説明

繊維強化発泡性樹脂組成物およびその発泡成形体

【課題】 ポリオレフィン系樹脂を用いても均一な発泡が可能であり、透湿性及び発泡効率の高いセルロース繊維強化発泡性樹脂組成物及びその発泡体を提供する。
【解決手段】 本発明の発泡性樹脂組成物は、少なくともポリオレフィン系樹脂(A1)で構成された熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、αセルロース含量の高いセルロース繊維などの有機繊維(B)1〜500重量部と、必要により酸変性又はエポキシ変性オレフィン系化合物(C)1〜30重量部と、発泡剤(D)とで構成されている。熱可塑性樹脂(A)は、メタロセン触媒により重合されたオレフィン系樹脂(ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂など)(A1)と、他の熱可塑性樹脂(A2)0.1〜20重量部とで構成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外観、剛性、発泡性などに優れ、焼却処理による残渣が実質的に生じない発泡成形体と、この成形体を形成するのに有用な発泡性樹脂組成物(又は発泡性熱可塑性樹脂組成物)に関する。特に、水を通さず水分を透過可能な防水透湿性を有する発泡シートを調製するために有用な発泡性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車部品、オフィスオートメーション(OA)機器などを構成する成形体は、その強度及び剛性を向上させるため、ガラス繊維などの強化繊維で強化されている。例えば、特開平7−80834号公報(特許文献1)には、熱可塑性樹脂と強化繊維とを含み、均一に分散した強化繊維の重量平均繊維長と数平均繊維長との割合、重量平均繊維長を特定することにより、成形性、機械的性質や表面平滑性に優れた繊維強化熱可塑性樹脂構造物が開示されている。このような技術は発泡体にも応用されており、例えば、特開平8−207068号公報(特許文献2)には、特定のプロピレン系樹脂とガラス繊維とを75/25〜95/5(重量部)の割合で含む樹脂組成物に対して、ラジカル発生剤と架橋助剤と発泡剤とを所定の割合で含む発泡性シート形成用組成物が開示されている。この文献には、発泡性シート形成用組成物を、発泡剤が分解しない温度でシート成形し、バッキング材を裏打ちし、発泡性シートに電離性放射線を照射してプロピレン系樹脂を架橋させた後、加熱して発泡させ、発泡シートが冷却固化しないうちに表面材を載置してプレス成形加工する自動車用成形天井材の製造方法も記載されている。特開2003−245967号公報(特許文献3)には、γ線を照射して架橋させた架橋ポリプロピレン系樹脂をさらに含む発泡性シート形成用組成物が開示されている。なお、特公平3−52342号公報(特許文献4)には、繊維長13mm以下の無機繊維が分散されたスチレン系樹脂ペースト又はエマルジョンを有機繊維不織布に含浸した樹脂強化シートと、この樹脂強化シートの両面に積層したスチレン系樹脂発泡シートとを備えた積層体が開示されている。
【0003】
しかし、このような成形体は無機物を含有しており、使用済みの成形体を焼却すると、残渣が生じる。そのため、残渣の埋め立て処理などが必要となり、処理コストが増大するとともに、環境上も好ましくない。さらに、ガラス繊維などの無機繊維により押出機のスクリューの摩耗が激しくなるため、無機繊維の使用は工業的な発泡体の製造に対して障害となる。
【0004】
特開平7−329232号公報(特許文献5)には、熱可塑性樹脂発泡体の少なくとも一面に植物繊維補強熱可塑性樹脂シートからなる表面材が積層された発泡複合体が提案されている。この発泡複合体は、燃焼させても残渣が生じず、焼却により容易に廃棄処理が行えるという利点がある。しかし、基材である発泡体と植物繊維補強熱可塑性シートとの貼り合わせる必要があり、コストの点でも好ましくない。
【0005】
特開2005−60689号公報(特許文献6)には、植物資源由来の樹脂、天然由来の有機充填剤を配合した樹脂組成物からなる発泡体であって、発泡倍率が1.02〜15倍である発泡体が開示されている。この文献には、天然由来の有機充填材として、紙粉などの粉末状充填材、ケナフ繊維などのパルプやセルロース繊維などが例示され、有機充填材の大きさが、10mm以下、0.1μm以上であること、有機充填材の使用量が、ポリ乳酸樹脂を100重量部としたとき、1〜350重量部であること、発泡体密度が0.03〜1.25g/cm3であること、気泡サイズが0.1〜1000μmであることも記載されている。しかし、植物資源由来の樹脂と天然由来の有機充填材とを組み合わせると、均一に発泡した発泡体を得ることが困難である。また、植物資源由来の樹脂に代えてポリプロピレンを用いると、発泡が著しく不均一となり、発泡倍率を向上できず、発泡成形体としての商品価値を大きく低下させる。さらに、防水性と透湿性とを有する発泡体については言及されていない。
【特許文献1】特開平7−80834号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平8−207068号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2003−245967号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特公平3−52342号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開平7−329232号公報(特許請求の範囲)
【特許文献6】特開2005−60689号公報(特許請求の範囲,段落番号[0018][0021][0030][0102][0103])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂を用いても均一な発泡が可能なセルロース繊維強化発泡性樹脂組成物及びその発泡体を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、発泡効率が高く、焼却処理しても残渣が実質的に生じない発泡性樹脂組成物及びその発泡体を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、発泡倍率が高く軽量であり、しかも剛性と強度に優れる発泡体と、この発泡体を製造するのに適した発泡性樹脂組成物を提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、水に対して非透過性であり、かつ透湿性を有する発泡体(又は発泡シート)及びこの発泡体の調製に適した発泡性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ポリオレフィン系樹脂を有機繊維(セルロース繊維など)で強化した発泡性樹脂組成物において、ポリオレフィン系樹脂(メタロセン触媒を用いたポリオレフィン系樹脂など)と有機繊維(セルロース繊維など)と必要により変性オレフィン系化合物とを組み合わせると、均一に効率よく発泡できることを見いだし、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明の発泡性樹脂組成物は、少なくともポリオレフィン系樹脂(A1)で構成された熱可塑性樹脂(A)と、有機繊維(B)とで構成され、発泡剤により発泡可能である。ポリオレフィン系樹脂(A1)はメタロセン触媒により重合されたポリオレフィン系樹脂であってもよい。前記ポリオレフィン系樹脂(A1)は、例えば、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂から選択された少なくとも一種であってもよい。また、ポリオレフィン系樹脂(A1)は、温度190℃、荷重21.6N(2.16kgf)の条件下でのメルトフローレートが0.1〜100g/10分のポリエチレン系樹脂、および230℃、荷重21.6N(2.16kgf)の条件下でのメルトフローレートが0.1〜100g/10分のポリプロピレン系樹脂から選択された少なくとも一種であってもよい。さらに、熱可塑性樹脂(A)は少なくともポリオレフィン系樹脂(A1)で構成すればよく、ポリオレフィン系樹脂(A1)と他の熱可塑性樹脂(A2)とで構成してもよい。他の熱可塑性樹脂(A2)としては、例えば、(1)融点230℃以下の結晶性樹脂、および(2)温度200℃、せん断速度100sec-1、キャピラリーレオメーターで測定した溶融粘度が10〜104Pa・s(102〜105ポイズ)の非晶性樹脂から選択された少なくとも一種が例示できる。他の熱可塑性樹脂(A2)としては、例えば、オレフィン系樹脂及びスチレン系樹脂から選択された少なくとも一種が例示できる。熱可塑性樹脂(A)を構成する樹脂成分の割合は、適当に選択でき、例えば、ポリオレフィン系樹脂(A1)と、他の熱可塑性樹脂(A2)とを前者/後者=50/50〜100/0(重量比)の割合で含んでいてもよい。
【0012】
有機繊維(B)としては種々の繊維、例えば、セルロース繊維が使用できる。セルロース繊維は、純度が高い繊維であるのが好ましく、例えば、αセルロース含量が80重量%以上の繊維であるのが好ましい。セルロース繊維などの有機繊維(B)としては、平均繊維径0.1〜1000μm及び平均繊維長0.01〜5mmを有する繊維が使用できる。また、有機繊維(B)は、熱可塑性樹脂(A)中に分散(例えば、均一に分散)していてもよい。有機繊維(B)の割合は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、1〜500重量部程度であってもよい。
【0013】
発泡性樹脂組成物は、さらに、酸変性又はエポキシ変性オレフィン系化合物(C)を含んでいてもよい。変性オレフィン系化合物(C)は、カルボキシル基、酸無水物基及びエポキシ基から選択された少なくとも一種の変性基で変性されており、この変性基の割合は、単量体換算で、1〜30重量%程度であってもよい。変性オレフィン系化合物(C)の重量平均分子量は1.5×104〜30×104程度であってもよい。なお、変性オレフィン系化合物(C)の割合は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して1〜30重量部程度であってもよい。また、発泡剤(D)の割合は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して0.1〜20重量部程度であってもよい。
【0014】
樹脂組成物は、さらに種々の成分、例えば、収縮防止剤(E)及び/又はフッ素系樹脂(F)などを含有していてもよい。フッ素系樹脂(F)としては、ポリ(フルオロアルケン)重合体が例示できる。収縮防止剤(E)及び/又はフッ素系樹脂(F)の割合は、例えば、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、収縮防止剤(E)0〜10重量部、フッ素系樹脂(F)0〜10重量部程度であってもよい。
【0015】
本発明は、前記樹脂組成物で構成された発泡体も包含する。この発泡体において、発泡倍率は1.5〜15倍程度であってもよく、発泡構造は少なくとも連続気泡構造を有していてもよい。発泡体の形状も特に制限されず、例えば、発泡シートであってもよい。また、発泡シートは、 厚み0.05〜5mmのシートであり、40℃及び90%RHで測定したとき、透湿度が100〜10000g/(m2・24h)程度であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、ポリオレフィン系樹脂と有機繊維と必要により変性ポリオレフィン系樹脂とを組み合わせるため、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂を用いても均一な発泡が可能であり発泡効率が高い。しかも、有機繊維で強化されているため、発泡体の機械的特性を向上できるとともに、焼却処理しても残渣が実質的に生じない。そのため、発泡倍率が高く軽量で、しかも剛性と強度に優れる発泡体を得ることができる。さらに、連続気泡構造を有する発泡体を得ることができ、水に対しては非透過性であり、かつ透湿性を有する発泡体を得ることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の発泡性樹脂組成物(熱可塑性樹脂組成物)は、熱可塑性樹脂(A)と、有機繊維(B)と、必要により変性ポリオレフィン系樹脂(C)とで構成されており、前記熱可塑性樹脂(A)は少なくともポリオレフィン系樹脂(A1)で構成されている。
【0018】
本発明では、ポリオレフィン系樹脂(A1)として、チーグラー・ナッタ触媒、フィリップス触媒、メタロセン触媒などの触媒を用いて製造された種々のポリオレフィン系樹脂が使用できる。ポリオレフィン系樹脂は、架橋性基[熱架橋性基(ビニル基、(メタ)アクリロイル基などの重合性不飽和基)、光架橋性基、加水分解縮合性基[例えば、ケイ素原子に加水分解性基(例えば、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基)、ハロゲン原子(塩素原子など)など]が直接結合した基(例えば、アルコキシシリル基、ハロシリル基)などの架橋性基]を有する架橋性ポリオレフィン系樹脂であってもよいが、通常、架橋性基を有しない非架橋性ポリオレフィン系樹脂である場合が多い。このようなポリオレフィン系樹脂としては、オレフィンの単独重合体又は共重合体、オレフィンと共重合性単量体との共重合体などが挙げられる。
【0019】
オレフィン(又はポリオレフィン系樹脂の単量体)としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブチレン、イソブチレン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等のα−C2-20オレフィン(好ましくはα−C2-10オレフィン、さらに好ましくはα−C2-4オレフィン、特にα−C2-3オレフィン)などが挙げられる。これらのオレフィンは、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0020】
共重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル[例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸C1-6アルキルエステル]、ビニルエステル類(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど)、環状オレフィン類(ノルボルネン、エチリデンノルボルネン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキセン等)、ジエン類(ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエンなど)などが例示できる。共重合性単量体は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。オレフィンと共重合性単量体との割合(重量比)は、前者/後者=100/0〜50/50程度の範囲で選択でき、例えば、95/5〜60/40程度、好ましくは90/10〜65/35程度、さらに好ましくは85/15〜70/30程度であってもよい。ポリオレフィン系共重合体(樹脂)は、ランダム共重合体又はブロック共重合体であってもよい。
【0021】
代表的なポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂[例えば、低、中又は高密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂などのエチレンホモポリマー;エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−(4−メチルペンテン−1)共重合体など]、ポリプロピレン系樹脂(例えば、ポリプロピレン;プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体などのプロピレン含有80モル%以上のプロピレン−α−オレフィン共重合体など)、ポリ(メチルペンテン−1)樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体又はその金属塩、エチレン−(メタ)アクリル酸C1-4アルキルエステル共重合体(エチレン−メタクリル酸メチル共重合体など)などが例示できる。これらのポリオレフィン系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
【0022】
均一な発泡性、発泡体の組織の均一化などの点から、好ましいポリオレフィン系樹脂は、メタロセン触媒により重合されたポリオレフィン系樹脂を主たる成分として含む。メタロセン触媒とは、2個の平面環(シクロペンタジエンおよびその誘導体)の間に金属原子が挟まれた構造を有する金属錯体を総称し、フェロセン(η5−C552Feに代表されるビス(シクロペンタジエニル)金属錯体(η5−C552M(M:遷移金属を示し、以下、η5−C55はCpとする)が含まれる。なお、遷移金属としては、周期表第4、第5、第6周期の遷移金属が挙げられる。具体的には、第4周期遷移金属のメタロセンとして、Cp2Ti(チタノセン)、Cp2V(バナドセン)、Cp2Cr(クロモセン)、Cp2Mn(マンガノセン)、Cp2Fe(フェロセン)、Cp2Co(コバルトセン)、Cp2Ni(ニッケロセン)およびその誘導体など、第5および第6周期遷移金属のメタロセンとして、Cp2Zr(ジルコノセン)、Cp2Ru(ルテノセン)、Cp2Os(オスモセン)およびその誘導体などが挙げられる。これらメタロセン触媒は、単独で又は2種以上を組み合わせてもよい。これらのうち、FeとCpとの結合がもっとも強く、このためフェロセンがもっとも安定である。メタロセン触媒を用いたポリオレフィン系樹脂(A1)は分子量分布がシャープであり、結晶性も高い。そのため、他のポリオレフィン系樹脂と異なり、セルロース繊維などの有機繊維(B)で強化しても有効に発泡させることができるとともに、機械的特性(剛性、強度)を有効に向上できる。
【0023】
メタロセン触媒により重合されたポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂であってもよく、これらの樹脂はホモポリマーであってもよくコポリマーであってもよい。
【0024】
前記ポリエチレン系樹脂のメルトフローレートは、温度190℃、荷重21.6N(2.16kgf)の条件下、例えば、0.1〜100g/10分程度の範囲から選択でき、通常、0.1〜20g/10分(例えば、0.15〜15g/10分)、好ましくは0.2〜12g/10分(例えば、0.2〜10g/10分)、さらに好ましくは0.25〜8g/10分(例えば、0.3〜7g/10分)程度であってもよい。
【0025】
また、ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートは、温度230℃、荷重21.6N(2.16kgf)の条件下、例えば、0.1〜100g/10分程度であり、通常、0.1〜20g/10分(例えば、0.15〜15g/10分)、好ましくは0.2〜12g/10分(例えば、0.2〜10g/10分)、さらに好ましくは0.25〜8g/10分(例えば、0.3〜7g/10分)程度であってもよい。
【0026】
なお、ポリエチレン系樹脂の密度は、例えば、0.90〜0.970g/cm3、好ましくは0.91〜0.96g/cm3、さらに好ましくは0.915〜0.95g/cm3程度であってもよい。また、ポリプロピレン系樹脂の密度は、0.9〜0.98g/cm3、好ましくは0.91〜0.97g/cm3、さらに好ましくは0.93〜0.96g/cm3程度であってもよい。
【0027】
前記ポリエチレン系樹脂の融点は、例えば、150℃以下(例えば、80〜140℃程度)の範囲から選択でき、130℃以下(例えば、90〜125℃程度)、好ましくは125℃以下(例えば、95〜120℃程度)、さらに好ましくは120℃以下(例えば、100〜115℃程度)であってもよい。また、ポリプロピレン系樹脂の融点は、例えば、120〜200℃、好ましくは130〜180℃、さらに好ましくは140〜160℃程度であってもよい。
【0028】
また、メタロセンポリオレフィン系樹脂の分子量分布は、例えば、1.01〜3.0、好ましくは1.02〜2.0(例えば、1.05〜1.8)、さらに好ましくは1.1〜1.5(例えば、1.15〜1.4)程度であってもよい。
【0029】
熱可塑性樹脂(A)は、少なくともポリオレフィン系樹脂(A1)で構成されていればよく、ポリオレフィン系樹脂(A1)単独に限らず、ポリオレフィン系樹脂(A1)と他の熱可塑性樹脂(A2)とで構成してもよい。特に熱可塑性樹脂(A)は、メタロセン触媒を用いたポリオレフィン系樹脂を少なくとも含む樹脂であるのが好ましい。他の熱可塑性樹脂(A2)は、通常、(1)融点230℃以下(例えば、120〜210℃、好ましくは130〜200℃)の結晶性樹脂、および(2)温度200℃、せん断速度100sec-1、キャピラリーレオメーターで測定した溶融粘度が10〜104Pa・s(102〜105ポイズ)(好ましくは50〜5×103Pa・s、さらに好ましくは102〜3×103Pa・s)の非晶性樹脂から選択された少なくとも一種である場合が多い。このような熱可塑性樹脂(A2)のうち、結晶性樹脂としては、例えば、メタロセン触媒以外の触媒を用いたポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリエチレン系共重合体などのポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、ポリプロピレン系共重合体などのポリプロピレン系樹脂)、ポリアミド系樹脂(ポリアミド6、11、12など)、芳香族ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂などのポリアルキレンアリレート系樹脂など)、ポリビニルアルコール系樹脂などが例示できる。また、非晶質樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂(ポリスチレンGPPS、ゴム強化スチレン系樹脂(中衝撃ポリスチレンMIPS,高衝撃ポリスチレンHIPS)、アクリロニトリル−スチレン系樹脂AS、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂ABSなど)、アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチルPMMAなど)、ポリエステル系樹脂(ポリアリレート系樹脂などの芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂など)などが例示できる。これらの熱可塑性樹脂(A2)は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの熱可塑性樹脂(A2)のうち、結晶性樹脂としてはポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂など)が好ましく、非晶質樹脂としてはスチレン系樹脂(ポリスチレンなど)が好ましい。
【0030】
ポリオレフィン系樹脂(A1)と、他の熱可塑性樹脂(A2)との割合(重量比)は、前者/後者=50/50〜100/0、好ましくは55/45〜100/0、さらに好ましくは60/40〜95/5程度であってもよい。
【0031】
本発明では補強剤として有機繊維(B)を用いる。そのため、焼却後に残渣が残るのを防止できるとともに、押出機のスクリューなどの部材の損耗を防止できる。有機繊維(B)としては、例えば、植物繊維(又はセルロース繊維)、動物繊維(羊毛、絹など)、合成繊維(例えば、ナイロン系繊維、ポリエステル系繊維、アクリル系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリエチレン又はポリプロピレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、フッ素樹脂系繊維など)、再生繊維(レーヨン繊維など)、半合成繊維(セルロースアセテートなどのセルロースエステル繊維)などであってもよい。これらの有機繊維は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、セルロース繊維と合成繊維などの他の繊維(ポリエステル系繊維、ナイロン系繊維およびアクリル系繊維から選択された少なくとも一種の繊維など)とは組み合わせて使用してもよいが、セルロース繊維と合成繊維(ポリエステル系繊維、ナイロン系繊維およびアクリル系繊維から選択された少なくとも一種の繊維など)とは組み合わせて使用する必要はない。
【0032】
有機繊維(B)は少なくともセルロース繊維(又は植物繊維)で構成してもよい。セルロース繊維としては、麻繊維、竹繊維、綿繊維、木材繊維、ケナフ繊維、ヘンプ繊維、ジュート繊維、バナナ繊維、ココナツ繊維などの種々の植物繊維を使用してもよい。これらの繊維は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましいセルロース繊維は、αセルロース含量が高く、αセルロース含量は、例えば、αセルロース含量80重量%以上(例えば、85〜100重量%)、好ましくは85重量%以上(例えば、90〜99重量%)、さらに好ましくは95〜100重量%程度である。αセルロース含量が低いセルロース繊維を用いると、熱安定性が乏しく、成形加工により著しく黄色に着色して外観を損ねたり、不快臭も発生しやすい。また、やけや着色、黒点異物も生成しやすい。これに対してαセルロース含量が高いセルロース繊維を用いると、熱安定性が高く、着色、やけや黒点などの生成を有効に防止できるとともに、成形体の製造に伴ってダイでの目やにが生じることが殆どなく、高品質の発泡体を得ることができる。好ましいセルロース繊維は、パルプ(針葉樹パルプ、広葉樹パルプなどの木材パルプ、リンターパルプなど)、特にαセルロース含量が高い溶解パルプである。
【0033】
セルロース繊維などの有機繊維(B)の平均繊維径は、例えば、0.1〜1000μm、好ましくは1〜500μm(例えば、3〜300μm)、さらに好ましくは5〜200μm(例えば、10〜100μm)、特に10〜50μm(例えば、15〜45μm)程度である。セルロース繊維などの有機繊維(B)の平均繊維長は、0.01〜10mm程度の範囲から選択でき、例えば、0.01〜5mm(例えば、0.05〜3mm)、好ましくは0.1〜2mm(例えば、0.15〜1.5mm)、さらに好ましくは0.2〜1.3mm(例えば、0.5〜1.2mm)程度である。
【0034】
セルロース繊維などの有機繊維(B)の平均アスペクト比(長さ/径)は、例えば、2〜1000、好ましくは3〜500、さらに好ましくは5〜200(例えば、10〜100)程度であってもよく、5〜70(例えば、10〜50)程度であってもよい。
【0035】
なお、有機繊維(B)は、表面処理剤、例えば、カップリング剤(アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基やグリシジル基などの官能基を有するシランカップリング剤など)で表面処理してもよい。
【0036】
セルロース繊維などの有機繊維(B)の使用量は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、例えば、1〜500重量部、好ましくは3〜300重量部、さらに好ましくは5〜100重量部、特に10〜75重量部(例えば、15〜50重量部)程度である。
【0037】
なお、外観がよく、発泡倍率の高い成形体(シート)を得るためには、熱可塑性樹脂中への有機繊維(B)の分散性が重要となる。この有機繊維(B)の分散性が十分でないと、成形体表面に、いわゆる「ホワイトスポット」と称される大きめの有機繊維(B)塊が点在して外観を損ねるとともに、発泡が不安定となり発泡倍率が低くなる。従来、一般的な2軸押出機ではセルロース繊維などの有機繊維(B)の分散性が十分でないため前記「ホワイトスポット」の生成を抑制することが困難であった。
【0038】
このような「ホワイトスポット」の発生を抑制するため、熱可塑性樹脂とセルロース繊維などの有機繊維(B)との混合において、セルロース繊維などの有機繊維(B)を解繊し、熱可塑性樹脂に分散させた後、成形する方法を適用するのが有利である。なお、有機繊維(B)を解繊し、分散させる場合、有機繊維(B)を解繊した後、熱可塑性樹脂に分散させる方法と、有機繊維(B)の解繊と分散とを並行して行う方法が含まれる。以下に、セルロース繊維などの有機繊維(B)の解繊及び分散方法の好ましい実施形態を説明する。
【0039】
[方法1]
熱可塑性樹脂及び有機繊維(B)を前記割合で用い、好ましくは予め予備混合し、これらの成分を、加温装置を備えた混合機(例えば、ヘンシェルミキサー、三井鉱山(株)製、FM20、ヒーター付き)に投入し、攪拌しながら加温する。例えば、混合機の混合槽(例えば、容量20Lの混合槽)に、所定量の熱可塑性樹脂及び有機繊維(B)(例えば、1000〜3000g)を入れ、熱可塑性樹脂の溶融温度近傍にて、所定の周速(例えば、周速10〜50m/sec)で、所定時間(例えば、10〜30分間)混練することにより、セルロース繊維などの有機繊維(B)を均一に分散できる。
【0040】
[方法2]
熱可塑性樹脂及び有機繊維(B)の予備混合物を、2軸混練型押出機に投入し、樹脂の溶融温度近傍にて、スクリューを回転させながら溶融混練する。例えば、所定量の熱可塑性樹脂及び有機繊維(B)の予備混合物(例えば、50kgの予備混合物)を、2軸混練型押出機[例えば、シーティーイー社製,HTM65,スクリュー径65mm、ホットカット(水中)カット付き]に投入し、樹脂の溶融温度近傍にて、スクリュー回転数200〜800r/mで溶融混練紙、セルロース繊維などの有機繊維(B)を分散させる。
【0041】
このような解繊及び分散方法を適用すると、外観が美しく、「ホワイトスポット」のない均質な発泡体が得られる。なお、「ホワイトスポット」の評価は、発泡性樹脂組成物を射出成形、シート押出成形、又はプレス成形し、厚み1〜3mm程度のシート状成形体を調製し、シート状成形体の表面に存在するホワイトスポットの数をカウントすることにより行うことができる。ホワイトスポットの数について、成形体表面の50cm当たり、最大径が1mm以上の未解繊の有機繊維(B)の塊の数が10個以下、好ましく5個以下にするのが好ましい。最大径とは、球の場合には直径を意味し、楕円の場合には長径を意味し、不定形の場合には最大長さを意味する。
【0042】
変性オレフィン系化合物(C)は、少なくともポリオレフィン系樹脂(A1)を含む熱可塑性樹脂(A)とセルロース繊維などの有機繊維(B)との親和性を改善する。このような変形オレフィン系化合物(C)としては、酸変性又はエポキシ変性オレフィン系化合物、例えば、カルボキシル基、酸無水物基及びエポキシ基から選択された少なくとも一種の変性基を有する変性オレフィン系化合物が使用できる。なお、エポキシ基はグリシジル基も包含する。
【0043】
変性オレフィン系化合物としては、酸変性又はエポキシ変性オレフィン系ワックス[例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィン系ワックスを、不飽和ポリカルボン酸又はその酸無水物(マレイン酸、無水マレイン酸など)、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有単量体などで処理した変性オレフィンワックス;前記ポリオレフィン系ワックスの構成モノマー(エチレン、プロピレンなどのα−オレフィンなど)と、共重合成分としての不飽和カルボン酸又は酸無水物((メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸など)、グリシジル(メタ)アクリレートなどとの共重合により形成される変性オレフィンワックスなど]の他、変性オレフィン系樹脂などが使用できる。これらの変性オレフィン系化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。また、前記変性オレフィン系ワックスと、変性オレフィン系樹脂とを併用してもよい。これらの変性オレフィン化合物のうち、熱可塑性樹脂組成物を効率よく改質でき、成形品に高い表面特性(表面平滑性)及び耐熱性を付与できるとともに、強度(耐衝撃性、ウェルド強度など)を向上できる点から、少なくとも変性オレフィン系樹脂を用いるのが好ましい。
【0044】
変性オレフィン系樹脂を構成するオレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブテン、メチルペンテン−1などのα−オレフィンの単独又は共重合体が利用できる。このようなオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン系樹脂(ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体など)、プロピレン系樹脂(ポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−ブテン共重合体など)などが例示できる。オレフィン系樹脂としては、少なくともプロピレンを含むプロピレン系樹脂であるのが好ましい。
【0045】
変性オレフィン系樹脂は、前記α−オレフィンと変性剤との共重合、オレフィン系樹脂に対する変性剤のグラフトなどにより得ることができる。変性剤としては、カルボキシル基又は酸無水物基を有する単量体[例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸など]、グリシジル基又はエポキシ基を有する単量体[グリシジル(メタ)アクリレートなど]、エステル結合を有する単量体[(メタ)アクリル酸アルキルエステルなど]が例示できる。これらの単量体も単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。変性剤としては、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸を用いる場合が多い。
【0046】
変性オレフィン系樹脂の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸共重合オレフィン系樹脂、無水マレイン酸グラフトオレフィン系樹脂、グリシジル(メタ)アクリレート共重合オレフィン系樹脂などの共重合体;(メタ)アクリル酸グラフトオレフィン系樹脂、無水マレイン酸グラフトオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂など)、グリシジル(メタ)アクリレートグラフトオレフィン系樹脂などのグラフト共重合体などが例示できる。これらの変性オレフィン系樹脂は、変性ポリエチレン系樹脂、変性ポリプロピレン系樹脂である場合が多い。
【0047】
変性オレフィン系樹脂の重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、ポリスチレン換算)は、例えば、1.5×104〜30×104(例えば、2×104〜25×104)、好ましくは2.5×104〜23×104(例えば、2.5×104〜20×104)、さらに好ましくは2.7×104〜20×104(例えば、3×104〜17×104)程度であり、通常、5×104〜16×104程度であってもよい。なお、変性オレフィン系樹脂の数平均分子量は、例えば、0.5×104〜10×104(例えば、0.75×104〜10×104)、好ましくは0.8×104〜7.5×104(例えば、0.8×104〜5×104)程度であってもよい。
【0048】
変性オレフィン系樹脂の融点は高く、例えば、100〜170℃程度の範囲から選択でき、通常、120〜170℃(例えば、125〜165℃)、好ましくは130〜165℃(例えば、135〜165℃)程度であり、140〜165℃程度であってもよい。
【0049】
変性オレフィン化合物(変性オレフィン系樹脂など)において、酸性基やエポキシ基の導入量(変性量)は、変性基に対応する単量体換算で、例えば、0.1〜30重量%(0.5〜28重量%)、好ましくは1〜25重量%、さらに好ましくは3〜20重量%(例えば、5〜15重量%)程度であってもよく、通常、1〜30重量%程度である。さらに、変性オレフィン系樹脂のケン化価又は酸価(KOHmg/g)は、例えば、10〜80、好ましくは10〜70(例えば、20〜70)、さらに好ましくは10〜60(例えば、20〜60)程度である。
【0050】
変性オレフィン系化合物(C)の使用量は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して0.1〜30重量部(例えば、0.5〜25重量部)、好ましくは0.7〜20重量部(例えば、1〜10重量部)、さらに好ましくは1〜7重量部(例えば、1〜5重量部)程度であってもよい。
【0051】
本発明の樹脂組成物は発泡剤(D)により発泡可能であればよく、発泡剤(D)は、揮発型発泡剤(物理発泡剤)であってもよく分解型発泡剤(化学発泡剤)であってもよい。発泡剤(D)のうち揮発型発泡剤としては、揮発性ガス及び/又は揮発性ガスを発生する発泡剤(例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサンなどの炭化水素類、HCFC22,HFC−142b、HFC−134aなどのハロゲン化炭化水素、塩化メチレンや塩化メチルなどの塩素化炭化水素などの有機ガス、空気、炭酸ガス、窒素ガスなどの無機ガス)、水などが例示できる。分解型発泡剤としては、クエン酸、アゾ化合物(アゾジカルボン酸アミドなど)、ヒドラジド化合物(p−トルエンスルホニルヒドラジドなど)、アジド化合物、炭酸塩(重炭酸ナトリウムなど)などが例示できる。これらの発泡剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの発泡剤の使用量は特に限定されず、発泡剤の種類、所望の発泡倍率に応じて適宜選択できる。例えば、揮発型発泡剤の使用量(発泡剤の圧入量)は発泡倍率などに応じて適当に選択できる。発泡剤の使用量は、発泡倍率などに応じて、例えば、樹脂(A)100重量部に対して0.1〜20重量部(例えば、1〜10重量部)、好ましくは5〜10重量部程度である。なお、発泡剤は、樹脂と混合して用いてもよく、樹脂に含浸させて用いてもよい。また、発泡剤は、樹脂(A)の溶融温度であって発泡剤の分解温度未満の温度で樹脂(A)と必要により有機繊維(B)と溶融混練したマスターバッチとして使用してもよい。さらに、発泡剤(揮発型発泡剤など)は溶融混練された樹脂に添加又は圧入してもよい。また、発泡剤には水を使用でき、押出機に直接ポンプなどを用いて水を与えてもよいが、樹脂に配合する有機繊維に予め含浸させてもよい。セルロース繊維などの有機繊維に水を含浸させる場合、有機繊維の総重量に対して、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%程度の割合で水を含浸させてもよい。
【0052】
本発明の発泡性樹脂組成物は、前記成分に加えて、必要により、収縮防止剤(E)、フッ素系樹脂(F)、発泡助剤(又は発泡核剤)(G)を含んでいてもよい。これらの成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0053】
収縮防止剤(E)としては、界面活性剤、例えば、ノ二オン性界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルなど)などが例示できる。収縮防止剤(E)の割合は、樹脂(A)100重量部に対して、例えば、0〜10重量部、好ましくは0.1〜10重量部(例えば、1〜5重量部)程度であってもよい。
【0054】
フッ素系樹脂(F)としては、ポリ(フルオロアルケン)重合体、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体などのフッ素含有単量体の単独又は共重合体が例示できる。これらのフッ素樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。フッ素系樹脂(F)の使用量は、例えば、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して0〜10重量部程度の範囲から選択でき、例えば、0.5〜8重量部、好ましくは1〜5重量部程度であってもよい。
【0055】
発泡助剤(G)としては、例えば、タルク、シリカ、カオリンなどの珪酸塩、炭酸カルシウムなどの金属炭酸塩、酸化亜鉛、酸化アルミニウムなどの金属酸化物、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、モンタン酸カルシウムなどの高級脂肪酸塩などが例示できる。発泡助剤(又は発泡核剤)の割合は、樹脂(A)100重量部に対して、例えば、0.1〜5重量部(例えば、0.5〜4重量部)、好ましくは1〜3重量部程度であってもよい。
【0056】
前記樹脂組成物は、種々の添加剤、例えば、安定剤[酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤など)、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、耐候安定剤など]、無機充填剤、滑剤、離型剤、潤滑剤、衝撃改良剤、着色剤(染料や顔料など)、可塑剤、結晶化促進剤、結晶核剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、防腐剤などを含有していてもよい。添加剤は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0057】
本発明の発泡性樹脂組成物は、各成分の混合物であってもよくペレット状などの形態であってもよい。発泡性樹脂組成物において、セルロース繊維などの有機繊維(B)は熱可塑性樹脂(A)中に分散(特に均一に分散)しており、発泡体を有効に補強している。
【0058】
本発明の発泡体は、前記発泡性樹脂組成物で構成されている。発泡体の気泡構造は特に制限されず、独立気泡構造であっても連続気泡構造であってもよく、双方の気泡構造が混在していてもよい。好ましい気泡構造は、少なくとも連続気泡構造を有している。このような構造の発泡体は透湿性を改善できる。発泡体の透湿度(g/(m2・24h))は、40℃及び90%RHで測定したとき、例えば、100〜10000、好ましくは200〜7500(例えば、250〜6000)、さらに好ましくは300〜5000(例えば、500〜3500)程度である。なお、透湿度は、円筒状容器に所定量の塩化カルシウムを入れ、前記容器の開口部を所定の厚みの発泡シート(例えば、厚み2mmの発泡シート)で緊密にカバーし、40℃及び90%RHで1日間放置したとき、塩化カルシウムが吸収した水分量を測定することにより評価できる。
【0059】
発泡体の発泡倍率は、用途に応じて選択できるが、通常、1.5倍以上(1.5〜15倍程度)であり、2〜12倍、好ましくは2.2〜10倍、さらに好ましくは2.5〜8倍程度である。発泡倍率が小さいと、軽量化を実現できない。
【0060】
発泡体の平均気泡径は、それぞれ、例えば、0.3〜1.5mm、好ましくは0.4〜1.5mm、さらに好ましくは0.5〜1.3mm(例えば、0.6〜1.2mm)程度であり、0.7〜1.1mm程度であってもよい。なお、気泡の断面形状は円形状に限らず楕円形状などであってもよく、不定形状であってもよい。
【0061】
連続気泡構造を有する発泡体において、連続気泡率は、例えば、50〜100%程度の範囲から選択でき、通常、80〜100%(例えば、85〜98%)、好ましくは90〜100%(例えば、93〜98%)、さらに好ましくは95〜100%程度であってもよい。
【0062】
発泡体の形状は特に制限されず、用途に応じて適当に選択でき、立体的な三次元的形状(ブロック状、ボックス状など)、二次元的形状(ボード状又は板状、シート状、フィルム状、網状など)であってもよく、一次元的形状(線状又は棒状など)であってもよい。透湿性などの利点を生かす用途では、発泡体は、シート状(または板状)の形態である場合が多い。発泡シートの厚みは、例えば、0.05〜5mm、好ましくは0.1〜4mm(例えば、0.5〜3.5mm)、さらに好ましくは1〜3mm(例えば、1.5〜2.5mm)程度であってもよい。このようなシート状発泡体であっても、前記と同様の透湿度を有している。
【0063】
なお、発泡体は慣用の発泡成形法で製造できる。例えば、発泡性樹脂組成物を加圧下で溶融混練し、大気圧下で、成形型に射出したり、ダイから押し出して発泡させることにより発泡体を得ることができる。発泡成形において、発泡剤は予め樹脂組成物に含有させていてもよく、押出機内の溶融混練系に注入又は添加してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、セルロース繊維などの有機繊維で補強しつつ、発泡倍率が高く、軽量でありながら機械的強度に優れる発泡体を得ることができる。そのため、本発明の発泡性樹脂組成物及び発泡体は種々の用途に利用できる。例えば、電気・電子部品の梱包用資材、建築資材(壁材など)、土木資材、農業資材、自動車部品(自動車天井材などの内装材、外装材など)、包装資材(容器、緩衝材など)、生活資材(日用品など)などに利用できる。
【実施例】
【0065】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例及び比較例では以下の材料を使用した。
【0066】
[熱可塑性樹脂(A)]
PP−A1:メタロセン触媒により重合したポリプロピレン(三井化学(株)製「ポリプロピレンWFX−6」、メルトマスフローレート2g/分)
PE−A1:メタロセン触媒により重合したポリエチレン(宇部興産(株)製「1520F」メルトマスフローレート2g/分)
PP−1:ポリプロピレン樹脂(ブロックコポリマー,サンアロマ一(株)製「PMB−60A」,融点168℃)
PP−2:ポリプロピレン樹脂(ホモポリマー,サンアロマー(株)製「PM900」,融点168℃)
PE−1:ポリエチレン樹脂(低密度ポリエチレン樹脂,日本ポリエチレン(株)製、「JF414A」,融点125℃)
PS−1:ポリスチレン(東洋スチレン(株)製「HRM14」,キャピラリーレオメーターで測定した溶融粘度1300Pa・s(200℃、せん断速度100sec-1))
[セルロース繊維(B)]
パルプ[溶解パルプ(レヨニヤ社,「サルファテートHJ」,αセルロース含量97重量%)のシートを幅3mm、長さ8mmにシュレッダーで短冊状にシュレッドしたものを使用した(平均繊維径20μm、平均繊維長0.8mm)。
【0067】
[変性オレフィン系樹脂(C)]
M−PP:変性ポリプロピレン(三洋化成工業(株)製「ユーメックス1010」,重量平均分子量3×104、無水マレイン酸変性量10重量%)
発泡剤(D)(大日精化工業(株)製、重曹/クエン酸系発泡剤「ダイブロー」)
収縮防止剤(E)(ClariantMasterbatchGmbH & Co OHG社製、品名ハイドロセロール325(グリセリンモノステアリレート・ポリエチレンベース))
フッ素系樹脂(F)(三菱レイヨン(株)製,「メタブレンA3000」)。
【0068】
実施例1〜11及び比較例1〜4
表に示す成分(A)〜(D)(熱可塑性樹脂,パルプ,変性オレフィン系樹脂)をブレンダーで予備混合し、混合物50kgを、特殊押出機HTM65(シーティーイ一社製,スクリュー径65mm、ホットカット(水中)カット付き)に投入し、200℃で、スクリュー回転数200〜800rpmで溶融混練し、ペレットを得た。得られたペレットと発泡剤と収縮防止剤とフッ素樹脂とをブレンダーで混合し、タンデム型発泡押出機でブタンガスを注入して押出し、発泡シートを得た。
【0069】
[透湿度]
吸湿により塩化カルシウムの重量変化を調べる方法に準じて、円筒状容器(60mmφ)に塩化カルシウム15gを入れ、容器の開口部を70mmφのサイズにカットした試料(厚み2mm)で緊密に覆い、40℃で90%RHの条件下に1日放置し、試料を介して塩化カルシウムが吸収した水分量を測定した(単位g/(m2・24h))
[発泡倍率]
発泡倍率は、次のようにして測定した。発泡成形前のペレットを射出成形してプレート(5cm×9cm、厚み3mm)を作製し、プレートの密度D1を求める。また、得られた発泡シートの密度D2を求め、D1をD2で除して発泡倍率とした。
【0070】
[灰分]
得られたシートを短冊状に切断し、約10gを精秤(W1)し、るつぼに入れた。これを850℃に設定された電気炉に入れ、1時間焼却処理をした。その後るつぼを取り出し、自然に室温まで冷却し、その残渣量(W2)を測定した。W2/W1×100(%)を燃焼残渣量とした。なお、目視で残渣が確認されない時は測定せずに、残渣はなしと記録した。
【0071】
[発泡の形態]
発泡シートの断面の気泡構造を目視で観察した。
【0072】
[連続気泡率]
実施例及び比較例で得られた発泡体の重量w1を予め測定し、水中に静置した後、−40mmHgの減圧下に1分間放置して、連続気泡構造の中に水を浸透させた。減圧状態から大気圧力に戻し、発泡体の表面に付着した水を除去して重量w2を測定し、下記式(1)により連続気泡率を算出した。
【0073】
連続気泡発泡率(%)={(w2−w1)/d3}/(w1/d1−w1/d2) (1)
(w2は吸水後の発泡体の重量、w1は吸水前の発泡体の重量、d1は発泡体の見掛密度、d2は発泡体に使用されている樹脂組成物の見掛密度、d3は測定時の水の密度を示す)
[発泡セルの大きさ]
発泡シートの厚み方向の断面をミクロトームでスライスし、薄膜を得た。光学委顕微鏡を用いて観察し、発泡セルの直径を求めた。形状が楕円形だったので、発泡セルの直径、短径のそれぞれの大きさを測定した。
【0074】
[剛性]
厚み2mmの発泡シートを作製し、手でおり曲げた時の剛性感を下記の基準で評価した。
【0075】
5:コシが非常に強い
4:コシが強い
3:コシがある
2:コシが弱い
1:コシがかなり弱い。
【0076】
結果を表1に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
表1から明らかなように、比較例に比べ、実施例では高い発泡倍率及び剛性が得られるとともに連続気泡構造により透湿性が高い。なお、比較例1では、押出機のスクリューの鋼材がガラス繊維により激しく摩耗したため、押出できず、発泡体の評価もできなかった(NA)。また、比較例2及び3の発泡シートは剛性が小さく主に独立気泡構造であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリオレフィン系樹脂(A1)で構成された熱可塑性樹脂(A)と、有機繊維(B)とで構成され、発泡剤により発泡可能な樹脂組成物。
【請求項2】
ポリオレフィン系樹脂(A1)がメタロセン触媒により重合されたポリオレフィン系樹脂である請求項1記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項3】
ポリオレフィン系樹脂(A1)が、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂から選択された少なくとも一種である請求項1記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項4】
ポリオレフィン系樹脂(A1)が、温度190℃、荷重21.6N(2.16kgf)の条件下でのメルトフローレートが0.1〜100g/10分のポリエチレン系樹脂、および230℃、荷重21.6N(2.16kgf)の条件下でのメルトフローレートが0.1〜100g/10分のポリプロピレン系樹脂から選択された少なくとも一種である請求項1記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項5】
熱可塑性樹脂(A)が、ポリオレフィン系樹脂(A1)と他の熱可塑性樹脂(A2)とで構成され、他の熱可塑性樹脂(A2)が、(1)融点230℃以下の結晶性樹脂、および(2)温度200℃、せん断速度100sec-1、キャピラリーレオメーターで測定した溶融粘度が10〜104Pa・s(102〜105ポイズ)の非晶性樹脂から選択された少なくとも一種である請求項1記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項6】
有機繊維(B)がセルロース繊維である請求項1記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項7】
セルロース繊維のαセルロース含量が80重量%以上である請求項6記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項8】
平均繊維径0.1〜1000μm及び平均繊維長0.01〜5mmを有する有機繊維(B)が熱可塑性樹脂(A)中に分散している請求項1記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項9】
さらに、酸変性又はエポキシ変性オレフィン系化合物(C)を含む請求項1記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項10】
変性オレフィン系化合物(C)が、カルボキシル基、酸無水物基及びエポキシ基から選択された少なくとも一種の変性基を、この変性基に対応する単量体換算で、1〜30重量%含み、かつ重量平均分子量1.5×104〜30×104である請求項9記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項11】
熱可塑性樹脂(A)が、ポリオレフィン系樹脂(A1)と、他のオレフィン系樹脂及びスチレン系樹脂から選択された少なくとも一種の樹脂(A2)とを前者/後者=50/50〜100/0(重量比)の割合で含み、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、セルロース繊維(B)1〜500重量部、酸変性又はエポキシ変性オレフィン系化合物(C)1〜30重量部、発泡剤(D)0.1〜20重量部を含む請求項1記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項12】
さらに、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、収縮防止剤(E)0〜10重量部及び/又はフッ素系樹脂(F)0〜10重量部を含む請求項1記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項13】
フッ素系樹脂(F)がポリ(フルオロアルケン)重合体を含む請求項12記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1記載の樹脂組成物が発泡した発泡体。
【請求項15】
発泡倍率が1.5〜15倍である請求項14記載の発泡体。
【請求項16】
少なくとも連続気泡構造を有する請求項14記載の発泡体。
【請求項17】
発泡シートである請求項14記載の発泡体。
【請求項18】
厚み0.05〜5mmのシートであり、40℃及び90%RHで測定したとき、透湿度が100〜10000g/(m2・24h)である請求項14記載の発泡体。

【公開番号】特開2007−56176(P2007−56176A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245183(P2005−245183)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(501041528)ダイセルポリマー株式会社 (144)
【出願人】(000214788)ダイセルノバフォーム株式会社 (25)
【Fターム(参考)】