説明

置換ビフェニルの製造法

本発明は、式(I)の構造を有する置換ビフェニルの製造法であって、式(II)の構造を有する化合物を、塩基および以下:
a) パラジウムが酸化状態ゼロであるパラジウム−トリアリールホスフィンもしくは−トリアルキルホスフィン錯体、
b) 錯体リガンドとしてトリアリールホスフィンもしくはトリアルキルホスフィン存在下であるパラジウム塩、または
c) 担体に保持されていてもよい金属パラジウム
の群より選択されるパラジウム触媒の存在下において、トリアリールホスフィンまたはトリアルキルホスフィン存在下、溶媒中で式(III)の構造を有するジフェニルボリン酸と反応させることを含み、ここで、使用するトリアリールホスフィンまたはトリアルキルホスフィンが置換されていてもよい、前記製造法に関する。
〔式(I)中、置換基が以下:
Xはフッ素または塩素であり、
R1はニトロ、アミノまたはNHR3であり、
R2はシアノ、ニトロ、ハロゲン、C1〜C6-アルキル、C1〜C6-アルケニル、C1〜C6-アルキニル、C1〜C6-アルコキシ、C1〜C6-ハロアルキル、(C1〜C6-アルキル)カルボニルまたはフェニルであり、
R3はC1〜C4-アルキル、C1〜C4-アルケニルまたはC1〜C4-アルキニルであり、
nは1、2または3であるが、nが2または3の場合には、該R2基は互いに異なっていてもよい、
として定義される〕
〔式(II)中、Halはハロゲンであり、かつXおよびR1は上記に定義されたものである〕
〔式(III)中、R2およびnは上記に定義されたものである〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I):
【化1】

【0002】
〔式中、置換基が以下:
Xはフッ素または塩素であり、
R1はニトロ、アミノまたはNHR3であり、
R2はシアノ、ニトロ、ハロゲン、C1〜C6-アルキル、C1〜C6-アルケニル、C1〜C6-アルキニル、C1〜C6-アルコキシ、C1〜C6-ハロアルキル、(C1〜C6-アルキル)カルボニルまたはフェニルであり、
R3はC1〜C4-アルキル、C1〜C4-アルケニルまたはC1〜C4-アルキニルであり、
nは1、2または3であるが、nが2または3の場合には、該R2基は互いに異なっていてもよい、
として定義される〕
の構造を有する置換ビフェニルの製造法であって、式(II):
【化2】

【0003】
〔式中、Halはハロゲンであり、かつXおよびR1は上記に定義されたものである〕
の構造を有する化合物を、塩基および以下:
a) パラジウムが酸化状態ゼロであるパラジウム−トリアリールホスフィンもしくは−トリアルキルホスフィン錯体、
b) 錯体リガンドとしてトリアリールホスフィンもしくはトリアルキルホスフィン存在下であるパラジウム塩、または
c) 担体に保持されていてもよい金属パラジウム
の群より選択されるパラジウム触媒の存在下において、トリアリールホスフィンまたはトリアルキルホスフィン存在下、溶媒中で式(III):
【化3】

【0004】
〔式中、R2およびnは上記に定義されたものである〕
の構造を有するジフェニルボリン酸と反応させることを含み、ここで、使用するトリアリールホスフィンまたはトリアルキルホスフィンが置換されていてもよい、前記製造法に関する。
【背景技術】
【0005】
Tetrahedron Lett., 32巻、2277頁(1991)は、[1,4-ビス(ジフェニルホスフィン)ブタン]パラジウム(II)ジクロリド触媒を使用したフェニルボロン酸およびクロロベンゼンとのカップリング反応が、わずか28%の収率で進行することを述べている。
【0006】
欧州特許出願公開第0 888 261号は、パラジウム触媒および塩基存在下でクロロニトロベンゼンをフェニルボロン酸と反応させることによるニトロビフェニルの調製法を開示している。該調製法においては、非常に高い触媒濃度が必要である。
【特許文献1】EP-A 0 888 261号
【非特許文献1】Tetrahedron Lett., 32巻、2277頁(1991)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それ故本発明の目的は、置換ビフェニルを位置選択的に調製するために工業的規模で実施出来、かつパラジウム触媒濃度を削減しても機能する、経済的に現実味のある方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
結果として、冒頭に定義した方法を発見した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
式(III)のジフェニルボリン酸は、以下:
【化4】

【0010】
〔式中、R4 はC1〜C4-アルキル、好ましくはメチルである〕
で表されるスキーム1にしたがって、テトラヒドロフランを溶媒として、置換されていてもよいフェニルマグネシウムクロリド(V)とホウ酸トリアルキル、好ましくはホウ酸トリメチルとの反応によって得られる。
【0011】
式(III)のジフェニルボリン酸の高収率のための必須条件は、使用する式(IV)の置換クロロベンゼンに対してわずか0.7当量のホウ酸トリアルキルの使用である。1.1当量のホウ酸トリアルキルの使用は、欧州特許出願公開第0 888 261号に記載されているようにフェニルボロン酸を生じる。
【0012】
ホウ酸トリアルキルの使用におけるこの削減は、式(I)のニトロビフェニルの調製に関していくつかの驚くべき利点を有する。反応器の時間あたりの収率(space-time yield)が向上する。高価なホウ酸トリメチルの量の削減の結果として、供給原料のコストが減少する。欧州特許出願公開第0 888 261号で使用されたフェニルボロン酸とは異なり、式(III)のジフェニルボリン酸はテトラヒドロフランに可溶であるが、この事実は反応中の熱除去を改善することにつながり、また冷却能力の消耗を低下させることになる。これは工程の安全性をより高めることにもつながる。
【0013】
この工程段階における反応温度は10〜30℃、好ましくは15〜25℃である。
【0014】
本製造法によって調製された置換ビフェニルは、以下:
〔R1はニトロ、アミノ、メチルアミノ、プロピルアミノ、ブチルアミノ、アリルアミノまたはプロパルギルアミノであり、より好ましくはニトロ、アミノまたはメチルアミノであり、もっとも好ましくはニトロまたはアミノであり;
R2はシアノ、ニトロ、フッ素、塩素、臭素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アリル、プロパルギル、メトキシ、エトキシ、トリフルオロメチルまたはフェニルであり、より好ましくはフッ素、塩素、メチルまたはメトキシであり、もっとも好ましくはフッ素または塩素であり;
R3はメチル、エチル、プロピル、ブチル、アリル、またはプロパルギルであり、より好ましくはメチル、エチルまたはアリルであり、もっとも好ましくはメチルであり;
nは1または2、好ましくは2である〕
の好ましい置換基を、それぞれの場合において単独および組み合わせの両方で有する。
【0015】
その後の、均一系で触媒される鈴木ビアリールクロスカップリングは、以下:
【化5】

【0016】
で表されるスキーム2にしたがって実施する。
【0017】
好適であるのはR2およびnが上記で定義されたものである、式(III)のジフェニルボリン酸から出発する場合である。
【0018】
さらに好ましい出発材料はnが1または2であり、特に2である式(III)のジフェニルボリン酸である。特に好ましくは3-および4-位において置換されているジフェニルボリン酸(III)である。
【0019】
非常に好適であるのは、ジ(2,3-ジフルオロフェニル)ボリン酸、ジ(3,4-ジ-フルオロフェニル)ボリン酸、ジ(2,3-ジクロロフェニル)ボリン酸および特にジ(3,4-ジクロロフェニル)ボリン酸を式(III)の出発化合物とする場合である。
【0020】
好適であるのは、以下の式(II)の化合物:2-ブロモ-4-フルオロアニリン、2-クロロ-4-フルオロアニリンおよび特に2-クロロ-4-フルオロ-1-ニトロベンゼンもしくは2-ブロモ-4-フルオロ-1-ニトロベンゼンから出発する場合である。
【0021】
式(II)の化合物は、式(III)のジフェニルボリン酸(ジフェニルボリン酸等価物)に対して、通常は等モル量で、好ましくは20%過剰まで、特に50%過剰までの量で使用する。
【0022】
使用する塩基は有機塩基、例えば第三級アミンがあり得る。好適であるのは、例えばトリエチルアミンまたはジメチルシクロヘキシルアミンを使用することである。
【0023】
使用する塩基は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属酢酸塩、アルカリ土類金属酢酸塩、アルカリ金属アルコキシドおよびアルカリ土類金属アルコキシドを混合物で使用するのが好ましく、また単独で使用するのが特に好ましい。
【0024】
特に好ましい塩基はアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、およびアルカリ金属炭酸水素塩である。
【0025】
とりわけ好ましい塩基は、例えば水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物であり、ならびに例えば炭酸リチウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩およびアルカリ金属炭酸水素塩である。
【0026】
前記塩基は、本発明の方法において、式(III)のジフェニルボリン酸の量に対して好ましくは100〜500 mol%、より好ましくは150〜400 mol%の割合で使用する。
【0027】
好適なパラジウム触媒は、パラジウムが酸化状態ゼロであるパラジウム−リガンド錯体、錯体リガンド存在下のパラジウム塩、または好ましくは錯体リガンド存在下の担体に保持されていてもよい金属パラジウムである。
【0028】
好適な錯体リガンドはトリアリールホスフィンおよびトリアルキルホスフィン、例えばトリフェニルホスフィン(TPP)、ジ-1-アダマンチル-n-ブチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン(TtBP)または2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニルのような無電荷のリガンドであってアリール環が置換されていてもよい。
【0029】
さらに文献には、他の構造的分類群から、1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-4,5-H2-イミダゾリウムクロリド(例えば、G. A. Grasaら、Organometallics, 2002年、21巻、2866頁を参照されたい)、および亜リン酸トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)(A. Zapfら、Chem. Eur. J., 2000年、6巻、1830頁を参照されたい)を含む、特に反応性であるさらなる錯体リガンドについて記載されている。
【0030】
錯体リガンドの反応性を、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウム(TBAB)のような第四級アンモニウム塩を加えることで増強することができる(例えば、D. Zimら、Tetrahedron Lett., 2000年、41巻、8199頁を参照されたい)。
【0031】
必要であれば、パラジウム錯体の水溶性をスルホン酸もしくはスルホン酸塩の基、カルボン酸もしくはカルボン酸塩の基、ホスホン酸、ホスホニウムもしくはホスホン酸塩の基、ペルアルキルアンモニウム、ヒドロキシルならびにポリエーテル基のような様々な置換基によって改良することができる。
【0032】
パラジウムが酸化状態ゼロであるパラジウム−リガンド錯体の中で、好適であるのはテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムおよび追加としてテトラキス[トリ(o-トリル)ホスフィン]パラジウムを使用することである。
【0033】
錯体リガンドの存在下で使用するパラジウム塩においては、パラジウムは通常プラス2価の酸化状態で存在する。好適であるのは塩化パラジウム、酢酸パラジウムまたは塩化ビスアセトニトリルパラジウムを使用することである。特に好適であるのは塩化パラジウムを使用することである。
【0034】
一般に、6〜60、好ましくは15〜25当量の上記の錯体リガンド、特にトリフェニルホスフィンおよびトリ-tert-ブチルホスフィンを、1当量のパラジウム塩と組み合わせる。
【0035】
欧州特許出願公開第0 888 261号は、1当量のパラジウム触媒あたり2〜6当量のトリフェニルホスフィンの使用について記載している。大過剰量のリガンドの使用は該文献においては一般に不利であるとみなされているが、これは触媒として活性な錯体の不活性化に帰結することが予想されるからである(例えば、J. Hassanら、Chem. Rev., 2002年、102巻、1359頁を参照されたい)。
【0036】
それ故、この少量の触媒の使用と組み合わせた多量のトリフェニルホスフィンの使用が、本発明による製造法の全体収率の向上、およびその結果として経済的な面での実現性の改善につながったことは驚きであった。
【0037】
金属パラジウムは、微粉砕された形態、または、例えば活性炭上のパラジウム、アルミナ上のパラジウム、炭酸バリウム上のパラジウム、硫酸バリウム上のパラジウム、炭酸カルシウム上のパラジウム、モンモリロナイトのようなアルミノケイ酸パラジウム、SiO2上のパラジウムおよび炭酸カルシウム上のパラジウムの形態で、それぞれの場合0.5〜12重量%のパラジウム含量で使用するのが好ましい。パラジウムおよびその担体物質に加えて、これらの触媒は例えば鉛のようなさらなる微量の添加物質(dopant)を含みうる。
【0038】
担体に保持されていてもよい金属パラジウムを使用するとき、特に好適であるのは上記の錯体リガンドを使用すること、特に錯体リガンドとしてトリフェニルホスフィンの存在下での活性炭上のパラジウムの使用であり、ここで、合わせて1〜3個のスルホン酸基によってトリフェニルホスフィンのフェニル基が置換されているのが好ましい。
【0039】
本発明による製造法においては、式(II)の化合物の量に対して、パラジウム触媒を0.001〜1.0 mol%、好ましくは0.005〜0.5 mol%または0.01〜0.5 mol%、特に0.005〜0.05 mol%の低い割合で使用する。
【0040】
多量の錯体リガンドの使用と組み合わせた少量のパラジウム塩の使用は、従来技術を上回る本製造法の費用面での顕著な利点を構成する。
【0041】
本発明による製造法は、水相および固相、すなわち触媒から構成される二相系の中で実施しうる。かかる態様では、水相は水に加えて水溶性有機溶剤をも含みうる。
【0042】
本発明による製造法に好適である有機溶剤は、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンおよびtert-ブチルメチルエーテルのようなエーテル、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、およびキシレンのような炭化水素、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、エチレングリコール、1-ブタノール、2-ブタノールおよびtert-ブタノールのようなアルコール、アセトン、エチルメチルケトンおよびイソブチルメチルケトンのようなケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよびN-メチルピロリドンのようなアミドであって、それぞれの場合において単独または混合物の形態である前記溶剤である。
【0043】
好ましい溶剤はジメトキシエタン、テトラヒドロフランおよびジオキサンのようなエーテル、シクロヘキサン、トルエンおよびキシレンのような炭化水素、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノールおよびtert-ブタノールのようなアルコールであって、それぞれの場合において単独または混合物の形態である前記溶剤である。
【0044】
本発明による製造法の特に好ましい別の態様においては、例えば水およびジオキサンの混合物、または水およびテトラヒドロフラン、もしくは水、ジオキサンおよびエタノール、もしくは水、テトラヒドロフランおよびメタノール、もしくは水、トルエンおよびテトラヒドロフランの混合物であり、好ましくは水およびテトラヒドロフラン、または水、テトラヒドロフランおよびメタノールの混合物である、水、1種以上の水不溶性溶剤および1種以上の水溶性溶剤を使用する。
【0045】
溶剤の総量は、式(II)の化合物1 molあたり通常3000〜500 gであり、好ましくは2000〜700 gである。
【0046】
前記製造法は式(II)の化合物、式(III)のジフェニルボリン酸、塩基および触媒量のパラジウム触媒を、水および1種以上の不活性な有機溶剤の混合物に加え、かつ50℃〜120℃、好ましくは70℃〜110℃、より好ましくは90℃〜100℃の温度で、1〜50時間、好ましくは2〜24時間撹拌することによって適宜実施する。
【0047】
使用する溶剤および温度に依存するが、圧力は1 bar〜6 bar、好ましくは1 bar〜4 barで実施する。
【0048】
好適であるのは水およびテトラヒドロフラン中で反応を実施することである。
【0049】
前記反応はかかる製造法に適した慣用の装置内で実施しうる。
【0050】
反応終了においては、固体として得られたパラジウム触媒を例えば濾過によって除去し、粗生成物を溶剤または溶剤混合物の存在しない状態にする。
【0051】
十分に水溶性でない生成物の場合には、水相を分離する際に水溶性のパラジウム触媒または錯体リガンドを粗生成物から完全に除去する。
【0052】
その後で、例えば再結晶、蒸留、昇華、帯域溶融(zone melting)、溶融晶析(melt crystallization)またはクロマトグラフィーなどの当業者に周知の方法であって、かつその特定の生成物に対して適切である方法によって、さらなる精製を実施する。
【0053】
本発明による製造法によって、例えば:
3’,4’-ジクロロ-5-フルオロ-ビフェニル-2-イルアミン、
2’,3’-ジクロロ-5-フルオロ-ビフェニル-2-イルアミン、
3’,4’-ジクロロ-3-フルオロ-ビフェニル-2-イルアミン、
2’,3’-ジクロロ-3-フルオロ-ビフェニル-2-イルアミン、
3’,4’-ジクロロ-4-フルオロ-ビフェニル-2-イルアミン、
2’,3’-ジクロロ-4-フルオロ-ビフェニル-2-イルアミン、
3’,4’-ジクロロ-6-フルオロ-ビフェニル-2-イルアミン、
2’,3’-ジクロロ-6-フルオロ-ビフェニル-2-イルアミン、
3’,4’-ジフルオロ-5-フルオロ-ビフェニル-2-イルアミン、
2’,3’-ジフルオロ-5-フルオロ-ビフェニル-2-イルアミン、
3’,4’-ジフルオロ-3-フルオロ-ビフェニル-2-イルアミン、
2’,3’-ジフルオロ-3-フルオロ-ビフェニル-2-イルアミン、
3’,4’-ジフルオロ-4-フルオロ-ビフェニル-2-イルアミン、
2’,3’-ジフルオロ-4-フルオロ-ビフェニル-2-イルアミン、
3’,4’-ジフルオロ-6-フルオロ-ビフェニル-2-イルアミン、
2’,3’-ジクロロ-6-フルオロ-ビフェニル-2-イルアミン、
3’,4’-ジクロロ-5-クロロ-ビフェニル-2-イルアミン、
2’,3’-ジクロロ-5- クロロ-ビフェニル-2-イルアミン、
3’,4’-ジクロロ-3-クロロ-ビフェニル-2-イルアミン、
2’,3’-ジクロロ-3-クロロ-ビフェニル-2-イルアミン、
3’,4’-ジクロロ-4-クロロ-ビフェニル-2-イルアミン、
2’,3’-ジクロロ-4-クロロ-ビフェニル-2-イルアミン、
3’,4’-ジクロロ-6-クロロ-ビフェニル-2-イルアミン、
2’,3’-ジクロロ-6-クロロ-ビフェニル-2-イルアミン、
3’,4’-ジフルオロ-5-クロロ-ビフェニル-2-イルアミン、
2’,3’-ジフルオロ-5-クロロ-ビフェニル-2-イルアミン、
3’,4’-ジフルオロ-3-クロロ-ビフェニル-2-イルアミン、
2’,3’-ジフルオロ-3-クロロ-ビフェニル-2-イルアミン、
3’,4’-ジフルオロ-4-クロロ-ビフェニル-2-イルアミン、
2’,3’-ジフルオロ-4-クロロ-ビフェニル-2-イルアミン、
3’,4’-ジフルオロ-6-クロロ-ビフェニル-2-イルアミン、
2’,3’-ジクロロ-6-クロロ-ビフェニル-2-イルアミン、
3’,4’-ジクロロ-5-フルオロ-2-ニトロビフェニル、
2’,3’-ジクロロ-5-フルオロ-2-ニトロビフェニル、
3’,4’-ジクロロ-3-フルオロ-2-ニトロビフェニル、
2’,3’-ジクロロ-3-フルオロ-2-ニトロビフェニル、
3’,4’-ジクロロ-4-フルオロ-2-ニトロビフェニル、
2’,3’-ジクロロ-4-フルオロ-2-ニトロビフェニル、
3’,4’-ジクロロ-6-フルオロ-2-ニトロビフェニル、
2’,3’-ジクロロ-6-フルオロ-2-ニトロビフェニル、
3’,4’-ジフルオロ-5-フルオロ-2-ニトロビフェニル、
2’,3’-ジフルオロ-5-フルオロ-2-ニトロビフェニル、
3’,4’-ジフルオロ-3-フルオロ-2-ニトロビフェニル、
2’,3’-ジフルオロ-3-フルオロ-2-ニトロビフェニル、
3’,4’-ジフルオロ-4-フルオロ-2-ニトロビフェニル、
2’,3’-ジフルオロ-4-フルオロ-2-ニトロビフェニル、
3’,4’-ジフルオロ-6-フルオロ-2-ニトロビフェニル、
2’,3’-ジクロロ-6-フルオロ-2-ニトロビフェニル、
3’,4’-ジクロロ-5-クロロ-2-ニトロビフェニル、
2’,3’-ジクロロ-5- クロロ-2-ニトロビフェニル、
3’,4’-ジクロロ-3-クロロ-2-ニトロビフェニル、
2’,3’-ジクロロ-3-クロロ-2-ニトロビフェニル、
3’,4’-ジクロロ-4-クロロ-2-ニトロビフェニル、
2’,3’-ジクロロ-4-クロロ-2-ニトロビフェニル、
3’,4’-ジクロロ-6-クロロ-2-ニトロビフェニル、
2’,3’-ジクロロ-6-クロロ-2-ニトロビフェニル、
3’,4’-ジフルオロ-5-クロロ-2-ニトロビフェニル、
2’,3’-ジフルオロ-5-クロロ-2-ニトロビフェニル、
3’,4’-ジフルオロ-3-クロロ-2-ニトロビフェニル、
2’,3’-ジフルオロ-3-クロロ-2-ニトロビフェニル、
3’,4’-ジフルオロ-4-クロロ-2-ニトロビフェニル、
2’,3’-ジフルオロ-4-クロロ-2-ニトロビフェニル、
3’,4’-ジフルオロ-6-クロロ-2-ニトロビフェニル、
2’,3’-ジクロロ-6-クロロ-2-ニトロビフェニル、
を調製することが可能である。
【0054】
本発明による製造法は、式(I)の化合物を定量的収率に達するほどの非常に高収率でかつ非常に良好な純度でもたらす。
【0055】
本発明による製造法によって得られうる置換ビフェニルは、抗菌性作物保護活性成分の前駆物質として好適である(国際公開WO 03/070705号を参照されたい)。
【実施例】
【0056】
3',4'-ジクロロ-5-フルオロ-2-ニトロ-ビフェニルの合成
例1:ジ-(3,4-ジクロロフェニル)ボリン酸
12.81 gのホウ酸トリメチル(123 mM)および30 mLのテトラヒドロフランの溶液を還流加熱する。ここに、18重量%の3,4-ジクロロフェニルマグネシウムブロミド(177 mM)のテトラヒドロフラン溶液245 gを1時間以内で量り入れる。全量加えた後、反応溶液を還流状態でさらに1時間撹拌する。
【0057】
反応溶液をその後110 mLの10%塩酸で処理し、40℃で30分間撹拌する。相分離の後、ジ(3,4-ジクロロフェニル)ボリン酸のテトラヒドロフラン溶液を得る。32.1 gのジ(3,4-ジクロロフェニル)ボリン酸を、200 mLのヘキサンから結晶化によって単離する(収率57%)。MS: m/z = 320 [m+H]+, 1H-NMR (DMSO, 500 MHz): δ[ppm] = 7.51 (s, 1H), 7.38 (d, 1 H, 7 Hz), 7.27 (d, 1 H, 7 Hz)。
【0058】
例2:ジ(3,4-ジクロロフェニル)ボリン酸および2-ブロモ-4-フルオロ-アニリンの反応
はじめに、反応フラスコに0.55 gの水酸化ナトリウム(13.7 mM)および50 mLの水を15〜20℃で加える。
【0059】
ここに、50 mLのジオキサンに溶解した2.5 gのジ(3,4-ジクロロフェニル)ボリン酸(7.8 mM)および0.199 gのトリフェニルホスフィン(0.76 mM)の溶液を量り入れる。全量加えた後、反応溶液を18〜22℃で40分間撹拌する。脱酸素の後、27 mgの塩化パラジウム(II) (0.15 mM)および1.4 gの2-ブロモ-4-フルオロ-アニリン(7.4 mM)を反応溶液に加える。反応溶液を85℃で6時間加熱する。
【0060】
反応混合物を冷却し、2 M塩酸で酸性にしてジオキサンを蒸発留去する。残渣をジクロロメタンで抽出し、溶剤を蒸発留去した後3',4'-ジクロロ-5-フルオロ-ビフェニル-2-イルアミンをカラムクロマトグラフィーによって単離する(0.63 g, 収率33%)。
【0061】
HPLC-MS: m/z = 256.0 [m+H]+
例3:ジ(3,4-ジクロロフェニル)ボリン酸および2-クロロ-4-フルオロ-1-ニトロ-ベンゼンの反応
はじめに、反応フラスコに0.55 gの水酸化ナトリウム(13.7 mM)および50 mLの水を15〜20℃で加える。
【0062】
ここに、50 mLのジオキサンに溶解した2.5 gのジ(3,4-ジクロロフェニル)ボリン酸(7.8 mM)および0.199 gのトリフェニルホスフィン(0.76 mM)の溶液を量り入れる。全量加えた後、反応溶液を18〜22℃で40分間撹拌する。脱酸素の後、27 mgの塩化パラジウム(II) (0.15 mM)および1.3 gの2-クロロ-4-フルオロ-1-ニトロ-ベンゼン(7.4 mM)を反応溶液に加える。反応溶液を85℃で6時間加熱する。
【0063】
反応混合物を冷却し、2 M塩酸で酸性にしてジオキサンを蒸発留去する。残渣をジクロロメタンで抽出し、溶剤を蒸発留去した後3',4'-ジクロロ-5-フルオロ-2-ニトロ-ビフェニルをカラムクロマトグラフィーによって単離する(0.76 g, 収率36%)。
【0064】
GC-MS: m/z = 285.9 [m-H]-
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本願発明に関連する化合物の式である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

〔式中、置換基が以下:
Xはフッ素または塩素であり、
R1はニトロ、アミノまたはNHR3であり、
R2はシアノ、ニトロ、ハロゲン、C1〜C6-アルキル、C1〜C6-アルケニル、C1〜C6-アルキニル、C1〜C6-アルコキシ、C1〜C6-ハロアルキル、(C1〜C6-アルキル)カルボニルまたはフェニルであり、
R3はC1〜C4-アルキル、C1〜C4-アルケニルまたはC1〜C4-アルキニルであり、
nは1、2または3であるが、nが2または3の場合には、該R2基は互いに異なっていてもよい、
として定義される〕
の構造を有する置換ビフェニルの製造法であって、式(II):
【化2】

〔式中、Halはハロゲンであり、かつXおよびR1は上記に定義されたものである〕
の構造を有する化合物を、塩基および以下:
a) パラジウムが酸化状態ゼロであるパラジウム−トリアリールホスフィンもしくは−トリアルキルホスフィン錯体、
b) 錯体リガンドとしてトリアリールホスフィンもしくはトリアルキルホスフィン存在下であるパラジウム塩、または
c) 担体に保持されていてもよい金属パラジウム
の群より選択されるパラジウム触媒の存在下において、トリアリールホスフィンまたはトリアルキルホスフィン存在下、溶媒中で式(III):
【化3】

〔式中、R2およびnは上記に定義されたものである〕
の構造を有するジフェニルボリン酸と反応させることを含み、ここで、使用するトリアリールホスフィンまたはトリアルキルホスフィンが置換されていてもよい、前記製造法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造法であって、使用する式(II)の化合物が2-ニトロ-3-フルオロ-クロロベンゼンまたは2-アミノ-3-フルオロ-ブロモベンゼンである、前記製造法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造法であって、式(III)の出発化合物が3-および4-位において置換されているジフェニルボリン酸である、前記製造法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の製造法であって、3-および4-位にフッ素または塩素を有する式(III)のジフェニルボリン酸を使用する、前記製造法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の製造法であって、式(III)の出発化合物がジ(3,4-ジクロロフェニル)ボリン酸である、前記製造法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造法であって、請求項1に記載の使用するパラジウム触媒a)がテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムまたはテトラキス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウムである、前記製造法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造法であって、請求項1に記載のパラジウム触媒b)を使用する、前記製造法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造法であって、請求項1に記載の使用するパラジウム触媒c)が、合わせて1〜3個のスルホン酸基によってフェニル基が置換されているトリフェニルホスフィン存在下における活性炭上の金属パラジウムである、前記製造法。
【請求項9】
請求項7に記載の製造法であって、使用するパラジウム塩の触媒b)が塩化パラジウム、酢酸パラジウムまたは塩化ビスアセトニトリルパラジウムである、前記製造法。
【請求項10】
請求項7に記載の製造法であって、1当量のパラジウム塩あたり6〜60当量のトリフェニルホスフィンを使用するパラジウム触媒b)を使用する、前記製造法。
【請求項11】
請求項1に記載の製造法であって、式(II)の化合物の量に対して0.001〜1.0 mol%のパラジウム触媒を使用する、前記製造法。
【請求項12】
請求項1に記載の製造法であって、反応を50〜120℃の温度で実施する、前記製造法。
【請求項13】
請求項1に記載の製造法であって、反応を水および有機溶剤の混合物中で実施する、前記製造法。
【請求項14】
請求項13に記載の製造法であって、使用する有機溶剤がエーテルである、前記製造法。
【請求項15】
請求項1に記載の製造法であって、反応を1〜6 barの圧力下で実施する、前記製造法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−526826(P2009−526826A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554792(P2008−554792)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際出願番号】PCT/EP2007/055283
【国際公開番号】WO2007/138089
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】