説明

繊維用液状洗剤組成物と、これを用いて洗浄した繊維製品

【課題】この発明は、洗浄した繊維製品に十分な柔軟性、吸水性、低刺激性をもたらす繊維用液状洗剤組成物を提供するものである。
【解決手段】この発明の繊維用液状洗剤組成物は、界面活性剤とトリメチルグリシンを含有することを特徴とする。この繊維用液状洗剤組成物は、洗浄した繊維製品に十分な柔軟性、吸水性、低刺激性をもたらす。また、洗剤として使用することができるので、すすぎ時に柔軟剤を添加したり、洗浄後の繊維製品に柔軟剤を霧吹き等で吹きかけたりする必要が無いものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、繊維用液状洗剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維用洗剤組成物は、繊維製品(衣類、タオル、シーツなど)を洗濯機等で洗浄する時に、洗濯機内に投入し、使用されている。(例えば特許文献1)
この繊維用洗剤の組成物は、汚れを落とす為の界面活性剤と、洗い終わった繊維製品に柔軟性、吸水性、低刺激性を持たせる為の添加剤からなることが一般的である。
【0003】
従来の添加剤(主に柔軟剤)として、有機界面活性剤(カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤)や高分子化合物(ポリシロキサン系柔軟剤)などが挙げられる。
具体的には、カチオン系界面活性剤として、長鎖アミン塩、第4級アンモニウム塩などがある。両性界面活性剤には、ラウリルピリジニウムラウリルサルフェート、ラウリルピリジニウムラウレートなどがある。ポリシロキサン系柔軟剤には、エポキシ変性オルガノポリシロキサン、アミノ変性オルガノポリシロキサンなどがある。
【0004】
しかしながら、上述の添加剤(例えば、柔軟剤)を用いたとしても、洗浄した繊維製品に十分な柔軟性等、吸水性、低刺激性をもたらすことはできなかった。
【特許文献1】特開2007−169439
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこでこの発明は、洗浄した繊維製品に十分な柔軟性、吸水性、低刺激性をもたらす繊維用液状洗剤組成物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
【0007】
(請求項1記載の発明)
この繊維用液状洗剤組成物は、界面活性剤とトリメチルグリシンを含有することを特徴とする。
トリメチルグリシンを含有させた繊維用液状洗剤組成物は、柔軟性、吸水性、低刺激性について、研究者の予想を遥かに上回る良い結果をもたらした。
【0008】
(請求項2記載の発明)
この繊維用液状洗剤組成物は、請求項1記載の発明に関し、界面活性剤がアニオン界面活性剤であることを特徴とする。
界面活性剤は、アニオン界面活性剤とするのが好ましい。
(請求項3記載の発明)
この繊維用液状洗剤組成物は、請求項2記載の発明に関し、アニオン界面活性剤が、ヤシ油脂肪酸カリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、パーム核油脂肪酸カリウムのいずれか1種または複数種を混合したものであることを特徴とする。
アニオン界面活性剤は、上述したような、植物成分由来のものを使用するのが好ましい。
【0009】
(請求項4記載の発明)
この繊維用液状洗剤組成物は、請求項1又は2記載の発明に関し、トリメチルグリシンの含有量が0.1〜20wt%であることを特徴とする。
トリメチルグリシンの含有量は、
(トリメチルグリシン重量)/(繊維用液状洗剤の総重量)=0.001〜0.2
とするのが好ましい。
(請求項5記載の発明)
この繊維製品は、請求項1乃至4のいずれかに記載の繊維用液状洗剤組成物を用いて洗浄されてなることを特徴とする。
繊維製品は、衣類、タオル、シーツ、などを例示することができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
【0011】
この繊維用液状洗剤組成物は、洗浄した繊維製品に十分な柔軟性、吸水性、低刺激性をもたらす。また、洗剤として使用することができるので、すすぎ時に柔軟剤を添加したり、洗浄後の繊維製品に柔軟剤を霧吹き等で吹きかけたりする必要が無いものである。
さらに、液状洗剤であることから、トリメチルグリシンがエステル化したものではなく、加水分解による実質的な効能変化が発生する恐れもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、これらの発明を実施するための最良の形態として実施例について詳しく説明する。
【実施例】
【0013】
以下の1〜3に、繊維用液状洗剤組成物の概要を記載し、4〜6に実験内容を記載する。
【0014】
(1.繊維用液状洗剤について)
この繊維用液状洗剤は、洗浄成分の界面活性剤と、柔軟化成分のトリメチルグリシンとを組成物として含有している。
繊維用液状洗剤の状態としては、液体状、ジェル状のいずれであってもよい。
上述の組成物以外にも、必要に応じて、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤、アルカリ化剤、ポリシロキサン系柔軟剤、工程剤、ビルダー、溶剤、水軟化剤、金属封鎖剤、再付着防止剤、泡調整剤、香料、防腐剤、酵素、安定化剤、pH調整剤、着色剤等を液状洗剤に配合することができる。
【0015】
この繊維用液状洗剤は、繊維製品(衣服、下着、タオル、シーツ、など)の洗浄をすると共に、洗浄した繊維製品を柔軟性、吸水性、低皮膚刺激性のものとすることができる。
そして、洗浄した繊維製品の柔軟性、吸水性、低皮膚刺激性は、研究者の予想を遥かに上回る良い結果であった。
【0016】
(2.界面活性剤について)
洗浄成分の界面活性剤には、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤を用いることができる。ノニオン界面活性剤として、アミンオキサイド類、モノグリセライド類、ソルビタン脂肪酸エステル類、アルキルサッカライド、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミドなどを使用することができる。両性界面活性剤として脂肪酸アミドプロピルベタイン、酢酸ベタイン類、アミドスルホベタイン類、イミダゾリニウムベタイン類などを使用することができる。アニオン界面活性剤として、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸トリエタノール、アルファオレフィンスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アミノ酸系アニオン界面活性剤などを使用することができる。
界面活性剤は、アニオン界面活性剤を用いるのが好ましく、前述したアニオン界面活性剤の中でも、脂肪酸カリウムを用いると、洗浄性、溶解性、低皮膚刺激性が好適なものとなる。
【0017】
脂肪酸カリウムの中でも特に、ヤシ油脂肪酸カリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、パーム核油脂肪酸カリウムは、植物成分由来のものであり、皮膚への刺激が特に低いことから、好ましい。
【0018】
(3.トリメチルグリシンについて)
柔軟化成分のトリメチルグリシンは、以下に示すものである。
化学的にトリメチルグリシンは、グリシンのアミノ基がトリメチル化され、分子内塩を形成している両イオン性の成分である。
一般的にトリメチルグリシンは、生体の代謝中間物とされており、メチル基の供与体としてメチオニンなどの合成過程に関与していると考えられている。したがって、人体に安全な天然物質である。
【0019】
例えば、トリメチルグリシンは、砂糖大根、麦芽、キノコ類、果実やエビ、カニ、タコ、イカなど広い範囲の動植物に含まれている。また、他にグリシンベタイン、ベタインという名称で呼ばれている。
本発明においては、市販されているトリメチルグリシンとして、味の素株式会社の商品名「アクアデュウ」、旭化成ケミカルズ株式会社の商品名「アミノコート」を使用した。前述の「アクアデュウ」、「アミノコート」はトリメチルグリシンの一例であって、本願発明はこれらの製品に限定されるものではない。
【0020】
トリメチルグリシンの配合量は、
(トリメチルグリシン重量)/(液状洗剤の総重量)=0.001〜0.2
すなわち、液状洗剤のトリメチルグリシン含有量が0.1〜20wt%
とするのが好ましい。
【0021】
[試験(本願発明の効果について)]
上述の本願発明の効果を調べる為、以下に示す実施例1〜8、比較例a〜dを試料とし、柔軟性、吸水性、皮膚刺激性に関する試験を行った。
【0022】
(4.実験試料について)
〔実施例1〕
ヤシ油脂肪酸カリウム20wt%、ヤシ油脂肪酸アルカノールアミド10wt%、アルカリ剤(炭酸カリウム)3wt%、キレート剤(エデト酸)1wt%、ポリエチレングリコール3wt%、プロピレングリコール2wt%、トリメチルグリシン0.05wt%、水と香料60.95wt%を混合し、繊維用液状洗剤を得た。
【0023】
〔実施例2〕
ヤシ油脂肪酸カリウム20wt%、ヤシ油脂肪酸アルカノールアミド10wt%、アルカリ剤(炭酸カリウム)3wt%、キレート剤(エデト酸)1wt%、ポリエチレングリコール3wt%、プロピレングリコール2wt%、トリメチルグリシン0.1wt%、水と香料60.9wt%を混合し、繊維用液状洗剤を得た。
【0024】
〔実施例3〕
ヤシ油脂肪酸カリウム20wt%、ヤシ油脂肪酸アルカノールアミド10wt%、アルカリ剤(炭酸カリウム)3wt%、キレート剤(エデト酸)1wt%、ポリエチレングリコール3wt%、プロピレングリコール2wt%、トリメチルグリシン1wt%、水と香料60wt%を混合し、繊維用液状洗剤を得た。
【0025】
〔実施例4〕
ヤシ油脂肪酸カリウム10wt%、ヤシ油脂肪酸アルカノールアミド15wt%、アルカリ剤(炭酸カリウム)3wt%、キレート剤(エデト酸)1wt%、ポリエチレングリコール3wt%、プロピレングリコール2wt%、トリメチルグリシン5wt%、水と香料61wt%を混合し、繊維用液状洗剤を得た。
【0026】
〔実施例5〕
ヤシ油脂肪酸カリウム20wt%、ヤシ油脂肪酸アルカノールアミド10wt%、アルカリ剤(炭酸カリウム)3wt%、キレート剤(エデト酸)1wt%、ポリエチレングリコール3wt%、プロピレングリコール2wt%、トリメチルグリシン5wt%、水と香料56wt%を混合し、繊維用液状洗剤を得た。
【0027】
〔実施例6〕
ヤシ油脂肪酸カリウム25wt%、ヤシ油脂肪酸アルカノールアミド5wt%、アルカリ剤(炭酸カリウム)3wt%、キレート剤(エデト酸)1wt%、ポリエチレングリコール3wt%、プロピレングリコール2wt%、トリメチルグリシン5wt%、水と香料56wt%を混合し、繊維用液状洗剤を得た。
【0028】
〔実施例7〕
ヤシ油脂肪酸カリウム20wt%、ヤシ油脂肪酸アルカノールアミド10wt%、アルカリ剤(炭酸カリウム)3wt%、キレート剤(エデト酸)1wt%、ポリエチレングリコール3wt%、プロピレングリコール2wt%、トリメチルグリシン10wt%、水と香料51wt%を混合し、繊維用液状洗剤を得た。
【0029】
〔実施例8〕
ヤシ油脂肪酸カリウム20wt%、ヤシ油脂肪酸アルカノールアミド10wt%、アルカリ剤(炭酸カリウム)3wt%、キレート剤(エデト酸)1wt%、ポリエチレングリコール3wt%、プロピレングリコール2wt%、トリメチルグリシン20wt%、水と香料41wt%を混合し、繊維用液状洗剤を得た。
【0030】
〔比較例a〕
ヤシ油脂肪酸カリウム20wt%、ヤシ油脂肪酸アルカノールアミド10wt%、アルカリ剤(炭酸カリウム)3wt%、キレート剤(エデト酸)1wt%、ポリエチレングリコール3wt%、プロピレングリコール2wt%、水と香料61wt%を混合し、繊維用液状洗剤を得た。
【0031】
〔比較例b〕
ヤシ油脂肪酸カリウム20wt%、ヤシ油脂肪酸アルカノールアミド10wt%、アルカリ剤(炭酸カリウム)3wt%、キレート剤(エデト酸)1wt%、ポリエチレングリコール3wt%、プロピレングリコール2wt%、アルキルトリメチルアンモニウム塩5wt%、水と香料56wt%を混合し、繊維用液状洗剤を得た。
【0032】
〔比較例c〕
ヤシ油脂肪酸カリウム20wt%、ヤシ油脂肪酸アルカノールアミド10wt%、アルカリ剤(炭酸カリウム)3wt%、キレート剤(エデト酸)1wt%、ポリエチレングリコール3wt%、プロピレングリコール2wt%、ラウリルピリジニウムラウリルサルフェート5wt%、水と香料56wt%を混合し、繊維用液状洗剤を得た。
【0033】
〔比較例d〕
ヤシ油脂肪酸カリウム20wt%、ヤシ油脂肪酸アルカノールアミド10wt%、アルカリ剤(炭酸カリウム)3wt%、キレート剤(エデト酸)1wt%、ポリエチレングリコール3wt%、プロピレングリコール2wt%、ポリシロキサン5wt%、水と香料56wt%を混合し、繊維用液状洗剤を得た。
【0034】
(5.評価方法について)
〔洗浄方法〕
上述の、各液状洗剤(実施例1〜8、比較例a〜d)をそれぞれ用いて、JIS K3362:1998記載の「衣類用合成洗剤の洗浄力評価方法」に準ずる洗浄を行った。
【0035】
〔柔軟性試験〕
洗浄した繊維を手で触って柔軟性を官能評価した。柔軟性の判定は、下記の基準で評価し、表1に記載した。
◎:とても柔らかく非常に良好
○:柔らかさが良好
×:硬さが残る
【0036】
〔吸水性試験〕
洗浄した繊維に水を数滴落とし、吸水性の評価をした。吸水性の判定は、下記の基準で評価した。
◎:吸水性が非常に良好
○:吸水性がやや良好
×:なかなか水を吸わない、又は全く吸わない
【0037】
〔皮膚刺激性試験〕
液状洗剤(実施例1〜8、比較例a〜d)を水で100倍に希釈し、濃度が1%となったそれぞれの液状洗剤水溶液を含浸させたろ紙を作成した。
前記ろ紙を、被験者(健康な成人25人)の上背に貼付し、24時間後の皮膚の様子を目視で観察して評価した。
◎:炎症が少しでも見られたものが0〜1人
○:炎症が少しでも見られたものが2〜4人
×:炎症が少しでも見られたものが5人以上
【0038】
(6.試験結果について)
前述の試験結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
表1から明らかであるように、本発明の繊維用液状洗剤組成物を用いて洗浄した繊維製品は、柔軟性、吸水性、低皮膚刺激性(皮膚への刺激が少ない)であることがわかる。
【0041】
〔実施例1の試験結果〕
トリメチルグリシンの含有量を0.05wt%とした実施例1の繊維用液状洗剤組成物は、「柔らかさが良好、吸水性がやや良好、炎症が少しでも見られたものが2〜4人」という結果であった。
【0042】
〔実施例2〜8の試験結果〕
トリメチルグリシンの含有量を0.1〜20wt%とした実施例2〜8の繊維用液状洗剤組成物は、「とても柔らかく非常に良好、吸水性が非常に良好、炎症が少しでも見られたものが0〜1人」という結果であった。
【0043】
〔比較例a〜dの試験結果〕
トリメチルグリシンを含有しない比較例a〜dの繊維用液状洗剤組成物は、「硬さが残る、なかなか水を吸わない、又は全く吸わない、炎症が少しでも見られたものが5人以上」のいずれかかの問題点を有する結果であった。
【0044】
〔総合評価〕
上述の結果より、トリメチルグリシンの含有量が0.1〜20wt%であると好ましい。
全体の配合として、ヤシ油脂肪酸カリウム10〜25wt%、ヤシ油脂肪酸アルカノールアミド5〜15wt%、アルカリ剤(炭酸カリウム)3wt%、キレート剤(エデト酸)1wt%、ポリエチレングリコール3wt%、プロピレングリコール2wt%、トリメチルグリシン0.1〜20wt%、水と香料を残部、とする繊維用液状洗剤が好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤とトリメチルグリシンを含有することを特徴とする繊維用液状洗剤組成物。
【請求項2】
界面活性剤がアニオン界面活性剤であることを特徴とする請求項1記載の繊維用液状洗剤組成物。
【請求項3】
アニオン界面活性剤がヤシ油脂肪酸カリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、パーム核油脂肪酸カリウムのいずれか1種または複数種を混合したものであることを特徴とする請求項2記載の繊維用液状洗剤組成物
【請求項4】
トリメチルグリシンの含有量が0.1〜20wt%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の繊維用液状洗剤組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の繊維用液状洗剤組成物を用いて洗浄されてなることを特徴とする繊維製品。

【公開番号】特開2009−155482(P2009−155482A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335530(P2007−335530)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(592134114)丹平製薬株式会社 (4)
【Fターム(参考)】