説明

缶の塗装装置及び塗装方法

【課題】アプリケーターロールの外周面に付着したゴミや余剰の塗料を良好に除去するとともに塗膜の厚みのばらつきを抑え、缶胴への塗料の塗布を良好に行うことができ、また耐久性を向上することができる缶の塗装装置及び塗装方法を提供することにある。
【解決手段】外周面3aが缶胴に摺接されるアプリケーターロール3と、塗料供給部から供給された塗料Pを前記アプリケーターロール3の外周面3aに付着させるグラビアロール4とを備えた缶の塗装装置1であって、前記アプリケーターロール3の外周面3aに摺接して該外周面3aに付着したゴミDや余剰の塗料Pを除去するゴミ取りロール5と、前記ゴミ取りロール5に付着したゴミDや塗料Pを掻き取るスクレーパー8と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、飲料缶等の缶胴に印刷を施すとともに、この缶胴に塗料を塗布し塗膜を形成する缶の塗装装置及び塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、飲料缶等の缶の略円筒状の缶胴には、デザインとなるインキが印刷された後、このインキ層や缶の基材(アルミやスチール等)を保護したり、或いは缶を搬送する際に滑り性を向上させて搬送ライン上で缶の搬送不良が起きるのを防止したりするために、インキが未乾燥の状態で、オーバーバーニッシュ(OV)塗料が塗布される。そして、その後工程において、基材にインキとOV塗料とがオーブンで焼き付けられる。
【0003】
従来、缶胴へインキを印刷する印刷機としては、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この印刷機は、インキを版胴の版材に塗布するためのゴミ除去兼用インキロールが、版材にその外周面を接するようにして配置されるとともに、互いに同一回転方向に回転駆動されてインキを版胴の版材に塗布する。そして、さらにこの版材から印刷物へとインキを転写することによって、印刷が行われるようになっている。
【0004】
ところで、この版材の表面には、印刷物等から転移した異物等のゴミが付着している。これらのゴミは、インキを印刷物へ転写する際、これら印刷物に外面汚れや印刷不良を引き起こす原因となる。そこで特許文献1では、ゴミ除去兼用インキロールから版材へとインキが塗布される際、版材の表面に付着しているこれらのゴミを、版胴と同一回転方向に回転駆動するゴミ除去兼用インキロールとの接触抵抗によって掻き取らせ、インキとは逆の流れで版材からこのゴミ除去兼用インキロールへと付着させて、回収するようになっている。つまり、このゴミ除去兼用インキロールは、版材にインキを塗布するとともに、版材に付着したゴミを回収するよう構成されている。
【0005】
そして版材表面からゴミ除去兼用インキロールに回収されたゴミは、該ゴミ除去兼用インキロールの外周面に押圧されて接触させられる板形状のスクレーパー(ゴミ除去用ブレード)によって掻き取られ、このゴミ除去兼用インキロールから除去されるようになっている。
【特許文献1】特開平10−151730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のようにOV塗料を塗布する際には、グラビアロールとアプリケーターロールとが用いられ、グラビアロールでアプリケーターロールの外周面に塗料を付着させ、この外周面から缶胴に塗料を塗布するようになっているが、この塗料の塗布の際にもゴミが問題となる。そしてこのゴミを除去するために、特許文献1のゴミ除去兼用インキロールを適用した場合には、グラビアロールにスクレーパーが押圧されることとなる。
【0007】
ここで、グラビアロールは、アプリケーターロールへの塗料の塗布及びアプリケーターロールからのゴミの除去という二つの作用を兼用しており、これら二つの作用を該グラビアロール及びアプリケーターロールの僅かな接触部分において同時に行うこととなる。このような構成では、アプリケーターロールから充分にゴミを除去できなかったり、また残されたゴミに起因し塗料の塗布を良好に行えなかったりするという問題があった。
【0008】
また、アプリケーターロールの外周面から缶胴へと塗料が塗布された後、前記外周面には、塗布に使われた箇所と使われなかった箇所とに塗料の塗膜の厚みにばらつき(段差)が発生しており、この段差が解消されないまま次の塗料が前記外周面へと重ねて付着されると、この塗膜の厚みの差に起因して塗料が缶胴へ良好に塗布されず仕上がった缶の外観が損なわれるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたもので、アプリケーターロールの外周面に付着したゴミや余剰の塗料を良好に除去するとともに塗膜の厚みのばらつきを抑え、缶胴への塗料の塗布を良好に行うことができ、また耐久性を向上することができる缶の塗装装置及び塗装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。すなわち本発明に係る缶の塗装装置は、外周面が缶胴に摺接されるアプリケーターロールと、塗料供給部から供給された塗料を前記アプリケーターロールの外周面に付着させるグラビアロールとを備えた缶の塗装装置であって、前記アプリケーターロールの外周面に摺接して該外周面に付着したゴミや余剰の塗料を除去するゴミ取りロールと、前記ゴミ取りロールに付着したゴミや塗料を掻き取るスクレーパーと、を備えることを特徴とする。また、本発明に係る缶の塗装方法は、前述の缶の塗装装置を用いた缶の塗装方法であって、アプリケーターロールの外周面にゴミ取りロールを摺接させるとともに、該外周面に付着したゴミや余剰の塗料を除去し、前記ゴミ取りロールに付着したゴミや塗料を、さらにスクレーパーにより掻き取ることを特徴とする。
【0011】
この発明に係る缶の塗装装置及び塗装方法によれば、アプリケーターロールの外周面に押圧されるようにしてゴミ除去専用のゴミ取りロールが接しており、このゴミ取りロールが、前記外周面のゴミや余剰の塗料を良好に除去するとともに、この外周面からグラビアロールへとゴミが転移するのを防止する。従って、缶胴への塗料の塗布が良好に安定して行われる。また、ゴミ取りロールが独立に設けられることにより、従来の印刷機のように、アプリケーターロールとグラビアロールとを同一方向に回転させ、該グラビアロールでアプリケーターロールの外周面のゴミを掻き取るようにして回収する必要がないため、アプリケーターロールとグラビアロールとを互いに逆方向に回転駆動させることができる。よって、これらロール同士の接触抵抗が極めて低減されるので、アプリケーターロール及びグラビアロールの耐久性が向上される。
【0012】
また、ゴミ取りロールを金属やセラミックス等の硬質の材料で形成させることにより、アプリケーターロールの外周面に付着したアルミ片やスチール片等の硬質のゴミをより精度よく掻き取ることができるので、缶胴への塗料の塗布をさらに良好に安定して行うことができる。また、このように硬質の材料で形成されたゴミ取りロールは、その外周面に硬質のスクレーパーを強く押し当てても磨耗したり傷ついたりすることが防止されるため、良好にゴミが除去されるとともに耐久性が高い。
【0013】
また、ゴミ取りロールによって、アプリケーターロールの外周面の塗膜の厚みが均一に均されるようにされているので、缶胴への塗料の塗布が安定して行われるとともに、仕上がった缶の外観がよい。
【0014】
また、本発明の缶の塗装装置において、前記ゴミ取りロールは、その回転軸が前記アプリケーターロールの回転軸と平行に配置されるとともに、前記アプリケーターロールとの接触位置が、前記アプリケーターロールの回転方向において前記缶胴との接触位置よりも下流側、且つ、前記グラビアロールとの接触位置よりも上流側に位置するように構成されていることとしてもよい。これによれば、このゴミ取りロールはアプリケーターロールの外周面からゴミや余剰の塗料を除去する効果を確実に奏効せしめるとともに、前記外周面の塗膜の厚みをより均一に均すことができる。
【0015】
また本発明の缶の塗装装置において、前記ゴミ取りロールは、前記アプリケーターロールの回転方向と逆方向に回転駆動させられていることとしてもよい。これによれば、このゴミ取りロールには、このゴミ取りロールを回転駆動させるための駆動手段が備えられているので、このゴミ取りロールはアプリケーターロール及びスクレーパーとの接触抵抗によりその回転速度を極端に低下させられたり回転停止してしまったりすることなく、安定してアプリケーターロールからゴミや余剰の塗料を回収しスクレーパーで除去させることができる。また、このゴミ取りロールはその回転速度がアプリケーターロールの回転に対して一定とされ安定して駆動されているので、アプリケーターロールの外周面上の塗料の塗膜の厚みをより均一に均すことができる。
【0016】
また本発明の缶の塗装装置において、前記アプリケーターロールの外周面の硬度が、ショア硬度(A)で30〜60の範囲内に設定されていることとしてもよい。これによれば、前記外周面は例えばゴム等で形成されており、そのショア硬度(A)が30〜60の範囲に設定されて比較的硬質とされているので、この外周面に付着したゴミが該外周面に食い込みにくく、ゴミ取りロールでゴミを掻き取りやすいという効果を奏効する。ここで、前記外周面のショア硬度がA30未満に設定されるとゴミが食い込んで回収できなくなり、またA60を超えて設定されると缶の塗装面が波打ち状になり、品質に問題をきたすこととなる。
【0017】
また本発明の缶の塗装装置において、前記アプリケーターロールの外径D1と前記ゴミ取りロールの外径D2との比D1/D2が、2〜5の範囲内に設定されていることとしてもよい。これによれば、アプリケーターロールの外径は、ゴミ取りロールの外径よりも大きく設定されるとともに、ゴミ取りロールの外径に対し2〜5倍とされているので、この缶の塗装装置は運転中にゴミ取りロールから振動が発生するのが防止され、またこのゴミ取りロールでアプリケーターロールの外周面から良好にゴミや余剰の塗料を除去することができる。ここで、アプリケーターロールの外径がゴミ取りロールの外径に対し2倍未満の場合、回転部分の装置が必要以上に大きくなり、装置の巨大化や制御上の支障が生じる虞があり、また逆に5倍を超える場合、ゴミ取りロールが相対的に小さく形成されすぎ、これらアプリケーターロール及びゴミ取りロールの間に設定されるニップ幅も小さくなり過ぎるので、アプリケーターロールの外周面からゴミを良好に回収することが難しくなる。
【0018】
また本発明の缶の塗装装置において、前記スクレーパーによって除去された塗料を回収する回収手段と、回収された塗料に含まれる異物を除去する除去手段と、異物が除去された塗料を前記塗料供給部に搬送する搬送手段とを備えていることとしてもよい。これによれば、ゴミ取りロールでアプリケーターロールの外周面から回収されたゴミや余剰の塗料はスクレーパーで掻き取られ、例えば該スクレーパーの下方に設けられる塗料回収槽等の回収手段によって回収される。そして回収された中から、塗料に含まれる異物(ゴミ)を例えばフィルター等を用いた除去手段によって除去し、次いで異物が除去された塗料を例えばポンプ等の搬送手段によって搬送して、グラビアロールに塗料を付着するための塗料供給部へと再循環させるようになっている。よって、塗料が有効に再利用されるので材料の無駄が少なくコスト削減の効果を奏効する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る缶の塗装装置及び塗装方法によれば、アプリケーターロールの外周面に付着したゴミや余剰の塗料を良好に除去するとともに塗膜の厚みのばらつきを抑え、缶胴への塗料の塗布を良好に行うことができ、また耐久性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る缶の塗装装置の概略構成を示す説明図、図2は駆動部の概略構成を示す説明図である。
図1に示すように、この缶の塗装装置1は、略円筒状に成形された複数のワーク(缶)Wが、夫々の軸線を大きく略円形状に公転させるようにして搬送通路2に沿って搬送され、この搬送通路2の下部近傍に配置される塗装箇所2aにおいて、その軸線を中心に自転されながら外周面(缶胴)に塗料Pを塗布されるようになっている。
【0021】
本実施形態の缶の塗装装置1では、塗料Pとしてオーバーバーニッシュ(OV、艶ニス)を用いており、予めワークWには、図示しない前工程においてその缶胴にデザインとなるインキ印刷が施されている。そしてその後工程として、これらワークWにOVからなる塗料Pを塗布するようになっている。ワークWにOVからなる塗料Pを塗布することによって、基材(アルミやスチール等)やインキ層を保護したり、ワークWの搬送時の滑り性を向上させたりすることができるようになっている。
【0022】
この搬送通路2の下方には、円柱形状のアプリケーターロール3が配設されている。アプリケーターロール3は、その外周面3aがゴムにより形成されており、例えば本実施形態ではこのゴムのショア硬度(A)がA50とされており、比較的硬質なものが用いられる。またアプリケーターロール3はその回転軸C1を中心に回転可能とされており、外周面3aの上方の一部を前述の搬送通路2の塗装箇所2aに重ねるようにして配置されている。また、アプリケーターロール3の回転方向A1は、搬送通路2を搬送するワークWの公転方向とは逆方向とされている。
【0023】
アプリケーターロール3には、その塗装箇所2aよりも回転方向A1の上流側に、円柱形状のグラビアロール4が備えられている。グラビアロール4は、表面に塗料Pが入り込む溝を持ったスチール等の硬質の材料で形成されており、その外周面に塗料供給部(不図示)から塗料Pを供給されるようになっている。そして、その回転軸C2を中心に回転可能とされており、前記外周面をアプリケーターロール3の外周面3aに接して、この外周面3aに塗料Pを付着するようになっている。
【0024】
このグラビアロール4の回転軸C2と、アプリケーターロール3の回転軸C1とは平行に配置されており、またこのグラビアロール4の回転方向A2は、アプリケーターロール3の回転方向A1とは逆方向とされて、互いに同期して回転するようになっている。
【0025】
また、アプリケーターロール3には、塗装箇所2aよりも回転方向A1の下流側に、円柱形状のゴミ取りロール5が備えられている。ゴミ取りロール5は、金属やセラミックス等の比較的硬質の材料で形成されている。また、その回転軸C3を中心に回転可能とされており、その外周面がアプリケーターロール3の外周面3aに押圧された状態で摺接されている。また、この押圧により設定されるこれらロール同士のニップ幅は、ロールの大きさにもよるが、例えば3〜5mm程度とされている。
【0026】
また、アプリケーターロール3の外径D1は、ゴミ取りロール5の外径D2よりも大きく設定されており、その比D1/D2が、5以下とされている。ただし、アプリケーターロール3の外径D1がゴミ取りロール5の外径D2に対し2倍以上が好ましく、その比が2倍未満の場合、回転部分の装置が必要以上に大きくなり、装置の巨大化や制御上の支障が生じる虞があり、また逆に5倍を超える場合、ゴミ取りロール5が相対的に小さく形成されすぎ、ニップ幅も小さくなり過ぎているので、アプリケーターロール3の外周面3aからゴミを良好に回収することが難しくなる。
【0027】
また、ゴミ取りロール5の回転軸C3と、アプリケーターロール3の回転軸C1とは平行に配置されている。また、このゴミ取りロール5の回転方向A3は、アプリケーターロール3の回転方向A1とは逆方向とされており、互いに同期して回転するようになっている。尚、これらロール3,5同士を同期させる目的で、ゴミ取りロール5に後述するスクレーパーが摺接して押圧されることによる接触抵抗の減速を鑑み、ゴミ取りロール5の周速は予めアプリケーターロール3の周速よりも若干速く設定されており、その設定の差は5%程度とされている。そして塗装装置の運転時には、各ロール3,5の周速がほぼ同一とされて同期する。
【0028】
また、図2に示すように、このゴミ取りロール5には、該ゴミ取りロール5を回転駆動するための駆動部6が備えられている。この駆動部6は、モータ及びプーリーを備える駆動源6aと、この駆動源6aの駆動力をアプリケーターロール3及びゴミ取りロール5に伝達するための駆動力伝達部材7と、テンションプーリー6bとを備えている。また駆動力伝達部材7には、プーリー部7aとギア部7bとがその回転軸C4の同軸上に一体とされて備えられており、また、アプリケーターロール3にはギア部3bが回転軸C1の同軸上に一体に備えられ、ゴミ取りロール5にはプーリー部5aが回転軸C3の同軸上に一体に備えられている。
【0029】
そして、駆動源6aのプーリーと駆動力伝達部材7のプーリー部7aとがベルト6cによって巻き回されており、さらにこのプーリー部7aとゴミ取りロール5のプーリー部5aとも、ベルト6dによって巻き回されている。ベルト6dは、さらにテンションプーリー6bを巻き回しており、該テンションプーリー6bによってこのベルト6dは適宜テンションを与えられるとともに、アプリケーターロール3とゴミ取りロール5とを適度に押圧させるようにして互いに接触させている。また、駆動力伝達部材7の小径に形成されるギア部7bとアプリケーターロール3の大径に形成されるギア部3bとが噛合されており、これらギア部7b,3bの減速比によって、アプリケーターロール3とゴミ取りロール5とが同期するように設定されている。
【0030】
また、図1に示すように、このゴミ取りロール5には、アプリケーターロール3との接触部分よりも回転方向A3の下流側に、板形状のスクレーパー8が備えられている。このスクレーパー8は、金属等の硬質な素材で形成されており、そのゴミ取りロール5の回転軸C3と平行に延在する本体の角部をゴミ取りロール5に押圧させるようにして接触させた状態で固定支持されている。
【0031】
また、このスクレーパー8の下方には、上方が開放された容器状の塗料回収槽(回収手段)9が配置されている。また、この塗料回収槽9の槽部分は、ゴミ等の異物を除去し回収するためのフィルター(除去手段)10と接続管により連通されており、さらにこのフィルター10は、グラビアロール4に塗料Pを供給するための前述の塗料供給部とポンプ(搬送手段)11を介して接続管により連通されている。
【0032】
また、図1において、アプリケーターロール3の塗装箇所2aよりも回転方向A1の下流側の外周面3aに付着するDや、ゴミ取りロール5の外周面に付着するDは、ワークWへの塗料Pの塗布の際に逆にワークWからこれらロールに転移した異物等のゴミを示している。また、アプリケーターロール3の外周面3aの塗装箇所2aの前記下流側には、ワークWへの塗料Pの塗布に使用されずに残った余剰の塗料Pが、塗膜の所々に段差を形成して付着している。
【0033】
次に、この缶の塗装装置1を用いたワークWへの塗料Pの塗布について説明する。
まず、グラビアロール4の外周面全体に、塗料供給部から塗料Pが供給されて満遍なく付着される。次いで、このグラビアロール4に摺接するとともに互いに逆方向に回転するアプリケーターロール3の外周面3aに該グラビアロール4から塗料Pが付着されるとともに、付着された塗料Pはこの外周面3a上を回転方向A1の方向に移動していく。
【0034】
この外周面3a上を移動し塗装箇所2aに達した塗料Pは、この塗装箇所2aに搬送されてきたワークWが該塗装箇所2aにおいてその軸線回りに自転するに伴い、該ワークWの缶胴へと塗布される。この塗布後、塗装箇所2aより回転方向A1の下流側のアプリケーターロール3の外周面3a上には塗布に使われなかった余剰の塗料PやワークWから逆に該アプリケーターロール3に転移した異物等のゴミDが付着している。
【0035】
これら余剰の塗料PやゴミDは、前記外周面3a上を塗装箇所2aの前記下流側に設けられるゴミ取りロール5まで移送されていく。ゴミ取りロール5は、アプリケーターロール3の外周面3aに押圧されるようにして摺接されており、これら余剰の塗料PやゴミDを該アプリケーターロール3の外周面3aから除去して回収する。
【0036】
ゴミ取りロール5に回収されたこれら余剰の塗料PやゴミDは、ゴミ取りロール5の外周面に付着したまま回転方向A3に移送されていき、該ゴミ取りロール5に押圧して摺接されるスクレーパー8の本体角部によって掻き取られる。掻き取られた塗料PやゴミDは、スクレーパー8の下方に設けられる塗料回収槽9に回収された後、この塗料回収槽9の槽内に連結される接続管を通ってフィルター10へと運ばれる。
【0037】
フィルター10において、該フィルター10を通過する塗料PやゴミDの内、異物等のゴミDのみがフィルター10によって除去される。次いでフィルター10を通過した塗料Pは、フィルター10に連通されるポンプ11によって引き上げられるようにしてさらに搬送され、塗料供給部まで戻されて、グラビアロール4への付着に再利用されるようになっている。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の缶の塗装装置1によれば、アプリケーターロール3の外周面3aに押圧されるようにしてゴミ除去専用のゴミ取りロール5が接しているので、このゴミ取りロール5が、外周面3aのゴミDや余剰の塗料Pを良好に除去するとともに、この外周面3aからグラビアロール4へとゴミDが転移するのを防止する。従って、グラビアロール4からアプリケーターロール3の外周面3aへ塗料Pの付着が良好に行われるとともに、この外周面3aからワークWへの塗料Pの塗布が良好に安定して行われる。
【0039】
また、ゴミ取りロール5が独立に設けられることにより、従来の印刷機のように、アプリケーターロール3とグラビアロール4とを同一方向に回転させ、該グラビアロール4でアプリケーターロール3の外周面3aのゴミDを掻き取るようにして回収する必要がないため、アプリケーターロール3とグラビアロール4とを互いに逆方向に回転駆動させることができる。よって、これらロール3,4同士の接触抵抗が極めて低減されるので、アプリケーターロール3及びグラビアロール4の耐久性が向上される。
【0040】
また、ゴミ取りロール5を金属やセラミックス等の硬質の材料で形成させることにより、アプリケーターロール3の外周面3aに付着したアルミ片やスチール片等の硬質のゴミDをより精度よく掻き取ることができるので、ワークWへの塗料Pの塗布をさらに良好に安定して行うことができる。また、このように硬質の材料で形成されたゴミ取りロール5は、その外周面に硬質のスクレーパー8を強く押し当てても磨耗したり傷ついたりすることが防止されるため、良好にゴミDが除去されるとともに耐久性が高い。
【0041】
また、ゴミ取りロール5によって、アプリケーターロール3の外周面3a上に付着する余剰の塗料Pが回収されて塗膜の厚みが均一に均されるので、このアプリケーターロール3は、次に塗装箇所2aで行われるワークWへの塗料Pの塗布をさらに安定して行うことができるとともに、仕上がった缶の外観がよい。
【0042】
また、ゴミ取りロール5には、このゴミ取りロール5を回転駆動させるための駆動部6が備えられているので、このゴミ取りロール5はアプリケーターロール3及びスクレーパー8との接触抵抗によりその回転速度を極端に低下させられたり回転停止してしまったりすることなく、安定してアプリケーターロール3からゴミDや余剰の塗料Pを回収しスクレーパー8で除去させることができる。また、このゴミ取りロール5はその回転速度が一定とされ安定して駆動されているので、アプリケーターロール3の外周面3a上の塗料Pの塗膜の厚みをより均一に均すことができる。
【0043】
またアプリケーターロール3の外周面3aはゴムで形成され、例えば本実施形態の外周面3aのショア硬度(A)はA50とされており、比較的硬質のものが用いられているので、この外周面3aに付着したゴミDがこの外周面3aに食い込みにくく、ゴミ取りロール5でゴミDを掻き取りやすいという効果を奏効する。ここで、外周面3aのショア硬度はA30〜A60の範囲内に設定されるのが好ましく、ショア硬度がA30未満に設定された場合にはゴミが食い込んで回収できなくなり、またA60を超えて設定された場合には缶の塗装面が波打ち状になり、品質に問題をきたすこととなる。
【0044】
また、アプリケーターロール3の外径D1は、ゴミ取りロール5の外径D2よりも大きく設定されるとともに、ゴミ取りロール5の外径D2に対し2〜5倍の範囲内とされているので、この缶の塗装装置1は、回転部分の装置を必要以上に大きく形成し装置全体の巨大化や制御上の支障を生じたり、或いはアプリケーターロール3及びゴミ取りロール5の間のニップ幅を小さく設定し過ぎたりする虞がない。従って、このゴミ取りロール5はアプリケーターロール3の外周面3aから良好にゴミDや余剰の塗料Pを除去することができる。
【0045】
また、ゴミ取りロール5でアプリケーターロール3の外周面3aから回収されたゴミDや余剰の塗料Pはスクレーパー8で掻き取られ、このスクレーパー8の下方に設けられる塗料回収槽9によって回収され、回収された中から、塗料Pに含まれる異物等のゴミDがフィルター10によって除去され、次いで異物等が除去された塗料Pはポンプ11によって搬送されて、グラビアロール4に塗料Pを付着するための塗料供給部へと再循環させられるようになっているので、塗料Pが有効に再利用されるとともに材料の無駄が少なくコスト削減の効果を奏効する。
【0046】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば本実施形態では、ゴミ取りロール5をアプリケーターロール3に摺接するようにして1つ配置するものとしたがこれに限らず、グラビアロール4より回転方向A1の上流側に2つ以上を配置しても構わない。また、ゴミ取りロール5に配置されるスクレーパー8も、このゴミ取りロール5の外周面に摺接するようにして2つ以上を配置しても構わない。
【0047】
また、本実施形態では、駆動部6によってアプリケーターロール3及びゴミ取りロール5が駆動される構成として説明したが、これに限らず、さらにギア機構等を付加して、グラビアロール4も駆動部6により駆動されるように構成しても構わない。
【0048】
また、本実施形態では、アプリケーターロール3の外周面3aをゴムで形成するとしたが、ショア硬度(A)が30〜60の範囲内に設定されるとともに塗料Pの塗布に適した材質のものであればこれに限られるものではない。
【0049】
また、本実施形態ではグラビアロール4の表面はスチール等の硬質の材料で形成されているとして説明したが、これに限らず、例えば布、フェルト、不織布、スポンジ等の軟質の材料で形成されていても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係る缶の塗装装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】駆動部の概略構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1 缶の塗装装置
3 アプリケーターロール
3a 外周面
4 グラビアロール
5 ゴミ取りロール
6 駆動部(駆動手段)
8 スクレーパー
9 塗料回収槽(回収手段)
10 フィルター(除去手段)
11 ポンプ(搬送手段)
A1 アプリケーターロールの回転方向
A3 ゴミ取りロールの回転方向
C1 アプリケーターロールの回転軸
C3 ゴミ取りロールの回転軸
D ゴミ(異物等)
D1 アプリケーターロールの外径
D2 ゴミ取りロールの外径
P 塗料(OV塗料)
W ワーク(缶)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面が缶胴に摺接されるアプリケーターロールと、塗料供給部から供給された塗料を前記アプリケーターロールの外周面に付着させるグラビアロールとを備えた缶の塗装装置であって、
前記アプリケーターロールの外周面に摺接して該外周面に付着したゴミや余剰の塗料を除去するゴミ取りロールと、
前記ゴミ取りロールに付着したゴミや塗料を掻き取るスクレーパーと、を備えることを特徴とする缶の塗装装置。
【請求項2】
請求項1に記載の缶の塗装装置であって、
前記ゴミ取りロールは、その回転軸が前記アプリケーターロールの回転軸と平行に配置されるとともに、前記アプリケーターロールとの接触位置が、前記アプリケーターロールの回転方向において前記缶胴との接触位置よりも下流側、且つ、前記グラビアロールとの接触位置よりも上流側に位置するように構成されていることを特徴とする缶の塗装装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の缶の塗装装置であって、
前記ゴミ取りロールは、前記アプリケーターロールの回転方向と逆方向に回転駆動させられていることを特徴とする缶の塗装装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の缶の塗装装置であって、
前記アプリケーターロールの外周面の硬度が、ショア硬度(A)で30〜60の範囲内に設定されていることを特徴とする缶の塗装装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の缶の塗装装置であって、
前記アプリケーターロールの外径D1と前記ゴミ取りロールの外径D2との比D1/D2が、2〜5の範囲内に設定されていることを特徴とする缶の塗装装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の缶の塗装装置であって、
前記スクレーパーによって除去された塗料を回収する回収手段と、回収された塗料に含まれる異物を除去する除去手段と、異物が除去された塗料を前記塗料供給部に搬送する搬送手段とを備えていることを特徴とする缶の塗装装置。
【請求項7】
塗料供給部から供給された塗料を、グラビアロールを用いてアプリケーターロールの外周面に付着させ、前記外周面に缶胴を摺接させて塗装する缶の塗装方法であって、
前記外周面にゴミ取りロールを摺接させるとともに、該外周面に付着したゴミや余剰の塗料を除去し、
前記ゴミ取りロールに付着したゴミや塗料を、さらにスクレーパーにより掻き取ることを特徴とする缶の塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−95739(P2009−95739A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268822(P2007−268822)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(305060154)ユニバーサル製缶株式会社 (219)
【Fターム(参考)】