説明

繊維補強樹脂の成形方法及びそれに用いる成形用型

【課題】繊維補強樹脂中の気泡を確実に除去することを可能にする繊維補強樹脂の成形方法及びそれに用いる成形用型を提供する。
【解決手段】予め樹脂を含浸させて多層で積み重なる繊維織布を型12の型穴14に置く。そのうちの型12は型穴14と外部に繋がる少なくとも一つの穿孔22、32を有する。続いて型12を加熱すると同時に穿孔22、32から型穴14中の気体18を抜き出せば、予め樹脂を含浸させた繊維織布の間の気泡18を確実に抜き出すことが可能なだけでなく、過剰な樹脂まで抜き出すことが可能である。これにより製品の機械的強度をより向上させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維補助樹脂の成形方法及びそれに用いる成形用型に関し、詳しくは繊維補助樹脂中の気泡を確実に除去し、製品の機械的強度を改善することを可能にする繊維補助樹脂の成形方法及びそれに用いる成形用型に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示すように、従来の繊維補助樹脂の成形方法は次の通りである。まず数多くの予め樹脂を含浸させた繊維織布が重なり合うことにより管状体1を形成し、そののち管状体1を型2の型穴3に入れる。そのうち型2は上型4と下型5とから構成される。続いて上型と下型との間に型穴3を囲む環状の樹脂溝6を形成し、そののち上下の二つの加熱板7により型2を加熱すると同時に管状体1内の気嚢91中に高圧空気を注入し、管状体1を膨らませて型穴3の周壁に付着させ、そののち暫く置けば管状体1を硬化成形することが可能である。
【0003】
なお現在の技術は多層の繊維織布を重なり合わせるとき、織布の間の気泡8の発生を完全に抑制することができない。気泡は製品の機械的強度に影響を与えるため、従来の方法は型2を加熱する際に型2の外部から空気を抜き出すことにより樹脂の熔解に伴い繊維織布の間の気泡8を逸出させる。しかし、この方法の効果は上下の型間の隙間9のあたりに著しいが、その以外の部分の気泡は逸出せず残留する現象がある。また樹脂溝6において空気を抜き出す場合、効果は隙間9周辺のみにとどまり、成形後の製品中の気泡の量(即ち構造上の欠陥)は依然多いため、構造全体の機械的強度は深刻な影響を受けてしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主な目的は繊維補強樹脂中の気泡を確実に除去することを可能にする繊維補強樹脂の成形方法及びそれに用いる成形用型を提供することである。
本発明のもう一つ目的は機械的強度を改善することを可能にする繊維補強樹脂の成形方法及びそれに用いる成形用型を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するために、本発明による繊維補強樹脂の成形方法のステップは次の通りである。まず、予め樹脂を含浸させた多層に積み重なる繊維織布を型の型穴に置く。そのうちの型は型穴と外部に繋がる少なくとも一つの穿孔を有する。続いて型を加熱すると同時に穿孔から型穴中の気体を抜き出せば、予め樹脂を含浸させた繊維織布の間の気泡を確実に抜き出すことが可能なだけでなく、過剰な樹脂まで抜き出すことが可能である。これにより製品の機械的強度をより向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施例を図面に基づき説明する。
(第1実施例)
図2及び図3に示すように、本発明の第1実施例による繊維補強樹脂の成形方法はまず予め樹脂を含浸させた多層の繊維織布を重なり合わせ、そののちそれを巻き取って管体10を形成し、続いて管体10を型12の型穴14に置く。繊維補強樹脂の繊維は炭素繊維、ガラス繊維、ホウ素繊維、ケブラー(Kevlar)繊維などを採用することが可能である。また樹脂は熱硬性樹脂または熱塑性樹脂である。型12は上型20と下型30とから構成され、かつ上型と下型との間に型穴14を囲む環状溝16を有する。
【0007】
上型20は型穴14と外部に繋がる数多くの穿孔22とを有し、かつ上型20の頂面23は凹溝24と、凹溝24を囲む環状溝25と、凹溝24から上型20の側面27まで延伸するように形成される収容溝26とを有する。穿孔22は凹溝24中に位置付けられ、環状溝25はシリコンまたはゴムなどの軟質材料から構成される密封材28の充填に用いられる。収容溝26は内部にバルブ29を有し、バルブ29はシリコンまたはゴムなどの軟質材料から構成されるカバー291を有するため、バルブ29は比較的好ましい気密性を有する。
下型30の構造は上型20の構造とほぼ同じように多数の穿孔32、底面33に位置する凹溝34、環状溝35、収容溝36、密封材38及びバルブ39を有し、バルブ39はカバー391を有する。
【0008】
続いて上型20の頂面23と下型30の底面33とに二つの加熱板40を取り付けることにより型12を加熱し、一方は密封材28、38とバルブ29、39のカバー291、391とに二つの加熱板40を押し当てることにより上型20及び下型30の凹溝24、34を気密状態に形成する。続いて抽気機(図中未表示)によりバルブ29、39、凹溝24、34及び穿孔22、32から型穴14中の気体を抜き出すと同時にバルブ44から管体10内部の気嚢42に高圧気体を注入することにより管体10を膨らませて型穴14の周壁に付着させる。型12を加熱し、樹脂を溶かせば気泡18を型穴14まで拡散させ、そして穿孔22、32から抜き出すことが可能である。
【0009】
また本実施例では、型12周囲と環状溝16とにおいて抽気を行うことにより繊維織布中の気泡18を上型20及び下型30間の隙間から抜き出すことが可能である。従って、本実施例による成形方法で製作された製品は内部が無気泡状態になるか、内部に残留する気泡がごく僅かになり、構造強度が極めて良好である。また過剰な樹脂は上型20及び下型30の間の隙間から環状溝16の外部に抜き出すことも、穿孔22、32から凹溝24、34中まで抜き出し、累積することも可能である。これにより成形後の製品の壁の厚さをより均質にし、各部位の機械的強度をより一致させることが可能となる。
本実施例による成形方法は様々な複合材料製品、特に飛行機部品、自動車部品、運動器材部品、スーツケース部品、コンピューター部品、自転車部品などの大面積部品に適用することが可能であるため、機械的強度を改善することを可能にするだけでなく、比較的少ない材料から高強度、軽量の製品を製作することを可能にする。
【0010】
また本実施例では、穿孔22、32から抜き出された樹脂を凹溝24、34中に累積し、製造工程が完了した時にまとめて洗浄することが可能である。しかし、実際に操作する場合、樹脂が加熱板40に付着してしまうような事態はよくある。
(第2実施例)
加熱板上の樹脂が清浄しにくいため、図4に示すように本発明の第2実施例による成形方法において使用される型50に取り替えることが可能である。型50の構造は前述の第1実施例とほぼ同じであり、上型52の頂面53と下型54の底面55とにおいて若干のボルト561により蓋板56を装着され、蓋板56は上型52及び下型54の凹溝57、58と図示しない収容溝とに被さるため、凹溝57、58は別々に図示しないバルブを介して外部に繋がる。また上型52及び下型54の環状溝63、64は中に密封材65、66を有し、密封材65、66は蓋板56に貼り付けられる。これにより、図示しない抽気機で過剰な樹脂とともに型穴68中の気体をバルブから抜き出し、二つの加熱板70で蓋板65を介して型60を加熱することが可能である。すると、脂が加熱板70に付着してしまうような事態を防止することを可能にするだけでなく、蓋板56の取り外しと洗浄が簡単になる。従って、本実施例が採用した型50は樹脂の清浄に便利な点を有する。
【0011】
また前述の二つの実施例により提示されたのはいわゆる内圧法である。また本発明の精神において外圧法に適用することが可能である。図5に示すのは本発明の第3実施例による成形方法において使用される型80である。型80は上型81と下型82を有し、上型81は二つの穿孔86を有する。かつ上型及び下型の間は型穴83を有し、多層の予め樹脂を含浸させた繊維織布は重なり合って片体84を形成し、そののち型穴83中に置かれる。続いて型80は二つの加熱板85から加熱されると同時に内部の気体が穿孔86から抜き出される。このため、内圧法のように管体内部の気嚢に高圧気体を注入する必要はない。また本実施例では、片体84は厚さが大きくないため、上型81にのみ穿孔86を配置すれば片体84中の気泡を確実に抜き出すことが可能である。また片体の厚さが比較的大きい場合、下型86に穿孔を配置することが可能である。
【0012】
ここで注目すべきなのは、前述の外圧法と内圧法とは型に同時に使用することが可能なことである。例えばスティックを製作する場合、グリップを内圧法により形成し、底部のブレードは外圧法により成形する。この型は本発明の概念を応用し、穿孔から気体を抜き出すことが可能である。
また本発明の精神に基づき、型に少なくとも一つの穿孔を設け、かつ型を加熱する時に穿孔から型穴中の気体を抜き出すようでさえあれば本発明の請求範囲には含まれると考えられる。ま本発明の請求範囲を逸脱しない限り、型を何等分するか、穿孔の数または位置、また凹溝、環状溝または収容溝を設けるか否か、型の加熱方法などに対し、変化を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来の繊維補強樹脂の成形方法を示す模式図である。
【図2】本発明の第1実施例による繊維補強樹脂の成形用型を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1実施例による繊維補強樹脂の成形方法を示す模式図である。
【図4】本発明の第2実施例による繊維補強樹脂の成形方法を示す模式図である。
【図5】本発明の第3実施例による繊維補強樹脂の成形方法を示す模式図である。
【符号の説明】
【0014】
10:管体、12:型、14:型穴、16:環状溝、18:気嚢、20:上型、22:穿孔、23:頂面、24:凹溝、25:環状溝、26:収容溝、27:側面、28:密封材、29:バルブ、291:カバー、30:下型、32:穿孔、33:底面、34:凹溝、35:環状溝、36:収容溝、38:密封材、39:バルブ、391:カバー、40:加熱板、42:気嚢、44:バルブ、50:型、52:上型、53:頂面、54:下型、55:底面、56:蓋板、561:ボルト、57:凹溝、58:凹溝、63:環状溝、64:環状溝、65:密封材、66:密封材、68:型穴、70:加熱板、80:型、81:上型、82:下型、83:型穴、84:片体、85:加熱板、86:穿孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め樹脂を含浸させて多層で積み重なる繊維織布を、型穴と外部に繋がる少なくとも一つの穿孔とを有する型の型穴に置くステップ(a)と、
型を加熱すると同時に穿孔から型穴中の気体を抜き出すステップ(b)と、
を含むことを特徴とする繊維補強樹脂の成形方法及びそれに用いる成形用型。
【請求項2】
型は表面に凹溝を有し、穿孔は凹溝中に位置付けられることを特徴とする請求項1に記載の繊維補強樹脂の成形方法及びそれに用いる成形用型。
【請求項3】
型は表面において密封材を入れるために凹溝を囲む環状溝を有することを特徴とする請求項2に記載の繊維補強樹脂の成形方法及びそれに用いる成形用型。
【請求項4】
型はバルブを配置するために凹溝から延伸される収容溝を有することを特徴とする請求項2に記載の繊維補強樹脂の成形方法及びそれに用いる成形用型。
【請求項5】
型は表面において密封材を入れるために凹溝を囲む環状溝を有することを特徴とする請求項4に記載の繊維補強樹脂の成形方法及びそれに用いる成形用型。
【請求項6】
蓋板は凹溝と収容溝とに被さるために型の表面に形成されるため、凹溝はバルブのみにより外部に繋がることを特徴とする請求項4に記載の繊維補強樹脂の成形方法及びそれに用いる成形用型。
【請求項7】
型は表面において密封材を入れるために凹溝を囲む環状溝を有し、密封材は蓋板に貼り付けられることを特徴とする請求項6に記載の繊維補強樹脂の成形方法及びそれに用いる成形用型。
【請求項8】
ステップ(a)において、予め樹脂を含浸させた繊維織布を巻き取って管体を形成し、ステップ(b)において管体内部に高圧気体を注入することを特徴とする請求項1に記載の繊維補強樹脂の成形方法及びそれに用いる成形用型。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−28958(P2009−28958A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−193532(P2007−193532)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(501043810)源民安企業股▲分▼有限公司 (2)
【Fターム(参考)】