説明

繊維構造物およびそれを用いた衛生材料用不織布

【課題】 衛生材料に代表される様な身体に直接接触する物品に用いて、好適な親水性を有し、皮膚への刺激性が少なく、肌荒れを回復、防止する等のスキンケア性を有する繊維構造物及び衛生材料用不織布を提供する。
【解決手段】 繊維構造物の少なくとも表面の一部にリン脂質類似構造物と親水化剤とを併用して含有又は付着させた繊維構造物。および前記の繊維構造物を用いた衛生材料用不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌に直接触れる物品に用いて好適な、更に詳しくは皮膚に対する刺激が少なく、皮膚を保護して肌荒れを防止又は回復機能を促進する繊維構造物に関する。また前記繊維構造物を用いた衛生材料用不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、肌の健康に対する関心が高まっており、化粧品はもとより、繊維に対しても肌にやさしく、健康を保つ機能すなわちスキンケア性が求められている。これらの市場の要望に応えるため、種々の試みがなされている。例えば繊維にスキンケア性を付与するためリン脂質類似構造物を付与することが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。前記文献によれば、リン脂質類似構造物が皮膚表面で水分膜を形成し、肌のバリア機能(水分蒸散の防止)を促進又は補完され、これにより角質中の水分及び天然保湿成分(NMF)流出を防止し、皮膚を正常な状態に回復させていると考えられる。しかしながら、実用上において該構造物のみを含有又は付与したオムツやナプキンなどの衛生材料用不織布、特にトップシート用の不織布では、不織布を通して高分子吸収体への液送りが遅く、不織布表面での液残りおよび液広がりが多く発生し、液透過性が不十分となる。これにより、尿や経血排泄物が皮膚表面に残存し、前記のリン脂質類似構造物によって皮膚表面の水分膜の形成を阻害し、肌のバリア機能を低下させ、せっかく回復した皮膚表面の水分が蒸散し、肌荒れ状態に戻ってしまうという不具合があった。
【0003】
【特許文献1】特開2002−348778号公報(段落番号(0008〜0016など))
【特許文献2】特開2002−348779号公報(段落番号(0007〜0019など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、衛生材料に用いて好適な親水性を有し、皮膚への刺激性が少なく、肌荒れを回復、防止する等のスキンケア性を有する繊維構造物及び衛生材料用不織布を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、リン脂質類似構造物と親水化剤とを併用することにより、高いスキンケア性と親水性を有する衛生材料用繊維構造物が得られることを見出し本発明に至った。
即ち、本発明は以下の構成よりなる。
1.繊維構造物の少なくとも表面の一部にリン脂質類似構造物及び親水化剤が、含有又は付着したことを特徴とする繊維構造物。
2.繊維構造物が45度傾斜法による親水性評価において、40mm以下であることを特徴とする上記1に記載の繊維構造物。
3.繊維構造物が長繊維あるいは短繊維不織布であることを特徴とする上記1〜2のいずれかに記載の繊維構造物。
4.上記1〜3のいずれかに記載の繊維構造物を人体の触れる部分に用いることを特徴とする衛生材料用不織布。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、オムツ、ナプキン等の衛生材料アイテムに好適な、更に詳しくは使用時の快適性に優れ、かつ皮膚に対する刺激が少なく、皮膚を保護して肌荒れを防止又は回復機能を促進する繊維構造物を製造及び提供することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について詳述する。
リン脂質類似構造物と親水化剤とを併用することにより高いスキンケア性と親水性を有する理由について、以下のような理由が考えられる。
リン脂質類似構造物の親水性能が不足していることが考えられる。すなわち、リン脂質類似構造物は高いバリア性を有するが、親水性能が乏しい衛生材料用不織布は液透過性が不十分となり、尿や経血排泄物が皮膚表面に残存し、リン脂質類似構造物による皮膚表面の水分膜の形成を阻害し、肌のバリア機能を低下させ、その結果、皮膚表面の水分が蒸散して、肌荒れ状態に戻ってしまうと考えられる。
【0008】
本発明でいう繊維構造物とは、織物、編物、不織布等に代表される、繊維を用いて2次元又は3次元的な構造を有するものを言う。
【0009】
リン脂質類似構造物は下記の構造を含む重合体であってもよい。
【0010】
【化1】

【0011】
[式中、Xは2価の有機残基を示し、Yは炭素数1〜6のアルキレンオキシ基を示し、Zは水素原子もしくはR5−O−(C=O)−(但しR5は炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基を示す。)を示す。また、R1は水素原子もしくはメチル基を示し、R2、R3およびR4は同一もしくは異なる基であって、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基またはヒドロキシアルキル基を示す。mは0〜20の整数を示す。nは1〜4の整数を示す。]
【0012】
係るリン脂質類似構造物は特に高いスキンケア性を有するのみならず、細菌類が付着し難く、かつ血液適合性にも優れ、スキンケア布帛としての高い特性を備えているからである。
【0013】
次に親水化剤について説明する。
本発明における親水化剤としては、以下に記載するものには限定されないが、炭素数10〜30の炭化水素基を有するアルキル硫酸塩、炭素数10〜30の炭化水素基を有するポリオキシエチレン(以下、POEと略記)アルキル燐酸塩、炭素数10〜30の炭化水素基を有するPOEアルキル硫酸塩などがある。
【0014】
炭素数10〜30の炭化水素基を有するアルキル硫酸塩としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸エタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸カリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム、セトステアリル硫酸ナトリウム、などが挙げられる。これらの中で、ラウリル硫酸ナトリウムが好ましい。
【0015】
炭素数10〜30の炭化水素基を有するPOEアルキル燐酸塩としては、POEラウリル燐酸ナトリウムPOEラウリルエーテル燐酸ナトリウム、POEラウリルエーテル燐酸トリエタノールアミン、POEヤシ油脂肪酸モノエタノールアミン、POEミリスチルエーテル燐酸ナトリウム、POEオクチルフェニルエーテル燐酸ナトリウム、などが挙げられる。これらの中で、POEラウリル燐酸ナトリウムが好ましい。
【0016】
炭素数10〜30の炭化水素基を有するPOEアルキル硫酸塩としては、POEラウリル硫酸ナトリウムPOEラウリルエーテル硫酸ナトリウム、POEラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、POEラウリルエーテル硫酸カリウムなどが挙げられる。この中で、POEラウリル硫酸ナトリウムが好ましい。
【0017】
本発明の親水化剤の比率構成は、ラウリル硫酸ナトリウムが40〜60質量%、POEラウリル燐酸ナトリウムが10〜30質量%、POEラウリル硫酸ナトリウムが20〜40質量%であることが好ましい。この比率の範囲より少ない場合、ラウリル硫酸ナトリウムの場合は、十分な親水性能が得られないことがあり、POEラウリル燐酸ナトリウムの場合は防錆効果が発揮できず、製造工程の錆を発生させる可能性がある。一方、この比率の範囲より多い場合、POEラウリル燐酸ナトリウムの場合は、親水性能が得られなくなる。POEラウリル硫酸ナトリウムは親水効果と防錆効果の両方を備え、ラウリル硫酸ナトリウムとPOEラウリル燐酸ナトリウムとの相溶化剤となり、処理効果のバラツキが少なくなるので併用するのが好ましい。親水化剤としての親水性及び防錆効果のバランスを保つためには、上記の範囲内であることが好ましい。
【0018】
また、これらの繊維構造物に、吸湿剤を併用することでさらに皮膚への保護、肌荒れの回復機能を向上させることができる。ここで吸湿剤とは、キトサン、アラビノガラクタンなどの多糖類類や、ポリスチレン系、ポリアクリロニトリル系、ポリアクリル酸エステル系、ポリメタクリル酸エステル系のいずれかのビニル系重合体で、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基あるいは、それらの金属塩の少なくとも1種の親水基を有し、かつジビニルベンゼン、トリアリルイソシアネートまたはヒドラジンのいずれかで架橋された架橋重合体などがある。
【0019】
次に親水性の必要レベルについて説明する。
親水性が乏しい衛生材料用不織布の場合、液透過性が不十分となり、尿や経血排泄物が皮膚表面に残存し、肌荒れ状態が発生するため、以下の親水性が必要であると考える。本発明における衛生材料用不織布は実施例の測定方法に記載した垂直滴下法で測定した人口尿の浸透率(%)が90%以上で、更に、実施例の測定方法に記載した45度傾斜法による人口尿の親水性能が、40mm以下の高親水性を示すことができ、好ましくは30mm以下を保持することができる親水性を有することが特徴である。
【0020】
親水性を所定の範囲とするためには、親水化剤の組成比率・付与量、繊維構造物の目付、繊維構造物構成繊維の単繊度等の影響を考慮しなければならない。親水化剤の組成比率に関しては、アルキル硫酸塩及びPOEアルキル硫酸塩の比率を増やすことで親水性を上げられるが、比率を上げすぎると製造工程の錆を発生させる。また、親水化剤の付与量については、0.01%o.w.f 〜 20%o.w.f(o.w.fはon the weight of fiber)が好ましく、この範囲より低い場合、本発明の親水性を得られにくく、高い場合、繊維構造物の表面の風合いが硬くなる可能性がある。更に、繊維構造物の目付を低くする事で構造物の空隙率が高くなり、その結果、親水性が高くなるが、目付が低すぎると厚みも損なわれてしまい、肌に接触する繊維構造物としての強力、嵩、風合い等が損なわれる可能性が考えられる。繊維構造物構成繊維の単繊度に関しても、前記の目付と同様に、太繊度であれば、繊維構造物の親水性が向上するものの、肌への物理的な損傷を与えかねないし、細繊度すぎると親水性を阻害する可能性がある。これらの因子の組み合わせにより、目的の親水性の値の範囲に制御することが可能となる。
【0021】
本発明でいうスキンケア性とは外部からの刺激から皮膚を保護する、又は荒れた皮膚を正常に回復させる機能をいう。
【0022】
本発明におけるリン脂質類似構造物及び親水化剤の付与量は特に限定するものではないが、それぞれ0.01%o.w.f 〜 20%o.w.fであることが好ましい。この範囲より低ければ、本発明の効果が得られにくくなり、この範囲より高ければ繊維構造物の風合い等に問題が生じ易いからである。
【0023】
本発明に係る繊維の材質は特に限定するものではなく、綿や絹等の天然繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維、ナイロン6、ナイロン66、などのポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン繊維、ポリイミド繊維などが好ましい。またエアースルー不織布を作成するため、芯鞘構造を有するものが特に好ましい。具体的には芯/鞘として、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート/ポリエチレン等のポリエステル/ポリオレフィンの構造、あるいはポリエチレン/ポリプロピレン、変性ポリプロピレン/ポリプロピレン等のオレフィン/オレフィン構造が風合いも柔らかく好ましい。
【0024】
本発明の繊維構造物を得る方法としては、繊維構造物を作成した後に、親水化剤、リン脂質類似構造物を付与する方法、繊維製造時にそれぞれ親水化剤、リン脂質類似構造物を付与し、後に混綿し構造物を得る方法、あるいは親水化剤、リン脂質類似構造物を同一繊維に付与し、後に構造物を得る方法などがある。繊維構造物に親水化剤、リン脂質類似構造物を付与する方法としては、ディッピング、スプレー法などがある。繊維製造工程で付与する方法としては、ローラーオイリング法、スプレー法、パッド法、また繊維化後にパディング等で処理してもよい。また、繊維を構成するポリマーに練り込むことによって含有させてもよく、前記のローラーオイリング法、スプレー法、パッド法と併用して処理してもよい。ポリマーに練り込むことにより、特に洗濯耐久性を要求される用途あるいはスパンレースなど不織布作成時に繊維表面の油剤を脱落させる工程があるものに適している。
【0025】
また繊維化後及び繊維構造物にパディング等により、表面付着させることにより、皮膚に接触する部分に親水化剤、リン脂質類似構造物が分散され、練り込む場合に比して少量で効果を発揮でき、また工程通過性についても練り込む場合より優れているからである。繊維構造物が短繊維不織布の場合には、不織布製造後あるいは衛生材料などの製品を生産時にスプレー付与などにより付着させてもよい。この場合にも練り込み場合に比して少量で効果を発揮できる点で好ましい。
【0026】
本発明に係る繊維構造物の用途は、特に限定されるものではないが、衛生材料等の肌に接触するアイテムとして特に効果が発揮させる。衛生材料の代表例としては、紙オムツ、生理用ナプキン、ライナー、汗わきパッドの表面材として本発明の繊維構造物が好ましく使用される。肌に接触する面以外についても紙オムツのギャザー等の肌に接触して用いられたり、又は長時間あるいは繰り返し使用されるものに好適である。また、シーツ類や帽子、手袋、レッグニット等の他、インナーウェア用途にも使用可能である。
【実施例】
【0027】
以下具体的実施例を挙げて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、実施例における測定方法は以下の通りであり、親水化剤の処方は、表1中の処方1の組成比率(重量%)で評価を実施した。
【0028】
【表1】

【0029】
<親水性評価方法>
(A)45度傾斜法
(1)不織布を150mm×100mmの大きさに切断した試料を45度に傾斜した台状の上に不織布よりやや大きめの濾紙を下敷きにするように載せる。
(2)常温の人口尿を不織布上端の上方1cmの高さから静かに不織布に滴下させる。
(3) 滴下して不織布上に落ち転がって浸透するまでの距離(mm)を測定する。10滴滴下させ平均を読む。
【0030】
(B)垂直滴下法
(1)不織布を100mm×100mmの大きさに切断した試料を濾紙の上に載せる。
(2)常温の人口尿を不織布の上方1cmの高さから静かに不織布に均等に10滴滴下させた時の浸透率(%)を測定する。試料は10枚用意し、n=10で測定する。浸透率(%)は不織布試料に滴下した人口尿の総滴下数100滴と滴下後不織布試料上に残存した人口尿の滴数A滴とを測定し、下記式1より算出した。
浸透率(%) = (100−A)/100 × 100 ・・・・・ (式1)
【0031】
<スキンケア性評価方法>
(1)試験サンプルを6mmφの大きさに切り抜き、フィンチャンバー (大正製薬製)にセットした。
(2)濃度0.1%、0.3%、0.7%に調整したドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液を10μLずつそれぞれ試験布に含侵させた。
(3)成人男性(5名)の背部(脊椎椎部)に閉塞貼付した。
(4)貼付24時間後に試験サンプルを背部より剥離した。
(5)剥離1時間後および24時間後に皮膚の状態を肉眼にて判定した。判定基準は以下の通りである。
【0032】
(皮膚判定基準)
皮膚反応は、試験実施者とは別の判定者が下表2の本邦基準にした判定後、反応に評点を与え、その点数を須貝らにより考案された下記の式2に導入して皮膚刺激指数を算出した。
皮膚刺激指数 = (総評点和/被験者数) × 100 ・・・・・ (式2)
すなわち式2で示される皮膚刺激指数が低いほど、優れたスキンケア性を有する。
【0033】
【表2】

【0034】
(実施例1)
ポリエチレン(PE)/ポリエステル(PET)のシース/コア構造を有する2.2dtex×44mmの原綿をカードウェブとし、140℃で5秒熱処理したエアースルー不織布30g/m2を得た。得られた不織布に、リン脂質類似構造物としてLipidure(R)MF−3(日本油脂(株)製)を0.15%o.w.f(固形分)、表1中の処方1の組成からなる親水化剤を0.15%o.w.f(固形分)をパディングにより塗布した。得られた不織布の親水性を表3に、スキンケア性を表4に示す。得られた処理不織布は、親水化剤を塗布していない下記比較例1の不織布と比して明確に優れたスキンケア性と親水特性を有するものであった。
【0035】
(実施例2)
リン脂質類似構造物としてLipidure(R)MF−3(日本油脂(株)製)を0.15%o.w.f(固形分)をスプレー付与したポリエチレン(PE)/ポリエステル(PET)のシース/コア構造を有する2.2dtex×44mmの原綿70%と表1中の処方2の組成からなる親水化剤を0.15%o.w.f(固形分)をスプレー付与したポリエチレン(PE)/ポリエステル(PET)のシース/コア構造を有する2.2dtex×44mmの原綿30%との混合綿をカードウェブとし、140℃で5秒熱処理したエアースルー不織布30g/m2を得た。得られた不織布の親水性を表3に、スキンケア性を表4に示す。得られた処理不織布は、親水化剤を付与した原綿を含まない下記比較例2の不織布と比して明確に優れたスキンケア性と親水特性を有するものであった。
【0036】
(実施例3)
ポリエステルよりなる目付け50g/m2のスパンボンドにリン脂質類似構造物としてLipidure(R)MF−3(日本油脂(株)製)を0.15%o.w.f(固形分)、表1中の処方1の組成からなる親水化剤を0.15%o.w.f(固形分)をパディングにより塗布した。得られた不織布の親水性を表3に、スキンケア性を表4に示す。得られた処理スパンボンド不織布は、親水化剤を塗布していない下記比較例3のスパンボンド不織布と比して明確に優れたスキンケア性と親水特性を有するものであった。
【0037】
(比較例1)
実施例1と同様にポリエチレン(PE)/ポリエステル(PET)のシース/コア構造を有する2.2dtex×44mmの原綿をカードウェブとし、140℃で5秒熱処理したエアースルー不織布30g/m2を得た。得られた不織布に、リン脂質類似構造物としてLipidure(R)MF−3(日本油脂(株)製)を0.15%o.w.f(固形分)のみパディングにより塗布した。得られた不織布の親水性を表3に、スキンケア性を表4に示す。得られた処理不織布は、実施例1の不織布と比して、スキンケア性と親水特性ともに劣るものであった。
【0038】
(比較例2)
リン脂質類似構造物としてLipidure(R)MF−3(日本油脂(株)製)を0.15%o.w.f(固形分)のみをスプレー付与したポリエチレン(PE)/ポリエステル(PET)のシース/コア構造を有する2.2dtex×44mmの原綿100%をカードウェブとし、140℃で5秒熱処理したエアースルー不織布30g/m2を得た。得られた不織布の親水性を表3に、スキンケア性を表4に示す。得られた処理不織布は、実施例2の不織布と比較して、スキンケア性と親水特性ともに劣るものであった。
【0039】
(比較例3)
実施例3と同様にポリエステルよりなる目付け50g/m2のスパンボンド不織布にリン脂質類似構造物としてLipidure(R)MF−3(日本油脂(株)製)を0.15%o.w.f(固形分)のみパディングにより塗布した。得られた不織布の親水性を表3に、スキンケア性を表4に示す。得られた処理スパンボンド不織布は、実施例3のスパンボンド不織布と比較して、スキンケア性と親水特性ともに劣るものであった。
【0040】
【表3】

【0041】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明により、好適な親水性を有し、皮膚への刺激性が少なく、肌荒れを回復、防止する等のスキンケア性を有する繊維構造物及び衛生材料用不織布を得られる為、衛生材料に代表される様な身体に直接接触する物品への産業上の寄与が大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維構造物の少なくとも表面の一部にリン脂質類似構造物及び親水化剤が、含有又は付着したことを特徴とする繊維構造物。
【請求項2】
繊維構造物が45度傾斜法による親水性評価において、40mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の繊維構造物。
【請求項3】
繊維構造物が長繊維あるいは短繊維不織布であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の繊維構造物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の繊維構造物を人体の触れる部分に用いることを特徴とする衛生材料用不織布。

【公開番号】特開2006−45700(P2006−45700A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225453(P2004−225453)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】