説明

繊維状材料を含んでなるウォッシュコートで被覆された触媒担体基材

触媒作用する成分、金属酸化物、および長さと厚さの縦横比が5:1を超える耐火性繊維状または髭状材料を含んでなる、表面積を増加するウォッシュコート組成物で被覆された固体触媒担体基材。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、表面積を増大させるウォッシュコート組成物で被覆された触媒担体基材に、特にそのような、車両排気機構用途を包含する工業的用途向けの、機械的強度を改良したウォッシュコート組成物に関する。
【0002】
酸化物ウォッシュコートをセラミックフロースルーハニカムモノリス上に塗布して、その表面積を増加させ、製品に触媒作用を付与する技術は、30年以上も前に確立されている。この技術を採用する数千万基の自動車用触媒転化器が毎年製造されている。従来、ウォッシュコートのスラリーを基材上に堆積させ、被覆された基材を乾燥させて未焼成被覆基材を形成し、次いでこれを焼成する。次いで、焼成されたウォッシュコート処理されたモノリスに、白金族から選択された一種以上の触媒作用を有する金属を含浸させる。しかし、この技術をより厳しい状況、例えば車両用触媒転化器に使用する、セラミック基材の代わりに金属基材で、およびプロセス触媒系(すなわち、硫酸および硝酸プロセス、水蒸気変性、精製プロセス、等、を包含する、大規模な触媒作用によるプロセス)で使用しようとする場合に、問題が生じる。特に流体中に摩耗性汚染物が存在する流体系の触媒処理が関与する、または触媒装置または反応器を熱的および/または機械的衝撃にさらすプロセスにおいて、被覆の耐久性が重大な問題となる。
【0003】
弱いマトリックスを強化するための繊維補強の使用、例えばプラスチックのガラス繊維または炭素繊維補強、および金属またはセラミック用の炭化ケイ素または窒化ケイ素繊維補強、は公知である。また、無論、ワラを含む粘度煉瓦を日光乾燥させることは、聖書にも書かれている。そのような複合材料における繊維添加のほとんどのレベルは30〜90重量%の範囲内である。これらの材料で、繊維の破断ひずみはマトリックスよりもはるかに大きいので、マトリックス中で進行する亀裂に補強繊維が橋かけする時に達成されるひずみ耐性により、靱性がもたらされる。マトリックスを補強するには、石英またはアルミナの繊維、もしくはSiCの髭状結晶を包含する多くの方法があるが、これらに限定するものではない。しかし、固体触媒担体基材上のミクロン尺度のウォッシュコート塗料に繊維または髭状結晶を使用することは示唆されてなく、マトリックスウォッシュコート材料の少なくとも一部と同じ組成を有することができる少量の繊維が、有益な効果を与えるとは思われない。また、触媒化学者の観点からは、実質的に不活性な材料を触媒組成物中に混合することには、何の利点もないと思われる。
【0004】
Ahn et al.(「金属触媒を使用しない、炭化ケイ素髭状結晶および髭状結晶含有複合材料被覆の製造(Fabrication of silicon carbide whiskers and whisker containing composite coatings without using a metallic catalyst)」、Surface and Coatings Technology, 2002, 154(2-3), 276-281)は、異なった髭状結晶成長条件およびマトリックス充填方法により、複合材料被覆を製造する方法を記載している。
【0005】
Zwinkels et al.(「ゾル−ゲル法を使用する、アルミナ髭状結晶で被覆された金属モノリスのウォッシュコート処理による燃焼触媒の製造(Preparation of combustion catalysts by washcoating alumina whisker-covered metal monoliths using the sol-gel method)」、Studies in Surface Science and Catalysis, 1995, 91, 85-94)は、アルミナ髭状結晶で被覆された金属モノリスを、シリカ含有スラリー中で浸漬被覆する方法を記載している。このようにして製造した被覆上にPdを含浸させ、触媒作用による燃焼に好適な触媒を得ている。
【0006】
米国特許第5,326,735号明細書(NE Chemcat Corp.)は、金属炭化物または窒化物支持体上にイリジウムを堆積させることによる触媒の製造を記載しており、その支持体の供給源は重要ではないが、この特許では、安価な供給源、例えば直径0.1〜100ミクロンの髭状結晶または粉末、を使用することが示唆されている。Ir/髭状結晶触媒は、典型的には結合剤と共に16時間ボールミル加工し、モノリス被覆に好適なウォッシュコートを製造する。請求項にも例にも、被覆の耐久性が高められることは記載されてなく、髭状結晶が長時間の摩砕工程に耐えられるとは思われない。
【0007】
日本国特許第2001252574号明細書(Babcock-Hitachi K.K.)は、煙道後処理用途向けの、触媒作用を付与した繊維補強基材の製造を記載している。この基材は、結合剤、例えばシリカゾルまたはPVA、をスプレー被覆した金属ラス(lath)ボードおよびガラス繊維不織布から製造された多層構造であり、続いてこれを触媒で被覆する。この場合、繊維層が、基材の一部を形成し、事実上、続いて堆積させる触媒被覆のための、有益な調節表面を与える。
【0008】
日本国特許第11267523号明細書(Babcock-Hitachi K.K.)は、無機繊維布地、例えばシリカ−アルミナガラス繊維、をPVAで強化し、続いて触媒ペースト、例えばチタニア、で被覆し、煙道ガラス処理用の触媒被覆された基材を製造する方法を記載している。別の特許(日本国特許第10202113号明細書、Babcock-Hitachi K.K.)では、この製法を、2個の無機布地基材間に触媒ペーストを挟み、圧力をかけ、強化された触媒作用を付与した製品を形成することにより、変形している。これらの両方とも、触媒作用を付与することになる複合材料の製造に使用する繊維の例である。別の例が、日本国特許第53015285号明細書(Mitsubishi Heavy Industries)により与えられており、そこでは、金属ワイヤ補強した支持体形状を製造し、次いで触媒前駆物質で含浸している。
【0009】
英国特許第2138694A号明細書(Nippon Shokubai)は、ベースとしてモリブドリン酸またはモリブドバナドリン酸を基剤とするヘテロポリ酸型触媒活性成分および髭状結晶(髭状結晶は、典型的には、触媒成分に対して1〜50重量%の量で含まれる)を含んでなる触媒組成物を開示している。この触媒組成物は、工業的用途で優れた機械的強度(例えば圧縮強度、耐摩耗性および落下強度)を有すると報告されている。一実施態様で、ベースとしてヘテロポリ酸を含む化合物および髭状結晶の混合物のスラリーを好適な担体上にスプレーすることにより、担持された触媒を調製する。直径3〜5mmの通常の球状担体材料が例示されている。この担体は、好ましくは1〜10mmで、非中空円筒、中空円筒、壊れた断片、三角形ピラミッド、等、またはハニカムもしくはパイプの形態を取ることもできる。
【0010】
ここで、我々は、固体基材、例えばハニカムモノリス基材、上に塗布するための、車両排気機構における用途を包含する工業的用途向けの改良された特性を有するウォッシュコート組成物を開発した。
【0011】
第一の態様により、本発明は、触媒作用する成分、金属酸化物、および長さと厚さの縦横比が5:1を超える耐火性繊維状または髭状材料を含んでなる、表面積を増大させるウォッシュコート組成物で被覆された固体触媒担体基材を提供する。一態様で、耐火性繊維状または髭状材料の、長さと厚さの縦横比は、50:1を超える。別の実施態様では、ウォッシュコートは多孔質でガスを通す。
【0012】
英国特許第2138694A号明細書の触媒組成物は、金属酸化物および触媒作用する金属成分の両方を含んでいない。さらに、我々は、英国特許第2138694A号明細書の担持された触媒におけるヘテロポリ酸以外の触媒作用する金属成分の使用可能性を調査した。我々は、担持された触媒組成物の機械的が乏しいのみならず、これらの組成物が非常に劣った触媒でもあることも見出した。従って、我々は、英国特許第2138694A号明細書により、当業者は、ヘテロポリ酸以外のすべての触媒作用する金属成分に関して、この書類の課題である技術的開示を実践することができない、と結論付ける。
【0013】
付随する請求項の範囲は、触媒作用する成分としてのヘテロポリ酸、金属酸化物および耐火性繊維状または髭状材料の組合せに及んでいるが、一実施態様では、触媒作用する成分は、ヘテロポリ酸を除くすべての触媒作用する成分である。
【0014】
触媒作用する成分は、ゼオライト、クレーまたはバナジウムリン酸化物からなることができるが、実施態様では、触媒作用する成分が、所望により表面積を大きくする支持体上に担持された、少なくとも一種の金属を含んでなる。
【0015】
少なくとも一種の金属を含んでなる実施態様では、その金属は、すべての貴金属、マグネシウム、ニッケル、コバルト、鉄、バナジウム、銅、モリブデン、アルミニウム、ケイ素またはそれらのいずれか2種類以上の混合物でよい。金属は、元素状金属として、またはそれらの化合物、例えば酸化物、として存在することができる。金属は、ゼオライト、アルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニアまたはセリア、もしくはそれらのいずれか2種類以上の複合材料酸化物、例えばシリカ−アルミナ、セリア−ジルコニアまたはアルミナ−セリア−ジルコニア、を包含する、表面積を大きくする支持体上に担持することができる。触媒作用する金属の代表的な例には、Pd/Al、Fe/モルデナイトまたはベータ−ゼオライトおよびMg/ZSM5が挙げられる。
【0016】
その最も基本的な設計レベルでは、ウォッシュコート組成物中の金属は触媒作用する成分を代表し、金属を担持する支持体は、金属酸化物である。従って、本発明で使用するウォッシュコート組成物は、金属酸化物および繊維状または髭状材料の上に担持された金属を含んでなることができる。
【0017】
担持された触媒作用する金属成分の製造方法は、当業者には公知であり、初期湿式(incipient wetness)技術および共沈殿を包含する。従って、そのような方法は、ここではより詳細に説明しない。
【0018】
触媒作用する金属成分中の金属は、ウォッシュコート組成物の総重量に対して30重量%まで存在できる。例えば、アセチレンの水素化には、200ppmPd/Alが十分な装填量であるのに対し、Fischer-Tropsch触媒には、20〜30重量%の装填量が必要になる場合がある。
【0019】
固体の触媒担体基材は、様々な形態の金属製フロースルーハニカムモノリス、「静止ミキサー"static mixer"」型構造、ワイヤメッシュ装置、プレートまたは他のすべての反応器部品でよいが、本発明は、より難しいセラミックモノリスにも、有用な用途を見出すことができよう。触媒担体基材は、特にディーゼルまたは他の燃焼煤を包含する粒子が、基材中で滞留し、ガス成分との反応または触媒作用による反応が可能になるように、部分的または完全な濾過機能を与えることができる。マクロ細孔質物体、例えばRaschigリング、または他の形状を有する担体も包含される。
【0020】
耐火性繊維状材料は、ウォッシュコートまたはウォッシュコート前駆物質を好適な酸化物形態に転化するのに使用される従来の焼成工程に耐え、通常の使用条件に耐える材料である。繊維状材料は、アルミナ、好ましくはガンマ−アルミナ、ムライトおよび他の金属酸化物セラミック繊維、から選択することができるが、そのようなセラミック繊維の一部または全部を、炭化ケイ素または窒化ケイ素型繊維または髭状結晶、または石英で置き換えることができる。そのようなフィラメントは、直径10nmで、長さが5mmまでであるのが好適である。好適な繊維状材料は、市販されており、例えば「Saffil」(Saffil plcにより供給される「触媒等級(Catalyst Grade)」繊維状マット)がある。Saffil繊維は、典型的には直径が3.5μmである。繊維状または髭状材料は、所望により化学的に変性し、それらの特性を強化することができる。
【0021】
1μm未満の範囲内にある耐火性繊維状材料の粒子は、石綿沈着症のように健康に有害であると認められている。しかし、耐火性繊維状材料のサイズは、露出の危険性に応じて適切に選択することができる。例えば、化学的製造では、作業員は、保護衣類および呼吸器を装着するのが一般的であるので、直径1ミクロン未満の繊維の使用が許容されるのに対し、車両用途には、有害な粒子の大気中への放出を避けるために、直径がより大きい繊維を使用する。
【0022】
ウォッシュコート組成物の金属酸化物成分は、それ自体は重要ではなく、いずれかのシリカ、アルミナ、チタニア、セリア−ジルコニア混合酸化物、または上記のドーピングされた物質を包含するセリア−ジルコニア−アルミナブレンドでよい。ウォッシュコートスラリー中に結合剤を包含するのは一般的であり、本発明では、コロイド状シリカのような結合剤、例えば「Ludox」、を包含するのが好ましい。本発明は、精製助剤、例えば硫黄除去用の銅−亜鉛−アルミナ混合酸化物、または化学量論的試薬、例えば水素除去用の担持された酸化物、の被覆にも適用できる。従って、ここで使用する用語「ウォッシュコート組成物」は、それ自体化学的に活性である被覆、ならびに実質的に不活性である被覆を包含する。例えば、多くの最新自動車用触媒ウォッシュコート組成物は、酸素管理またはNOx貯蔵における重要な役割を果たしており、ウォッシュコート組成物は、「ゲッター」型材料を配合することができる。一実施態様では、金属酸化物成分は、ウォッシュコート組成物の35重量%まで存在する。
【0023】
ウォッシュコート組成物の典型的な厚さは、5〜100μmまでの範囲内、所望により5〜60μmの範囲内である。
【0024】
耐火性繊維状または髭状材料の量は、固体含有量の0.5〜49.9重量%、例えば30重量%未満、例えば1〜15重量%が好適である。繊維状材料は、従来の技術を使用して、ウォッシュコートのスラリー中に容易に混合することができる。初期の試験では、繊維の粉砕により、必要な量が増加する傾向があることを示している。
【0025】
ウォッシュコート組成物は、一種以上の触媒作用する金属成分を、所望により助触媒と共に含んでなる。触媒作用する成分を、溶液で、繊維状材料を含むウォッシュコート組成物のスラリー中に配合することができる、および/または繊維状または髭状材料を包含する、一種以上のウォッシュコート組成物スラリー成分に、前もって触媒作用を付与することができる。あるいは、未焼成ウォッシュコート組成物で被覆した基材を焼成した後に、触媒溶液を、ウォッシュコート組成物を担持する基材上に堆積させることもできる。
【0026】
無論、本発明の基材は、ウォッシュコート組成物の多層被覆を含んでなることができ、その中で、他の層は本発明に従う層でも、従来の層でもよい。
【0027】
第二の態様により、本発明は、触媒作用する成分、金属酸化物および長さと厚さの縦横比が5:1を超える耐火性繊維状または髭状材料を含んでなるウォッシュコート組成物を含んでなるスラリーを基材に塗布し、被覆された基材を乾燥させ、焼成することを含んでなる、本発明の基材を形成する方法を提供する。
【0028】
繊維状または髭状材料を含んでなるウォッシュコート組成物スラリーは、金属プレート上へのK−バーアプリケータ、金属基材のスプレー被覆、およびJohnson Mattheyの所有財産であるヨーロッパ特許第1064094号明細書による、商業的金属製車両用触媒転化器基材上に堆積させる「精密被覆(Precision Coating)」を包含する、様々な方法により金属系基材上に効果的に堆積させている。従って、従来のウォッシュコート組成物を堆積させ、焼成する方法に、特殊な処理工程または変形を行う必要はないと考えられる。基材を層で被覆する分野の当業者に公知の多くの方法、例えば精密被覆、スプレー被覆、印刷、浸漬被覆、手動または自動式技術、および静電気技術による塗布、がある。
【0029】
第三の態様では、本発明は、触媒作用する成分、金属酸化物および長さと厚さの縦横比が5:1を超える耐火性繊維状または髭状材料を含んでなる、本発明の方法に使用するウォッシュコート組成物を含んでなるスラリーを含んでなる。
【0030】
本発明の被覆された基材に対して行った様々な種類の試験により、未焼成被覆基材を形成する際の乾燥による亀裂が大幅に減少すること、および耐久性が著しく改良されることが示されている。耐久性は、焼成した被覆基材をアルファアルミナボールをぶつける試験、粘着テープ試験、高速空気流、および車両用触媒転化器全体をコンクリートの床上に何度も落下させ、前後に重量を計量し、使用中の打撃または衝撃を模擬する試験により、査定することができる。
【0031】
ここで、下記の非限定的な例および添付の図面を参照しながら本発明を説明する。
【0032】
比較例1 γ−Al繊維強化したCeO−ZrO−Al被覆
様々なレベルのγ−Al繊維(Saffil plcにより供給された「触媒等級」繊維マット)を、繊維マットを壊し、高せん断攪拌機で、セリア−ジルコニア−アルミナの30%固体スラリー中に、(スラリーの固体レベルに対して)0、1.4、3.2、6.1および11.4重量%の量で加え、分散させた。清浄にしたステンレス鋼板(215mmx75mmx1mm)に繊維/セリア−ジルコニア−アルミナスラリーを、K−バーを使用して被覆し、常温で強制空気乾燥させ、続いて130℃の等温加熱炉中で一晩乾燥させた。乾燥に続いて、被覆された板を空気中、2℃/分の速度で500℃に加熱した。
【0033】
被覆した板の断片(典型的には110x76mm)を、1.3リットルの上部にネジのついたプラスチックビン中に、13mmα−Alボール100gと共に入れ、手で強く1分間振とうすることにより、摩耗試験にかけた。板を摩耗試験の前後に計量し、失われた被覆の量を測定し、残った被覆も除去し、開始時に存在していた被覆の総量を求めた(表1参照)。
【0034】
【表1】

【0035】
比較例2 石英繊維補強したセリア−ジルコニア−アルミナ被覆
2種類の石英ウール試料(直径2〜12μm、Saint Gobain Quartz)を、高せん断攪拌機で、セリア−ジルコニア−アルミナの30%固体スラリー中に(スラリーの固体レベルに対して1.6および3.2重量%SiO装填量)分散させた。清浄にした316ステンレス鋼板(215mmx75mmx1mm)に石英繊維/セリア−ジルコニア−アルミナスラリーを、K−バーを使用して被覆し、常温で強制空気乾燥させ、続いて130℃の等温加熱炉中で一晩乾燥させた。乾燥に続いて、被覆された板を空気中、2℃/分の速度で500℃に加熱した。被覆した板の断片(典型的には110x76mm)を、例1に記載するα−Alボール摩耗試験にかけ、結果を表2に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
比較例3 TiOへのγ−Al繊維添加
従来のTiO系スラリーのバッチを、単独で、または様々なレベルのγ−Al繊維(Saffil plcにより供給された「触媒等級」繊維マット)および/またはシリカ結合剤と共に、機械的分散により調製した。直径5.66インチx長さ6インチの金属製触媒モノリスを、このスラリーで被覆し、120℃で乾燥させ、次いで500℃で焼成した。落下試験を行い、繊維添加および/またはシリカ結合剤添加の、被覆一体性に対する効果を確認した(表3参照)。表3は、被覆の耐久性が、TiO系被覆に対する繊維添加により大きく改良され、繊維およびシリカ結合剤の使用によりさらに強化されることを立証している。
【0038】
【表3】

【0039】
例1 貴金属セリア−ジルコニア−被覆へのγ−Al繊維添加
貴金属セリア−ジルコニア触媒(セリア−ジルコニア複合材料金属酸化物にPtを予め固定)の41重量%スラリー−被覆を、スラリーの固体含有量に対して0、5、10および15%γ−Al繊維レベル(Saffil plcにより供給された「触媒等級」繊維マット)で推定繊維長80μmに機械的分散させて調製した。70x100mm金属製細片を、このスラリーでスプレー被覆し、空気乾燥させ、500℃でか焼した。25mmスコッチテープを使用し、テープ試験の前後に計量して被覆損失を定量し、被覆の耐久性を確認した(表4参照)。表4から、γ−Al繊維添加により、被覆の耐久性レベルが改良されることが観察される。繊維添加により、一様なサイズの金属製細片上に、より高い装填量(0、5、10および15%繊維に対して、それぞれ20.1、22.0、25.2および23.9%)の被覆が堆積し、その結果、より厚い被覆が得られることも観察される。厚い被覆は薄い被覆よりも弱いと予想されるので、これは驚くべき結果である。摩砕していないアルミナを同じ重量%のSaffil繊維に添加しても、接着性は改良されなかった。繊維補強された被覆は、ハンドローラーまたは精密被覆によって塗布しても、非補強被覆に対して耐久性の同じ改良を達成することができる。
【0040】
【表4】

【0041】
例2 Pt/Al被覆へのγ−AlおよびSiC繊維添加
様々なレベルの80μmSaffilγ−Al繊維(Saffil plcにより供給された「触媒等級」を80μmスクリーンに通した)を、Pt/Al(Ptをガンマアルミナに予め固定)の30%固体スラリー中に分散させ、清浄にしたステンレス鋼板(40x100mm)にK−バーを使用して被覆した。もう一つの試料も、市販の炭化ケイ素髭状結晶を使用して調製した。被覆された板を乾燥させ、500℃で焼成し、スコッチテープ試験にかけた。
密着性結果を表5に示す。
【0042】
【表5】

【0043】
例3 本発明のウォッシュコート組成物と英国特許第2138694A号明細書の開示により調製した組成物の耐摩耗性比較
直径2.2cm、長さ8.2cm、1平方インチあたり400セルのハニカムモノリスを様々な方法によりPtで被覆した。表6の1〜4は、本発明の実施態様の一つ以上に対応し、5〜8は、英国特許第2138694A号明細書の開示により、ヘテロポリ酸の代わりに、白金系触媒金属成分を使用して調製した。
【0044】
表6の#1は、モノリスを、5重量%Saffilガンマ−AlO3繊維(固体に対して)を含む2Pt/Al30%固体スラリー中に浸漬被覆することにより調製し、触媒は、PtをAl担体に予め固定せずに調製した。被覆したモノリスを105℃で乾燥させ、500℃で焼成した。表6の#2は、#1と同様に調製したが、被覆したモノリスを700℃で焼成した。表6の#3は、初期湿式により製造した、予め固定した2Pt/Alを使用し、続いて105℃で乾燥させ、500℃でか焼することにより、調製した。モノリスを、固体に対して5重量%Saffilガンマ−Al繊維を添加した触媒の30%固体スラリー中に浸漬被覆した。この被覆されたモノリスを、105℃で乾燥させ、500℃で焼成した。表6の#4は、#3と同様に調製したが、試料を700℃で焼成した。表6の#5は、モノリスを、炭酸水素テトラアミン白金(II)の水中30%固体混合物中に浸漬被覆することにより調製した。繊維は加えていない。この被覆されたハニカムを、105℃で乾燥させ、500℃で焼成した。表6の#6は、#5と同様に調製したが、固体に対して5重量%Saffilガンマ−Al繊維を添加した。この被覆されたモノリスを、105℃で乾燥させ、500℃で焼成した。表6の#7は、#6と同様に調製したが、被覆されたモノリスを700℃で焼成した。表6の#8は、表の#6により調製したスラリーを使用してモノリスをスプレー被覆することにより調製した。この被覆されたモノリスを、105℃で乾燥させ、500℃で焼成した。
【0045】
試料を、そのハニカムチャネル構造を通して、高圧空気ジェット(35psig)を20秒間下流に吹きつけることにより、車両排気機構における条件を模擬し、被覆の密着性/耐久性に関して試験した。表6の1〜4は、高圧空気摩耗試験にかけた時に、被覆の損失が無いことを示している。しかし、驚くべきことに、表の5〜7は、この試験にかけた時に被覆が完全に失われたことを示している。
【0046】
ハニカムモノリスの触媒活性を、触媒の活性箇所密度を測定する標準的な試験である一酸化炭素(CO)吸収を使用して査定した。表6の1〜4に使用した方法は、高いCO吸収測定値を示し、白金の効率的な使用および潜在的に非常に活性な触媒の形成を示唆している。反対に、表の5〜8に使用した方法は、非常に劣ったCO吸収値(表の1〜4に挙げた材料より100倍も低い)を示している。これは、白金の活用が極めて悪いことを示し、触媒性能が劣ることが予見される。
【0047】
ハニカム構造の被覆浸透を立証するために、表の1、3、5、6および8により調製したハニカムモノリスの試料を、軸方向で断面に切断した。これらの試料を示す図1は、i)本発明の実施態様により調製した被覆(表の1および3)は、被覆の浸透が良く、明るい色はPt分散が良いこと、ii)英国特許第2138694号明細書の開示により調製した被覆(表の5および6)は、Ptの分散が悪い(暗色により示される)こと、およびiii)英国特許第2138694号明細書に記載されているスプレー被覆方法により調製した、表の8は、この方法によるハニカム構造の被覆浸透が著しく悪いことを立証している。
【0048】
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、英国特許第2138694A号明細書の開示と比較して、本発明の各種ウォッシュコート組成物による被覆浸透を立証するための、ハニカムモノリスを通した軸方向断面を示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面積を増大させるウォッシュコート組成物で被覆された固体触媒担体基材であって、
前記組成物が、触媒作用する成分、金属酸化物、および長さと厚さの縦横比が5:1を超える耐火性繊維状または髭状材料を含んでなる、基材。
【請求項2】
前記長さと厚さの縦横比が50:1を超える、請求項1に記載の基材。
【請求項3】
前記触媒作用する成分が、少なくとも一種の金属を含んでなる、請求項1または2に記載の基材。
【請求項4】
前記少なくとも一種の金属が、貴金属、マグネシウム、ニッケル、コバルト、鉄、バナジウム、銅、モリブデン、アルミニウム、ケイ素およびそれらのいずれか2種類以上の混合物からなる群から選択される、請求項3に記載の基材。
【請求項5】
前記金属が、前記ウォッシュコート組成物の総重量に対して30重量%まで存在する、請求項3または4に記載の基材。
【請求項6】
前記ウォッシュコート組成物が化学的に反応性である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基材。
【請求項7】
前記ウォッシュコートが、多孔質またはガス透過性である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基材。
【請求項8】
前記基材が金属製触媒基材である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の基材。
【請求項9】
前記基材が、フロースルーモノリスまたは「静止ミキサー」型構造である、請求項8に記載の基材。
【請求項10】
前記繊維状または髭状材料が、ガンマアルミナ繊維である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の基材。
【請求項11】
前記繊維状材料が、前記ウォッシュコート組成物の1〜15重量%を構成する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の基材。
【請求項12】
前記金属酸化物が、前記ウォッシュコート組成物の35重量%までを構成する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の基材。
【請求項13】
前記ウォッシュコート組成物の厚さが5〜100μmである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の基材。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の基材を形成する方法であって、
触媒成分、金属酸化物および長さと厚さの縦横比が5:1を超える耐火性繊維状または髭状材料を含むウォッシュコート組成物を含んでなるスラリーを基材に塗布し、
前記被覆された基材を乾燥し、及び焼成することを含んでなる、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法に使用するためのウォッシュコート組成物を含んでなるスラリーであって、
前記ウォッシュコート組成物が、触媒作用する成分、金属酸化物および長さと厚さの縦横比が5:1を超える耐火性繊維状または髭状材料を含んでなる、スラリー。

【図1】
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【公表番号】特表2008−512234(P2008−512234A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530772(P2007−530772)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【国際出願番号】PCT/GB2005/003516
【国際公開番号】WO2006/030189
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(590004718)ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー (152)
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】