/m2であった。
〔実施例3〕
第2繊維層(第2の繊維集合体)の製造に、PET/PE芯鞘複合繊維(2.2dtex×51mm)40%と、レーヨン繊維(1.8dtex×33mm)60%とを混合して用いると共に、エンボスパターンを、図6(c)に示す様に変更した以外は、実施例1と同様にして不織布を得た。得られた不織布における第1及び第2繊維層の坪量は、順に43g/m2、62g/m2であった。
【0043】
〔実施例4〕
第2繊維層(第2の繊維集合体)の製造に、PET/PE芯鞘複合繊維(2.2dtex×51mm)60%と、PET単繊維(6.7dtex×31mm)40%とを混合して用いると共に、カード積繊量を20g/m2とした以外は、実施例1と同様にして不織布を得た。得られた不織布における第1及び第2繊維層の坪量は、順に43g/m2、48g/m2であった。
〔実施例5〕
第2繊維層(第2の繊維集合体)の製造に、PET/PE芯鞘複合繊維(2.2dtex×51mm)100%を用いると共に、カード積繊量を16g/m2とした以外は、実施例3と同様にして不織布を得た。得られた不織布における第1及び第2繊維層の坪量は、順に43g/m2、38g/m2であった。
【0044】
〔比較例1〕
1)第2繊維層の製造
チッソ(株)製PET/PE芯鞘複合繊維(2.2dtex×51mm)を坪量13g/m2でカード積繊し、直ちに145℃で60秒間熱風処理してエアスルー不織布を作成した。
2)第1繊維層の製造
大和紡績(株)製潜在捲縮性繊維(CPP繊維(商品名)、2.2dtex×51mm)をカード積繊し、坪量12g/m2のウエブを作成した。
3)不織布製造(2層の結合と収縮一体化)
1)で製造したエアスルー不織布に、2)で製造したウエブを重ねあわせ、長さ1000mm×幅350mmにカットし、実施例1と同様のパターンで配列されたピンを有し、かつピン以外の金属部分に1.5mm厚高発泡シリコーンゴムをライニングしたプレートを用いて、温度155℃、圧着時間2秒でエンボス一体化した。
エンボスにより結合した後の繊維シートをピンテンターにかけて所定の寸法にセットし、実測温度134℃の熱風乾燥機に90秒置いて、縦方向収縮率70%、横方向収縮率70%(収縮面積率49%)の不織布を得た。
【0045】
〔比較例2〕
チッソ(株)製PET/PE芯鞘複合繊維(2.2dtex×51mm)と大和紡績(株)製潜在捲縮性繊維(CPP繊維(商品名)、2.2dtex×51mm)を重量比で50%ずつ混合してカード積繊し、坪量24g/m2のウエブを作成した。このウエブ単層を比較例1と同様にエンボスし、エアスルー処理して比較例2の不織布を得た。
【0046】
得られた不織布(繊維シート)について、以下のようにして、繊維シートのMD及びCD方向の伸縮性を測定し、また、繊維シートの厚み方向の圧縮特性、繊維シートの柔軟性(可撓性)を評価した。尚、繊維シートのMD方向は、カード積繊時の流れ方向とした。
【0047】
(A)MD方向の伸縮性
(50g荷重時伸長率)
繊維シートを、幅(CD)30mm、長さ(MD)120mmの寸法にカットして試験片とし、該試験片を、オリエンテック(株)製の引張試験機(テンシロンRTM−100)に、チャック間距離を100mmとして装着し、引っ張り速度10mm/分で、50g荷重になるまで引っ張った。50g荷重時の伸張率を、下記式により算出した。
50g荷重時伸長率(%)=〔(L2−L1)/L1〕×100
(但し、L2:50g荷重時のチャック間距離、L1:初期チャック間距離(=100mm))
【0048】
(50g荷重1分後の開放長の伸長前長さに対する割合)
また、伸長させる前の上記試験片に、予め、該試験片の長手方向に所定の間隔を開けて2つの目印をつけておき、上記の50g荷重時伸長率の測定において荷重が50gとなった時点でチャック間距離の拡大を停止した。その状態を1分間保持した後、試験片を取り外し、該試験片をシワのないよう広げ、上記2つの目印間の距離を測定した。本実施例においては、試験片の長手方向中央部付近に50mm間隔で2点の目印を付けた。50g荷重1分後の開放長の伸長前長さに対する割合を、下記式により算出した。
50g荷重1分後の開放長の伸長前長さに対する割合(%)=〔(L4−L3)/L3〕×100
(但し、L4:解放後の目印間の距離、L3:伸長前の目印間の距離(=50mm))
【0049】
(B)CD方向の伸縮性
繊維シートを、長さ(MD)30mm、幅(CD)120mmの寸法にカットして試験片とする以外は、MD方向の伸縮性と同様にして、50g荷重時伸長率及び50g荷重1分後の開放長の伸長前長さに対する割合を測定した。
【0050】
(C)繊維シートの厚み方向の圧縮特性
クッション性の指標としての圧縮特性は、低荷重下での繊維シートの圧縮され易さ、及び高荷重加圧後の回復し易さ、の2つの指標で判断できる。即ち、以下に定義する20gf/cm2 荷重下の圧縮率と、厚み回復率である。
繊維シートを、20mm×20mmに切り出してサンプルとした。
【0051】
(厚み測定)
圧縮試験には、カトーテック(株)製KES圧縮試験機(KES−G5)を用いた。
測定条件は、基本的に標準条件を用い、圧縮ヘッド10mmφ、ヘッドスピード10mm/分で測定を行った。
圧縮試験は、サンプルを、標準測定で荷重50gf/cm2まで圧縮(往路)し、50gf/cm2で1分保持した後、標準測定で荷重0gf/cm2まで戻した(復路)。
以上の行程で圧縮試験を行い、得られたチャートを適宜拡大して、以下の厚みをチャートから読んで、以下の計測に用いた。
【0052】
(初期厚み)
0.5g/cm2荷重時厚み(往路データより)を初期厚みL0とした。
(20gf/cm2 荷重下厚み)
20g/cm2荷重時厚み(往路データより)をL20とした。
(50gf/cm2荷重下厚み)
50g/cm2荷重時厚み(往路データより)をL50とした。
(回復厚み)
復路での5gf/cm2荷重時厚みを回復厚みLRとした。
【0053】
以上の厚みデータから、各種圧縮率、回復率を以下のように測定した。
(20gf/cm2 荷重下の圧縮率)
同圧縮率R20(%)=〔(L0−L20)/L0〕×100・・・・(1)
(厚み回復率)
厚み回復率(%)=〔LR/L0〕×100・・・・(2)
尚、初期厚みL0及び回復厚みLRは、毛羽立ち等による誤差を排除する観点から0.5gf/cm2 荷重下の厚みとした。また、一辺20mmの試験片が切り出せない場合は、それより小さい面積の試験片を用いて測定しても良い。
【0054】
(D)繊維シートの柔軟性(可撓性)の評価方法
繊維シートを、幅(CD)200mm、長さ(MD)100mmの寸法にカットして試験片とし、該試験片を、カトーテック(株)製KES曲げ試験機(KES−FB2)に、幅方向(200mm辺)が縦になるように装着し、標準測定を行った。
得られた曲げモーメントB(gf・cm)と、(C)項で得られた初期厚み(mm)を元に、該曲げモーメントを以下の通り規格化して柔軟性指標とする。
厚み当たり曲げモーメント;B/初期厚み(gf・cm/mm)
尚、材料幅200mmが取れない場合、測定可能な幅で測定し、幅換算する。実幅をW0とするとき、換算はB/W0×200となる。
【0055】
繊維シートの評価結果を表1に示した。
【0056】
【表1】

【0057】
表1に示す結果から判るように、実施例に示したサンプルはいずれも、50g加重でよく伸張し、しかも復元しやすく、即ち伸縮性に優れていることが判る。また実施例のサンプルはいずれも、低加重で圧縮されやすく、かつ高荷重加圧後も復元し易く、即ちクッション性に優れていることが判る。また曲げ剛性が十分低く、柔らかく変形することが判る。
【0058】
(実施例及び比較例の繊維シートを用いた吸収性物品の製造)
吸収性物品として生理用ナプキンを製造した。各部材に使用した材料及びその組み立て方法は以下の通りである。
表面シート:比較例1で製造した不織布を、第2繊維層側が肌当接面を形成し、第1繊維層側が上部吸収層側を向くように用いた。
上部吸収層:パルプ300g/m2と吸水ポリマー30g/m2を混合堆積し、幅30mm、長さ80mm、厚さ8mmの吸収体を得た。これを上部吸収層として用いた。
繊維シート:実施例1で製造した不織布(繊維シート)を、幅55mm、長さ110mmにカットし、第2繊維層側を上部吸収層のパルプに当接する向きに重ね合わせた。
下部吸収層:パルプ350g/m2、吸水ポリマー50g/m2を混合積繊し、坪量20g/m2の吸収紙で包んだ。更にスチールのエンボスロール(常温/フラットパターン)で、接圧30kgで圧縮し、幅65mm、長さ190mm、厚さ4mmの長方形の吸収シートを得た。この吸収シートの長手方向の端部を円弧状をなすように切断して下部吸収層とした。
裏面シート:坪量30g/m2のポリエチレンフィルムを用いた。
【0059】
組み立て方法:裏面シートとして用いる前記ポリエチレンフィルムの全面に、接着剤を坪量10g/m2でスパイラル塗工し、その上に、下部吸収層、上部吸収層、実施例1で製造した不織布(繊維シート)、及び表面シートを、この順に重ね合わせ、中高部の周囲に、該中高部を取り囲むようなエンボス溝を形成し、ナプキンの周縁部を全周シールした後、ナプキンの形状に周縁部をカットし、製品長210mm、幅75mmの生理用ナプキンを得た。
【0060】
また、表面シートと上部吸収層との間に介在させる不織布(繊維シート)を、上述した実施例2〜5及び比較例1,2でそれぞれ得られた不織布(繊維シート)に代える以外は、同様にして生理用ナプキンを作成した。
【0061】
(E)吸収時間及びウエットバック量の測定
準備するものとしては直径10mmφの穴の開いたアクリル製注液プレート(注液部に内径22mmφ、高さ40mmの円筒付き)、アクリル板、No.2のろ紙(80×190mm10枚1セット)、重り、馬脱繊維血で、予め製品全面(若しくはプレートで荷重がかかる面積の範囲)に5g/cm2の荷重がかかるように注液プレートの重量を調整し、更に同じく50g/cm2の荷重がかかるようにアクリル板の重量を調整しておく。
製品を上向きに広げ、注液プレートを静かに載せ、5g/cm2になるよう荷重する。馬脱繊維血5gを10mlビーカーに測り取り、注液プレートの円筒部に一気に注ぎ込む。5gの液が全て吸収されるまでに要した時間を吸収時間とする。
注入開始後1分後に注液プレートを外し、予め秤量済みのNo.2ろ紙10枚を表面に載せ、更にアクリルプレートと重りを静かに載せて50g/cm2荷重を1分間かける。1分後プレートを外してろ紙10枚を取り出し、その重量を測定する。重量増加分をウエットバックとする。3点平均を測定値とする。
【0062】
(F)装着テスト
女性20人に各サンプルを渡し、装着後、次の項目について一番気持ちに近いワードを選択してもらった。20人の平均値を集計結果とした。いずれも、数字が小さいほど良好な結果を示す。
柔らかさ:1.非常に柔らかい、2.柔らかい、3.やや柔らかい、4.どちらともいえない、5.やや硬い、6.硬い
フィット性:1.非常にフィットする、2.フィットする、3.ややフィットする、4.どちらともいえない、5.ややフィットしない、5.フィットしない
【0063】
吸収性物品についての評価結果を表2に示した。
【0064】
【表2】

【0065】
表2に示す結果からから判るように、実施例に示すナプキンはいずれも、血液の吸収時間が早く、液戻りも少ないことが判る。(実施例1、2の様に第2繊維シートに短い親水性繊維を含むクッションシートを用いると吸収時間が特に早く、更に実施例1の様に短い親水性繊維の太さが太いと(親水繊維が起立して、上部吸収層に刺さり易い為)吸収時間、液戻り共に特別良好であることが判る。)また、実施例に示すナプキンはいずれも、発明に関る各繊維シートの良好なクッション性を反映して、柔らかさ、フィット性共に非常に良好である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は、本発明の繊維シートの一実施形態である繊維シートを備えた、本発明の吸収性物品の一実施形態である生理用ナプキンを示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の繊維シートの一実施形態を示す斜視図である。
【図3】図3は、図1のII−II線断面図である。
【図4】図4は、本発明の繊維シートの製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図5】図5は、本発明の繊維シートの他の実施形態における接合部の配置を示す模式図である。
【図6】図6は、実施例に用いたエンボスパターンを示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1 生理用ナプキン(吸収性物品)
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収層
41 上部吸収層
42 下部吸収層
5 繊維シート
51 第1繊維層
52 第2繊維層
53 接合部
54 突出部
55 凹部
56 接合部に囲まれた領域
57 接合部の近傍
58 接合部から遠い部分
6 中高部
7 エンボスロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性を有する第1繊維層と第2繊維層とを有し、第1繊維層と第2繊維層とが部分的に接合されて接合部が形成されており、第2繊維層は、前記接合部以外の部分が、第1繊維層側とは反対側に向かって凸の突出部を形成しており、
第1繊維層は、捲縮繊維を含み、前記伸縮性が主として該捲縮繊維の伸縮性に由来するものであり、前記接合部の近傍における捲縮繊維の捲縮の程度が、該接合部から遠い部分における捲縮繊維の捲縮の程度より大きい、繊維シート。
【請求項2】
前記繊維シートは、MD方向及びCD方向に伸縮性を有し、MD方向及びCD方向の何れにおいても、幅30mmの試験片の50g荷重時伸長率が25%以上であり且つ50g荷重1分後の開放長の伸長前長さに対する割合が110%以内である、請求項1記載の繊維シート。
【請求項3】
前記突出部の断面形状がアーチ状である、請求項1又は2記載の繊維シート。
【請求項4】
第2繊維層は、平均繊維長が異なる2種類の繊維を含む、請求項1〜3の何れかに記載の繊維シート。
【請求項5】
前記2種類の繊維のうち、繊維長が長い方の繊維が熱可塑性樹脂からなる繊維であり、繊維長が短い方の繊維が本質的に親水性の繊維である、請求項1〜4の何れかに記載の繊維シート。
【請求項6】
請求項1記載の繊維シートの製造方法であって、
潜在捲縮性繊維を含む第1の繊維集合体と第2の繊維集合体との積層体に熱エンボス加工を施すことにより、多数の接合部を形成すると共に該接合部近傍の潜在捲縮性繊維に螺旋状の捲縮を発現させる工程、及び該接合部を形成した後の積層体に、前記熱エンボス加工の温度より低温の熱風処理を施して、該積層体を、MD方向及びCD方向の両方向に収縮させる工程を具備する、繊維シートの製造方法。
【請求項7】
第1及び第2の繊維集合体として、何れも構成繊維間が結合されていないウエブを用いる請求項6記載の繊維シートの製造方法。
【請求項8】
請求項1記載の繊維シートを含み、該繊維シートは、前記第1繊維層側を肌当接面側に向けた状態に配されている吸収性物品。
【請求項9】
液透過性の表面シート、裏面シート及びこれら両シート間に介在配置された液保持性の吸収層を備え、縦長に形成されており、
幅方向中央部に、着用者の肌側に向かって突出する中高部を有し、該中高部における前記吸収層は、上部吸収層及び下部吸収層が積層された構造を有しており、
前記繊維シートが、前記中高部における前記表面シートと前記上部吸収層との間に、前記第2繊維層側を該上部吸収層に接触させた状態に配されている、請求項8記載の吸収性物品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−231619(P2008−231619A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73501(P2007−73501)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】