説明

羽ばたき型小型飛翔体

【課題】上下方向及び/又は左右方向の飛行を制御することができる羽ばたき型小型飛翔体を提供すること、及び前記の動きに加えて、水平飛行及びホバリングなどの飛行タイプを調整することができる羽ばたき型小型飛翔体を提供すること。
【解決手段】前後に長い支持本体に、上下揺動可能に支持される左右の羽体を前後方向に単又は複数設けてなる羽ばたき型小型飛翔体であって、前記支持本体の中央部付近に、電磁力により前後方向に移動する第1アクチュエータ及び/又は横方向に移動する第2アクチュエータが取り付けられ、第1及び第2アクチュエータには錘が接続されており、前記第1アクチュエータが前後方向に移動するにともなって前記錘が前記羽ばたき型小型飛翔体の前後方向及び/又は左右方向に偏るように調整することで上下、左右の方向への飛行を可能としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昆虫、特にトンボのように羽体で羽ばたいて飛行する小型の飛翔装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鳥や昆虫は羽を羽ばたいて空を自由に飛行する。特にホバリンリング、急旋回、急上昇などの飛行を自由に行なうことができるトンボの飛行能力は際だって優れている。この優れた飛行能力を小型の飛翔装置で実現できれば、ヘリコプタや飛行機より優れた飛翔装置が実現できると考えられている。
【0003】
トンボの中でも、国内最大のトンボであるオニヤンマは、翼長10cm、全長12cm、自重1gで、観測より翅を約30Hz(羽ばたき周波数:1秒間に羽ばたく回数)程度で羽ばたかせて飛翔する。そこで、オニヤンマと全く同じようにホバリング、急旋回、急上昇など繰り返しての飛翔を実現するには形状、寸法、羽ばたき方などをそっくりにして総重量を1gに近づけた羽ばたき飛翔装置が考えられる。
【0004】
しかしながら、トンボと類似の形状の前記羽ばたき飛翔装置には、尾翼がないことから、飛行姿勢の調整が難しいという問題があった。
【0005】
羽ばたきする小型の飛翔装置の姿勢制御については、たとえば、胴体の左右位置に、それぞれ羽ばたき翼を設けて、該各羽ばたき翼を独立に駆動して羽ばたき作動ができるようにし、且つ上記胴体の所要位置に、錘の移動に伴って機体重心の位置を変異させることができるようにしてある重心移動装置を設けてなり、上記左右の各羽ばたき翼より作用する導体への揚力作用位置に対する機体重心の相対的な位置を制御することにより、上記胴体とともに左右の各羽ばたき翼の迎角を所要角度に保持しながらそれぞれ羽ばたき作動させて飛行できるようにした構成を有することを特徴とする小型飛行装置が記載されている(特許文献1)。前記重心移動装置は、直線状に延びるガイド部材の任意の位置へスライダを移動させることができるようにしてある2つの重心移動アクチュエータを、胴体の前後方向と左右幅方向に沿うよう配置すると共に、一方の重心移動アクチュエータのスライダに、他方の重心移動アクチュエータのガイド部材を取り付け、且つ該他方の重心移動アクチュエータのスライダに、錘を取り付けてなるものとし、上記各重心移動アクチュエータにより、錘を、胴体の前後方向及び左右方向へ移動させて、機体重心の位置を胴体の前後左右方向に変位できるものとしている。しかし、この配置では、錘をスライドするためのスペースを確保する必要があり、実物のトンボと同じサイズの小型の飛翔装置で採用することは構造的に難しいという問題、また、スライダによる重心移動は時間が掛かり瞬時に姿勢を制御することが難しいという問題があり、実用的ではなかった。
【0006】
また、本件出願人も以前に小型の飛翔装置を提案している(特許文献2、3)。これらの飛翔装置では、各羽体を固定した支持軸部によって上下方向に揺動させて羽ばたかせると共に、前記各羽体に対して2種類の連結アームを連結して当該支持軸部を中心に捻り動作を行わせていた。しかし、これらの飛翔装置では、上下方向又は左右方向の飛行の制御を羽体の動きで行っているが、安定した飛行を行うにはさらなる検討が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−142913号公報
【特許文献2】特開2009−190651号公報
【特許文献3】特開2009−240501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記のような事情に鑑み、上下方向及び/又は左右方向の飛行を制御することができる羽ばたき型小型飛翔体を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記の動きに加えて、水平飛行及びホバリングなどの飛行タイプを調整することができる羽ばたき型小型飛翔体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1は、前後に長い支持本体に、上下揺動可能に支持される左右の羽体を前後方向に単又は複数設けてなる羽ばたき型小型飛翔体であって、
前記支持本体の中央部付近に、電磁力で前後方向に移動する第1アクチュエータが取り付けられ、第1アクチュエータには錘が接続されており、
前記第1アクチュエータが前後方向に移動するにともなって前記錘が前記羽ばたき型小型飛翔体の前後方向に偏るように位置を調整することが可能な羽ばたき型小型飛翔体に関する。
【0010】
また、本発明の第2は、
前後に長い支持本体に、上下揺動可能に支持される左右の羽体を前後方向に単又は複数設けてなる羽ばたき型小型飛翔体であって、
前記支持本体の中央部付近に、電磁力で左右方向に移動する第2アクチュエータが取り付けられ、第2アクチュエータには錘が接続されており、
前記第2アクチュエータが左右方向に移動するにともなって前記錘が前記羽ばたき型小型飛翔体の左右方向に偏るように位置を調整することが可能な羽ばたき型小型飛翔体に関する。
【0011】
本発明の第3は、前記のような電磁力で前後方向に移動する第1アクチュエータと電磁力で左右方向に移動する第2アクチュエータとを共に備えた羽ばたき型小型飛翔体に関する。
【0012】
前記羽ばたき型小型飛翔体の支持本体には、支持体の姿勢と速度を検出するセンサを設け、センサと前記第1又は第2アクチュエータとを電気的に接続させて、センサの出力信号を前記第1又は第2アクチュエータに電気的に伝えることが好ましい。
【0013】
また、前記羽ばたき型小型飛翔体の前記支持本体が第3アクチュエータを備えており、前記羽体を動かすための駆動モータに接続したクランクと、羽体に上下の動きを伝えるための連結アームとの取り付け位置を第3アクチュエータにより移動させ、羽体の羽ばたきの角度と前後の羽体の位相を変えて、飛行制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
第1の本発明の係る羽ばたき型小型飛翔体によれば、前記錘を第1アクチュエータにより前後方向に移動することで、前記羽ばたき型小型飛翔体の重心位置が前後に移動されて、羽ばたき型小型飛翔体の姿勢を変えて安定した揚力と推進力を得ることができる。また、前記錘を移動させることで、前記羽ばたき型小型飛翔体の上下の飛行方向を調整して、例えば、ホバリングや水平方向だけでなく、急上昇、急降下のような上下方向に飛行することも可能にする。
【0015】
第2の本発明に係る羽ばたき型小型飛翔体によれば、前記錘を第2アクチュエータにより左右方向に移動することで、前記羽ばたき型小型飛翔体の重心位置が左右に移動されて、飛行中の羽ばたき型小型飛翔体の左右方向の姿勢を制御するだけでなく、急旋回のような左右方向の飛行も可能にする。
【0016】
第3の本発明に係る羽ばたき型小型飛翔体によれば、前記のような第1のアクチュエータと第2のアクチュエータとを共に備えていることで、羽ばたき型小型飛翔体の上下左右方向の飛行を調整することができる。
【0017】
第1〜第3の羽ばたき型小型飛翔体では、前記センサを備えることで、羽ばたき型小型飛翔体の姿勢が確認できるため、羽ばたき方小型飛翔体の上下及び左右方向の飛行の制御をより的確に行うことが可能になる。
【0018】
また、第1〜第3の羽ばたき型小型飛翔体では、前記支持本体が第3アクチュエータを備えており、前記羽体を動かすための駆動モータに接続したクランクと、羽体に上下の動きを伝えるための連結アームとの取り付け位置を第3アクチュエータにより移動させ、羽体の羽ばたきの角度と前後の羽体の位相を変えることで、羽体の羽ばたきの周期を変動させて、水平飛行やホバリングのような飛行のタイプを自在に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1(a)、(b)、(c)は、羽ばたき型小型飛翔体1Aの全体構成の概略と、飛行時の姿勢を示す図である。
【図2】図2(a)は、羽ばたき型小型飛翔体1Aの上方向に飛行する姿勢の1例の概略を示す図である。図2(b)は、羽ばたき型小型飛翔体1Aの下方向に飛行する姿勢の1例の概略を示す図である。
【図3】図3(a)、(b)、(c)は、羽ばたき型小型飛翔体1Bの全体構成の概略と、飛行時の錘5の位置を示す図である。図3(a)は直進、図3(b)は左方向、図3(c)は右方向への飛行を示す図である。
【図4】図4は、第1アクチュエータ4aと第2アクチュエータ4bを備えた小型飛翔体1Cの頭部と胸部付近の内部構造を横方向から見た場合の概略説明図である。
【図5】図5は、図4とは別の態様の、小型飛翔体1Dの頭部と胸部付近の内部構造を横方向から見た場合の概略説明図である。
【図6】図6は、飛行時の小型飛翔体1Aに働く力を示す図である。
【図7】図7は、揚力係数CL又は抗力係数CDと迎角との関係を示す図である。
【図8】図8は、羽体を上下に揺動させる機構の概略説明図である。
【図9】図9(a)、(b)は、小型飛翔体が前進して飛行する場合の羽ばたき方と前後の羽体の位相差角の違いと生じる揚力の大きさを示す図である。
【図10】図10(a)、(b)は、小型飛翔体がホバリングしながら飛行する場合の羽ばたき方と前後の羽体の位相差角の違いと生じる揚力の大きさを示す図である。
【図11】図11(a)は、クランク部17と連結アーム13との軸支部分の位置が変動する機構の概略説明図である。図11(b)は、図11(a)に示す機構を備えた小型飛翔体1Eの頭部と胸部付近の内部構造を横方向から見た場合の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0021】
図1(a)に第1の本発明である羽ばたき型小型飛翔体1Aの概略を示す。小型飛翔体1Aには前後に長い支持本体2に、上下揺動可能に支持される左右の羽体3を前後方向に単又は複数設けている。
【0022】
なお、以下の説明では、複数の羽を持つ昆虫型の飛翔装置として、トンボ型の飛翔体について説明するが他の昆虫の形状を模してもよい。例えば、蜂、虻、蝶、蛾、蝉などの形状を模した羽ばたき動作をする飛翔体であってもよい。
【0023】
図1(a)は、前後に長い支持本体2に、上下揺動可能に支持される左右の4枚の羽体3を前後方向に2対設けてなる羽ばたき型小型飛翔体1Aを示している。
前記羽体3の数については、支持本体2の長さに応じて、1対でもよいし、3対以上にしてもよい。
【0024】
前記羽体3は、支持本体2の形状にあわせたものであればよい。例えば、支持本体2の形状がトンボを模していれば、羽体3はいずれも昆虫のトンボの翅と略同じ形状で、かつ板状をしていることが好ましい。このような形状の羽体3としては、例えば、厚さ1000μm以下のSi又はSi化合物のシリコン基板よりなり、昆虫の翅を模した外形を有するとともに、表面をエッチング処理して前記昆虫の翅脈を模した凹凸模様を形成してなる翼体を用いることが好ましい。この翼体は、実際の昆虫の翅の形状や翅脈を模しており、飛翔玩具として飛翔するという楽しみ以外にも、飛翔していない状態でも昆虫としてのリアルな形状を鑑賞して楽しむことができる。前記羽体3としては、前記特許文献3に記載の翼体が挙げられる。
【0025】
前記支持本体2の中央部付近には、電磁力により前後方向に移動する第1アクチュエータ4aが取り付けられ、第1アクチュエータ4aには錘5が接続されている。
【0026】
前記第1アクチュエータ4aを設置する位置は、小型飛翔体1Aの支持本体2の中央部付近であればよい。ここで、中央部付近とは、小型飛翔体1Aの羽体3の付近であればよいが、小型飛翔体1Aの重心付近に設置することで、錘5の移動に伴う重心移動により飛行を制御し易くすることができるので好ましい。また、第1アクチュエータ4aは錘5を移動するためのスペースが必要であるため、支持本体2の下部に設置されることで、他の部分に支障なく錘5を移動することができる。錘5付近の支持本体2は、錘5を移動するスペースだけ開口していてもよいし、支持本体2内に錘5が収容されていてもよい。
【0027】
前記第1アクチュエータ4aは、電磁力で前後方向に直動し、かつ前、後の2点又は前、後、中央の3点で動きを止めることができるアクチュエータであればよい。第1アクチュエータ4aの停止位置が多いだけ、小型飛翔体1Aの飛行をより細かく制御することができる。
【0028】
小型飛翔体1Aでは、前記第1アクチュエータ4aに錘5が接続されていて、第1アクチュエータ4aの動きにあわせて、錘5も位置を変えることができる。
錘5は、所定の重さのある固形物であればよいが、小型飛翔体1Aを動かすための電池を用いれば、小型飛翔体1A内に電池用のスペースを設ける必要なくなり、省スペース化を図ることができる。前記電池は、小型飛翔体1Aにおいて、例えば、羽体3を動かすモータ、モータの動きや第1アクチュエータ4aの動きを制御する制御基板、さらには各種センサ用の電源として使用される。
【0029】
第1アクチュエータ4aと錘5とは固着して接続してもよいが、接続部材6を介して第1アクチュエータ4aと錘5とを接続することで、第1アクチュエータ4aの動きの幅よりも、接続部材6の長さの分だけ錘5の動きの幅を大きくすることができ、さらに接続部材6がたわめばその分だけさらに錘5の動きの幅を大きくすることができる。前記接続部材6としては、テープ材、合成樹脂材などのうち軽くて柔軟な部材が挙げられる。接続部材6の形状としては特に限定はない。
【0030】
前記錘5の前後方向への移動に伴い、小型飛翔体1Aの重心の位置が変化することで、推進力や揚力の関係が変化して、上昇、下降などの飛行を行うことができる。
【0031】
例えば、図1(a)に示す状態で、小型飛翔体1Aが水平方向に直進して飛行する場合、空力中心(迎角が変化してもモーメントが変化しない点、風圧中心ともいう)と重心とが一致している。この場合、第1アクチュエータ4aは中央の位置で停止している。
なお、図1(a)〜(c)では、錘5の動きを見易くするため、前後の羽体3はいずれも上方向に持ち上がった状態で示している。
【0032】
次いで、第1アクチュエータ4aを後方向に移動させると、その動きにあわせて、錘5が後方向に移動する(図1(b))。このように錘5が後方向に移動することで、小型飛翔体1Aの重心も後ろに移動する。羽体3の羽ばたき回数や前後の羽体3の羽ばたきの周期が同じであれば、図1(c)に示すように、小型飛翔体1の前方部分が上方向に傾くことで、小型飛翔体1Aは上方向に飛行することになる。特に、高速で水平飛行をしている小型飛翔体1Aにおいて、錘5の後方への移動を行うと、小型飛翔体1Aは急上昇を行うことができる。また、羽体3の羽ばたき回数や前後の羽体3の周期を変えれば、小型飛翔体1Aの前方部分が上に傾いた状態で、所望の位置で水平飛行させたり、ホバリングを行うこともできる。
【0033】
図1(c)のように進行方向に対して小型飛翔体1の前方部分が上がると重心が後方に移動し、空力中心は前進して、重心の周りに時計方向のモーメントを受ける。その場合、図2(a)に示すように第1アクチュエータ4aを再び前方向に移動して、錘5を前方に移動させ、重心と空力中心の位置を再び近づけることで前記モーメントを打ち消して、小型飛翔体1Aを水平状態に戻すことができる。
【0034】
次に、上記の場合とは反対に、前記第1アクチュエータ4aを前方向に移動させると、その動きにあわせて、錘5が前方向に移動する(図示せず)。このように錘5が前方向に移動することで、小型飛翔体1Aの重心も前に移動する。羽体3の羽ばたき回数や前後の羽体3の羽ばたきの周期が同じであれば、上記の場合とは反対に、小型飛翔体1の前方部分が下方向に傾くことで、小型飛翔体1Aは下方向に飛行することになる。特に、高速で水平飛行をしている小型飛翔体1Aにおいて、錘5の前方への移動を行うと、小型飛翔体1Aは急降下を行うことができる。また、羽体3の羽ばたき回数や前後の羽体3の周期を変えれば、小型飛翔体1Aの前方部分が下に傾いた状態で、所望の位置で水平飛行させたり、ホバリングを行うこともできる。
【0035】
進行方向に対して小型飛翔体1の前方部分が下がるように重心が前方に移動すると、空力中心は後退して、重心の周りに反時計方向のモーメントを受ける。その場合には、図2(b)に示すように第1アクチュエータ4aを再び後方向に移動して、錘5を後方に移動させ、重心と空力中心の位置を再び近づけることで前記モーメントを打ち消して、小型飛翔体1Aを水平状態に戻すことができる。
【0036】
次に、図3(a)に第2の本発明である羽ばたき型小型飛翔体1Bの概略を示す。小型飛翔体1Bには小型飛翔体1Aと同様に、前後に長い支持本体2に、上下揺動可能に支持される左右の羽体3を前後方向に単又は複数設けている。
【0037】
前記支持本体2の中央部付近には、電磁力により左右方向に移動する第2アクチュエータ4bが取り付けられ、第2アクチュエータ4bには錘5が接続されている。
【0038】
前記第2アクチュエータ4bを設置する位置は、前記第1アクチュエータ4aと同様に、小型飛翔体1Bの支持本体2の中央部付近であればよい。小型飛翔体1Bの重心付近に第2アクチュエータ4bを設置することで、左右への重心移動をし易くして左右の飛行を制御し易くすることができるので好ましい。また、第2アクチュエータ4bは錘5を移動するためのスペースが必要であるため、支持本体2の下部に設置されることで、他の部分に支障なく錘5の移動を行うことができる。錘5付近の支持本体2は、錘5を移動するスペースだけ開口していてもよいし、支持本体2内に錘5が収容されていてもよい。
【0039】
前記第2アクチュエータ4bは、電磁力で左右方向に直動し、かつ左、右の2点又は左、右、中央の3点で動きを止めることができるアクチュエータであればよい。第2アクチュエータ4bの停止位置が多いだけ、小型飛翔体1Bの飛行をより細かく制御することができる。
【0040】
小型飛翔体1Bでは、前記第2アクチュエータ4bに錘5が接続されていて、第1アクチュエータ4bの動きにあわせて、錘5も位置を変えることができる。
錘5は、所定の重さのある固形物であればよいが、小型飛翔体1Bを動かすための電池を用いれば、小型飛翔体1B内に電池用のスペースを設ける必要なくなり、省スペース化を図ることができる。前記電池は、小型飛翔体1Bの羽体3を動かすモータ、モータの動きや第1アクチュエータ4bの動きを制御する制御基板、さらには各種センサ用の電源として使用される。
【0041】
第2アクチュエータ4bと錘5とは固着して接続してもよいが、第1アクチュエータ4aと同様に接続部材(図示せず)を介して第2アクチュエータ4bと錘5とを接続することで、第2アクチュエータ4bの動きの幅よりも、接続部材の長さの分だけ錘5の動きの幅を大きくすることができ、さらに接続部材がたわめばその分だけさらに錘5の動きの幅を大きくすることができる。前記接続部材としては、テープ材、合成樹脂材などのうち軽くて柔軟な部材が挙げられる。
【0042】
前記錘5の左右方向への移動に伴い、小型飛翔体1Bの重心の位置が変化することで、小型飛翔体1Bの姿勢が左右に変化して、右方向、左方向への飛行を行うことができる。
【0043】
例えば、図3(a)に示す状態で、小型飛翔体1Bが水平方向に直進して飛行する場合、空力中心と重心とが一致している。この場合、第2アクチュエータ4bは中央の位置で停止している。
なお、図3(a)〜(c)では、錘5の動きを見易くするため、前後の羽体3はいずれも水平方向に固定された状態で示している。
【0044】
次いで、第2アクチュエータ4bを左方向に移動させると、その動きにあわせて、錘5が左方向に移動する(図3(b))。このように錘5が左方向に移動することで、小型飛翔体1Aの重心も左に移動する。羽体3の羽ばたき回数や前後の羽体3の羽ばたきの周期が同じであれば、図3(b)に示すように、小型飛翔体1の姿勢が左側に傾くことで、小型飛翔体1Bは左方向に飛行することになる。特に、高速で水平飛行をしている小型飛翔体1Bにおいて、錘5の左方向への移動を行うと、小型飛翔体1Bは左側に急旋回を行うことができる。
【0045】
前記のように左方向に旋回している小型飛翔体1Bにおいて、第2アクチュエータ4bの位置を中央に再び移動すれば、錘5も小型飛翔体1Bの中央付近に戻ることで、小型飛翔体1Bの姿勢を図3(a)に示すように直進の水平状態に戻すことができる。
【0046】
次に、上記の場合とは反対に、前記第2アクチュエータ4bを右方向に移動させると、その動きにあわせて、錘5が右方向に移動する(図3(c))。このように錘5が右方向に移動することで、小型飛翔体1Bの重心も右側に移動する。羽体3の羽ばたき回数や前後の羽体3の羽ばたきの周期が同じであれば、上記の場合とは反対に、小型飛翔体1Bの姿勢が右側に傾くことで、小型飛翔体1Bは右方向に飛行することになる。特に、高速で水平飛行をしている小型飛翔体1Bにおいて、錘5の右側への移動を行うと、小型飛翔体1Bは右側に急旋回を行うことができる。
【0047】
前記のように右方向に旋回している小型飛翔体1Bにおいて、第2アクチュエータ4bの位置を中央に再び移動すれば、錘5も小型飛翔体1Bの中央付近に戻ることで、小型飛翔体1Bの姿勢を図3(a)に示すように直進の水平状態に戻すことができる。
【0048】
次に、前記第1アクチュエータ4a、前記第2アクチュエータ4bを共に備えた第3の本発明に係る羽ばたき型小型飛翔体1Cの概略を図4に示す。
小型飛翔体1Cには小型飛翔体1A、1Bと同様に、前後に長い支持本体2に、上下揺動可能に支持される左右の羽体3を前後方向に単又は複数設けている。
【0049】
前記支持本体2の中央部付近には、電磁力により前後方向に移動する第1アクチュエータ4a、左右方向に移動する第2アクチュエータ4bが取り付けられている。前記第1アクチュエータ4a、第2アクチュエータ4bにはそれぞれ錘5が接続されている。
第1アクチュエータ4a、第2アクチュエータ4bを動かすことで、前記小型飛翔体1Aと同じように上下方向、さらには急上昇、急降下などの飛行を行い、かつ、小型飛翔体1Bと同じように左右方向、さらには左右への旋回などの飛行の調整を自在に行うことができる。
【0050】
図4の小型飛翔体1Cでは、第1アクチュエータ4aが前後の羽体3の間の下部、第2アクチュエータ4bが後ろの羽体3の後方の下部にそれぞれ設置されているが、第1アクチュエータ4a、第2アクチュエータ4bの位置は入れ替えてもよいし、小型飛翔体1Cの別の中央付近にそれぞれ設置してもよい。
【0051】
前記第1アクチュエータ4a、前記第2アクチュエータ4bを共に備える別の態様として、図5に示す小型飛翔体1Dでは、前後の羽体3の間の下部に第1アクチュエータ4aを設置し、その下に第2アクチュエータ4bを接続し、第2アクチュエータ4bに錘5を接続している。前記第1アクチュエータ4aと第2アクチュエータ4bの位置は入れ替えてもよい。このようにアクチュエータを重ねて設置する場合、錘5は1つでよい。
【0052】
また、図4、図5では、第1、第2および第3の本発明に係る小型飛翔体に共通する主要な構成の一例を詳しく示している。
前記支持本体2は、頭部、胸部、尾部及び脚部を供えた成虫のトンボを模した外形を有しており、前記胸部は1本の支持軸7で構成し、全ての羽体3を揺動支持軸8によって支持している。なお、前記支持軸7は、2本にて構成してもよい。2本の支持軸については、前記特許文献2、3に記載の構造を採用すればよい。
【0053】
前記支持本体2に対して前後に配置されて、さらに左右にも配置されている羽体3はいずれも、その基端側で弾性板材9を介して支持部10にそれぞれ連結されている。支持部10とは、前記羽体3を支持する部材である。
【0054】
図4、5では、支持部10が支持本体2の長軸方向に対して上下に揺動して、羽体3をフラッピング運動させる揺動機構が設けられている。
【0055】
前記揺動機構は、上下方向の動力を前記羽体3に伝達するための揺動支持軸8と、駆動モータ11と、該駆動モータ11によって回転する回転体12と、該回転体12と前記揺動支持軸8とを連結する連結アーム13とから構成される。
【0056】
前記揺動支持軸8は、その一端側が前記支持軸7に軸支され、上下揺動可能に構成されている。また、前記揺動支持軸8と連結アーム13とは、ピン14によって軸支されている。
【0057】
前記駆動モータ11には、ギア15が設けられ、当該ギア15を介して回転体12を回転させる。前記回転体12には、前記ギア15を介して回転する回転ギア16と、前記支持本体2の軸方向に略沿った回転軸芯に対して位相が約90°ずつずれたクランク部17が設けられている。クランク部17の適当な位置には前記連結アーム13が軸支されており、このクランク部17が前記回転軸芯を中心に回動すると、クランク部17と連結アーム13との軸支部分の位置が上下に移動するのにあわせて、前記連結アーム13が軸支した前記揺動支持軸8が上下方向に揺動する。なお、クランク部17の構造及び連結アーム13とクランク部17の軸支する位置については、前記支持体11の揺動角度が所望の範囲になるように調整すればよい。また、クランク部17の具体的な構成については、前記特許文献2に準じて設定すればよい。
【0058】
また、前記揺動機構では、揺動支持軸8を上下方向に揺動させればよいため、前記揺動支持軸8を軸支する連結アーム13は1本でよく、特許文献2、3に記載の飛翔装置のように、揺動支持軸自体を前後方向に揺動させる構造に比べて簡潔であり、駆動に係る電力も抑えることができる。
【0059】
また、前記駆動モータ11に電力を供給する電池は、前記錘5として配置される。なお、図4に示すように、第1アクチュエータ4aと第2アクチュエータ4bとがそれぞれ異なる錘5と接続している場合、2つの錘5のうちいずれか一方が電池で構成されていればよいし、2つとも電池で構成されていてもよい。前記駆動モータ11、第1アクチュエータ4a、第2アクチュエータ4b等を制御するための電子回路基板18がトンボの形状を模した支持本体2の胸部から尾部にかけての部分に収納されているが、電子回路基板18の位置は特に限定はない。
なお、図4、5の図面では、電力線や信号線の記載を省略している。
また、前記支持軸7とクランク部17とは、それぞれの後方端側で支持板19により軸支されている。
【0060】
また、本発明に係る前記小型飛翔体1A〜ADにおいて、前記支持本体2の姿勢と飛行速度を検出するセンサを設けることで、センサの出力信号から前記第1アクチュエータ1a及び/又は第2アクチュエータ1bを制御することができる。
【0061】
前記センサとしては、小型飛翔体に設置できるサイズと小型飛翔体の飛行に支障が出ない重量のものであればよい。例えば、小型飛翔体1の姿勢を検出するためのセンサとしては、市販の軽量センサ、例えば、オムロンの重量0.21gのマイクロ傾斜センサD6BNが挙げられる。このセンサにより、水平姿勢から傾いた姿勢の傾斜角がわかれば、電子回路基板18から飛行速度も算出することができるが、飛行速度を検出するための市販のセンサを別に用いてもよい。
【0062】
前記センサは、性能に応じて支持本体2に1つ設置してもよいし、姿勢を確認するためのセンサと飛行速度を検出するためのセンサをそれぞれ2つ又はそれ以上を設置してもよい。
また、センサを設置する場所としては、前記第1アクチュエータ4a及び第2アクチュエータ4bに電気的に接続できる位置であればよく、特に限定はない。
【0063】
また、本発明の小型飛翔体を実際に飛行させている場合には、進行方向に対して、風などの何らかの影響で、機体に働く空力中心が重心から移動し、小型飛翔体が回転してしまうことがある。
そのような場合にも、前記センサが支持本体2に設置されていれば、センサの出力信号に基づいて前後方向に移動する第1アクチュエータ4a、左右方向に移動する第2アクチュエータ4bをそれぞれ適切に移動させて錘5の位置を変えることで、重心を空力中心に移動させ、機体に働く回転するモーメントを打ち消し、飛行を安定させることができる。
【0064】
さらに、上昇、降下、左右への旋回のように、機体の姿勢を変える場合、第1アクチュエータ4a又は第2アクチュータ4bにより錘5を移動させ空力中心に対し重心を飛行したい向きに移動させるが、その場合の傾斜角度の検出は、姿勢を検出するセンサで検出し、その出力電圧によりアクチュエータ4a又は第2アクチュエータ4bの傾き角度を所望の角度に制御することができる。また、前記電子回路基板18に傾斜角度の検出信号を入力し、傾斜角度から加速度と速度を検出し、機体の傾きを変えてホバリングさせることもできる。
【0065】
ここで、羽ばたいて飛行している小型飛翔体1Aでは、図6に示すように、推進力T、揚力L、重力W、抗力D、空力合力Fが発生しておりそれぞれの力が釣り合っている。
【0066】
そして、小型飛翔装置1Aは、羽体3を上下に羽ばたかせていて羽体3に作用する空気の流れとの羽体3とがなす角度に相当する迎角αが常に変化していることから、揚力Lと抗力Dは、以下の式(1)、式(2)に示すように変化する。
【数1】

【0067】
【数2】

【0068】
ρ:空気密度,S:翅の面積 Vr:翅に対する空気流の相対速度|Vr|
α:空気学的迎角 CL:αの関数で表された揚力係数 CD:αの関数で表された抗力係数である。
なお、前記式(1)における揚力係数CLと前記式(2)における抗力係数CDは図7に示すように変化する。
【0069】
ここで、前記小型飛翔体1Aが水平飛行する場合、機体の重量Wと揚力Lが釣り合っており、L=Wとすると式(1)より、飛翔体1の進行方向への飛行速度Vは以下の式(3)で計算される。
【0070】
【数3】

【0071】
また、前記小型飛翔体1Aが水平方向に対して左右いずれかの方向に向かって角度βだけに傾いている場合、前記飛翔体1の上下方向への飛行速度Vβは式(4)から求められる。
【0072】
【数4】

【0073】
ここで、翼体3の迎角αを大きくしていくとCLは増大し、小型飛翔体1Aの飛行速度VAはCLが最大となるときに最小となり、前記小型飛翔体1Aは最小速度Vs、Vβ以上であれば飛ぶことができる。
【0074】
なお、水平飛行での最小速度Vsは以下の式(5)で求められる。
【0075】
【数5】

【0076】
また、傾き角βでの最小速度は以下の式(6)で求められる。
【0077】
【数6】

【0078】
上記の最小速度Vsと水平線に対する角度βを満たすと、機体を上下方向に移動させ、飛行が可能となる。
【0079】
前記のような力関係に基づいている本発明の小型飛翔体は、複数の羽体3を羽ばたかせて飛行している。
【0080】
羽体3を上下に動かす揺動機構には、図8に示す傾動機構が設けられていてもよい。前記傾動機構は、前記弾性板材9を固定する台部材20と、前記台部材20の両端に前記揺動支持軸8を挿通する一対の軸受け部材21とを備えており、前記揺動支持軸8を中心に回動可能な、断面略コ状の支持部10a、10b、10c、10d(以下、10a等と略す)を有する。なお、図4、5も同じ構造の機構を備えた構造を記載した図面である。
また、前記軸受け部材21の間に挿通された揺動支持軸8部分には、前記揺動支持軸8の軸方向に対して垂直方向にピン14が挿通されて、前記揺動支持軸8と前記連結アーム13が連結されている。
【0081】
前記支持部10a等では、前記羽体3が前記支持本体2の軸と略平行となる位置と、該軸に鋭角ないし略垂直となる位置との間で角度変化を規制するための角度規制手段として、前記連結アーム13とピン14とが作用する。
【0082】
前記のような前記支持部10a等の傾動角度としては、前方向の角度については、0〜30°、後ろ方向の角度については最大で45〜60°まで、それぞれ回動できるように設定していればよい。
【0083】
前記のような傾動機構は、上下方向の揺動機構により揺動支持軸8の上下動で生じるフラッピング運動の慣性力と連動することで、羽体3にフェザリング運動を生じさせることができる。
【0084】
なお、図4、5、8に示された態様の傾動機構では、前記連結アーム13が揺動支持軸8の前方向に配置されているが、別の態様として、連結アーム13が前記揺動支持軸8の後方向に配置されていてもよい。
【0085】
前記揺動機構により、前の羽体3と後ろの羽体3とは上下に周期的に位置を変えることで羽ばたきを行っているが、前後の羽体3の動きの周期は、例えば、前進する場合と空中で停止しているホバリングを行っている場合とでは相違している。したがって、前の羽体3と後の羽体3との位相差角(タイミング)はそれぞれ別である。
【0086】
例えば、前進する場合の前後の羽体の位相差角の概略図を図9(a)に示す。左が前方向、右が後方向であり、上図と中図の四角のバーが羽体の高さと向きを示し、下図が前後の羽ばたきから得られる揚力などの力の大きさを示す。
(1)前後の羽体3の羽ばたき角の位相差角(タイミング)を90°以上270°以内に近づけた場合、後の羽体3は前の羽体3から空気流(風)が強く受けないので、前の羽体3と同じように、下げ時に機体と水平になり、立ち上げ時に機体と垂直又は大きい角度を取る。
この場合、図9(a)の下図に示すように、前の羽体3の羽ばたきで生じる前方から空気流(風)受けて、後の羽体3が水平の向きにフェザリングし、特に羽ばたき後の羽体3は水平に羽ばたくので、図9(b)に示すように前後の羽体3が一体となった羽ばたきにより推進力を得て速度が上がる。この(1)のタイミングでは前後の羽体3の水平な羽ばたきが繰り返されて大きな推進力が得られて小型飛翔体は前進する。
【0087】
次いで、ホバリングする場合の前後の羽体3の位相差角の概略図を図10(a)に示す。
(2)小型飛翔体1が低速度で飛行していたり、空中で停止しているホバリング時には、後の羽体3は前方から強い空気流(風)受けないので、立ち上げ時に機体と垂直又は大きい角度を取る。例えば、前後の羽体3の羽ばたき角の位相差角を90°以内に近づけた場合、後の羽体3は前の羽体3から空気流(風)強く受けるので、羽体3の向きはフェザリング時に水平となる。前後の羽体3が立ち上げ時に機体と垂直又は大きい角度を取ると空気流は前方も若しくは下に流れ、図10(b)に示すように、前進と後進の推進力が交互に繰り返されることで、小型飛翔体1は前進を妨げられるホバリング状態となる。
【0088】
前記のような前後の羽体3の位相差の位置を変換する手段としては、図11(a)に示すように、前記揺動機構において、後の羽体3に係る2本の連結アーム13が軸支するクランク部17に設ける角度を、前記支持本体2の軸方向に略沿った回転軸芯に対して位相が約60°〜180°にずれるようにクランク部17を形成して後の羽体3に係る2本の連結アーム13の軸支する位置(a、c)を位置(b、d)に相互に変動可能にすることが挙げられる。このように、後の羽体3の連結アーム13の軸支部分が変化することで、後の羽体3の羽ばたきのタイミングが変化して、前後の羽体3の羽ばたき角の位相差角を調整することができる。
【0089】
また、前記連結アーム13の位置の変動は、図11(b)に示すように、小型飛翔体1Eの後の羽体3を動かす2本の連結アーム13に、直動する第3アクチュエータ4cを取り付けて、該第3アクチュエータ4cを動かすことによりクランク部17における連結アーム13の軸支位置を変動させることで行うことができる。前記第3アクチュエータ4cの動きは電子回路基板20により制御することができる。なお、図11(b)では、第3アクチュエータ4cなどの動きを見易くするために、前記第1アクチュエータ4aと第2アクチュエータ4bとは図示していないが、例えば、第3アクチュエータ4cの下方に第1アクチュエータ4a及び/又は第2アクチュエータ4bを設けることは可能であるし、3つのアクチュエータをそれぞれ別の位置に設けることも可能である。
【0090】
以上のような構成を備えことで、本発明に係る羽ばたき型小型飛翔体は、実物のトンボのような形状、大きさでトンボのような羽ばたき周波数で飛翔することが可能となり、上昇、下降、旋回などの前進飛行や、姿勢を変えてのホバリングも遠隔操作で自由に行うことが可能となる。
【0091】
次に、図1に示すように1つの電磁アクチュエータを重ねたオニヤンマ型の小型飛翔体1Aの詳細な部材の構成について説明する。
支持本体2は、オニヤンマの画像を3次元CADにより立体化し、その形状をもとに梁とシート状の極めて薄い部分からなる軽量で強度を保持した構造とした。そして、この3次元CADのデータを基に3次元プリンタによりアクリル系光硬化型樹脂により製作した。
小型飛翔体1Aは、翼長150mm、機体長150mm、全重量2.0gとした。
前記小型飛翔体1Aに使用するリチュウムポリマー電池の重量は0.8gで全重量の40%に相当するため、錘5とし、重量0.2g電磁アクチュエータ4aに接続し前後に変位させると図1のようにトンボの重心が前後に移動した。
また、羽部3は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術により、厚さ100μmのSi基板を微細加工して、略実物サイズの形状で4枚の羽部の総重量を0.2gとした。
また、小型飛翔体1Aの他の各部は、図4に示すようにした。
駆動モータ11は、重量0.3gのシコウ技研社製のコアレスモータ使用した。
電子回路基板18は、東光電気製の赤外線受信機基板IRX303Fを削り、重量0.15gにした。
前記ギア15(ギア比1:3)、回転ギア16、クランク部17、連結アーム13等の残りの各部を組み立てて、小型飛翔体1Aの総重量を、2.0gとした。
【0092】
また、前記の小型飛翔体1Aにおいて電磁アクチュエータ4aの動く方向を90°回転して設置すれば、第2アクチュエータとして横方向に重心を移動することができるし、電磁アクチュエータ4aの下に別の電磁アクチュエータを動く方向を90°回転して設置し、その下に錘5である電池を接続することで前後、左右に重心を移動することができる。
【符号の説明】
【0093】
1A 1B 1C 1D 1E 小型飛翔体
2 支持本体
3 羽体
4a 第1アクチュエータ
4b 第2アクチュエータ
4c 第3アクチュエータ
5 錘
6 接合部材
8 支持軸
9 揺動支持軸
10 弾性板材
11 支持部
12 揺動支持軸
13 駆動モータ
14 回転体
15 連結アーム
16 ピン
17 ギア
18 回転ギア
19 クランク部
20 電子回路基板
21 支持板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後に長い支持本体に、上下揺動可能に支持される左右の羽体を前後方向に単又は複数設けてなる羽ばたき型小型飛翔体であって、
前記支持本体の中央部付近に、電磁力により前後方向に移動する第1アクチュエータが取り付けられ、第1アクチュエータには錘が接続されており、
前記第1アクチュエータが前後方向に移動するにともなって前記錘が前記羽ばたき型小型飛翔体の前後方向に偏るように調整することが可能な羽ばたき型小型飛翔体。
【請求項2】
前後に長い支持本体に、上下揺動可能に支持される左右の羽体を前後方向に単又は複数設けてなる羽ばたき型小型飛翔体であって、
前記支持本体の中央部付近に、電磁力により左右方向に移動する第2アクチュエータが取り付けられ、第2アクチュエータには錘が接続されており、
前記第2アクチュエータが左右方向に移動するにともなって前記錘が前記羽ばたき型小型飛翔体の左右方向に偏るように調整することが可能な羽ばたき型小型飛翔体。
【請求項3】
前記第1アクチュエータを備えた請求項2記載の羽ばたき型小型飛翔体。
【請求項4】
前記羽ばたき型小型飛翔体の支持本体に、支持本体の姿勢と速度を検出するセンサを設け、センサの出力信号から前記第1又は第2アクチュエータを制御する請求項1〜3いずれか記載の羽ばたき型小型飛翔体。
【請求項5】
前記羽ばたき型小型飛翔体の前記支持本体が第3アクチュエータを備えており、前記羽体を動かすための駆動モータに接続したクランクと、羽体に上下の動きを伝えるための連結アームとの取り付け位置を第3アクチュエータにより移動させ、羽体の羽ばたきの角度と前後の羽体の位相を変えて、飛行制御することが可能な請求項1〜3にいずれか記載の羽ばたき型小型飛翔体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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