説明

繊維束の開繊方法及び開繊糸シート並びに繊維補強シートの製造方法

【課題】本発明は、集束本数が増加した繊維束に対して繊維を均一に分散させて開繊幅が広く厚みが均一で薄い開繊糸シートを形成することができる開繊方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】繊維束の繊維が幅方向に移動可能に設定された可動領域M内に、繊維束中に流体を通過させることで繊維を撓ませながら幅方向に移動させて開繊幅Wi(i=1,・・・,n)に開繊する開繊領域Ai及び前記開繊領域Aiに対応して搬送方向上流側に設定されるとともに開繊領域Aiの繊維の幅方向の移動に伴って繊維束の幅が末広がりに拡張する拡張領域Biからなる対の領域群Siを配列しているので、開繊領域Aiで生じる繊維束の繊維の分散による幅方向の移動現象を上流側の拡張領域Biに及ぼして繊維の予備開繊を行うことで繊維を開繊領域Aiで均一に分散させて開繊幅を所定幅に拡大して厚みを均一化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の繊維からなる繊維束を繊維長方向に搬送し、繊維束中に流体を通過させることで繊維を撓ませながら幅方向に移動させて開繊する繊維束の開繊方法、及び繊維束を開繊して得られた開繊糸シート、並びに開繊糸シートに樹脂材料を付着又は含浸させた繊維補強シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維といった強化繊維とエポキシ樹脂等のマトリックス樹脂を組み合せた繊維強化複合材料の開発が進められているが、こうした強化繊維は一方向に引き揃えた薄い開繊糸シートを多方向に積層して用いることで信頼性ある高強度の複合材料成形品を得ることができる。また、リサイクル性、短時間成型性、成形品の耐衝撃特性の向上等の利点から、マトリックス樹脂にポリアミド6樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等の熱可塑性樹脂を用いた複合材料成形品が今後増加すると考えられている。
【0003】
近年、航空機、自動車用材料として炭素繊維複合材料が大変注目されている。種々の炭素繊維があるが、主なものとして、引張弾性率約24ton/mm、単糸直径約7μmのタイプで、産業用途、スポーツ用途に使用されるもので汎用炭素繊維と呼ばれるもの、引張弾性率約30ton/mm、単糸直径約5μmのタイプで、航空機用途に使用されるもので高強度中弾性炭素繊維と呼ばれるものなどがある。
【0004】
炭素繊維は複数本を集束して炭素繊維束として市販されるが、その集束本数も種々そろえられている。価格、製品の質(繊維の真直性や繊維の引き揃え状態など)の良さ、取り扱い易さの点から、汎用炭素繊維束では集束本数12000本、15000本(繊度約800〜1100g/1000m)のものが、また、高強度中弾性炭素繊維束では集束本数12000本、24000本(繊度約400〜1000g/1000m)のものが主として使用される。
【0005】
汎用炭素繊維束においては低価格化を図るため炭素繊維の集束本数を多くしたタイプがあり、集束本数24000本(繊度約1600g/1000m)、48000本(繊度約3200g/1000m)、またはそれ以上の集束本数のものが市販されている。これらの繊維束は繊度が大きくなることから太繊度炭素繊維束とも呼ばれている。しかし、集束本数の多くした炭素繊維束は、集束本数が多くなるに従い、繊維の蛇行、繊維の絡み合いなどが多くなる欠点がある。
【0006】
薄いシートの開発、また熱可塑性樹脂などのような高粘度樹脂の含浸性を良くするためには、繊維束を幅広く、薄くする開繊という工程が必要になる。特に、集束本数の多い繊維束においては開繊工程が重要となる。開繊技術として、例えば、特許文献1では、マルチフィラメントを給糸部から巻取部へ搬送しながらマルチフィラメントに対し交差方向に気流を複数回通過させてマルチフィラメントを風下方向へ弓なりに撓ませることにより、マルチフィラメントを構成するフィラメントを幅方向に解き分けて開繊するマルチフィラメント開繊シートの製造方法が記載されている。また、特許文献2では、集合繊維を巻回した繰出ロールと、この繰出ロールから操出された集合繊維に対して集合繊維の移動方向と直交する方向に流体を流して開繊する開繊部と、開繊部で開繊された開繊シートを巻取る巻取ロールとを具備する開繊装置において、開繊部が移動方向に沿って複数段配設する点が記載されている。また、特許文献3では、複数の給糸体からそれぞれ繊維束を引き出して供給し、供給された繊維束を複数の流体通流部において気流内に走行させて気流の作用により繊維束を撓ませながら幅方向に開繊させるようにした開繊装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3064019号公報
【特許文献2】特許第3907660号公報
【特許文献3】特表2007−518890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献には、搬送される繊維束中に流体を通過させることで繊維束を所定幅に拡げる開繊技術が記載されている。こうした開繊技術では、繊維束を構成する繊維を均一に分散させながら開繊幅をできるだけ拡げ、開繊された繊維束の厚みをできるだけ均一で薄く形成することが必要となる。
【0009】
また、繊維の集束本数を増加させた繊維束つまり太繊度繊維束は集束本数の少ない繊維束つまり細繊度繊維束に比べて材料コストが低くなるため、太繊度繊維束を使用して開繊する方が生産コストを低くすることができる。さらに、太繊度繊維束を使用して開繊する方が、一度の開繊工程により、より幅広の開繊糸シートを得ることができるため、生産効率を格段に高めることが可能となる。
【0010】
特許文献1では、繊維束の開繊幅を拡げるために、繊維束に対して複数(実施例では2度)にわたって開繊作用を及ぼすようにしているが、フロントフィーダ及びバックフィーダ、撓み測定センサ等の繊維の撓み量を調整する設備を複数箇所(実施例では2箇所)に設置する必要があり、装置の大型化が避けられず設備コスト負担も大きくなる。さらに、設備を幅方向に並列させることが難しく、複数本の繊維束を同時に開繊させたシート状の開繊糸シートを品質良く得ることが困難である。
【0011】
特許文献2及び3では、開繊部を複数段連続して設けて繊維束を各開繊部を通過する度に連続して開繊幅を拡げるようにしている。このように開繊部を連続して開繊幅を拡げていくと、繊維束を構成する繊維が均一に分散せずに開繊された繊維の密度に粗密が生じ、場合によっては隙間が生じるようになる。
【0012】
本発明者が特許文献2及び3の実施例を参考に実験した結果では、集束本数が12000本、15000本の汎用炭素繊維束、または、集束本数が12000本、24000本の高強度中弾性炭素繊維束を用いた場合、1本の炭素繊維束の開繊幅が20〜25mm程度(目付量が約40g/m2程度)まではほぼ均一に炭素繊維が分散して均一な厚みの開繊糸シートを連続して形成することができるが、開繊幅が25mm以上(目付量が約30g/m2以下)となる幅広な開繊を連続して行うと開繊糸シートに割れを生じる部分ができるようになった。
【0013】
また、集束本数が24000本の太繊度炭素繊維束を用いた場合、1本の炭素繊維束の開繊幅が30〜35mm程度(目付量が約50g/m2程度)まではほぼ均一に炭素繊維が分散して均一な厚みの開繊糸シートを連続して形成することができるが、開繊幅が約40mm以上(目付量が約40g/m2以下)となる幅広な開繊を連続して行うと開繊糸シートに割れ、繊維絡み合いによる集束、部分的なねじれなどを生じる部分ができるようになった。
【0014】
さらに、集束本数が48000本、60000本といった太繊度炭素繊維束を用いた場合、1本の炭素繊維束の開繊幅が約40mm以上となる開繊を行ったところ、繊維絡み合いによる集束、部分的なねじれなどを生じ、連続的な開繊が困難であることが確認された。
【0015】
開繊工程においてこうした繊維の不均一な分散が生じる原因を探ったところ以下のことがわかった。特許文献2及び3の方法では、撓んだ状態の繊維束に空気流を作用させる部分を連続させているため、より幅広な開繊を行おうとして、開繊部分の連続数を多くしたり、空気流速を大きくしたりすると、各繊維は幅方向に移動し易くなるうえ、幅方向に拡がろうとする力を連続して受け続けることになる。繊維束は必ずしも真直な状態に配列されているのではなく多少の絡みがあり、また、各繊維を集束させるサイジング剤の付着むらがある。よって、特許文献2及び3の方法により繊維束をより幅広く、薄く連続して開繊させようとすると、各繊維には幅方向に拡がろうとする力が必要以上に大きく作用してしまう部分ができ、結果、繊維が集合した状態で幅方向に移動したり、また、繊維の絡まりを大きくして繊維の分散性を悪くしたり、さらには、サイジング剤の付着量が少ない箇所から幅方向に移動したりして、繊維束の開繊状態において隙間、開繊幅の不安定状態を生じ易くしてしまう部分ができる。つまり、繊維束を構成する各繊維を均一に分散した状態で連続して開繊することが難しくなってしまうことがわかった。
【0016】
そして、集束本数の増加した繊維束(太繊度繊維束)では、サイジング剤の付着ムラ及び繊維同士の絡み合いもより生じ易くなる。このため、特許文献2及び3の方法にて太繊度繊維束を開繊させると、開繊糸シートにおける隙間、開繊幅の不安定状態がより生じ易くなってしまう。
【0017】
したがって、従来の開繊技術では、より幅広な開繊(集束本数12000本、15000本の汎用炭素繊維束及び集束本数12000本、24000本の高強度中弾性炭素繊維束の場合では1本の炭素繊維束の開繊幅が25mm以上となる開繊)、及び太繊度繊維束に対する繊維分散性に優れた幅広な開繊(集束本数24000本以上の太繊度炭素繊維束の場合では1本の炭素繊維束の開繊幅が40mm以上となる開繊)が困難であった。
【0018】
そこで、本発明は、集束本数が増加した繊維束に対しても適用可能であって、繊維を均一に分散させて開繊幅が広く厚みが均一で薄い開繊糸シートを連続して形成することができる開繊方法、及び炭素繊維束を用いた開繊糸シート、並びに本開繊方法によって得られた開繊糸シートに樹脂材料を付着又は含浸させた力学的特性に優れる繊維補強シートの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る繊維束の開繊方法は、多数の繊維からなる繊維束を繊維長方向に搬送し、前記繊維が幅方向に移動可能に設定された可動領域において前記繊維束中に流体を通過させることで繊維を撓ませながら幅方向に移動させて開繊する繊維束の開繊方法であって、前記可動領域に、前記繊維束中に流体を通過させることで繊維を撓ませながら幅方向に移動させて開繊幅Wi(i=1,・・・,n)に開繊する開繊領域Ai(i=1,・・・,n)及び前記開繊領域Aiに対応して搬送方向上流側に設定されるとともに当該開繊領域Aiの前記繊維の幅方向の移動に伴って前記繊維束の幅が末広がりに拡張する拡張領域Bi(i=1,・・・,n)からなる対の領域群Si(i=1,・・・,n)を前記繊維束の搬送方向にn(n≧2)個配列して、前記領域群Siを順次通過するように前記繊維束を搬送させて開繊することを特徴とする。さらに、最初の前記領域群S1では、前記繊維束の元幅W0に対して、前記開繊領域A1の前記繊維束の開繊幅W1
1<(W1/W0)≦5
となるように設定し、残りの前記領域群Sj(j=2,・・・,n)では、前記開繊領域Aj-1の開繊幅Wj-1、前記開繊領域Ajの開繊幅Wj及び前記拡張領域Bjにおける前記繊維束の搬送方向の長さLj
0<(Wj―Wj-1)/2Lj≦tan30°
を満たすように設定することを特徴とする。さらに、前記開繊領域A1の前記繊維束の開繊幅W1
2≦(W1/W0)≦4
となるように設定することを特徴とする。
【0020】
さらに、前記開繊領域のうち少なくとも一部の領域では、複数の区画において前記繊維束中に流体を通過させることで前記繊維を撓ませながら幅方向に移動させることを特徴とする。さらに、前記拡張領域のうち少なくとも一部の領域では、前記繊維束に対して幅方向に配置されて接触する接触ロールを少なくとも1本以上配設して、前記繊維束を前記接触ロールに接触させながら搬送することを特徴とする。さらに、前記接触ロールが前記繊維束の幅方向に沿って往復移動することを特徴とする。さらに、前記拡張領域及び/又は前記開繊領域のうち少なくとも一部の領域では、前記繊維束を加熱することを特徴とする。さらに、前記開繊領域のうち少なくとも一部の領域では、前記繊維束の撓み量を時間的に変化させることを特徴とする。さらに、前記開繊領域のうち少なくとも一部の領域では、撓み確保ロールにより前記繊維束の所定の撓み量を確保しながら開繊することを特徴とする。さらに、前記撓み確保ロールのうち少なくとも一本のロールにより前記繊維束を搬送方向と直交する方向に振動させることを特徴とする。さらに、前記可動領域の上流側において、前記繊維束の引き戻しを阻止しながら前記繊維束を搬送させることを特徴とする。さらに、前記繊維束を開繊した開繊糸シートに対して幅方向に振動を付与することを特徴とする。さらに、複数本の前記繊維束を搬送させながら同時に開繊することを特徴とする。さらに、複数本の前記繊維束を開繊して並列した複数の開繊糸シートに対して幅方向に振動を付与して全体が一様なシート状態に形成することを特徴とする。
【0021】
本発明に係る開繊糸シートは、繊維集束本数12000本から24000本、繊度400g/1000mから1100g/1000mの範囲にある炭素繊維束を開繊させて、前記炭素繊維束を幅25mm以上、厚み0.04mm以下にしたことを特徴とする。さらに、繊維集束本数24000本以上、繊度1600g/1000m以上の炭素繊維束を開繊させて、前記炭素繊維束を幅40mm以上、厚み0.2mm以下にしたことを特徴とする。
【0022】
本発明に係る繊維補強シートの製造方法は、前記繊維束の開繊方法のいずれかの方法により得られた開繊糸シートの片面又は両面に樹脂層を形成して繊維補強シートを製造することを特徴とする。さらに、前記樹脂層に樹脂シートを用いて形成することを特徴とする。さらに、前記繊維束の開繊方法のいずれかの方法により得られた開繊糸シートを樹脂シートの両面に付着させて繊維補強シートを製造することを特徴とする。さらに、前記繊維束の開繊方法のいずれかの方法により得られた開繊糸シートに樹脂材料を含浸させて繊維補強シートを製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、上記のような構成を備えることで、繊維束の繊維が幅方向に移動可能に設定された可動領域内に、繊維束中に流体を通過させることで繊維を撓ませながら幅方向に移動させて開繊幅Wi(i=1,・・・,n)に開繊する開繊領域Ai(i=1,・・・,n)及び前記開繊領域Aiに対応して搬送方向上流側に設定されるとともに当該開繊領域Aiの前記繊維の幅方向の移動に伴って前記繊維束の幅が末広がりに拡張する拡張領域Bi(i=1,・・・,n)からなる対の領域群Si(i=1,・・・,n)を配列しているので、開繊領域Aiで生じる繊維束の繊維の分散による幅方向の移動現象を上流側の拡張領域Biに及ぼして各繊維を徐々に幅方向に移動させる予備開繊を行うことで繊維を開繊領域Aiで均一に分散させて開繊幅を所定幅に拡大して厚みを均一化する作用を続けて行うことができ、繊維束を繊維分散性の良い状態で幅広に開繊することができる。
【0024】
上述した先行技術文献のように開繊領域が連続して設定された方法により幅広な開繊を実施した場合には、付着ムラや繊維の絡み合いの影響を受けた状態でそのまま開繊していくために、付着ムラや繊維の絡み合いが均一な繊維の分散を妨げていたが、本発明では、開繊領域Aiの上流側に拡張領域Biを設定する領域群Siを複数配列するので繊維束を解きほぐしながら徐々に開繊を行うことができるようになる。
【0025】
すなわち、可動領域内では、フィードローラ等に挟持されて繊維の幅方向の移動を妨げるものが設けられていないため、繊維束の各繊維は幅方向への移動が可能となる領域になる。この領域内に拡張領域Biと開繊領域Aiを対として複数配列することによって、繊維束にサイジング剤の付着ムラや繊維の絡み合いがある場合でも、徐々に繊維が幅方向に移動して繊維束が解きほぐされていくように開繊が進行していくことが可能となる。つまり、可動領域内において、繊維束は繊維を蛇行させることなく真直性に優れた状態で均一に分散しながら開繊幅を順次拡大していくことができる。
【0026】
こうした領域設定を行って開繊することで、集束本数が12000本〜24000本の炭素繊維束を用いた場合においても、1本の炭素繊維束の開繊幅25mm以上(目付量が約30g/m2以下)の炭素繊維が均一に分散して均一な厚みの薄い開繊糸シートを形成することができる。また、集束本数が24000本以上の太繊度炭素繊維束を用いた場合でも、領域群Siの配列数を増加させることで開繊幅が広く均一な厚みの薄い開繊糸シートに安定して開繊することが可能となる。つまり、開繊前の繊維束幅が4〜5倍以上となる幅広な開繊を連続して実施する場合においても、サイジング剤の付着ムラや繊維の絡み合いの影響を受けることなく、各繊維が徐々に幅方向に移動し、繊維分散性に優れた開繊を行うことができ、従来の開繊方法に比べて開繊状態における幅広さ、繊維分散性が格段に連続し、かつ安定することができる。
【0027】
最初の領域群S1において、繊維束の元幅W0に対して開繊領域A1の繊維束の開繊幅W1
1<(W1/W0)≦5
となるように設定することで、繊維束を最初に拡げていく場合に、繊維束がボビンから解じょされるときに生じる撚り、又は繊維束を製造する過程で生じると考えられる繊維束内部の部分的な撚りを解きほぐしながら繊維束に割れが生じないように開繊することができる。
【0028】
また、残りの領域群Sj(j=2,・・・,n)において、開繊領域Aj-1の開繊幅Wj-1、開繊領域Ajの開繊幅Wj及び拡張領域Bjにおける繊維束の搬送方向の長さLj
0<(Wj―Wj-1)/2Lj≦tan30°
を満たすように設定することで、繊維束に部分的に生じているサイジング剤の付着ムラや繊維の絡み合いが拡張領域Bjにおける予備開繊で徐々に解きほぐされていき、開繊領域Ajにおいて繊維の密度ムラが生じることなく均一に分散されて開繊を行うことが可能となる。
【0029】
そして、開繊領域Ajの開繊幅Wjを拡張領域Bjの搬送方向の長さLjに基づいて上述の式に示すように関連付けることで、拡張領域Bjの搬送方向の長さLjに対して開繊領域Ajの開繊幅Wjが拡がりすぎないように設定されて繊維束に割れ等が生じないようにすることができる。
【0030】
本開繊方法により得られた開繊糸シートは、繊維真直性及び繊維分散性に優れた厚さ方向に繊維本数の少ない開繊糸シートとなり、樹脂などのマトリックス材料が含浸し易く、かつ繊維本来の力学的特性(引張特性)が十分に発現できるシートとなる。
【0031】
また、本開繊方法により得られた繊維真直性及び繊維分散性に優れた開繊糸シートに、樹脂材料を付着又は含浸させる製造方法により、繊維本来の力学的特性(例えば、引張特性、圧縮特性等)を十分に発現し、かつ応力集中などの原因となる欠陥が少ない幅方向、厚さ方向に均質化された繊維補強シートを得ることができる。
【0032】
そして、本開繊方法により得られた厚さ方向に繊維本数の少ないつまり薄層の開繊糸シートに、樹脂材料を付着又は含浸させる製造方法により、成形性つまりドレープ性に優れた繊維補強シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る開繊方法を実施する装置例に関する概略平面図である。
【図2】図1に示す装置例に関する概略側面図である。
【図3】可動領域Mにおける複数の領域群Si(i=1,・・・,n)の配列を一般化して示した模式図である。
【図4】領域群Sj-1及び領域群Sjに関する説明図である。
【図5】開繊領域Ajにおける開繊幅Wjに関する説明図である。
【図6】開繊領域Ajにおける開繊幅Wjに関する別の説明図である。
【図7】本発明に係る開繊方法を実施する別の装置例に関する概略平面図である。
【図8】図7に示す装置例に関する概略側面図である。
【図9】本発明に係る開繊方法を実施する別の装置例に関する概略平面図である。
【図10】図9に示す装置例に関する概略側面図である。
【図11】本発明に係る開繊方法を実施する別の装置例に関する概略平面図である。
【図12】図11に示す装置例に関する概略側面図である。
【図13】本発明に係る開繊方法を実施する別の装置例に関する概略側面図である。
【図14】本発明に係る開繊方法を実施する別の装置例に関する概略側面図である。
【図15】本発明に係る開繊方法を実施する別の装置例に関する概略側面図である。
【図16】本発明に係る開繊方法を実施する別の装置例に関する概略平面図である。
【図17】図16に示す装置例に関する概略側面図である。
【図18】本発明に係る開繊方法を実施する別の装置例に関する概略平面図である。
【図19】図18に示す装置例に関する概略側面図である。
【図20】本発明に係る開繊方法を実施する別の装置例に関する概略側面図である。
【図21】本発明に係る繊維補強シートの製造を実施する装置例に関する概略側面図である。
【図22】本発明に係る繊維補強シートの製造を実施する別の装置例に関する概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0035】
図1及び図2は、本発明に係る開繊方法を実施する装置例に関する概略平面図及び概略側面図である。長繊維を複数本集束した繊維束Tmは、ボビン形式の給糸体11に巻き付けられており、給糸体11を給糸モータ12により回転させることで繊維束Tmが繰り出されていくようになっている。
【0036】
繊維束Tmに用いられる繊維材料としては、炭素繊維束、ガラス繊維束、アラミド繊維束、セラミックス繊維束などの高強度繊維からなる強化繊維束、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトンなどの熱可塑性の合成繊維繊維を引き揃えた熱可塑性樹脂繊維束等が挙げられる。炭素繊維束の場合、繊維束の集束本数12000本から24000本が市場には多く流通しているが、本発明では24000本を超える集束本数(例えば、48000本、60000本など)の繊維束を用いることもできる。
【0037】
また、繊維束Tmの形態として、複数の繊維が引き揃えられサイジング剤などによりばらけないように集束した状態であるものが望ましい。サイジング剤の付着により、開繊された開繊糸シートにおいても、その形態が安定する。強制的に加撚して撚りが与えられている形態の繊維束は、連続した開繊状態が得られ難く、本発明の開繊方法に使用することは望ましくない。
【0038】
給糸体11から繰り出される繊維束Tmは、所定位置に回転可能に支持された案内ロール21により所定方向の引き出し方向に向かって引き出されていく。引き出された繊維束Tmは、送りロール22及び支持ロール23に挟持されて所定の送り量で送給される。繊維束Tmの送り量は、送りロール22を回転させる送給モータ24の回転動作を制御して調整される。
【0039】
送りロール22により送給された繊維束Tmは、繊維束Tmの搬送方向に所定間隔を空けて配列された一対の支持ロール25に支持されて搬送される。支持ロール25の間には、張力付与ロール26が昇降可能に設けられており、繊維束Tmは支持ロール25の上側から張力付与ロール26の下側に回り込むようにセットされる。支持ロール25の間を通過する繊維束Tmは張力付与ロール26により所定範囲の張力が付与される。そして、送りロール22により送られる繊維束Tmの送り量により張力付与ロール26は昇降するようになる。張力付与ロール26の昇降動作は、上限位置検知センサ27及び下限位置検知センサ28により検知される。
【0040】
張力付与ロール26は、繊維束Tmが開繊され搬送される量(搬送量)に対し送り量が少なくなると上昇し、繊維束Tmの搬送量に対し送り量が多くなると下降するように動作する。そのため、張力付与ロール26が上昇して上限位置検知センサ27が張力付与ロール26を検知すると、送りロール22の回転を速め繊維束Tmの送り量を増加させるようにする。また、張力付与ロール26が下降して下限位置検知センサ28が張力付与ロール26を検知すると、送りロール22の回転を遅め繊維束Tmの送り量を減少させるようにする。
【0041】
こうして、上限位置検知センサ27及び下限位置検知センサ28からの検知信号に基づいて張力付与ロール26が所定範囲に位置するように繊維束Tmの送り量を調整して繊維束Tmの張力を所定範囲に安定させる。
【0042】
なお、ボビンから繊維束を引き出し、繊維束の張力を連続して一定の範囲で安定させる機構であれば、本機構以外の方法であっても良い。
【0043】
支持ロール25の下流側には、ニップロール29が設けられており、繊維束Tmはニップロール29に挟持されて開繊部に搬送されていく。ニップロール29は、図示せぬ一方向クラッチが取り付けられており、繊維束Tmを送り出す方向のみ回転し引き戻す方向には回転しないようになっている。
【0044】
ニップロール29を通過し所定範囲の張力に設定された繊維束Tmは、搬送方向に配列された複数の開繊部を通過する。各開繊部は、搬送方向に配列された一対のガイドロール31により繊維束Tmを支持する。ガイドロール31の間には、風洞管32が設けられており、風洞管32の上方開口部がガイドロール31の間に所定幅で形成されている。風洞管32の下側には流量調整バルブ33及び吸気ポンプ34が取り付けられており、吸気ポンプ34を作動させて風洞管32内の空気を吸引することで、ガイドロール31の間の上方開口部において吸引による空気流れが発生する。
【0045】
ガイドロール31の間を搬送中の繊維束Tmに対して吸引気流が通過すると、繊維束Tmの張力と気流の流速の関係により繊維束Tmが撓んだ状態になる。このような状態になると、繊維束Tmの繊維の間を気流が通り抜ける際に繊維を繊維束Tmの幅方向に移動させる力が働き、かつ繊維が撓んでいる効果により繊維束Tmが開繊されるようになる。こうした開繊作用は公知である。
【0046】
繊維束Tmが撓んだとき、その撓みの大きさは撓み量tであらわすことができる。撓み量tはガイドロール31の上面から繊維束が撓んだときの最下位置までの距離で表わすことができる。
【0047】
ニップロール29を設けていることにより、繊維束Tmは搬送方向と逆方向に引き戻されることはなく、風洞管内で撓みを形成し易い状態になっている。
【0048】
風洞管32の上方開口部の両側には搬送方向に沿って一対のガイド部材35が取り付けられており、ガイドロール31の間を搬送中の繊維束Tmに吸引気流が通過することで開繊が行われる場合にガイド部材35により開繊幅が規定されるようになる。
【0049】
ガイド部材35は、風洞管32の上方開口部を矩形状に形成して開口部の側壁をそのまま利用してもよい。また、風洞管32の内部に針金等を複数本立設してガイド部材として用いることもできる。
【0050】
繊維束Tmは、開繊部により複数回にわたり開繊されて繊維が均一に分散した厚みの薄い開繊糸シートTsに形成される。開繊糸シートTsは、引取りロール41により挟持されて搬送される。引取りロール41は、引取りモータ42により回転駆動されて開繊糸シートTsを引き込んで開繊糸シートTsを搬送する。そのため、繊維束Tmの搬送速度は引取りモータ42の回転速度により調整することができる。
【0051】
引取りロール41により搬出された開繊糸シートTsは、図示せぬ巻取り装置により巻き取られる。または、樹脂材料を付着又は含浸させる装置等に連続して搬送される。
【0052】
以上のような装置では、繊維束Tmはニップロール29に挟持され、開繊糸シートTsは引取りロール41に挟持されており、これらのローラ対の間では、繊維束Tmが挟持されることがない。そのため、2つのローラ対の間は、繊維束Tmの繊維が幅方向に移動可能な状態で搬送される可動領域Mとなっている。
【0053】
繊維束Tmは引取りロール41により所定の搬送速度で搬送されながら、張力付与ロール26により張力が所定範囲となるように調整される。そのため、繊維束Tmは可動領域Mに配置された複数の開繊部において吸引気流により撓んだ状態で搬送される。
【0054】
開繊部のガイドロール31の間は、それぞれ開繊領域A1〜A3に設定される。各開繊領域の開繊幅W1〜W3は、各開繊部の一対のガイド部材の間の間隔により設定される。繊維束Tmが可動領域Mに入る前の幅は元幅W0となる。
【0055】
各開繊領域の上流側は繊維束Tmが末広がりに拡がる拡張領域B1〜B3に設定される。図1及び図2に示す例では、拡張領域B1は、ニップロール29から開繊領域A1の上流側のガイドロールまでに設定され、拡張領域B2〜B3は、ガイド部材35の下流側端部から開繊領域の上流側のガイドロールまでの間に設定される。そして、各開繊領域の上流側に設定される拡張領域における繊維束Tmの搬送方向の長さL2及びL3は、繊維束Tmが実際に末広がりに拡がる領域の長さで、その開始位置であるガイド部材35の下流側端部から開繊領域の上流側のガイドロールまでの間の長さとなる。図1に示す例では、ガイド部材35の設定位置により拡張領域の上流側において開繊領域との間に間隔が空くようになっているが、ガイド部材の設定位置を調整して開繊領域及び拡張領域が連続するように設定することもできる。
【0056】
各開繊領域の上流側は繊維束Tmが末広がりに拡がる拡張領域B1〜B3に設定される。開繊領域の間の拡張領域における繊維束Tmの搬送方向の長さL2及びL3は、隣接する開繊領域のガイドロールの間の間隔として設定される。拡張領域B1は、ニップロール29から開繊領域A1までに設定される。
【0057】
そして、これらの開繊領域及び拡張領域を対とする領域群S1〜S3が可動領域M内に繊維束Tmの搬送方向に配列されている。
【0058】
図3は、こうした可動領域Mにおける複数の領域群Si(i=1,・・・,n)の配列を一般化して示した模式図である。なお、図3では各領域群が連続して配列されているが、図1及び図2に示すように各領域群の間に間隔を空けるように配列してもよい。領域群Siは、繊維束中に流体として吸引気流を通過させることで繊維を撓ませながら幅方向に移動させて開繊幅Wiに開繊する開繊領域Ai及び開繊領域Aiに対応して搬送方向上流側に設定されるとともに開繊領域Aiの繊維の幅方向の移動に伴って繊維束の幅が末広がりに拡張する拡張領域Biを備えている。
【0059】
本発明では、開繊領域Aiで生じる繊維束の各繊維が幅方向へ移動する現象を上流側の拡張領域Biに及ぼして繊維を末広がりに広げるため、サイジング剤の付着ムラ及び繊維同士の絡み合いを次第に解消して繊維を解きほぐすように開繊する。つまり、サイジング剤の付着ムラ及び繊維同士の絡み合いの影響を抑えながら開繊することができる。なお、各領域群の配列が連続している場合、各領域群の間に間隔がある場合、どちらにおいても、可動領域内では各繊維は幅方向に移動できるため、繊維束は各繊維を解きほぐすように開繊することができる。
【0060】
開繊領域Aiでは所定の開繊幅まで開繊し、繊維束が下流に搬送されるにしたがい開繊幅が拡がるようになっていくため、開繊される繊維束の厚みは次第に薄くなる。繊維束が厚い場合サイジング剤の付着ムラ及び繊維同士の絡み合いが内蔵した状態となっているが、各繊維が幅方向に徐々に移動し、厚みを次第に薄くすることで内蔵するサイジング剤の付着ムラ及び繊維同士の絡み合いが拡張領域Biにおいて徐々に解消されていく。そのため、開繊して一気に開繊幅を拡げる場合に比べてサイジング剤の付着ムラ及び繊維同士の絡み合いの影響を抑えることができ、繊維を解きほぐして均一に分散させながら開繊することが可能となる。
【0061】
繊維束のサイジング剤の付着ムラ及び繊維同士の絡み合いは、最初に開繊を行う場合に最も影響を与える。繊維束を製造する段階やボビンの巻き付けの際に繊維束全体にねじれが加わっている場合もあり、繊維束を開繊する際に連続安定した開繊幅を得ることができなかったり、開繊中に繊維束間に割れなどを生じさせる。
【0062】
本発明では、最初の領域群S1では、繊維束Tmの元幅W0に対して、開繊領域A1の開繊幅W1
1<(W1/W0)≦5
となるように設定することで、繊維束中の繊維同士の絡み合い及び繊維束全体のねじれの影響を抑えながら繊維を均一に分散させて最初の開繊を安定して行うことができる。開繊幅W1が元幅W0の5倍より拡がると、開繊の際に繊維束中の繊維同士の絡み合い及び繊維束全体のねじれが逆に強くなり、その影響を受けて連続安定した開繊幅を得ることができなかったり、繊維束間に割れなどを生じ易くさせる。さらに好ましくは、
2≦(W1/W0)≦4
に設定するとよい。開繊幅W1を元幅W0の2倍以上にすれば、開繊効率を高めることができる。また、開繊幅W1を元幅W0の4倍以内とすることで、繊維束中の繊維同士の絡み合い及び繊維束全体のねじれの影響をより抑えた繊維分散性の良い開繊が行われる。
【0063】
次に、最初の領域群S1以降の領域群Sj(j=2,・・・,n)について説明する。図4は、領域群Sj-1及び領域群Sjに関する説明図である。領域群Sj-1は、開繊領域Aj-1及び拡張領域Bj-1からなり、開繊領域Aj-1は開繊幅Wj-1に設定され、拡張領域Bj-1は繊維束の搬送方向の長さLj-1に設定される。同様に、領域群Sjは、開繊領域Aj及び拡張領域Bjからなり、開繊領域Ajは開繊幅Wjに設定され、拡張領域Bjは繊維束の搬送方向の長さLjに設定される。
【0064】
拡張領域Bjは、下流側に向かって末広がりに拡がっており、開繊幅Wjは開繊幅Wj-1よりも広くなる。そして、拡張領域Bjは両側に等しい距離だけ拡がるように設定されているため、両側において拡大した距離分ΔWは、
ΔW=(Wj―Wj-1)/2
となる。そして、拡張領域Bjの両側において搬送方向に対して拡がる角度をθとすると、
tanθ=ΔW/Lj=(Wj―Wj-1)/2Lj
となる。
【0065】
ここで、拡張領域Bjは両側に等しい距離だけ拡がるように設定されていることが望ましい。拡がり方に偏りがある設定を行うと、開繊による各繊維の幅方向移動に偏りを生じ、均一な繊維分散を伴った開繊が行われ難くなる。
【0066】
領域群Sjでは、拡張領域Bjの広がる角度θを30°以下に設定することで、開繊領域Ajにおいて繊維を均一に分散させて開繊幅Wjまで開繊することができる。角度θが30°より大きくなると、拡張領域Bjにおいてサイジング剤の付着ムラや繊維の絡み合いが十分解消されないまま開繊が行われ、繊維の間に隙間が生じたり、繊維の密度に粗密が形成されて均一な分散が連続して行われ難くなる。
【0067】
したがって、開繊領域Aj-1の開繊幅Wj-1、開繊領域Ajの開繊幅Wj及び拡張領域Bjにおける繊維束の搬送方向の長さLj
0<(Wj―Wj-1)/2Lj≦tan30°
を満たすように設定することで、繊維束の繊維が均一に分散した開繊を連続して行うことが可能となる。
【0068】
なお、θが小さくなるほど、各繊維が徐々に移動するので繊維分散性には好ましいが、距離Lが長くなるため装置の大型化になる。逆に、θが大きくなるほど、距離Lが短くなり装置の小型化となるが各繊維の移動量も大きくなり繊維分散性に影響し易くなる。よって、θは5°≦θ≦20°がより好ましい角度となる。
【0069】
以上のように設定することで、拡張領域Biにおいてサイジング剤の付着ムラや繊維の絡み合いを解消しながら繊維を解きほぐして予備開繊を行うことで、開繊領域Aiにおいて繊維を均一に分散させて開繊幅を所定幅に拡大し厚みを均一化することができる。そして、開繊領域Ai及び拡張領域Biからなる領域群Siを複数設定することで、従来よりも開繊幅の広い厚みの薄い開繊糸シートに仕上げることができる。
【0070】
例えば、集束本数が12000本の炭素繊維束の場合、開繊幅が約27mm(目付量が約30g/m2)、さらには開繊幅が約40mm(目付量が約20g/m2)となる開繊を行っても、繊維が均一に分散された開繊糸シートを形成することができる。
【0071】
本発明によれば、従来のように連続して開繊する場合に比べて格段に厚みの薄い開繊糸シートに開繊することができ、また従来の技術では幅広な開繊が困難であった集束本数の多い繊維束についても繊維分散性に優れた幅広な開繊を行うことができるようになる。
【0072】
図5及び図6は開繊領域Ajにおける開繊幅Wjに関する説明図である。開繊領域Ajにおける開繊幅Wjは、例えば図1の概略説明図から、風洞管32の上方開口部の両側に繊維束の搬送方向に沿って一対のガイド部材35を取り付け、そのガイド部材35により規定される。
【0073】
風洞管32の上方開口部の形状が図1つまり図5のように矩形形状の場合、ガイド部材35は搬送方向に平行に取り付けられる。そして、風洞管32における繊維束搬送方向の上流側と下流側における長さ(風洞管幅)、つまり開繊幅Wjは同じ長さとなる。
【0074】
風洞管32の形状は、例えば図6に示すように、繊維束搬送方向の上流側長さに対し下流側長さが長い形状であっても良い。つまり、搬送方向に向かって拡がる形状のものを用いても良い。この場合、風洞管開口部の両側には一対のガイド部材35が搬送方向に沿って拡がるように取り付けられる。
【0075】
図6の場合、繊維束の搬送方向下流側における幅WBjを開繊領域Ajにおける開繊幅Wjとすることができる。ただし、拡張領域Bjの両側において搬送方向に対して拡がる角度θを求める式、
tanθ=ΔW/Lj=(Wj―Wj-1)/2Lj
においては、幅Wjに開繊領域Ajの繊維束搬送方向上流側の幅WPjを、幅Wj-1に開繊領域Aj―1の繊維束搬送方向下流側の幅WBj-1を適用する。
【0076】
図7及び図8は、本発明に係る開繊方法を実施する別の装置例に関する概略平面図及び概略側面図である。なお、図1及び図2に示す装置例と同一の部分については同一の符号を付しており、その部分の説明は省略する。
【0077】
この装置例では、開繊部の下流側には、縦振動付与機構が設けられている。縦振動付与機構は、一対の支持ロール51の間に押圧ロール53が配列されている。押圧ロール53は、昇降ロッド52の下端に取り付けられており、昇降ロッド52の上端はクランクアーム54の一端に連結されている。クランクアーム54の他端はクランクモータ55の出力軸に連結されており、クランクモータ55を回転駆動することで昇降ロッド52が昇降動作を繰り返すようになる。そのため、押圧ロール53は、上下動して支持ロール51の上側を通る開繊された開繊糸シートTsの上面に所定の周期で突き当てられるようになる。
【0078】
押圧ロール53が開繊糸シートTsに突き当てられて開繊糸シートTsが支持ロール51の間に押し込まれると、一時的に開繊糸シートTsの張力が大きくなって緊張状態が生じ、押圧ロール53が上昇して開繊糸シートTsから離間すると、開繊糸シートTsの張力が小さくなって弛緩状態が生じるようになる。
【0079】
こうした開繊糸シートTsの緊張状態と弛緩状態の繰り返しは開繊部の繊維束Tmにも伝搬していき、開繊部において繊維束Tmの撓み量が時間的に変化する。つまり、開繊部においては繊維束Tmが緊張すると繊維束Tmの撓み量が小さくなる方向に、繊維束Tmが弛緩すると繊維束Tmの撓み量は大きくなる方向に変化する。開繊作用において、繊維束の撓み量が大きくなる方向と小さくなる方向を周期的に繰り返して流体の作用を受けると、各繊維はより真直な状態になって徐々に幅方向へ移動することとなり、より幅広で、繊維分散性の良い開繊が行われ易くなる。つまり、開繊効率を高めることが可能となる。なお、各開繊部において、繊維束が緊張して繊維束Tmの撓みがなくなってしまうと、繊維束は集束しやすい状態となり、開繊幅が不安定になってしまう。よって、繊維束の搬送速度に応じた押圧ロール53の上下動速度を調整し、開繊糸シートTsの緊張状態と弛緩状態を調整することにより、各開繊部において繊維束の撓みを確保し開繊幅を安定させるようにすることが重要となる。
【0080】
開繊糸シートTsに付与された振動はニップロール29の上流側にも伝搬する。この装置例では、伝搬された振動を除去する機構が支持ロール25とニップロール29の間に設けられている。機構例として、一対の支持ロール201及びテンションロール202が設けられ、このテンションロール202は、一対の支持ロール201の間に配列されて、支持ロール201の下側を通る繊維束Tmがテンションロール202の上側を通るように設定されている。そして、テンションロール202はバネ部材203に取り付けられており、繊維束の振動に応じてテンションロール202も上下に振動し、繊維束の振動を除去するようになっている。
【0081】
なお、ニップロール29が設けられていることにより、テンションロール202の振動の影響による繊維束の逆戻りが開繊部には影響せず、各風洞管内では繊維束の撓みが安定して形成されるようになっている。
【0082】
この装置例では、ニップロール29から引取りロール41までの領域が可動領域Mに設定される。開繊部のガイドロール31の間は、それぞれ開繊領域A1〜A3に設定される。各開繊領域の上流側は繊維束Tmが末広がりに拡がる拡張領域B1〜B3に設定される。拡張領域B1は、ニップロール29から開繊領域A1までに設定される。
【0083】
そして、これらの開繊領域及び拡張領域を対とする領域群S1〜S3が可動領域M内に繊維束Tmの搬送方向に配列されている。
【0084】
なお、縦振動付与機構は可動領域Mの範囲内であればどの場所に配置してもよい。例えば、拡張領域B1〜B3または開繊領域A1〜A3のいずれかに配置してもよい。
【0085】
この装置例では、縦振動付与機構によって、開繊領域において繊維束の撓み量を時間的に変化させている。クランクモータ55の回転を一定にすることで、撓み量を周期的に変化させることができる。また、クランクモータ55の回転を時間的に変化させる制御を行えば、撓み量の変化を不規則に行うこともできる。これらの制御は、繊維束の開繊状態により対応することができる。
【0086】
なお、開繊領域における繊維束の撓み量を時間的に変化させる他の方法として、例えば、繊維束Tmまたは開繊糸シートTsに楕円型の回転体を接触させ、この楕円型回転体を回転させることで、開繊領域における繊維束の撓み量を時間的に変化させることもできる。また、各流量調整バルブ33の開閉量を時間的に制御することで、各開繊部を流れる流体の大きさを時間的に変化させ、開繊領域における繊維束の撓み量を時間的に変化させる方法などを用いることもできる。
【0087】
各領域群では、上述したように、各開繊領域の開繊幅及び各拡張領域の搬送方向の長さが設定されることで、拡張領域においてサイジング剤の付着ムラや繊維の絡み合いを解消しながら繊維を解きほぐして予備開繊を行い、開繊領域において繊維を均一に分散させて開繊幅を所定幅に拡大し厚みを均一化することができる。そして、開繊領域及び拡張領域からなる領域群を複数配列することで、従来よりも開繊幅の広い厚みの薄い開繊糸シートに仕上げることができる。
【0088】
図9及び図10は、本発明に係る開繊方法を実施する別の装置例に関する概略平面図及び概略側面図である。なお、図7及び図8に示す装置例と同一の部分については同一の符号を付しており、その部分の説明は省略する。
【0089】
この装置例では、開繊部の風洞管32の上方開口部内に撓み確保ロール36が設けられている。ガイドロール31の上側を通る繊維束Tmは、撓み確保ロール36の下側を通るように搬送される。そして、縦振動付与機構により繊維束Tmの撓み量が小さくなっても繊維束Tmは撓み確保ロール36により所定の大きさの湾曲した状態に設定される。そのため、繊維束Tmが各開繊部において直線状になることがなく、繊維束の開繊幅が収縮するのを防止する。さらに、縦振動付与機構により繊維束Tmの撓み量が小さくなり撓み確保ロール36に瞬間的に接触すると繊維束中の各繊維の分散性と真直性が向上し、品質の良い開繊状態を得ることが可能となる。つまり、繊維束Tmは弛緩状態のときには撓み確保ロール36から離れた撓みを形成し、緊張状態になったときには撓み確保ロール36に瞬間的に接触する撓みを形成し、この2つの状態を繰り返すことで、繊維束は幅広く繊維分散性に優れた開繊が行われる。
【0090】
なお、この装置例では、開繊部A3の下流側に縦振動付与機構が配置されているが、縦振動付与機構は拡張領域B1〜B3のいずれかに配置してもよい。
【0091】
この装置例では、図7に示す装置例と同様に開繊領域及び拡張領域を対とする領域群S1〜S3が可動領域M内に繊維束Tmの搬送方向に配列される。
【0092】
そして、各領域群において、各開繊領域の開繊幅及び各拡張領域の搬送方向の長さが上述のように設定されることで、拡張領域において繊維を解きほぐして予備開繊が行われ、開繊領域において繊維を均一に分散させて開繊幅を所定幅に拡大し厚みを均一化することができる。開繊領域及び拡張領域からなる領域群を複数配列することで、従来よりも開繊幅の広い厚みの薄い開繊糸シートに仕上げることができる。
【0093】
図11及び図12は、本発明に係る開繊方法を実施する別の装置例に関する概略平面図及び概略側面図である。なお、図9及び図10に示す装置例と同一の部分については同一の符号を付しており、その部分の説明は省略する。
【0094】
この装置例では、最も下流側の開繊部において縦振動付与機構を配置し、押圧ロール53を撓み確保ロール36として設置している。つまり、撓み確保ロール36を繊維束の搬送方向と直交する方向、好ましくは繊維束の撓み方向に振動させている。これにより、開繊部において繊維束Tmに周期的に緊張状態と弛緩状態を繰り返し付与する。この作用により、繊維束Tmに積極的に撓みを与える、つまり、積極的に撓みの大きさ変化させることができ、さらに開繊効率を向上させることが可能となる。
【0095】
なお、この装置例では、最も下流側の開繊部に縦振動付与機構の押圧ロール53を配置しているが、縦振動付与機構の押圧ロール53は他のどの開繊部に配置してもよい。また、複数の開繊部に配置してもよい。
【0096】
この装置例においても、図7に示す装置例と同様に開繊領域及び拡張領域を対とする領域群S1〜S3が可動領域M内に繊維束Tmの搬送方向に配列される。
【0097】
そして、各領域群において、各開繊領域の開繊幅及び各拡張領域の搬送方向の長さが上述のように設定されることで、拡張領域において繊維を解きほぐして予備開繊が行われ、開繊領域において繊維を均一に分散させて開繊幅を所定幅に拡大し厚みを均一化することができる。開繊領域及び拡張領域からなる領域群を複数配列することで、従来よりも開繊幅の広い厚みの薄い開繊糸シートに仕上げることができる。
【0098】
図13は、本発明に係る開繊方法を実施する別の装置例に関する概略側面図である。なお、図10に示す装置例と同一の部分については同一の符号を付しており、その部分の説明は省略する。
【0099】
この装置例では、開繊部においてガイドロール31が3本設けられており、ガイドロール31の間にはそれぞれ撓み確保ロール36が設けられている。したがって、開繊部では繊維束Tmが2つの区間において撓んだ状態に形成されて開繊が行われる。
【0100】
この装置例では、最上流側及び最下流側のガイドロール31の間が開繊領域に設定され、図7に示す装置例と同様に開繊領域及び拡張領域を対とする領域群S1〜S3が可動領域M内に繊維束Tmの搬送方向に配列される。
【0101】
そして、各領域群において、各開繊領域の開繊幅及び各拡張領域の搬送方向の長さが上述のように設定されることで、拡張領域において繊維を解きほぐして予備開繊が行われ、開繊領域において繊維を均一に分散させて開繊幅を所定幅に拡大し厚みを均一化することができる。開繊領域及び拡張領域からなる領域群を複数配列することで、従来よりも開繊幅の広い厚みの薄い開繊糸シートに仕上げることができる。
【0102】
なお、この装置例では、開繊部A3の下流側に縦振動付与機構が配置されているが、縦振動付与機構は拡張領域B1〜B3のいずれかに配置してもよい。また、図12の装置例のように、開繊部における撓み確保ロール36の少なくとも1つを縦振動付与機構によって上下に移動させ、繊維束Tmに対して緊張及び弛緩を繰り返し付与し、開繊領域における繊維束の撓み量を時間的に変化させてもよい。
【0103】
図14は、本発明に係る開繊方法を実施する別の装置例に関する概略側面図である。なお、図13に示す装置例と同一の部分については同一の符号を付しており、その部分の説明は省略する。
【0104】
この装置例では、開繊部に対応して熱風を繊維束Tmに吹き付けて加熱する加熱機構61が設けられている。開繊される繊維束Tmを加熱することで、繊維束Tmに付着したサイジング剤を軟化させることができる。そのため、拡張領域では繊維が容易に解きほぐされるようになり、開繊領域では繊維が均一に分散されるようになる。
【0105】
この装置例においても、図13に示す装置例と同様に開繊領域及び拡張領域を対とする領域群S1〜S3が可動領域M内に繊維束Tmの搬送方向に配列される。
【0106】
そして、各領域群において、各開繊領域の開繊幅及び各拡張領域の搬送方向の長さが上述のように設定されることで、拡張領域において繊維を解きほぐして予備開繊が行われ、開繊領域において繊維を均一に分散させて開繊幅を所定幅に拡大し厚みを均一化することができる。開繊領域及び拡張領域からなる領域群を複数配列することで、従来よりも開繊幅の広い厚みの薄い開繊糸シートに仕上げることができる。
【0107】
図15は、本発明に係る開繊方法を実施する別の装置例に関する概略側面図である。なお、図14に示す装置例と同一の部分については同一の符号を付しており、その部分の説明は省略する。
【0108】
この装置例では、拡張領域において繊維束Tmの上側に一対の接触ロール71を繊維束Tmの幅方向に沿って配置し、下側に接触ロール71の間に支持ロール72を配置している。この装置例では、接触ロール2本、支持ロール1本であるが、その本数は何本でもよい。
【0109】
接触ロール71および支持ロール71は回転可能としてもよいし、固定されていてもよい。各ロールに接触して繊維束Tmが搬送されることにより、繊維束が幅方向に潰されると同時にサイジング剤による固着から各繊維が切り離され幅方向に移動し易くなり、その結果、繊維が分散性よく予備開繊されるようになる。
【0110】
また、接触ロール71は、図示せぬクランク機構により繊維束Tmの幅方向に沿って往復移動するようにしてもよい。接触ロール71及び支持ロール72の間を繊維束Tmが接触しながら通過する際に、繊維束Tmの繊維が接触ロール71の往復移動により幅方向に移動するようになり、さらに効率的に繊維が均一に分散するように作用する。
【0111】
この装置例においても、図13に示す装置例と同様に開繊領域及び拡張領域を対とする領域群S1〜S3が可動領域M内に繊維束Tmの搬送方向に配列される。
【0112】
そして、各領域群において、各開繊領域の開繊幅及び各拡張領域の搬送方向の長さが上述のように設定されることで、拡張領域において繊維を解きほぐして予備開繊が行われ、開繊領域において繊維を均一に分散させて開繊幅を所定幅に拡大し厚みを均一化することができる。開繊領域及び拡張領域からなる領域群を複数配列することで、従来よりも開繊幅の広い厚みの薄い開繊糸シートに仕上げることができる。
【0113】
図16及び図17は、本発明に係る開繊方法を実施する別の装置例に関する概略平面図及び概略側面図である。この装置例では、図9及び図10に示す装置例を複数台並列配置し、複数の繊維束Tmを並行して開繊することで複数の開繊糸シートTsを同時に形成することができる。なお、図9及び図10に示す装置例と同一の部分については同一の符号を付しており、その部分の説明は省略する。
【0114】
各給糸体11から繰り出された繊維束Tmは、それぞれニップローラ29を通って送り出されて案内ロール204により整列ロール205に向かって搬送される。整列ロール205は、搬送された複数の繊維束Tmを一括して挟持し、同一平面に等間隔に配列されるように整列して複数の繊維束Tmを搬出する。
【0115】
搬出された複数の繊維束Tmは、図9及び図10に示す装置例と同様に3つの開繊部において開繊されるが、最下流側の開繊部は複数の繊維束Tmを一括して開繊が行われるように全幅にわたって上方開口部が形成されている。一括して開繊されて形成された開繊糸シートTsは、一括して縦振動付与機構の押圧ロール53により振動が付与され、引取りロール41により搬出される。
【0116】
この装置例では、整列ロール205から引取りロール41までの領域が可動領域Mに設定される。開繊部のガイドロール31の間は、それぞれ開繊領域A1〜A3に設定される。各開繊領域の上流側は繊維束Tmが末広がりに拡がる拡張領域B1〜B3に設定される。拡張領域B1は、整列ロール205から開繊領域A1までに設定される。
【0117】
なお、最下流側の開繊部における各繊維束Tmの開繊領域A3における開繊幅W3は、開繊部の幅方向の長さを、当該開繊部を通過する繊維束本数で除算した値となる。
【0118】
そして、これらの開繊領域及び拡張領域を対とする領域群S1〜S3が可動領域M内に繊維束Tmの搬送方向に配列されている。
【0119】
各領域群では、各開繊領域の開繊幅及び各拡張領域の搬送方向の長さが上述のように設定されることで、拡張領域においてサイジング剤の付着ムラや繊維の絡み合いを解消しながら繊維を解きほぐして予備開繊を行い、開繊領域において繊維を均一に分散させて開繊幅を所定幅に拡大し厚みを均一化することができる。そして、開繊領域及び拡張領域からなる領域群を複数配列することで、従来よりも開繊幅の広い厚みの薄い開繊糸シートに仕上げることができる。
【0120】
図18及び図19は、本発明に係る開繊方法を実施する別の装置例に関する概略平面図及び概略側面図である。なお、図16及び図17に示す装置例と同一の部分については同一の符号を付しており、その部分の説明は省略する。
【0121】
この装置例では、縦振動付与機構の下流側において開繊糸シートTsの繊維に対して幅方向に摺接する幅方向振動付与機構が設けられている。幅方向振動付与機構は、開繊糸シートTsの上側に全幅にわたって配列された一対のボウバー(bow bar)81を有し、開繊糸シートTsの下側に支持ロール82が配列されている。ボウバー81はクランク機構84に連結されており、クランク機構84をクランクモータ83により駆動することで、ボウバー81を開繊糸シートTsの幅方向に進退移動させる。ボウバー81が進退移動して開繊糸シートTsの繊維に摺接することで、繊維同士が付着した部分を柔らかく解きほぐして開繊糸シートTs全体を繊維が均一に分散した一枚のシート状態に仕上げることができる。
【0122】
この装置例においても、図16に示す装置例と同様に開繊領域及び拡張領域を対とする領域群S1〜S3が可動領域M内に繊維束Tmの搬送方向に配列される。
【0123】
そして、3領域群において、各開繊領域の開繊幅及び各拡張領域の搬送方向の長さが上述のように設定されることで、拡張領域において繊維を解きほぐして予備開繊が行われ、開繊領域において繊維を均一に分散させて開繊幅を所定幅に拡大し厚みを均一化することができる。開繊領域及び拡張領域からなる領域群を複数配列することで、従来よりも開繊幅の広い厚みの薄い開繊糸シートに仕上げることができる。
【0124】
この装置例では、幅方向振動付与機構は複数本の開繊糸シートTsに対して適用し、一枚の幅広い開繊糸シートTsを得ている。なお、幅方向振動付与機構は一本の開繊糸シートTsに対して適用し、さらに繊維分散性の良い開繊糸シートTsを得てもよい。
【0125】
図20は、本発明に係る開繊方法を実施する別の装置例に関する概略側面図である。なお、図19に示す装置例と同一の部分については同一の符号を付しており、その部分の説明は省略する。
【0126】
この装置例では、開繊部に対応して熱風を繊維束Tmに吹き付けて加熱する加熱機構61が設けられている。開繊される繊維束Tmを加熱することで、繊維束Tmに付着したサイジング剤を軟化させることができる。そのため、拡張領域では繊維が容易に解きほぐされるようになり、開繊領域では繊維が均一に分散されるようになる。
【0127】
この装置例においても、図18に示す装置例と同様に開繊領域及び拡張領域を対とする領域群S1〜S3が可動領域M内に繊維束Tmの搬送方向に配列される。
【0128】
そして、各領域群において、各開繊領域の開繊幅及び各拡張領域の搬送方向の長さが上述のように設定されることで、拡張領域において繊維を解きほぐして予備開繊が行われ、開繊領域において繊維を均一に分散させて開繊幅を所定幅に拡大し厚みを均一化することができる。開繊領域及び拡張領域からなる領域群を複数配列することで、従来よりも開繊幅の広い厚みの薄い開繊糸シートに仕上げることができる。
【0129】
以上のいずれかの開繊方法により、繊維束を幅広く、薄く、かつ繊維分散性の良い状態にした開繊糸シートを連続して得ることができる。
【0130】
炭素繊維束において、集束本数12000本から24000本、繊度400g/1000mから1100g/1000mの範囲にある炭素繊維束を、幅25mm以上、厚み0.04mm以下にした、繊維分散性の良い開繊糸シートにできる。このとき、開繊糸シートの目付量は約30g/m以下とすることができる。
【0131】
また、集束本数24000本以上、繊度1600g/1000m以上の太繊度炭素繊維束を、幅40mm以上、厚み0.2mm以下にした、繊維分散性の良い開繊糸シートにできる。例えば、集束本数48000本、繊度3200g/1000mの炭素繊維束の場合、開繊幅40mmにすると、得られる開繊糸シートの目付量は約80g/mとなる。また、集束本数60000本、繊度4000g/1000mの炭素繊維束の場合、開繊幅40mmにすると、得られる開繊糸シートの目付量は約100g/mとなる。
【0132】
開繊によって得られる開繊糸シートの最大幅及び最小厚みは、集束している各繊維が幅方向に一列に並んだ場合となる。本開繊方法は繊維束を徐々に幅方向に開繊させるため、繊維束を構成する各繊維の引き揃え状態が良く、かつ各繊維の絡み合いがない繊維束であれば、集束している各繊維を幅方向に一列に並べた繊維束の開繊も可能となる。
【0133】
例えば、単糸直径0.007mm、集束本数12000本の炭素繊維束であれば、本開繊方法によって、開繊幅84mm、厚み0.007mmの開繊糸シートを得ることが可能となる。
【0134】
本開繊方法は集束本数が多くなった繊維束にも適用できるため、集束本数60000本以上の太繊度炭素繊維束があった場合においても幅40mm以上の開繊が可能であり、現在、集束本数12000本〜24000本の炭素繊維束を使用して作成される目付量120〜160g/mの開繊糸シートを得ることも可能となる。
【0135】
ここで、開繊された繊維束の幅、厚さの測定は、開繊された繊維束を自然状態にして測定する。開繊幅は最小1mmまで測定できる長さ計を用いて測定し、厚さはJIS B 7502(国際規格ISO 3611に対応)に規定する最小表示量0.001mmの外側マイクロメータによって測定する。
【0136】
開繊糸シートの幅、厚さの測定は、開繊の連続安定性を確認するため、1カ所だけではなく複数箇所を測定する。例えば、長さ方向に、10cmおきに10カ所、1mおきに10カ所、または10mおきに10カ所などの測定を行う。なお、厚さにおいては、測定する箇所の幅方向において端部から端部までを外側マイクロメータによって測定し、幅方向の厚さのばらつきを測定する。例えば、開繊糸シート幅を外側マイクロメータの測定面直径で除した値(割り切れない場合は小数点下1桁を切り上げた値)aを用いて、測定する箇所の幅方向において、端部から端部までを均等にa分割した位置の厚さを測定する。
【0137】
開繊糸シートの繊維分散性において、繊維が均一に分散していれば、幅方向の厚さのばらつきは小さくなる。炭素繊維束において、集束本数12000本から24000本、繊度400g/1000mから1100g/1000mの範囲にある炭素繊維束を、幅25mm以上、厚み0.04mm以下の繊維分散性に優れた開繊糸シートにした場合、平均厚みの±0.01mm以下のばらつきとなる。炭素繊維の単糸直径が0.005〜0.007mmであることから炭素繊維1〜2本程度のばらつきとなる。
【0138】
また、集束本数24000本以上、繊度1600g/1000m以上の太繊度炭素繊維束を、幅40mm以上、厚み0.2mm以下の繊維分散性に優れた開繊糸シートにした場合、平均厚みの±0.02mm以下のばらつきとなる。炭素繊維の単糸直径が0.005〜0.007mmであることから3〜4本程度のばらつきとなる。
【0139】
開繊が順次安定して実施されれば、開繊糸シートの幅、厚さのばらつきは小さくなる。炭素繊維束において、集束本数12000本から24000本、繊度400g/1000mから1100g/1000mの範囲にある炭素繊維束を、幅25mm以上、厚み0.04mm以下の繊維分散性に優れた開繊糸シートにした場合、幅は平均開繊幅の±10%以内、厚さは平均厚みの±0.01mm以下になる。
【0140】
また、集束本数24000本以上、繊度1600g/1000m以上の太繊度炭素繊維束を、幅40mm以上、厚み0.2mm以下の繊維分散性に優れた開繊糸シートにした場合、幅は平均開繊幅の±10%以内、厚さは平均厚みの±0.02mm以下になる。
【0141】
図21は、本発明に係る繊維補強シートPsの製造工程に関する概略側面図である。図20の装置例により得られた幅広な開繊糸シートTsの片面に、連続して、樹脂付着離型シートJRsを貼り合わせ、加熱加圧を行い、繊維補強シートPsを製造する工程に関する説明図である。
【0142】
開繊糸シートTsの片面に、樹脂付着離型シート供給機構902から樹脂付着離型シートJRsを樹脂面が開繊糸シートTs
に付着するように連続して供給し、また、開繊糸シートTsのもう一方の片面には、離型シート供給機構901から離型シートRsを連続供給して、加熱加圧ロール905、加熱平板907、加熱加圧ロール905、冷却平板908、冷却ロール906を走行することにより、開繊糸シートTsと樹脂を付着させた、または開繊糸シートTsの繊維束中に樹脂を含浸させた繊維補強シートPsを得る。図21では、冷却ロール906を走行後、繊維補強シートPsの上下両面に貼り合わされた離型シートRsをそれぞれ離型シート巻き取り機構903にて巻き取り、繊維補強シートPsを新たな離型シート供給機構902から供給される離型シートRsと貼り合わせて製品巻き取り機構904にて巻き取っている。
【0143】
樹脂付着離型シートJRsは離型シートRsの片面に樹脂が付着したシートで、付着する樹脂は熱硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂が使用される。熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などが、熱可塑性樹脂としてポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド(ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド12など)、ポリアセタール、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンなどが使用される。熱可塑性樹脂の場合、これらの熱可塑性樹脂を2種類以上混合して、ポリマーアロイとした樹脂を使用してもよい。
【0144】
離型シートRsには離型処理された紙つまり離型紙、または、フッ素樹脂シート、熱硬化性ポリイミド樹脂シートなどが使用される。
【0145】
離型シートRsへの樹脂の付着状態として、離型シートRsの片面に樹脂が塗布されシート状に付着した状態、または離型シートRsの片面に粉末状の樹脂が分散して付着した状態などがある。
【0146】
加熱加圧ロール905、加熱平板907の加熱温度、または加熱加圧ロール905の加圧力を制御することにより、開繊糸シートTsの片面に樹脂が付着した状態にしたり、開繊糸シートTs中に樹脂を含浸させた状態にすることができる。
【0147】
ここで、開繊糸シートTsへの樹脂の付着とは、開繊糸シートの片面又は両面の全面又は複数部分に、樹脂を熱融着させる、又は成形品になった際に力学的特性等に影響を与えない接着剤を薄く塗布して接着させるなどして、開繊糸シートと樹脂を貼り合わせ、一体化させることである。開繊糸シートに樹脂を熱融着させる場合、開繊糸シートの表層部分に樹脂がわずかに含浸することもあるが、その場合においても付着の状態にあるといえる。
【0148】
ここで、開繊糸シートTsへの樹脂の含浸とは、開繊糸シートを構成する各繊維間の空間に樹脂が入り込み、各繊維と樹脂が一体化されることである。開繊糸シートの空間のほぼ全体に樹脂が入り込んだ状態を含浸と称することが多いが、本発明では、空間が残った状態の半含浸である状態においても含浸として取り扱うことができる。
【0149】
なお、加熱加圧ロール905、冷却ロール906、加熱平板907、冷却平板908の個数は加工速度などに応じて任意に決められる。さらに、図21では樹脂付着離型シートJRsは開繊糸シートTsの片面のみ供給しているが、上下両面とも樹脂付着離型シートJRsを供給して、開繊糸シートTsの上下に樹脂を付着させた繊維補強シートPs、さらには開繊糸シートTsの上下から樹脂を含浸させた繊維補強シートPsを得てもよい。
【0150】
この装置例では、整列ロール205から最初の加熱加圧ロール905までの領域が可動領域Mに設定される。そして、図20に示す装置例と同様に開繊領域及び拡張領域を対とする領域群S1〜S3が可動領域M内に繊維束Tmの搬送方向に配列される。
【0151】
拡張領域及び開繊領域からなる領域群を複数配列した本開繊方法により得られた繊維分散性に優れた開繊幅の広い厚みの薄い開繊糸シートTsに樹脂を付着または含浸させることにより、繊維本来の力学的特性を十分に発現し、かつ応力集中などの原因となる欠陥が少ない幅方向、厚さ方向に均質化された、さらには成形性つまりドレープ性に優れた繊維補強シートPsとなる。
【0152】
図22は、本発明に係る繊維補強シートPsの製造工程に関する別の概略側面図である。図20の装置例により得られた幅広な開繊糸シートTsの片面に、連続して樹脂シートJsを連続して重ねて、加熱加圧を行い、繊維補強シートPsを製造する工程に関する説明図である。
【0153】
本開繊装置によって得られた開繊糸シートTsは反転ロール909を走行後、加熱加圧ロール905に供給され、樹脂押出機構910から供給される樹脂シートJsと重なって、2連の加熱加圧ロール905と2連の冷却ロール906を走行して、開繊糸シートTsと樹脂シートJsを貼り合わせた、または開繊糸シートTsの繊維束中に樹脂シートJsを含浸させた繊維補強シートPsを得る。図22では、最初の加熱加圧ロール905の両側より、離型シート供給機構901から離型シートRsを連続供給し、最後の冷却ロール906を走行後、繊維補強シートPsの両面に貼り合わされた離型シートRsをそれぞれ離型シート巻き取り機構903にて巻き取り、繊維補強シートPsを製品巻き取り機構904にて巻き取っている。
【0154】
樹脂シートJsは、樹脂押出機構910から押し出されるシート状の樹脂であり、熱可塑性樹脂などが使用される。押し出される樹脂は単一の熱可塑性樹脂であってもよいし、2種類以上の樹脂を投入しポリマーアロイ化された樹脂であってもよい。
【0155】
離型シートRsには、図21同様、離型処理された紙つまり離型紙、または、フッ素樹脂シート、熱硬化性ポリイミド樹脂シートなどが使用される。なお、加熱温度条件によっては、離型シートRsを供給せず、離型シートがない状態で繊維補強シートPsを製造することもできる。
【0156】
加熱加圧ロール905の加熱温度または加圧力を制御することにより、開繊糸シートTsの片面に樹脂シートJsが付着つまり貼り合わさった状態にしたり、開繊糸シートTs中に樹脂を含浸または半含浸させた状態にすることができる。
【0157】
なお、加熱加圧ロール905、冷却ロール906の個数は加工速度などに応じて任意に決められる。
【0158】
さらには、加熱加圧ロール905の反対側にもう1組の本開繊装置を設置し、樹脂シートJsの両側に開繊糸シートTsを付着させた、または含浸させた繊維補強シートPsを得ることもできる。
【0159】
この装置例では、整列ロール205から反転ロール909までの領域が可動領域Mに設定される。そして、図20に示す装置例と同様に開繊領域及び拡張領域を対とする領域群S1〜S3が可動領域M内に繊維束Tmの搬送方向に配列される。
【0160】
図21までの装置例では、一対のロールにより繊維束または開繊糸シートを挟持して可動領域を設定していたが、図22の本装置例ではニップロール(一対のロール)と反転ロールにより可動領域を設定している。反転ロールをゴムなどの弾性素材のロールにする、またはロール径を大きくして開繊糸シートTsとロールとの接触長を長くする、または反転ロールを加熱加圧ロールに接触させるなどすることにより、開繊糸シートTsの各繊維は幅方向への移動が規制される。したがって、反転ロールまでを可動領域と設定することができる。
【0161】
本開繊方法により得られた繊維分散性に優れた開繊幅の広い厚みの薄い開繊糸シートTsに樹脂シートを貼り合わせるまたは含浸させることにより、繊維本来の力学的特性を十分に発現し、かつ応力集中などの原因となる欠陥が少ない幅方向、厚さ方向に均質化された、さらには成形性つまりドレープ性に優れた繊維補強シートPsとなる。
【実施例】
【0162】
[実施例1]
図11、図12に示す装置において開繊部を2つ配列して下流側の開繊部に縦振動付与機構を設置し、図14に示す加熱機構61を設けた装置構成で実施した。繊維束として、炭素繊維(東レ株式会社製、トレカT700SC―12K;繊維直径約7μm、集束本数12000本)を使用した。繊維束の元幅W0は約7mmであった。
【0163】
開繊領域A1の開繊幅W1は16mm、開繊領域A2の開繊幅W2は27mm、拡張領域B2の搬送方向の長さL2は30mm、拡がり角度θは約10°に設定した。各開繊領域のガイドロールの間の長さは20mm、ガイドロールの直径は6mmで表面に梨地加工を施した。撓み確保ロールの直径は10mmで表面に梨地加工を施した。撓み確保ロールはガイドロールに対して5mm下方に位置決め設定した。
【0164】
繊維束に付与される初期張力を150gに設定し、繊維束を搬送速度5m/分で搬送した。開繊部における吸引気流の流速(繊維束のない開放状態)は20m/秒で、加熱機構から吹き出される熱風温度は100℃とした。縦振動付与機構は、振動回数600rpmで押圧ロールのストローク量は10mmに設定した。なお、押圧ロールは直径10mm、表面は梨地加工を施した。
【0165】
以上のように設定して、繊維束を搬送して開繊糸シートを連続して形成した。開繊糸シートは、繊維が均一に分散されて隙間が生じておらず、その目付け量は約30g/m2であった。
【0166】
開繊の連続性を確認するため、1m毎に10カ所、開繊幅と厚みの測定を行った。開繊幅は25〜27mmの範囲にあり、平均開繊幅は約26.5mmであった。平均開繊幅に対し、−5.7%〜1.9%のばらつきであった。厚さは0.028〜0.038mmの範囲にあり、平均厚さは0.034mmであった。平均厚さに対し、−0.006〜0.004mmのばらつきであった。
【0167】
[実施例2]
図11、図12に示す装置において開繊部を2つ配列して下流側の開繊部に縦振動付与機構を設置し、図14に示す加熱機構61を設けた装置構成で実施した。繊維束として、炭素繊維(三菱レイヨン株式会社製、パイロフィルTR50S―15K;繊維直径約7μm、集束本数15000本)を使用した。繊維束の元幅W0は約6mmであった。
【0168】
開繊領域A1の開繊幅W1は25mm、開繊領域A2の開繊幅W2は48mm、拡張領域B2の搬送方向の長さL2は30mm、拡がり角度θは約21°に設定した。各開繊領域のガイドロールの間の長さは20mm、ガイドロールの直径は6mmで表面に梨地加工を施した。撓み確保ロールの直径は10mmで表面に梨地加工を施した。撓み確保ロールはガイドロールに対して5mm下方に位置決め設定した。
【0169】
繊維束に付与される初期張力を150gに設定し、繊維束を搬送速度5m/分で搬送した。開繊部における吸引気流の流速(繊維束のない開放状態)は20m/秒で、加熱機構から吹き出される熱風温度は100℃とした。縦振動付与機構は、振動回数600rpmで押圧ロールのストローク量は10mmに設定した。なお、押圧ロールは直径10mm、表面は梨地加工を施した。
【0170】
以上のように設定して、繊維束を搬送して開繊糸シートを連続して形成した。開繊糸シートは、繊維が均一に分散されて隙間が生じておらず、その目付け量は約21g/m2であった。
【0171】
開繊の連続性を確認するため、1m毎に10カ所、開繊幅と厚みの測定を行った。開繊幅は44〜48mmの範囲にあり、平均開繊幅は約46.6mmであった。平均開繊幅に対し、−5.6%〜3.0%のばらつきであった。厚さは0.020〜0.028mmの範囲にあり、平均厚さは0.023mmであった。平均厚さに対し、−0.003〜0.005mmのばらつきであった。
【0172】
[実施例3]
実施例2と同様の装置構成、および同様の炭素繊維束を用いた。
【0173】
開繊領域A1の開繊幅W1および開繊領域A2の開繊幅W2は実施例2と同様とした。拡張領域B2の搬送方向の長さL2は20mm、拡がり角度θは約30°に設定した。その他、各開繊領域のガイドロール間長さ、ガイドロール直径と表面処理、撓み確保ロール直径と表面処理、そして撓み確保ロールの位置については実施例2と同様とした。
【0174】
繊維束に付与される初期張力、繊維束の搬送速度、開繊部における吸引気流の流速、加熱機構からの熱風温度、縦振動付与機構の振動回数および押圧ロールの直径、表面処理およびストローク量は実施例2と同様とした。
【0175】
以上のように設定して、繊維束を搬送して開繊糸シートを連続して形成した。開繊糸シートは、繊維が均一に分散されて隙間が生じておらず、その目付け量は約21g/m2であった。拡がり角度θが30°の場合においても繊維分散性に優れた開繊糸シートを得ることができた。
【0176】
開繊の連続性を確認するため、1m毎に10カ所、開繊幅と厚みの測定を行った。開繊幅は42〜48mmの範囲にあり、平均開繊幅は約45.7mmであった。平均開繊幅に対し、−8.1%〜5.0%のばらつきであった。厚さは0.019〜0.029mmの範囲にあり、平均厚さは0.024mmであった。平均厚さに対し、−0.005〜0.005mmのばらつきであった。
【0177】
[実施例4]
図1に示す装置において開繊部を2つ配列して、図14に示す加熱機構61を設けた装置構成で実施した。繊維束として、炭素繊維(三菱レイヨン株式会社製、パイロフィルTR50S―15K;繊維直径約7μm、集束本数15000本)を使用した。繊維束の元幅W0は約6mmであった。
【0178】
開繊領域A1の開繊幅W1は20mm、開繊領域A2の開繊幅W2は40mm、拡張領域B2の搬送方向の長さL2は50mm、拡がり角度θは約11°に設定した。各開繊領域のガイドロールの間の長さは20mm、ガイドロールの直径は6mmで表面に梨地加工を施した。
【0179】
繊維束に付与される初期張力を100gに設定し、繊維束を搬送速度3m/分で搬送した。開繊部における吸引気流の流速(繊維束のない開放状態)は30m/秒で、加熱機構から吹き出される熱風温度は100℃とした。
【0180】
以上のように設定して、繊維束を搬送して開繊糸シートを連続して形成した。開繊糸シートは、繊維が均一に分散されて隙間が生じておらず、その目付け量は約26g/m2であった。
【0181】
開繊の連続性を確認するため、1m毎に10カ所、開繊幅と厚みの測定を行った。開繊幅は36〜40mmの範囲にあり、平均開繊幅は約37.8mmであった。平均開繊幅に対し、−4.8%〜5.8%のばらつきであった。厚さは0.024〜0.031mmの範囲にあり、平均厚さは0.028mmであった。平均厚さに対し、−0.004〜0.003mmのばらつきであった。
【0182】
[実施例5]
図9、図10に示す装置において開繊部を2つ配列して下流側の開繊部に縦振動付与機構を設置し、図14に示す加熱機構61を設けた装置構成で実施した。繊維束として、炭素繊維(東レ株式会社製、トレカT700SC―24K;繊維直径約7μm、集束本数24000本)を使用した。繊維束の元幅W0は約12mmであった。
【0183】
開繊領域A1の開繊幅W1は25mm、開繊領域A2の開繊幅W2は45mm、拡張領域B2の搬送方向の長さL2は50mm、拡がり角度θは約11°に設定した。各開繊領域のガイドロールの間の長さは20mm、ガイドロールの直径は6mmで表面に梨地加工を施した。撓み確保ロールの直径は10mmで表面に梨地加工を施した。撓み確保ロールはガイドロールに対して5mm下方に位置決め設定した。
【0184】
繊維束に付与される初期張力を200gに設定し、繊維束を搬送速度5m/分で搬送した。開繊部における吸引気流の流速(繊維束のない開放状態)は20m/秒で、加熱機構から吹き出される熱風温度は100℃とした。縦振動付与機構は、振動回数600rpmで押圧ロールのストローク量は10mmに設定した。なお、押圧ロールは直径10mm、表面に梨地加工を施した。
【0185】
以上のように設定して、繊維束を搬送して開繊糸シートを連続して形成した。開繊糸シートは、繊維が均一に分散されて隙間が生じておらず、その目付け量は約37g/m2であった。
【0186】
開繊の連続性を確認するため、1m毎に10カ所、開繊幅と厚みの測定を行った。開繊幅は40〜45mmの範囲にあり、平均開繊幅は約42.9mmであった。平均開繊幅に対し、−6.8%〜4.9%のばらつきであった。厚さは0.034〜0.046mmの範囲にあり、平均厚さは0.041mmであった。平均厚さに対し、−0.007〜0.005mmのばらつきであった。
【0187】
[実施例6]
図11、図12に示す装置において開繊部を3つ配列して最下流側の開繊部に縦振動付与機構を設置し、図14に示す加熱機構61を設けた装置構成で実施した。繊維束として、炭素繊維(東レ株式会社製、トレカT700SC―24K;繊維直径約7μm、集束本数24000本)を使用した。繊維束の元幅W0は約12mmであった。
【0188】
開繊領域A1の開繊幅W1は25mm、開繊領域A2の開繊幅W2は45mm、開繊領域A3の開繊幅W3は65mm、拡張領域B2の搬送方向の長さL2は50mm(拡がり角度θは約11°)、拡張領域B3の搬送方向の長さL3は50mm(拡がり角度θは約11°)に設定した。各開繊領域のガイドロールの間の長さは20mm、ガイドロールの直径は6mmで表面を梨地加工を施した。撓み確保ロールの直径は10mmで表面に梨地加工を施した。撓み確保ロールはガイドロールに対して5mm下方に位置決め設定した。
【0189】
繊維束に付与される初期張力を200gに設定し、繊維束を搬送速度7m/分で搬送した。開繊部における吸引気流の流速(繊維束のない開放状態)は20m/秒で、加熱機構から吹き出される熱風温度は100℃とした。縦振動付与機構は、振動回数800rpmで押圧ロールのストローク量は10mmに設定した。なお、押圧ロールは直径10mm、表面は梨地加工を施した。
【0190】
以上のように設定して、繊維束を搬送して開繊糸シートを連続して形成した。開繊糸シートは、繊維が均一に分散されて隙間が生じておらず、その目付け量は約25g/m2であった。
【0191】
開繊の連続性を確認するため、1m毎に10カ所、開繊幅と厚みの測定を行った。開繊幅は58〜65mmの範囲にあり、平均開繊幅は約62.3mmであった。平均開繊幅に対し、−6.9%〜4.3%のばらつきであった。厚さは0.023〜0.034mmの範囲にあり、平均厚さは0.027mmであった。平均厚さに対し、−0.004〜0.006mmのばらつきであった。
【0192】
[実施例7]
図11、図12に示す装置において開繊部を2つ配列して下流側の開繊部に縦振動付与機構を設置し、図14に示す加熱機構61を設けた装置構成で実施した。繊維束として、炭素繊維(グラフィル社製、タイプ50―60K;繊維直径約7μm、集束本数60000本)を使用した。繊維束の元幅W0は約14mmであった。
【0193】
開繊領域A1の開繊幅W1は30mm、開繊領域A2の開繊幅W2は50mm、拡張領域B2の搬送方向の長さL2は50mm、拡がり角度θは約11°に設定した。各開繊領域のガイドロールの間の長さは20mm、ガイドロールの直径は6mmで表面に梨地加工を施した。撓み確保ロールの直径は10mmで表面に梨地加工を施した。撓み確保ロールはガイドロールに対して5mm下方に位置決め設定した。
【0194】
繊維束に付与される初期張力を400gに設定し、繊維束を搬送速度5m/分で搬送した。開繊部における吸引気流の流速(繊維束のない開放状態)は20m/秒で、加熱機構から吹き出される熱風温度は100℃とした。縦振動付与機構は、振動回数600rpmで押圧ロールのストローク量は10mmに設定した。なお、押圧ロールは直径10mm、表面は梨地加工を施した。
【0195】
以上のように設定して、繊維束を搬送して開繊糸シートを連続して形成した。開繊糸シートは、繊維が均一に分散されて隙間が生じておらず、その目付け量は約83g/m2であった。
【0196】
開繊の連続性を確認するため、1m毎に10カ所、開繊幅と厚みの測定を行った。開繊幅は44〜50mmの範囲にあり、平均開繊幅は約47.8mmであった。平均開繊幅に対し、−7.9%〜4.6%のばらつきであった。厚さは0.081〜0.102mmの範囲にあり、平均厚さは0.089mmであった。平均厚さに対し、−0.009〜0.013mmのばらつきであった。
【0197】
[実施例8]
図20に示す装置において開繊部を2つ配列し、下流側の開繊部に縦振動付与機構を設置した装置構成で実施した。繊維束として、炭素繊維(三菱レイヨン株式会社製、パイロフィルTR50S―15K;繊維直径約7μm、集束本数15000本)を使用した。繊維束の元幅W0は約6mmであった。繊維束の本数は7本で、繊維束の間隔を48mmに設定した。
【0198】
開繊領域A1の開繊幅W1は24mm、開繊領域A2の開繊幅W2は48mm、拡張領域B2の搬送方向の長さL2は50mm、拡がり角度θは約13°に設定した。各開繊領域のガイドロールの間の長さは20mm、ガイドロールの直径は10mmで表面に梨地加工を施した。撓み確保ロールの直径は10mmで表面に梨地加工を施した。撓み確保ロールはガイドロールに対して5mm下方に位置決め設定した。
【0199】
繊維束に付与される初期張力を150gに設定し、繊維束を搬送速度10m/分で搬送した。開繊部における吸引気流の流速(繊維束のない開放状態)は20m/秒で、加熱機構から吹き出される熱風温度は100℃とした。縦振動付与機構は、振動回数950rpmで押圧ロールのストローク量は10mmに設定した。幅方向振動付与機構は、振動回数が450rpmで、ボウバーのストローク量は5mmに設定した。なお、押圧ロールの直径は10mm、ボウバーの直径は25mmで、それぞれ表面は梨地加工を施している。
【0200】
以上のように設定して、繊維束を搬送して、シート幅約340mmの開繊糸シートを連続して形成した。開繊糸シートは、繊維が均一に分散されて隙間が生じておらず、その目付け量は約21g/m2であった。
【0201】
開繊の連続性を確認するため、7本中1本の開繊糸シートを取り出し、1m毎に10カ所、開繊幅と厚みの測定を行った。開繊幅は46〜50mmの範囲にあり、平均開繊幅は約48.3mmであった。平均開繊幅に対し、―4.8%〜3.5%のばらつきであった。厚さは0.018〜0.027mmの範囲にあり、平均厚さは0.023mmであった。平均厚さに対し、−0.005〜0.004mmのばらつきであった。
【0202】
[実施例9]
図21に示す装置において開繊部を2つ配列し、下流側の開繊部に縦振動付与機構を設置した装置構成にて実施した。繊維束として、炭素繊維(三菱レイヨン株式会社製、パイロフィルTR50S―15K;繊維直径約7μm、集束本数15000本)を使用した。繊維束の元幅W0は約6mmであった。繊維束の本数は7本で、繊維束の間隔を48mmに設定した。また、樹脂付着離型シートには目付け120g/m2、幅400mmの離型紙(リンテック株式会社製)上に塗布量20g/m2のエポキシ樹脂が幅350mmで塗布されたシートを用いた。離型紙シートには目付け120g/m2の離型紙(リンテック株式会社製)を用いた。
【0203】
開繊領域、拡張領域、各ガイドロール及び各撓み確保ロールの設定は実施例8と同様とした。なお、繊維束の搬送速度は5m/分として、縦振動付与機構の振動回数を550rpm、幅方向振動付与機構の振動回数を300rpmに設定した。繊維束に付与される初期張力、開繊部における吸引気流の流速、加熱機構から吹き出される熱風温度、縦振動付与機構の押圧ロール直径、表面処理及びストローク量、幅方向振動付与機構のボウバー直径、表面処理及びストローク量は実施例8と同様とした。
【0204】
実施例8と同様の条件にて7本の繊維束の開繊を行い、幅約340mm、繊維分散性に優れた開繊糸シートを形成し、連続して開繊糸シートを樹脂付着離型シートと離型シートに挟み込み搬送した。
【0205】
加熱加圧ロール及び加熱平板の温度は120℃に、冷却ロールおよび冷却平板は水冷に、そして加熱加圧ロールの線圧は15kgf/cmに、冷却ロールの線圧は5kgf/cmに設定した。冷却ロールから排出後は上側の離型シートのみを巻き取り、樹脂付着離型シートの離型シートとともに製品である繊維補強シートを巻き取った。
【0206】
以上のように設定して実施したところ、エポキシ樹脂が含浸したプリプレグシートと呼ばれる繊維補強シートを連続して形成した。繊維補強シートはシート幅340mm、繊維が均一に分散され、厚みがほぼ均一となった状態で形成されていた。
【0207】
[実施例10]
図22に示す装置において開繊部を2つ配列し、下流側の開繊部に縦振動付与機構を、樹脂押出機構の変わりに熱可塑性樹脂フィルムを連続して供給する機構を、一対の加熱加圧ロールを一連、一対の冷却ロールを一連設置した装置構成にて実施した。繊維束として、炭素繊維(三菱レイヨン株式会社製、パイロフィルTR50S―15K;繊維直径約7μm、集束本数15000本)を使用した。繊維束の元幅W0は約6mmであった。繊維束の本数は7本で、繊維束の間隔を48mmに設定した。また、熱可塑性樹脂フィルムには厚さ15μm、幅350mmのポリエーテルイミド樹脂フィルム(三菱樹脂株式会社製)を使用した。そして、幅400mmの熱硬化性ポリイミド樹脂フィルム(製品名;ユーピレックスS、厚み;25μm、宇部興産株式会社製)を離型シートとして供給した。
【0208】
開繊領域、拡張領域、各ガイドロール及び各撓み確保ロールの設定は実施例9と同様とした。なお、繊維束の搬送速度は10m/分として、縦振動付与機構の振動回数を950rpm、幅方向振動付与機構の振動回数を450rpmに設定した。繊維束に付与される初期張力、開繊部における吸引気流の流速、加熱機構から吹き出される熱風温度、縦振動付与機構の押圧ロール直径、表面処理及びストローク量、幅方向振動付与機構のボウバー直径、表面処理及びストローク量は実施例9と同様とした。
【0209】
実施例9と同様の条件にて7本の繊維束の開繊を行い、幅約340mm、繊維分散性に優れた開繊糸シートを形成し、連続して開繊糸シートを熱可塑性樹脂フィルムと重ねて離型シートに挟み込み加熱加圧ロールに供給した。
【0210】
加熱加圧ロールの温度は340度に、冷却ロールは水冷に、そして加熱加圧ロールの線圧は5kgf/cmに設定した。冷却ロールから排出後は両側の離型シートを巻き取り、製品である繊維補強シートを巻き取った。
【0211】
以上のように設定して実施したところ、開繊糸シートとポリエーテルイミド樹脂フィルムが連続して付着した繊維補強シートを形成した。繊維補強シートはシート幅340mm、繊維が均一に分散された状態にて形成されていた。
【0212】
[比較例]
実施例2と同様の装置構成、および同様の炭素繊維束を用いた。
【0213】
開繊領域A1の開繊幅W1および開繊領域A2の開繊幅W2は実施例2と同様とし、開繊領域A1の開繊幅W1は25mm、開繊領域A2の開繊幅W2は48mmとした。拡張領域B2の搬送方向の長さL2は15mm、拡がり角度θは約37°に設定した。その他、各開繊領域のガイドロール間長さ、ガイドロール直径と表面処理、撓み確保ロール直径と表面処理、そして撓み確保ロールの位置については実施例2と同様とした。
【0214】
繊維束に付与される初期張力、繊維束の搬送速度、開繊部における吸引気流の流速、加熱機構からの熱風温度、縦振動付与機構の振動回数および押圧ロールの直径、表面処理およびストローク量は実施例2と同様とした。
【0215】
以上のように設定して、繊維束を搬送して開繊糸シートを形成した。開繊糸シートは、繊維の分散性が悪く繊維の密度に粗密を生じている部分が発生しており、繊維の間に隙間ができている部分も各所で発生した。
【符号の説明】
【0216】
A 開繊領域
B 拡張領域
S 領域群
Tm 繊維束
Ts 開繊糸シート
Rs 離型シート
JRs 樹脂付着離型シート
Js 樹脂シート
Ps 繊維補強シート
11 給糸体
12 給糸モータ
21 案内ロール
22 送りロール
23 支持ロール
24 送給モータ
25 支持ロール
26 張力付与ロール
27 上限位置検知センサ
28 下限位置検知センサ
29 ニップロール
31 ガイドロール
32 風洞管
33 流量調整バルブ
34 吸気ポンプ
35 ガイド部材
36 撓み確保ロール
41 引取りロール
42 引取りモータ
51 支持ロール
52 昇降ロッド
53 押圧ロール
54 クランクアーム
55 クランクモータ
61 加熱機構
71 接触ロール
72 支持ロール
81 ボウバー
82 支持ロール
83 クランクモータ
84 クランク機構
201 支持ロール
202 テンションロール
203 バネ部材
204 案内ロール
205 整列ロール
901 離型シート供給機構
902 樹脂付着離型シート供給機構
903 離型シート巻き取り機構
904 製品巻き取り機構
905 加熱加圧ロール
906 冷却ロール
907 加熱平板
908 冷却平板
909 反転ロール
910 樹脂押出機構




























【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の繊維からなる繊維束を繊維長方向に搬送し、前記繊維が幅方向に移動可能に設定された可動領域において前記繊維束中に流体を通過させることで繊維を撓ませながら幅方向に移動させて開繊する繊維束の開繊方法であって、
前記可動領域に、前記繊維束中に流体を通過させることで繊維を撓ませながら幅方向に移動させて開繊幅Wiに開繊する開繊領域Ai(i=1,・・・,n)及び前記開繊領域Aiに対応して搬送方向上流側に設定されるとともに当該開繊領域Aiの前記繊維の幅方向の移動に伴って前記繊維束の幅が末広がりに拡張する拡張領域Bi(i=1,・・・,n)からなる対の領域群Si(i=1,・・・,n)を前記繊維束の搬送方向にn(n≧2)個配列して、前記領域群Siを順次通過するように前記繊維束を搬送させて開繊することを特徴とする繊維束の開繊方法。
【請求項2】
最初の前記領域群S1では、前記繊維束の元幅W0に対して、前記開繊領域A1の前記繊維束の開繊幅W1
1<(W1/W0)≦5
となるように設定し、
残りの前記領域群Sj(j=2,・・・,n)では、前記開繊領域Aj-1の開繊幅Wj-1、前記開繊領域Ajの開繊幅Wj及び前記拡張領域Bjにおける前記繊維束の搬送方向の長さLj
0<(Wj―Wj-1)/2Lj≦tan30°
を満たすように設定することを特徴とする請求項1に記載の繊維束の開繊方法。
【請求項3】
前記開繊領域A1の前記繊維束の開繊幅W1
2≦(W1/W0)≦4
となるように設定することを特徴とする請求項2に記載の繊維束の開繊方法。
【請求項4】
前記開繊領域のうち少なくとも一部の領域では、複数の区画において前記繊維束中に流体を通過させることで前記繊維を撓ませながら幅方向に移動させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の繊維束の開繊方法。
【請求項5】
前記拡張領域のうち少なくとも一部の領域では、前記繊維束に対して幅方向に配置されて接触する接触ロールを少なくとも1本以上配設して、前記繊維束を前記接触ロールに接触させながら搬送することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の繊維束の開繊方法。
【請求項6】
前記接触ロールが前記繊維束の幅方向に沿って往復移動することを特徴とする請求項5に記載の繊維束の開繊方法。
【請求項7】
前記拡張領域及び/又は前記開繊領域のうち少なくとも一部の領域では、前記繊維束を加熱することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の繊維束の開繊方法。
【請求項8】
前記開繊領域のうち少なくとも一部の領域では、前記繊維束の撓み量を時間的に変化させることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の繊維束の開繊方法。
【請求項9】
前記開繊領域のうち少なくとも一部の領域では、撓み確保ロールにより前記繊維束の所定の撓み量を確保しながら開繊することを特徴とする請求項8に記載の繊維束の開繊方法。
【請求項10】
前記撓み確保ロールのうち少なくとも一本のロールにより前記繊維束を搬送方向と直交する方向に振動させることを特徴とする請求項9に記載の繊維束の開繊方法。
【請求項11】
前記可動領域の上流側において、前記繊維束の引き戻しを阻止しながら前記繊維束を搬送させることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の繊維束の開繊方法。
【請求項12】
前記繊維束を開繊した開繊糸シートに対して幅方向に振動を付与することを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の繊維束の開繊方法。
【請求項13】
複数本の前記繊維束を搬送させながら同時に開繊することを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の繊維束の開繊方法。
【請求項14】
複数本の前記繊維束を開繊して並列した複数の開繊糸シートに対して幅方向に振動を付与して全体が一様なシート状態に形成することを特徴とする請求項13記載の繊維束の開繊方法。
【請求項15】
繊維集束本数12000本から24000本、繊度400g/1000mから1100g/1000mの範囲にある炭素繊維束を開繊させて、前記炭素繊維束を幅25mm以上、厚み0.04mm以下にしたことを特徴とする開繊糸シート。
【請求項16】
繊維集束本数24000本以上、繊度1600g/1000m以上の炭素繊維束を開繊させて、前記炭素繊維束を幅40mm以上、厚み0.2mm以下にしたことを特徴とする開繊糸シート。
【請求項17】
請求項1から14のいずれかに記載の開繊方法により得られた開繊糸シートの片面又は両面に樹脂層を形成して繊維補強シートを製造することを特徴とする繊維補強シートの製造方法。
【請求項18】
前記樹脂層は、樹脂シートを用いて形成することを特徴とする請求項17記載の繊維補強シートの製造方法。
【請求項19】
請求項1から14のいずれかに記載の開繊方法により得られた開繊糸シートを樹脂シートの両面に付着させて繊維補強シートを製造することを特徴とする繊維補強シートの製造方法。
【請求項20】
請求項1から14のいずれかに記載の開繊方法により得られた開繊糸シートに樹脂材料を含浸させて繊維補強シートを製造することを特徴とする繊維補強シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−270420(P2010−270420A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124860(P2009−124860)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(592029256)福井県 (122)
【Fターム(参考)】