繊維吸収体およびインクタンク

【課題】 インク中への溶出物がなく、リサイクルを可能にする芯材と鞘材で構成される繊維材料を用いた繊維吸収体を提供する。
【解決手段】 ニ重構造の繊維材を構成する芯材は、融点140℃以上のポリプロピレンホモポリマーから構成され、かつ鞘材は、融点140℃未満、かつJIS K7210で規定される230℃、2.16kgで測定したメルトフローレートが7g/10min以上のエチレンープロピレンランダムコポリマーから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維材料を用いて構成される繊維吸収体および繊維吸収体を収納し、インクを貯留して構成されるインクタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置に使用されるインクタンクの形態としては、次に挙げられるような構成が知られている。例えば、一つはインクジェット記録ヘッド部と供給されるインクを内部に貯留したインクタンク部とが一体化して構成されたインクジェットカートリッジである。また別の一つは、例えば図4、図5に示されるインクジェット記録ヘッド部と分離独立し、インク導入管を介してインクジェット記録ヘッド部と接続される着脱自在に構成されたインクタンク1である。図4、図5に示される構成のインクタンク1は一例であるが、吸収体2を収納した吸収体収納室とインクを直接収納したインク室とが並設されて構成される構成を示している。
【0003】
いずれのインクタンクもその内部にはインクジェット記録ヘッドに対して負圧源となる構造が設けられている。良く知られる構成としては、インクを保持する吸収体を内在しているものがある。吸収体による負圧は、記録ヘッドからインクが漏れ出さず、かつ過不足なくインクの供給を可能にするように適切に調整されている。
【0004】
このような吸収体を構成する材料の一例として、特許文献1、特許文献2、特許文献3などに開示される特定の条件を備えた繊維材料が知られている。これらの繊維材料を集合させ、繊維材料の交点を溶融することでインクタンクに用いられる吸収体として必要な負圧を保持させ、かつ繊維吸収体としての強度を備えるようにしたものが知られている。これらの繊維材料の構造としては、特許文献4に記載され、図6に示されるように、芯材4と鞘材5とのニ重構造の繊維材の集合体の交点部分の鞘材が融着されて構成される繊維吸収体が知られている。この繊維吸収体は、芯材4にポリプロピレン、鞘材5に芯材より融点の低いポリエチレンを用いた繊維材を用いて吸収体を構成したものである。
【0005】
上述したポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂には、重合時に使用するチーグラ・ナッタ触媒の残査の影響を防止するために中和剤が配合されている。中和剤としては、一般にステアリン酸Ca等の脂肪酸の金属塩が用いられている。このステアリン酸Caはインクに溶出し易く、吸収体から溶出したステアリン酸Caが環境条件によって析出して、希にインクジェットプリンタのインク流路フィルタあるいはインクノズル等に堆積して印字に影響を及ぼす可能性があった。また、溶出が少ない中和剤としてハイドロタルサイト化合物が挙げられるが、ハイドロタルサイト化合物も極微量であるがAlが溶出する。AlあるいはAl化合物もノズルに析出する可能性のある物質であり、インクジェットのノズル径が小さくなると極微量の析出物でも印字に影響を与えてしまう可能性があるため、将来的にはハイドロタルサイト化合物もできる限り使用しないことが望ましい。
【0006】
一方で、近年、プラスチック製品等に対し、環境を考慮した対応が望まれてきている。例えば、適当な処理により再利用可能な廃プラスチック材については回収してリサイクルする試みがなされてきている。
【特許文献1】特開平9−123477号公報
【特許文献2】特開平7−148938号公報
【特許文献3】特開2000−79700号公報
【特許文献4】特開平11−061637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
回収されたプラスチック材が複合材料である場合、たとえば、そのままマテリアルリサイクルを行おうとすると異なる材質間で特性が相違するため希望する特性の材料として再利用することができない。そこで材料を分離工程によって仕分けする必要がでてくるがこの作業は容易ではなく、リサイクルを行うためのネックとなってしまう。
【0008】
リサイクルを容易にするためにはプラスチック製品は単一材料で構成されることが望ましく、インクタンクに対しても単一の材料による構成が望まれることになる。
【0009】
しかし、インクタンクを構成する部品には種々の役割、必要な特性があり、単一材料で構成することが容易ではない。これまでインクタンク本体はプロピレン樹脂によって構成され、繊維吸収体は特許文献4に開示されるように、繊維同士を融着させるために融点の異なるポリプロピレンとポリエチレンが使用されている。
【0010】
本発明は、上述の課題を改善しようとしてなされたものである。すなわち、インクタンクの繊維吸収体を構成する繊維材料を製造する際に中和剤の使用を制限し、かつ芯材、鞘材で構成する繊維材料を単一材料で構成することを可能とし、リサイクル適正を具備する繊維吸収体およびインクタンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するための本発明にかかる繊維吸収体は、芯材と鞘材とから構成されるニ重構造の繊維材の集合体の交点部分の鞘材が融着されて構成される繊維吸収体において、
前記芯材は、融点140℃以上のポリプロピレンホモポリマーから構成され、かつ
前記鞘材は、融点140℃未満、かつJIS K7210で規定される230℃、2.16kgで測定したメルトフローレートが7g/10min以上のエチレンープロピレンランダムコポリマーから構成されていることを特徴とする。
【0012】
特に、前記鞘材は、メタロセン触媒を用いて重合されたエチレンープロピレンランダムコポリマーである。
【0013】
また、上述の目的を達成するための本発明にかかるインクタンクは、芯材と鞘材とから構成されるニ重構造の繊維材の集合体の交点部分の鞘材が融着されて構成される繊維吸収体を内部に収納し、インクを貯留可能に構成されたインクタンクにおいて、
前記芯材は、融点140℃以上のポリプロピレンホモポリマーから構成され、かつ
前記鞘材は、融点140℃未満、かつJIS K7210で規定される230℃、2.16kgで測定したメルトフローレートが7g/10min以上のエチレンープロピレンランダムコポリマーから構成され、
前記インクタンクの筐体は、ポリプロピレンによって構成されていることを特徴とする。
【0014】
特に、前記鞘材は、メタロセン触媒を用いて重合されたエチレンープロピレンランダムコポリマーである。
【0015】
前記インクタンクは、使用済み後、前記繊維吸収体を内在した状態で前記インクタンクを溶融しポリプロピレン材として再利用可能である。
【0016】
繊維吸収体の芯材に融点の高いポリプロピレンホモポリマー、鞘材に、融点の低いエチレンープロピレンランダムコポリマーを用いることで、芯鞘構造でありながら同一のポリプロピレンで繊維を構成することができる。特に、メタロセン触媒を用いたエチレンープロピレンランダムコポリマーを使用することでポリエチレンと同等の融点を持たせることができる。かつ、メタロセン触媒は、金型を腐食させる塩素をほとんど含んでいないため、中和剤を添加しない繊維材料の処方が可能である。
【0017】
また、インクタンクで使用される繊維吸収体の強度を発生させるための繊維材同士の交点の融着は、単に融点が低いだけでなく、JIS K7210で規定されるメルトフローレート(以下では単にMFRと記す場合もある。)で特定される条件を鞘材が満足することが好適であることが解明できた。
【発明の効果】
【0018】
リサイクル容易な環境に配慮した繊維吸収体及びインクタンクを提供できる。また中和剤による印字不良の無い高品質な繊維吸収体及びインクタンクを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に用いる繊維吸収体2は、安価で軽量かつリサイクル可能で、繊維成形しやすいオレフィン系の樹脂、好ましくはポリプロピレンで構成されている。また、ここで言うポリプロピレンとは、特に指定が無い限りアイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレンでも構わない。
【0020】
図6に示されるように、繊維吸収体2は、芯材4と、芯材4を覆い表層を形成する鞘材5とからなる。芯材4を構成する樹脂の融点は、鞘材5を構成する樹脂の融点よりも高い材料を使用する。上記構成の繊維を、鞘材5の融点より高く、かつ芯材4の融点より低い温度で加熱することで、繊維が互いに融着した吸収体を作製できる。すなわち、芯材と鞘材とから構成されるニ重構造の繊維材の集合体の交点部分の鞘材が融着されて繊維吸収体が構成される。芯材4と鞘材5との融点差は大きいほど良い。融点差が小さいと温度管理が困難であり、熱成形する際に芯成分まで溶融し、形状を保持できなくなる可能性がある。
【0021】
本発明における芯材4には、ポリプロピレンの中でも融点が高く、熱収縮が小さいポリプロピレンホモポリマーを使用する。芯材4の融点は140℃以上、好ましくは160℃以上である。熱収縮の大きなエチレン−プロピレンランダムコポリマーを芯材に用いると、成形後の繊維の収縮により非常に硬質で反発力の無い吸収体となり、インクタンクに挿入した際に隙間ができてインク漏れが生じてしまう。また、ポリプロピレンの重合に使用する触媒はメタロセン触媒である。
【0022】
鞘材5には低融点のエチレン−プロピレンランダムコポリマーを使用する。鞘材5の融点は140℃未満、好ましくは130℃以下である。より低融点のポリプロピレンを製造するにはメタロセン触媒を用いたエチレンープロピレンランダムコポリマーが適している。
【0023】
また、本発明者らの検討により、本発明のポリプロピレンで構成された鞘材5は、融点140℃未満、かつJIS K7210で規定される230℃、2.16kgで測定したメルトフローレートが7g/10min以上必要であることがわかった。7g/10min未満では繊維同士の融着が少なく、繊維吸収体の毛管力や形状を維持できない。MFRとは樹脂の溶融粘度を表す指標の一つであり、JIS K7210に順じて測定可能である。
【0024】
融着をより詳細に説明するために、繊維の融着に必要な成形温度と鞘材の溶融粘度の関係を図1に示した。横軸は温度、縦軸は鞘材5を構成する繊維材料の溶融粘度を示している。実線はMFRの大きい鞘材5の挙動、破線はMRFの小さな鞘材5の挙動を示したイメージ図である。図1に示したように、同じ成形温度において、MFRが異なると、溶融粘度が大きく異なる。
【0025】
繊維の融着には、鞘材5を熱で溶解させて、溶解した鞘材5が近傍の繊維に移動することが必要である。そのため成形温度は鞘材5の融点以上であることが条件である。一方、成形温度が芯材4の融点よりも高いと、繊維そのものの形状を保つことができなくなってしまう。従って、成形温度は鞘材の融点よりも高く、芯材4の融点よりも低いことが条件である。
【0026】
さらに、融着は温度条件だけでなく、実際には鞘材5の溶融粘度も重要であることを本検討により明らかにした。すなわち、鞘材5の溶融粘度が高い場合(図1中の破線)、鞘材5が溶解しても、溶解した鞘材5が近傍の繊維まで移動していかないため融着しない。一方、鞘材5の溶融粘度が低い場合(図1中の実線)、鞘材が溶解すると、溶解した鞘材5が近傍の繊維に移動し、繊維同士を融着させることがわかった。以上より、図1中の斜線で示した範囲が融着可能な範囲であり、成形温度の上限は芯材4の融点以下、下限は鞘材5の融点以上、かつ、鞘材4のMFRが7g/10min以上であれば必要な溶融粘度を満たし、融着可能となる。
【0027】
また、実際の融着状態を図2、3に示した。成形後の繊維の状態をSEMで観察した。図2が融着した繊維、図3が融着していない繊維の状態を示している。鞘材5のメルトフローレートMFRが7g/10min以上であれば融着が見られ、インクタンク用繊維吸収体2として必要な強度、毛管力が得られる。また、MFR値が高くなるほど融着が多く見られる。一方、MRF=7g/10min未満では融着がほとんど見られず、図3のような繊維状態となる。融着していない繊維吸収体2では強度が弱く、要求される毛管力も得られずインクタンクとしての機能が十分に果たせない。
【0028】
鞘材5と芯材4の比率は特に指定は無いが、重量比でおよそ1:1になるように成形することが望ましい。また、鞘材5はインクへの溶出の観点から中和剤を入れないことが望ましい。メタロセン触媒は、残渣による影響がほとんど無いため、中和剤の必要が無い。すなわち、低融点のポリプロピレンを生成すること、また中和剤の溶出を抑制すること、この2つの理由から鞘材5にメタロセン触媒で重合したポリプロピレンを用いることが望ましい。一方、芯材4に関しては、中和剤からの溶出が鞘材により抑制されるため、必要に応じてハイドロタルサイト類化合物などの中和剤を入れても構わない。
【0029】
上記構成の芯鞘構造の繊維は、綿状に成形された後、絡み合った繊維をカード機でほぐしてシート状のウェブに加工する。次にウェブを束ねて、過熱ローラを通して繊維同士を融着させる。そして融着した繊維吸収体2はインクタンクに挿入後の毛管力等を考慮して、適性な寸法に切断される。繊維吸収体2を融着させることでインクを吸収した後も毛管力の発生に必要な形状を維持可能になる。しかも、搬送、保管時のインクタンクに振動や落下衝撃といった外力、あるいは圧力変化や温度変化等の環境変化が起こったとしても繊維吸収体がインクタンク内で固定できる。
【0030】
繊維吸収体2のインク保持力は、繊維吸収体2の捲縮数や繊維径、密度によって変わる。インクタンク用繊維吸収体2は、インクジェットヘッドに対するインク供給性,インク保持性等を考慮し、その毛細管力(一般に0mmAq以上150mmAq以下、望ましくは30mmAq以上100mmAq以下)を発生する必要がある。
【0031】
そこで、インクタンク用繊維吸収体2として適性な毛管力を保つためには、捲縮率が5〜25であること、繊維径が0.7〜18デニールであることが好ましい。けん縮数とは、JIS L1051で規定されており、長さ25mm当たりのけん縮(繊維の縮れ)の数であり、繊維の山と谷とを全部数え、2で割って求められる。繊維を集めてインク保持体を形成した場合、けん縮数が多くなるほど、繊維と繊維の交点が多く形成されるため、繊維が移動しにくくなり、それらの相互間に微小な空隙が安定して形成されることになる。そのため、毛管現象によるインク保持力は、けん縮数が多くなるほど大きくなる。一方、インクの使用効率はインク保持力が小さいほどよい。つまり、インク保持力が小さいほど、インク保持体に保持したインクの大部分を低抵抗で供給すべく導出して、インクの使用効率を高くすることができる。インク保持力とインク使用効率とを両立するためには、けん縮数を5〜25とすることが好ましく、また、それを10〜20とすることがより好ましい。
【0032】
繊維径は、0.7デニール(直径約10μm)〜18デニール(直径約50μm)のものを用いることが好ましい。繊維の占有体積率を一定とした場合、繊維の外径を大きくすると、繊維間の空隙が大きくなって負圧によるインク保持力が小さくなり、逆に、繊維の外径を小さくすると、繊維間の空隙が小さくなって負圧によるインク保持力が大きくなる。
【0033】
本発明におけるポリプロピレンはメタロセン触媒により製造される。メタロセン触媒とは、チタン、鉄、ジルコニウム、ハフニウム等の遷移金属をシクロペンタジエニル骨格を有する化合物で挟んだ構造の化合物に、さらにアルミノキサンや非配位イオン化合物等を組み合わせた触媒である。メタロセン化合物としては、特登録4002794で例示されているような、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(アズレニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、メチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、メチレン(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(3,5−ジメチルペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、メチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン1,2−ビス(4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(オクタヒドロフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4,5−ベンゾ(インデニル))ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(フェニルインデニル))]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(フェニルインデニル))]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド等が挙げられる。また、アルミノキサンとしてはメチルアルミノキサン、メチルイソブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン等が例示される。
【0034】
以下に、本発明の繊維吸収体の構成を具体的に詳細に説明する。以下で説明される繊維吸収体は、図4、図5に示されるように、ポリプロピレン製の筐体に収納されてインクタンクを構成することができる。そして、このインクタンクはインクが貯留可能であり、インクが貯留されてプリンタに搭載されることで使用される。なお、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0035】
[実施例1]
芯材4:チーグラ・ナッタ触媒で重合したポリプロピレンホモポリマー(融点165℃、MRF 23g/10min(以下単にMRFと記載する場合は、JIS K7120に規定されるポリプロピレンのMFR測定方法による結果を示す。))を使用し、中和剤としてハイドロタルサイト化合物(具体的には、Mg4.3Al(OH)12.6CO・mHO)を500ppm添加した。
【0036】
鞘材5:メタロセン触媒で重合したエチレン−プロピレンランダムコポリマー(融点125℃、MRF 25g/10min)を使用した。中和剤は使用しない。
【0037】
上記芯材と鞘材を重量比1:1で押出し成形する。綿状に成形された繊維をカード機でほぐしてシート状のウェブに加工する。その後、このウェブを束ねて、140℃の加熱ローラを通して鞘材のみ溶かし、繊維同士を融着させて繊維吸収体2を成形した。
【0038】
[実施例2]
加熱ローラでの繊維吸収体2の成形温度が135℃である以外は、実施例1と同様である。
【0039】
[実施例3]
芯材4にメタロセン触媒で重合したポリプロピレンホモポリマー(融点160℃、MRF 23g/10min)を使用した。中和剤は使用しない。それ以外は実施例1と同様である。
【0040】
[実施例4]
鞘材5にメタロセン触媒で重合したエチレン−プロピレンランダムコポリマー(融点125℃、MRF 7g/10min)を使用した。中和剤は使用しない。それ以外は実施例1と同様である。
【0041】
[比較例1]
比較例1は、従来より知られている芯材4にポリプロピレン、鞘材5にポリエチレンを使用した繊維吸収体2である。本検討では、鞘材5にチーグラ・ナッタ触媒で重合したポリエチレンホモポリマー(融点130℃、JIS K6922で規定されるMRF 14g/10min(ポリエチレンのMFRはJIS K6922で規定されている。))を使用し、中和剤としてハイドロタルサイト化合物(具体的には、Mg4.3Al(OH)12.6CO・mHO)を500ppm添加した。それ以外は実施例1と同様である。
【0042】
[比較例2]
鞘材5にメタロセン触媒で重合したエチレン−プロピレンランダムコポリマー(融点125℃、MRF 5g/10min)を使用した。中和剤は使用しない。それ以外は実施例1と同様である。
【0043】
[比較例3]
芯材4にメタロセン触媒で重合したエチレン−プロピレンランダムコポリマー(融点145℃、MFR 30g/10min)を使用した。中和剤は使用しない。
【0044】
鞘材5にメタロセン触媒で重合したエチレン−プロピレンランダムコポリマー(融点125℃、MRF 7g/10min)を使用した。中和剤は使用しない。それ以外は実施例1と同様である。
【0045】
[検討結果]
本発明の実施例1、2、3、4比較例1、2、3の繊維吸収体2の融着状態および形状を確認した結果を表1に示した。
【0046】
■融着状態
得られた繊維吸収体2を5mm×5mmに切り出し、白金蒸着後、SEM(scanning electron microscope)で観察し、繊維同士の融着を確認した。繊維が融着されていると図2のように観察され、融着されていないと図3のように観察される。結果を表1に示した。実施例1、2、3、4では5mm×5mmの範囲に10〜数10個の融着が観察され、比較例1と同等の融着が確認された。実施例4では同様の実施例1、2、3と同様の融着が確認されたが、その融着数はやや少なかった。また、成形温度の異なる実施例1と2では融着に差が見られなかった。実施例1、2、3、4で構成された繊維吸収体2はインクタンクに挿入し、インクを保持させても不具合は無かった。
【0047】
一方、比較例2では融着が確認されず、インクタンクに挿入してインクを保持させると、繊維吸収体2が収縮してしまい、インクタンク用繊維吸収体2に必要な形状寸法、毛管力を達成することが困難であった。
【0048】
■形状
実施例1、2、3、4では成形後、インクタンク用繊維吸収体2に必要な形状寸法が保たれていた。一方、比較例3では、成形後に大きな収縮が確認され、インクタンク用繊維吸収体2に必要な形状寸法を得ることが困難であった
これは芯材4にランダムPPを用いたことで成形後に繊維の応力緩和による繊維の収縮が起こったためと考えられる。比較例3より、芯材4は収縮の小さなホモポリマーを用いるのが好ましいことがわかった。
【0049】
[Alの溶出]
得られた繊維吸収体2を試験インクに浸漬し、PCT(プレシャークッカーテスター)にて100℃、10時間加温した。常温まで空冷した後、試験インクのAl溶出量をICPにて分析した。また、溶出量の比較は、成形条件が同じ実施例1、比較例1、2、3で行った。結果を表1に示す。なお、表1中PPは、ポリプロピレン樹脂を示しており、PEはポリエチレン樹脂を示す。
【0050】
鞘材5に中和剤を使用している比較例1に対し、鞘材5に中和剤を使用していない実施例1、2、4では、Alの溶出量が非常に少ないことが判った。また、実施例3ではAlが検出されなかった。すなわち、鞘材5にメタロセン触媒を使用したポリプロピレンを用いることで、印字に不具合を与える要因であるAlの溶出を減らすことが可能となる。
【0051】
【表1】

【0052】
[マテリアルリサイクル]
実施例1乃至実施例4、及び比較例1の繊維吸収体のマテリアルリサイクルの可否を表1に示した。得られた繊維吸収体を任意の大きさに切断し、水洗、乾燥後、リペレットし、マテリアルリサイクル品としてインクタンクの筐体を射出成形した。その結果、比較例1では耐熱性、強度の大きな低下が見られ、インクタンクとして使用不可能であった。これはPP単体に比べてPPとPEの混合体は耐熱性、強度が低いこと、およびPPとPEが相分離していることが影響していると考えられる。一方、実施例1乃至実施例4は比較的良好な耐熱性、強度を示し、インクタンクとして使用可能であった。
【0053】
実際にインクタンクが本実施例の材料から構成されているかをIRスペクトルで確認した。実施例1乃至実施例4で得られた材料は、PEの特徴的なピーク波長:719cm−1が確認できなかったのに対し、比較例1ではPEのピークが確認された。
【0054】
したがって、使用済みのインクタンクを回収し、特定の再生手法を経ることで、例えばインクタンク筐体を構成するポリプロピレン材としてマテリアルリサイクルが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】繊維の融着に必要な成形温度と鞘材の溶融温度との関係を示したイメージ図である。
【図2】融着した繊維の状態を示したSEM画像である。
【図3】融着していない繊維の状態を示したSEM画像である。
【図4】インクタンクの一例を示す概略正面断面図である。
【図5】インクタンクの一例を示す概略側面図である。
【図6】芯鞘構造を有する繊維材を示す断面図である
【符号の説明】
【0056】
1 インクタンク
2 繊維吸収体
3 インク室
4 芯材
5 鞘材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と鞘材とから構成されるニ重構造の繊維材の集合体の交点部分の鞘材が融着されて構成される繊維吸収体において、
前記芯材は、融点140℃以上のポリプロピレンホモポリマーから構成され、かつ
前記鞘材は、融点140℃未満、かつJIS K7210で規定される230℃、2.16kgで測定したメルトフローレートが7g/10min以上のエチレンープロピレンランダムコポリマーから構成されていることを特徴とする繊維吸収体。
【請求項2】
前記鞘材は、メタロセン触媒を用いて重合されたエチレンープロピレンランダムコポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の繊維吸収体。
【請求項3】
前記繊維吸収体は、前記繊維材の繊維径が0.7〜18デニール、前記繊維材の捲縮率が5〜25、前記繊維吸収体の毛管力が150mmAq以下であることを特徴とする請求項1に記載の繊維吸収体。
【請求項4】
芯材と鞘材とから構成されるニ重構造の繊維材の集合体の交点部分の鞘材が融着されて構成される繊維吸収体を内部に収納し、インクを貯留可能に構成されたインクタンクにおいて、
前記芯材は、融点140℃以上のポリプロピレンホモポリマーから構成され、かつ
前記鞘材は、融点140℃未満、かつJIS K7210で規定される230℃、2.16kgで測定したメルトフローレートが7g/10min以上のエチレンープロピレンランダムコポリマーから構成され、
前記インクタンクの筐体は、ポリプロピレンによって構成されていることを特徴とするインクタンク。
【請求項5】
前記鞘材は、メタロセン触媒を用いて重合されたエチレンープロピレンランダムコポリマーであることを特徴とする請求項4に記載のインクタンク。
【請求項6】
前記繊維吸収体は、前記繊維材の繊維径が0.7〜18デニール、前記繊維材の捲縮率が5〜25、前記繊維吸収体の毛管力が150mmAq以下であることを特徴とする請求項4に記載のインクタンク。
【請求項7】
前記インクタンクは、使用済み後、前記繊維吸収体を内在した状態で前記インクタンクを溶融しポリプロピレン材として再利用可能であることを特徴とする請求項4に記載のインクタンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−279872(P2009−279872A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135686(P2008−135686)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】