説明

美肌用皮膚外用剤

【課題】肌の乾燥や肌のくすみを予防・改善する有効な皮膚外用剤の提供。
【解決手段】サラシア属(Salacia oblanga、Salacia reticulata、Salacia prinoides)植物の抽出物を含有する保湿作用、チロシナーゼ活性阻害作用、黒色細胞の白色化作用を有する美肌用皮膚外用。好ましくは、サラシア属植物の根を陰乾し、粉砕後、抽出溶媒とともに、3日間浸漬または1時間100℃にて加温、冷却、ろ過した液を使用する。該抽出物は、0.001〜20重量%で配合することが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明品は、サラシア属(Salacia oblanga、Salacia reticulata、Salacia prinoides)の植物からの抽出物が、高い保湿性を有し、更にはチロシナーゼ活性を優位に阻害し、黒色細胞を白色化させることで、肌の乾燥、くすみと言った老化に伴って起こる悩みを予防・改善する美肌用皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
サラシア属の植物は、紀元前5000年以上前に端を発するアーユルベェーダ医学の医書の中にも記載がある植物で、傷害、痛み、高血圧、心臓疾患、泌尿器疾患についても効果があるとされる歴史の古い植物である。近年日本でもサラシア属の植物の研究が盛んに行われ、特に糖尿病やダイエット高脂血症などに効果があることが分かっている(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。また、それに関する特許も多数出願されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。しかしその多くは経口摂取による食品、医薬品用途であり、皮膚に外用することを訴求したものはわずか2件に限られ(特許文献4、特許文献5)、その用途についても高い保湿性を有し、更にはチロシナーゼ活性を優位に阻害し、黒色細胞を白色化させることで、肌の乾燥、くすみと言った悩みを予防・改善することを訴求した美肌用皮膚外用剤の開発は現在のところ認められない。
【0003】
女性にとって外見の美しさは日常生活に欠かせない要素であり、また近年では女性の社会進出が進んでおり、とりわけ肌の美しさに多くの女性の関心が集まっている。一方で加齢や紫外線、生活上のストレスなどの要因で、乾燥や肌がくすんで見えてしまうといった肌上の悩みは進行してしまうのが現状であり、肌の種々の悩み・トラブルに対応した健康食品、化粧料が数多く販売されている。
【0004】
肌の悩みの上位に挙げられる乾燥や外観を損なうくすみが進行するメカニズムについては研究が進んでいる。皮膚組織最外層の角層は、それを構成する細胞間脂質、アミノ酸を主体とするNMF、皮脂の微妙なバランスにより水分を結合し保湿性を保っている。しかし、加齢により皮脂の分泌が減少したり、新陳代謝が滞って角層のターンオーバーが乱れることでバランスが崩れ、皮膚の表面には亀裂や細かい鱗屑が生じて凹凸のある外観を呈したり、ざらざらとした感触を生じてかゆみを伴ったりする。そのため保湿性の高い化粧料や化粧品素材は美しい肌を作り出す基本となる。また加齢により肌が老化すると、明度が低下するとともに色相は赤みから黄みへ変化し、表面のきめは浅くなって凹凸が鮮明になり方向性が生じ、負均一性が増大する。これらはくすみの要因となるため、保湿剤によってきめを整え、肌表面の凹凸を滑らかにすることはくすみの予防・改善につながる。くすみの原因の一つである肌の黄色化は瀰漫的なメラニン色素の沈着が原因であり、メラニンの沈着による黄色化を予防・改善することがくすみ改善に繋がる。
【非特許文献1】Life Sci.2004 Aug 20;75(14):1735−46
【非特許文献2】Toxicol Appl Pharmacol.2006 Jan 1;210(1−2):78−85.Epub 2005 Aug 29.
【非特許文献3】Toxicol Appl Phrmacol.2006 Feb 1;210(3):225−35.Epub 2005 Jun 21.
【非特許文献4】FRAGRANCE JOURNAL 1998 12;115−121
【特許文献1】特開2002−020308号
【特許文献2】特開2003−171295号
【特許文献3】特開2005−295991号
【特許文献4】特開2005−008572号
【特許文献5】特開2006−188463号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、今まで美肌用皮膚外用剤としての効果については知られていないサラシア属(Salacia oblanga、Salacia reticulata、Salacia prinoides)植物の抽出物が高い保湿性を有し、チロシナーゼ活性を優位に阻害し、黒色細胞を白色化させることで、肌の乾燥、くすみと言った老化に伴って起こる悩みを予防・改善を成すため、さらにはこれを有効に活用するために種々検討した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明者らは鋭意検討した結果、サラシア属(Salacia oblanga、Salacia reticulata、Salacia prinoides)植物の抽出物に高い保湿性と、チロシナーゼ活性を優位に阻害し、黒色細胞を白色化させる作用があることを見出し、これにより乾燥やくすみを予防・改善し更には美しい肌を実現させることが分かった。
【0007】
上記したサラシア属(Salacia oblanga、Salacia reticulata、Salacia prinoides)植物の抽出物は、皮膚に適用した場合の使用感と安全性に優れているため、皮膚外用剤に配合するのに好適である。本発明の皮膚外用剤は、上記サラシア属(Salacia oblanga、Salacia reticulata、Salacia prinoides)植物の抽出物を含有し、高保湿性、チロシナーゼ活性の阻害作用、黒色細胞白色化作用を有する。もちろん、製剤化した本発明の保湿剤、チロシナーゼ活性阻害剤、黒色細胞白色化剤を含有するものも本発明の美肌用皮膚外用剤の範囲に含まれる。
【0008】
サラシア属(Salacia oblanga、Salacia reticulata、Salacia prinoides)植物の抽出物の形態はなんら限定されるものではないが、好ましくはサラシア属(Salacia oblanga、Salacia reticulata、Salacia prinoides)植物の根を陰乾し、粉砕後、抽出溶媒(例えばエタノール等のアルコール、水またはこれら混合)とともに、3日間浸漬または1時間100℃にて加温、冷却、ろ過した液を使用する。
【0009】
サラシア属(Salacia oblanga、Salacia reticulata、Salacia prinoides)植物の抽出物は0.001〜20重量%で配合すれば美肌効果を十分発揮することから、この濃度で配合することが望ましい。
【0010】
本発明の皮膚外用剤は、常法に従い、通常の皮膚外用剤として知られる種々の形態の基材に配合して調製することができ、外用剤の形態としては特に限定されず、例えば、乳液、クリーム、水溶液、パック等の任意の剤形を選択することができる。
【0011】
本発明の皮膚外用剤において、サラシア属(Salacia oblanga、Salacia reticulata、Salacia prinoides)の植物からの抽出物とともに構成成分として利用可能なものは例えば、保湿剤・紫外線吸収剤・複合脂質・活性酸素消去作用を有する物質・抗炎症剤・ビタミンおよびその誘導体・油性成分・界面活性剤・防腐剤・粉体成分・精製水・高分子化合物・ゲル化剤・酸化防止剤・コレステロール類・植物ステロール類・リポプロテイン類・微生物由来成分・藻類抽出物・血行促進剤・抗脂漏剤・増粘剤・着色料・美容成分などをなどが挙げられ、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択して用いることが出来る。
【実施例】
【0012】
次に実施例および比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれになんら制約されるものではない。また使用した薬剤のエキス末についての抽出方法においても何ら限定されるものではない。
【0013】
(試験例1)角層水分量測定試験
3%エタノール水溶液1mLに試験品を0.7%になるよう溶解した試験溶液を上腕にのせ、均一に伸ばして1分間放置した。放置後軽くふき取り、SKICON−200をもちいて、角層水分量(コンダクタンス値)を測定した。なお、測定時間は試験溶液の塗布前を初期値とし、ふき取り直後(0分)、2分、5分、10分、30分後にそれぞれおこなった。
【0014】
【表1】

(注1)サラシア属植物(Salacia oblanga)の抽出物はサラシア10gにエタノール300mLを加えて24時間静置した後、ろ過し、溶媒留去したエキス粉末を用いた。
(注2)サラシア属植物(Salacia oblanga)の抽出物はサラシア10gに精製水300mLを加えて24時間静置した後、ろ過し、溶媒留去したエキス粉末を用いた。
【0015】
(実施例2)チロシナーゼ活性阻害試験
任意の濃度に溶解した試験液または対照液100□Lを各々バイヤル瓶に分注した。次に37℃に加温しておいたチロシン溶液(L−チロシン0.06gを200mLの水に溶解し、30mLMリン酸緩衝液(pH6.8)54mLとチロシン水溶液30mLの割合で混合)2.8mLを加え、37℃で5分間インキュベートした。インキュベート後、チロシナーゼ液(酵素反応群)または30mMリン酸緩衝液(pH6.8)(対照群)を0.1mL添加し、37℃にて10分間インキュベーションした。測定は分光光度計にて行い、475nmの吸光度を測定し、これらの値よりチロシナーゼの活性阻害率を算出した。
【0016】
【表2】

(注1)サラシア属植物(Salacia oblanga)の抽出物はサラシア10gにエタノール300mLを加えて24時間静置した後、ろ過し、溶媒留去したエキス粉末を用いた。
【0017】
(実施例3)黒色細胞白色化試験
10%のFBSを含むEagle‘sMEMを培地とし、24Well micro plateに2×103cells/wellとなるようにB−16マウスメラノーマ黒色細胞を分植し、24時間培養した。24時間後、先に示した同様の培地で試験検体を調製、添加し、3日間培養した。3日後に検体を含む培地で培地交換を行い、さらに3日間培養した。分植後6日目に、培地を捨てEDTAにて細胞を剥離し、浮遊細胞集団としてエッペンチューブに回収、細胞数をカンウトし、また遠心分離機で沈殿させたときのペレットの色を肉眼で判定した。
なお肉眼判定の基準を以下に記す。
(白色度判定基準)
−:コントロールと同程度
±:わずかに白色化傾向
+:白色化傾向
++:明らかな白色化(陽性対照1mMコウジ酸を基準)
+++:強い白色化
/:判定不能(細胞毒性により)
【0018】
【表3】

(注1)サラシア属植物(Salacia oblanga)の抽出物はサラシア10gにエタノール300mLを加えて24時間静置した後、ろ過し、溶媒留去したエキス粉末を用いた。
【0019】
(試験例5)皮膚外用剤の効果
実施例および比較例の処方を表4に示す。作成方法は常法により行った。なお表4は美容液の処方で、配合量は重量部で示す。
【表4】

【0020】
(注1)サラシア属植物(Salacia oblanga)の抽出物はサラシア10gにエタノール300mLを加えて24時間静置した後、ろ過し、溶媒留去したエキス粉末を用いた
(注2)ハマメリスの抽出物はハマメリス10gに精製水150mLとエタノール150mLの混合液を加えて1時間煮沸した後、ろ過した抽出液を用いた。
【0021】
表5記載の実施例1〜2、比較例1の美肌効果試験を実施した。試験方法は25〜60歳の女性30名をパネルとし、毎日朝と夜の2回、12週間に渡って洗顔後に被験外用剤の適量を顔面に塗布した。塗布による美肌効果の結果を表7に示す。
【0022】
【表5】

【0023】
サラシア属(Salacia oblanga、Salacia reticulata、Salacia prinoides)植物の抽出物は保湿作用、チロシナーゼ活性阻害作用、黒色細胞白色化作用を有することが確認され、乾燥やくすみを予防、改善し美肌効果があることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サラシア属(Salacia oblanga、Salacia reticulata、Salacia prinoides)植物の抽出物を含有する美肌用皮膚外用剤。
【請求項2】
サラシア属(Salacia oblanga、Salacia reticulata、Salacia prinoides)植物の抽出物が保湿剤である請求項1の皮膚外用剤。
【請求項3】
サラシア属(Salacia oblanga、Salacia reticulata、Salacia prinoides)植物の抽出物がチロシナーゼ活性阻害剤である請求項1の皮膚外用剤。
【請求項4】
サラシア属(Salacia oblanga、Salacia reticulata、Salacia prinoides)植物の抽出物が黒色細胞の白色化剤である請求項1の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2008−120774(P2008−120774A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332545(P2006−332545)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(599000212)香栄興業株式会社 (33)
【Fターム(参考)】