説明

繊維板の製造方法

【課題】 無機質繊維又は木質繊維と結合剤とを主成分とした成形原料に、硬化剤として水と急速に反応硬化して高い一次強度を発現する自己乳化型イソシアネート化合物と水とを混合することによってスラリーを調製する際に、水中に対する自己乳化型イソシアネート化合物の分散を均一にして安定した品質の繊維板を得ることができるようにする。
【解決手段】 自己乳化型イソシアネート化合物を混合させる水として5〜20℃に温度管理された冷水を使用することによって、熱に対する反応性の高い自己乳化型イソシアネート化合物を反応させることなくこの冷水中に均一に分散させるようにし、この分散液を成形原料と工業用水とに混合してスラリーを調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築物の下地材及び仕上材等の建築用材料として使用に適した繊維板の製造方法、特に、硬化剤として、水と急速に反応硬化して短時間で高い一次強度を発現する自己乳化型イソシアネート化合物を使用した繊維板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、上記のような自己乳化型イソシアネート化合物を硬化剤として使用し、例えば、無機質繊維よりなる壁下地等の建築用下地板を製造する方法としては、特許文献1に記載されているように、ロックウールやスラグウール等の無機質繊維と炭酸カルシウム、珪砂等の無機質粉状体を主体とし、これに熱水中で急速に反応硬化して接着力を発現するイソシアネート基を含有する接着剤を添加してスラリーを調製し、このスラリーから2枚の湿潤マットを得て、これらの湿潤マットを表裏層とする一方、無機質発泡体を主体とし、これに繊維状物と接着剤を添加してなる混合物を中間層とし上記表裏層間に介在させ、熱圧工程および乾燥工程を経て積層一体化する無機質板状体の製造方法が知られている。
【0003】
また、特許文献2には、無機質繊維と無機粉状体、及び結合剤としてノボラック型フェノールを用いると共に、硬化剤として水分散時の平均粒径が0.5〜50μになるように予め乳化させたイソシアネート基含有接着剤を必須成分とするスラリーを湿式抄造して湿潤マットを作製し、これを熱圧、乾燥することによって無機質板を製造する方法が記載されてあり、さらに、上記湿潤マットを表裏層として、これらの表裏層間に上記特許文献1と同様に、無機質発泡体を主体とし、これに繊維状物と接着剤を添加してなる混合物を中間層として介在させ、熱圧工程および乾燥工程を経て積層一体化する無機質板の製造方法が記載されている。
【特許文献1】特開平10−217216号公報
【特許文献2】特開2003−221800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記自己乳化型イソシアネート化合物は、熱を加えることによって急速に水分と反応して短時間で強度を発現するために繊維間の結合剤としても使用されるが、スラリーを調製する際には、通常、この自己乳化型イソシアネート化合物は水中に分散されている。湿式抄造による繊維板の一般的な生産設備においては、スラリーを調製するための水として、温度管理などはなされていない工業用水を用いているのが一般的であり、工業用水は、特に夏場になるとその温度が25℃以上、場合によっては30℃を越える高温度となっていて、このような工業用水中に自己乳化型イソシアネート化合物を添加すると、イソシアネート化合物は上述したように熱に対する反応性が高いため、工業用水中に均一に分散させることが困難である。
【0005】
そのため、夏場において製造される繊維板と、水温が低い冬場において製造される繊維板とでは、同じ自己乳化型イソシアネート化合物を使用しても、強度等の物性が異なる繊維板が製造される場合が生じて安定した製品を提供することができなくなるといった問題点があり、さらに、自己乳化型イソシアネート化合物の分散の不均一に起因してスラリー中における繊維の結合等にバラツキが生じて抄造ベルトや脱水ロール等への抄造物の付着が多くなり、洗浄に手間を要するばかりでなく、生産性を低下させるといった問題点があった。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、スラリーを調製する際に、水に対する自己乳化型イソシアネート化合物の分散を常に均一にして一年を通じて安定した品質の繊維板を能率よく生産することができる繊維板の製造方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の繊維板の製造方法は、請求項1に記載したように、結合剤を添加している繊維を成形原料とし、この成形原料に自己乳化型イソシアネート化合物と水とを混合してスラリーを調製し、このスラリーを湿式抄造して得た湿潤マットを脱水、乾燥することによって繊維板を製造する方法において、上記自己乳化型イソシアネート化合物に混合する上記水として温度管理された冷水を使用し、この冷水中に上記自己乳化型イソシアネート化合物を分散させて成形原料と共にスラリーを調製することを特徴とする。
【0008】
このような繊維板の製造方法において、請求項2に係る発明は、成形原料と自己乳化型イソシアネート化合物と温度管理された冷水とを共通の攪拌機内に供給してこの攪拌機により攪拌、混合してスラリーを調製することを特徴とする。
【0009】
さらに、請求項3に係る発明は、自己乳化型イソシアネート化合物と温度管理された冷水を共通の攪拌機で混合して自己乳化型イソシアネート化合物の分散液を作製し、この分散液と成形原料と工業用水とを混合してスラリーを調製することを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る発明は、自己乳化型イソシアネート化合物と温度管理された冷水とを共通の攪拌機で混合して自己乳化型イソシアネート化合物の分散液を作製する一方、成形原料と工業用水との混合物を作製し、この混合物と上記分散液とを混合してスラリーを調製することを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、上記自己乳化型イソシアネート化合物を分散、混合させる冷水を、通年、5〜20℃に温度管理していることを特徴とし、また、請求項6に係る発明は、上記成形原料は、無機質繊維と結合剤又は木質繊維と結合剤を必須成分とすることを特徴とする。
【0012】
請求項7に係る発明は、無機質繊維と結合剤の混合物、又は木質繊維と結合剤の混合物を成形原料とし、この成形原料に自己乳化型イソシアネート化合物と温度管理された冷水とを混合してスラリーを調製し、このスラリーを湿式抄造して得た2枚の湿潤マットを表裏層としてこれら表裏層間に無機発泡体および結合剤を必須成分とする均一な厚さの中層用混合物を介在させた後、熱圧工程および乾燥工程を経て積層一体化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、結合剤を添加している繊維を成形原料とし、この成形原料に自己乳化型イソシアネート化合物と水とを混合してスラリーを調製し、このスラリーを湿式抄造して得た湿潤マットを脱水、乾燥することによって繊維板を製造するものであるから、自己乳化型イソシアネート化合物は、熱を加えることによって急速に水分と反応して短時間で強度を発現するため、熱圧工程を短時間で済ませることができて所定の強度を有する繊維板を効率よく製造することができるのは勿論、上記自己乳化型イソシアネート化合物に混合する水として5〜20℃程度に温度管理された冷水を使用し、この冷水中に上記自己乳化型イソシアネート化合物を分散させて成形原料と共にスラリーを調製するので、自己乳化型イソシアネート化合物が熱に対する反応性が高いにもかかわらず、冷水中に均一に分散させることができ、従って、夏場であっても冬場と同様に全体に亘って均一な強度を有する安定した品質の繊維板を製造することができる。
【0014】
また、上記のように、自己乳化型イソシアネート化合物を冷水中に濃度が10〜30%程度以下、好ましくは5〜10%程度に均一に分散させている分散液を、スラリーの調製時に、無機質繊維等の成形原料と共に30℃〜40℃程度の夏場の温度状態を想定した工業用水に混合させても、一度、冷水中に均一に分散された乳化液は凝集し難く、安定した繊維板の製造が可能となるものであり、その上、抄造時においては、抄造ベルトや脱水ロールへの抄造物の付着が少なくなり、歩留りよく且つ能率よく繊維板を製造することができる。
【0015】
湿式抄造を行うに際してのスラリーの調製は、請求項2に記載したように、成形原料と自己乳化型イソシアネート化合物と温度管理された冷水とを共通の攪拌機内に供給してこの攪拌機により攪拌、混合することにより行ってもよく、また、請求項3に記載したように、自己乳化型イソシアネート化合物と温度管理された冷水を共通の攪拌機で混合して自己乳化型イソシアネート化合物の分散液を作製し、この分散液と成形原料と工業用水とを混合することにより調製してもよく、或いは、請求項4に記載したように、自己乳化型イソシアネート化合物と温度管理された冷水とを共通の攪拌機で混合して自己乳化型イソシアネート化合物の分散液を作製する一方、成形原料と工業用水との混合物を作製し、この混合物と上記分散液とを混合してスラリーを調製してもよい。
【0016】
さらに、自己乳化型イソシアネート化合物を分散、混合させる冷水としては、請求項5に記載したように、一年を通じて5〜20℃に温度管理しておくことが望ましい。また、成形原料としては、請求項6に記載したように、無機質繊維と結合剤、又は、木質繊維と結合剤を必須成分としているので、無機質繊維と結合剤とを必須成分とした成形原料に、上述したように冷水中に自己乳化型イソシアネート化合物を分散させてなる分散液を工業用水と共に、或いは工業用水を用いることなく混合してなるスラリーを湿式抄造して湿潤マットを得、この湿潤マットを熱圧、乾燥することにより、野地板や外壁下地剤等の建築材料として採用可能な強度と防火性に優れた無機質板状物を安定的に能率よく製造することができる。
【0017】
一方、木質繊維と結合剤とを必須成分とした成形原料に、上述したように冷水中に自己乳化型イソシアネート化合物を分散させてなる分散液を工業用水と共に、或いは工業用水を用いることなく混合してなるスラリーを湿式抄造して湿潤マットを得る際に、自己乳化型イソシアネート化合物が水及び木質繊維の水酸基と反応してウレア基を生成し、このウレア基によって一次強度が発現されて加熱乾燥工程を短時間で済ませることができると共に、加熱乾燥工程において結合剤等が硬化する時間までの木質繊維の反発力によるスプリングバッグを抑えることができ、密度を低下させることなく所定の強度を有する木質繊維板を製造することができる。
【0018】
さらに、上記ウレア基を生成することによる一次強度の発現に引き続いて、該湿潤マットを加熱乾燥して自己乳化型イソシアネート化合物やその他の結合剤を最終硬化させて二次強度を発生せる工程を併用することで、断熱性及び吸放湿性に優れ、モルタル壁やサイディングボードの下地に用いることができる木質繊維板よりなる建築用下地板を効率よく生産することができる。
【0019】
また、請求項7に係る発明によれば、無機質繊維と結合剤の混合物、又は木質繊維と結合剤の混合物を成形原料とし、この成形原料に自己乳化型イソシアネート化合物と温度管理された冷水とを混合してスラリーを調製しているので、自己乳化型イソシアネート化合物が全体に亘って均一に分散した湿潤マットを抄造することができ、さらに、この湿潤マットを表裏層としてこれら表裏層間に無機発泡体および結合剤を必須成分とする均一な厚さの中層用混合物を介在させた後、熱圧工程および乾燥工程を経て積層一体化するので、熱圧工程時において、表裏層に添加されている上記自己乳化型イソシアネート化合物は熱水と速やかに反応してウレアを生成し、湿式抄造された表裏層を強固に結合させて、短時間の熱圧反応で表裏層を高密度層に形成することができると共に、中層部を形成する無機発泡体によって圧縮強度を維持しつつ、軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の繊維板の製造方法を具体的に説明すると、結合剤を添加している無機質繊維又は木質繊維を成形原料として、この成形原料に自己乳化型イソシアネート化合物と温度管理された冷水、及び、必要に応じて工業用水を混合することによりスラリーを調製する。この際、温度管理された冷水としては、工業用水を冷却することによって得られた水を使用するが、その冷却方法は限定されることはなく、例えば、冷却塔による冷却方法や電気を利用した冷却機、或いは各種冷媒や蓄冷媒等との組み合わせによる冷却方法によって冷却すればよい。また、冷水の温度としては、夏場に30℃を越えないように5〜30℃、好ましくは、5〜20℃に調整しておく。このように温度管理された冷水に自己乳化型イソシアネート化合物を添加すると、自己乳化型イソシアネート化合物は熱に対する反応性が高いにもかかわらず、冷水中に均一に分散させることができる。
【0021】
自己乳化型イソシアネート化合物としては、モノメリックMDI(4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート)、ポリメリックMDI、TDI(トリレンジイソシアネート)、XDI(キシリレンジイソシアネート)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、H12MDI(4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート))、IPDI(イソホロンジイソシアネート)およびそれらの各種ポリオール(低分子量ポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートジオール類、アクリルポリオール類、シリコンポリオール類、2−ヒドロキシエチルアクリレート類)や、二塩基酸(アゼライン酸、アジピン酸、セバチン酸、イソフタル酸、テレフタル酸等)、各種エボキシ樹脂、ひまし油、液状ポリブタジエン、ネオプレンなどの活性水素化合物などとの反応物、または、各種変性を加えることや各種界面活性剤との混合により水への分散性を向上させたものや、ポットライフを長くするためにイソシアネート基をブロックしたものを含む各種変性品があげられ、これらを単独あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0022】
成形原料として無機質繊維と結合剤とを必須成分とする場合、無機質繊維としては、例えば、ロックウール、スラグウール、グラスウール、ミネラルウール、ニッケルウール、ガラス繊維等を挙げることができ、これらを単独又は2種以上、組み合わせて使用することができる。さらに、この無機質繊維に加えて無機粉状体を添加してもよい。無機粉状体としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、珪酸、スラグ等を挙げることができ、これらを単独又は2種以上、組み合わせて使用することができる。
【0023】
この場合、繊維板全体に対する無機質繊維の含有量を75〜96重量%、結合剤の含有量を3〜20重量%、自己乳化型イソシアネート化合物の含有量を0.5 〜5.0 重量%とするのが好ましい。結合剤や自己乳化型イソシアネート化合物をこれ以上の高い割合で混入しても強度はさほど変わらず、コストが高くなるだけである。また、別の実施例として、比重及び表面硬度の高い無機質繊維板を作製する場合には、無機質繊維の含有量を20〜60重量%、無機粉状体を40〜70重量%、結合剤の含有量を3〜20重量%、自己乳化型イソシアネート化合物の含有量を0.5 〜5.0 重量%とするのが好ましい。無機質繊維の含有量が20重量%未満の場合は、所望の曲げ強度が得られないためである。また、無機粉状体の割合が40重量%未満の場合は表面硬度を上げる効果が現れにくく、70重量%を越えると、相対的に無機質繊維の含有量が少なくなり、所望の曲げ強度が得られないためである。
【0024】
無機質繊維と共に成形原料の一成分を構成している上記結合剤としては、例えば、ポバール系結合剤、澱粉系結合剤、スターチ系結合剤、メラミン系結合剤、フェノール系結合剤、エポキシ系結合剤等が使用できるが、好適には、ノボラック型フェノールおよびポバール等が無機質繊維に混合して用いられる。この結合剤は、3〜20重量%の割合で添加される。
【0025】
さらに、得られる繊維板の強度を高めるために、有機シリコーンモノマーを添加してもよい。有機シリコーンモノマーは一分子中に、加水分解されて無機質繊維及び無機粉状体の無機材料の表面に結合する加水分解基と、有機結合剤等の有機材料に結合する有機官能基とを持つ。このため、一般的に結合力の弱い無機材料と無機発泡体と有機材料とを介在する介在物として強力な接着力を発現する。
【0026】
このような有機シリコーンモノマーとしては、例えば、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビルルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γーメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ユレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。この有機シリコーンモノマーの添加量は、上記結合剤固形成分の0.01〜0.5 重量%、より好ましくは0.05〜0.5 重量%である。
【0027】
一方、成形原料として木質繊維と結合剤とを必須成分とする場合、木質繊維としては、その種類を限定するものではなく、針葉樹、広葉樹を問わないし、建築廃材・パレット廃材等、由来の繊維あるいはパルプ、麻、亜麻等の植物繊維も利用できるが、繊維長が長く吸水膨脹が小さくて強度が大きいものが好ましい。このような木質繊維を使用することによって、繊維長が長いために繊維同士の絡み合いの交点、即ち、交絡点が多くなって下地板の曲げ強度が向上するとともに該交絡点に接着剤が定着することで木質繊維板の強度が増大する。また、木質繊維の場合には、無機質繊維の場合に必要とする高価な上記有機シリコーンモノマーを使用しなくても、自己乳化型イソシアネート化合物と反応し易い水酸基を有しているので、より強固な結合力を得ることができる。
【0028】
なお、この木質繊維と共に成形原料の一成分を構成する上記結合剤としては、上記無機質繊維と共に使用される結合剤と同一の結合剤、即ち、ポバール系結合剤、澱粉系結合剤、スターチ系結合剤、メラミン系結合剤、フェノール系結合剤、エポキシ系結合剤等が使用でき、好適には、ノボラック型フェノールおよびポバール等が混合して用いられる。この結合剤は3〜20重量%の割合で添加される。
【0029】
上記結合剤を添加している無機質繊維又は木質繊維を成形原料として、この成形原料に自己乳化型イソシアネート化合物と温度管理された冷水、及び、必要に応じて工業用水を混合することによりスラリーを調製する設備としては特に限定されないが、好ましい設備を図面に基づいて説明する。
【0030】
図1に示す設備は、回転羽根や回転歯等の攪拌装置2を備えている乳化槽1と、自己乳化型イソシアネート化合物を供給することができる自己乳化型イソシアネート化合物供給装置3と、5〜20℃に温度管理された冷水を供給することができる冷水供給装置4と、成形原料を供給することができる成形原料供給装置5とを備えてなり、乳化槽1に上記各装置3〜5から自己乳化型イソシアネート化合物と冷水と成形原料とを所定の混合割合となるように投入又は供給し、均一に攪拌混合してスラリーを調製する。この時、5〜20℃に温度管理された冷水中に自己乳化型イソシアネート化合物を混合させるので、温度により反応させることなく冷水中に均一に分散させることができる。なお、必要に応じてサイズ剤、凝集剤、消泡剤等の抄造用添加剤を適宜添加しても良い。
【0031】
このスラリーを長網式または丸網式等の湿式抄造機6に導入して湿潤マットを得、この湿潤マットを乾燥機7に導入して乾燥させ、さらに熱圧成形装置8に供給して熱圧プレスすることにより、所望の繊維板を得た。なお、抄造機6によってスラリーを脱水することにより湿潤マットを得る際に、成形原料中に自己乳化型イソシアネート化合物が均一に分散しているので、成形原料が抄造ベルトや脱水ロールに付着する量が極めて少なくなり、従って、これらの抄造ベルト及び脱水ロールの軽微な洗浄によって長時間に亘る連続的な繊維板の生産が可能であった。
【0032】
図2は別なスラリー調製設備を示すもので、回転羽根や回転歯等の攪拌装置2を備えている乳化槽1に、自己乳化型イソシアネート化合物を供給することができる自己乳化型イソシアネート化合物供給装置3と、5〜20℃に温度管理された冷水を供給することができる冷水供給装置4とから、自己乳化型イソシアネート化合物と冷水を所定の混合割合となるように投入又は供給して乳化槽1内で自己乳化型イソシアネート化合物を冷水中に均一に混合させて分散液を調製する一方、螺旋羽根又は回転羽根や回転歯等の攪拌手段を備えて供給される材料をこれらの攪拌手段により均一に攪拌、混合させながら所定の搬送速度でもって出口側に搬送するように構成したインラインミキサー9に成形原料供給装置5と工業用水供給装置10とから成形原料と工業用水とを所定の割合でもって投入又は供給させるように構成し、さらに、上記乳化槽1によって調製された分散液をこのインラインミキサー9に投入又は供給して上記成形原料と工業用水と共に攪拌、混合することによりスラリーを調製するように構成している。
【0033】
上記乳化槽1内においては、冷水中に自己乳化型イソシアネート化合物を濃度が10〜30%程度以下、好ましくは5〜10%程度となるように均一に分散させ、この分散液をインラインミキサー9に投入又は供給して上記成形原料と工業用水と共に攪拌、混合しながら該インラインミキサー9の出口側に向かって連続的に搬送しながらスラリーを調製する。なお、工業用水としては温度管理はされておらず、季節によってその温度変動が大きくて、夏場において30℃を越えるような水であっても使用できる。
【0034】
こうして調製されたスラリーは、インラインミキサー9の出口から長網式または丸網式等の湿式抄造機6に導入して湿潤マットを得、この湿潤マットを乾燥機7に導入して乾燥させ、さらに熱圧成形装置8に供給して熱圧プレスすることにより、所望の繊維板を得た。なお、この設備においても湿式抄造機6によってスラリーを脱水することにより湿潤マットを得る際に、成形原料中に自己乳化型イソシアネート化合物が均一に分散しているので、成形原料が抄造ベルトや脱水ロールに付着する量が極めて少なくなり、従って、これらの抄造ベルト及び脱水ロールの軽微な洗浄によって長時間に亘る連続的な繊維板の生産が可能であった。
【0035】
図3はさらに別なスラリー調製設備を示すもので、小型のインラインミキサー9Aに自己乳化型イソシアネート化合物供給装置3と5〜20℃に温度管理された冷水の供給装置4とから自己乳化型イソシアネート化合物と冷水とをそれぞれ所定の割合でもって投入、又は供給してインラインミキサー9A内で冷水中に自己乳化型イソシアネート化合物を濃度が10〜30重量%程度以下、好ましくは5〜10重量%となるように均一に攪拌分散させて分散液を調製するように構成していると共に、成形原料供給装置5からの成形原料と工業用水供給装置10からの工業用水とを大型のインラインミキサー9Bに投入、又は供給してこのインラインミキサー9B内で攪拌、混合させるようにし、さらに、この大型のインラインミキサー9Bからの工業用水と成形原料との混合物と上記小型のインラインミキサー9Aからの分散液とを別な大型のインラインミキサー9Cに投入、又は供給して攪拌、混合することよりスラリーを得るように構成している。
【0036】
こうして調製されたスラリーは、大型のインラインミキサー9Cから長網式または丸網式等の湿式抄造機6に導入して湿潤マットを得、この湿潤マットを乾燥機7に導入して乾燥させ、さらに熱圧成形装置8に供給して熱圧プレスすることにより、所望の繊維板を得た。なお、この設備においても湿式抄造機6によってスラリーを脱水することにより湿潤マットを得る際に、成形原料中に自己乳化型イソシアネート化合物が均一に分散しているので、成形原料が抄造ベルトや脱水ロールに付着する量が極めて少なくなり、従って、これらの抄造ベルト及び脱水ロールの軽微な洗浄によって長時間に亘る連続的な繊維板の生産が可能であった。次ぎに、本発明の具体的な実施例と比較例とを示す。
【0037】
〔実施例1〕
成形原料として、ロックウール500 gと、炭酸カルシウム400 gと、粉体フェノール100 gと、10℃に調整した水10Kgとを均一に混合することによって繊維混合液を得る一方、自己乳化型のポリメリックMDIを10.2gと5℃に調整した冷水を100ml とを混合し、ホモジナイザーで10秒間攪拌し、分散液を得た。この分散液を顕微鏡で観察したところ、エマルジョン粒子は極めて細かく、且つ均一化されていた。次いで、上記繊維混合液と分散液とを攪拌、混合してスラリーを得た。このスラリーを脱水し、さらに乾燥させて含水率1.5 %の無機質繊維マットを得た。この無機質繊維マットを180 ℃・1.0MPa・180 秒の条件で熱圧プレスして無機質繊維板を得た。この無機質繊維板の強度試験を行ったところ、曲げ強度が18.8N /mm2 であった。また、無機質繊維板の試験体数を5体とし、これらの試験体の強度の標準偏差を算出したところ0.27であり、得られた無機質繊維板の強度は安定していた。
【0038】
〔実施例2〕
自己乳化型のポリメティックMDIを10.2gと20℃に調整した冷水100ml とを混合して分散液を得た点を除き、他は上記実施例1と同様の操作で無機質繊維板を得た。この分散液を顕微鏡で観察したところ、エマルジョン粒子は細かく、且つ均一化されていた。この無機質繊維板の強度試験を行ったところ、曲げ強度が19.2N /mm2 であった。また、無機質繊維板の試験体数は5体とし、これらの試験体の強度の標準偏差を算出したところ0.29であり、得られた無機質繊維板の強度は安定していた。
【0039】
〔実施例3〕
成形原料として、木質繊維500 g、粉体フェノール100 g混合したものを使用した点を除き、上記実施例1、実施例2と同様な操作で木質繊維板を得た。なお、自己乳化型イソシアネート化合物と冷水とを混合してなる分散液を顕微鏡で観察したところ、上記実施例や実施例2と同様にエマルジョン粒子は細かく、且つ均一化されていた。この木質繊維板の強度試験を行ったところ、曲げ強度が10.3N /mm2 であった。試験体数は5体行い、これらの試験体の強度の標準偏差を測定したところ0.18であって得られた木質繊維板の強度は安定していた。
【0040】
〔比較例1〕
自己乳化型のポリメリックMDI10.2gを40℃の水100ml に混合して分散液を得た点を除き、他は上記実施例1と同様の操作で無機質繊維板を得た。この分散液を顕微鏡で観察したところ、エマルジョン粒子は細かいものと大きなものとが混在していた。この無機質繊維板の強度試験を行ったところ、曲げ強度(MOR)が19.3N /mm2 であった。また、無機質繊維の試験体数を5体とし、これらの試験体の強度の標準偏差を算出したところ1.38であった。強度の平均値は実施例1および実施例2と大きな変化はなかったが、試験体によっては実施例1や実施例2に比べて大きかったり、小さかったりするものが混じっており、無機質繊維板の強度は安定していなかった。
【0041】
〔比較例2〕
自己乳化型のポリメリックMDIを10.2gと、40℃に調整した水を100ml とを混合して分散液を得た点と、成形原料として木質繊維500 gとバインダーを100 g混合したものを使用した点を除き、上記実施例3と同様の操作で木質繊維板を得た。この分散液を顕微鏡で観察したところ、エマルジョン粒子は細かいものと大きなものとが混在していた。この木質繊維板の強度試験を行ったところ、曲げ強度(MOR)が9.9 N /mm2 であった。この木質繊維板の試験体として5体使用し、これらの試験体の強度の標準偏差を算出したところ1.97であった。実施例3と比べると、試験体によっては強度が大きかったり、小さかったりするものが混じっており、得られた木質繊維板の強度は安定していなかった。
【0042】
なお、上記無機質繊維板を製造方法において、無機質繊維と無機粉状体と結合剤の混合物、又は木質繊維と結合剤の混合物を成形原料とし、この成形原料に自己乳化型イソシアネート化合物と温度管理された冷水とを混合してスラリーを調製し、このスラリーを湿式抄造して得た湿潤マットを2枚、それぞれ表層と裏層となるように配して、これらの表裏層間に無機発泡体および結合剤を必須成分とする均一な厚さの中層用混合物を介在させた後、熱圧工程および乾燥工程を経て積層一体化することによって3層構造の繊維板を製造してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】繊維板の製造方法を実施するための装置の一例を示すブロック図。
【図2】別な装置を示すブロック図。
【図3】さらに別な装置を示すブロック図。
【符号の説明】
【0044】
1 乳化槽
2 攪拌装置
3 自己乳化型イソシアネート化合物供給装置
4 冷水供給装置
5 成形原料供給装置
6 湿式抄造機
7 乾燥機
8 熱圧成形装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合剤を添加している繊維を成形原料とし、この成形原料に自己乳化型イソシアネート化合物と水とを混合してスラリーを調製し、このスラリーを湿式抄造して得た湿潤マットを脱水、乾燥することによって繊維板を製造する方法において、上記自己乳化型イソシアネート化合物に混合する上記水として温度管理された冷水を使用し、この冷水中に上記自己乳化型イソシアネート化合物を分散させて成形原料と共にスラリーを調製することを特徴とする繊維板の製造方法。
【請求項2】
成形原料と自己乳化型イソシアネート化合物と温度管理された冷水とを共通の攪拌機内に供給してこの攪拌機により攪拌、混合してスラリーを調製することを特徴とする請求項1に記載の繊維板の製造方法。
【請求項3】
自己乳化型イソシアネート化合物と温度管理された冷水を共通の攪拌機で混合して自己乳化型イソシアネート化合物の分散液を作製し、この分散液と成形原料と工業用水とを混合してスラリーを調製することを特徴とする請求項1に記載の繊維板の製造方法。
【請求項4】
自己乳化型イソシアネート化合物と温度管理された冷水とを共通の攪拌機で混合して自己乳化型イソシアネート化合物の分散液を作製する一方、成形原料と工業用水との混合物を作製し、この混合物と上記分散液とを混合してスラリーを調製することを特徴とする請求項1に記載の繊維板の製造方法。
【請求項5】
自己乳化型イソシアネート化合物を分散、混合させる冷水は、通年、5〜20℃に温度管理されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のうち、いずれか1項に記載の繊維板の製造方法。
【請求項6】
成形原料は、無機質繊維と結合剤、又は木質繊維と結合剤を必須成分とすることを特徴とする請求項1ないし請求項4のうち、いずれか1項に記載の繊維板の製造方法。
【請求項7】
無機質繊維と結合剤の混合物、又は木質繊維と結合剤の混合物を成形原料とし、この成形原料に自己乳化型イソシアネート化合物と温度管理された冷水とを混合してスラリーを調製し、このスラリーを湿式抄造して得た2枚の湿潤マットを表裏層としてこれら表裏層間に無機発泡体および結合剤を必須成分とする均一な厚さの中層用混合物を介在させた後、熱圧工程および乾燥工程を経て積層一体化することを特徴とする繊維板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−274456(P2008−274456A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−116763(P2007−116763)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】