説明

繊維製品に対するアレルゲン低減加工剤

【課題】繊維製品に、白化及びチョークマークを抑制しながら、アレルゲン低減効果を付与することができるアレルゲン低減加工剤を提供する。
【解決手段】アレルゲン抑制効果のある薬剤として、ジルコニウム系化合物とスルホニル基を有する芳香族化合物を使用し、これらを併含する水性分散体を、繊維製品加工用のアレルゲン低減加工剤とする。ジルコニウム系化合物とスルホニル基を有する芳香族化合物の併用割合が、重量比率で1〜6:0.05〜1.5であるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白化およびチョークマーク、キワつき等を抑制しながら、布帛などの繊維製品に、ダニやスギ、ヒノキ、ブタクサなどの花粉によるアレルゲン原因物質を不活性化する効果を付与するアレルゲン低減加工剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ダニやスギ、ヒノキなどの花粉によるアレルゲン原因物質を不活性化する効果を有する加工剤として、(1)カテキン(エビ、茶の抽出物)、オリーブ抽出物、コーヒー豆抽出物、ハーブ抽出物などの天然成分の抗アレルゲン剤、(2)カルシウム系、アルミニウム系、亜鉛系、ジルコニウム系、ランタン系などの無機系の抗アレルゲン剤、(3)ポリフェノール系、アミノ酸系、フタロシアニン系などの有機系の抗アレルゲン剤が知られている。
しかし、これらの抗アレルゲン剤は、いずれもそのまま布帛表面に処理した場合、白化およびチョークマーク、キワつきを発生することがあるので、濃色に染色された布帛に適用することは困難であった。
そこで、このような問題を解決するために、アクリル系樹脂やウレタン系樹脂等を使用して、薬剤を樹脂固定することが考えられるが、樹脂の乳化分散剤の量や種類によって、難燃性が阻害されたり、逆に、白化およびチョークマーク、キワつきが発生しやすく成るなどの問題を生ずることがある。
【0003】
例えば、特許文献1及び特許文献2などには、花粉によるアレルギーの発生を抑制するための繊維加工剤として、酸化ジルコニウムを使用することが開示されているが、酸化ジルコニウムでは、ダニアレルギーに対する十分な抗アレルギー性を得にくく、また、加工布帛に対して白化やキワつきなどの問題を生じやすいものであった。更に、ダニや花粉などのアレルゲン物質を吸着補集するための抗アレルゲン剤として、特許文献3には、フェノール性水酸基を有する非水溶性高分子、ポリ−4−ビニルフェノールが開示されているが、この使用では熱及び光による変色などに問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−13543号公報
【特許文献2】特開2006−57212号公報
【特許文献3】特開2004−290922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、このような問題点を改良することであり、布帛などの繊維製品に、白化およびチョークマーク、キワつきを抑制しながら、ダニやスギ、ヒノキ、ブタクサなどの花粉によるアレルゲン原因物質を十分に不活性化する効果を付与することができる加工剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、アレルゲン抑制効果のあるジルコニウム系化合物とスルホニル基を有する芳香族化合物を併用することで、所望の目的を達成することを可能としたものであり、本発明のアレルゲン低減加工剤は、アレルゲン抑制効果のあるジルコニウム系化合物とスルホニル基を有する芳香族化合物を併含する水性分散体であることを特徴とする。
【0007】
本発明において、ジルコニウム系化合物としては、一般にアレルゲン抑制剤として公知のものがいずれも使用できる。例えば、酸化ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、塩酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム等がいずれも使用できるが、酸化ジルコニウム又はリン酸ジルコニウムの使用が好ましく、特にリン酸ジルコニウムの使用が好適である。
【0008】
また、スルホニル基を有する芳香族化合物としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリルスルホン、ポリフェニルスルホン、芳香族スルホニウム塩を含む重合体などがいずれも使用できる。
【0009】
なお、前記ジルコニウム系化合物と前記スルホニル基を有する芳香族化合物はいずれも、粒状であるのが好ましく、例えば平均粒子径0.3〜2.0μmの粒状物を、水性ペースト又は水性分散液として、調製するのがよい。なお、平均粒子径が0.3μm未満では、再凝縮し、安定したペースト又は分散液に調製し難く、2.0μmを超えると、白化を効果的に防止できる加工剤を得難いものとなる。上記平均粒子径は、散乱式粒子径分布測定装置(例えば、散乱式粒子径分布測定装置LA-950[堀場製作所製])を用いて測定することができる。
【0010】
水性ペーストや水性分散液に調製される際に、繊維製品に付着され易い様に樹脂(バインダー)を添加混合するのが好ましく、この樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂など通常の加工用の樹脂がいずれも使用できるが、ポリエステル系繊維等の熱溶融性のある合成繊維製品の加工においては、適当な難燃性を保つために、ポリエステル系樹脂を使用するのが好ましく、特に水溶性または水分散性のポリエステル系樹脂、例えば分子中にポリエチレングリコール、カルボキシル基、カルボニル基、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩等の親水性成分を含有するポリエステル樹脂を使用するのが好ましい。なお、加工性の点から、ポリエステル系樹脂の分散剤として、n−プロピルセロソルブ(沸点:150℃)、i−プロピルセロソルブ(沸点:142℃)、t−ブチルセロソルブ(沸点:151℃)を使用するのが好ましい。ただし、n−ブチルセロソルブ(沸点:171℃)をn−プロピルアルコール(沸点:97℃)と併用してもよい。なお、ポリエステル系樹脂の分散剤は、ポリエステル樹脂を1とした場合、重量比率で0.1〜1.5、より好ましくは0.2〜1.2となる程度の量で用いることが好ましい。
【0011】
アレルゲン抑制効果のあるジルコニウム系化合物とスルホニル基を有する芳香族化合物の併用割合は、重量比率で1〜6:0.05〜1.5程度であるのが好ましい。なお、本発明の加工剤は、繊維製品にパディングまたはディッピング、コーティング等の方法で適用し、加熱乾燥すればよいが、ディッピング処理する場合の加工剤(水性分散液)における上記ジルコニウム系化合物と芳香族化合物の合計割合は0.4〜5.5重量%であるのが好ましく、1〜5重量%であるのがより好ましく、特に1.5〜4重量%程度であるのが好ましい。また、加工剤中の樹脂量は0.1〜3重量%程度であるのが好ましい。なお、この濃度は実際に処理を行う際の濃度(最終濃度)である。本発明に係る加工剤は、濃縮状態のものを製造しておき、使用する際、上記濃度に希釈して用いてもよい。例えば、上記濃度の2〜70倍程度の濃縮液を製造しておき、使用時に水で2〜70倍程度に希釈して使用することができる。
【0012】
本発明の加工剤は、例えば、布帛に、ディッピング処理し、170℃以下、特に150℃以下で乾燥することにより、白化、キワつきなどが効果的に防止でき、しかも抗ダニアレルゲン性及び抗花粉アレルゲン性共に非常に優れた効果を付与できる。
【0013】
かかる加工布帛における、ジルコニウム系化合物とスルホニル基を有する芳香族化合物の付着量は、1〜6g/m:0.05〜1.5g/m程度の割合であるのが好ましい。
なお、樹脂付着量は0.3〜3g/m、より好ましくは1〜3g/m程度であるのがよい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、実施例を掲げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は実施例に限られるものではない。
【0015】
実施例における性能評価における測定法は下記の通りである。
<アレルゲン不活性率測定法>
A法:抗アレルゲン剤の性能評価法(ダニ又はスギ)
ダニ又はスギ花粉アレルゲン懸濁液1mlに評価試料(10%水分散品)150μlを滴下し、1時間経過後、pHを中性に調整した液を評価液とし、この液中のダニ又はスギ花粉アレルゲン量をELISA法により測定し、蒸留水+アレルゲン懸濁液のアレルゲン量と比較することでアレルゲン低減率を求めた。
なお、記載するダニアレルゲン量とは、Derf II 量から換算した総タンパク量を示す。スギ花粉アレルゲン量としてはCryj I 量を示す。
*:(懸濁液+蒸留水のアレルゲン量−評価液のアレルゲン量)/(懸濁液+蒸留水のアレルゲン量)×100
*:初期アレルゲン量:ダニ約370ng、スギ花粉約10ng
【0016】
B法:抗アレルゲン加工品の不活性率測定方法(ブタクサ)
試験管に5cm×5cmの評価用サンプルを投入し、ブタクサアレルゲン70ng/mlに調整した溶液を、1.0ml滴下し、37℃温度条件下で24時間養生させた。その液中のアレルゲン量をELISA法により測定し、投入したアレルゲンに対し、養生後に測定したアレルゲン量から低減したアレルゲン量を算出し、これを不活性率として算出する。
【0017】
C法:抗アレルゲン加工品の不活性率測定方法(ダニまたはスギ)
試験管に5cm×2.5cmの評価用サンプルを投入し、ダニアレルゲン47ng/ml又はスギアレルゲン6.7ng/mlに調整した溶液を、2.25ml滴下し、17時間養生させた。その液中のアレルゲン量をELISA法により測定し、投入したアレルゲンに対し、養生後に測定したアレルゲン量から低減したアレルゲン量を算出し、これを不活性率として算出する。
なお、ダニアレルゲン量とは、Derf II 量から換算した総タンパク量、スギ花粉アレルゲン量としてはCryj I 量を示す。
【0018】
D法:抗アレルゲン加工品の不活性率測定方法(ヒノキ)
ポリ容器に5cm×4cmの評価用サンプルとイオン交換水を入れ、27℃で2時間振とう洗浄後、50℃で一晩乾燥させた後、試験管に評価用サンプルを投入し、ヒノキ花粉10mg/mlに調整した溶液を1.0ml滴下し、1時間接触後、遠心分離により遠沈し、上澄み液をELISA法により測定し、投入したアレルゲンに対し、養生後に測定したアレルゲン量から低減したアレルゲン量を算出し、これを不活性率として算出する。
なお、ヒノキは花粉を使用し、別途花粉に含まれるアレルゲン量の測定結果を利用するものとする。
【0019】
難燃性能
燃焼試験(JIS D1201,ISO 3795)により、燃焼速度80mm/分以下を良好と判断した。
【0020】
キワつき試験
(I)加工布表面に精製水5mlを滴下後、24時間自然乾燥後に、キワつき(色変化)の有無を級判定した。
(II)加工布表面に95℃の温水5mlを滴下後、初期と3分後に、キワつき(色変化)の有無を級判定した。
判定 内容
・5級 全く色の変化が無い
・4級 ほとんど色の変化がわからない
・3級 やや色に変化がみられる
・2級 容易に色の変化がみられる
・1級 色の変化が著しい
【0021】
白化確認試験
黒色に染色したポリエステル布帛(ブランク)を用い、各レサイプで抗アレルゲン加工を施したサンプルについて、ブランクとの色の変化(白さ)を級判定した。
判定 内容
・5級 全く色の変化が無い
・4級 ほとんど色の変化がわからない
・3級 やや色に変化がみられる
・2級 容易に色の変化がみられる
・1級 色の変化が著しい
【0022】
チョークマーク確認試験
黒色に染色したポリエステル布帛(ブランク)を用い、各レサイプで抗アレルゲン加工を施したサンプルに対し、表面を爪で軽くこすり、傷による白化の程度を確認し、級判定した。
判定 内容
・5級 全く色の変化が無い
・4級 ほとんど色の変化がわからない
・3級 やや色に変化がみられる
・2級 容易に色の変化がみられる
・1級 色の変化が著しい
【0023】
耐熱性能
80℃×200時間処理後の変色を確認
【0024】
耐光性能
キセノン80MJの評価
【0025】
[実施例1]抗アレルゲン剤の選定
(1)表1の各薬剤1.5gを水と混合し、水分散体1000mlを作液し、薬剤が水に完全に溶解したものは耐水溶解性×とした。
(2)耐水溶解性が△(水に溶け難い)または○(水に溶けない)である薬剤の水分散体にA3サイズのポリエステルニット(ポリエステル100%、目付360g/m)を浸漬し、次いで、ロール間圧力3.0kgf/cmのマングルで絞り(絞り率65%)、150℃×3分間の乾燥を行った。
また、耐水溶解性が×である薬剤のいくつかについても、同じ処理を行った。
(3)このようにして得た加工布帛について、ダニアレルゲン量とスギ花粉アレルゲン量の測定[抗アレルゲン剤の性能評価法(A法)による]、耐熱性能及び耐光性能の測定をした。
これらの試験結果を、表1に示す。
なお、各実施例において使用したスルホニル基を有する芳香族化合物は、芳香族スルホニウム塩を含む重合体(積水化学工業社製のSSPA−WN)である。
【0026】
【表1】

【0027】
[実施例2]
表2に示すように(表中の数値は重量%を示す)、α−リン酸ジルコニウムとスルホニル基を有する芳香族化合物を併用し、樹脂の種類及び量を変化させて水分散体1000mlに作液した。この分散体にA3サイズのポリエステルニット(ポリエステル100%、目付400g/m)を浸漬し、次いで、ロール間圧力3.0kgf/cmのマングルで絞り(絞り率64%)、150℃×3分間の乾燥を行った。
樹脂混合液の相溶性、加工布帛の白化、風合い、難燃性の評価を表2に示す。なお、白化については、上述した級判定の結果が3級〜5級のものを○と評価した。
【0028】
【表2】

【0029】
表2に示す薬剤としては、下記のものを使用した。
リン酸ジルコニウム:東亜合成社製のアレリムーブZK
スルホニル基を有する芳香族化合物:積水化学工業社製のSSPA
ウレタン系樹脂:日華化学工業社製のエバファノールHA
アクリル系樹脂:新中村化学工業社製のニューコートFH
ポリエステル系樹脂:互応化学工業社製のプラスコートZ
【0030】
[実施例3]
表3に示すように、ポリエステル樹脂と併用する分散剤の種類を変化させて、実施例2のIVと同様の方法で、ポリエステルニットを加工した。
加工布帛の、キワつき試験(II)の方法を実施し、その結果を表3に示す(上述した級判定の結果が3級〜5級のものを○、2級のものを△、1級のものを×と評価した)。
【0031】
【表3】

【0032】
[実施例4]
表4に示すように、α−リン酸ジルコニウムとスルホニル基を有する芳香族化合物の併用割合を変化させて、水分散体1000mlに作液した。ポリエステル系樹脂は表3の実施例1と同じものを使用した。この分散体にA3サイズのポリエステルニット(ポリエステル100%、目付360g/m)を浸漬し、次いで、ロール間圧力3.0kgf/cmのマングルで絞り(絞り率65%)、150℃×3分間の乾燥を行った。
加工布帛の、キワつき、白化、チョークマーク、難燃性、抗ダニアレルゲン性及び抗スギ花粉アレルゲン性の測定をし、総合評価(○、△、×)をした。その結果を、表4に示す。キワつき試験はIの方法を実施した。
なお、表4において、リン酸ジルコニウム、スルホニル基を有する芳香族化合物、ポリエステル系樹脂の量は、加工布帛に対する付着量(g/m)で示しているが、加工剤(水性分散体)としては、付着量1g/m=0.426重量%で換算して得られる濃度の加工剤を使用した。
【0033】
【表4】

表4に示されるように、リン酸ジルコニウムとスルホニル基を有する芳香族化合物の併用割合が1.0−6.0:0.05−1.5であるNo.3−5、8−9、11、15−16、19−21、25−27では、実用性ある抗アレルゲン剤が得られる。
しかし、スルホニル基を有する芳香族化合物を多く使用しても、リン酸ジルコニウムを使用しなかった場合(No.18や24)には、キワつき、白化、チョークマーク、難燃性全てに良好な結果が得られるが、併用する樹脂(バインダー)で薬剤が被覆されることにより、抗ダニアレルゲン性が非常に悪く、実用性ある結果を得ることができなかった。
逆に、リン酸ジルコニウムを使用することにより、抗ダニアレルゲン性は非常に良好となるが、スルホニル基を有する芳香族化合物を使用しない場合(No.1や2)には、キワつきや白化、チョークマークを避けることができなかった。
【0034】
[実施例5]
表5に示すように、α−リン酸ジルコニウムとスルホニル基を有する芳香族化合物およびポリエステル系樹脂を併用し、水分散体1000mlに作液した。ポリエステル系樹脂は表3の実施例3と同じものを使用した。この分散体にA3サイズのポリエステルニット(ポリエステル100%、目付360g/m)を浸漬し、次いで、ロール間圧力3.0kgf/cmのマングルで絞り(絞り率65%)、150℃×3分間の乾燥を行った。
この加工布帛と、未加工の布帛(比較例)について、抗ブタクサアレルゲン性の測定を行った(試料数はそれぞれ3とした)。結果を、表5に示す。なお、表中の濃度は、加工剤(水分散体)中の重量%を示し、付着量は布帛への付着量を示す。
【0035】
【表5】

【0036】
表5に示されるように、未加工の布帛(No.1〜3)では、ブタクサに対する抗アレルゲン性はほとんど観察されないが、リン酸ジルコニウムとスルホニル基を有する芳香族化合物を含む水性分散体で加工した布帛(No.4〜6)は、ブタクサに対して100%に近い抗アレルゲン性を示した。
このことから、本発明に係るアレルゲン低減加工剤が、花粉の種類にかかわらず、優れた抗アレルゲン性を発揮することが確認された。
【0037】
[実施例6]
表6に示すようにα―リン酸ジルコニウムとスルホニル基を有する芳香族化合物およびポリエステル系樹脂を併用し、水分散体1000mlに作液した。ポリエステル系樹脂は表3の実施例3と同じものを使用した。この分散体にA3サイズのポリエステルニット(ポリエステル100%、目付360g/m)を浸漬し、次いで、ロール間圧力3.0kgf/cmのマングルで絞り(絞り率65%)、150℃×3分間の乾燥を行った。
この加工布帛と、未加工の布帛(比較例)について、抗ヒノキアレルゲン性の測定を行った。結果を表6に示す。なお、表中の濃度は、加工剤(水分散体)中の重量%を示し、付着量は布帛への付着量を示す。
【0038】
【表6】

【0039】
表6に示されるように、未加工の布帛(No.1)では、ヒノキに対する抗アレルゲン性は30%程度であったが、リン酸ジルコニウムとスルホニル基を有する芳香族化合物を含む水性分散体で加工した布帛(No.2)は、ヒノキに対して80%に近い抗アレルゲン性を示した。
このことから、本発明に係るアレルゲン低減加工剤が、花粉の種類にかかわらず、優れた抗アレルゲン性を発揮することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の加工剤で加工した繊維製品は、キワつきや白化を生じることなく、難燃性及び抗ダニアレルゲン性や抗花粉アレルゲン性に優れたものとなるため、自動車内装材、家具、カーテン、マット、合成皮革などの室内装飾品に安定して、使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維製品に、白化及びチョークマークを抑制しながら、アレルゲン低減効果を付与することができるアレルゲン低減加工剤であって、アレルゲン抑制効果のある薬剤として、ジルコニウム系化合物とスルホニル基を有する芳香族化合物を併含する水性分散体であることを特徴とするアレルゲン低減加工剤。
【請求項2】
前記ジルコニウム系化合物及び前記スルホニル基を有する芳香族化合物がいずれも粒状である請求項1のアレルゲン低減加工剤。
【請求項3】
前記ジルコニウム系化合物がリン酸ジルコニウムである請求項1又は2のアレルゲン低減加工剤。
【請求項4】
前記スルホニル基を有する芳香族化合物が芳香族スルホニウム塩を含む重合体である請求項1〜3いずれか1項のアレルゲン低減加工剤。
【請求項5】
前記ジルコニウム系化合物と前記スルホニル基を有する芳香族化合物の併用割合が、重量比率で1〜6:0.05〜1.5である請求項1〜4いずれか1項のアレルゲン低減加工剤。
【請求項6】
ポリエステル系樹脂を含む請求項1〜5いずれか1項のアレルゲン低減加工剤。
【請求項7】
樹脂分散用の溶媒としてn−ブチルセロソルブ、t−ブチルセロソルブ、n−プロピルセロソルブ及びi−プロピルセロソルブからなる群から選ばれる少なくとも一種が含まれる請求項6のアレルゲン低減加工剤。
【請求項8】
ポリエステル繊維製品に、抗アレルゲン性を有するジルコニウム系化合物とスルホニル基を有する芳香族化合物が、1〜6g/m:0.05〜1.5g/mの割合で付着していることを特徴とする抗アレルゲン性に優れた繊維製品。

【公開番号】特開2011−246866(P2011−246866A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49822(P2011−49822)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(510045438)TBカワシマ株式会社 (16)
【Fターム(参考)】