説明

繊維製品用洗浄剤組成物

【課題】繊維製品に対して優れたカビや酵母等の真菌の発生又は増殖を抑制する効果を付与できる洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】オキシエチレン基(以下EO基)の数が2〜6のポリオキシエチレンラウリルエーテル(a−1)、EO基の数が0〜10且つ炭素数3〜5のオキシアルキレン基(以下AO基)の数が0〜8(但し、AO基の数が0の時はEO基の数は7〜10である)のポリエーテル型化合物(a−2)、及びEO基とAO基の合計が11〜60(但し、EO基の数は11以上、AO基の数は0〜8である)のポリエーテル型化合物(a−3)を含む非イオン界面活性剤(A)と、陽イオン界面活性剤(B)とを、それぞれ特定範囲の量で含有し、(a−2)/(a−1)質量比、及び(a−3)/[(a−1)+(a−2)]質量比が、それぞれ、特定範囲にある、繊維製品用洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣料等の繊維製品に抗真菌効果を与える繊維製品用洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
真菌類に含まれるカビや酵母は、人の生活環境に密接に存在し、生活環境を悪化させる原因になるだけでなく、人体への影響も懸念される場合がある。一般にカビや酵母は家庭内の湿気の多い場所に汚れとして見出すことができる。例えば、結露しやすい壁や窓枠、特には浴室やトイレなどのタイル目地などに、非常によく観察することができる。これらのカビそのものに由来する汚れは、次亜塩素酸塩などの強い漂白剤で処理することが、一般的に行われている。
【0003】
一方最近の生活習慣の変化により、洗濯衣料を室内にて乾燥させる習慣が増えてきている。このような場合に、雨などの湿度が高く、乾燥しにくい気象状況が続くと、繊維表面にカビや酵母による赤色や黒色の着色汚れが現れる。このような着色汚れは、タオル、バスタオルや風呂上りの足拭きマットなどの湿った状況に置かれ易いものを中心に特に見出すことができる。タオルに関して言えば、パイル部分よりも、端の平織り部分に見出しやすい。
【0004】
一度発生したカビや酵母による着色汚れを除去するためには、前記したように塩素系の漂白剤を使用せざるをえない。しかしながら塩素系漂白剤は、その漂白力の強さから、例えば絵柄がプリントされたものや染色された繊維製品に対する退色が懸念される。一方で色柄ものが退色しにくい酸素系漂白剤を用いた場合、一部の汚れに対しては効果があるが、クラドスポリウム属などのカビ由来の着色に対しては十分に除去できない。一度発生した真菌類由来の着色汚れだけを除去することは非常に困難である。従ってこれら真菌類の発生を抑制することが重要である。
【0005】
一方、工業分野では真菌類が食品や飲料等への汚染だけではなく、施設の劣化の原因ともなっている。このような現状に対し、広義での様々な殺菌剤や抗菌剤が真菌の制御のために使用されている(特許文献1及び2)。特許文献2などのチアゾリン系化合物は家庭用洗浄剤自体の抗菌・抗真菌剤として配合される場合がある。また特許文献3や特許文献4にはアルコールにエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを付加させた化合物を防菌・防カビ剤として用いることが開示されている。
【0006】
衣料用の洗浄剤組成物に抗菌性を有する化合物を配合することで、繊維に抗菌性を付与し、菌の発生を抑制することで衛生面に係る課題を解決する方法が従来から種々提案されている。例えば、特許文献5には、水溶性カチオン系抗菌性化合物を配合することで洗濯後の生乾き臭や衣類の保存時の臭いの発生を抑制する方法が記載されている。また特許文献6にはカチオン系殺菌剤、金属キレート剤並びに非イオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤を含有する殺菌消毒洗浄剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−63916号公報
【特許文献2】特開2005−314324号公報
【特許文献3】特開平5−43405号公報
【特許文献4】特開2006−199687号公報
【特許文献5】特開2001−214191号公報
【特許文献6】特開平7−53995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の技術では、繊維製品の洗浄剤として応用する上で抗真菌効果として不十分であったり、洗浄剤の水への溶解性や液体洗浄剤ならば保存安定性を維持しつつ該抗真菌効果を発揮させるためには十分なものとは言えなかった。
【0009】
従って、本発明の課題は、繊維製品に対して優れたカビや酵母等の真菌の発生又は増殖を抑制する効果を付与できる繊維製品用の洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記一般式(a1)で示される化合物(a−1)、下記一般式(a2)で示される化合物(a−2)及び下記一般式(a3)で示される化合物(a−3)を含む非イオン界面活性剤(A)〔以下、(A)成分という〕15〜70質量%と、陽イオン界面活性剤(B)〔以下、(B)成分という〕0.5〜15質量%とを含有する繊維製品用洗浄剤組成物であって、
洗浄剤組成物中に化合物(a−1)を0.5〜15質量%含有し、
化合物(a−1)及び化合物(a−2)に関して、(a−2)/(a−1)の質量比が0/100〜70/30であり、
化合物(a−1)、化合物(a−2)及び化合物(a−3)に関して、(a−3)/[(a−1)+(a−2)]の質量比が10/90〜99/1である、
繊維製品用洗浄剤組成物に関する。
1a−O−(C24O)m1−H (a1)
[式中、R1aは、炭素数12の直鎖アルキル基であって、R1a−O−の酸素原子と結合するRの炭素原子が第1炭素原子であり、m1は2〜6の整数である。]
2a−O−[(C24O)m2/(AO)n2]−H (a2)
[式中、R2aは、炭素数8〜22の鎖式炭化水素基であって、AOは炭素数3〜5のオキシアルキレン基である。m2は0〜10の整数であって、n2は0〜8の整数(但し、n2=0の時はm2は7〜10の整数である)である。"/"はC24O基及びAO基が、ランダム又はブロックのいずれに結合したものであってもよいことを示す。]
3a−O[(C24O)m3/(AO)n3]−H (a3)
[式中、R3aは、炭素数8〜22の鎖式炭化水素基であって、AOは炭素数3〜5のオキシアルキレン基である。m3+n3は11〜60の整数であって、m3は11以上の整数、n3は0〜8の整数である。"/"はC24O基及びAO基が、ランダム又はブロックのいずれに結合したものであってもよいことを示す。]
【0011】
また本発明のもう1つの態様としては、
非イオン界面活性剤(A)を15〜70質量%及び陽イオン界面活性剤(B)を0.5〜15質量%含有する繊維製品用洗浄剤組成物であって、
非イオン界面活性剤(A)として、オキシエチレン基の平均付加モル数が2〜7であるポリオキシエチレンラウリルエーテル〔以下(A−1)成分という〕と下記一般式(I)で示される非イオン界面活性剤〔以下(A−2)成分という〕とを合計で、(A)成分中に80〜100質量%含み、
(A−2)成分と(A−2)成分の質量比が、(A−2)/(A−1)で50/50〜97/3であり、
下記一般式(a1)で示される化合物(a−1)を組成物中に0.5〜15質量%含有する、
繊維製品用洗浄剤組成物が挙げられる。
31a−O[(C24O)p/(AO)q]H (I)
〔式中、R31aは炭素数8〜22のアルキル基又はアルケニル基、好ましくはアルキル基であり、AOは炭素数3〜5のオキシアルキレン基である。p、qは平均付加モル数であり、pは15〜30の数であり、qは0〜5の数である。qが0のときはpは18以上である。"/"はC24O基及びAO基が、ランダム又はブロックのいずれに結合したものであってもよいことを示す。〕
1a−O−(C24O)m1−H (a1)
[式中、R1aは、炭素数12の直鎖アルキル基であって、R1a−O−の酸素原子と結合するRの炭素原子が第1炭素原子であり、m1は2〜6の整数である。]
【発明の効果】
【0012】
本発明の繊維製品用洗浄剤組成物は、衣類、タオル、足拭きマット、シーツ等の家庭生活に使用される繊維製品に関する洗浄剤組成物であって、特に、水洗いの対象となる繊維製品に対して、優れた抗真菌効果を付与することができ、真菌、特にカビに由来する着色汚れを抑制することができる。また、安定性及び溶解性(希釈時のゲル化抑制性)に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<(A)成分>
本発明の繊維製品用洗浄剤組成物は、前記一般式(a1)で示される化合物(a−1)と、前記一般式(a2)で示される化合物(a−2)と、前記一般式(a2)で示される化合物(a−3)と、他の非イオン界面活性剤化合物を含む非イオン界面活性剤(A)を含有する。
【0014】
また本発明の繊維製品用洗浄剤組成物の他の態様としては、オキシエチレン基の平均付加モル数が2〜6であるポリオキシエチレンラウリルエーテル(A−1)と前記一般式(I)で示される(A−2)成分とを併用する非イオン界面活性剤であって、更に前記一般式(a1)で示される化合物(a−1)を含む非イオン界面活性剤(A)を含有する。
【0015】
まず、前者の態様について説明する。
化合物(a−1)は本発明の重要な成分であり、一般式(a1)において、アルキル基は炭素数12の直鎖1級アルキルであるラウリル基であることが防真菌効果の観点から有効であり、m1は2〜6の整数、好ましくは4又は5、特に好ましくは5であり、m1が5の化合物が最も抗真菌効果において優れている。化合物(a−1)中、一般式(a1)中のm1が5の化合物の割合は、抗真菌効果の観点から、15〜100質量%、更に30〜100質量%が好ましい。
【0016】
化合物(a−1)は洗浄剤組成物中に0.5〜15質量%、好ましくは1〜12質量%、より好ましくは1.5〜10質量%含有される。
【0017】
一方、化合物(a−2)は、含有しない、或いは本効果の点から化合物(a−1)に対して特定比率で配合される。すなわち化合物(a−1)と化合物(a−2)の質量比は、(a−2)/(a−1)として0/100〜70/30である。化合物(a−1)は、単一の化合物として、或いは化合物(a−1)だけの混合物として配合することができる。本発明では、化合物(a−1)は、脂肪族アルコールにエチレンオキシドを付加反応させて得られる、オキシエチレン基の付加モル数の異なる化合物群の一部として配合されることが経済的又は製造上の点から好ましい。(a−2)/(a−1)の質量比は1/99〜50/50が好ましく、更に5/95〜45/55がより好ましく、特に10/90〜40/60が最も好ましい。
【0018】
通常の脂肪族アルコールにエチレンオキシドを付加させて得られるポリオキシエチレンアルキルエーテルのように、オキシエチレン基の付加モル数が異なる分布を有する混合物を使用する場合、該混合物を構成する化合物の全部又は一部が、化合物(a−1)である、あるいは化合物(a−1)と化合物(a−2)である混合物として配合することが好ましい。後述の(A−1)成分がこれに相当する。なお、この場合化合物(a−1)及び化合物(a−2)に該当しない化合物は、未反応アルコール、オキシエチレン基が1モルの化合物及び化合物(a−3)の何れかの化合物であることが好ましい。化合物(a−3)は別途配合される。特に化合物(a−3)は、オキシエチレン基又はオキシエチレン基と炭素数3〜5のオキシアルキレン基の付加モル数が異なる分布を有する混合物として配合することが好ましい。後述の(A−2)成分がこれに相当する。
【0019】
本発明では、(A)成分として、オキシエチレン基の平均付加モル数が2〜7、好ましくは2〜6、より好ましくは3〜5であるポリオキシエチレンラウリルエーテル〔以下(A−1)成分という場合がある〕を含有することが好ましい。更に(A−1)成分は、オキシエチレン基の付加モル数が異なるポリオキシエチレンラウリルエーテル化合物の3種以上の混合物、特にはオキシエチレン基の付加モル数が少なくとも2〜7の間で連続した整数で構成されている化合物の混合物で構成されていることが好ましい。すなわち(A−1)成分は、ラウリルアルコールを含む脂肪族アルコール、特にはラウリルアルコールにエチレンオキシドを付加反応させる工程を含む製法によって得られたものが好ましい。その際のラウリルアルコールに対するエチレンオキシドの反応割合は、次の段落で示した数値範囲であってもよい。アルコールにエチレンオキシドを付加反応させた場合、(A−1)成分は、オキシエチレン基の付加モル数において分布を有する化合物の混合物である。
【0020】
このような化合物は、例えばラウリルアルコール1モル当たりにエチレンオキシドをKOHなどのアルカリ触媒下で2〜7モル、好ましくは2〜6モル付加、より好ましくは3〜5モル付加させることで得ることができる。エチレンオキシドを8モル以上付加させた場合は、(a−2)/(a−1)の質量比は60/40以上になる。なお酸性触媒下で反応させる場合や、公知の金属触媒を用いることにより、エチレンオキシドの付加モル数分布がシャープな非イオン界面活性剤を得ることができ、これら技術を有効に利用することができる。また(A−1)成分の調製にあたり、ラウリルアルコールは、例えば炭素数8〜22の範囲で炭素数の異なる複数の脂肪族アルコールを含有する混合物中に含まれる形態で用いてもよく、反応後に得られる非イオン界面活性剤の混合物として組成物に配合してもよい。ラウリルアルコール以外の脂肪族アルコールから得られた化合物は、抗真菌効果が殆ど得られないことから、ラウリルアルコールは全脂肪族アルコール中、50モル%以上、更には80モル%以上であることが好ましい。
【0021】
前述の通り化合物(a−1)は抗真菌効果に優れた成分であるが、親水性基であるオキシエチレン基のモル数が少ないため水に対する溶解度に乏しく、水溶液に溶解しにくいことから、洗濯液への溶解性或いは分散性の低下が懸念される。また液体洗浄剤として使用する場合は、配合上の自由度を妨げる。
【0022】
本発明では上記課題を解決するために、前記一般式(a3)で示される化合物(a−3)を併用する。化合物(a−3)は組成物の抗真菌効果を殆ど低下させずに、化合物(a−1)の水への溶解性を向上させる。特に化合物(a−3)は、本発明の洗浄剤組成物を液体洗浄剤として配合する場合に、界面活性剤濃度が40質量%を超えるような高濃度界面活性剤系でも、水希釈の際にゲル化を形成しにくい点から好ましい。
【0023】
本発明では、化合物(a−1)、化合物(a−2)及び化合物(a−3)に関して、(a−3)/[(a−1)+(a−2)]の質量比が10/90〜99/1、更に40/60〜95/5である。なお本組成物を後述する界面活性剤を40質量%以上含有する繊維製品用液体洗浄剤組成物として用いる場合は、(a−3)/[(a−1)+(a−2)]の質量比は、好ましくは50/50〜97/3、より好ましくは60/40〜95/5であり、最も好ましくは70/30〜90/10である。また(A)成分中、(a−1)成分、(a−2)成分及び(a−3)成分の合計の割合は、75〜100質量%、更には80〜100質量%、特には90〜100質量%を占めることが好ましい。
【0024】
化合物(a−3)は、一般式(a3)中のR3aが、8〜18であることが好ましい。m3+n3は、好ましくは14〜50の整数である。m3は、好ましくは13以上の整数である。更に好ましくは30以下の整数である。n3は、好ましくは1〜5の整数である。
【0025】
化合物(a−3)のために、(A)成分として、炭素数8〜22のアルキル基又はアルケニル基を有し、オキシエチレン基の平均付加モル数が15〜30の数、好ましくは16〜27の数、より好ましくは18〜24の数であり、炭素数3〜5のオキシアルキレン基の平均付加モル数が0〜5の数、好ましくは1〜4の数、より好ましくは2〜4の数(但し、炭素数3〜5のオキシアルキレン基の平均付加モル数が0の時は、オキシエチレン基の平均付加モル数が18以上、好ましくは20以上である。)である、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル(A−2)〔以下、(A−2)成分という〕を含有することが好ましい。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルがより好ましい。
【0026】
更には、前記の(A−1)成分及び(A−2)成分の合計が、(A)成分中の80〜100質量%、更には90〜100質量%、実質100質量%であることが好ましい。また組成物中の(A−2)/(A−1)の質量比は60/40〜97/3、好ましくは70/30〜96/4、より好ましくは80/20〜95/5であって、前記一般式(a1)で示される化合物(a−1)を0.5〜15質量%、好ましくは1〜12質量%、より好ましくは1.5〜10質量%含有する。また(A−2)成分は組成物中に15〜65質量%含有することが好ましく、特には20〜60質量%含有することがより好ましい。(A−1)成分及び(A−2)成分を組み合わせることで、実質的に化合物(a−1)、化合物(a−2)及び化合物(a−3)を含有し、且つ前記化合物(a−1)、化合物(a−2)及び化合物(a−3)の質量比の要件を満たす繊維製品用洗浄剤組成物を得ることができる。
【0027】
(A−1)成分及び(A−2)成分に含まれる、化合物(a−1)、化合物(a−2)及び化合物(a−3)の割合は、基本的には液体クロマトグラフ法により求めることができる。また化合物(a−1)についてはガスクロマトグラフ法を補助的な測定方法として用いてもよい。
【0028】
(A−2)成分は下記一般式(I)で表される非イオン界面活性剤として示すことができる。
31a−O[(C24O)p/(AO)q]H (I)
〔式中、R31aは炭素数8〜22のアルキル基又はアルケニル基、好ましくはアルキル基であり、AOは炭素数3〜5のオキシアルキレン基である。p、qは平均付加モル数であり、pは15〜30の数であり、qは0〜5の数である。qが0のときはpは18以上である。"/"はC24O基及びAO基が、ランダム又はブロックのいずれに結合したものであってもよいことを示す。〕
【0029】
一般式(I)の化合物は、炭素数8〜22のアルコールに、エチレンオキシドと炭素数3〜5のアルキレンオキシドとをランダム又はブロック的に付加反応することによって得ることができ、(A−2)成分は、このような付加反応を工程に含む製法から得られたエチレンオキシド及びアルキレンオキシドの付加モル数の異なる混合物として配合することが好ましい。
【0030】
また、一般式(I)中のpはオキシエチレン基の平均付加モル数であり、優れた抗真菌効果を得るために下限値は15以上、好ましくは16以上、より好ましくは18以上であり、上限値は好ましくは27以下、より好ましくは24以下である。qは炭素数3〜5のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、洗浄性能の点から下限値は0以上、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、上限値は5以下、好ましくは4以下である。なおq=0の時はpは18以上であり、更には20以上が好ましい。q=0の場合であってpの付加モル数が低い場合、EO分布として一般式(a2)で示される化合物(a−2)の含有率が増えてくるため、pは18以上であることが好ましい。
【0031】
一般式(I)中のAOであるオキシアルキレン基(以下、AO基という場合がある)は、炭素数3〜5アルキレンオキシドを付加反応させることによって得られるものであり、付加反応により結合した部分はメチル分岐ないしプロピル分岐した構造を有する。AO基は、プロピレンオキシドを付加反応させて得られるオキシプロピレン基(以下、PO基と表記する場合がある)が好ましい。なお炭素数3〜5のアルキレンオキシド、例えばプロピレンオキシドは、末端が−AOHの化合物よりも、R31aOHや−EOHの化合物の方に付加しやすいため、脂肪族アルコールに最初に炭素数3〜5のアルキレンオキシド、例えばプロピレンオキシドを付加反応させる場合か、先にEOを付加させた後に炭素数3〜5のアルキレンオキシド、例えばプロピレンオキシドを付加反応させる場合、炭素数3〜5のアルキレンオキシド、例えばプロピレンオキシドの付加の割合であるqを1以上とすることで、オキシエチレン基のみを含む化合物の含有率を低減させることができ、化合物(a−3)の化合物の割合を調整し易くなる。
【0032】
一般式(I)において"/"は、本発明の(A−2)成分のC24O基であるオキシエチレン基(以下、EOと表記する場合がある)及びAO基の関係がランダム結合でもブロック結合でもいずれであってもよいことを意味している。
【0033】
一般式(I)で表される非イオン界面活性剤としては、下記一般式(I−0)〜(I−5)で表されるものが挙げられる。
31aO−(EO)pH (I−0)
31aO−(AO)q−(EO)pH (I−1)
31aO−(EO)p−(AO)qH (I−2)
31aO−[(EO)p1・(AO)q]−(EO)p2H (I−3)
31aO−(EO)p1−[(AO)q・(EO)p2]H (I−4)
31aO−(EO)p1−(AO)q−(EO)p2H (I−5)
〔式中、R31a、p、q、EO、AOは前記の意味であり、p1、p2は平均付加モル数であって、p=p1+p2である。p1は3以上が好ましく、5以上がより好ましい。"・"はランダム結合であることを示す。〕
【0034】
またAOのqは複数のブロック体として分かれていてもよい。一般式(I−0)〜(I−5)で示される非イオン界面活性剤は、R31aOHに対するアルキレンオキシドの反応割合及び反応順序を考慮することで調製することができる。
【0035】
一般式(I)中のR31a−O−の酸素原子に結合するR31aの炭素原子が第1炭素原子であるものは、第2炭素原子による化合物よりも洗浄力に優れる。特にR3aは直鎖アルキル基がよく、第1炭素原子を有するものが好ましい。R31aの炭素原子が該第1炭素原子の場合、保存安定性の点から、前記一般式(I−0)、(I−2)、(I−4)及び(I−5)の化合物が好ましい。
【0036】
本発明では特に、前記一般式(I)のR31aが炭素数8〜18の直鎖アルキル基であって、オキシプロピレン基又はオキシエチレン基の酸素原子に結合する該アルキル基の炭素原子が第1炭素原子であり、オキシプロピレン基の平均付加モル数qが1〜4、好ましくは1〜3であって、且つオキシエチレン基の平均付加モル数pが16〜30、更には16〜27、特には18〜24モル付加である(ポリ)オキシプロピレン・ポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いることが、好ましい。
【0037】
本発明の(A−2)成分は、次のような製造要件によって得られた非イオン界面活性剤であることが好ましい。すなわち、R31a−OHで表される化合物(R31aは炭素数8〜22の炭化水素基、好ましくは前記R31aと同じ)1モル当りに、エチレンオキシドをp1モル付加させた後、炭素数3〜5のアルキレンオキシドをqモル付加させた後、更にエチレンオキシドをp2モル付加させて得られる非イオン界面活性剤であって、p1が3〜30の数、好ましくは7〜25、より好ましくは8〜20の数であり、qが1〜5の数、好ましくは1〜3の数であり、p1とp2は合計でp1+p2=15〜30、好ましくは16〜28、より好ましくは18〜25の数である非イオン界面活性剤である。p2は前記p1とp1+p2より求めることができるが、本発明で、p2が好ましくは5〜25の数、より好ましくは7〜23の数以上、好ましくは8〜20の数である。本発明では特にAOが末端、及びR31aに結合していないことが好ましい。特にはp1とp2は、p1/(p1+p2)=0.2〜0.8、好ましくは0.3〜0.7である。この場合、R31a、p1、p2及びqは前記一般式(I−5)と同じ意味である。
【0038】
より具体的に、水酸化カリウムを触媒として使用する場合の製造条件の一例を以下に示す。まず原料となる炭素数8〜22の飽和もしくは不飽和の高級アルコール(R31a−OHで表される化合物)に水酸化カリウムを仕込んだ後、窒素置換し、100〜110℃、1〜7kPaで30分〜1時間脱水を行う。次いで100〜170℃、0.3〜0.6MPaでエチレンオキシドの付加を行い、次に100〜150℃、0.3〜0.7MPaの条件で炭素数3〜5のアルキレンオキシド、好ましくはプロピレンオキシドの付加を行い、再度100〜170℃、0.3〜0.7MPaの条件でエチレンオキシドを付加した後、添加した水酸化カリウムと当モル量の酸剤(酢酸、乳酸、グリコール酸等)で中和することによって得られる。なお各エチレンオキシド及び炭素数3〜5のアルキレンオキシドの使用量は、組成物中のp1、p2、qの平均値の条件を満たすように、原料アルコールのモル数に応じて選定される。
【0039】
本発明の洗浄剤組成物は、(A)成分として、化合物(a−1)、化合物(a−2)及び化合物(a−3)以外の他の非イオン界面活性剤を含有することができる。他の非イオン界面活性剤としては、炭素数8〜22の炭化水素基を有する非イオン界面活性剤であって、糖平均縮合度が1〜5のアルキル(ポリ)グリコシド、平均縮合度2〜5のアルキル(ポリ)グリセリルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、並びに、化合物(a−1)、化合物(a−2)及び化合物(a−3)を除く、オキシアルキレン基の炭素数が2〜5、好ましくは2又は3のポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エーテルなどを挙げることができる。
【0040】
本発明では、化合物(a−1)、化合物(a−2)及び化合物(a−3)を特定条件で含む(A)成分と後述する(B)成分により、優れた抗真菌効果を示すものであるが、抗真菌効果を阻害することなく保存安定性を高めるために、(A)成分は(A−1)成分と(A−2)成分とを併用するものが好ましく、その配合比率により、化合物(a−1)〜(a−3)の化合物の割合を調整することが、各化合物の単体を用いる場合よりも、安価に調製できることからも好ましい。(A−2)/(A−1)の質量比は前記した比率で含有することができる。(A−2)成分は化合物(a−1)と後述する(B)成分との繊維への吸着率を高めるため、(A−1)成分は少量でも効果を発揮することができる。なお、(A−1)成分は、一般式(a1)においてm1=0の化合物、すなわち未反応アルコールを(A−1)成分中、1〜20質量%程度含有し、m1=1の化合物を(A−1)成分中に1〜20質量%程度含有する可能性があるが、m1=0又は1の化合物は(A−1)成分中、20質量%以下、更に18質量%以下であることが好ましい。
【0041】
本発明の繊維製品用洗浄剤組成物は、(A)成分を、15〜70質量%、好ましくは20〜70質量%、より好ましくは22〜60質量%含有する。
【0042】
<(B)成分>
本発明の繊維製品用洗浄剤組成物には、(A)成分の特定条件の非イオン界面活性剤と共に、(B)成分として、陽イオン界面活性剤を併用する。陽イオン界面活性剤としては、長鎖アルキル基を有する1級〜3級のアミン(但し後述のアルカノールアミンを除く)、長鎖アルキル基を有する第4級アンモニウム塩を挙げることができ、好ましくは、窒素原子に結合する基として、途中にエーテル結合、エステル結合又はアミド結合を有してもよい炭素数6〜22のアルキル基を1つ又は2つ有し、残りが水素原子又は炭素数4以下のヒドロキシ基を有してもよいアルキル基であるアミン、及び、窒素原子に結合する基として、途中にエーテル結合、エステル結合又はアミド結合を有してもよい炭素数6〜22のアルキル基を1つ又は2つ有し、残りが水素原子又は炭素数4以下のヒドロキシ基を有してもよいアルキル基である第4級アンモニウム塩を挙げることができる。本発明では、炭素数6〜22の長鎖アルキル基を1つ有する第4級アンモニウム型界面活性剤、炭素数6〜22の長鎖アルキル基を1つ有する3級アミンが好ましい。中でも、界面活性剤として下記一般式(b1)で表される第4級アンモニウム塩型界面活性剤が好ましい。
【0043】
【化1】

【0044】
[式中、R1bは炭素数6〜22の炭化水素基、好ましくは直鎖又は分岐鎖、特には直鎖のアルキル基又はアルケニル基であり、R1b中に−(A'O)s−を含んでも良く、またR1b中に−フェニレン基−(A'O)s−を含んでも良い。A'Oは、オキシエチレン基又はオキシプロピレン基、特にはオキシエチレン基であり、sはA'Oの平均付加モル数を表し0.1〜10であり、R2b、R3b、R4bは、それぞれ独立にメチル基、エチル基、プロピル基、ベンジル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、Xはハロゲン原子、CH3SO4又はCH3CH2SO4である。]
【0045】
一般式(b1)の第4級アンモニウム塩は、R1bの炭素数は8〜20が好ましく、10〜18がより好ましく、10〜16が最も好ましい。また、R2b、R3b、R4bは、それぞれ炭素数1〜3のアルキル基又はベンジル基(但しベンジル基は構造中1つである)が好ましく、特にはメチル基又はベンジル基(但しベンジル基は構造中1つであり、R1bに対してパラ位にある)が好ましい。
【0046】
(B)成分の陽イオン界面活性剤としては、例えば下記(B−1)〜(B−4)が使用できるが、洗浄性能、組成物の保存安定性の点から、(B−1)、(B−3)を含有することがより好ましい。なお(B−1)〜(B−4)の好ましい要件は前記記載の好ましい条件である。
【0047】
(B−1)一般式(b1)中のR1bの平均炭素数が6〜22の直鎖アルキル基であり、R2b〜R4bが炭素数1〜3のアルキル基である第4級アンモニウム塩。
(B−2)一般式(b1)中のR1bの平均炭素数が6〜22の分岐アルキル基であり、R2b〜R4bが炭素数1〜3のアルキル基である第4級アンモニウム塩。
(B−3)一般式(b1)中のR1bの平均炭素数が6〜22の直鎖アルキル基であり、R2bがベンジル基であり、R3b及びR4bが炭素数1〜3のアルキル基である第4級アンモニウム塩。
(B−4)一般式(b1)中のR1bの平均炭素数が6〜22の直鎖又は分岐のアルキル基であり、R1b中に−(A'O)s−を含むか、−フェニレン基−(A'O)s−を含み、或いはsが1〜5であり、R2b〜R4bが炭素数1〜3のアルキル基である第4級アンモニウム塩。
【0048】
上記の中でも、特に(B−1)が(B)成分中の50質量%以上、特には60質量%を占めることが、抗真菌効果のみならず、洗浄力や液体洗浄剤の場合の保存安定性の観点から最も好ましい。通常、(B−1)成分は、十分な抗真菌活性を示さない場合が多いが、本発明では、化合物(a−1)を含む(A)成分と併用することで、優れた抗真菌効果を示す。
【0049】
本発明の繊維製品用洗浄剤組成物は、(B)成分を0.5〜15質量%含有する。好ましくは1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、4質量%以上が最も好ましい。また上限値としては、15質量%以下が好ましく、更には12質量%以下がより好ましく、特には10質量%以下が最も好ましい。
【0050】
本発明の洗浄剤組成物は、界面活性剤として更に陰イオン界面活性剤(C)〔以下、(C)成分という〕を含有することが好ましい。
【0051】
(C)成分としては、例えば下記(C−1)〜(C−5)から選ばれる陰イオン界面活性剤が使用できるが、洗浄性能、安定性、溶解性(希釈時のゲル化抑制性)の観点で、(C−1)、(C−2)、(C−4)が好ましく、更に(C−1)又は(C−2)から選ばれる一種以上を含有することがより好ましい。(C−1)又は(C−2)から選ばれる一種以上を含有する場合(C)成分中の80質量%以上、特には90質量%を占めることが洗浄性の点で最も好ましい。また(C−4)成分は消泡効果としても有効であり、併用することが好ましい。
【0052】
(C−1)平均炭素数10〜20のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩。
(C−2)平均炭素数10〜20の直鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコール由来のアルキル基又は分岐アルコール由来のアルキル基を有し、アルキレンオキシ基の平均付加モル数が1〜5であり、アルキレンオキシ基としてエチレンオキシ基を含み、平均付加モル数0.2〜2モルの範囲でオプロピレンキシ基を含んでいてもよい、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩。
(C−3)平均炭素数10〜20のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル塩。
(C−4)平均炭素数8〜20の脂肪酸塩。
(C−5)平均炭素数10〜20の直鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコール由来のアルキル基又は分岐アルコール由来のアルキル基を有し、アルキレンオキシ基の平均付加モル数が1〜5であり、アルキレンオキシ基としてエチレンオキシ基を含み、平均付加モル数0.2〜2モルの範囲でプロピレンオキシ基を含んでいてもよい、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩。
【0053】
(C)成分を構成する塩はナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、アルカノールアミン塩、及びマグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩などを挙げることができるが、特に安定性の観点からアルカノールアミン塩であることが好ましい。陰イオン界面活性剤は、液体の洗浄剤組成物中には酸型で添加して、系内でアルカリにより中和してもよい。本発明では、(C)成分はアルカノールアミン塩か、酸型で添加して系中でアルカノールアミン〔後述する(E)成分のアルカリ剤として用いるアルカノールアミン〕で中和することが好ましく、酸化防止剤として、具体的には変色抑制剤として、亜硫酸ナトリウムとして配合されるが、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの金属系の対イオンは、少ないことが好ましく、実質的には5質量%以下、特には3質量%以下であることが好ましい。
【0054】
(C)成分を含有する場合、(A)成分と(C)成分の質量比は(A)/(C)=25/75〜96/4であることが好ましく、更には50/50〜90/10であることがより好ましく、特には60/40〜80/20であることが最も好ましい。この質量比を満たした上で、界面活性剤中、(C)成分の割合は1〜60質量%、更に1〜40質量%が好ましい。また、組成物中の(C)成分の含有量は1〜30質量%、更に1〜20質量%が好ましい。なお(C)成分の陰イオン界面活性剤は、塩の分子量によって、その質量が異なることから、本発明では塩ではなく、酸型すなわち対イオンを水素原子イオンと仮定した時の質量を(C)成分の質量とする。
【0055】
(A)成分、(B)成分及び(C)成分以外の界面活性剤としては、炭素数10〜18のアルキル基を有するスルホベタイン又はカルボベタインなどの両性界面活性剤などを挙げることができ、本発明の効果を損なわない範囲で配合してもよい。界面活性剤中、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計が90〜100質量%、更に95〜100質量%、特に実質的に100質量%であることが好ましい。
【0056】
本発明の洗浄剤組成物は、抗真菌効果が得られるため及び、(a−1)成分及び(B)成分を洗濯液中に分散させ且つ洗浄剤として使用するために、界面活性剤を20質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上含有することでき、上限値は90質量%以下、好ましくは80質量%以下である。
【0057】
本発明は、特に液体洗浄剤組成物に関して、化合物(a−3)を含有することで、界面活性剤含有量が40質量%以上の系で保存安定性に優れ且つ水溶解時にゲル形成しない組成物を得ることができる。
【0058】
本発明の繊維製品用洗浄剤組成物は、繊維製品用液体洗浄剤組成物として用いることに適している。従って本発明では、前記繊維製品用洗浄剤組成物の条件を満たした上で、界面活性剤を40〜90質量%、水混和性有機溶剤(D)を1〜40質量%及び水を含有する液体の繊維製品用洗浄剤組成物をもまた開示することができる。
【0059】
(D)成分は、液体洗浄剤組成物として用いる場合に、界面活性剤との関係から、保存安定性や水への溶解性の上で配合する事が好ましい。本発明でいう水混和性有機溶剤とは、25℃のイオン交換水1Lに50g以上溶解するもの、すなわち、溶解の程度が50g/L以上である溶剤を指す。
【0060】
本発明の繊維製品用液体洗浄剤組成物では、(D)成分の含有量は、安定性、溶解性の点から、組成物中、1〜40質量%であり、2〜30質量%が好ましく、4〜20質量%がより好ましく、5〜10質量%が更に好ましい。また、安定性、溶解性の観点から、(A)成分と(C)成分の合計と(D)成分との質量比〔(A)+(C)〕/(D)は90/10〜65/35が好ましく、85/15〜70/30がより好ましく、80/20〜70/30が更に好ましい。
【0061】
(D)成分としては、洗浄性能、安定性、溶解性の点で、水酸基及び/又はエーテル基を有する水混和性有機溶剤が好ましい。
【0062】
水混和性有機溶剤としては、下記(D−1)〜(D−6)が挙げられる。
(D−1)エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルカノール類、
(D−2)エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコールなどの炭素数2〜6のアルキレングリコール類やグリセリン、
(D−3)ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール又は重量平均分子量400〜5000のポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールなどの炭素数2〜4のアルキレングリコール単位からなるポリアルキレングリコール類、
(D−4)ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、又は1−エトキシ−2−プロパノールなどの炭素数2〜4のアルキレングリコール単位の(ポリ)アルキレングリコールと炭素数1〜5のアルカノールからなる(ポリ)アルキレングリコール(モノ又はジ)アルキルエーテル、
(D−5)1−メチルグリセリンエーテル、2−メチルグリセリンエーテル、1,3−ジメチルグリセリンエーテル、1−エチルグリセリンエーテル、1,3−ジエチルグリセリンエーテル、トリエチルグリセリンエーテル、1−ペンチルグリセリルエーテル、2−ペンチルグリセリルエーテル、1−オクチルグリセリルエーテル、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル、などの炭素数1〜8のアルキルを有するアルキルグリセリルエーテル類、
(D−6)2−フェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、平均分子量約480のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、2−ベンジルオキシエタノール、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル等の炭素数2〜3のアルキレングリコール単位を有する(ポリ)アルキレングリコールの芳香族エーテル類
【0063】
(D)成分は、組成物の粘度調整剤、ゲル化抑制剤として有効であり、上記の(D−1)〜(D−6)の分類から選ばれる1種以上を使用する。上記の(D−1)アルカノール類、(D−2)グリコール類又はグリセリン、(D−4)(ポリ)アルキレングリコール(モノ又はジ)アルキルエーテル類、及び(D−6)芳香族エーテル類から選ばれる化合物を用いることが好ましく、(D−2)グリコール類、(D−4)アルキルエーテル類、及び(D−6)芳香族エーテル類から選ばれる化合物を用いることがより好ましく、より具体的にはプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、モノ〜トリエチレングリコールモノフェニルエーテルから選ばれる化合物を用いることで効果的に組成物の粘度調整、ゲル化抑制を達成できることから最も好ましい。
【0064】
本発明の繊維製品用液体洗浄剤組成物は、安定性、溶解性向上の点で、組成物の残部の水を含有することが好ましい。水の含有量は、組成物中、5〜80質量%が好ましく、更に10〜70質量%が好ましく、より更に15〜60質量%が好ましい。水はイオン交換水などの組成に影響しないものを用いることが好ましい。
【0065】
<その他の成分>
以下、本発明の繊維製品用洗浄剤組成物に配合可能な他の成分を挙げる。
〔(E)アルカリ剤〕
本発明の組成物には、アルカリ剤〔以下、(E)成分という〕を配合することが好ましい。アルカリ剤は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などの他に、液体洗浄剤では一般的なアルカノールの炭素数が2〜4の1〜3つのアルカノール基を有するアルカノールアミンを挙げることができる。このうちアルカノールはヒドロキシエチル基であるものが好ましい。アルカノール基以外は水素原子であるが、メチル基であってもアルカリ剤として使用することができる。アルカノールアミンとしては、2−アミノエタノール、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、イソプロパノールアミン混合物(モノ、ジ、トリの混合物)等のアルカノールアミン類が挙げられる。本発明ではモノエタノールアミン、トリエタノールアミン、特にはモノエタノールアミンが最も好ましい。(E)成分は後述するpH調整剤として用いることができる。
【0066】
本発明の組成物は、(E)成分を、好ましくは0.5〜8質量%、より好ましくは1〜7質量%含有する。なかでも、(E)成分としてアルカノールアミンを、好ましくは0.5〜8質量%、より好ましくは1〜7質量%含有する。なおアルカノールアミンは、(C)成分である陰イオン界面活性剤の塩などの対イオンとして配合することもでき、それらの量も(E)成分として算入する。
【0067】
〔(F)成分〕
本発明の組成物は、キレート剤〔以下、(F)成分という〕を含有することができる。(F)成分のキレート剤は、液体洗浄剤に用いられる公知のものを用いることができ、例えば、ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、ジエンコル酸等のアミノポリ酢酸又はこれらの塩、ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、オキシジコハク酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキシメチル酒石酸等の有機酸又はこれらの塩、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、これらのアルカリ金属または低級アミン塩等が挙げられる。本発明では前記(E)成分であげたアルカノールアミンを塩とすることが好ましく、酸で配合し系中でアルカリ剤で中和した塩であってもよい。
【0068】
(F)成分の組成物中の配合割合は、酸型とみなした場合に0.1〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜4質量%、更に好ましくは0.1〜3質量%である。
【0069】
〔その他の成分〕
更に本発明の組成物には、次の(i)〜(xi)に示す成分を本発明の効果を損なわない程度で配合することができる。
(i)ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、カルボキシメチルセルロース、重量平均分子量5000以上のポリエチレングリコール、無水マレイン酸−ジイソブチレン共重合体、無水マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体、無水マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、及び特開昭59−62614号公報の請求項1〜21(1頁3欄5行〜3頁4欄14行)記載のポリマーなどの再汚染防止剤及び分散剤
(ii)ポリビニルピロリドン等の色移り防止剤
(iii)過酸化水素、過炭酸ナトリウムまたは過硼酸ナトリウム等の漂白剤
(iv)テトラアセチルエチレンジアミン、特開平6−316700号の一般式(I−2)〜(I−7)で表される漂白活性化剤等の漂白活性化剤
(v)セルラーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ等の酵素
(vi)ホウ素化合物、カルシウムイオン源(カルシウムイオン供給化合物)、ビヒドロキシ化合物、蟻酸等の酵素安定化剤
(vii)蛍光染料、例えばチノパールCBS(商品名、チバスペシャリティケミカルズ製)やホワイテックスSA(商品名、住友化学社製)として市販されている蛍光染料
(viii)ブチルヒドロキシトルエン、ジスチレン化クレゾール、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウム等の酸化防止剤
(ix)パラトルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、メタキシレンスルホン酸、安息香酸、及びこれらの塩(防腐剤としての効果もある)などの可溶化剤
(x)オクタン、デカン、ドデカン、トリデカンなどのパラフィン類、デセン、ドデセンなどのオレフィン類、塩化メチレン、1,1,1−トリクロロエタンなどのハロゲン化アルキル類、D−リモネンなどのテルペン類などの水非混和性有機溶剤
(xi)その他、色素、香料、抗菌防腐剤、シリコーン等の消泡剤
【0070】
以下に本発明の組成物中、前記任意成分を配合する場合の指標としての濃度を示すが、本発明の効果を損なわない程度に適宜調整され、配合に適さない場合は除外される。(i)の再汚染防止剤及び分散剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(ii)の色移り防止剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(iii)の漂白剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましく、液体洗浄剤の場合には過酸化水素を0.5〜5質量%含有することが好ましい。(vi)の漂白活性化剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(v)の酵素の含有量は0.001〜2質量%が好ましい。(vi)の酵素安定化剤の含有量は0.001〜2質量%が好ましい。(vii)の蛍光染料の含有量は0.001〜1質量%が好ましい。(viii)の酸化防止剤の含有量は0.01〜2質量%が好ましい。(ix)の可溶化剤は0.1〜2質量%が好ましい。(x)の水非混和性有機溶剤は0.001〜2質量%が好ましい。(xi)のその他の成分は例えば公知の濃度で配合することができる。
【0071】
なお、上記任意成分のうち(ix)、(x)は組成物の安定性に影響を及ぼすのでその配合には特に注意を要する。
【0072】
本発明の繊維製品用洗浄剤組成物の形態は前記したように液体、固体のいずれでもよく、特に問わないが、液体が好ましい。
【0073】
液体組成物である場合、使用する上で差し支えないpHでよく、特に問わないが、液体洗浄剤組成物として使用する場合、JIS K3362:1998記載の20℃で測定するpHは洗浄性能、安定性の点から3〜11が好ましく、5〜10がより好ましく、6〜10が更に好ましく、8〜10が特に好ましい。
【0074】
pH調整剤として塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸;多価カルボン酸類、ヒドロキシカルボン酸類等の有機酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等が挙げられ、なかでもpH緩衝の効果の点から、有機酸が好ましい。有機酸として具体的には、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、またはそれらの塩などの多価カルボン酸類;クエン酸、リンゴ酸、グリコール酸、p−ヒドロキシ安息香酸、またはそれらの塩などのヒドロキシカルボン酸類が挙げられ、なかでもクエン酸またはその塩が特に好ましい。pH調整剤は、1種または2種以上混合して用いることができる。pH調整剤の含有量として具体的には、たとえば、洗浄剤組成物中、0.05〜3質量%であることが好ましく、0.1〜1.5質量%であることがより好ましい。該範囲の下限値以上であることによりpHを一定に保つことが容易となる。一方、上限値以下であることにより、pHを6〜10に調整するpH調整効果が充分に得られ、経済的にも有利となる。
【0075】
液体組成物である場合、20℃における粘度は、取り扱いの容易さの点で10〜500mPa・sが好ましく、50〜400mPa・sがより好ましく、100〜300mPa・sが更に好ましい。(D)成分や可溶化剤によりこのような範囲になるように調整することが好ましい。
【0076】
本発明において粘度はB型粘度計により測定する。ローターは粘度に合ったものを選択する。回転数60r/minで回転し、回転開始から60秒後の粘度を組成物の粘度とする。
【0077】
本発明の洗浄剤組成物は繊維製品用であり、衣料、タオル、寝具、布帛等の繊維製品に適用できる。
【0078】
以下、本発明の繊維製品用洗浄剤組成物をより明確化した液体洗浄剤組成物の組成例を挙げる。より好ましい態様は前記した各成分の好ましい記載内容に従って、更に限定することができる。
[液体洗浄剤組成物の組成例]
界面活性剤を20〜90質量%、水混和性有機溶剤(D)を1〜40質量%、及び水を含有するpHが8〜10の繊維製品用液体洗浄剤組成物であって、 界面活性剤として、組成物中15〜70質量%の非イオン界面活性剤(A)、組成物中0.5〜15質量%の陽イオン界面活性剤(B)、及び陰イオン界面活性剤(C)を含有し、
非イオン界面活性剤(A)中、下記一般式(a1)で示される化合物(a−1)、下記一般式(a2)で示される化合物(a−2)、及び下記一般式(a3)で示される化合物(a−3)の合計が80質量%以上を占め、
化合物(a−1)及び化合物(a−2)に関して、(a−2)/(a−1)の質量比が0/100〜70/30であり、
化合物(a−1)、化合物(a−2)及び化合物(a−3)に関して、(a−3)/[(a−1)+(a−2)]の質量比が60/40〜95/5であり、
洗浄剤組成物中に化合物(a−1)を0.5〜15質量%含有する、
繊維製品用液体洗浄剤組成物。
1a−O−(C24O)m1−H (a1)
[式中、R1aは、炭素数12の直鎖アルキル基であって、R1a−O−の酸素原子と結合するR1aの炭素原子が第1炭素原子であり、m1は2〜6の整数である。]
2a−O−[(C24O)m2/(AO)n2]−H (a2)
[式中、R2aは、炭素数8〜22の鎖式炭化水素基であって、AOは炭素数3〜5のオキシアルキレン基である。m2は0〜10の整数であって、n2は0〜8の整数(但し、n2=0の時はm2は7〜10の整数である)である。"/"はC24O基及びAO基が、ランダム又はブロックのいずれに結合したものであってもよいことを示す。]
3a−O[(C24O)m3/(AO)n3]−H (a3)
[式中、R3aは、炭素数8〜22の鎖式炭化水素基であって、AOは炭素数3〜5のオキシアルキレン基である。m3+n3は11〜60の整数であって、m3は11以上の整数、n3は0〜8の整数である。"/"はC24O基及びAO基が、ランダム又はブロックのいずれに結合したものであってもよいことを示す。]
【0079】
なお、上記組成例で示した液体洗浄剤組成物の非イオン界面活性剤(A)として、オキシエチレン基の平均付加モル数が2〜5であるポリオキシエチレンラウリルエーテル(A−1)、及び炭素数8〜22の炭化水素基を有し、オキシエチレン基の平均付加モル数が15〜30の数であり、炭素数3〜5のオキシアルキレン基の平均付加モル数が0〜5(但し、炭素数3〜5のオキシアルキレン基の平均付加モル数が0の時は、オキシエチレン基の平均付加モル数は18以上である。)である、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル又はポリオキシアルキレンアルケニルエーテル(A−2)を含有することで、前記化合物(a−1)、化合物(a−2)及び化合物(a−3)の条件を達成することが容易に調整でき、効果的である。また、前記液体洗浄剤組成物の組成例において、界面活性剤が、非イオン界面活性剤(A)、陽イオン界面活性剤(B)、及び陰イオン界面活性剤(C)からなることが好ましい。更には前記液体洗浄剤組成物の組成例の非イオン界面活性剤(A)と陰イオン界面活性剤(C)は、質量比として(A)/(C)=25/75〜96/4であることが好ましい。但し陰イオン界面活性剤は酸形態としての質量として求めるものとする。
【0080】
また本発明の繊維製品用洗浄剤組成物を液体洗浄剤組成物とする場合も同様に、水混和性有機溶剤(D)を1〜40質量%、及び水を含有するpHが8〜10の繊維製品用液体洗浄剤組成物であって、非イオン界面活性剤(A)は、(A−1)成分と(A−2)成分及び、化合物(a−1)として規定されてもよい。
【0081】
従って、本発明の更なる他の態様として、非イオン界面活性剤(A)を15〜70質量%陽イオン界面活性剤(B)を0.5〜15質量%、及び陰イオン界面活性剤(C)を含有し、
非イオン界面活性剤(A)として、オキシエチレン基の平均付加モル数が2〜6であるポリオキシエチレンラウリルエーテル〔以下(A−1)成分という〕と下記一般式(I)で示される非イオン界面活性剤〔以下(A−2)成分という〕とを合計で、(A)成分中に80〜100質量%含み、(A−2)/(A−1)の質量比が50/50〜97/3であり、下記一般式(a1)で示される化合物(a−1)を組成物中に0.5〜15質量%含有する、繊維製品用洗浄剤組成物を挙げることができる。
31a−O[(C24O)p/(AO)q]H (I)
〔式中、R31aは炭素数8〜22のアルキル基又はアルケニル基、好ましくはアルキル基であり、AOは炭素数3〜5のオキシアルキレン基である。p、qは平均付加モル数であり、pは15〜30の数であり、qは0〜5の数である。qが0のときはpは18以上である。"/"はC24O基及びAO基が、ランダム又はブロックのいずれに結合したものであってもよいことを示す。〕
1a−O−(C24O)m1−H (a1)
[式中、R1aは、炭素数12の直鎖アルキル基であって、R1a−O−の酸素原子と結合するRの炭素原子が第1炭素原子であり、m1は2〜6の整数である。]
【0082】
この場合、各成分及び各化合物の好ましい態様や好ましい含有量並びにその他任意の成分の要件は前記したものと同じである。
【0083】
処理液は洗濯用の洗浄液であり、前記洗浄剤組成物を水道水で希釈した洗浄液であることが好ましい。
【0084】
本発明の繊維製品用洗浄剤組成物は、水で希釈した洗浄媒体(洗浄液という場合もある)として、通常の繊維製品用の洗浄剤組成物と同様に洗浄工程で用いられる。その場合、該洗浄媒体で、繊維製品を洗浄処理することで、優れた洗浄性が得られる一方で、抗真菌性が繊維製品に付与される。抗真菌性は、通常の洗濯のように、洗浄工程後のすすぎ工程を経た後でも維持される。更にすすぎ工程後、脱水工程を経て、乾燥工程に移るが、本発明の繊維製品用洗浄剤組成物は梅雨時などの高湿度条件の室内乾燥下での真菌の発生を抑制することができる。本発明の繊維製品用洗浄剤組成物で処理された繊維製品は、湿潤状態が持続するような使用における真菌の発生を抑制することができる。
【0085】
本発明の洗浄剤組成物は水1Lに対して、0.3g/L〜1g/L、界面活性剤を40質量%以上含有する場合は、0.3g/L〜0.7g/Lの範囲で希釈して洗浄液として用いることが好ましい。その場合、化合物(a−1)の洗浄媒体中の好ましい濃度は、2〜45ppm、特には4〜40ppmであり、(B)成分の洗浄媒体中の好ましい濃度は、3〜80ppm、特には5〜70ppmである。化合物(a−2)及び化合物(a−3)の濃度、(A−2)/(A−1)質量比、(A)成分、(B)成分並びにその他任意成分の洗浄媒体中の濃度は、前記、洗浄剤組成物中の各成分比率の関係を満たした要件になる。
【0086】
或いは化合物(a−1)の洗浄媒体中の好ましい濃度、(B)成分の洗浄媒体中の好ましい濃度は同様であって、且つ(A−2)/(A−1)質量比、(A)成分、(B)成分並びにその他任意成分の洗浄媒体中の濃度は、前記、洗浄剤組成物中の各成分比率の関係を満たした要件になる。
【実施例】
【0087】
実施例1
表1に示す液体洗浄剤組成物を調製した。いずれの組成も衣類の洗濯に対し十分な洗浄性を有するものである。その上で抗真菌効果に関して下記評価を行った。表1の組成物は、洗濯液として、水1500倍に希釈した溶液を評価に用いた。すなわち、下記の「(2−3)真菌(カビ)付着布の処理方法」において、処理液として、表1の液体洗浄剤組成物20gを30L(≒30kg)の水で希釈した溶液を用いた。結果を表1に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
表1に記載の化合物は以下の通りである。
・化合物a1−1:ペンタオキシエチレンラウリルエーテル〔一般式(a1)においてR1aがラウリルアルコール由来の第1炭素原子に酸素原子が結合している直鎖のアルキル基であり、m1=5の化合物(NIKKOL BL−5SY、日光ケミカルズ(株)製)〕
・化合物a2−1:オクタオキシエチレンラウリルエーテル〔一般式(a2)においてR2aがラウリルアルコール由来の第1炭素原子に酸素原子が結合している直鎖のアルキル基であり、m2=8、n2=0の化合物(NIKKOL BL−8SY、日光ケミカルズ(株)製)〕
・非イオン界面活性剤1:ポリオキシエチレン(9)ポリオキシプロピレン(2)ポリオキシエチレン(9)アルキルエーテル(カッコ内の数値は平均付加モル数)〔炭素数10〜14の直鎖1級アルコール1モル当りにエチレンオキシドを9モル、プロピレンオキシドを2モル、エチレンオキサイドを9モルの順にブロック付加させたもの、一般式(I−5)において、p1=9、n=2、p2=9の化合物であって(A−2)成分である。一般式(a3)で示される化合物(a−3)95質量%及び一般式(a2)で示される化合物(a−2)5質量%から構成されている。未反応アルコールやEO1モル品は殆ど含まれていない。〕
・陽イオン界面活性剤1:ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド(表中の含有量は対陰イオンを除いた質量に基づくものである。)
・陰イオン界面活性剤1:ミリスチン酸ナトリウム(表中の含有量は酸型換算のものである。)
【0090】
<評価方法>
(1)使用真菌種
下記2種類のカビを用いた。
Cladosporium cladosporioides NBRC6348
Exophiala mansonii NBRC5982
【0091】
(2)評価(布上でのカビ増殖抑制試験)
(2−1)真菌(カビ)懸濁液の調製
供試真菌をポテト・デキストロース寒天培地(和光純薬工業)(クロラムフェニコール50mg/Lを含む)に上記真菌を摂種、常温にて1〜2週間培養し、これを前培養プレートとした。前培養プレートに0.5%Tween80を添加した生理食塩水を加えコンラージでコロニー表面を掻き取って得られた真菌懸濁液を約104CFU/mLに調製する。
【0092】
(2−2)布上への真菌(カビ)供与方法
3cm×3cmに裁断した綿メリヤス布をいれた容器に上記真菌懸濁液を一定量入れ、振とう機で10分間120rpm攪拌して布に菌を付着させる。
【0093】
(2−3)真菌(カビ)付着布の処理方法
表1の液体洗浄剤組成物を洗濯液として希釈した処理液に、上記(2−2)で調製した布2枚を加え、15分間200rpm攪拌後、滅菌水にて5分間濯いだ後、布を乾燥させた。なお前記処理液による処理を行わずに滅菌水で濯いだものをコントロールとする。
【0094】
(2−4)真菌(カビ)処理布の培養及び評価方法
2分の1濃度のポテト・デキストロース培地(和光純薬工業)(クロラムフェニコール50mg/Lを含む)500μLを上記布に添加する。滅菌した容器中で25℃の培養庫で加湿培養を行う。約1週間培養(コントロールに真菌が十分に生育する程度)を行い、布上での真菌の生育により生じた着色の範囲をコントロールと目視で比較し、下記評価基準に従って抗真菌効果を判定した。Cladosporium cladosporioides NBRC6348による結果を「抗カビ性(1)」とし、Exophiala mansonii NBRC5982による結果を「抗カビ性(2)」とした。
結果を表1に合わせて示した。
・評価基準
◎ コントロールに対して真菌による着色汚れが9割以上減少している。
○ コントロールに対して真菌による着色汚れが8割以上9割未満減少している。
△ コントロールに対して真菌による着色汚れが5割以上8割未満減少している。
× コントロールに対して真菌による着色汚れが5割未満減少している。
【0095】
実施例2
表2に液体洗浄剤組成物を示す。これら液体洗浄剤組成物10gを、水30L(≒30kg)に対して溶解せしめた洗濯液は、いずれも衣料用洗浄剤として要求される洗浄性を示す。これら液体洗浄剤組成物のうち、配合例2−1〜2−3は、配合例2−1〜2−3に対応する配合例2−4〜2−12のそれぞれのいずれの組成物に対して、より優れた抗真菌効果を示した。
【0096】
抗真菌効果の優れた配合例2−1〜2−3のうち、配合例2−1、2−3は、10℃程度でも固体を生じず、特に配合例2−1は5℃の温度においても固体を生じず、低温保存安定性が良好である。また配合例2−1は5℃の冷水に対してゲル化を生じることはない。
【0097】
なお配合例2−5は、配合例2−1〜2−3に次ぐ抗真菌性を示したが、低温保存時に固化しやすく、水希釈の際にゲルを生じ易い。
【0098】
配合例2−7〜2−9は抗真菌性を全く示さなかった。配合例2−10〜2−12は若干の抗菌性を示したが配合例2−4及び2−6よりも明らかに劣る抗菌性であった。
【0099】
【表2】

【0100】
表3の液体洗浄剤組成物(参考例3、及び配合例3−1〜3−4)を調製した。使用量は水30Lに対して10g投与した。いずれも優れた洗浄力を示した。抗真菌効果について、配合例3−1〜3−4は、参考例3に対して優位な結果を得られた。なお非イオン界面活性剤4の濃度が多い組成ほど抗真菌効果に優れていた。
【0101】
【表3】

【0102】
表4の配合例4−1〜4−5は、本発明の液体洗浄剤組成物であり、衣料用の洗浄剤として使用することができる。
【0103】
【表4】

【0104】
表中の成分は以下のものである。陽イオン界面活性剤1、非イオン界面活性剤1は、表1と同じものである。
・非イオン界面活性剤2:ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル(カッコ内の数値は平均付加モル数)〔ラウリルアルコール(炭素数12の直鎖1級アルコール)1モル当たりにエチレンオキシドを10モル付加させたもの、一般式(I−0)において、p=10の化合物である。化合物(a−1)の割合は13質量%、化合物(a−2)の割合は28質量%、化合物(a−3)の割合は58質量%であり、一般式(a1)においてm1=4又は5の化合物が全化合物(a−1)中に占める割合は、38質量%であった。その他に、未反応アルコールとオキシエチレン基が1モルの化合物を合計で1質量%含む。〕
・非イオン界面活性剤3:ポリオキシエチレン(20)ラウリルエーテル(カッコ内の数値は平均付加モル数)〔ラウリルアルコール(炭素数12の直鎖1級アルコール)1モル当たりにエチレンオキシドを20モル付加させたもの、一般式(I−0)において、p=20の化合物であって、(A−2)成分である。化合物(a−1)の割合は0.5質量%、化合物(a−2)の割合は1.5質量%、化合物(a−3)の割合は98質量%であり、未反応アルコールとオキシエチレン基が1モルの化合物の割合は0.1質量%未満であることから0質量%とした。〕
・非イオン界面活性剤4:ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル〔カッコ内の数値は平均付加モル数〕〔ラウリルアルコール(炭素数12の直鎖1級アルコール)1モル当りにエチレンオキシドを4モル付加させたものであって(A−1)成分である。化合物(a−1)の割合は60質量%、化合物(a−2)の割合は18質量%、化合物(a−3)の割合は6質量%であり、一般式(a1)においてm1=4又は5の化合物が全化合物(a−1)中に占める割合は、32質量%であった。その他は、未反応アルコールとオキシエチレン基が1モルの化合物から構成されている。〕
・非イオン界面活性剤5:ポリオキシエチレン(6)ラウリルエーテル〔カッコ内の数値は平均付加モル数〕〔ラウリルアルコール(炭素数12の直鎖1級アルコール)1モル当りにエチレンオキシドを6モル付加させたものであって(A−1)成分である。化合物(a−1)の割合は37質量%、化合物(a−2)の割合は33質量%、化合物(a−3)の割合は24質量%であり、一般式(a1)においてm1=4又は5の化合物が全化合物(a−1)中に占める割合は、12質量%であった。その他は、未反応アルコールとオキシエチレン基が1モルの化合物から構成されている。〕
・非イオン界面活性剤6:ポリオキシエチレン(18)ポリオキシプロピレン(2)アルキルエーテル(カッコ内の数値は平均付加モル数)〔炭素数10〜14の直鎖1級アルコール1モル当りにエチレンオキシドを18モル、プロピレンオキシドを2モルの順にブロック付加させたもの、一般式(I−2)において、p=18、n=2の化合物であって(A−2)成分である。一般式(a3)で示される化合物(a−3)96質量%及び一般式(a2)で示される化合物(a−2)3質量%から構成されている。未反応アルコールやEO1モル品は殆ど含まれていない。〕
・陰イオン界面活性剤2:ミリスチン酸(系中でモノエタノールアミンで中和されている。表中の含有量は酸型換算のものである。)
・陰イオン界面活性剤3:炭素数12のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸(系中でモノエタノールアミンで中和されている。表中の含有量は酸型換算のものである。)
・陰イオン界面活性剤4:炭素数12及び14の直鎖1級アルコールから得られる、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(オキシエチレン基の平均付加モル数は2.0、Na塩)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(a1)で示される化合物(a−1)、下記一般式(a2)で示される化合物(a−2)及び下記一般式(a3)で示される化合物(a−3)を含む非イオン界面活性剤(A)〔以下、(A)成分という〕15〜70質量%と、陽イオン界面活性剤(B)〔以下、(B)成分という〕0.5〜15質量%とを含有する繊維製品用洗浄剤組成物であって、
洗浄剤組成物中に化合物(a−1)を0.5〜15質量%含有し、
化合物(a−1)及び化合物(a−2)に関して、(a−2)/(a−1)の質量比が0/100〜70/30であり、
化合物(a−1)、化合物(a−2)及び化合物(a−3)に関して、(a−3)/[(a−1)+(a−2)]の質量比が10/90〜99/1である、
繊維製品用洗浄剤組成物。
1a−O−(C24O)m1−H (a1)
[式中、R1aは、炭素数12の直鎖アルキル基であって、R1a−O−の酸素原子と結合するRの炭素原子が第1炭素原子であり、m1は2〜6の整数である。]
2a−O−[(C24O)m2/(AO)n2]−H (a2)
[式中、R2aは、炭素数8〜22の鎖式炭化水素基であって、AOは炭素数3〜5のオキシアルキレン基である。m2は0〜10の整数であって、n2は0〜8の整数(但し、n2=0の時はm2は7〜10の整数である)である。"/"はC24O基及びAO基が、ランダム又はブロックのいずれに結合したものであってもよいことを示す。]
3a−O[(C24O)m3/(AO)n3]−H (a3)
[式中、R3aは、炭素数8〜22の鎖式炭化水素基であって、AOは炭素数3〜5のオキシアルキレン基である。m3+n3は11〜60の整数であって、m3は11以上の整数、n3は0〜8の整数である。"/"はC24O基及びAO基が、ランダム又はブロックのいずれに結合したものであってもよいことを示す。]
【請求項2】
陽イオン界面活性剤(B)が下記一般式(b1)で表される化合物である請求項1に記載の繊維製品用洗浄剤組成物。
【化1】


[式中、R1bは炭素数6〜22の炭化水素基であり、R1b中に−(A'O)s−を含んでも良い。A'Oは、オキシエチレン基又はオキシプロピレン基であり、sはA'Oの平均付加モル数を表し0〜10であり、R2b、R3b、R4bは、それぞれ独立にメチル基、エチル基、プロピル基、ベンジル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、Xはハロゲン原子、CH3SO4又はCH3CH2SO4である。]
【請求項3】
繊維製品用洗浄剤組成物が液状である請求項1又は2に記載の繊維製品用洗浄剤組成物。
【請求項4】
界面活性剤を40〜90質量%、水混和性有機溶剤(D)を1〜40質量%、及び水を含有する請求項3に記載の繊維製品用洗浄剤組成物。
【請求項5】
更に陰イオン界面活性剤(C)を含有し、非イオン界面活性剤(A)と陰イオン界面活性剤(C)に関して、(A)/(C)の質量比が25/75〜96/4である請求項1〜4何れかに記載の繊維製品用洗浄剤組成物。
【請求項6】
非イオン界面活性剤(A)を15〜70質量%及び陽イオン界面活性剤(B)を0.5〜15質量%含有する繊維製品用洗浄剤組成物であって、
非イオン界面活性剤(A)として、オキシエチレン基の平均付加モル数が2〜7であるポリオキシエチレンラウリルエーテル〔以下(A−1)成分という〕と下記一般式(I)で示される非イオン界面活性剤〔以下(A−2)成分という〕とを合計で、(A)成分中に80〜100質量%含み、
(A−1)成分と(A−2)成分の質量比が、(A−2)/(A−1)で50/50〜97/3であり、
下記一般式(a1)で示される化合物(a−1)を組成物中に0.5〜15質量%含有する、
繊維製品用洗浄剤組成物。
31a−O[(C24O)p/(AO)q]H (I)
〔式中、R31aは炭素数8〜22のアルキル基又はアルケニル基、好ましくはアルキル基であり、AOは炭素数3〜5のオキシアルキレン基である。p、qは平均付加モル数であり、pは15〜30の数であり、qは0〜5の数である。qが0のときはpは18以上である。"/"はC24O基及びAO基が、ランダム又はブロックのいずれに結合したものであってもよいことを示す。〕
1a−O−(C24O)m1−H (a1)
[式中、R1aは、炭素数12の直鎖アルキル基であって、R1a−O−の酸素原子と結合するRの炭素原子が第1炭素原子であり、m1は2〜6の整数である。]

【公開番号】特開2011−116932(P2011−116932A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119137(P2010−119137)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】