説明

繊維製品を処理する機械においてアンモニアを回収および再充填する設備および関連する方法

繊維製品を処理するための処理機(11)に関連付けられた、アンモニアを回収および再充填するための設備。この設備は、少なくとも凝縮装置(13)を有する回収ユニットを備え、この回収ユニットは、処理機(11)から抽出される気体状態のアンモニアを回収することができ、さらに、処理機(11)に液体アンモニアを供給することができる。設備は、さらに、処理中に消費される量とほぼ等しい量のアンモニアを処理機(11)に再充填することができる再充填ユニット(15)を備え、この再充填ユニット(15)は、少なくとも、アンモニア溶液の供給源(45)と、少なくとも一部が凝縮装置(13)に供給される気体状態のアンモニアを得るため、選択的に調整可能な方法でアンモニア溶液を蒸留することができる蒸留ユニット(29)と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品の美的特性および商品特性を向上させるために施される仕上げ処理で消費されるアンモニアを回収および再充填するための設備および関連する方法に関するものである。
【0002】
より具体的には、本発明による設備によって、アンモニアを、リアルタイムで、かつ繊維製品の仕上げ処理による実際の消費量に実質的に応じた調整可能な方法で、再充填することが可能となる。ここでの説明および以下の説明において、繊維製品とは、ファブリック、毛糸、ニットウェア、非ファブリックの製品、および類似または同等の天然もしくは合成の製品を意味している。
【背景技術】
【0003】
ファブリックの美的特性および商品特性を向上させるため、アンモニアまたは液体アンモニア槽でファブリックを仕上げ処理して、染色性、耐洗濯性、防シワ効果、ソフトフィール性を高め、繰り返し洗濯した後でもその“新しい”外観を維持することに寄与し、ピリングおよび引き裂きに対する耐性を高める方法が知られている。
【0004】
現状の技術によれば、ファブリックは、液体アンモニアに含浸され、その後、低圧室を通過させた後に、或いは低圧室に設けられた後続の経路を通過することで、アンモニアは蒸発により取り除かれる。
【0005】
また、予め特殊な化学樹脂を含浸させたファブリックを、気体状態のアンモニアを用いて処理するプロセスも知られており、この場合、気体状態のアンモニアは、防炎加工のため、ファブリックに予め施された樹脂の重合用触媒として作用する。
【0006】
アンモニアによるファブリックの処理では、かなり簡単な装置および機械が使用される。これに対して、アンモニアの回収および凝縮に使用される装置は、非常に複雑で、管理が難しく、このことが、しばしば、この種の設備の開発および配置の障害となる。
【0007】
そのような設備の例が、特許文献1および2に記載されている。アンモニアを用いた繊維加工用の設備の他の解決策が特許文献3および4に提示されている。
【0008】
特許文献5および6によると、処理機の内部で展開されるアンモニアガスは、いわゆる“スクラバー”で、アンモニウム水和物の形で回収および固定されて、そして適当なタンクに蓄えられる。
【0009】
こうして回収されたアンモニア部分は、約10〜15気圧の圧力で蒸留塔において実施される蒸留によって、水から分離される。
【0010】
蒸留プロセスは周知であり、ここでは、これ以上の詳しい説明は行わない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第3721097号
【特許文献2】米国特許第4074969号
【特許文献3】国際公開第2007/093583号
【特許文献4】仏国特許出願公開第2526005号
【特許文献5】ベルギー国特許第1009874号
【特許文献6】独国特許出願公開第19949534号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
一方、蒸留塔は、供給のためにアンモニアを蓄える大きな容量を必要とし、また、正常な作動状態に達するまでに非常に長い立ち上がり時間を必要とする。
【0013】
周知の蒸留塔のもう1つの欠点は、蒸留塔の大きさによって決まる一定量の蒸留アンモニアのみを供給しうるように構成されているために、蒸留アンモニアの供給量をリアルタイムに調整したり一時的に待機状態にして継ぎ足したりすることができないという点である。
【0014】
現状では、繊維織物の処理で消費される液体アンモニアと、ファブリックの処理中に生じる損失分とが、設備の近くで、設備の外に設置されている大きな貯蔵タンクから取得される未使用のアンモニアが再充填される。
【0015】
タンクに蓄えられた大量の液体アンモニアは、考慮すべき安全性の問題を伴うので、アンモニアの漏れの可能性を管理する専用の設備が必要である。
【0016】
そのような設備は、その複雑さを考えると、非常に高価であって、設置のための特別な認可を必要とし、当局による検査を継続的に受けるものである。
【0017】
液体アンモニアまたはアンモニア溶液によるファブリックの処理を工業的に利用することは、このように、常に、アンモニアの回収と貯蔵に関する設備の安全性に結び付いた考慮すべき問題に直面している。
【0018】
このため、このような方法は、ファブリックでの結果におけるその有効性および正当性はよく知られているものの、あまり広まってはいない。
【0019】
本発明の1つの目的は、繊維材料の仕上げ加工で消費されるアンモニアを、調整可能かつ完全に安全に、再充填することが可能な方法を提供することであり、これにより、繊維とアンモニアとの化学反応を可能にし、空気中へのアンモニアの損失を制限し、ファブリックを浄化し、また、大きな貯蔵タンクを使用することなく、アンモニア設備の内部で消費されない気体状態のアンモニアを回収することを可能にする。
【0020】
本発明の別の目的は、市場で簡単に購入できるアンモニア溶液から抽出された再充填用のアンモニアで、消費されたアンモニアを再充填することである。
【0021】
本発明の別の目的は、処理機上に搭載される貯蔵タンクの容量を制限することであり、これにより、安全にするための設備の複雑さを回避する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本出願人は、現状技術の欠点を克服するため、さらには、これらおよび他の目的および利点を得るために、本発明を考案し、検証し、具現化している。
【0023】
本発明は、独立請求項に記載され、特徴付けられる一方、従属請求項は、発明の他の特徴、または主な発明思想に対する変形例を記載している。
【0024】
上記の目的に従って、本発明は、繊維製品に、その美的特性および商品特性を向上させるためにアンモニアで処理を施す機械に関連付けられるものである。
【0025】
本発明に係る設備は、凝縮装置を有する回収ユニットを備えており、これは、処理機から抽出された気体状態のアンモニアを回収し、そして液体アンモニアを処理機に供給するように構成されている。
【0026】
本発明の特徴によれば、設備は、さらに、処理中に消費される量とほぼ等しい量のアンモニアを供給することができる再充填ユニットを備えている。
【0027】
再充填ユニットは、特に、少なくとも、アンモニア溶液の供給源を有し、さらに、凝縮装置の近くで補充される気体状態のアンモニアを得るため、選択的に調整可能な方法でアンモニア溶液を蒸留することができる蒸留ユニットを有している。
【0028】
回収ユニットと再充填ユニットとを組み合わせて用いることによって、繊維製品の処理の際に消費または消散される量に応じて、補充されるべき量のアンモニアが直接生成されるので、アンモニアのための大きな貯蔵タンクを排除することが可能である。
【0029】
従って、回収および再充填の設備は、含浸工程で消費されなかったアンモニアを回収し、また、消費されたアンモニアを、市場で簡単に入手できるアンモニア溶液の蒸留工程から得られるアンモニアで再充填するものである。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、設備は、さらに、気体状態のアンモニアを移動させるための圧縮または換気ステーションを備える。特に、圧縮または換気ステーションは、一方の側で、回収ユニットと再充填ユニットの両方に接続されており、他方の側で、処理機から回収したアンモニアと再充填用のアンモニアの両方を凝縮するための凝縮装置に接続されている。
【0031】
本発明の変形例では、蒸留ユニットは、相互に接続された少なくとも2つの蒸留装置を含み、これら少なくとも2つの蒸留装置は、液体アンモニア溶液がそれらの間で移動するために液圧で、さらには、もう一方の方向に気体状態のアンモニアが移動するために空気圧で、その両方でお互いに接続されている。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、上記少なくとも2つの蒸留ユニットは、温度調節手段に関連付けられており、これによって、それらは液体アンモニア溶液の流れの方向に段階的に高くなる温度に維持される。
【0033】
1つの可能な適用例によれば、再充填ユニットにおいて再充填することができるアンモニア溶液は、市場で簡単に入手できるアンモニウム水和物の溶液であり、それは安全性に関して特別な注意を必要としないものである。
【0034】
別の実施形態では、再充填ユニットにおいて再充填することができるアンモニア溶液は、アンモニウム塩の溶液である。
【0035】
本発明の変形例によれば、再充填ユニットは、さらに、第1の蒸留装置から出る水蒸気を除去するため、第1の蒸留装置と圧縮または換気ステーションとの間に介在する第2の凝縮装置を有する。
【0036】
本発明の別の変形例では、処理機は、該処理機にアンモニアを供給することができる供給タンクを備える。効果的には、供給タンクは、安全にするための設備および/または装備を設ける必要がないように、非常に制限された容量を有し、例えば、100リットル未満である。
【0037】
別の実施形態では、凝縮装置は、アンモニアを、その液体状態で供給タンクにおいて使用できるようにするため、気体状態から凝縮させることが可能な間接冷却装置に関連付けられている。
【0038】
本発明は、さらに、アンモニアを回収および再充填する方法に関し、この方法は、繊維製品に含浸させるステップと、アンモニアガスを抽出するステップと、抽出したガスを回収するステップと、消費されたアンモニアを再充填するステップと、を少なくとも含んでいる。
【0039】
特に、消費されたアンモニアを再充填するステップは、繊維製品に含浸させるステップにおいて補充されるべき選択的に調整可能な量のアンモニアを得るため、アンモニア溶液を蒸留するステップを含んでいる。
【0040】
アンモニアの蒸留および再充填のプロセスの作動圧力は、大気圧と等しくすることができ、または大気圧より高く、もしくは低くすることもできる。これは本発明の目的を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本発明のこれらおよび他の特徴は、添付の図1を参照して、非限定的な例として提示される以下の好適な実施形態の説明から明らかになるであろう。
【0042】
【図1】図1は、本発明により繊維製品をアンモニアで処理するための設備の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1を参照して、本発明によりアンモニアを回収および再充填するための設備10は、繊維製品の処理機11に関連付けられており、その主な構成要素として、圧縮または換気ステーション12と、第1の凝縮器13と、アンモニア再充填ユニット15とを備えている。
【0044】
処理機11は、周知のように、含浸セクタ16と蒸発セクタ17とを備え、連続的、不連続的、または半連続的に、作動することができる。
【0045】
処理機11は、通常、大気圧で作動するが、大気圧より高い圧力または低い圧力で作動し得る可能性も排除できない。
【0046】
含浸セクタ16は、繊維製品を送り込むための供給装置19と、液体アンモニアが入る含浸タンク20と、繊維製品をプレスするためのプレスロール21と、対照ロール24と、繊維製品が一部その上に巻き付く巻きロール28と、アンモニア供給タンク22と、を含んでいる。
【0047】
含浸タンク20は、処理機11の底部に配置されて、繊維製品にアンモニアを含浸させることを可能にしており、さらに、その後、繊維製品をプレスすることにより生じる余分なアンモニアを回収することを可能にしている。
【0048】
繊維製品は、液体アンモニアと接触して、それと化学的に反応し、これにより、所望の仕上げ処理を得る。
【0049】
気体状態のアンモニアが使用される場合は、それを処理機11の含浸セクタ16に直接導入することができ、あるいは、処理機11の含浸タンク20内にあるアンモニアを蒸発させることによって得ることができる。
【0050】
別の実施形態によれば、繊維製品は、処理用アンモニア溶液で処理することができる。
【0051】
処理用アンモニア溶液には、液体と気体の両方の状態の溶液が含まれ、また、化学製品、アンモニウム塩、着色剤、苛性ソーダ、およびそれらの組み合わせを含む溶液が含まれる。
【0052】
プレスロール21は、繊維製品がロール21、24を通過させられるときに、繊維製品に含まれる余分なアンモニアに対しプレス作用を発揮するように、対照ロール24に対して押し付けられる。
【0053】
液体アンモニアの供給タンク22は、処理機11での必要分のみに制限された容量を有し、非限定的な例を挙げれば、最大で100リットルに制限されており、また、詳しくは後述するように、その液位は絶えず復元されている。供給タンク22の容量が制限されると、設備の安全性に関する問題が大幅に制限限定されて、設備の安全性のための設備の複雑さも回避される。
【0054】
処理機11の蒸発セクタ17は、巻きロール28と協働する加熱ロール23と、抽出ライン34を通してアンモニアガスを取り出すための開口部25と、繊維製品を取り出す装置26と、を含んでいる。
【0055】
加熱ロール23は、繊維製品に依然として含まれているアンモニアを取り除くための蒸発を決定づけることを助けるものである。
【0056】
他の実施形態では、加熱ロール23は、加熱されていない単純なロールで置き換えることができ、このようにすることで、アンモニアの蒸発プロセスが制限される。
【0057】
開口部25は、加熱ロール23に起因する蒸発によって生じるアンモニアガスを取り出すことを可能にしている。
【0058】
圧縮または換気ステーション12によって、開口部25から気体状態のアンモニアを取り出すことができ、それは抽出ライン34を通して第1の凝縮器13に移送される。
【0059】
第1の凝縮器13は冷却装置27に接続されており、これは、例えば、冷却液を備えたチラーユニット、蒸発凝縮器、冷却塔、または目的に適した他の装置で構成することができる。冷却装置27は、その内部で循環する気体状態のアンモニアを間接的に冷却することで、それを凝縮させるのに適したものである。
【0060】
第1の凝縮器13から出てくるアンモニアは液体状態であり、処理機11の供給タンク22に送ることができる。第1の凝縮器13からの出口における液体の温度は、その作動圧力に依存し、例を挙げれば、大気圧では約−34℃である。この温度は、約10気圧の圧力では約25℃となる。この第2のケースでは、液体アンモニアは、タンク22に搬送される前に、タンク22内に既にある液体のそれに近い温度まで冷却されなければならない。
【0061】
この回収プロセスは、処理で使用されるアンモニアの全量の約95%の凝縮および再循環を決定づける。繊維製品とアンモニアとの化学反応は、処理の種類、処理される繊維製品の種類および1平方メートル当たりのグラム数、さらには動作速度に依存するアンモニアの消費を伴う。アンモニアの他の部分は、設備の通常の動作時、または最終的な繊維製品の洗浄時などに、消散する。
【0062】
このようなアンモニアの消費および消散は、例を挙げると、平均で、処理の際に使用されるアンモニアの約5%/7%と推定され、これは、処理機11の供給タンク22または含浸タンク20に、定期的または連続的に再充填が行われる必要性を伴う。処理機11の正常な動作を維持するためには、再充填は、供給タンク22内に継続して存在する液体アンモニアの液位に応じて、再充填ユニット15により実質的にリアルタイムで為されなければならない。
【0063】
アンモニア再充填ユニット15は、蒸留ユニット29と第2の凝縮器30とを備えている。この場合、好ましい溶液として、蒸留ユニット29は、市場で簡単に入手できる再充填用アンモニア溶液を使用し、それは本例ではアンモニウム水和物であり、これによって、上記の安全性の問題が回避されて、設備10に再充填するためのほぼ純粋なアンモニアが得られる。
【0064】
他の実施形態では、蒸留ユニット29は、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、および/またはそれらの組み合わせなどのアンモニウム塩を含み得る再充填用アンモニア溶液を使用する。アンモニウム水和物と水酸化ナトリウムとの組み合わせ、またはアンモニウム水和物と水酸化カリウムとの組み合わせ、またはアンモニウム水和物と他の水和物との組み合わせ、および/またはそれらの組み合わせも、同じくアンモニア溶液を成すものとされるである。
【0065】
いずれの場合も、再充填ユニット15は、その中に含まれるアンモニアの量や濃度がいずれも一様でないアンモニア溶液を用いた場合でも、機能する。
【0066】
蒸留ユニット29は、本例では、第1の蒸留容器31、第2の蒸留容器32、および第3の蒸留容器33を有し、これらはそれぞれ、その内部にある溶液の温度を調整および制御するための独自の自律的な手段35と、液位センサ41とを備えている。
【0067】
他の実施形態によれば、蒸留容器の数は3つ以外とされるが、いずれの場合も2つ以上である。
【0068】
アンモニウム水和物の蒸留の際には、周知の法則により、混合物の最も蒸発しやすい成分であるアンモニアは、より蒸発しにくい成分である水よりも多くの量までが気相状態に移行し、この場合、主として水を含む水/アンモニアの溶液と、その溶液よりもアンモニアの濃度が高いガス状混合物とが得られる。
【0069】
具体的には、溶液中と気相状態の混合物中のアンモニアの濃度は、アンモニウム水和物溶液の温度に応じて、表1に示す値(大気圧に関し、プロセス・ソフトウェアによる)に従って変化する。
【0070】
【表1】

【0071】
容器31、32、および33は、順に高くなる温度に維持され、これらの温度は、温度調整・制御手段35によって選択的に決定可能である。
【0072】
アンモニウム水和物は、再充填ライン45を通して、第1の蒸留容器31の中に再充填される。溶液の一部は、高濃度のアンモニアと低濃度の水蒸気によるガス状混合物の形態の気相状態にされる。
【0073】
液位センサ41によって検出される事前設定された限界に達すると、第1の容器31内の溶液は、第1の放出部36により第2の容器32へ搬送される。
【0074】
第2の容器32は、温度調整・制御手段35によって、第1の容器31よりも高い温度に維持される。
【0075】
第1の容器31から搬送された溶液は、第2の容器32がより高い温度に維持されている効果によって、一部はガス状混合物の形態に変わり、それは第1の容器31内のガス状混合物に比べて、アンモニアの割合が低く、水蒸気の割合が高いものである。
【0076】
溶液の残りの部分は、液位センサ41によって検出される事前設定された液位に達するまで、第2の容器32を満たし、これによって、溶液は第2の放出部37により第3の容器33へ搬送される。
【0077】
第2の容器32から搬送された溶液は、第3の容器33がより高い温度に維持されている効果によって、一部はガス状混合物の形態に変わり、それは第2の容器32内のガス状混合物に比べて、アンモニアの割合が低く、水蒸気の割合が高いものである。
【0078】
溶液の残りの部分は、アンモニアの濃度が極めて低いものであって、これは、液位センサ41によって検出される事前設定された液位に達するまで、第3の容器33を満たす。溶液は、ほぼゼロに制限された量のアンモニアを含むアンモニウム水和物の形態で、第3の放出部38を通して放出される。一定であるが低い割合のアンモニアを含むアンモニウム水和物は、その後、繊維加工仕上げの特定の用途または他の目的に使用することができる。
【0079】
容器31、32、および33内にある溶液は、水の濃度が段々と高くなっており、従って、その中のアンモニアは段々と少なくなっている。
【0080】
これに対し、アンモニアと水蒸気のガス状混合物は、第1の容器31から第2の容器32、そして第3の容器33へと順に、気体状態のアンモニアの濃度が高くなっている。
【0081】
具体的には、第3の容器33内のガス状混合物は気泡にされて、第1のパイプ42を通って第2の容器32に入り、そこでの温度がより低いことの効果によって、その一部は再凝縮して、第2の容器32を満たすことになる。具体的には、アンモニアは、ごく一部のみがアンモニウム水和物の形で再凝縮し、一方、水蒸気は、より多くの量が液体状態に移行する。
【0082】
このようにして、第2の容器32では、第3の容器33内のガス状混合物よりも高い濃度のアンモニアを含むガス状混合物が得られる。
【0083】
この時点での第2の容器32内のガス状混合物は気泡にされて、第2のパイプ43を通して第1の容器31に入り、そこでの温度がより低いことの効果によって、その一部は再凝縮して、第1の容器31を満たすことになる。具体的には、アンモニアは、ごく一部のみがアンモニウム水和物の形で再凝縮し、一方、水蒸気は、より多くの量が液体状態に移行する。
【0084】
このようにして、第1の容器31では、第2の容器32内のガス状混合物よりも高い濃度のアンモニアを含むガス状混合物が得られる。
【0085】
互いに対して異なる温度に維持される容器の内部でのこのような蒸発/凝縮の繰り返しサイクルによって、第1の容器31において、高い濃度のアンモニアと極めて低い水とによるガス状混合物を得ることができる。
【0086】
第1の容器31内のガス状混合物は、この時点で、第3のパイプ44を通して第2の凝縮器30に送られて、そこで水の最後の痕跡が除去される。
【0087】
第2の凝縮器30は、気体状態のアンモニアを、供給タンク22に再充填される前に凝縮させるため、圧縮または換気ステーション12によって第1の凝縮器13に送る。
【0088】
よって、圧縮または換気ステーション12は、処理機11から回収された気体状態のアンモニアと、さらには再充填ユニット15から得られた再充填用のアンモニアと、その両方を移動させるものである。
【0089】
第2の凝縮器30における適当なフィードパイプ39によって、その内部での凝縮液の強制循環が可能である。
【0090】
第2の凝縮器30に設けられた放出用ギャップ40によって、その中でアンモニウム水和物の形で凝縮した溶液を放出することが可能であり、その溶液は、第1の容器31に戻され、そして蒸留ユニット29内の循環に戻される。第2の凝縮器30において凝縮しない混合物の部分は、高い濃度のアンモニアを含み、気体状態のまま第2の凝縮器30から出て、再充填パイプ46によって圧縮または換気ステーション12に送られる。
【0091】
図1に示していない他の実施形態では、第2の凝縮器30から出る気体状態のアンモニアは、再充填パイプ46によって、気体状態で直接、処理機11の内部に取り込まれる。このやり方は、ファブリックを気体状態のアンモニアで処理する場合に効果的である。
【0092】
図示していない他の実施形態では、凝縮器30または第1の容器31から出る気体状態のアンモニアは、タンク22に再導入される前に液体状態に変換されるように、凝縮器の内部に取り込まれ、この凝縮器は、さらに非常に小さいものとすることができ、例えばチラーなどの冷却装置27と関連付けられる。
【0093】
アンモニア溶液を蒸留して、アンモニアを再充填するプロセス全体は、大気圧に等しい作動圧力で実施することができるが、大気圧よりも低い、または高い圧力でプロセスが実施され得る可能性は排除されない。
【0094】
蒸留ユニット29の3つの容器31、32、33で発生する蒸留プロセスの説明をより明確にするため、以下で、アンモニウム水和物の蒸留に関する2つの非限定的な例を提示する。
【0095】
2つ具体的なケースにおいて、アンモニアを25%含むアンモニウム水和物の溶液を使用した。
【0096】
例1:(限定するものではない様々な温度設定で)大気圧に等しい作動圧力よる。
[第1の容器31]は、40℃の温度であり、これは温度調整・制御手段35により設定されて、一定に維持される。このような温度および圧力の条件では、アンモニアの濃度は、表1を参照して、溶液中では19.1%であり、一方、ガス状混合物中のアンモニアの濃度は94.4%(水が5.6%)である。事前設定された制御閾値に達すると、アンモニア含有量の少ないアンモニウム水和物の溶液が、第1の放出部36によって第2の蒸留容器32内に送られる。
[第2の容器32]は、70℃の温度であり、これは温度調整・制御手段35により設定されて、一定に維持される。このような温度および圧力の条件では、アンモニアの濃度は、表1を参照して、溶液中では7.3%であり、一方、ガス状混合物中のアンモニアの濃度は70.8%(水が29.2%)である。事前設定された制御閾値に達すると、アンモニア含有量がより少ないアンモニウム水和物の溶液が、第2の放出部37によって第3の蒸留容器33内に送られる。気体状態のアンモニアの混合物が気泡にされて、第2のパイプ43を介して第1の容器31内において冷却される。
[第3の容器33]は、約99℃の温度であり、これは温度調整・制御手段35により設定されて、一定に維持される。このような温度および圧力の条件では、アンモニアの濃度は、表1を参照して、溶液中ではほぼ0%まで減少しており、一方、ガス状混合物中のアンモニアの濃度は約5%(水が95%)である。液位センサ41により事前設定されている制御閾値に達すると、アンモニア含有量がさらに少ないアンモニウム水和物の溶液が、第3の放出部38によって放出される。第3の容器33内にある気体状態のアンモニアの混合物が気泡にされて、第1のパイプ42を介して第2の容器32内において70℃で冷却される。
【0097】
第3の容器33内の温度が、例えば85℃に維持される場合、第3の放出部38からの出口においてアンモニア溶液中に依然として存在するアンモニアの割合は、約3.1%となる。
【0098】
3つの連続的段階での蒸発によって、サイクルの開始時に再充填されたアンモニウム水和物溶液中のアンモニア部分が、ほぼ完全に取り除かれることが保証される一方、ほぼ純粋なアンモニア溶液(水を約5%含む)が気体状態で、第3のパイプ44により第1の蒸留容器31の上部で回収されて、残りの水を除去するために第2の凝縮器30に搬送され、そして第1の凝縮器13に向けて送られる。
【0099】
具体的には、本例において第2の凝縮器30から出る気体状態のアンモニアは、約10℃の温度であり、従って、水とアンモニアのバランス表と関連付けると、ガス状混合物中に含まれるアンモニアの割合は約99.5%であり、すなわちアンモニアはほぼ完全に純粋である。
【0100】
もし、第1の容器31、または第1の容器31の上流に設置された他の容器において、温度が10℃に維持された場合は、出てくるアンモニアガスは99.5%の純度となるので、第2の凝縮器30さえ必要ないかもしれない。
【0101】
例2:(限定するものではない様々な温度設定で)0.5気圧の作動圧力よる。
[第1の蒸留容器31]:
溶液の温度は一定の30℃に維持される。
液相中のアンモニアの含有量:16%
気相中のアンモニアの含有量:93%
[第2の蒸留容器32]:
溶液の温度は一定の50℃に維持される。
液相中のアンモニアの含有量:8%
気相中のアンモニアの含有量:77%
[第3の蒸留容器33]:
溶液の温度は一定の80℃に維持される。
液相中のアンモニアの含有量:約0%
気相中のアンモニアの含有率:5%未満
【0102】
事前設定された温度に常に維持される容器31、32、33および第2の凝縮器30によって抽出される気体状態のアンモニアの量は、再充填ライン45によって分割蒸留ユニット29の中に入るアンモニア溶液の量に依存する。
【0103】
供給タンク22内にある液体アンモニア量のレベルのインディケータによって決定される液体アンモニアの再充填の要求が変化すると、蒸留ユニット29に入る再充填用のアンモニア溶液の流れがそのように変化し、そのアンモニア溶液のアンモニア部分がガスの形態で放出される。
【0104】
処理機11が停止されると、再充填ライン45におけるアンモニウム水和物の供給を第1のバルブ47により閉鎖することと、さらに再充填パイプ46を通したアンモニアの供給を第2のバルブ48により閉鎖することの両方により、また、放出ライン38を閉じることにより、供給タンク22内へのアンモニアの再充填が中断される。
【0105】
従って、容器31、32、33内で蒸発/凝縮段階を周期的に繰り返して、関連する液位の連絡を維持しながら、再充填ユニット15を待機状態にすることが可能である。この場合、第1と第2のバルブ47、48および放出ライン38を開くことにより、既に正常な作動状態で、蒸留工程が瞬時に再開される。
【0106】
作業箇所場所へのアンモニアの消散を防ぐため、設備10の様々な構成要素がに回収路にが設けられる。第1の凝縮器13のドレインから消散または到来するアンモニアは、空気と混合された、または水蒸気と混合された気体状態のアンモニアの形態で存在し、適当なコレクタまたは“スクラバー”(図示せず)に搬送される。
【0107】
現状の技術で知られているように、スクラバーは、アンモニアをアンモニウム水和物の形で固定および濃縮させることが可能であり、また、アンモニアから蒸留された空気または他のガスを大気中に放出することが可能である。
【0108】
そこから導出されるアンモニウム水和物は、その後、蒸留ユニット29の再充填ライン45を介してアンモニア再充填設備の中に再充填される。
【0109】
当然のことながら、本発明は、以下の請求項により規定されるその分野および範囲から逸脱することなく、変更および変形を実施することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維製品を処理するための処理機(11)に関連付けられた、アンモニアを回収および再充填するための設備であって、
少なくとも凝縮装置(13)を有し、前記処理機(11)から抽出される気体状態のアンモニアを回収することができ、さらに、前記処理機(11)に液体アンモニアを供給することができる、回収ユニットを備え、当該設備は、
処理中に消費される量とほぼ等しい量のアンモニアを前記処理機(11)に再充填することができる、再充填ユニット(15)をさらに備え、
該再充填ユニット(15)は、少なくとも、
アンモニア溶液の供給源(45)と、
少なくとも一部が前記凝縮装置(13)に供給される気体状態のアンモニアを得るため、選択的に調整可能な方法で前記アンモニア溶液を蒸留することができる蒸留ユニット(29)と、を有する、
ことを特徴とする、設備。
【請求項2】
気体状態のアンモニアを移動させるための圧縮または換気ステーション(12)をさらに備え、該圧縮または換気ステーション(12)は、一方の側で、前記処理機(11)と前記再充填ユニット(15)の両方に接続されており、他方の側で、前記凝縮装置(13)に接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の設備。
【請求項3】
前記蒸留ユニット(29)は、相互に接続された少なくとも2つの蒸留装置(31,32,33)を含み、前記少なくとも2つの蒸留装置は、液体アンモニア溶液がそれらの間で移動するために液圧で、さらにはその逆方向に気体状態のアンモニアが移動するために空気圧で、その両方でお互いに接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の設備。
【請求項4】
前記少なくとも2つの蒸留装置(31,32,33)は、温度を調整および制御する手段(35)に関連付けられており、前記手段(35)によって、前記少なくとも2つの蒸留装置(31,32,33)は液体アンモニア溶液の流れの方向に段階的に高くなる温度に維持されることを特徴とする、請求項3に記載の設備。
【請求項5】
前記再充填ユニット(15)において再充填することができるアンモニア溶液は、アンモニウム水和物溶液であることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の設備。
【請求項6】
前記再充填ユニット(15)において再充填することができるアンモニア溶液は、アンモニウム塩の溶液であることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の設備。
【請求項7】
前記再充填ユニット(15)は、さらなるアンモニアの回収のため、前記第1の凝縮装置(13)に加えて、前記第1の蒸留装置(31)と前記圧縮または換気ステーション(12)との間に介在させることができる第2の凝縮装置(30)を有することを特徴とする、請求項1ないし6のいずれかに記載の設備。
【請求項8】
前記処理機(11)は、該処理機(11)にアンモニアを供給することができる100リットルの範囲内の最大容量を有する供給タンク(22)を備え、該供給タンク(22)は、前記第1の凝縮装置(13)に直接接続されていることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれかに記載の設備。
【請求項9】
前記第1の凝縮装置(13)は、アンモニアを気体状態から凝縮させることができる冷却装置(27)に関連付けられていることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれかに記載の設備。
【請求項10】
アンモニアを回収および再充填する方法であって、
処理機(11)において繊維製品に含浸させるステップと、
アンモニアガスを抽出するステップと、
前記抽出したガスを回収して、凝縮させるステップと、
消費されたアンモニアを再充填するステップと、を少なくとも含み、
前記消費されたアンモニアを再充填するステップは、前記繊維製品の前記処理機(11)に再導入されるべき選択的に調整可能な量の気体状態のアンモニアを得るように、アンモニア溶液を蒸留するステップを含むことを特徴とする、方法。
【請求項11】
作動圧力は、大気圧に等しいか、大気圧未満であるか、または大気圧より高いことを特徴とする、請求項10に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−519007(P2013−519007A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552483(P2012−552483)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【国際出願番号】PCT/IB2011/000191
【国際公開番号】WO2011/098878
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(512207054)
【氏名又は名称原語表記】FRANCHETTI,Roberto
【Fターム(参考)】