置換めっき層の剥離方法
【課題】置換めっき層を剥離する際に、電解めっき層も同時に剥離する従来の置換めっき層の剥離方法の課題を解決できる方法を提供する。
【解決手段】ステム12の表面を形成する金属と電気的に絶縁されてリード線18,18が装着された半導体装置用部材10に、リード線18,18のみに給電する電解めっきによって、リード線18,18の露出面に電解めっき層を形成した後、前記電解めっきの際に、非通電状態のステム12の表面に析出した置換めっき層を除去すべく、半導体装置用部材10を、前記電解めっき層を形成するめっき金属を剥離する剥離性能を有し、且つ電解質が添加された剥離液40に浸漬して、リード線18,18に給電しつつ、前記置換めっき層を剥離液40によって選択的に剥離する。
【解決手段】ステム12の表面を形成する金属と電気的に絶縁されてリード線18,18が装着された半導体装置用部材10に、リード線18,18のみに給電する電解めっきによって、リード線18,18の露出面に電解めっき層を形成した後、前記電解めっきの際に、非通電状態のステム12の表面に析出した置換めっき層を除去すべく、半導体装置用部材10を、前記電解めっき層を形成するめっき金属を剥離する剥離性能を有し、且つ電解質が添加された剥離液40に浸漬して、リード線18,18に給電しつつ、前記置換めっき層を剥離液40によって選択的に剥離する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は置換めっき層の剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品用部材として、図2に示す半導体装置用部材が知られている。図2に示す半導体装置用部材10は、本体部材としての金属製のステム12に貫通孔14,14が形成されている。かかる貫通孔14,14の各々には、絶縁層としての低融点ガラス層16が充填されて金属部材としてのリード線18,18が挿通されている。リード線18,18は、ステム12と電気的に絶縁されて、両端部がステム12から突出している。
かかるステム12の一面側には、金属製のヒートシンク20が装着されている。このヒートシンク20の一面側20aに半導体素子が搭載される。
更に、半導体装置用部材10のヒートシンク20の搭載面側に突出しているリード線18,18の一端部18a,18aは、ヒートシンク20の一面側20aに搭載される半導体素子とワイヤボンディングされて、電気的に接続される。
【0003】
図2に示す半導体装置用部材10では、リード線18,18のステム12の両面側に突出する突出部には、通常、電解金めっきが施される。
かかる電解金めっきは、例えば下記特許文献1に提案されている図3に示す治具30を用いて施す。
図3に示す治具30は、絶縁基板22の一面側に配設された電極24上に、ゴム等の弾性材料から成る複数本の細長い棒状部材26,26・・が配列されているものである。かかる治具30に半導体装置用部材10を装着する際には、リード線18,18の各他端部を棒状部材26,26間に挿入し、その端面を電極24に当接する。
次いで、半導体装置用部材10を装着した治具30を、図4に示す様に、電解金めっき液28に浸漬し、治具30の電極24を陰極とすると共に、電解金めっき液に浸漬されている電極32を陽極として、電極24,32間に直流電源34から直流電流を印加して電解金めっきを施す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−336564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図4に示す電解金めっきでは、半導体装置用部材10のリード線18,18のみに通電がなされるため、リード線18,18のステム12から突出する突出部のみに電解金めっきが施される。
しかし、電解金めっきの際に、ステム12やヒートシンク20の表面に置換金めっき層が形成されることがある。かかる置換めっき層は、電解めっき層に比較して密着度が低いため、置換金めっき層を除去することが必要である。
しかしながら、置換金めっき層の除去は、通常、電解金めっきを終了した半導体装置用部材10を剥離液に浸漬して行うため、リード線18,18の突出部に形成した電解金めっき層も同時に剥離される。このため、従来、リード線18,18の突出部に形成する電解金めっき層を、必要厚さよりも厚付けすることが行われている。
かかる電解金めっき層の厚付けは、電解金めっき時間を長くし、且つ資源の無駄となって、最終製品の製造コストが高くなる。
そこで、本発明は、置換めっき層を剥離する際に、電解めっき層も同時に剥離する従来の置換めっき層の剥離方法の課題を解決し、電解めっき層を実質的に剥離せずに置換めっき層を選択的に剥離できる置換めっき層の剥離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、前記課題を解決すべく検討した結果、図4に示す電解金めっきの際に給電したリード線18,18の露出面に電解金めっき層を形成した半導体装置用部材10を、金めっきの剥離性能を有し、且つ電解質が添加された剥離液に浸漬して、リード線18,18を陰極にして直流電流を給電することによって、リード線18,18に形成した電解金めっき層を剥離することなく、非通電状態のステム12やヒートシンク20の表面に析出した置換めっき層を選択的に除去できることを見出した。
すなわち、本発明者等は、前記課題を解決する手段として、本体部材の表面を形成する金属と電気的に絶縁されて金属部材が装着された電子部品用部材に、前記金属部材のみに給電する電解めっきによって、前記金属部材の露出面に電解めっき層を形成した後、前記電解めっきの際に、非通電状態の金属表面に析出した置換めっき層を除去すべく、前記電子部品用部材を、前記電解めっき層を形成するめっき金属を剥離する剥離性能を有し、且つ電解質が添加された剥離液に浸漬して、前記金属部材に給電しつつ、前記置換めっき層を前記剥離液によって選択的に剥離する置換めっき層の剥離方法を提供できる。
【0007】
本発明者等が提供した課題を解決する手段において、下記の好ましい態様を上げることができる。
電子部品用部材として、本体部材としての金属製のステムに形成された貫通孔内に充填された絶縁層によって、前記ステムと電気的に絶縁されて金属部材としてのリード線が挿通されている電子部品用部材を好適に用いることができる。
また、電解めっきを施した電子部品用部材の本体部材から突出する金属部材の突出端を治具に挿入して、前記治具内に設けられた電極に前記突出端の少なくとも一部が接触した状態で、前記電子部品用部材及び治具を剥離液に浸漬し、前記剥離用治具の電極に給電することによって、電解めっき層が形成された金属部材のみに確実に給電できる。
尚、電解めっきとして、電解金めっきを採用し、剥離液として金めっき用の剥離液を好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明者等が提案した置換めっき層の剥離方法によれば、電解めっきを施した電子部品用部材を、電解めっき層を形成するめっき金属を剥離する剥離性能を有し、且つ電解質が添加された剥離液に浸漬して、金属部材に給電する。このため、金属部材に形成した電解めっき層を形成するめっき金属の溶出を防止できる。
一方、電解めっきの際に、給電されなかった非通電状態の金属表面には、剥離液中でも給電されず、非通電状態の金属表面に形成された置換めっき層は剥離液の剥離機能によって剥離される。
この様に、本発明者等が提案した置換めっき層の剥離方法によれば、電解めっきで給電して金属部材に形成した電解めっき層を剥離することなく、電解めっきでは給電されなかった非通電状態の金属表面に形成された置換めっき層のみを選択的に剥離できる。
従って、本発明者等が提案した置換めっき層の剥離方法によれば、電解めっき層を厚付けすることなく置換めっき層のみを剥離できる。このため、電解めっき時間を短縮でき、且つ省資源を図ることができる結果、最終製品の製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明者等が提案した置換めっき層の剥離方法で採用する剥離工程を説明する説明図である。
【図2】本発明者等が提案した置換めっき層の剥離方法を適用する電子部品用部材としての半導体装置用部材10についての斜視図である。
【図3】図2に示す半導体装置用部材10を治具に装着した状態を説明する部分断面図である。
【図4】図2に示す半導体装置用部材10のリード線18,18に電解金めっきを施す工程を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者等が提案した置換めっき層の剥離方法では、電子部品用部材として、図2に示す半導体装置用部材10を好適に用いることができる。この半導体装置用部材10については、前述しているため省略する。
かかる半導体装置用部材10では、その全表面に必要に応じて下地めっきとしてのニッケルめっきを施した後、リード線18,18のステム12の両面側に突出する突出部の一方に、図3に示す様に、治具30を装着する。
更に、図4に示す様に、半導体装置用部材10及び治具30を電解金めっき液28に浸漬して電解金めっきを施す。この治具30及び電解金めっきについても、前述しているため説明を省略する。
尚、電解金めっき液としては、従来から公知の電解金めっき液を使用でき、その電解条件も公知の条件を採用できる。
【0011】
次いで、リード線18,18の露出面に電解金めっきを施した半導体装置用部材10を、図1に示す様に、治具30に装着した状態で、電解質が添加された金めっきの剥離液40に浸漬する。
この剥離液40としては、金めっきを剥離し得る剥離液であればよく、シアン化カリウム等の錯化剤とp−ニトロ安息香酸等の酸化剤とが配合されている剥離液を好適に用いることができる。かかる剥離液40に添加される電解質としては、水酸化カリウムを好適に用いることができる。
【0012】
剥離液40に浸漬された半導体装置用部材10を装着した治具30の電極24を、図1に示す様に、電解めっきの際と同様に、陰極となるように直流電源44と結線し、且つ剥離液40に浸漬されている電極42が陽極となるように直流電源44と結線して、直流電源44から電極24と電極42との間に直流電流を印加する。かかる電解剥離によって、リード線18,18の露出面に形成された電解金めっき層を剥離することなく、半導体装置用部材10のステム12やヒートシンク20の表面に、図4に示す電解金めっきの際に形成された置換金めっき層のみを剥離できる。
【0013】
ここで、実施例として、図4に示す様に、電解金めっき液に浸漬した半導体装置用部材10のリード線18,18のみに直流電源34から治具30の電極24(陰極)を経由して直流電流を印加して0.2〜0.15μm(平均0.17μm)の電解金めっき層を形成した。
次いで、リード線18,18に電解金めっき層を形成した半導体装置用部材10を治具30に装着した状態で図1に示す剥離液40に浸漬した。この剥離液40には、水酸化カリウム(80g/L)、シアン化カリウム(20g/L)及びp−ニトロ安息香酸(15g/L)が添加されている。
かかる剥離液40に浸漬されている半導体装置用部材10のリード線18,18には、直流電源44から治具30の電極24(陰極)を経由して直流電流を印加して、半導体装置用部材10のステム12やヒートシンク20の表面に形成された置換金めっき層の剥離を行った。かかる置換金めっき層の剥離処理後の金めっき層の厚さも、0.2〜0.15μm(平均0.17μm)であった。
このため、図1に示す置換金めっきの剥離処理によれば、リード線18,18に最終的に要求される厚さの金めっき層を形成しておくことで足りる。
【0014】
一方、比較例として、電解金めっきによって、半導体装置用部材10のリード線18,18に0.29〜0.25μm(平均0.27μm)の電解金めっき層を形成した後、治具30から取り外した半導体装置用部材10を、シアン化カリウム(20g/L)及びp−ニトロ安息香酸(15g/L)が添加された剥離液40に浸漬して、半導体装置用部材10のステム12やヒートシンク20の表面に形成された置換金めっき層の剥離を行った。かかる置換金めっき層の剥離処理後の金めっき層の厚さは、0.19〜0.15μm(平均0.17μm)に低下していた。
この様に、比較例では、置換金めっき層の剥離処理を施す半導体装置用部材10のリード線18,18には、置換金めっき層の剥離処理で剥離される厚さを予定して電解金めっき層を厚付けすることが必要である。
【0015】
図1に示す置換金めっきの剥離処理では、電解金めっき層を剥離することなく置換金めっき層を選択的に除去できる理由は、次のように考えられる。
電解金めっきをリード線18,18のみに施した半導体装置用部材10を、電解質が添加された金めっきの剥離液40に浸漬して、リード線18,18を電解金めっきと同様に陰極として直流電流を給電する。このため、リード線18,18に形成された電解金めっき層の金の溶出を防止できる。
一方、電解金めっきの際に、給電されなかった非通電状態の半導体装置用部材10のステム12やヒートシンク20には、剥離液中でも給電されない非通電状態である。このため、ステム12やヒートシンク20の表面には、剥離液40の剥離作用が作用し、ステム12やヒートシンク20の表面に形成された置換金めっき層の金が溶出する。
【0016】
以上、半導体装置用部材10のリード線18,18に電解金めっきを施した際に、非通電状態のステム12やヒートシンク20の表面に形成される、置換金めっき層の剥離について説明しているが、電解金めっきに代えて、電解銅めっきや電解ニッケルめっきについても同様に、その置換銅めっき層、置換銀めっき層、置換ニッケルめっき層を剥離する際にも適用できる。
【符号の説明】
【0017】
10 半導体装置用部材(電子部品用部材)
12 ステム
14 貫通孔
16 低融点ガラス層
18 リード線
20 ヒートシンク
22 絶縁基板
24,42 電極(陰極)
26 棒状部材
28 電解金めっき液
30 治具
32,42 電極(陽極)
34,44 直流電源
40 剥離液
【技術分野】
【0001】
本発明は置換めっき層の剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品用部材として、図2に示す半導体装置用部材が知られている。図2に示す半導体装置用部材10は、本体部材としての金属製のステム12に貫通孔14,14が形成されている。かかる貫通孔14,14の各々には、絶縁層としての低融点ガラス層16が充填されて金属部材としてのリード線18,18が挿通されている。リード線18,18は、ステム12と電気的に絶縁されて、両端部がステム12から突出している。
かかるステム12の一面側には、金属製のヒートシンク20が装着されている。このヒートシンク20の一面側20aに半導体素子が搭載される。
更に、半導体装置用部材10のヒートシンク20の搭載面側に突出しているリード線18,18の一端部18a,18aは、ヒートシンク20の一面側20aに搭載される半導体素子とワイヤボンディングされて、電気的に接続される。
【0003】
図2に示す半導体装置用部材10では、リード線18,18のステム12の両面側に突出する突出部には、通常、電解金めっきが施される。
かかる電解金めっきは、例えば下記特許文献1に提案されている図3に示す治具30を用いて施す。
図3に示す治具30は、絶縁基板22の一面側に配設された電極24上に、ゴム等の弾性材料から成る複数本の細長い棒状部材26,26・・が配列されているものである。かかる治具30に半導体装置用部材10を装着する際には、リード線18,18の各他端部を棒状部材26,26間に挿入し、その端面を電極24に当接する。
次いで、半導体装置用部材10を装着した治具30を、図4に示す様に、電解金めっき液28に浸漬し、治具30の電極24を陰極とすると共に、電解金めっき液に浸漬されている電極32を陽極として、電極24,32間に直流電源34から直流電流を印加して電解金めっきを施す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−336564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図4に示す電解金めっきでは、半導体装置用部材10のリード線18,18のみに通電がなされるため、リード線18,18のステム12から突出する突出部のみに電解金めっきが施される。
しかし、電解金めっきの際に、ステム12やヒートシンク20の表面に置換金めっき層が形成されることがある。かかる置換めっき層は、電解めっき層に比較して密着度が低いため、置換金めっき層を除去することが必要である。
しかしながら、置換金めっき層の除去は、通常、電解金めっきを終了した半導体装置用部材10を剥離液に浸漬して行うため、リード線18,18の突出部に形成した電解金めっき層も同時に剥離される。このため、従来、リード線18,18の突出部に形成する電解金めっき層を、必要厚さよりも厚付けすることが行われている。
かかる電解金めっき層の厚付けは、電解金めっき時間を長くし、且つ資源の無駄となって、最終製品の製造コストが高くなる。
そこで、本発明は、置換めっき層を剥離する際に、電解めっき層も同時に剥離する従来の置換めっき層の剥離方法の課題を解決し、電解めっき層を実質的に剥離せずに置換めっき層を選択的に剥離できる置換めっき層の剥離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、前記課題を解決すべく検討した結果、図4に示す電解金めっきの際に給電したリード線18,18の露出面に電解金めっき層を形成した半導体装置用部材10を、金めっきの剥離性能を有し、且つ電解質が添加された剥離液に浸漬して、リード線18,18を陰極にして直流電流を給電することによって、リード線18,18に形成した電解金めっき層を剥離することなく、非通電状態のステム12やヒートシンク20の表面に析出した置換めっき層を選択的に除去できることを見出した。
すなわち、本発明者等は、前記課題を解決する手段として、本体部材の表面を形成する金属と電気的に絶縁されて金属部材が装着された電子部品用部材に、前記金属部材のみに給電する電解めっきによって、前記金属部材の露出面に電解めっき層を形成した後、前記電解めっきの際に、非通電状態の金属表面に析出した置換めっき層を除去すべく、前記電子部品用部材を、前記電解めっき層を形成するめっき金属を剥離する剥離性能を有し、且つ電解質が添加された剥離液に浸漬して、前記金属部材に給電しつつ、前記置換めっき層を前記剥離液によって選択的に剥離する置換めっき層の剥離方法を提供できる。
【0007】
本発明者等が提供した課題を解決する手段において、下記の好ましい態様を上げることができる。
電子部品用部材として、本体部材としての金属製のステムに形成された貫通孔内に充填された絶縁層によって、前記ステムと電気的に絶縁されて金属部材としてのリード線が挿通されている電子部品用部材を好適に用いることができる。
また、電解めっきを施した電子部品用部材の本体部材から突出する金属部材の突出端を治具に挿入して、前記治具内に設けられた電極に前記突出端の少なくとも一部が接触した状態で、前記電子部品用部材及び治具を剥離液に浸漬し、前記剥離用治具の電極に給電することによって、電解めっき層が形成された金属部材のみに確実に給電できる。
尚、電解めっきとして、電解金めっきを採用し、剥離液として金めっき用の剥離液を好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明者等が提案した置換めっき層の剥離方法によれば、電解めっきを施した電子部品用部材を、電解めっき層を形成するめっき金属を剥離する剥離性能を有し、且つ電解質が添加された剥離液に浸漬して、金属部材に給電する。このため、金属部材に形成した電解めっき層を形成するめっき金属の溶出を防止できる。
一方、電解めっきの際に、給電されなかった非通電状態の金属表面には、剥離液中でも給電されず、非通電状態の金属表面に形成された置換めっき層は剥離液の剥離機能によって剥離される。
この様に、本発明者等が提案した置換めっき層の剥離方法によれば、電解めっきで給電して金属部材に形成した電解めっき層を剥離することなく、電解めっきでは給電されなかった非通電状態の金属表面に形成された置換めっき層のみを選択的に剥離できる。
従って、本発明者等が提案した置換めっき層の剥離方法によれば、電解めっき層を厚付けすることなく置換めっき層のみを剥離できる。このため、電解めっき時間を短縮でき、且つ省資源を図ることができる結果、最終製品の製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明者等が提案した置換めっき層の剥離方法で採用する剥離工程を説明する説明図である。
【図2】本発明者等が提案した置換めっき層の剥離方法を適用する電子部品用部材としての半導体装置用部材10についての斜視図である。
【図3】図2に示す半導体装置用部材10を治具に装着した状態を説明する部分断面図である。
【図4】図2に示す半導体装置用部材10のリード線18,18に電解金めっきを施す工程を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者等が提案した置換めっき層の剥離方法では、電子部品用部材として、図2に示す半導体装置用部材10を好適に用いることができる。この半導体装置用部材10については、前述しているため省略する。
かかる半導体装置用部材10では、その全表面に必要に応じて下地めっきとしてのニッケルめっきを施した後、リード線18,18のステム12の両面側に突出する突出部の一方に、図3に示す様に、治具30を装着する。
更に、図4に示す様に、半導体装置用部材10及び治具30を電解金めっき液28に浸漬して電解金めっきを施す。この治具30及び電解金めっきについても、前述しているため説明を省略する。
尚、電解金めっき液としては、従来から公知の電解金めっき液を使用でき、その電解条件も公知の条件を採用できる。
【0011】
次いで、リード線18,18の露出面に電解金めっきを施した半導体装置用部材10を、図1に示す様に、治具30に装着した状態で、電解質が添加された金めっきの剥離液40に浸漬する。
この剥離液40としては、金めっきを剥離し得る剥離液であればよく、シアン化カリウム等の錯化剤とp−ニトロ安息香酸等の酸化剤とが配合されている剥離液を好適に用いることができる。かかる剥離液40に添加される電解質としては、水酸化カリウムを好適に用いることができる。
【0012】
剥離液40に浸漬された半導体装置用部材10を装着した治具30の電極24を、図1に示す様に、電解めっきの際と同様に、陰極となるように直流電源44と結線し、且つ剥離液40に浸漬されている電極42が陽極となるように直流電源44と結線して、直流電源44から電極24と電極42との間に直流電流を印加する。かかる電解剥離によって、リード線18,18の露出面に形成された電解金めっき層を剥離することなく、半導体装置用部材10のステム12やヒートシンク20の表面に、図4に示す電解金めっきの際に形成された置換金めっき層のみを剥離できる。
【0013】
ここで、実施例として、図4に示す様に、電解金めっき液に浸漬した半導体装置用部材10のリード線18,18のみに直流電源34から治具30の電極24(陰極)を経由して直流電流を印加して0.2〜0.15μm(平均0.17μm)の電解金めっき層を形成した。
次いで、リード線18,18に電解金めっき層を形成した半導体装置用部材10を治具30に装着した状態で図1に示す剥離液40に浸漬した。この剥離液40には、水酸化カリウム(80g/L)、シアン化カリウム(20g/L)及びp−ニトロ安息香酸(15g/L)が添加されている。
かかる剥離液40に浸漬されている半導体装置用部材10のリード線18,18には、直流電源44から治具30の電極24(陰極)を経由して直流電流を印加して、半導体装置用部材10のステム12やヒートシンク20の表面に形成された置換金めっき層の剥離を行った。かかる置換金めっき層の剥離処理後の金めっき層の厚さも、0.2〜0.15μm(平均0.17μm)であった。
このため、図1に示す置換金めっきの剥離処理によれば、リード線18,18に最終的に要求される厚さの金めっき層を形成しておくことで足りる。
【0014】
一方、比較例として、電解金めっきによって、半導体装置用部材10のリード線18,18に0.29〜0.25μm(平均0.27μm)の電解金めっき層を形成した後、治具30から取り外した半導体装置用部材10を、シアン化カリウム(20g/L)及びp−ニトロ安息香酸(15g/L)が添加された剥離液40に浸漬して、半導体装置用部材10のステム12やヒートシンク20の表面に形成された置換金めっき層の剥離を行った。かかる置換金めっき層の剥離処理後の金めっき層の厚さは、0.19〜0.15μm(平均0.17μm)に低下していた。
この様に、比較例では、置換金めっき層の剥離処理を施す半導体装置用部材10のリード線18,18には、置換金めっき層の剥離処理で剥離される厚さを予定して電解金めっき層を厚付けすることが必要である。
【0015】
図1に示す置換金めっきの剥離処理では、電解金めっき層を剥離することなく置換金めっき層を選択的に除去できる理由は、次のように考えられる。
電解金めっきをリード線18,18のみに施した半導体装置用部材10を、電解質が添加された金めっきの剥離液40に浸漬して、リード線18,18を電解金めっきと同様に陰極として直流電流を給電する。このため、リード線18,18に形成された電解金めっき層の金の溶出を防止できる。
一方、電解金めっきの際に、給電されなかった非通電状態の半導体装置用部材10のステム12やヒートシンク20には、剥離液中でも給電されない非通電状態である。このため、ステム12やヒートシンク20の表面には、剥離液40の剥離作用が作用し、ステム12やヒートシンク20の表面に形成された置換金めっき層の金が溶出する。
【0016】
以上、半導体装置用部材10のリード線18,18に電解金めっきを施した際に、非通電状態のステム12やヒートシンク20の表面に形成される、置換金めっき層の剥離について説明しているが、電解金めっきに代えて、電解銅めっきや電解ニッケルめっきについても同様に、その置換銅めっき層、置換銀めっき層、置換ニッケルめっき層を剥離する際にも適用できる。
【符号の説明】
【0017】
10 半導体装置用部材(電子部品用部材)
12 ステム
14 貫通孔
16 低融点ガラス層
18 リード線
20 ヒートシンク
22 絶縁基板
24,42 電極(陰極)
26 棒状部材
28 電解金めっき液
30 治具
32,42 電極(陽極)
34,44 直流電源
40 剥離液
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部材の表面を形成する金属と電気的に絶縁されて金属部材が装着された電子部品用部材に、前記金属部材のみに給電する電解めっきによって、前記金属部材の露出面に電解めっき層を形成した後、
前記電解めっきの際に、非通電状態の金属表面に析出した置換めっき層を除去すべく、前記電子部品用部材を、前記電解めっき層を形成するめっき金属を剥離する剥離性能を有し、且つ電解質が添加された剥離液に浸漬して、前記金属部材に給電しつつ、前記置換めっき層を前記剥離液によって選択的に剥離することを特徴とする置換めっき層の剥離方法。
【請求項2】
電子部品用部材として、本体部材としての金属製のステムに形成された貫通孔内に充填された絶縁層によって、前記ステムと電気的に絶縁されて金属部材としてのリード線が挿通されている電子部品用部材を用いる請求項1記載の置換めっき層の剥離方法。
【請求項3】
電解めっきを施した電子部品用部材の本体部材から突出する金属部材の突出端を治具に挿入して、前記治具内に設けられた電極に前記突出端の少なくとも一部が接触した状態で、前記電子部品用部材及び治具を剥離液に浸漬し、前記剥離用治具の電極に給電する請求項1又は請求項2記載の置換めっき層の剥離方法。
【請求項4】
電解めっきとして、電解金めっきを採用し、剥離液として金めっき用の剥離液を用いる請求項1〜3のいずれか一項記載の置換めっき層の剥離方法。
【請求項1】
本体部材の表面を形成する金属と電気的に絶縁されて金属部材が装着された電子部品用部材に、前記金属部材のみに給電する電解めっきによって、前記金属部材の露出面に電解めっき層を形成した後、
前記電解めっきの際に、非通電状態の金属表面に析出した置換めっき層を除去すべく、前記電子部品用部材を、前記電解めっき層を形成するめっき金属を剥離する剥離性能を有し、且つ電解質が添加された剥離液に浸漬して、前記金属部材に給電しつつ、前記置換めっき層を前記剥離液によって選択的に剥離することを特徴とする置換めっき層の剥離方法。
【請求項2】
電子部品用部材として、本体部材としての金属製のステムに形成された貫通孔内に充填された絶縁層によって、前記ステムと電気的に絶縁されて金属部材としてのリード線が挿通されている電子部品用部材を用いる請求項1記載の置換めっき層の剥離方法。
【請求項3】
電解めっきを施した電子部品用部材の本体部材から突出する金属部材の突出端を治具に挿入して、前記治具内に設けられた電極に前記突出端の少なくとも一部が接触した状態で、前記電子部品用部材及び治具を剥離液に浸漬し、前記剥離用治具の電極に給電する請求項1又は請求項2記載の置換めっき層の剥離方法。
【請求項4】
電解めっきとして、電解金めっきを採用し、剥離液として金めっき用の剥離液を用いる請求項1〜3のいずれか一項記載の置換めっき層の剥離方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2011−52259(P2011−52259A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201262(P2009−201262)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】
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