説明

美白剤及び抗老化剤、並びに皮膚化粧料

【課題】優れた美白作用を有する美白剤、及び優れた抗老化作用を有する抗老化剤、並びに該美白剤及び抗老化剤の少なくともいずれかを含む皮膚化粧料の提供。
【解決手段】バイベリーの抽出物、ブルーフラッグの抽出物、フウトウカズラの抽出物、西洋サクラソウの抽出物、レモンバーベナの抽出物、キンミズヒキの抽出物、ブルーベリーの抽出物、セロリの抽出物、紅柳の抽出物、及びパッションフルーツの抽出物の少なくとも1種を含有する美白剤、又は抗老化剤、並びに該美白剤及び抗老化剤の少なくともいずれかを含む皮膚化粧料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美白剤及び抗老化剤、並びに該美白剤及び抗老化剤の少なくともいずれかを含む皮膚化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の表皮及び真皮は、表皮細胞、皮膚線維芽細胞、及び、これらの細胞の外にあって皮膚構造を支持するコラーゲンやエラスチン等の細胞外マトリックスにより構成されている。若い皮膚においては、これら皮膚組織の相互作用が恒常性を保つことにより、水分保持、柔軟性、弾力性等が確保され、肌は外見的にも張りや艶があってみずみずしい状態に維持される。
ところが、紫外線(UVA、UVB)の照射、空気の著しい乾燥、過度の皮膚洗浄、過酸化水素との接触等の外的因子の影響があったり、加齢が進んだりすると、コラーゲンやエラスチン等の細胞外マトリックスの産生量が減少すると共に、架橋による弾力低下を起こす。その結果、皮膚は保湿機能や弾力性が低下し、角質は異常剥離を始めるため、肌は張りや艶を失い、荒れ、シワ等の老化症状を呈するようになる。
【0003】
このように皮膚の老化に伴う変化、即ち、シワ、くすみ、きめの消失、弾力性の低下等には、コラーゲンやエラスチン等の真皮マトリックス成分の減少乃至変性が関与していることが知られている。
コラーゲンの中でもI型コラーゲンは、最も多く体内に含まれるコラーゲンであり、皮膚の真皮にも多く含まれ、皮膚の強さを生み出す役割を果たしていることが知られている。
また、エラスターゼは皮膚の真皮に存在するエラスチンの加水分解酵素であるが、エラスターゼは、紫外線暴露や老化により過剰発現することがあり、エラスターゼによりエラスチンが変性・破壊されると、皮膚の弾力性が低下すると考えられている。
【0004】
また、近年、真皮マトリックス成分の減少乃至変性を誘導する因子として、マトリックスメタロプロテアーゼ類(以下、「MMPs」と称することもある)と呼ばれるタンパク質分解酵素群が挙げられる。
前記MMPsは、その一次構造と基質特異性の違いから、(1)コラゲナーゼ群(MMP−1、MMP−8及びMMP−13)、(2)ゼラチナーゼ群(MMP−2及びMMP−9)、(3)ストロメライシン群(MMP−3及びMMP−10)、(4)膜結合型マトリックスメタロプロテアーゼ群(MMP−14、MMP−15、MMP−16、及びMMP−17)、(5)その他(MMP−7、MMP−11、及びMMP−12)の5つのグループに分類されている(特許文献1参照)。
前記MMPsの中でも、MMP−1及びMMP−14は、皮膚の真皮マトリックスの主な構成成分であるI型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲンを分解する酵素として知られている。また、その発現は紫外線の照射により大きく増加し、紫外線によるコラーゲンの減少乃至変性の一因となり、皮膚のシワ形成等の大きな要因であると考えられる。
【0005】
また、角層は、表皮角化細胞が終末分化して形成された角質細胞と、細胞間を埋める細胞間脂質から形成される。セラミドを主成分とする細胞間脂質は、ラメラ構造を形成することにより、角層バリア機能を担っている。一方、角質細胞は、ケラチン線維を主成分とし、膜の裏打ち蛋白であるコーニファイドエンベロープ(角質肥厚膜、以下「CE」と略す。)という疎水的で強靭な細胞膜様構造物に覆われている。CEは、表皮角化細胞の分化に従って細胞内で産生されるインボルクリン、ロリクリンなど複数のCE前駆体蛋白質が、酵素トランスグルタミナーゼ−1により架橋され、不溶化して形成され、このCEが皮膚のバリア機能に密接に関与している。更に、その一部にはセラミド等が共有結合し、疎水的な構造をとることで細胞間脂質のラメラ構造の土台を供給し、角層バリア機能及び皮膚の水分保持機能の基礎が形成される。
【0006】
しかしながら、加齢、乾燥、紫外線(UVA、UVB)などの影響によりターンオーバー速度に異常が生じると、ラメラ構造の乱れやCEが不完全な状態で形成された、いわゆる不全角化が誘発され、角質細胞や細胞間脂質の構造に異常が生じ、角層の水分保持機能及びバリア機能は低下する。このことが肌荒れ、乾燥肌等の皮膚の老化症状につながると考えられる。また、乾癬やアトピー性皮膚炎の患者では、バリア機能が低下した皮疹部で未熟なCEが高頻度に観察され、CEが正しく形成されることが皮膚のバリア機能に非常に重要であると考えられている(非特許文献1参照)。
【0007】
このようなことから、皮膚線維芽細胞増殖促進作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、エラスターゼ活性阻害作用、MMP−1活性阻害作用、エストロゲン様作用、I型コラーゲン産生促進作用、表皮角化細胞増殖促進作用、UVBダメージからの回復作用等の各作用を有する抗老化剤は、皮膚の弾力性低下、荒れ、シワ等の皮膚の老化症状を、効果的に予防乃至改善することができると考えられる。
【0008】
一方、皮膚においてメラニンは紫外線から生体を保護する役目も果たしているが、過剰生成や不均一な蓄積は、皮膚の黒化やシミの原因となる。一般に、メラニンは色素細胞の中で生合成される酵素チロシナーゼの働きによって、チロシンからドーパ、ドーパからドーパキノンに変化し、次いで、5,6−ジヒドロキシインドフェノール等の中間体を経て形成される。したがって、皮膚の色黒(皮膚色素沈着症)を予防乃至改善するため、即ち美白のためには、メラニン産生過程を阻害すること、或いは既に産生したメラニンを淡色漂白することが有効であると考えられる。
このようなチロシナーゼ活性阻害作用を有する生薬としては、例えば、藤茶抽出物(特許文献2参照)、ヤナギタデ抽出物(特許文献3参照)などが報告されている。
【0009】
これまでの美白剤開発は、メラニン生成の律速酵素であるチロシナーゼに注力して進められてきたが、最近、紫外線UVB照射後に表皮ケラチノサイトからの産生が上昇し、色素細胞(メラノサイト)を活性化するサイトカインとしてα−メラノサイト刺激ホルモン(α−MSH)、エンドセリン−1(ET−1)、一酸化窒素(NO)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、顆粒球・マクロファージ・コロニー刺激因子(GM−CSF)、幹細胞因子(SCF)等が報告されており、これらが関与する情報伝達系を遮断することによりメラニン産生を抑制して美白効果を導く物質の開発が盛んに行われるようになってきている。このようなエンドセリン−1(ET−1)の色素細胞(メラノサイト)への作用を阻害する生薬の抽出物として、例えばカミツレ抽出物及びアルテア抽出物などが報告されている(非特許文献2参照)。
【0010】
しかしながら、現在までのところ、入手が容易で安価であり、安全性の高い天然物系のものであって、味、匂い、使用感等の点で添加対象物の品質に悪影響を及ぼさず、皮膚化粧料に広く使用可能な美白剤及び抗老化剤は未だ提供されておらず、その速やかな提供が強く求められているのが現状である。
【0011】
【特許文献1】特開2000−344672号公報
【特許文献2】特開2002−370962号公報
【特許文献3】特開2004−083488号公報
【非特許文献1】Experimental Dermatology 12:591−601(2003)
【非特許文献2】「フレグランスジャーナル」,Vol.28,No.9,p65〜71,2000年発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、第1に、優れたチロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用、SCFmRNA発現抑制作用、エンドセリン−1mRNA発現抑制作用、bFGFmRNA発現抑制作用、及びPOMCmRNA発現抑制作用の少なくともいずれかを有し、安全性が高く、原料の入手が容易な天然系美白剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、第2に、優れたエラスターゼ活性阻害作用、MMP−1活性阻害作用、I型コラーゲン産生促進作用、IV型コラーゲン産生促進作用、過酸化水素に対するダメージ抑制作用、ラミニン−5産生促進作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、UVBダメージからの回復作用、表皮角化細胞増殖促進作用、皮膚線維芽細胞増殖促進作用、インボルクリン産生促進作用、ATP産生促進作用、フィラグリン産生促進作用、ヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)mRNA発現促進作用、及びアクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進作用の少なくともいずれかを有し、安全性が高く、原料の入手が容易な天然系抗老化剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、第3に、本発明の前記美白剤、及び前記抗老化剤の少なくともいずれかを有効成分として配合した皮膚化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため本発明者が、入手が容易で安価であり、安全性の高い天然物系のものであって、匂い、使用感等の点で添加対象物の品質に悪影響を及ぼさず、皮膚化粧料に広く使用可能な美白剤、及び抗老化剤について鋭意検討を重ねた結果、バイベリーの抽出物、ブルーフラッグの抽出物、フウトウカズラの抽出物、西洋サクラソウの抽出物、レモンバーベナの抽出物、キンミズヒキの抽出物、ブルーベリーの抽出物、セロリの抽出物、紅柳花の抽出物、及びパッションフルーツの抽出物の少なくとも1種が、(1)優れたチロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用、SCFmRNA発現抑制作用、エンドセリン−1mRNA発現抑制作用、bFGFmRNA発現抑制作用、及びPOMCmRNA発現抑制作用の少なくともいずれかを有し、美白剤として有用であること、及び(2)優れたエラスターゼ活性阻害作用、MMP−1活性阻害作用、I型コラーゲン産生促進作用、IV型コラーゲン産生促進作用、過酸化水素に対するダメージ抑制作用、ラミニン−5産生促進作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、UVBダメージからの回復作用、表皮角化細胞増殖促進作用、皮膚線維芽細胞増殖促進作用、インボルクリン産生促進作用、ATP産生促進作用、フィラグリン産生促進作用、ヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)mRNA発現促進作用、及びアクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進作用の少なくともいずれかを有し、抗老化剤として有用であることを、それぞれ知見した。
【0014】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> バイベリーの抽出物、ブルーフラッグの抽出物、フウトウカズラの抽出物、西洋サクラソウの抽出物、レモンバーベナの抽出物、キンミズヒキの抽出物、ブルーベリーの抽出物、セロリの抽出物、紅柳の抽出物、及びパッションフルーツの抽出物の少なくとも1種を含有することを特徴とする美白剤である。
<2> チロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用、SCFmRNA発現抑制作用、エンドセリン−1mRNA発現抑制作用、bFGFmRNA発現抑制作用、及びPOMCmRNA発現抑制作用の少なくともいずれかを有する前記<1>に記載の美白剤である。
<3> バイベリーの抽出物、ブルーフラッグの抽出物、フウトウカズラの抽出物、西洋サクラソウの抽出物、レモンバーベナの抽出物、キンミズヒキの抽出物、ブルーベリーの抽出物、セロリの抽出物、紅柳の抽出物、及びパッションフルーツの抽出物の少なくとも1種を含有することを特徴とする抗老化剤である。
<4> エラスターゼ活性阻害作用、MMP−1活性阻害作用、I型コラーゲン産生促進作用、IV型コラーゲン産生促進作用、過酸化水素に対するダメージ抑制作用、ラミニン−5産生促進作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、UVBダメージからの回復作用、表皮角化細胞増殖促進作用、皮膚線維芽細胞増殖促進作用、インボルクリン産生促進作用、ATP産生促進作用、フィラグリン産生促進作用、ヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)mRNA発現促進作用、及びアクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進作用の少なくともいずれかを有する前記<3>に記載の抗老化剤である。
<5> 前記<1>から<2>のいずれかに記載の美白剤、及び前記<3>から<4>のいずれかに記載の抗老化剤の少なくともいずれかを含有することを特徴とする皮膚化粧料である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、第1に、優れたチロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用、SCFmRNA発現抑制作用、エンドセリン−1mRNA発現抑制作用、bFGFmRNA発現抑制作用、及びPOMCmRNA発現抑制作用の少なくともいずれかを有し、安全性が高く、原料の入手が容易な天然系美白剤を提供することができる。
また、本発明によると、第2に、優れたエラスターゼ活性阻害作用、MMP−1活性阻害作用、I型コラーゲン産生促進作用、IV型コラーゲン産生促進作用、過酸化水素に対するダメージ抑制作用、ラミニン−5産生促進作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、UVBダメージからの回復作用、表皮角化細胞増殖促進作用、皮膚線維芽細胞増殖促進作用、インボルクリン産生促進作用、ATP産生促進作用、フィラグリン産生促進作用、ヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)mRNA発現促進作用、及びアクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進作用の少なくともいずれかを有し、安全性が高く、原料の入手が容易な天然系抗老化剤を提供することができる。
また、本発明によると、第3に、本発明の前記美白剤、及び前記抗老化剤の少なくともいずれかを有効成分として配合した皮膚化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(美白剤及び抗老化剤)
本発明の美白剤及び抗老化剤は、バイベリーの抽出物、ブルーフラッグの抽出物、フウトウカズラの抽出物、西洋サクラソウの抽出物、レモンバーベナの抽出物、キンミズヒキの抽出物、ブルーベリーの抽出物、セロリの抽出物、紅柳の抽出物、及びパッションフルーツの抽出物の少なくとも1種を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記美白剤は、チロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用、SCFmRNA発現抑制作用、エンドセリン−1mRNA発現抑制作用、bFGFmRNA発現抑制作用、及びPOMCmRNA発現抑制作用の少なくともいずれかに基づく、美白作用を有するものである。
前記バイベリーの抽出物、ブルーフラッグの抽出物、フウトウカズラの抽出物、西洋サクラソウの抽出物、レモンバーベナの抽出物、キンミズヒキの抽出物、ブルーベリーの抽出物、セロリの抽出物、紅柳の抽出物、及びパッションフルーツの抽出物の各抽出物が含有する、美白作用を発揮する物質の詳細については不明であるが、前記各植物抽出物がこのような優れた作用を有し、美白剤として有用であることは、従来は全く知られておらず、このことは本発明者らによる新たな知見である。
【0017】
本発明の抗老化剤は、エラスターゼ活性阻害作用、MMP−1活性阻害作用、I型コラーゲン産生促進作用、IV型コラーゲン産生促進作用、過酸化水素に対するダメージ抑制作用、ラミニン−5産生促進作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、UVBダメージからの回復作用、表皮角化細胞増殖促進作用、皮膚線維芽細胞増殖促進作用、インボルクリン産生促進作用、ATP産生促進作用、フィラグリン産生促進作用、ヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)mRNA発現促進作用、及びアクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進作用の少なくともいずれかに基づく、抗老化作用を有するものである。
前記バイベリーの抽出物、ブルーフラッグの抽出物、フウトウカズラの抽出物、西洋サクラソウの抽出物、レモンバーベナの抽出物、キンミズヒキの抽出物、ブルーベリーの抽出物、セロリの抽出物、紅柳の抽出物、及びパッションフルーツの抽出物の各抽出物が含有する、抗老化作用を発揮する物質の詳細については不明であるが、前記各植物抽出物がこのような優れた作用を有し、抗老化剤として有用であることは、従来は全く知られておらず、このことは本発明者らによる新たな知見である。
【0018】
前記バイベリー(学名:Myrica cerifera)は、シロヤマモモとも呼ばれるヤマモモ科ヤマモモ属の植物である。
抽出原料として使用する前記バイベリーの部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、花、蕾、果実、果皮、種子、種皮、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根、根茎、根皮、これらの混合物などが挙げられ、これらの中でも、根皮が特に好ましい。
前記フウトウカズラ(学名:Piper kadzura)は、コショウ科コショウ属の植物であり、本州(関東南部以西)〜沖縄に分布しており、これらの地域から容易に入手可能である。
抽出原料として使用する前記フウトウカズラの部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、花、蕾、果実、果皮、種子、種皮、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根、根茎、根皮、これらの混合物などが挙げられ、これらの中でも、茎が特に好ましい。
前記キンミズヒキ(学名:Agrimonia pilosa)は、バラ科キンミズヒキ属の多年草であり、本州、四国、九州などの林の縁、原野、路傍に生息しており、容易に入手可能である。
抽出原料として使用する前記キンミズヒキの部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、花、蕾、果実、果皮、種子、種皮、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根、根茎、根皮、これらの混合物などが挙げられ、これらの中でも、全草が好ましい。
前記ブルーベリー(学名:Vaccinium spp.)は、ツツジ科スノキ属に分類される北アメリカ原産の落葉低木果樹の総称である。
抽出原料として使用する前記ブルーベリーの部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、花、蕾、果実、果皮、種子、種皮、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根、根茎、根皮、これらの混合物などが挙げられ、これらの中でも、葉が好ましい。
前記ブルーフラッグ(学名:Iris vesicolor)は、アヤメ科の植物である。
抽出原料として使用する前記ブルーフラッグの部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、花、蕾、果実、果皮、種子、種皮、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根、根茎、根皮、これらの混合物などが挙げられ、これらの中でも、根が好ましい。
前記西洋サクラソウ(学名:Primula veris)は、サクラソウ科の植物である。
抽出原料として使用する前記西洋サクラソウの部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、花、蕾、果実、果皮、種子、種皮、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根、根茎、根皮、これらの混合物などが挙げられ、これらの中でも、葉が好ましい。
前記レモンバーベナ(学名:Aloysia triphylla)は、クマツズラ科イワダレソウ属の落葉低木である、高さ1〜3mに成長し、葉は強いレモンの香りを放つ。
抽出原料として使用する前記レモンバーベナの部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、花、蕾、果実、果皮、種子、種皮、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根、根茎、根皮、これらの混合物などが挙げられ、これらの中でも、葉が好ましい。
前記セロリ(学名:Apium graveolens)は、セリ科の植物であり、オランダミツバ、清正人参(きよまさにんじん)とも呼ばれる。葉、茎、根、種子のほぼ全ての部分を食用にできる。独特の強い香りがある。
抽出原料として使用する前記セロリの部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、花、蕾、果実、果皮、種子、種皮、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根、根茎、根皮、これらの混合物などが挙げられ、これらの中でも、種子が好ましい。
前記紅柳(学名:Tamarix tenuissima)は、ギョウリュウ科の植物である。
抽出原料として使用する前記紅柳の部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、花、蕾、果実、果皮、種子、種皮、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根、根茎、根皮、これらの混合物などが挙げられ、これらの中でも、花が好ましい。
前記パッションフルーツ(学名:Passiflora edulis)は、トケイソウ科の植物である。
抽出原料として使用する前記パッションフルーツの部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、花、蕾、果実、果皮、種子、種皮、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根、根茎、根皮、これらの混合物などが挙げられ、これらの中でも、葉が好ましい。
【0019】
抽出原料である前記各植物は、例えば、乾燥した後に、そのままの状態で又は粗砕機等を用いて粉砕した状態で、溶媒抽出に供することができる。中でも、前記抽出原料としては、採取後ただちに乾燥し、粉砕したものが好ましい。前記乾燥は、例えば、天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。なお、前記各植物は、ヘキサン、ベンゼン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、前記各植物の極性溶媒による抽出処理を、効率よく行うことができる。
【0020】
前記各植物の抽出物は、植物の抽出に一般に用いられる方法を利用することによって、容易に得ることができる。また、前記各植物の抽出物としては、市販品を使用してもよい。なお、前記各植物の抽出物には、前記各植物の抽出液、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又は、これらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
【0021】
前記抽出に用いる溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、親水性有機溶媒、又は、これらの混合溶媒を、室温又は溶媒の沸点以下の温度で用いることが好ましい。前記各植物に含まれる美白作用又は抗老化作用を示す成分は、極性溶媒を抽出溶媒とする抽出処理によって、容易に抽出することができる。
【0022】
前記抽出溶媒として使用し得る水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等の他、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、ろ過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化等が含まれる。したがって、前記抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0023】
前記抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコールなどが挙げられ、該親水性有機溶媒と水との混合溶媒なども用いることができる。なお、前記水と前記親水性有機溶媒との混合溶媒を使用する際には、低級アルコールの場合は水10質量部に対して1質量部〜90質量部、低級脂肪族ケトンの場合は水10質量部に対して1質量部〜40質量部を混合したものを使用することが好ましい。また、多価アルコールの場合は水10質量部に対して1質量部〜90質量部を混合したものを使用することが好ましい。
【0024】
抽出原料である前記各植物から、各抽出物を抽出するにあたって、特殊な抽出方法を採用する必要はなく、室温又は還流加熱下で、任意の抽出装置を用いて抽出することができる。
具体的には、抽出溶媒を満たした処理槽内に、前記各抽出原料を投入し、更に必要に応じて時々攪拌しながら、30分〜4時間静置して可溶性成分を溶出した後、ろ過して固形物を除去し、得られた抽出液から抽出溶媒を留去し、乾燥することにより抽出物を得ることができる。抽出溶媒量は通常、抽出原料の5〜15倍量(質量比)である。抽出条件は、抽出溶媒として水を用いた場合には、通常50℃〜95℃にて1〜4時間程度である。また、抽出溶媒として水とエタノールとの混合溶媒を用いた場合には、通常40℃〜80℃にて30分間〜4時間程度である。なお、溶媒で抽出することにより得られる抽出液は、抽出溶媒が安全性の高いものであれば、そのまま本発明の美白剤又は抗老化剤の有効成分として用いることができる。
【0025】
抽出により得られる前記各植物の抽出液は、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物を得るため、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。なお、得られる前記各植物の抽出液は、そのままでも美白剤又は抗老化剤の有効成分として使用することができるが、濃縮液又はその乾燥物としたものの方が利用しやすい。抽出液の乾燥物を得るにあたっては、常法を利用することができ、また、吸湿性を改善するためにデキストリン、シクロデキストリン等のキャリアーを添加してもよい。また、抽出原料である前記各植物は特有の匂いと味を有している場合があり、そのため、前記各植物の抽出物に対しては、生理活性の低下を招かない範囲で、脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であるが、例えば皮膚化粧料に添加する場合などには大量に使用するものではないから、未精製のままでも実用上支障はない。なお、精製は、具体的には、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理等によって行うことができる。
【0026】
以上のようにして得られる前記各植物の抽出物は、チロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用、SCFmRNA発現抑制作用、エンドセリン−1mRNA発現抑制作用、bFGFmRNA発現抑制作用、POMCmRNA発現抑制作用、エラスターゼ活性阻害作用、MMP−1活性阻害作用、ATP産生促進作用、ラミニン−5産生促進作用、フィラグリン産生促進作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、ヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)mRNA発現促進作用、アクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進作用、I型コラーゲン産生促進作用、IV型コラーゲン産生促進作用、皮膚線維芽細胞増殖促進作用、UVBダメージからの回復作用、表皮角化細胞増殖促進作用、インボルクリン産生促進作用、及び過酸化水素に対するダメージ抑制作用の少なくともいずれかを有し、これらの作用に基づき、本発明の美白剤又は抗老化剤の有効成分として好適に利用可能なものである。
前記美白剤又は抗老化剤中の前記各植物の抽出物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、前記美白剤又は抗老化剤は、前記各植物の抽出物そのものであってもよい。
また、前記美白剤又は抗老化剤中、前記各植物の抽出物は、いずれか1種のみが含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。前記美白剤又は抗老化剤中に2種以上の植物抽出物が含まれる場合の、各々の含有量比としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0027】
また、前記美白剤又は抗老化剤中に含まれ得る、前記各植物の抽出物以外のその他の成分としても、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記各植物の抽出物を所望の濃度に希釈等するための、生理食塩液などが挙げられる。また、前記美白剤又は抗老化剤中の前記その他の成分の含有量にも、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
また、前記美白剤又は抗老化剤は、必要に応じて製剤化することにより、粉末状、顆粒状、錠剤状等、任意の剤形とすることができる。
【0028】
本発明の美白剤又は抗老化剤は、優れた美白作用又は抗老化作用を有すると共に、使用感及び安全性に優れるため、例えば、後述する本発明の皮膚化粧料への利用に特に好適である。
【0029】
(皮膚化粧料)
本発明の皮膚化粧料は、本発明の前記美白剤及び前記抗老化剤の少なくともいずれかを有効成分として含有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の成分を含有してなる。
【0030】
ここで、前記皮膚化粧料の用途としては、特に制限はなく、各種用途から適宜選択することができ、例えば、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、ゼリー、リップクリーム、口紅、入浴剤、アストリンゼント、などが挙げられる。
【0031】
前記美白剤又は前記抗老化剤の前記皮膚化粧料全体に対する配合量は、皮膚化粧料の種類や抽出物の生理活性等によって適宜調整することができるが、前記各植物抽出物に換算して0.0001質量%〜10質量%が好ましく、0.001質量%〜1質量%がより好ましい。
【0032】
前記皮膚化粧料は、更に必要に応じて本発明の目的及び作用効果を損なわない範囲で、その皮膚化粧料の製造に通常使用される各種主剤及び助剤、その他の成分を添加することができる。
前記その他の成分としては、本発明の前記美白作用及び抗老化作用の妨げにならない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択した成分が挙げられ、例えば、収斂剤、殺菌剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料、などが挙げられる。
【0033】
本発明の皮膚化粧料は、皮膚に使用した場合に高い安全性を有し、優れたチロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用、SCFmRNA発現抑制作用、エンドセリン−1mRNA発現抑制作用、bFGFmRNA発現抑制作用、POMCmRNA発現抑制作用、エラスターゼ活性阻害作用、MMP−1活性阻害作用、ATP産生促進作用、ラミニン−5産生促進作用、フィラグリン産生促進作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、ヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)mRNA発現促進作用、アクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進作用、I型コラーゲン産生促進作用、IV型コラーゲン産生促進作用、皮膚線維芽細胞増殖促進作用、UVBダメージからの回復作用、表皮角化細胞増殖促進作用、インボルクリン産生促進作用、及び過酸化水素に対するダメージ抑制作用の少なくともいずれかを発揮するものである。
【0034】
なお、本発明の美白剤、抗老化剤、及び皮膚化粧料は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0036】
(製造例1)
−各植物の水抽出物の製造−
下記表1に示す各植物の粉砕物に、質量比で10倍量の水を加え、80℃で2時間加熱し、ろ過した。残渣に同量の水を加え、80℃で2時間加熱し、ろ過した。ろ液を濃縮、凍結乾燥して、各植物の水抽出物(凍結乾燥品)を得た。
得られた各植物の水抽出物の「抽出率」を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
(製造例2)
−各植物の50質量%エタノール抽出物の製造−
下記表2に示す各植物の粉砕物に、質量比で10倍量の50質量%エタノールを加え、80℃で2時間加熱し、ろ過した。残渣に同量の50質量%エタノールを加え、80℃で2時間加熱し、ろ過した。ろ液を濃縮、凍結乾燥して、各植物の50質量%エタノール抽出物(凍結乾燥品)を得た。
得られた各植物の50質量%エタノール抽出物の「抽出率」を表2に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
(製造例3)
−各植物の80質量%エタノール抽出物の製造−
下記表3に示す各植物の粉砕物に、質量比で10倍量(質量比)の80質量%エタノールを加え、80℃で2時間加熱し、ろ過した。残渣に同量の80質量%エタノールを加え、80℃で2時間加熱し、ろ過した。ろ液を濃縮、凍結乾燥して、各植物の80質量%エタノール抽出物(凍結乾燥品)を得た。
得られた各植物の80質量%エタノール抽出物の「抽出率」を表3に示す。
【0041】
【表3】

【0042】
(実施例1)
−チロシナーゼ活性阻害作用試験−
下記表4の各抽出物を試料として用い、以下のようにして、チロシナーゼ活性阻害作用を試験した。
まず、48wellプレートに、McIlvaine緩衝液(pH6.8)0.2mL、0.3mg/mLのチロシン溶液0.06mL、被験試料の25質量%DMSO溶液0.18mLを加え、37℃で10分間静置した。これに、800units/mLのチロシナーゼ溶液0.02mLを加え、引き続き37℃で15分間反応した。反応終了後、波長475nmにおける吸光度を測定した。同様の方法で空試験を行い補正した。
チロシナーゼ活性阻害作用の計算方法は以下のとおりである。
チロシナーゼ活性阻害率(%)={1−(St−Sb)/(Ct−Cb)}×100
ただし、Stは被験試料溶液の波長475nmにおける吸光度、Sbは被験試料溶液ブランクの波長475nmにおける吸光度、Ctはコントロール溶液の波長475nmにおける吸光度、Cbはコントロール溶液ブランクの波長475nmにおける吸光度を表す。
【0043】
結果は、試料濃度100μg/mL、400μg/mL、又は50%阻害試料濃度で表し、表4に示す。
【0044】
【表4】

表4の結果から、バイベリーの抽出物、フウトウカズラの抽出物、西洋サクラソウの抽出物、及び紅柳の抽出物が、チロシナーゼ活性阻害作用を有することが確認できた。
【0045】
(実施例2)
−メラニン産生抑制作用試験−
下記表5の各抽出物を試料として用い、以下のようにして、メラニン産生抑制作用を試験した。
まず、B16メラノーマ細胞を、10質量%FBS含有ダルベッコMEMを用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を10質量%FBS及び1mmol/Lのテオフィリン含有ダルベッコMEMで24.0×10cells/mLの濃度に希釈した後、48wellプレートに1well当たり300μLずつ播種し、6時間培養した。培養終了後、10質量%FBS及び1mmol/Lのテオフィリン含有ダルベッコMEMで溶解した被験試料を各wellに300μL添加し、4日間培養した。培養終了後、各wellから培地を取り除き、1mol/LのNaOH溶液200μLを添加して超音波破砕器により細胞を破壊し、波長475nmにおける吸光度を測定した。同時に濁度として波長540nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってメラニン産生量とした。
空試験として、1mmol/Lのテオフィリン含有ダルベッコMEMのみで培養した細胞を同様の方法で試験した。
メラニン産生抑制作用の計算方法は以下のとおりである。
メラニン産生抑制率(%)={1−(B/D)/(A/C)}×100
ただし、Aは被験試料無添加での475nmにおける吸光度、Bは被験試料添加での475nmにおける吸光度、Cは被験試料無添加での540nmにおける吸光度、Dは被験試料添加での540nmにおける吸光度を表す。
【0046】
結果は、試料濃度25μg/mL、100μg/mL、200μg/mL、400μg/mL、又は50%阻害試料濃度で表し、表5に示す。
【0047】
【表5】

表5の結果から、ブルーフラッグの抽出物、バイベリーの抽出物、フウトウカズラの抽出物、西洋サクラソウの抽出物、レモンバーベナの抽出物、キンミズヒキの抽出物、ブルーベリーの抽出物、パッションフルーツの抽出物、及びセロリの抽出物が、メラニン産生抑制作用を有することが確認できた。
【0048】
(実施例3)
−エンドセリン−1(ET−1)mRNA発現抑制作用試験−
下記表6の各抽出物を試料として用い、以下のようにして、エンドセリン−1mRNA発現上昇抑制作用を試験した。
まず、正常ヒト新生児皮膚表皮角化細胞(normal human epidermis keratinocyte;NHEK)を、80cmフラスコでヒト正常新生児表皮角化細胞長期培養用培地(EpiLife−KG2)において、37℃、5%CO下で前培養し、トリプシン処理により細胞を集めた。
次に、EpiLife−KG2を用いて35mmシャーレ(FALCON社製)に40×10cells/2mL/シャーレずつ播き、37℃、5%CO下で一晩培養した。24時間後に培養液を捨て、HEPES緩衝液1mLを加え、UVB照射(50mJ/cm)を行い、その後、EpiLife−KG2で必要濃度に溶解した試料溶液(試料濃度は表6参照)を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%CO下で24時間培養した。培養後、培養液を捨て、ISOGEN(Wako社製;Cat.No.311−02501)にてtotal RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるようにtotal RNAを調整した。
このtotal RNAを鋳型とし、エンドセリン−1(ET−1)、及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置(Smart Cycler(R)、Cepheid社製)を用いて、Takara SYBR ExScript RT−PCR Kit(Perfect Real Time)によるリアルタイム RT−PCR反応により行った。
ET−1の発現量は、「紫外線未照射、試料溶液無添加」、「紫外線照射、試料溶液無添加」、及び「紫外線照射、試料溶液添加」でそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求め、更に「紫外線未照射、試料溶液無添加」の補正値を100とした時の「紫外線照射、試料溶液無添加」、及び「紫外線照射、試料溶液添加」の補正値を算出した。
そして、得られた結果から、下記数式1によりET−1mRNA発現抑制率を算出した。試料濃度10μg/mL又は試料濃度1μg/mLでのET−1mRNA発現抑制率を表6に示す。
<数式1>
エンドセリン−1(ET−1)mRNA発現抑制率(%)
={(A−B)−(A−C)}/(A−B)×100
ただし、前記数式1中、Aは紫外線未照射、試料溶液無添加時の補正値、Bは紫外線照射、試料溶液無添加時の補正値、Cは紫外線照射、試料溶液添加時の補正値をそれぞれ表す。
【0049】
【表6】

表6の結果から、フウトウカズラの抽出物、西洋サクラソウの抽出物、レモンバーベナの抽出物、キンミズヒキの抽出物、ブルーベリーの抽出物、及びセロリの抽出物が、エンドセリン−1(ET−1)mRNA発現抑制作用を有することが確認できた。
【0050】
(実施例4)
−SCFmRNA発現抑制作用試験−
下記表7の各抽出物を試料として用い、以下のようにして、SCFmRNA発現抑制作用を試験した。
まず、正常ヒト新生児皮膚表皮角化細胞(normal human epidermis keratinocyte;NHEK)を、80cmフラスコでヒト正常新生児表皮角化細胞長期培養用培地(EpiLife−KG2)において、37℃、5%CO下で前培養し、トリプシン処理により細胞を集めた。
次に、EpiLife−KG2を用いて35mmシャーレ(FALCON社製)に40×10cells/2mL/シャーレずつ播き、37℃、5%CO下で一晩培養した。24時間後に培養液を捨て、HEPES緩衝液1mLを加え、UVB照射(50mJ/cm)を行い、その後、EpiLife−KG2で必要濃度に溶解した試料溶液(試料濃度は表7参照)を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%CO下で24時間培養した。培養後、培養液を捨て、ISOGEN(Wako社製;Cat.No.311−02501)にてtotal RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるようにtotal RNAを調整した。
このtotal RNAを鋳型とし、SCF、及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置(Smart Cycler(R)、Cepheid社製)によるリアルタイムRT−PCR反応により行った。
SCFの発現量は、「紫外線未照射、試料溶液無添加」、「紫外線照射、試料溶液無添加」、及び「紫外線照射、試料溶液添加」でそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求め、更に「紫外線未照射、試料溶液無添加」の補正値を100とした時の「紫外線照射、試料溶液無添加」、及び「紫外線照射、試料溶液添加」の補正値を算出した。
そして、得られた結果から、下記数式2によりSCFmRNA発現抑制率を算出した。試料濃度10μg/mL又は試料濃度1μg/mLでのSCFmRNA発現抑制率を表7に示す。
<数式2>
SCFmRNA発現抑制率(%)
={(A−B)−(A−C)}/(A−B)×100
ただし、前記数式2中、Aは紫外線未照射、試料溶液無添加時の補正値、Bは紫外線照射、試料溶液無添加時の補正値、Cは紫外線照射、試料溶液添加時の補正値をそれぞれ表す。
【0051】
【表7】

表7の結果から、バイベリーの抽出物、フウトウカズラの抽出物、西洋サクラソウの抽出物、レモンバーベナの抽出物、キンミズヒキの抽出物、ブルーベリーの抽出物、及びセロリの抽出物が、SCFmRNA発現抑制作用を有することが確認できた。
【0052】
(実施例5)
−bFGFmRNA発現促進作用試験−
下記表8の各抽出物を試料として用い、以下のようにして、bFGFmRNA発現促進作用を試験した。
まず、正常ヒト新生児皮膚表皮角化細胞(NHEK)を、80cmフラスコでヒト正常新生児表皮角化細胞長期培養用培地(EpiLife−KG2)において、37℃、5%CO−95%airの条件下で前培養し、トリプシン処理により細胞を集めた。
EpiLife−KG2を用いて35mmシャーレ(FALCON社製)に40×10cells/2mL/シャーレずつ播き、37℃、5%CO−95%airの条件下で一晩培養した。24時間後に培養液を捨て、HEPES緩衝液1mLを加えてUVB照射(50mJ/cm)を行い、その後EpiLife−KG2で必要濃度に溶解した試験試料(試料濃度は表8参照)を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%CO−95%airの条件下で24時間培養した。培養後、培養液を捨て、ISOGEN(ニッポンジーン社製、Cat.no.311-02501)にてtotal RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるようにtotal RNAを調製した。
このtotal RNAを鋳型とし、bFGF及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Smart Cycler(Cepheid社)を用いて、TaKaRa SYBR PrimeScript RT-PCR Kit(Perfect Real Time,codeNo.RR063A,タカラバイオ社製)によるリアルタイム2Step RT−PCR反応により行った。
bFGFのmRNAの発現量は、紫外線未照射・試料無添加、紫外線照射・試料無添加及び紫外線照射・試料添加でそれぞれ培養した細胞から調製したtotal RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求め、更に紫外線未照射・試料無添加の補正値を100とした時の紫外線照射・試料無添加及び紫外線照射・試料添加の補正値を算出した。得られた結果から、下記式によりbFGFmRNA発現上昇抑制率(%)を算出した。結果を表8に示す。
bFGFmRNA発現上昇抑制率(%)
={(A−B)−(A−C)}/(A−B)×100
ただし、式中Aは「紫外線未照射・試料無添加時の補正値」を表し、Bは「紫外線照射・試料無添加時の補正値」を表し、Cは「紫外線照射・試料添加時の補正値」を表す。
【0053】
【表8】

表8の結果から、西洋サクラソウの抽出物、レモンバーベナの抽出物、キンミズヒキの抽出物、及びブルーベリーの抽出物が、bFGFmRNA発現促進作用を有することが確認できた。
【0054】
(実施例6)
−POMCmRNA発現促進作用試験−
下記表9の各抽出物を試料として用い、以下のようにして、POMCmRNA発現促進作用を試験した。
まず、正常ヒト新生児皮膚表皮角化細胞(NHEK)を、80cmフラスコでヒト正常新生児表皮角化細胞長期培養用培地(EpiLife−KG2)において、37℃、5%CO−95%airの条件下で前培養し、トリプシン処理により細胞を集めた。
EpiLife−KG2を用いて35mmシャーレ(FALCON社製)に40×10cells/2mL/シャーレずつ播き、37℃、5%CO−95%airの条件下で一晩培養した。24時間後に培養液を捨て、HEPES緩衝液1mLを加えてUV−B照射(50mJ/cm)を行い、その後EpiLife−KG2で必要濃度に溶解した試験試料(試料濃度は表9参照)を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%CO−95%airの条件下で24時間培養した。培養後、培養液を捨て、ISOGEN(ニッポンジーン社製,Cat.no.311-02501)にてtotal RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるようにtotal RNAを調製した。
このtotal RNAを鋳型とし、POMC及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Smart Cycler(Cepheid社)を用いて、TaKaRa SYBR PrimeScript RT-PCR Kit(Perfect Real Time,codeNo.RR063A)によるリアルタイム2Step RT−PCR反応により行った。 POMCのmRNAの発現量は、紫外線未照射・試料無添加、紫外線照射・試料無添加及び紫外線照射・試料添加でそれぞれ培養した細胞から調製したtotal RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求め、更に紫外線未照射・試料無添加の補正値を100とした時の紫外線照射・試料無添加及び紫外線照射・試料添加の補正値を算出した。得られた結果から、下記式によりPOMCmRNA発現上昇抑制率(%)を算出した。結果を表9に示す。 POMmRNA発現上昇抑制率(%) ={(A−B)−(A−C)}/(A−B)×100 ただし、式中Aは「紫外線未照射・試料無添加時の補正値」を表し、Bは「紫外線照射・試料無添加時の補正値」を表し、Cは「紫外線照射・試料添加時の補正値」を表す。
【0055】
【表9】

表9の結果から、西洋サクラソウの抽出物、レモンバーベナの抽出物、キンミズヒキの抽出物、ブルーベリーの抽出物、及びセロリの抽出物が、POMCmRNA発現促進作用を有することが確認できた。
【0056】
(実施例7)
−エラスターゼ活性阻害作用試験−
下記表10の各抽出物を試料として用い、以下のようにして、エラスターゼ活性阻害作用を試験した。
まず、96穴マイクロプレートにて、0.2mol/LのTris−HCL緩衝液(pH8.0)で調製した各試料溶液50μL、及び20μg/mLのエラスターゼ・タイプIII溶液50μLを混合した。その後、上記緩衝液にて調製した0.4514mg/mLのN−SUCCINYL−ALA−ALA−ALA−p−NITROANILIDEを100μL添加して、25℃にて15分間反応させた。反応終了後、波長415nmにおける吸光度を測定した。同様の方法で空試験を行い補正した。
そして、これらの結果から、下記数式3によりエラスターゼ活性阻害率を算出した。
<数式3>
エラスターゼ活性阻害率(%)=[1−(C−D)/(A−B)]×100
ただし、前記数式3中、Aは、試料溶液無添加、酵素添加での波長415nmにおける吸光度を表す。Bは、試料溶液無添加、酵素無添加での波長415nmにおける吸光度を表す。Cは、試料溶液添加、酵素添加での波長415nmにおける吸光度を表す。Dは、試料溶液添加、酵素無添加での波長415nmにおける吸光度を表す。
【0057】
次に、各試料溶液の濃度を段階的に減少させて上記エラスターゼ活性阻害率を測定し、阻害率が50%になる濃度IC50(μg/mL)を近似曲線により求めた(このIC50値が小さいほどエラスターゼ活性阻害作用が強い)。結果を表10に示す。
【0058】
【表10】

表10の結果から、バイベリーの抽出物、及びフウトウカズラの抽出物が、エラスターゼ活性阻害作用を有することが確認できた。
【0059】
(実施例8)
−マトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)活性阻害作用試験−
下記表11の各抽出物を試料として用い、以下のようにして、マトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)活性阻害作用を試験した。この試験方法は、Wunsch and Heidrich法を一部改変したものである。
まず、蓋付試験管にて、20mmol/mLの塩化カルシウム含有0.1mol/LのTris−HCl緩衝液(pH7.1)に溶解した各試料溶液50μL、MMP−1溶液50μL、及びPz−peptide溶液400μLを混合し、37℃にて30分間反応させた後、25mmol/Lのクエン酸溶液1mLを加え反応を停止した。その後、酢酸エチル5mLを加え、激しく振とうした。これを遠心(1,600×g、10分)し、酢酸エチル層の波長320nmにおける吸光度を測定した。同様の方法で空試験を行い補正した。
なお、MMP−1としては、COLLAGENASE Type IV from Clostridium histolyticum(シグマ社製)を使用した。
Pz−peptideとしては、Pz−Pro−Leu−Gly−Pro−D−Arg−OH(BACHEM Fenichemikalien AG社製)を使用した。
そして、得られた結果から、下記数式4によりMMP−1活性阻害率を算出した。
<数式4>
MMP−1活性阻害率(%)={1−(C−D)/(A−B)}×100
ただし、前記数式4中、Aは試料溶液無添加、酵素添加での波長320nmにおける吸光度、Bは試料溶液無添加、酵素無添加での波長320nmにおける吸光度、Cは試料溶液添加、酵素添加での波長320nmにおける吸光度、Dは試料溶液添加、酵素無添加での波長320nmにおける吸光度を表す。
【0060】
次に、各試料溶液の濃度を段階的に減少させて上記MMP−1活性阻害率を測定し、阻害率が50%になる濃度IC50(μg/mL)を近似曲線により求めた(このIC50値が小さいほどMMP−1活性阻害作用が強い)。結果を表11に示す。
【0061】
【表11】

表11の結果から、バイベリーの抽出物、フウトウカズラの抽出物、西洋サクラソウの抽出物、キンミズヒキの抽出物、及びブルーベリーの抽出物が、MMP−1活性阻害作用を有することが確認できた。
【0062】
(実施例9)
−I型コラーゲン産生促進作用試験−
下記表12の各抽出物を試料として用い、以下のようにして、I型コラーゲン産生促進作用を試験した。
まず、正常ヒト新生児皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を、10質量%のFBS含有ダルベッコMEM培地を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1.6×10cells/mLの細胞密度になるようにダルベッコMEM培地を用いて希釈した後、96穴マイクロプレートに1穴あたり100μLずつ播種し、一晩培養した。培養終了後、培地を抜き、0.25質量%のFBS含有ダルベッコMEM培地に溶解した各試料溶液(試料濃度:100μg/mL)を各穴に150μLずつ添加し、3日間培養した。その後、各穴の培地中のI型コラーゲン量をELISA法により測定した。
【0063】
I型コラーゲン産生促進率は、試料無添加時のI型コラーゲン量を100%として算出した。I型コラーゲン産生促進率の計算方法は以下のとおりである。
I型コラーゲン産生促進率(%)=A/B×100
ただし、Aは被験試料添加時のI型コラーゲン量、Bは被験試料無添加時のI型コラーゲン量を表す。
【0064】
【表12】

表12の結果から、フウトウカズラの抽出物、西洋サクラソウの抽出物、レモンバーベナの抽出物、キンミズヒキの抽出物、パッションフルールの抽出物、及び紅柳の抽出物が、I型コラーゲン産生促進作用を有することが確認できた。
【0065】
(実施例10)
−IV型コラーゲン産生促進作用試験−
フウトウカズラの50質量%エタノール抽出物を試料として用い、以下のようにしてIV型コラーゲン産生促進作用を試験した。
まず、正常ヒト新生児皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を、10質量%のFBS含有ダルベッコMEM培地を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1.6×10cells/mLの細胞密度になるようにダルベッコMEM培地を用いて希釈した後、96穴マイクロプレートに1穴あたり100μLずつ播種し、一晩培養した。培養終了後、培地を抜き、0.25質量%のFBS含有ダルベッコMEM培地に溶解した各試料溶液(試料濃度:100μg/mL)を各穴に150μLずつ添加し、3日間培養した。培養終了後、各穴の培地中のIV型コラーゲン量をELISA法により測定した。
そして、得られた測定結果から、下記数式5によりIV型コラーゲン産生促進率(%)を算出した。試料濃度100μg/mLでのIV型コラーゲン産生促進率の結果を表13に示す。
<数式5>
IV型コラーゲン産生促進率(%)=(A/B)×100
ただし、前記数式5中、Aは試料溶液添加時のIV型コラーゲン量を表し、Bは試料溶液無添加時のIV型コラーゲン量を表す。
【0066】
【表13】

表13の結果から、フウトウカズラの抽出物が、IV型コラーゲン産生促進作用を有することが確認できた。
【0067】
(実施例11)
−過酸化水素に対するダメージ抑制作用試験−
下記表14の各抽出物を試料として用い、以下のようにして、過酸化水素に対するダメージ抑制作用を試験した。
まず、正常ヒト新生児皮膚線維芽細胞(NB1RGB)をα−MEM培地(GIBCO BLR社製品,pH7.2)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2.5×10cells/mLの濃度になるようにα−MEM培地を用いて希釈した後、48穴プレートに播種し1穴当たり200μLずつ播種し、一晩培養した。培養終了後、培地を抜き、1質量%FBS含有α−MEMで溶解した被験試料を各穴に200μL添加し、24時間培養した。培養終了後、培地を抜き、400μLのPBS(−)で洗浄した。洗浄後、ハンクス緩衝液に溶解した過酸化水素(1mmol/L)、あるいは、ハンクス緩衝液のみを各穴に200μL添加し、2時間培養した。培養後、400μLのPBS(−)で洗浄し、終濃度0.05mg/mLで1質量%FBS含有α−MEMに溶解したニュートラルレッドを各穴に200μL添加した。2.5時間培養した後、ニュートラルレッド溶液を捨て、エタノール・酢酸溶液(エタノール:酢酸:水=50:1:49)を各穴に200μL添加し、色素を抽出した。抽出後、波長540nmにおける吸光度を測定した。得られた測定結果から、下記数式6により、過酸化水素に対するダメージ抑制率を求めた。結果を表14に示す。
<数式6>
過酸化水素に対するダメージ抑制率(%)
={1−(C−A)/(C−B)}×100
ただし、前記数式6中、Aは過酸化水素処理・被験試料処理の吸光度、Bは過酸化水素処理・被験試料無処理の吸光度、Cは過酸化水素無処理・被験試料無処理の吸光度、を表す。
【0068】
【表14】

表14の結果から、セロリの抽出物、紅柳の抽出物、及びブルーベリーの抽出物が、高い過酸化水素に対するダメージ抑制作用を有することが認められた。
【0069】
(実施例12)
−ラミニン−5産生促進作用試験−
下記表15の各抽出物を試料として用い、以下のようにして、ラミニン−5産生促進作用を試験した。
まず、正常ヒト新生児皮膚表皮角化細胞(NHEK)を、80cmのフラスコでヒト正常新生児表皮角化細胞長期培養用培地(EpiLife−KG2)にて37℃、5%CO下で培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1.0×10個/mLの細胞密度となるようにEpiLife−KG2で希釈した後、24穴プレートに1穴あたり200μLずつ播種し、5%CO下、37℃で一晩培養した。
培養終了後、培地を抜き、EpiLife−KG2で溶解した試料溶液を各穴に500μLずつ添加し、37℃、5%CO下で48時間培養した。培養終了後、上清100μLをエライザプレートに移し換え一晩4℃でプレートに吸着させたのち、溶液を捨て、0.05質量%トゥイーン−20を含むリン酸生理緩衝液(PBS−T)にて、洗浄を行った。その後、1質量%ウシ血清アルブミンを含むリン酸生理緩衝液で、ブロッキング操作を行った。溶液を捨て、0.05質量%トゥイーン−20を含むリン酸生理緩衝液(PBS−T)にて、洗浄を行い、抗ヒトラミニン−5抗体(マウスIgG、ケミコン社製)を反応させた。溶液を捨て、0.05質量%トゥイーン−20を含むリン酸生理緩衝液(PBS−T)にて、洗浄を行い、ビオチン標識抗体マウスIgG(アマシャムバイオサイエンス社製)を反応させた。溶液を捨て、0.05質量%トゥイーン−20を含むリン酸生理緩衝液(PBS−T)にて、洗浄を行い、アビジン−ビオチン化ペルオキシダーゼ複合体と反応させたのち、同様の洗浄操作を行い、発色反応を行った。
ラミニン−5産生促進率は、試料無添加時における吸光度を100%として算出した。各試料のラミニン−5産生促進率(%)を表15に示す。
【0070】
【表15】

表15の結果から、ブルーフラッグの抽出物、パッションフルーツの抽出物、及びセロリの抽出物が、角化細胞のラミニン−5産生を促進する作用を有することが確認できた。
【0071】
(実施例13)
−トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用試験−
下記表16の各抽出物を試料として用い、以下のようにして、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用を試験した。
まず、正常ヒト新生児皮膚表皮角化細胞(NHEK)を、ヒト正常新生児表皮角化細胞長期培養用培地(EpiLife−KG2)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1×10cells/mLの濃度になるようにEpiLife−KG2で希釈した後、96wellプレートに1well当たり100μLずつ播種し、2日間培養した。培養終了後、EpiLife−KG2で溶解した被験試料を各wellに100μL添加し、24時間培養した。培養終了後、培地を抜き、細胞をプレートに固定させ、細胞表面に発現したトランスグルタミナーゼ−1の量をモノクローナル抗ヒトトランスグルタミナーゼ−1抗体を用いたELISA法により測定した。結果を表16に示す。
トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用の計算方法は以下のとおりである。
トランスグルタミナーゼ−1産生促進率(%)=A/B×100
ただし、Aは被験試料添加時の波長405nmにおける吸光度、Bは被験試料無添加時(コントロール)の波長405nmにおける吸光度を表す。
【0072】
【表16】

表16の結果から、ブルーフラッグの抽出物、フウトウカズラの抽出物、セロリの抽出物、西洋サクラソウの抽出物、レモンバーベナの抽出物、キンミズヒキの抽出物、及びブルーベリーの抽出物が、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用を有することが確認できた。
【0073】
(実施例14)
−UVBダメージからの回復作用試験−
下記表17の各抽出物を試料として用い、以下のようにして、UVBダメージからの回復作用を試験した。
まず、正常ヒト新生児皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を10質量%FBS含有α−MEMを用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞をα−MEMを用いて2.0×10cells/mLの濃度に希釈した後、48wellプレートに1wellあたり200μLずつ播種した。24時間培養後、培地を100μLのPBS(−)へ交換し、1.0J/cmのUVBを照射した。照射後、直ちに、PBS(−)を抜き、10質量%FBS含有D−MEMに溶解した被験試料を各wellに400μL添加し、24時間培養した。紫外線UVBダメージからの回復効果は、MTTアッセイを用いて測定した。培養終了後、培地を抜き、終濃度0.4mg/mLで溶解したMTTを各wellに200μLずつ添加した。2時間培養した後に、細胞内に生成したブルーホルマザンを2−プロパノール200μLで抽出した。抽出後、波長570nmにおける吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。また、同様に細胞播種した後、UVBを照射しない細胞、及び細胞播種後UVBを照射し被験試料を添加しない細胞についても同様に測定し、それぞれ非照射群と照射群とした。
UVBダメージからの回復作用の計算方法は以下のとおりである。結果を表17に示す。
UVBダメージからの回復率(%)
={(Nt−C)−(Nt−Sa)}/(Nt−C)×100
ただし、式中、NtはUVBを照射しない細胞での吸光度、CはUVBを照射し被験試料を添加しない細胞での吸光度、SaはUVBを照射し被験試料を添加した細胞での吸光度を表す。
【0074】
【表17】

表17の結果から、フウトウカズラの抽出物、キンミズヒキの抽出物、及びセロリの抽出物が、UVBダメージからの回復作用を有することが確認できた。
【0075】
(実施例15)
−表皮角化細胞増殖促進作用試験−
西洋サクラソウの50質量%エタノール抽出物を試料として用い、以下のようにして、表皮角化細胞増殖促進作用を試験した。
まず、正常ヒト新生児皮膚表皮角化細胞(NHEK)を、ヒト正常新生児表皮角化細胞長期培養用培地(EpiLife−KG2)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2.0×10cells/mLの濃度にEpiLife−KG2で希釈した後、コラーゲンコートした96穴マイクロプレートに1穴当たり100μLずつ播種し、一晩培養した。培養終了後、EpiLife−KG2で溶解した試料溶液を各穴に100μL添加し、3日間培養した。
次に、表皮角化細胞増殖促進作用は、MTTアッセイ法を用いて測定した。培養終了後、培地を抜き、終濃度0.4mg/mLでPBS(−)に溶解したMTT〔3-(4,5-Dimethyl-2-thiazolyl)-2,5-diphenyl-2H-tetrazolium Bromide〕を各穴に100μLずつ添加した。2時間培養した後に、細胞内に生成したブルーホルマザンを2−プロパノール100μLで抽出した。抽出後、波長570nmにおける吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。また、同様の方法で空試験を行い補正した。
そして、得られた測定結果から、下記数式7により表皮角化細胞増殖促進率を算出した。試料濃度3.13μg/mLでの表皮角化細胞増殖促進率を表18に示す。
<数式7>
表皮角化細胞増殖促進率(%)=(St/Ct)×100
ただし、前記数式7中、Stは試料溶液を添加した細胞での吸光度、Ctは試料溶液を添加しない細胞での吸光度を表す。
【0076】
【表18】

表18の結果から、西洋サクラソウの抽出物が、表皮角化細胞増殖促進作用を有することが確認できた。
【0077】
(実施例16)
−皮膚線維芽細胞増殖促進作用試験−
フウトウカズラの50質量%エタノール抽出物を試料として用い、以下のようにして、皮膚線維芽細胞増殖促進作用を試験した。
まず、正常ヒト新生児皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を、10質量%のFBS含有α−MEMを用いて培養した後、トリプシン処理により回収した。回収した細胞を5質量%のFBS含有α−MEMで7.0×10cells/mLの濃度に希釈した後、96穴マイクロプレートに1穴当たり100μL播種し、一晩培養した。
培養終了後、5質量%FBS含有α−MEMに溶解した試料溶液(濃度:400μg/mL)を各穴に100μL添加し、3日間培養した。
次いで、皮膚線維芽細胞増殖促進作用は、MTTアッセイ法を用いて測定した。具体的には、各穴から100μLずつ培地を抜き、終濃度5mg/mLでPBS(−)に溶解したMTT〔3-(4,5-Dimethyl-2-thiazolyl)-2,5-diphenyl-2H-tetrazolium Bromide〕を各穴に20μLずつ添加した。4.5時間培養した後、10質量%のSDSを溶解した0.01mol/Lの塩酸溶液を各穴に100μL添加し、一晩培養した後、波長570nmにおける吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。また、同様の方法で空試験を行い補正した。
そして、得られた測定結果から、下記数式8により試料濃度200μg/mLの皮膚線維芽細胞増殖促進率を算出した。結果を表19に示す。
<数式8>
皮膚線維芽細胞増殖促進率(%)=(St−Sb)/(Ct−Cb)×100
ただし、前記数式8中、Stは試料溶液を添加した細胞での吸光度、Sbは試料溶液を添加した空試験の吸光度、Ctは試料溶液を添加しない細胞での吸光度、Cbは試料溶液を添加しない空試験の吸光度、をそれぞれ表す。
【0078】
【表19】

表19の結果から、フウトウカズラの抽出物が、皮膚線維芽細胞増殖促進作用を有することが確認できた。
【0079】
(実施例17)
−インボルクリン産生促進作用試験−
西洋サクラソウの50質量%エタノール抽出物を試料として用い、以下のようにして、インボルクリン産生促進作用を試験した。
まず、正常ヒト新生児皮膚表皮角化細胞(NHEK)を80cmのフラスコでヒト正常新生児表皮角化細胞長期培養用培地(EpiLife−KG2)にて37℃、5%CO下で培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1.0×10個/mLの細胞密度となるようにEpiLife−KG2で希釈した後、48穴プレートに1穴あたり200μLずつ播種し、5%CO下、37℃で一晩培養した。
培養終了後、培地を抜き、EpiLife−KG2で溶解した試料溶液を各穴に200μLずつ添加し、37℃、5%CO下で48時間培養した。培養終了後、培地を抜き、細胞をプレートに固定させ細胞表面に発現したインボルクリンの量をモノクローナル抗ヒトインボルクリン抗体を用いたELISA法により測定した。得られた測定結果から、下記数式9によりインボルクリン産生促進率(%)を算出した。結果を表20に示す。
<数式9>
インボルクリン産生促進率(%)=A/B×100
ただし、前記数式9中、Aは試料添加時の波長405nmにおける吸光度、Bは試料無添加時の波長405nmにおける吸光度を表す。
【0080】
【表20】

表20の結果から、西洋サクラソウの抽出物が、高いインボルクリン産生促進作用を有することが認められた。
【0081】
(実施例18)
−アデノシン三リン酸(ATP)産生促進作用試験−
下記表21の各抽出物を試料として用い、以下のようにして、ATP産生促進作用を試験した。
まず、正常ヒト新生児皮膚表皮角化細胞(NHEK)を、ヒト正常新生児表皮角化細胞長期培養用培地(EpiLife−KG2)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2.0×10cells/mLの濃度にEpiLife−KG2で希釈した後、コラーゲンコートした96wellプレートに1well当たり100μLずつ播種し、一晩培養した。培養終了後、培地を抜き、EpiLife−KG2で溶解した被験試料を各wellに100μL添加し、2時間培養した。ATP産生促進作用は、ホタルルシフェラーゼ発光法を用いて細胞内のATP量を測定した。即ち、培養終了後、『「細胞の」ATP測定試薬』(東洋ビーネット社製)を各wellに100μLずつ添加した。反応後、化学発光量を測定した。結果を表21に示す。
ATP産生促進率の計算方法は以下のとおりである。
ATP産生促進率(%)=A/B×100
ただし、Aは被験試料を添加した細胞での化学発光量、Bは被験試料を添加しない細胞での化学発光量を表す。
【0082】
【表21】

表21の結果から、バイベリーの抽出物、及びレモンバーベナの抽出物が、ATP産生促進作用を有することが確認できた。
【0083】
(実施例19)
−プロフィラグリン・フィラグリン産生促進作用試験−
下記表22の各抽出物を試料として用い、以下のようにして、フィラグリン産生促進作用を試験した。
まず、正常ヒト新生児皮膚表皮角化細胞(NHEK)を、ヒト正常新生児表皮角化細胞長期培養用培地(EpiLife−KG2)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を同培地にて1.5×10個/mLの細胞密度になるように調整し、2mLずつ6穴コラーゲンコートプレートに播種して37℃、5%CO−95%airの条件下で3日間培養した。培養後、培地を0.5質量%DMSOに溶解した試料(試料濃度は表22を参照)を含むEpiLife−KG2 2mLに交換し、37℃、5%CO−95%airの条件下で5日間培養した。培養終了後、常法により総タンパクの調整を行った。<ウエスタンブロッティング>
10μg/列に調整したサンプルをSDS−PAGEにより展開し、PVDF膜に転写した。5%スキムミルクを含むPBS(−)でブロッキングを行った後、抗ヒトフィラグリンモノクローナル抗体(Harbor Bio-Products社製)、ビオチン標識抗マウスIg(Whole Ab,Amersham Biosciences社製)及びストレプトアビジンーペルオキシダーゼ複合体(CALBIOCHEM社製)を、0.1%Tween20、0.3%スキムミルクを含むPBS(−)で1000倍に希釈して順次反応させ、ECL Western blotting detection reagents and analysis system(Amersham Biosciences社製)の発光によりプロフィラグリン及びフィラグリンを検出した。検出したバンドをKODAK 1D Image Analysis Software EDAS290 Version3.5にて定量的に測定した。
結果は、試料添加及び無添加で培養した細胞のそれぞれから調製したタンパク10μg中のプロフィラグリン及びフィラグリンのNet intensity(バンド強度)を合算した値を用いて、試料のプロフィラグリン産生促進作用を評価し、プロフィラグリン産生促進率(%)を下記式に基づいて算出した。結果を表22に示す。
プロフィラグリン・フィラグリン産生促進率(%)=A/B×100
ただし、式中Aは「試料添加時のNet intensity(プロフィラグリン及びフィラグリンの合計値)」を、Bは「試料無添加時(コントロール)のNet intensity」を表す。
【0084】
【表22】

表22の結果から、ブルーフラッグの抽出物、及びパッションフルーツの抽出物が、フィラグリン産生促進作用を有することが確認できた。
【0085】
(実施例20)
−ヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)mRNA発現促進作用試験−
下記表23の各抽出物を試料として用い、以下のようにして、ヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)mRNA発現促進作用を試験した。
まず、正常ヒト新生児皮膚表皮角化細胞(normal human epidermal keratinocyte;NHEK)を80cmフラスコでヒト正常新生児表皮角化細胞長期培養用培地(EpiLife−KG2)において、37℃、5%CO−95%airの条件下にて前培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。 回収した細胞を35mmシャーレ(FALCON社製)に40×10cells/2mLずつ播種し、37℃、5%CO−95%airの条件下で、EpiLife−KG2を用いて一晩培養した。24時間後に培養液を捨て、EpiLife−KG2で溶解した試料溶液(試料濃度は表23参照)を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%CO−95%airの条件下にて24時間培養した。培養後、培養液を捨て、ISOGEN(ニッポンジーン社製,Cat.No.311-02501)にてtotal RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200μg/mLになるようにtotal RNAを調製した。
このtotal RNAを鋳型とし、HAS3(Hyaluronan Synthase 3)及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Smart cycler(Cepheid社製)を用いて、TaKaRa SYBR Prime Script RT-PCR kit(Perfect Real Time,codeNo.RR063A)によるリアルタイム2Step RT−PCR反応により行った。HAS3の発現量は、「試料無添加」で及び「試料添加」でそれぞれ培養した細胞から調製したtotal RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求め、更に「試料無添加」の補正値を100としたときの「試料添加」の補正値を算出した。得られた結果から、下記式によりHAS3mRNA発現促進率(%)を算出した。結果を表23に示す。
HAS3mRNA発現促進率(%)=A/B×100
ただし、式中Aは「試料添加時の補正値」を表し、Bは「試料無添加時の補正値」を表す。
【0086】
【表23】

表23の結果から、フウトウカズラの抽出物、ブルーフラッグの抽出物、セロリの抽出物、及びレモンバーベナの抽出物が、ヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)mRNA発現促進作用を有することが確認できた。
【0087】
(実施例21)
−アクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進作用試験−
下記表24の各抽出物を試料として用い、以下のようにして、アクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進作用を試験した。
まず、正常ヒト新生児皮膚表皮角化細胞(normal human epidermis keratinocyte;NHEK)を80cmフラスコでヒト正常新生児表皮角化細胞長期培養用培地(EpiLife−KG2)において、37℃、5%CO下で前培養し、トリプシン処理により細胞を集めた。 EpiLife−KG2を用いて35mmシャーレ(FALCON社製)に40×10cells/2mL/シャーレずつ播き、37℃、5%CO下で一晩培養した。24時間後に培養液を捨て、EpiLife−KG2で必要濃度に溶解した被験試料を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%CO下で24時間培養した。培養後、培養液を捨て、ISOGEN(NIPPON GENE;Cat.no.311−02501)にてtotal RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるようにtotal RNAを調製した。
このtotalRNAを鋳型とし、AQP3及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Smart Cycler(登録商標)(Cepheid社)を用いて、TaKaRa SYBR(登録商標)PrimeScriptTM RT−PCR Kit(Perfect Real Time)(code No.RR063A)によるリアルタイム2Step RT−PCR反応により行った。AQP3の発現量は、被験試料無添加、被験試料添加でそれぞれ培養した細胞から調製したtotal RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求め、更に被験試料無添加の補正値を100とした時の被験試料添加の補正値を算出した。結果を表24に示す。
AQP3mRNA発現促進作用の計算方法は以下の通りである。
AQP3mRNA発現促進率(%)=A/B×100
ただし、式中Aは被験試料添加時の補正値、Bは被験試料無添加時の補正値を表す。
【0088】
【表24】

表24の結果から、ブルーフラッグの抽出物、西洋サクラソウの抽出物、及びセロリの抽出物が、アクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進作用を有することが確認できた。
【0089】
(配合実施例1)
−乳液−
下記組成の乳液を、常法により製造した。
・ホホバオイル・・・4.0g
・プラセンタエキス・・・0.1g
・オリーブオイル・・・2.0g
・スクワラン・・・2.0g
・セタノール・・・2.0g
・モノステアリン酸グリセリル・・・2.0g
・ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O)・・・2.5g
・オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O)・・・2.0g
・1,3−ブチレングリコール・・・3.0g
・ヒノキチオール・・・0.15g
・香料・・・0.05g
・バイベリーの50質量%エタノール抽出物(製造例2)・・・0.01g
・精製水・・・残部(全量を100gとする)
【0090】
(配合実施例2)
−乳液−
下記組成の乳液を、常法により製造した。
・ホホバオイル・・・4.0g
・プラセンタエキス・・・0.1g
・オリーブオイル・・・2.0g
・スクワラン・・・2.0g
・セタノール・・・2.0g
・モノステアリン酸グリセリル・・・2.0g
・ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O)・・・2.5g
・オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O)・・・2.0g
・1,3−ブチレングリコール・・・3.0g
・ヒノキチオール・・・0.15g
・香料・・・0.05g
・ブルーフラッグの50質量%エタノール抽出物(製造例2)・・・0.01g
・精製水・・・残部(全量を100gとする)
【0091】
(配合実施例3)
−乳液−
下記組成の乳液を、常法により製造した。
・ホホバオイル・・・4.0g
・プラセンタエキス・・・0.1g
・オリーブオイル・・・2.0g
・スクワラン・・・2.0g
・セタノール・・・2.0g
・モノステアリン酸グリセリル・・・2.0g
・ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O)・・・2.5g
・オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O)・・・2.0g
・1,3−ブチレングリコール・・・3.0g
・ヒノキチオール・・・0.15g
・香料・・・0.05g
・フウトウカズラの50質量%エタノール抽出物(製造例2)・・・0.01g
・精製水・・・残部(全量を100gとする)
【0092】
(配合実施例4)
−乳液−
下記組成の乳液を、常法により製造した。
・ホホバオイル・・・4.0g
・プラセンタエキス・・・0.1g
・オリーブオイル・・・2.0g
・スクワラン・・・2.0g
・セタノール・・・2.0g
・モノステアリン酸グリセリル・・・2.0g
・ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O)・・・2.5g
・オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O)・・・2.0g
・1,3−ブチレングリコール・・・3.0g
・ヒノキチオール・・・0.15g
・香料・・・0.05g
・西洋サクラソウの50質量%エタノール抽出物(製造例2)・・・0.01g
・精製水・・・残部(全量を100gとする)
【0093】
(配合実施例5)
−乳液−
下記組成の乳液を、常法により製造した。
・ホホバオイル・・・4.0g
・プラセンタエキス・・・0.1g
・オリーブオイル・・・2.0g
・スクワラン・・・2.0g
・セタノール・・・2.0g
・モノステアリン酸グリセリル・・・2.0g
・ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O)・・・2.5g
・オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O)・・・2.0g
・1,3−ブチレングリコール・・・3.0g
・ヒノキチオール・・・0.15g
・香料・・・0.05g
・レモンバーベナの50質量%エタノール抽出物(製造例2)・・・0.01g
・精製水・・・残部(全量を100gとする)
【0094】
(配合実施例6)
−乳液−
下記組成の乳液を、常法により製造した。
・ホホバオイル・・・4.0g
・プラセンタエキス・・・0.1g
・オリーブオイル・・・2.0g
・スクワラン・・・2.0g
・セタノール・・・2.0g
・モノステアリン酸グリセリル・・・2.0g
・ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O)・・・2.5g
・オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O)・・・2.0g
・1,3−ブチレングリコール・・・3.0g
・ヒノキチオール・・・0.15g
・香料・・・0.05g
・キンミズヒキの50質量%エタノール抽出物(製造例2)・・・0.01g
・精製水・・・残部(全量を100gとする)
【0095】
(配合実施例7)
−乳液−
下記組成の乳液を、常法により製造した。
・ホホバオイル・・・4.0g
・プラセンタエキス・・・0.1g
・オリーブオイル・・・2.0g
・スクワラン・・・2.0g
・セタノール・・・2.0g
・モノステアリン酸グリセリル・・・2.0g
・ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O)・・・2.5g
・オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O)・・・2.0g
・1,3−ブチレングリコール・・・3.0g
・ヒノキチオール・・・0.15g
・香料・・・0.05g
・ブルーベリーの50質量%エタノール抽出物(製造例2)・・・0.01g
・精製水・・・残部(全量を100gとする)
【0096】
(配合実施例8)
−乳液−
下記組成の乳液を、常法により製造した。
・ホホバオイル・・・4.0g
・プラセンタエキス・・・0.1g
・オリーブオイル・・・2.0g
・スクワラン・・・2.0g
・セタノール・・・2.0g
・モノステアリン酸グリセリル・・・2.0g
・ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O)・・・2.5g
・オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O)・・・2.0g
・1,3−ブチレングリコール・・・3.0g
・ヒノキチオール・・・0.15g
・香料・・・0.05g
・セロリの50質量%エタノール抽出物(製造例2)・・・0.01g
・精製水・・・残部(全量を100gとする)
【0097】
(配合実施例9)
−乳液−
下記組成の乳液を、常法により製造した。
・ホホバオイル・・・4.0g
・プラセンタエキス・・・0.1g
・オリーブオイル・・・2.0g
・スクワラン・・・2.0g
・セタノール・・・2.0g
・モノステアリン酸グリセリル・・・2.0g
・ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O)・・・2.5g
・オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O)・・・2.0g
・1,3−ブチレングリコール・・・3.0g
・ヒノキチオール・・・0.15g
・香料・・・0.05g
・紅柳の50質量%エタノール抽出物(製造例2)・・・0.01g
・精製水・・・残部(全量を100gとする)
【0098】
(配合実施例10)
−乳液−
下記組成の乳液を、常法により製造した。
・ホホバオイル・・・4.0g
・プラセンタエキス・・・0.1g
・オリーブオイル・・・2.0g
・スクワラン・・・2.0g
・セタノール・・・2.0g
・モノステアリン酸グリセリル・・・2.0g
・ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O)・・・2.5g
・オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O)・・・2.0g
・1,3−ブチレングリコール・・・3.0g
・ヒノキチオール・・・0.15g
・香料・・・0.05g
・パッションフルーツの50質量%エタノール抽出物(製造例2)・・・0.01g
・精製水・・・残部(全量を100gとする)
【0099】
(配合実施例11)
−クリーム−
下記組成のクリームを、常法により製造した。
・流動パラフィン・・・5.0g
・サラシミツロウ・・・4.0g
・セタノール・・・3.0g
・スクワラン・・・10.0g
・ラノリン・・・2.0g
・ステアリン酸・・・1.0g
・オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O)・・・1.5g
・モノステアリン酸グリセリル・・・3.0g
・1,3−ブチレングリコール・・・6.0g
・パラオキシ安息香酸メチル・・・1.5g
・香料・・・0.1g
・ブルーフラッグの80質量%エタノール抽出物(製造例3)・・・0.1g
・精製水・・・残部(全量を100gとする)
【0100】
(配合実施例12)
−パック−
下記組成のパックを、常法により製造した。
・ポリビニルアルコール・・・15g
・ポリエチレングリコール・・・3g
・プロピレングリコール・・・7g
・エタノール・・・10g
・パラオキシ安息香酸エチル・・・0.05g
・香料・・・0.05g
・フウトウカズラの水抽出物(製造例1)・・・0.05g
・精製水・・・残部(全量を100gとする)
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の美白剤又は抗老化剤は、優れたチロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用、SCFmRNA発現抑制作用、エンドセリン−1mRNA発現抑制作用、bFGFmRNA発現抑制作用、POMCmRNA発現抑制作用、エラスターゼ活性阻害作用、MMP−1活性阻害作用、ATP産生促進作用、ラミニン−5産生促進作用、フィラグリン産生促進作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、ヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)mRNA発現促進作用、アクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進作用、I型コラーゲン産生促進作用、IV型コラーゲン産生促進作用、皮膚線維芽細胞増殖促進作用、UVBダメージからの回復作用、表皮角化細胞増殖促進作用、インボルクリン産生促進作用、及び過酸化水素に対するダメージ抑制作用の少なくともいずれかを有しており、例えば、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、ゼリー、リップクリーム、口紅、入浴剤、アストリンゼント等の皮膚化粧料に幅広く用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイベリーの抽出物、ブルーフラッグの抽出物、フウトウカズラの抽出物、西洋サクラソウの抽出物、レモンバーベナの抽出物、キンミズヒキの抽出物、ブルーベリーの抽出物、セロリの抽出物、紅柳の抽出物、及びパッションフルーツの抽出物の少なくとも1種を含有することを特徴とする美白剤。
【請求項2】
チロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用、SCFmRNA発現抑制作用、エンドセリン−1mRNA発現抑制作用、bFGFmRNA発現抑制作用、及びPOMCmRNA発現抑制作用の少なくともいずれかを有する請求項1に記載の美白剤。
【請求項3】
バイベリーの抽出物、ブルーフラッグの抽出物、フウトウカズラの抽出物、西洋サクラソウの抽出物、レモンバーベナの抽出物、キンミズヒキの抽出物、ブルーベリーの抽出物、セロリの抽出物、紅柳の抽出物、及びパッションフルーツの抽出物の少なくとも1種を含有することを特徴とする抗老化剤。
【請求項4】
エラスターゼ活性阻害作用、MMP−1活性阻害作用、I型コラーゲン産生促進作用、IV型コラーゲン産生促進作用、過酸化水素に対するダメージ抑制作用、ラミニン−5産生促進作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、UVBダメージからの回復作用、表皮角化細胞増殖促進作用、皮膚線維芽細胞増殖促進作用、インボルクリン産生促進作用、ATP産生促進作用、フィラグリン産生促進作用、ヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)mRNA発現促進作用、及びアクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進作用の少なくともいずれかを有する請求項3に記載の抗老化剤。
【請求項5】
請求項1から2のいずれかに記載の美白剤、及び請求項3から4のいずれかに記載の抗老化剤の少なくともいずれかを含有することを特徴とする皮膚化粧料。

【公開番号】特開2010−65009(P2010−65009A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235415(P2008−235415)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(591082421)丸善製薬株式会社 (239)
【Fターム(参考)】