説明

缶詰麺食品及びその製造方法

【課題】常温下において長期保存によって物理的変化のみならず食味変化が実質的に最小限に抑制できる缶詰麺食品の提供。
【解決手段】こんにゃく製造に常用されているものより製造されたこんにゃく、たとえばこんにゃく芋精粉を主原料とした波状麺線及び水または調味液が詰められていることを特徴とする缶詰麺食品であって、常法に従って缶に詰めた後封缶し、これを120度〜130度で20分〜120分間レトルト殺菌して製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期間の保存が可能で開缶後に直ちに食することができる、こんにゃくと水または調味液が詰められた缶詰麺食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱湯調理食品を真空状態に密封内蔵した缶詰を保存後に熱湯を注ぐのみで喫食可能とした即席麺食品は従来知られている(特許文献1)。しかしながら、このような即席麺食品は開缶しても缶内に熱湯を注入しなければ食することができない。
【特許文献1】特開平10−23872
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
麺は一般的に水または調味液と共存すると間もなく麺伸びの現象が起こり、長期間その状態で保存すると麺が水または調味液に溶解するために麺が細り極端な場合は固形物が残らずに麺は水または調味液に溶解する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を達成するために本発明者らは試行錯誤を繰り返した結果、麺を小麦粉主体の麺からこんにゃく粉主体の麺(以下、こんにゃく麺と呼ぶことがある)にすることにより麺伸びの現象を回避することができた。またこんにゃく麺には、こんにゃく製造に従来より使用されている穀粉またはその処理物(例えば小麦粉、米粉、大豆粉、もち粉及び小麦タンパク粉など)などが含有されてもよい。その後、更に検討を重ねて本発明を完成するに至ったものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の缶詰麺食品は例えば半年〜3年の長期間にわたり常温で保存され、この間任意の時点で開缶し直ちに食することができる。すなわち本発明の缶詰麺食品は水も火もないところでいかなる調理をすることもなく食することができる。例えば喫食前にお湯を入れなければならないカップ麺とか缶詰麺とは抜本的に異なる完全に完成された麺食品である。しかも本発明によって製造される缶詰食品の麺は長期保存にもかかわらず麺伸びがなく保存中に麺が水または調味液に溶解する現象が実質的に起こらない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明に使用されるこんにゃく粉は畑から採取されるこんにゃく芋から公知方法によって製造される。例えば、こんにゃく芋の皮をむき細断し、天日にて乾燥し粉砕し、適宜に篩過することによって容易に製造される。こんにゃく粉として市販のものを使用することもできる。こんにゃく粉の使用量は本発明の缶詰麺食品100重量部に対して好ましくは0.70〜0.90重量部、より好ましくは0.72〜0.82重量部である。
【0007】
本発明に使用される穀粉としては例えば小麦粉、米粉、もち粉、大豆粉、そば粉などが挙げられ、穀粉の処理物としては例えば小麦グルテンなどが挙げられる。穀粉またはその処理物の使用量は本発明の缶詰麺食品100重量部に対して好ましくは0.08〜0.74重量部、より好ましくは0.25〜0.68重量部である。
【0008】
また従来よりこんにゃく製造に常用されているセルロース類及びトレハロースをこんやく麺に含有させると保水(離水防止)効果により、こんにゃく麺に含有される水分が漏出することが抑制されることを知見した。その効果により、こんにゃく麺の物理的変化を最小限に抑制することができた。セルロース類としては、例えば好ましくは結晶セルロース、より好ましくは微細結晶セルロース(ミクロクリスタリンセルロース)などが挙げられる。セルロース類の使用量は本発明の缶詰麺食品100重量部に対して好ましくは0.03〜1.37重量部、より好ましくは0.14〜0.27重量部である。
【0009】
本発明に使用される水または調味液としては、例えば鶏がら、豚骨、鰹だし汁、昆布だし汁、野菜エキス及びカレーなどが挙げられる。水または調味液の使用量は本発明の缶詰麺食品100重量部に対して好ましくは55〜69重量部、より好ましくは62〜68重量部である。
本発明に使用される具としては、例えばメンマ、豚肉、鶏肉、牛肉、ソーキ、にら、生姜、ネギ、エビ、海藻及びコーンなどが挙げられる。具の使用量は本発明の缶詰麺食品100重量部に対して好ましくは2.4〜3.4重量部、より好ましくは2.7〜3.4重量部である。
【0010】
本発明に使用される麺はさらに他の常用成分を含有してもよい。そのような他の常用成分としては例えば増量剤(例えばタピオカでんぷん、馬鈴薯でんぷんなど)、色素(例えばクチナシ粉、ビタミンB2、かん水など)などが挙げられる。例えば麺が中華風である場合の色素としては栄養の面からビタミンB2を用いるのが好ましい。
【0011】
本発明に使用される麺は、公知方法によって製造されうる。本発明に使用される麺は、例えばこんにゃく粉と穀粉またはその処理物と水とを攪拌して得られる溶液を90分〜120分間熟成しゲル状物を得、これを図1(別紙参照)の(1)のホッパーに投入し、図1の(2)のらせん状供給装置を通り、図1の(3)のアルカリ溶液タンク内の2.0重量%のアルカリ溶液を注入し、図1の(4)の目皿から押出し、図1の(5)の麺長カッターで任意の長さにし、図1の(7)の60度〜85度の熱水槽に落下させ麺線を得る。また熱水槽での浸漬時間は3分〜10分が好ましい。さらに得られた麺線を水中に任意の時間浸漬させることにより本発明の目的を達成する食味に優れた麺が取得できる。このようにして得られた麺を使用時に取出し十分に水切りをして使用するのがよい。さらにここで攪拌時に使用される水の温度は、品質を安定に維持するため、通年一定が好ましい。さらに攪拌に使用される練機は常用の練機でもよいが、食味向上のためバタ練機または手練が好ましい。
【0012】
上記のようにして製造されたこんにゃく麺に水または調味液及び具を加え缶に詰めて封缶し、これをレトルト殺菌することにより本発明の缶詰麺食品が製造される。レトルト殺菌は公知方法によって行われてよく、例えば120度〜130度で20分〜120分加熱滅菌することにより行われる。
本発明に使用される缶はプルオープンのため麺の収容部がスチール製で蓋がアルミニウムであるのが好ましい。
【0013】
このようにして製造された缶詰麺食品は例えば半年〜3年の長期間にわたり常温で保存され、この間任意の時点で開缶しただちに食することができる。すなわち本発明の缶詰麺食品は水も火もないところでいかなる調理をすることもなく食べることができる。例えば喫食前にお湯を入れなければならないカップ麺とか缶詰麺とは抜本的に異なる完全に完成された麺食品である
【実施例】
【0014】
こんにゃく芋精粉 2.8重量%
米粉 0.8重量%
MCC 0.7重量%
(ミクロクリスタリンセルロース)
小麦タンパク粉 0.5重量%
大豆粉 0.8重量%
ビタミンB2 0.2重量%
水 94.2重量%
【0015】
上記原料成分をよく混合し溶液を得、この溶液を90分〜120分間熟成しゲル状物を得、ゲル状物に2.0重量%のアルカリ溶液を注入し、これを図2の目皿(別紙参照)を通して押出し、これを60度〜85度の熱水槽に落下させ、図1の(8)のバブリングにより波状麺線を得る。波状麺線を60度〜85度の熱水槽中を図1の(6)の自動移行式パンチングバケットで3分〜10分かけて移行させた後取り出し、常温の水中に任意の時間泳がせる。水中に泳がせた麺線80重量部、水または調味液200重量部、メンマ5重量部及び焼き豚5重量部を缶に常法に従って詰めた後封缶する。これを120度〜130度で20分〜120分間レトルト殺菌して本発明の缶詰麺食品を製造する。
【0016】
製造した缶詰麺食品を常温で3年間保存し、これを製造直後の缶詰麺食品と食味評価を行うと、製造直後と保存後では、麺の形状並びに食味において本質的な差がないことが判明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のこんにゃく麺の製造工程
【図2】本発明の四角いこんにゃく麺を得るための目皿の図面
【符号の説明】
【0018】
(1) ホッパー
(2) らせん状供給装置
(3) アルカリ溶液タンク
(4) 目皿
(5) 麺長カッター(インバーター付)
(6) 自動移行式パンチングバッケト
(7) 熱水槽(温調付)
(8) バブリング用エアパイプ
(9) エア調整バルブ



























【特許請求の範囲】
【請求項1】
こんにゃく製造に常用されているものより製造されたこんにゃく及び水または調味液が詰められていることを特徴とする缶詰麺食品。

































【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−106269(P2009−106269A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242579(P2008−242579)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(300055661)
【Fターム(参考)】