説明

美白剤

【課題】 優れたチロシナーゼ阻害活性を有すると共に化学的により安定な化合物、及びこれを含有する美白剤及び皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】 下記の一般式(1):
【化1】


〔式中、X1はヒドロキシ基又はカルボキシ基を示し、R1及びR2は同一又は異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、又は炭素数1〜8のアルコキシ基若しくは炭素数2〜8のヒドロキシアルコキシ基で置換された炭素数2〜18のアルキル基を示すか、或いはR1及びR2が結合する窒素原子と共に環状アミノ基(ここで、該環状アミノ基を構成する炭素原子上の水素原子はメチル基、水酸基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ヒドロキシアルキル基又は炭素数2〜8のヒドロキシアルコキシ基で置換されていてもよい)を形成してもよい。〕
で表される置換フェノキシプロパノールアミン類又はその塩を含有する美白剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れたチロシナーゼ阻害活性を有する置換フェノキシプロパノールアミン類及びこれを含有する美白剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、美白剤としては、各種ハイドロキノンアルキルエーテル類(特許文献1〜6)や安息香酸誘導体(特許文献7)が知られている。しかし、これらのハイドロキノンアルキルエーテル類及び安息香酸誘導体は水に対する溶解性が低く、皮膚外用剤への高濃度配合が困難な場合がある。
【0003】
また、チロシナーゼ阻害活性を有するアルブチンは水に対する溶解性が高く、実際に化粧料に使用されている美白剤であるが、配糖体であり、配糖体は一般に化学的に不安定であるという懸念がある。
【特許文献1】特開平1−269498号公報
【特許文献2】特開平6−192062号公報
【特許文献3】特開昭61−159943号公報
【特許文献4】特開昭63−246311号公報
【特許文献5】特開平2−270812号公報
【特許文献6】特開平4−54109号公報
【特許文献7】特開平7−330569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、優れたチロシナーゼ阻害活性を有すると共に化学的により安定な化合物、及びこれを含有する美白剤及び皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、チロシナーゼ阻害活性を指標として種々の化合物を探索したところ、下記の一般式(1)で表される置換フェノキシプロパノールアミン類又はその塩が、アルブチンを上回るチロシナーゼ阻害活性を有すると共に化学的に安定であり、かつ水溶性も優れており、美白剤として有用であることを見出した。尚、一般式(1)において、R1及びR2のいずれか一方が水素原子であり、他方が特定のアルコキシ基又はヒドロキシアルコキシ基で置換されたアルキル基である化合物(一般式(2))は、新規化合物である。
【0006】
すなわち、本発明は、一般式(1):
【化1】

【0007】
〔式中、X1はヒドロキシ基又はカルボキシ基を示し、R1及びR2は同一又は異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、又は炭素数1〜8のアルコキシ基若しくは炭素数2〜8のヒドロキシアルコキシ基で置換された炭素数2〜18のアルキル基を示すか、或いはR1及びR2が結合する窒素原子と共に環状アミノ基(ここで、該環状アミノ基を構成する炭素原子上の水素原子はメチル基、水酸基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ヒドロキシアルキル基又は炭素数2〜8のヒドロキシアルコキシ基で置換されていてもよい)を形成してもよい。〕
で表される置換フェノキシプロパノールアミン類又はその塩を含有する美白剤に係るものである。
【0008】
また本発明は、上記置換フェノキシプロパノールアミン類又はその塩を含有する皮膚外用剤に係るものである。
【0009】
また本発明は、下記一般式(2):
【0010】
【化2】

【0011】
〔式中、X1はヒドロキシ基又はカルボキシ基を示し、R3は炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数2〜8のヒドロキシアルコキシ基で置換された炭素数2〜8のアルキル基を示す。〕
で表される置換フェノキシプロパノールアミン類又はその塩に係るものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の置換フェノキシプロパノールアミン類又はその塩は化学的に安定であり、水溶性も優れており、かつアルブチンを上回るチロシナーゼ阻害活性を有することから、美白化粧料に代表される皮膚外用剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
一般式(1)中、R1、R2で示される炭素数1〜18のアルキル基としては、直鎖又は分岐鎖のアルキル基のいずれでもよく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソアミル基、1,2-ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、1-メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、イソステアリル基等が挙げられ、このうち炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基が特に好ましい。
【0014】
一般式(1)中のR1、R2で示される炭素数1〜8のアルコキシ基若しくは炭素数2〜8のヒドロキシアルコキシ基で置換された炭素数2〜18のアルキル基におけるアルキル部分としては、上記のアルキル基で例示したものと同様のものが挙げられる。
一般式(2)中のR3で示される炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数2〜8のヒドロキシアルコキシ基で置換された炭素数2〜8のアルキル基におけるアルキル部分としては、同様に上記のアルキル基で例示したエチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソアミル基、1,2-ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、1-メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基等の炭素数2〜8の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられ、このうち炭素数2〜6のものがより好ましく、炭素数2〜4のものがさらに好ましい。
【0015】
当該アルキル基に置換する炭素数1〜8のアルコキシ基としては、直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基等が好適に挙げられる。
【0016】
当該アルキル基に置換する炭素数2〜8のヒドロキシアルコキシ基としては、直鎖又は分岐鎖のヒドロキシアルコキシ基、例えば2−ヒドロキシエトキシ基等が好適に挙げられる。
【0017】
上記一般式(1)のR1及びR2で示される炭素数1〜8のアルコキシ基若しくは炭素数2〜8のヒドロキシアルコキシ基で置換された炭素数2〜18のアルキル基、一般式(2)のR3で示される炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数2〜8のヒドロキシアルコキシ基で置換された炭素数2〜8のアルキル基のうち、好適なものとしては、例えばメトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、3-n-プロポキシプロピル基、3-イソプロポキシプロピル基、3-n-ブトキシプロピル基、3-イソブトキシプロピル基、2-エチルヘキシルオキシプロピル基、(2−ヒドロキシエトキシ)エチル基等が挙げられ、チロシナーゼ阻害活性及び水溶性の点から、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、(2−ヒドロキシエトキシ)エチル基が特に好ましい。
【0018】
一般式(1)におけるR1及びR2は、それらが結合する窒素原子と共に環状アミノ基を形成してもよいが、この場合の環状アミノ基としては、酸素原子を含んでいてもよい5員又は6員の環状アミノ基が挙げられ、例えばピロリジニル基、ピペリジニル基、モルホリニル基が好ましい。
【0019】
当該環状アミノ基を構成する炭素原子上の水素原子は、メチル基、水酸基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基又は炭素数2〜8のヒドロキシアルコキシ基で1又は複数個置換されていてもよい。斯かる場合の炭素数1〜8のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基等が好適に挙げられ、ヒドロキシアルキル基としては、例えばヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基等が好適に挙げられる。
このうち、メチル基、水酸基、メトキシ基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基が特に好ましい。
【0020】
一般式(1)におけるR1及びR2は、チロシナーゼ阻害活性及び水溶性の点から、R1が水素原子であり、R2が炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基若しくは炭素数2〜8のヒドロキシアルコキシ基で置換された炭素数2〜12のアルキル基であるのが好ましく、特にR1が水素原子であり、R2が炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基若しくは炭素数2〜8のヒドロキシアルコキシ基で置換された炭素数2〜8のアルキル基であるのが好ましい。
【0021】
一般式(1)、(2)において、X1はカルボキシ基である場合が好ましい。
【0022】
上記置換フェノキシプロパノールアミン類(1)(又は(2))の塩としては、リン酸、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸塩;クエン酸、酒石酸、乳酸、等の有機酸塩;ナトリウム、カリウム、カルシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属塩;アルミニウム、亜鉛などの両性金属塩;アミノ酸塩;アミン塩等が挙げられる。
【0023】
また、置換フェノキシプロパノールアミン類(1)(又は(2))は、分子内にX1(X1はヒドロキシ基又はカルボキシ基)とアミノ基との両者を有することから、分子内塩も形成し得る。またさらに、本発明の置換フェノキシプロパノールアミン類(1)(又は(2))は、光学異性体を有する場合もあるが、本発明においては光学活性体及び光学不活性体のいずれも含まれる。
【0024】
本発明の置換フェノキシプロパノールアミン類(1)(又は(2))又はその塩は、例えば次の反応式に従って製造することができる。
【0025】
【化3】

【0026】
〔式中、X2は保護されたヒドロキシ基又は保護されたカルボキシ基を示し、R1、R2及びX1は前記と同じであり、Pは保護基を示し、R3は、R1、R2と同じものを示す。〕
【0027】
すなわち、一般式(3)で表されるオキシラン化合物にアミン類(4)又は(4’)を反応させて化合物(5)又は(5’)とし、次いで(5)又は(5’)のヒドロキシ基又はカルボキシ基の保護基X2及びアミノ基の保護基Pを脱離させることにより、本発明の置換フェノキシプロパノールアミン類(1)若しくは(2)又はその塩が製造される。
【0028】
2で示される保護されたヒドロキシ基やカルボキシ基において、使用される保護基としては、オキシラン化合物とアミンの反応条件に耐えうるものであれば特に限定されず、ヒドロキシ基の保護基としては、ベンジル基等のアラルキル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基などが、またカルボキシ基の保護基としては、ベンジルエステル基、メチルエステル基及びエチルエステル基等のアルキルエステル基等が挙げられる。Pで示されるアミノ基の保護基としても上記と同様にオキシラン化合物とアミンの反応条件に耐えうるものであれば特に限定されず、ベンジル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0029】
オキシラン化合物(3)とアミン類(4)又は(4’)との反応は、無溶媒又は低級アルコール等の溶媒中室温〜還流温度で1〜48時間行えばよい。また、ヒドロキシ基又はカルボキシ基の保護基X2やアミノ基の保護基Pの脱離反応は、常法に従い行えばよく、たとえばヒドロキシ基やアミノ基の保護基としてベンジル基を使用した場合には通常の水素添加反応が好ましく、カルボキシ基の保護基としてアルキルエステル基を用いた場合にはアルカリ加水分解反応により、ベンジルエステルを用いた場合にはアルカリ加水分解反応又は水素添加反応により行うのが好ましい。
【0030】
反応終了後、反応混合物からの目的物の単離、精製は常法、例えば洗浄、抽出、蒸留又は再結晶、各種クロマトグラフィー等により行えばよい。また、所望の塩への変換も常法に従って行えばよい。
【0031】
斯くして得られる、置換フェノキシプロパノールアミン類(1)(又は(2))は、アルブチンを上回るチロシナーゼ阻害活性を有すると共に化学的に安定であり、かつ中性又は酸性水溶液に対する水溶性も類似構造を有するハイドロキノンアルキルエーテル類や安息香酸誘導体よりも優れている(試験例1及び2)。
従って、本発明の置換フェノキシプロパノールアミン類又はその塩は、美白剤、皮膚外用剤となり得、化粧料、医薬部外品、医薬品として用いることができる。
【0032】
斯かる皮膚外用剤には、化粧品、医薬部外品、医薬品等に用いられる各種成分、例えば粉体、油分、乳化剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、湿潤剤、緩衝剤、界面活性剤、保湿剤、水、アルコール、ワックス類、増粘剤、活性増強剤、色材、香料等を必要に応じ適宜組合せて用いることができる。
【0033】
皮膚外用剤の形態としては、例えばクリーム、ローション、乳剤、軟膏、ゲル、パック、フォーム、エッセンス、スティック、パウダー等が挙げられる。
【0034】
本発明の美白剤又は皮膚外用剤における置換フェノキシプロパノールアミン類(1)又はその塩の含有量は美白効果の点から通常外用剤全量中の0.001〜20質量%、さらに0.001〜10質量%、特に0.005〜5質量%が好ましい。
【実施例】
【0035】
製造例1
4−(3−ブチルアミノ−2−ヒドロキシプロポキシ)−ベンゾイックアシッド(化合物1)の合成
【化4】

【0036】
滴下ロートをつけた100mL2口フラスコにn-ブチルアミン(13.2g,180mmol)とエタノール(5g)を入れ、70℃で攪拌しながら4−オキシラニルメトキシベンゾイックアシッドメチルエステル(2.5g,12.0mmol)をエタノール(10g)に溶かした溶液を1時間かけて滴下し、さらにその温度で1.5時間攪拌した。反応終了後、減圧下、溶媒として使用したエタノール及びn-ブチルアミンを留去し、得られた残渣(3.36g)をメタノール6gに溶解し、これに3M-NaOH水溶液(6g)を添加し、50℃で3時間攪拌した。加水分解終了を1H-NMRで確認後、濃縮し、得られた残渣(3.1g)に2N-HCl(15mL)を加えた後、陽イオン交換樹脂(三菱化学DIAION SK1B 60mL)を用いて精製し、粗生成物(3.15g)を得た。粗生成物をメタノール(25g)で洗浄し、目的物(0.36g)を白色結晶として得た(収率9.4%)。
【0037】
1H-NMR(D2O, 200MHz)δ:0.88(t,3H, J=7.00Hz),1.35(m,2H),1.63(m,2H), 3.05(t, 2H, J=7.45Hz), 3.21(m,2H), 4.09-4.85(m,3H), 6.96(d,2H, J=8.07Hz),7.80(d,2H, J=7.70Hz)
【0038】
製造例2
製造1と同様の方法により、4−オキシラニルメトキシベンゾイックアシッドメチルエステルと対応するアミンから下記の化合物2〜5を合成した。
【0039】
(1)4−(3−sec-ブチルアミノ−2−ヒドロキシプロポキシ)−ベンゾイックアシッド(化合物2)
【化5】

【0040】
1H-NMR(ナトリウム塩)(D2O, 200MHz)δ:0.79(t,3H, J=7.43Hz), 0.96(d,3H, J=6.36Hz),1.08-1.51(m,2H),2.50-2.80(m,3H), 3.92-4.10(m,3H),6.95(d,2H, J=8.80Hz),7.78(d,2H, J=8.77Hz)
【0041】
(2)4-[2-ヒドロキシ-3-(3-メトキシプロピルアミノ)-プロポキシ]-ベンゾイックアシッド(化合物3)
【化6】

【0042】
1H-NMR(DMSO, 200MHz)δ:1.65-1.85(m,2H),2.71-2.90(m,4H), 3.21(s,3H),3.37(t,2H, J=6.19Hz),4.00-4.10(m,3H),5.50-7.50(br,3H), 6.93(d,2H, J=8.79Hz),7.83(d,2H, J=8.67Hz)
【0043】
(3)4-[2-ヒドロキシ-3-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)-エチルアミノ]-プロポキシ]-ベンゾイックアシッド(化合物4)
【化7】

【0044】
1H-NMR(D2O, 200MHz)δ:3.15-3.34(m,4H),3.54-3.77(m,6H), 3.98-4.12(m,2H),4.22-4.65(m,1H),6.90(d,2H, J=8.80Hz),7.75(d,2H, J=8.74Hz)
【0045】
(4)4-(2-ヒドロキシ-3-ピロリジン-1-イル-プロポキシ)-ベンゾイックアシッド(化合物5)
【化8】

【0046】
1H-NMR(DMSO, 200MHz)δ:1.55-1.85(m, 4H),2.49-2.72(m,6H), 3.91-4.06(m,3H),4.30-6.70(br,3H), 6.98(d,2H, J=8.78Hz),7.86(d,2H, J=8.81Hz)
【0047】
製造例3
4−(3−アミノ−2−ヒドロキシプロポキシ)−ベンゾイックアシッド(化合物6)の合成
【化9】

滴下ロートをつけた100mL2口フラスコにベンジルアミン(23.2g,216.2mmol)とエタノール(6g)を入れ、70℃で攪拌しながら4−オキシラニルメトキシベンゾイックアシッドメチルエステル(3.0g,14.4mmol)をエタノール(12g)に溶かした溶液を1時間かけて滴下し、さらにその温度で1.5時間攪拌した。反応終了後、減圧下、溶媒として使用したエタノール及びベンジルアミンを留去し、得られた残渣(4.42g)をエタノール26.5gを用いた再結晶により精製し、4−(3-ベンジルアミノ−2−ヒドロキシプロポキシ)−ベンゾイックアシッドメチルエステルを得た(収率86.6%)。
得られた上記エステル(3.40g、10.78mmol)に0.81M-NaOH水溶液(20.0mL)及びエタノール(20g)の混合溶媒を加え、80℃で5時間攪拌した。加水分解終了を確認後、さらに蒸留水(120g)、エタノール(120g)を加え、6N−塩酸で系内のpHを4.5に調整し、5%Pd-C(0.68g)を加え、水素雰囲気下、室温で64時間攪拌した。Pd-Cをろ過して除去した後、減圧濃縮し、粗生成物(3.40g)を得た。粗生成物に6N-HCl(10.0mL)を加え、陽イオン交換樹脂(三菱化学DIAION SK1B 135mL)を用いて精製後、減圧下濃縮し、粗結晶(2.17g)を得た。粗結晶をメタノール(100g)で洗浄し、目的物(1.84g)を白色結晶として得た(中間体4−(3-ベンジルアミノ−2−ヒドロキシプロポキシ)−ベンゾイックアシッドメチルエステルからの収率81.1%)。
【0048】
1H-NMR(D2O, 200MHz)δ:3.07−3.29(m,2H), 4.01-4.24(m,3H),6.94(d,2H, J=8.28Hz),7.78(d,2H, J=8.29Hz)
【0049】
製造例4
4-[2-ヒドロキシ-3-(3-メトキシプロピルアミノ)-プロポキシ]-フェノール(化合物7)の合成
【化10】

【0050】
滴下ロートをつけた100mL2口フラスコに3-メトキシプロピルアミン(18.26g,204.9mmol)とエタノール(7g)を入れ、70℃で攪拌しながら、そこへ2−(4−ベンジルオキシフェノキシメチル)オキシラン(3.5g,13.6mmol)をエタノール(14g)に溶かした溶液を1時間かけて滴下し、さらにその温度で2時間攪拌した。反応終了後、減圧下、溶媒として使用したエタノール及び3-メトキシプロピルアミンを留去し、得られた残渣(4.70g)をエタノール(23.5g)を用いた再結晶により精製し、1-(4-ベンジルオキシ-フェノキシ)-3-(3-メトキシ-プロピルアミノ)-プロパン-2-ol(3.18g)を白色結晶として得た。次に、得られた白色結晶(3.0g)をメタノール(30g)に溶解し、5%Pd-C(0.3g)を加え、水素雰囲気下室温で20時間攪拌した。Pd-Cをろ過して除去した後、減圧濃縮し、粗生成物(2.28g)を得た。得られた粗生成物を、酢酸エチル(9.08g)を用いた再結晶により精製し、目的物(1.84g)を白色結晶として得た(収率56%)。
【0051】
1H-NMR(D2O, 200MHz)δ:1.67-1.81(m,2H), 2.66-2.86(m,4H),3.26(s,3H), 3.46(t,2H, J=6.27Hz), 3.82-4.12(m,3H), 6.72(d,2H, J=9.03Hz),6.84(d,2H, J=9.05Hz)
【0052】
試験例1(水溶性評価)
試料に対して蒸留水を加え、いずれの化合物の場合にも0.5、1.0、2.5、5.0、10.0及び20.0%(W/W(%))水溶液を作成した。約50〜65℃に加熱溶解後、一晩室温で静置しても、結晶が析出しないことを確認した最高濃度を表1にまとめて示した。化合物1及び3〜6の安息香酸誘導体は、美白剤として知られている安息香酸誘導体である4-(2,3-ジヒドロキシプロポキシ)ベンゾイックアシッドの蒸留水に対する溶解性が0.5%以下であるのに対していずれも0.5%以上溶解し、また、化合物7のハイドロキノン誘導体は、美白剤として知られているハイドロキノン誘導体である3-(4-ヒドロキシフェノキシ)-プロパン-1,2-ジオールの蒸留水に対する溶解性が1%であるのに対して、2.5%溶解した。
【0053】
【表1】

【0054】
試験例2(チロシナーゼ阻害活性)
マッシュルームチロシナーゼを用いたチロシナーゼ阻害活性試験。試験結果を表2にまとめて示した。
【0055】
[試薬の調製]
(1)L−DOPA溶液
(A)10mgのL−DOPA(試薬特級)を(3)のリン酸緩衝液20mLで用時溶解し、0.05%のL−DOPA溶液とした。
(B)(A)で調製した溶液20mLを(3)のリン酸緩衝液で60mLに希釈して使用した。
(2)チロシナーゼ溶液
マッシュルームチロシナーゼ(2590単位/mg protein, SIGMA製)7.6mgを9.84mLの蒸留水で溶解し、2000単位/mL溶液とした。
(3)0.1Mリン酸緩衝液
常法によりpH6.8に調製した。
【0056】
[試料溶液の調製]
表1に示した各試料を3水準の濃度に蒸留水で希釈し、試料溶液とした。
[試験方法]
基質としてL−DOPAを用い、反応生成物であるドーパクロムに基づく475nmの吸光度を測定することにより行なった。化合物7を評価する際には、L−DOPA溶液(A)を、アルブチン及び化合物1及び3〜6を評価する際には、L−DOPA溶液(B)を使用した。すなわち、L−DOPA溶液1.0mLとリン酸緩衝液1.8mLをとり、これに試料溶液0.1mLを添加した。次いでチロシナーゼ溶液を加えて混合し、室温で1.5分間反応させた。分光光度計(日立製作所Spectrophotometer U-1100)を用いて475nmにおける吸光度を測定し、その値をTとした。また試薬ブランクとしてL−DOPA溶液の代わりに蒸留水1.0mLを用い、これにリン酸緩衝液1.8mL及び試料溶液0.1mLを加えて混合し、以下同様に操作して吸光度を測定し、その値をT'とした。
【0057】
コントロールは,L−DOPA溶液[(A)又は(B)]1.0mLとリン酸緩衝液1.8mLに、試料溶液の代わりに蒸留水0.1mLを添加し、以下同様にして、その値をCとした。コントロールの試薬ブランクは、L−DOPA溶液の代わりに蒸留水1.0mLを用い、これにリン酸緩衝液1.8mLと蒸留水0.1mLを添加し、以下同様にして、その値をC'とした。各試料濃度におけるチロシナーゼ活性阻害率を次式により計算し、片対数グラフの横軸に試料濃度(対数)、縦軸に活性阻害率をとり、このグラフからチロシナーゼ活性50%阻害濃度(IC50)を求めた。
【0058】
【数1】

【0059】
得られた結果を表2に示す。この評価系におけるアルブチンのチロシナーゼ活性50%阻害濃度(IC50)は100mMよりも大きな値であり、評価した化合物は、いずれもアルブチンよりも強いチロシナーゼ阻害活性を示した。
【0060】
【表2】

【0061】
処方例
以下(1)及び(2)に示す組成のローションを常法により製造した。
得られたローションは良好な使用感を有していた。
【0062】
【表3】

【0063】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1):
【化1】

〔式中、X1はヒドロキシ基又はカルボキシ基を示し、R1及びR2は同一又は異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、又は炭素数1〜8のアルコキシ基若しくは炭素数2〜8のヒドロキシアルコキシ基で置換された炭素数2〜18のアルキル基を示すか、或いはR1及びR2が結合する窒素原子と共に環状アミノ基(ここで、該環状アミノ基を構成する炭素原子上の水素原子はメチル基、水酸基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ヒドロキシアルキル基又は炭素数2〜8のヒドロキシアルコキシ基で置換されていてもよい)を形成してもよい。〕
で表される置換フェノキシプロパノールアミン類又はその塩を含有する美白剤。
【請求項2】
請求項1記載の置換フェノキシプロパノールアミン類又はその塩を含有する皮膚外用剤。
【請求項3】
下記の一般式(2):
【化2】

〔式中、X1はヒドロキシ基又はカルボキシ基を示し、R3は炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数2〜8のヒドロキシアルコキシ基で置換された炭素数2〜8のアルキル基を示す。〕
で表される置換フェノキシプロパノールアミン類又はその塩。

【公開番号】特開2006−282645(P2006−282645A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−108755(P2005−108755)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】