説明

繊維反応性染料の混合物、それらの調製及び使用

本発明は、その変化形態が請求項1に記載のような、一般式(I)の少なくとも1種の染料と、一般式(II)若しくは一般式(III)若しくは一般式(IV)のいずれかの少なくとも1種の染料とを含むことを特徴とする染料混合物、その製造方法、及びその使用方法に関する。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応性染料の分野に関し、ヒドロキシル基又はアミド基を含む繊維質材料を染色及び捺染するために有用な染料混合物に関する。
【背景技術】
【0002】
数多くのヒドロキシル又はアミド含有繊維質材料を染色及び捺染するための反応性染料及び反応性染料混合物が文献に記載されており、そのような文献の例としては、特許文献1及び特許文献2が挙げられる。しかしながら、それら従来の染料は、特に濃いブラック及びネービーの色調において、染色及び捺染された製品の堅牢性に関して現在期待されているレベルには達しない。
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1 275 700A2号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2004 028 919A1号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
したがって、本発明は、それによる染色が、意外にも、欧州特許出願公開第1 275 700A2号明細書及び独国特許出願公開第10 2004 028 919A1号明細書に記載されている染料混合物よりもはるかに優れた堅牢性を有する染料混合物を提供するが、その塩素堅牢性は特に注目に値する。本発明の混合物はさらに、その混合物中の個々の染料に比較して改良されたビルドアップ性も与える。
【0005】
本発明の染料混合物は、下記の一般式(I)
【化1】

[式中、
1−1は、β位においてアルカリ脱離可能な置換基によって置換された、ビニルスルホン又はエチルスルホンを表し、
1−2及びV1−3は独立して、水素又は−SOMを表し、
1−4は、水素、−SOM、β位においてアルカリ脱離可能な置換基によって置換された、ビニルスルホン又はエチルスルホンを表し、
1−5は、水素、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルコキシ、−SOM、臭素又は塩素を表し、
1−6は、水素、(C〜C)−アルキル、−COOM、−COO−(C〜C)−アルキルを表し、
Mは、水素、アルカリ金属、アンモニウム又は等価のアルカリ土類金属イオンを表す。]
の少なくとも1種の染料と、
下記の一般式(II)
【0006】
【化2】

[式中、
2−1〜R2−4は独立して、水素、−SOM、(C〜C)−アルキル又は−COOR2−5を表し、
は、−NR2−6を表し、
2−5及びR2−6は独立して、水素又は(C〜C)−アルキルを表し、
は以下の基の一つを表し:
【0007】
【化3】

2−1及びV2−2は独立して、水素、−SOM、β位においてアルカリ脱離可能な置換基によって置換された、ビニルスルホン又はエチルスルホンを表し、
2−3及びV2−5は、β位においてアルカリ脱離可能な置換基によって置換された、ビニルスルホン又はエチルスルホンを表し、
2−4及びV2−6は独立して、水素又は−SOMを表し、そして
Halは、ハロゲンを表し、
そして、Mは先に定義されたものである。]、
若しくは下記の一般式(III)
【0008】
【化4】

[式中、
3−1及びW3−2は独立して、水素、(C〜C)−アルキル、−OSOMにより置換された(C〜C)−アルキルを表すか、又は以下の基の一つを表し:
【0009】
【化5】

3−1及びD3−2は独立して、以下の基の一つを表し:
【0010】
【化6】

3−1及びV3−12は独立して、水素、−SOM、β位においてアルカリ脱離可能な置換基によって置換された、ビニルスルホン又はエチルスルホンを表し、そして
nは、1、2、3又は4を表し、
そして、M及びHalはそれぞれ先に定義されたものであり、
ここで、一般式(III)の染料は、V3−1〜V3−12が独立して水素又は−SOMを表すときには、少なくとも一つの次式の構造要素を含み、
【0011】
【化7】

式中、Halは先に定義されたものである。]、
若しくは下記の一般式(IV)
【0012】
【化8】

[式中、
4−1は次式の基を表し、
【0013】
【化9】

4−2は、Y4−1と同じ意味合いを有するか、あるいは次式の基の一つを表し:
【0014】
【化10】

は、β位においてアルカリ脱離可能な置換基によって置換された、ビニルスルホン若しくはエチルスルホン、又は−NR4−1を表し、
は以下の基の一つを表し:
【0015】
【化11】

4−1〜V4−4並びにV4−9〜V4−10は独立して、水素又は−SOMを表し、
4−1は、水素、メチル又はエチルを表し、
4−5〜V4−7は独立して、水素、−SOM、β位においてアルカリ脱離可能な置換基によって置換された、ビニルスルホン又はエチルスルホンを表し、そして
4−8は、β位においてアルカリ脱離可能な置換基によって置換された、ビニルスルホン又はエチルスルホンを表し、
そして、Mは先に定義されたものである。]
のいずれかの少なくとも1種の染料とを含むことを特徴とする。
【0016】
(C〜C)−アルキル基及び(C〜C)−アルキル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、それらはたとえば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル又はsec−ブチルを表す。(C〜C)−アルキル基は、たとえばペンチル又はヘキシルを表していてもよい。好適な(C〜C)−アルキル基及び(C〜C)−アルキル基は、メチル及びエチルである。
【0017】
同じ論理は(C〜C)−アルコキシ基にも適用され、したがってそれらはたとえば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ又はi−プロポキシを表すことができるが、メトキシであるのが特に好ましい。
【0018】
エチルスルホンのβ位におけるアルカリ脱離可能な置換基の例としては、塩素、−OSOM、−S−SOM、−OPO、−SOM−置換されたベンゾイルオキシ及び(C〜C)−アルカノイルオキシたとえばアセチルオキシが挙げられるが、ここでMは先に定義されたものである。エチルスルホンのβ位におけるアルカリ脱離可能な置換基は好ましくは塩素及び−OSOM、特に好ましくは−OSOMである。
【0019】
Mのアルカリ金属は、具体的にはナトリウム、カリウム及びリチウムである。その当量をMとして表すことが可能なアルカリ土類金属、具体的にはカルシウム及びマグネシウムである。Mが水素、ナトリウム及びカリウムを表しているのが好ましい。
【0020】
ハロゲンは、具体的にはフッ素、塩素及び臭素を表す。
【0021】
一般式(I)〜(IV)の染料において、β位においてアルカリ脱離可能な置換基によって置換された、ビニルスルホン又はエチルスルホンを表す置換基は、具体的な染料がその他の点では同一であったとしても、両方の意味合いを有している。より詳しくは、それらの置換基は、ビニルスルホン及びβ−スルファトエチルスルホンの意味合いを有していることができる。この場合において、ビニルスルホニル基を有する特定の染料の割合は、具体的な染料全体の量を基準にして約30モル%までである。
【0022】
本発明の染料混合物、一般式(I)の少なくとも1種の染料に加えて、さらに一般式(II)及び(III)、又は(II)及び(IV)、又は(III)及び(IV)の染料をさらに含んでいてもよい。さらには、一般式(I)の少なくとも1種の染料に加えて、それらに一般式(II)、(III)及び(IV)の染料がさらに含まれていてもよい。
【0023】
本発明における好適な染料混合物には、下記の一般式(Ia)
【0024】
【化12】

[式中、
1a−1は、ビニルスルホン、スルファトエチルスルホン又はクロロエチルスルホンを表し、
1a−4は、水素、−SOM、ビニルスルホン、スルファトエチルスルホン又はクロロエチルスルホンを表し、そして
Mは、水素、ナトリウム又はカリウムを表す。]
の染料と、
一般式(II)、(III)又は(IV)の内の少なくとも1種の染料とを含む。
【0025】
本発明における好適な染料混合物には、一般式(I)の少なくとも1種の染料と、
一般式(IIb)
【0026】
【化13】

[式中、
2b−1〜R2b−4は独立して、水素、−SOM、メチル又は−COOR2b−5を表し、
2bはNR2b−62bを表し、
2b−5及びR2b−6は独立して、水素、メチル又はエチルを表し、
2bは以下の基の一つを表し:
【0027】
【化14】

2b−1及びV2b−2は独立して、水素、−SOM、ビニルスルホン、スルファトエチルスルホン又はクロロエチルスルホンを表し、
2b−3及びV2b−5は独立して、ビニルスルホン、スルファトエチルスルホン又はクロロエチルスルホンを表し、
2b−4及びV2b−6は独立して、水素又は−SOMを表し、そして
Mは、水素、ナトリウム又はカリウムを表す]
の少なくとも1種の染料とを含むものがさらに挙げられる。
【0028】
本発明における好適な染料混合物には、一般式(I)の少なくとも1種の染料と、
下記の一般式(IIIb)
【0029】
【化15】

[式中、
3b−1及びW3b−2は独立して、水素、(C〜C)−アルキル、−OSOMにより置換された(C〜C)−アルキルを表すか、又は以下の基の一つを表し:
【0030】
【化16】

3b−2は独立して、次式の基の一つを表し、
【0031】
【化17】

3b−1〜V3b−5、及びV3b−9〜V3b−11は独立して、水素、SOM、ビニルスルホン、スルファトエチルスルホン又はクロロエチルスルホンを表し、
3b−6及びV3b−12は、ビニルスルホン、スルファトエチルスルホン又はクロロエチルスルホンを表し、
nは、数1、2、3又は4を表し、そして
Mは、水素、ナトリウム又はカリウムを表す]
の少なくとも1種の染料とを含むものがさらに挙げられる。
【0032】
最後に、本発明における好適な染料混合物は、一般式(I)の少なくとも1種の染料と、
下記の一般式(IVb)
【0033】
【化18】

[式中、
4b−1は次式の基を表し、
【0034】
【化19】

4b−2は、Y4b−1と同じ意味合いを有するか、あるいは次式の基の一つを表し:
【0035】
【化20】

4bは、ビニルスルホン、スルファトエチルスルホン、クロロスルホン又はNR4b−44bを表し、
4bは次式の基を表し、
【0036】
【化21】

式中、
4b−1〜V4b−3、及びV4b−9〜V4b−10は独立して、水素又はSOMを表し、
4b−5〜V4b−7は独立して、水素、SOM、ビニルスルホン、スルファトエチルスルホン又はクロロエチルスルホンを表し、
4b−8は、ビニルスルホン、スルファトエチルスルホン又はクロロエチルスルホンを表し、
4b−4は水素、メチル又はエチルを表し、そして
Mは、水素、ナトリウム又はカリウムを表す]
の少なくとも1種の染料とを含むものである。
【0037】
本発明において特に好適な染料混合物は、一般式(Ia)の少なくとも1種の染料と、一般式(IIb)の、又は一般式(IIIb)の、又は一般式(IVb)のいずれかの少なくとも1種の染料とを含むものである。
【0038】
本発明において特に好適な染料混合物は、一般式(Ic)
【0039】
【化22】

[式中、
1c−1はビニルスルホン又はスルファトエチルスルホンを表し、
1c−4は−SOMを表し、そして
Mは水素又はナトリウムを表す]
の染料と、
一般式(II)、(III)又は(IV)の内の少なくとも1種の染料とを含む。
【0040】
本発明における特に好適な染料混合物としては、一般式(I)の少なくとも1種の染料と、
一般式(IIC)
【0041】
【化23】

[式中、
2c−1〜R2c−3は独立して、水素又はメチルを表し、
2c−4は水素又はSOMを表し、
2cは−NHD2cを表し、
2cは以下の基の一つを表し:
【0042】
【化24】

2c−1及びV2c−3は独立して、水素又はSOMを表し、
2c−2は、水素、ビニルスルホン又はスルファトエチルスルホンを表し、
2c−4はビニルスルホン又はスルファトエチルスルホンを表し、そして
Mは水素又はナトリウムを表す]
の少なくとも1種の染料とを含むものがさらに挙げられる。
【0043】
本発明における特に好適な染料混合物としては、一般式(I)の少なくとも1種の染料と、
一般式(IIIc)
【0044】
【化25】

[式中、
3c−1及びW3c−2は独立して、(CH−OSOM又は以下の基の一つを表し、
【0045】
【化26】

3c−1〜V3c−4は独立して、水素、SOM、ビニルスルホン又はスルファトエチルスルホンを表し、
3c−5はビニルスルホン又はスルファトエチルスルホンを表し、
3c−6は水素又はSOMを表し、
oは、0又は1を表し、そして
Mは水素又はナトリウムを表す]
の少なくとも1種の染料とを含むものがさらに挙げられる。
【0046】
最後に、本発明における好適な染料混合物は、一般式(I)の少なくとも1種の染料と、
一般式(IVc)
【0047】
【化27】

[式中、Y4c−1は次式の基を表し、
【0048】
【化28】

4c−2は、Y4c−1と同じ意味合いを有するか、あるいは次式の基の一つを表し:
【0049】
【化29】

4cはビニルスルホン、スルファトエチルスルホン又は下記の基の一つを表し:
【0050】
【化30】

4c−1〜V4c−3は、−SOMを表し、
4c−5〜V4c−7は独立して、水素、−SOM、ビニルスルホン又はスルファトエチルスルホンを表し、
4c−8は、ビニルスルホン又はスルファトエチルスルホンを表し、
4c−4、V4c−9及びV4c−10は独立して、水素又は−SOMを表し、そして
Mは水素又はナトリウムを表す]
の少なくとも1種の染料とを含むものである。
【0051】
本発明において極めて特に好適な染料混合物は、一般式(Ic)の少なくとも1種の染料と、一般式(IIC)又は一般式(IIIc)又は一般式(IVc)のいずれかの少なくとも1種の染料とを含むものである。
【0052】
本発明の染料混合物は、一般式(I)と、(II)及び/又は(III)及び/又は(IV)との染料を、広い限度内で変化させることが可能な重量比で含む。典型的には、一般式(I)の染料を90重量%〜10重量%の量で、そして、一般式(II)及び/又は(III)及び/又は(IV)の染料を10重量%〜90重量%の量で存在させる。好ましくは、一般式(I)の染料を80重量%〜20重量%の量で、そして、一般式(II)及び/又は(III)及び/又は(IV)の染料を20重量%〜80重量%の量で存在させる。より好ましくは、一般式(I)の染料を65重量%〜35重量%の量で、そして、一般式(II)及び/又は(III)及び/又は(IV)の染料を35重量%〜65重量%の量で存在させる。
【0053】
同じ論理が、一般式(Ia)、(IIB)、(IIC)、(IIIb)、(IIIc)、(IVb)又は(IVc)の染料を含む、本発明における染料混合物にも適用される。
【0054】
本発明の染料混合物は、従来通りに、たとえば一般式(I)と、(II)、(III)又は(IV)との個々の染料を合わせて機械的に混合することによって得ることができるが、染料粉体若しくは粒子の形態であっても、一般式(I)と、(II)、(III)又は(IV)の染料の合成したままの溶液の形態であっても、あるいは一般式(I)と、(II)、(III)又は(IV)の染料の水溶液であってもよい。上述の染料溶液には、慣用される助剤がさらに含まれていてもよい。
【0055】
一般式(I)、(II)、(III)及び(IV)の染料は、個別の物質としては公知であり、それらの調製法は文献に記載があり、当業者にはこれも公知である。それらは、個別の物質として市販されており、従来通りに調製することもできる。
【0056】
本発明による染料混合物は、固体又は液体(溶解させた)形状の調製物として存在させることが可能である。
【0057】
固体の形態の場合には、それらには必要に応じた量の水溶性特に繊維反応性の染料の場合に常用される電解質塩、たとえば塩化ナトリウム、塩化カリウム及び硫酸ナトリウムを含み、さらに、商業的な染料において常用される助剤、たとえば、水溶液におけるpHを3〜7の間に設定できるような緩衝剤物質、たとえば酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム及びリン酸水素二ナトリウム、さらには染色助剤、防塵加工剤及び少量の乾燥剤などが含まれ、それらが液状の水溶液(捺染糊では常用のタイプの増粘剤の含量も含めて)として存在する場合には、それらにはそのような調製物を長持ちさせるための物質、たとえば防黴剤などが含まれていてもよい。
【0058】
本発明の染料混合物には繊維反応性染料が、各種所望の量でさらに含まれていてもよい。たとえば、それらは、染料混合物をシェーディング(shading)させるための染料を5重量%までの量で含んでいてもよい。そのようなさらなる染料は、慣用される混合法によって添加することもでき、あるいは別な方法として、そのさらなる染料の1種又は複数の前駆体が一般式(I)及び/又は(II)及び/又は(III)及び/又は(IV)の染料の1種又は複数の前駆体と同一である場合には、本発明における染料混合物を合成するのと同じ反応バッチの中で化学的に合成して、その染料混合物の中に導入することもできる。
【0059】
本発明はさらに、ヒドロキシル含有及び/又はカルボキサミド含有材料を染色又は捺染するための本発明の染料混合物の使用、又はヒドロキシル含有及び/又はカルボキサミド含有材料を染色又は捺染するためのプロセスを提供するが、そのためには、染料混合物をその材料に適用し、加熱の手段によるか、及び/又はアルカリ性薬剤の手段によってその材料の上に固着させるが、そのプロセスでは本発明による染料混合物を使用する。得られた染色物及び捺染物は、ネービー色からブラック色である。
【0060】
ヒドロキシル含有材料は天然由来であっても、合成由来であってもよい。例を挙げれば、セルロース繊維材料、好ましくは綿、リネン、麻、ジュート及びラミー繊維、再生セルロース繊維たとえば好ましくはステープルビスコース及びフィラメントビスコース、化学改質セルロース繊維、たとえばアミノ化セルロース繊維、さらにはポリビニルアルコールなどがある。
【0061】
カルボキサミド含有材料としては、たとえば、合成及び天然のポリアミド及びポリウレタン、たとえば羊毛その他の動物の毛、絹、皮革、ナイロン−6,6、ナイロン−6、ナイロン−11及びナイロン−4などが挙げられる。
【0062】
上述のヒドロキシル含有及び/又はカルボキサミド含有材料は、各種の形態で存在させることができる。たとえば、紙及び皮革のようなシート状の構造の形態で、ナイロンフィルムのようなフィルムの形態で、たとえばポリアミド及びポリウレタンからなるバルクマス(bulk mass)の形態で、特にはたとえばセルロース繊維のような繊維の形態で存在させる。それらの繊維は、織物繊維たとえば織布又は糸の形態であるか、あるいは「かせ」若しくは巻取りパッケージの形態であるのが好ましい。
【0063】
本発明による染料混合物は、上記の材料、特に上記の繊維材料の上に、水溶性染料特に繊維反応性染料のための公知の染着技術を用いることによって、染着及び固着させることができる。
【0064】
たとえば、セルロース繊維に対しては、長浴(long liquor)からだけではなく短浴(short liquor)から、たとえば液と物品の比を5:1から100:1、好ましくは6:1から30:1とした吸尽法で、各種の酸結合剤及び場合によっては必要なだけの量の塩化ナトリウム又は硫酸ナトリウムのような中性塩を使用することで、それらの染料混合物から非常に良好なカラーイールドを有する染色ができる。染着は水浴から行うのが好ましく、その時の温度は40〜105℃、場合によっては過圧下で130℃までであり、好ましくは30〜95℃、特に好ましくは45〜65℃であり、慣用される染色助剤の有無は問わない。
【0065】
ここでの一つの可能な方法としては、材料を温浴に浸漬し、浴を徐々に加熱して所望の染色温度にまで上げ、その温度で染色プロセスを仕上げる方法がある。染料の吸尽を加速する中性塩は、場合によっては、浴の温度が実際の染色温度に達した後でのみ添加するようにすることもできる。
【0066】
同様に、パジングプロセスでも、セルロース繊維に対する優れたカラーイールドと非常に良好なカラービルドアップ性を与えるが、この染料は、従来通りに、室温又はたとえば約60℃までの加温でのバッチング、又は、連続的に、たとえばパッド−ドライ−パッド蒸気プロセス、蒸熱処理、又は乾熱を使用した方法などによって、固着させることが可能である。
【0067】
同様にして、セルロース繊維に対する通常の捺染プロセスによって明瞭な輪郭及び鮮明な白地を有する強力な着色捺染が得られるが、そのような捺染プロセスは、1段法で、たとえば重炭酸ナトリウム又はある種の他の酸結合剤を含む捺染糊とともに捺染し、次いで100〜103℃で蒸熱処理するか、2段法で、たとえば、中性又は弱酸性の捺染色とともに捺染し、次いでその捺染した材料を加熱した電解質含有アルカリ浴を通すか又はアルカリ性の電解質含有パジング液を用いてオーバーパジングするかのいずれかによって固着させ、次いで、アルカリでオーバーパッドした材料をバッチングするか又は蒸熱処理するか又は乾熱処理にかける。固着条件に変動があったとしても、捺染の結果への影響は、たとえあったとしても、ごくわずかである。
【0068】
慣用される熱固着プロセスによる乾熱の手段によって固着させる場合には、120〜200℃の加熱空気を使用する。慣用される101〜103℃の水蒸気に加えて、160℃までの温度で過熱水蒸気及び高圧水蒸気を使用することも可能である。
【0069】
本発明による染料混合物の染料をセルロース繊維の上に固着させる効果を与える酸結合剤としては、たとえば、無機酸又は有機酸のアルカリ金属及び同様のアルカリ土類金属の水溶性塩基性塩、又は、加熱によってアルカリを放出する化合物、及びさらにはアルカリ金属シリケートなどを挙げることができる。特に好適なものとしては、アルカリ金属水酸化物、及び弱から中程度の無機又は有機酸のアルカリ金属塩が挙げられるが、アルカリ金属化合物として好ましいのは、ナトリウム及びカリウム化合物である。そのような酸結合剤の例を挙げれば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ギ酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、トリクロロ酢酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム又は水ガラス又はそれらの混合物、たとえば水酸化ナトリウム水溶液と水ガラスの混合物などがある。
【0070】
本発明による染料混合物は、染色又は捺染によってセルロース繊維材料に染着させた際に傑出した色強度が得られ、時には、アルカリ金属又はアルカリ土類金属化合物が全く存在しないか非常に少量しか存在しない条件で達成できる点で注目に値する。これらの特別なケースではたとえば、薄い色濃度を得るには、電解質塩は不要、中程度の色濃度を得るには5g/L以下の電解質塩、濃色の色調を得るには10g/L以下の電解質塩しか必要としない。
【0071】
本発明においては、薄い色濃度とは染色する基材を基準にして2重量%の染料を使用することを指し、中程度の色濃度とは染色する基材を基準にして2〜4重量%の染料を使用することを指し、濃色の色調とは染色する基材を基準にして4〜10重量%の染料を使用することを指す。
【0072】
本発明による染料混合物により得られる染色物及び捺染物は明るい色調を有しているが、さらに詳しくは、セルロース繊維材料に対する染色及び捺染は、良好な耐光堅牢性及び特に良好な湿潤堅牢性(wetfastness)、たとえば洗濯、縮充、水分、海水、クロス染色及び酸性及びアルカリ性の汗に対する堅牢性、さらには、プリーツ加工、加熱プレス及び摩擦色落ちに対する良好な堅牢性を有している。特に塩素堅牢性が極めて良好である。
【0073】
さらに、本発明による染料混合物は、羊毛の繊維反応性染色にも使用することが可能である。これにはさらに、非フェルト仕上げ又は低フェルト仕上げをした羊毛も含まれる(そのような仕上げについては、たとえば、H.Rath、Lehrbuch der Textilchemie(Springer-Verlag)第3版(1972年)、第295〜299頁、特にヘルコセット(Hercosett)プロセスによる仕上げ(第298頁)、J.Soc.Dyers and Colourists、1972年第93〜99頁及び1975年第33〜44頁を参照されたい)。本明細書においては、羊毛に対する染色プロセスは、従来通りに、酸性媒体中で実施する。たとえば染浴に、酢酸及び/又は酢酸アンモニウム、又は酢酸及び硫酸アンモニウム又は酢酸ナトリウムを添加して、所望のpHとすることができる。受容可能な均染性を有する染色をするためには、通常使用される均染剤を添加することが推奨されるが、そのようなものとしてはたとえば、シアヌル酸塩化物と3倍モル量のアミノベンゼンスルホン酸及び/又はアミノナフタレンスルホン酸との反応生成物をベースにした均染剤、又はたとえばステアリルアミンとエチレンオキシドの反応生成物をベースにした均染剤などが挙げられる。
【0074】
たとえば、本発明による染料混合物は、吸尽プロセスで使用するのが好ましく、その場合まずpHが約3.5〜5.5となるようにpH調節した酸性の染浴から、染色時間の最後までに、pHを中性から場合によってはpH8.5までの弱アルカリ性の範囲にまで変化させて、特に非常に濃い色の染色をする場合には、本発明による染料混合物の染料と繊維との間に完全な反応による結合を作らせる。それと共に、反応による結合に与らなかった染料の部分は除去する。
【0075】
本明細書に記載した方法は、他の天然ポリアミド又は合成ポリアミド及びそれらのポリウレタンとの混合物からなる繊維材料を染色させる場合にも適用される。通常は、染色すべき材料を温度約40℃の浴に浸漬し、その中でしばらく撹拌し、次いで染浴を所望の弱酸性のpH、好ましくは弱酢酸酸性のpHに調節するが、実際の染色は60〜98℃の温度で実施される。しかしながら、この染色は沸騰温度又は、密閉した染色装置の中で106℃までの温度で実施することもできる。
【0076】
本発明による染料混合物の水への溶解性が非常に高いので、それらを通常の連続染色プロセスにおいても好都合に使用することができる。
【0077】
本発明の染料混合物はさらに、デジタル捺染プロセス、特にデジタル織物捺染において使用することもできる。このためには、本発明の染料混合物をインキの中に配合する必要がある。本発明による染料混合物を含むデジタル捺染のための水性インキもまた同様に、本発明の主題の一部を形成する。
【0078】
本発明のインキには、本発明の染料混合物を、インキの全重量を基準にして、好ましくは0.1重量%〜50重量%、より好ましくは1重量%〜30重量%、最も好ましくは1重量%〜15重量%の範囲の量で含む。
【0079】
本発明の染料混合物と同様に、それらのインキには、所望により、デジタル捺染において使用されるさらなる反応性染料が含まれていてもよい。
【0080】
連続流動プロセスで使用する本発明のインキでは、電解質を添加することにより、0.5〜25mS/mの導電率になるようにすることも可能である。有用な電解質としてはたとえば、硝酸リチウム及び硝酸カリウムなどが挙げられる。本発明のインキでは、全量で1〜50重量%、好ましくは5〜30重量%の有機溶媒を含むことができる。好適な有機溶媒としてはたとえば以下のようなものが挙げられる:アルコール類たとえば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール、ペンチルアルコール、多価アルコール類たとえば1,2−エタンジオール、1,2,3−プロパントリオール、ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2,3−プロパンジオール、ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、D,L−1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2−オクタンジオール、ポリアルキレングリコール類たとえば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1〜8個のアルキレン基を有するアルキレングリコール類たとえば、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、チオグリコール、チオジグリコール、ブチルトリグリコール、ヘキシレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、多価アルコールの低級アルキルエーテル類たとえば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールイソプロピルエーテル、ポリアルキレングリコールエーテル類たとえば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールグリセロールエーテル、ポリエチレングリコールトリデシルエーテル、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル、アミン類たとえば、メチルアミン、エチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−アセチルエタノールアミン、N−ホルミルエタノールアミン、エチレンジアミン、尿素誘導体類たとえば、尿素、チオ尿素、N−メチル尿素、N,N’−イプシロンジメチル尿素、エチレン尿素、1,1,3,3−テトラメチル尿素、アミド類たとえば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトアミド、ケトン類又はケトアルコール類たとえば、アセトン、ジアセトンアルコール、環状エーテル類たとえば、テトラヒドロフラン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2−ブトキシエタノール、ベンジルアルコール、2−ブトキシエタノール、ガンマ−ブチロラクトン、イプシロン−カプロラクタム、さらにスルホラン、ジメチルスルホラン、メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン、ジメチルスルホン、ブタジエンスルホン、ジメチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、N−シクロヘキシルピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチルピロリドン、2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、1−(3−ヒドロキシプロピル)−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリノン、1,3−ビスメトキシメチルイミダゾリジン、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−(2−プロポキシエトキシ)エタノール、ピリジン、ピペリジン、ブチロラクトン、トリメチルプロパン、1,2−ジメトキシプロパン、ジオキサン、酢酸エチル、エチレンジアミンテトラアセテート、エチルペンチルエーテル、1,2−ジメトキシプロパン、及びトリメチルプロパン。
【0081】
本発明のインキには慣用される添加剤をさらに含んでいてもよく、たとえば粘度調整剤を用いて、温度範囲20〜50℃における粘度を1.5〜40.0mPasの範囲とする。好適なインキでの粘度は1.5〜20mPas、特に好適なインキでの粘度は1.5〜15mPasである。
【0082】
有用な粘度調整剤にはレオロジー添加剤を挙げることができるが、たとえば:
ポリビニルカプロラクタム、ポリビニルピロリドン及びそのコポリマー、ポリエーテルポリオール、複合増粘剤、ポリ尿素、ポリウレタン、アルギン酸ナトリウム、変性ガラクトマンナン、ポリエーテル尿素、ポリウレタン、ノニオン性セルロースエーテルなどがある。
【0083】
その他の添加剤として、本発明のインキに界面活性剤を加えて界面張力を20〜65mN/mに調整することもできるが、これは使用するプロセス(サーマル又はピエゾ技術)に応じて必要な場合に採用する。有用な界面活性剤としてはたとえば、各種界面活性剤、特にノニオン性界面活性剤、ブチルジグリコール、1,2−ヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0084】
本発明のインキにはさらに、通常使用される添加物たとえば真菌や細菌の成長を抑制するための物質を、インキの全重量を基準にして0.01〜1重量%の量で加えることができる。
【0085】
このインキは、従来通りに、成分を水に混合させることによって調製することができる。
【0086】
本発明のインキは、幅広く各種の前処理をした材料、たとえば絹、皮革、羊毛、ポリアミド繊維及びポリウレタン、特に各種のセルロース系繊維材料を捺染するための、インクジェット捺染プロセスにおいて特に有用である。ブレンド布地、たとえば綿、絹、羊毛とポリエステル繊維若しくはポリアミド繊維とのブレンド物もまた、同様に捺染することができる。
【0087】
捺染インキに反応性染料のためのすべての固着薬剤及び増粘剤がすでに含まれている、通常の織物の捺染の場合とは対照的に、デジタル又はインクジェットプリントの場合には、別の前処理工程において助剤を織物基材に塗布しておかなければならない。
【0088】
たとえばセルロース及び再生セルロース繊維、さらには絹及び羊毛のような織物基材の前処理は、捺染に先立って水性アルカリ液で行う。反応性染料を固着させるためには、アルカリたとえば炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、アルカリ供与体たとえばクロロ酢酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、ヒドロトロープ物質(hydrotropic substance)たとえば尿素、還元抑制剤たとえばニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム、及び染色インクを塗布したときの意匠(motives)の流れを防ぐ目的の増粘剤たとえばアルギン酸ナトリウム、変性ポリアクリレート又は高度にエーテル化されたガラクトマンナンなどが必要である。
【0089】
これらの前処理用反応剤は、好適なアプリケータを使用して所定の量を均一に織物基材に塗布するが、そのためにはたとえば、2本又は3本ロールパッド、無接触スプレー技術を用いるか、発泡塗布によるか、あるいは程よく適合させたインクジェット技術を用い、その後に乾燥させる。
【0090】
捺染後に、その織物繊維材料を120〜150℃で乾燥させてから固着させる。
【0091】
反応性染料を用いて調製したインクジェットプリントの固着は、室温で、又は飽和スチーム、過熱スチーム、加熱空気、高周波、赤外線照射、レーザー又は電子ビーム、あるいはその他の適切なエネルギー転換技術を用いて実施することができる。
【0092】
1相及び2相固着プロセスの間では違いがある。1相固着においては、必要な固着用の薬剤はすでに織物基材の上に存在する。2相固着においては、この前処理は不要である。固着で必要なのはアルカリだけで、これはインクジェットプリントに引き続いて、途中で乾燥させることなく、固着プロセスの前に塗布する。たとえば尿素又は増粘剤などの添加物をさらに加える必要はない。
【0093】
固着の後には捺染後処理を行うが、これは、良好な堅牢性、高い艶及び申し分のない白地を得るための必要条件である。
【0094】
特にセルロース系繊維材料の上に、本発明のインキを用いて製造された染色物は、酸性領域のみならずアルカリ性の領域においても高い色強度と高い繊維−染料結合安定性を有しており、さらには良好な耐光堅牢性及び極めて良好な湿潤堅牢性、たとえば洗濯、水、海水、クロス染色及び発汗に対する堅牢性、さらにはプリーツ加工、加熱プレス、及び摩擦色落ちに対する良好な堅牢性も有している。
【0095】
以下の実施例を、本発明を説明するために使用する。部及びパーセントは、特に記さない限り、重量によるものである。重量部と容積部の関係は、キログラムとリットルの関係に等しい。実施例に化学式で記載する化合物は、ナトリウム塩の形で示すが、それは、それらの化合物がその塩、好ましくはナトリウム又はカリウム塩の形で一般に調製、単離され、それらの塩の形で染色に使用されるからである。以下の実施例に記載される出発化合物は、遊離の酸の形、又は同様にそれらの塩、好ましくはナトリウム塩又はカリウム塩のようなアルカリ金属塩の形で合成に使用することができる、すなわちMは先に定義されたものである。
【実施例】
【0096】
実施例1
100部の式(I−2)の染料を含む合成したままの水溶液の800部と、
【0097】
【化31】

98.4部の式(III−1)の染料を含む合成したままの水溶液の1000部とを、
【0098】
【化32】

合わせて混合する。その組み合わせた溶液を従来通りに、たとえば噴霧乾燥によって処理して、60:40の染料(I−2)対染料(III−1)のモル混合比を有する染料混合物を単離する。その混合物には、それぞれの染料の合成からくる電解質塩たとえば、塩化ナトリウム及び硫酸ナトリウムを含んでおり、極めて良好な染色性を示す。この混合物95部と、レッド染色性の繊維反応性シェーディング成分5部とからのものからは、繊維反応性染料で通常実施される染色プロセスにおいて、天然及び合成繊維材料たとえば羊毛又はナイロン−6,6の上に、良好な耐光堅牢性を有する、強くて均質なネービー色の染色が得られる。
【0099】
実施例2
70部の式(I−3)の染料を含む水溶液の500部と、
【0100】
【化33】

70部の式(II−3)の染料を含む水溶液の500部とを、
【0101】
【化34】

合わせて混合する。その組み合わせた溶液を従来通りに、たとえば噴霧乾燥によって処理して、52:48の染料(I−3)対染料(II−3)のモル混合比を有する染料混合物を単離する。その混合物は、それぞれの染料の合成からくる電解質塩たとえば、塩化ナトリウム及び硫酸ナトリウムを含んでおり、極めて良好な染色性を示す。それはたとえば、セルロース系繊維材料たとえば綿若しくは再生セルロース繊維の上に、繊維反応性染料で通常実施される吸尽染色プロセスにおいて、強く均質な灰色がかったブルーの染色を与える。
【0102】
実施例3〜17
以下の実施例において、本発明による染料混合物のさらなる説明を行うが、それらは、極めて良好な染着性を有し、先に述べた材料特にセルロース繊維材料の上に、当業者によって通常使用される染色法及び捺染法、好ましくは繊維反応性染料の場合に当業者によって通常使用される染着法及び固着法によって、強い青色がかったグレーの染色を与え、その染色物は良好な堅牢性と良好なカラービルドアップ性とを有している。
【0103】
それらの混合物を、さらにレッド染色繊維反応性成分と組み合わせると、天然及び合成ポリアミド材料、たとえば羊毛又はナイロン−6,6の上に、繊維反応性染料の場合に当業者によって通常使用される染色法において、良好な耐光堅牢性を有する、強くて均質なネービー色の染色が得られる。
【0104】
【表1】

【0105】
【化35】

【0106】
【化36】

【0107】
実施例18
シルケット綿からなる織布を、35g/Lの無水炭酸ナトリウム、50g/Lの尿素及び150g/Lの低粘度のアルギン酸ナトリウム溶液(6%)を含む液でパジングし、次いで乾燥させる。その含浸量は70%である。そのようにして前処理した織物を、8%の実施例1による染料混合物、20%の1,2−プロパンジオール、0.01%のメルガル(Mergal)K9N、及び71.99%の水を含む水性インキを用い、ドロップ−オン−デマンド(バブルジェット)インクジェット印字ヘッドを使用して捺染する。捺染物は完全に乾燥させる。102℃で8分間、飽和水蒸気の手段を用いて固着させる。次いでその捺染物を温水で水洗いし、95℃の熱水を用いて堅牢洗いをし、温水で洗浄してから、乾燥させると、優れた使用堅牢性を有する灰色がかったブルー色の捺染物が得られる。
【0108】
実施例19
シルケット綿からなる織布を、35g/Lの無水炭酸ナトリウム、100g/Lの尿素及び150g/Lの低粘度のアルギン酸ナトリウム溶液(6%)を含む液でパジングし、次いで乾燥させる。その含浸量は70%である。そのようにして前処理した織物を、8%の実施例2による染料混合物、15%のN−メチルピロリドン、0.01%のメルガル(Mergal)K9N、及び76.99%の水を含む水性インキを用い、ドロップ−オン−デマンド(バブルジェット)インクジェット印字ヘッドを使用して捺染する。捺染物は完全に乾燥させる。102℃で8分間、飽和水蒸気の手段を用いて固着させる。次いでその捺染物を温水で水洗いし、95℃の熱水を用いて堅牢洗いをし、温水で洗浄してから、乾燥させると、優れた使用堅牢性を有する灰色がかったブルー色の捺染物が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)の少なくとも1種の染料と、一般式(II)若しくは一般式(III)若しくは一般式(IV)のいずれかの少なくとも1種の染料と、を含むことを特徴とする染料混合物。
【化1】

[式中、
1−1は、β位においてアルカリ脱離可能な置換基によって置換された、ビニルスルホン又はエチルスルホンを表し、
1−2及びV1−3は独立して、水素又は−SOMを表し、
1−4は、水素、−SOM、β位においてアルカリ脱離可能な置換基によって置換された、ビニルスルホン又はエチルスルホンを表し、
1−5は、水素、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルコキシ、−SOM、臭素又は塩素を表し、
1−6は、水素、(C〜C)−アルキル、−COOM、−COO−(C〜C)−アルキルを表し、
Mは、水素、アルカリ金属、アンモニウム又は等価のアルカリ土類金属イオンを表す。]
【化2】

[式中、
2−1〜R2−4は独立して、水素、−SOM、(C〜C)−アルキル又は−COOR2−5を表し、
は、−NR2−6を表し、
2−5及びR2−6は独立して、水素又は(C〜C)−アルキルを表し、
は以下の基の一つを表し:
【化3】

2−1及びV2−2は独立して、水素、−SOM、β位においてアルカリ脱離可能な置換基によって置換された、ビニルスルホン又はエチルスルホンを表し、
2−3及びV2−5は、β位においてアルカリ脱離可能な置換基によって置換された、ビニルスルホン又はエチルスルホンを表し、
2−4及びV2−6は独立して、水素又は−SOMを表し、そして
Halは、ハロゲンを表し、
そして、Mは先に定義されたものである。]
【化4】

[式中、
3−1及びW3−2は独立して、水素、(C〜C)−アルキル、−OSOMにより置換された(C〜C)−アルキルを表すか、又は以下の基の一つを表し:
【化5】

3−1及びD3−2は独立して、以下の基の一つを表し:
【化6】

3−1〜V3−12は独立して、水素、−SOM、β位においてアルカリ脱離可能な置換基によって置換された、ビニルスルホン又はエチルスルホンを表し、そして
nは、1、2、3又は4を表し、
そして、M及びHalはそれぞれ先に定義されたものであり、
ここで、一般式(III)の染料は、V3−1〜V3−12が独立して水素又は−SOMを表すときには、少なくとも一つの次式の構造要素を含み、
【化7】

式中、Halは先に定義されたものである。]
【化8】

[式中、
4−1は次式の基を表し、
【化9】

4−2は、Y4−1と同じ意味合いを有するか、あるいは次式の基の一つを表し:
【化10】

は、β位においてアルカリ脱離可能な置換基によって置換された、ビニルスルホン若しくはエチルスルホン、又は−NR4−1を表し、
は以下の基の一つを表し:
【化11】

4−1〜V4−4並びにV4−9〜V4−10は独立して、水素又は−SOMを表し、
4−1は、水素、メチル又はエチルを表し、
4−5〜V4−7は独立して、水素、−SOM、β位においてアルカリ脱離可能な置換基によって置換された、ビニルスルホン又はエチルスルホンを表し、そして
4−8は、β位においてアルカリ脱離可能な置換基によって置換された、ビニルスルホン又はエチルスルホンを表し、
そして、Mは先に定義されたものである。]
【請求項2】
一般式(Ia)
【化12】

[式中、
1a−1は、ビニルスルホン、スルファトエチルスルホン又はクロロエチルスルホンを表し、
1a−4は、水素、−SOM、ビニルスルホン、スルファトエチルスルホン又はクロロエチルスルホンを表し、そして
Mは、水素、ナトリウム又はカリウムを表す。]
の染料と、
一般式(II)若しくは(III)若しくは(IV)のいずれかの少なくとも1種の染料とを含む、請求項1に記載の染料混合物。
【請求項3】
一般式(I)の少なくとも1種の染料と、
一般式(IIb)
【化13】

[式中、
2b−1〜R2b−4は独立して、水素、−SOM、メチル又は−COOR2b−5を表し、
2bはNR2b−62bを表し、
2b−5及びR2b−6は独立して、水素、メチル又はエチルを表し、
2bは以下の基の一つを表し:
【化14】

2b−1及びV2b−2は独立して、水素、−SOM、ビニルスルホン、スルファトエチルスルホン又はクロロエチルスルホンを表し、
2b−3及びV2b−5は独立して、ビニルスルホン、スルファトエチルスルホン又はクロロエチルスルホンを表し、
2b−4及びV2b−6は独立して、水素又は−SOMを表し、そして
Mは、水素、ナトリウム又はカリウムを表す。]
の少なくとも1種の染料とを含む、請求項1に記載の染料混合物。
【請求項4】
一般式(I)の少なくとも1種の染料と、
一般式(IIIb)
【化15】

[式中、
3b−1及びW3b−2は独立して、水素、(C〜C)−アルキル、−OSOMにより置換された(C〜C)−アルキルを表すか、又は以下の基の一つを表し:
【化16】

3b−2は独立して、次式の基の一つを表し、
【化17】

3b−1〜V3b−5、及びV3b−9〜V3b−11は独立して、水素、SOM、ビニルスルホン、スルファトエチルスルホン又はクロロエチルスルホンを表し、
3b−6及びV3b−12は、ビニルスルホン、スルファトエチルスルホン又はクロロエチルスルホンを表し、
nは、数1、2、3又は4を表し、そして
Mは、水素、ナトリウム又はカリウムを表す。]
の少なくとも1種の染料とを含む、請求項1に記載の染料混合物。
【請求項5】
一般式(I)の少なくとも1種の染料と、
一般式(IVb)
【化18】

[式中、
4b−1は次式の基を表し、
【化19】

4b−2は、Y4b−1と同じ意味合いを有するか、あるいは次式の基の一つを表し:
【化20】


4bは、ビニルスルホン、スルファトエチルスルホン、クロロスルホン又はNR4b−44bを表し、
4bは次式の基を表し、
【化21】

式中、
4b−1〜V4b−3、及びV4b−9〜V4b−10は独立して、水素又はSOMを表し、
4b−5〜V4b−7は独立して、水素、SOM、ビニルスルホン、スルファトエチルスルホン又はクロロエチルスルホンを表し、
4b−8は、ビニルスルホン、スルファトエチルスルホン又はクロロエチルスルホンを表し、
4b−4は水素、メチル又はエチルを表し、そして
Mは、水素、ナトリウム又はカリウムを表す。]
の少なくとも1種の染料とを含む、請求項1に記載の染料混合物。
【請求項6】
一般式(Ia)の少なくとも1種の染料と、一般式(IIb)若しくは一般式(IIIb)若しくは一般式(IVb)のいずれかの少なくとも1種の染料とを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の染料混合物。
【請求項7】
一般式(I)の染料を90重量%〜10重量%の量で、そして、一般式(II)若しくは(III)若しくは(IV)の染料を10重量%〜90重量%の量で含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の染料混合物。
【請求項8】
一般式(I)と、(II)若しくは(III)若しくは(IV)の個々の染料とを共に機械的に混合することにより、請求項1〜7のいずれか一項に記載の染料混合物を調製するためのプロセス。
【請求項9】
ヒドロキシル含有及び/又はカルボキサミド含有材料を染色又は捺染するための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の染料混合物の使用。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の染料混合物を含む、デジタル捺染のための水性インキ。

【公表番号】特表2009−525355(P2009−525355A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551766(P2008−551766)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/050560
【国際公開番号】WO2007/085572
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(503412791)ダイスター・テクスティルファルベン・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・ドイッチュラント・コマンデイトゲゼルシャフト (40)
【Fターム(参考)】